(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数枚の基板を上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の外部から内部にパージガスを供給可能な給気部材と、この給気部材からのパージガスを容器本体の正面方向に供給可能なパージユニットとを備えた基板収納容器であって、
パージユニットは、容器本体の底部後方の給気部材に連通されて容器本体の内部後方に位置し、給気部材からのパージガスを貯える中空のユニット本体と、このユニット本体の正面に設けられてパージガスを容器本体の正面方向に吹き出す複数の吹出口とを含み、
ユニット本体は、容器本体の内部後方に間隔をおき左右に並んで立設される複数のユニットボックスを備え、この複数のユニットボックスの上部に、容器本体の内部後方に対する固定用の突片が突出形成されるとともに、複数のユニットボックスの上下部間のうち、少なくとも上部間がパージガスの流通が可能なよう連通され、各ユニットボックスが中空の略箱形に形成されてその内部に吹出口を被覆する濾過用のフィルタが取り付けられており、ユニットボックスの正面が大きさの異なる左右複数の吹出領域に分割されるとともに、各吹出領域が略縦長に区画されてその上下方向に複数の吹出口が配列され、大型の吹出領域における吹出口と小型の吹出領域における吹出口とがユニットボックスの正面を介して隣接しており、各吹出領域における複数の吹出口のうち、少なくとも下方の吹出口の開口面積が残りの吹出口の開口面積よりも拡大されることを特徴とする基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
従来におけるFOUP等の基板収納容器は、
図7に部分的に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体1と、この容器本体1の開口した正面を閉鎖する蓋体とを備え、容器本体1の底板の前後部に、一対の給気バルブと排気バルブとがそれぞれ配設されており、これら給気バルブと排気バルブとにより、内部の空気がパージされるとともに、窒素ガス等の不活性ガス(
図7の矢印参照)に置換されることで、半導体ウェーハWの表面酸化や汚染、配線の腐食が防止される(特許文献1、2参照)。
【0003】
容器本体1は、その左右両側壁の内面に、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対の支持片が対設され、この左右一対の支持片が上下方向に所定の間隔で配列されており、上下方向に隣接する支持片と支持片との間に、半導体ウェーハWの周縁部に摺接する断面略V字形のスロットが凹み形成されている。この容器本体1は、パージ装置51の付設された蓋体開閉装置50に搭載され、この蓋体開閉装置50により、開口した正面に蓋体が嵌合されたり、正面から蓋体が取り外されたりする。
【0004】
一対の給気バルブと排気バルブとは、例えばパージ装置51から容器本体1の内部に不活性ガスを給気する一対の給気バルブが容器本体1の底板後方にそれぞれ嵌着され、容器本体1の内部から外部に空気を排気する一対の排気バルブが容器本体1の底板前方にそれぞれ嵌着されている。
【0005】
一対の給気バルブには、不活性ガスの流通制御に資する観点から、中空の円柱形等に形成されたタワーノズル60の下端部がそれぞれ装着される。この一対のタワーノズル60は、容器本体1の上下方向に指向し、周壁の上下方向に複数の吹出口が並んで穿孔されており、この複数の吹出口から吹き出る不活性ガスの流れが交差しないよう装着角度が調整される。
【0006】
このような基板収納容器は、容器本体1の正面が蓋体に閉鎖された状態でパージ装置51の付設された蓋体開閉装置50に搭載されると、パージ装置51から容器本体1の内部に不活性ガスが各給気バルブを経由して給気され、タワーノズル60の周壁上下方向に並んだ複数の吹出口から不活性ガスが半導体ウェーハWに接触しつつ蓋体方向に吹き出て容器本体1内に充満する。不活性ガスが容器本体1内に充満すると、容器本体1内の空気が外部に各排気バルブを経由してパージされ、容器本体1内の気体が空気から不活性ガスに置換されることとなる。
【0007】
ところで、基板収納容器は、一般的には容器本体1の正面が蓋体により閉鎖された状態でパージされるが、半導体ウェーハWの処理や加工中においても、容器本体1内の相対湿度を一定水準以下に均一に低下させたい場合には、容器本体1の正面から蓋体が蓋体開閉装置50により取り外されて半導体ウェーハWの出し入れが可能な状態、すなわち、容器本体1の正面が開口した状態でパージされることがある。
【0008】
この容器本体1の正面が開口した状態でパージされる場合には
図7に示すように、EFEM(Equipment Front End Module)52に併設された蓋体開閉装置50に基板収納容器の容器本体1が搭載され、この容器本体1の正面から蓋体が蓋体開閉装置50により取り外された後、EFEM52天井のファンフィルターユニット53から床方向に大量のクリーンエア(同図の矢印参照)がダウンフローされるとともに、パージ装置51から容器本体1内に不活性ガスが給気バルブを介して供給される。
【0009】
供給された不活性ガスは、タワーノズル60の下端部から上部に流動し、タワーノズル60の各吹出口から半導体ウェーハWに接触しつつ、容器本体1の開口した正面方向に吹き出ることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、優れた効果が期待できるものの、容器本体1の給気バルブにタワーノズル60の開口した下端部が単に装着されるに止まるので、容器本体1の半導体ウェーハW間における湿度にバラツキ、換言すれば、容器本体1の支持片間における湿度にバラツキが生じ、不具合が発生するおそれが考えられる。
【0012】
この点について詳しく説明すると、タワーノズル60の内部に給気された不活性ガスは、タワーノズル60の下方から上方に流動するにしたがい、タワーノズル60の上方側に徐々に蓄積されて圧力が高まり、下方の吹出口よりも上方の吹出口から強く大量に吹き出すので、タワーノズル60の上下方向で吹き出し量に差異が生じることとなる。
【0013】
タワーノズル60の高さに依存して各吹出口からの不活性ガスの吹き出し量に差異が生じると、複数枚の半導体ウェーハWを整列収納した容器本体1の支持片間における湿度がばらつき、半導体ウェーハWを支持する支持片によっては湿度が低下しないので、容器本体1内の相対湿度を均一に下げることができないおそれが考えられる。
【0014】
この問題は、
図7に示すように、容器本体1の正面を開口させて不活性ガスに置換する場合、容器本体1の正面下方付近で不活性ガスと大量にダウンフローされたクリーンエアとが部分的に衝突し、容器本体1内の空気が不活性ガスに置換されずに滞留(同図の折り返しの矢印参照)したり、半導体ウェーハWを支持する支持片間における湿度のバラツキが大きくなるので、より重大で深刻となる。
【0015】
本発明は上記に鑑みなされたもので、基板を支持する支持片間における湿度がばらつくのを低減することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の基板を上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の外部から内部にパージガスを供給可能な給気部材と、この給気部材からのパージガスを容器本体の正面方向に供給可能なパージユニットとを備えたものであって、
パージユニットは、容器本体の底部後方の給気部材に連通されて容器本体の内部後方に位置し、給気部材からのパージガスを貯える中空のユニット本体と、このユニット本体の正面に設けられてパージガスを容器本体の正面方向に吹き出す複数の吹出口とを含み、
ユニット本体は、容器本体の内部後方に間隔をおき左右に並んで立設される複数のユニットボックスを備え、この複数のユニットボックスの上部に、容器本体の内部後方に対する固定用の突片が突出形成されるとともに、複数のユニットボックスの上下部間のうち、少なくとも上部間がパージガスの流通が可能なよう連通され、各ユニットボックスが中空の略箱形に形成されてその内部に吹出口を被覆する濾過用のフィルタが取り付けられており、ユニットボックスの正面が大きさの異なる左右複数の吹出領域に分割されるとともに、各吹出領域が略縦長に区画されてその上下方向に複数の吹出口が配列され、大型の吹出領域における吹出口と小型の吹出領域における吹出口とがユニットボックスの正面を介して隣接しており、各吹出領域における複数の吹出口のうち、少なくとも下方の吹出口の開口面積が残りの吹出口の開口面積よりも拡大されることを特徴としている。
【0020】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも各種のウェーハや液晶ガラス等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良く、底部前方に、内部から外部に気体を排気可能な排気部材を設けることができる。この容器本体の内部両側には、基板を略水平に支持する一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片を上下方向に所定の間隔で配列することができる。
【0021】
パージガスには、少なくとも各種の不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガス)とドライエア等が含まれる。また、パージユニットの複数のユニットボックスは、上下部間又は上部間がパージガスの流通が可能なよう連通させることができる。パージユニットの複数の吹出口は、全てが同じ形でも良いが、一部が異なる形でも良い。また、パージユニットの正面上下方向に規則的に等間隔に配列されても良いし、不規則に配列されても良い。各吹出口は、円形、楕円形、矩形、多角形、溝形等とすることができる。
【0022】
本発明によれば、基板収納容器をパージする場合、蓋体開閉装置等に基板収納容器の容器本体を搭載し、容器本体の外部から内部にパージガスを供給する。すると、パージガスは、容器本体の給気部材からパージユニットのユニット本体内に流入し、このユニット本体正面の複数の吹出口から吹き出る。
【0023】
この際、複数の吹出口からのパージガスの吹き出し量に差異が生じるおそれに鑑み、一部の吹出口の開口面積が残りの吹出口の開口面積よりも広く拡大されているので、一部の吹出口におけるパージガスの流速が速くなったり、パージガスの増量が期待できる。ユニット本体の複数の吹出口からパージガスが吹き出すと、このパージガスが容器本体の内部後方から基板に接触しつつ複数の基板間を経由して容器本体の正面方向に流出し、容器本体内の気体が容器本体の外部にパージされ、パージガスに置換される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、パージユニットのユニット本体内におけるパージガスの圧力差等に応じ、複数の吹出口のうち、一部の吹出口の開口面積が残りの吹出口の開口面積よりも拡大されるので、基板を支持する支持片間における湿度がばらつくのを低減することができるという効果がある。
【0025】
また、パージガスが少なくとも略箱形のユニットボックスの上部から他のユニットボックスの上部に流通し、複数のユニットボックス内の圧力が略均一になるので、複数のユニットボックス正面からフィルタを介して吹き出る清浄なパージガスのバランスを略一様にすることができる。
【0026】
また、大型の吹出領域における吹出口と小型の吹出領域における吹出口との間にユニットボックスの正面が介在して強度を保つので、例え吹出口を幅広等に形成しても、パージユニットのユニット本体の強度を向上させ、損傷や変形を防止することができる。
【0027】
さらに、各吹出領域の下方に位置する吹出口の開口面積が上方や中央の吹出口の開口面積よりも大きいので、下方に位置する吹出口におけるパージガスを増量することが可能になる。したがって、圧力の不均衡により、パージガスが下方の吹出口よりも上方の吹出口から強く大量に吹き出る事態を抑制することが可能になる。この抑制作用により、パージユニットのユニット本体の上下方向でパージガスの吹き出し量に差異が生じるのを防ぐことができ、容器本体内の相対湿度を均一に下げることができないおそれを有効に排除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図7に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを上下方向に並べて整列収納可能な容器本体1と、この容器本体1の正面2を嵌合閉鎖する着脱自在の蓋体12と、容器本体1の正面2を閉鎖した蓋体12を施錠する施錠機構18と、容器本体1の外部から内部に不活性ガスを供給可能な一対の給気バルブ20と、容器本体1の内部から外部に空気を排気可能な一対の排気バルブ21と、各給気バルブ20からの不活性ガスを容器本体1の内部後方から正面2方向に供給可能なパージユニット30とを備え、このパージユニット30の複数の吹出口41をユニット本体31の正面37に配列し、複数の吹出口41のうち、少なくとも下方の吹出口41aを残りの吹出口41よりも拡大するようにしている。
【0030】
各半導体ウェーハWは、
図7に示すように、例えば表面に回路パターンを形成可能なφ300mmやφ450mmの薄く丸いシリコンウェーハからなり、図示しない専用のロボット装置のアームにより、容器本体1の内部に水平に収納支持されたり、取り出されたりする。
【0031】
容器本体1、蓋体12、施錠機構18、一対の給気バルブ20、一対の排気バルブ21、及びパージユニット30は、所定の樹脂を含有する成形材料により射出成形される。この成形材料に含まれる樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0032】
容器本体1は、
図1ないし
図3、
図7に示すように、正面2の開口したフロントオープンボックスタイプに成形され、底板3にインターフェイスとなる平坦なボトムプレート4が下方から螺着されており、このボトムプレート4がパージ装置51の付設された蓋体開閉装置50等に対する位置決め機能や固定機能を発揮する。
【0033】
容器本体1の左右両側壁の内面には、半導体ウェーハWの周縁部両側を略水平に支持する左右一対の支持片5が対設され、この一対の支持片5が容器本体1の上下方向に所定の間隔で配列されており、上下方向に隣接する支持片5と支持片5との間に、半導体ウェーハWの周縁部に摺接する断面略コ字形のスロット6が凹み形成される。各支持片5は、容器本体1の前後方向に指向する長板に形成され、表面の先端部に、半導体ウェーハWの前方への飛び出しを規制する飛び出し防止段差部が半導体ウェーハWの肉厚以上の厚さで一体形成される。
【0034】
容器本体1の底板3における後部両側付近には、容器本体1の背面壁7に近接する給気バルブ20用の取付孔がそれぞれ丸く貫通して穿孔され、底板3における前部両側付近には、排気バルブ21用の取付孔がそれぞれ丸く貫通して穿孔される。各取付孔は、半導体ウェーハWの円滑な出し入れに資するよう、半導体ウェーハWの底板3に対する投影領域以外の領域に穿孔される。また、容器本体1の天板8の中央部には、半導体製造工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ9が着脱自在に装着され、容器本体1の正面2内周における上下部の両側には、蓋体12用の施錠穴がそれぞれ穿孔される。
【0035】
容器本体1の両側壁の中央部には、握持操作用に機能するグリップ部10がそれぞれ着脱自在に装着される。また、容器本体1の両側壁の下部には、搬送用のサイドレール11がそれぞれ選択的に装着される。
【0036】
このような容器本体1は、蓋体開閉装置50に位置決めして搭載され、開口した正面2に蓋体12が圧入して嵌合された状態でパージされたり、EFEM52に併設された蓋体開閉装置50に位置決めして搭載され、蓋体開閉装置50により正面2からシール状態の蓋体12が取り外された後、正面2が開口した状態でパージされる。
【0037】
蓋体12は、
図1に示すように、容器本体1の開口した正面2内に圧入して嵌合される蓋本体13と、この蓋本体13の開口した表面を被覆する表面プレート16と、容器本体1の正面2内周と蓋本体13との間に介在される密封封止用のシールガスケット15とを備え、蓋本体13と表面プレート16との間に施錠用の施錠機構18が介在して設置される。
【0038】
蓋本体13は、基本的には底の浅い断面略皿形に形成され、内部に補強用や取付用のリブが複数配設されており、半導体ウェーハWに対向する対向面である裏面の中央部付近に、半導体ウェーハWとの接触を回避する凹部が形成されるとともに、この凹部には、半導体ウェーハWの周縁部前方を弾発的に保持するフロントリテーナ14が装着される。
【0039】
蓋本体13の裏面周縁部には枠形の嵌合溝が凹み形成され、この嵌合溝内に、容器本体1の正面2内周に圧接する弾性のシールガスケット15が密嵌されており、蓋本体13の周壁における上下部の両側には、容器本体1の施錠穴に対向する施錠機構18用の出没孔が貫通して穿孔される。
表面プレート16は、横長の正面矩形に形成され、補強用や取付用のリブ、螺子孔等が複数配設される。この表面プレート16の両側部には、施錠機構18用の操作孔17がそれぞれ穿孔される。
【0040】
施錠機構18は、
図1に示すように、蓋体12の蓋本体13における左右両側部にそれぞれ軸支され、外部から回転操作される左右一対の回転プレートと、各回転プレートの回転に伴い蓋体12の上下方向にスライドする複数の進退動プレートと、各進退動プレートのスライドに伴い蓋本体13の出没孔から出没して容器本体1の施錠穴に接離する複数の施錠爪とを備えて構成される。
【0041】
各給気バルブ20は、
図2に示すように、容器本体1の内部に臨む略円筒形の第一のハウジングと、この第一のハウジングの開口下部にOリングを介し着脱自在に嵌合されて容器本体1の外部に露出する略円筒形の第二のハウジングとを備え、これら第一、第二のハウジングが螺子を介して螺合されており、蓋体開閉装置50に容器本体1が位置決めして搭載される際、蓋体開閉装置50のパージ装置51に接続される。
【0042】
第一、第二のハウジングの外周面には平面略リング形の係止フランジがそれぞれ周設され、これらの係止フランジが容器本体1の取付孔の周縁部に上下方向からOリングを介して係止することにより、容器本体1の底板3に給気バルブ20が強固に嵌着固定されて容器本体1の背面壁7に近接する。
【0043】
第一のハウジングは、その開口した上端部が容器本体1内に露出し、内部に濾過用のフィルタが収納される。また、第二のハウジングは、第一のハウジングよりも低く短く形成され、下部に接続用の継手が必要に応じて一体形成されており、パージ装置51からの不活性ガスを第一のハウジング方向に供給する。
【0044】
各排気バルブ21は、
図1や
図2に示すように、容器本体1の底板3における前部両側付近の取付孔にOリングを介し嵌合される円筒形のケースを備え、このケースには、空気の流通を制御する逆止弁である開閉弁がコイルバネを介し上下動可能に内蔵されており、ケースの開口した上下部には、濾過用のフィルタがそれぞれ嵌合される。このような排気バルブ21は、蓋体開閉装置50に容器本体1が位置決めして搭載され、給気バルブ20が不活性ガスを給気すると、正面2が蓋体12により閉鎖された容器本体1内の空気を蓋体開閉装置50のパージ装置51に排気するよう機能する。
【0045】
パージユニット30は、
図3ないし
図6に示すように、容器本体1の一対の給気バルブ20に連通され、この給気バルブ20からの不活性ガスを貯留する中空のユニット本体31と、このユニット本体31の正面37に穿孔されて不活性ガスを容器本体1の正面2方向に吹き出す複数の吹出口41とを備え、容器本体1の内部後方、具体的には容器本体1の背面壁7寄りに位置する。
【0046】
ユニット本体31は、間隔をおいて左右に並ぶ左右一対のユニットボックス32を備え、この左右一対のユニットボックス32の上下両端部間に連結部材39が一体的にそれぞれ架設されるとともに、この上下一対の連結部材39の間が縦長の空間40に区画形成され、容器本体1の背面壁7内面寄りに立設されて背面壁7内面の中央部付近に対向しており、正面37が容器本体1の正面2方向に向けられる。
【0047】
各ユニットボックス32は、背面の開口した縦長の浅い箱形に形成され、開口した背面に、薄い縦長のカバープレート33が覆着されるとともに、このカバープレート33との間に、不活性ガス中の微粒子を除去する正面矩形で縦長のメンブレンフィルタ34が介在されており、必要に応じ、容器本体1の底板3後方、側壁後方、背面壁7、天板8後方に超音波溶着、螺子結合、凹凸結合等の方法で固定される。
【0048】
ユニットボックス32の内部は、メンブレンフィルタ34に対応する正面矩形に区画形成され、不活性ガス用のパージ空間として機能する。このユニットボックス32の内部の正面には、メンブレンフィルタ34が隙間なく固着されて複数の吹出口41を被覆する。また、ユニットボックス32の下部一側には、パージ空間に連通する円筒形の接続管35が一体形成され、この接続管35が下方の給気バルブ20に接続支持される。この接続管35は、必要に応じ、給気バルブ20に弾性のアタッチメントを介して接続される。
【0049】
ユニットボックス32の上部一側には、固定用の突片36が突出形成され、この突片36がユニットボックス32を容器本体1の内部後方に固定する際に活用される。また、ユニットボックス32の正面37は、大きさの異なる左右一対の吹出領域38に分割され、各吹出領域38が正面矩形の縦長に区画されており、この吹出領域38に複数の吹出口41が並べて穿孔される。一対の吹出領域38は、大型の吹出領域38が小型の吹出領域38よりも連結部材39寄りに位置し、大型の吹出領域38の面積が小型の吹出領域38の面積の2倍以上とされる。
【0050】
上下一対の連結部材39は、少なくとも上方の連結部材39が一対のユニットボックス32に連通する中空の配管に形成され、不活性ガスを一のユニットボックス32から隣接する他のユニットボックス32に流通させる。上方の連結部材39は、不活性ガスの流通により、一対のユニットボックス32内の圧力を均一にし、左右のユニットボックス32のパージ空間から吹き出る不活性ガスのバランスを一様にするよう機能する。
【0051】
複数の吹出口41は、複数の吹出領域38の上下方向に等間隔のマトリクスにそれぞれ並べて穿孔され、大型の吹出領域38における吹出口41と小型の吹出領域38における吹出口41とがユニットボックス32の正面37を介し横一列に隣接しており、大型の吹出領域38における吹出口41が小型の吹出領域38における吹出口41の約2倍程度の大きさ(長さ)に形成される。
【0052】
各吹出口41は、半導体ウェーハWの大きさに対応するよう、例えば横方向に伸びる溝孔に形成されてメンブレンフィルタ34に対向し、複数枚の半導体ウェーハW間に不活性ガスを吹き出すとともに、各半導体ウェーハWの表面に不活性ガスを接触させるよう機能する。また、マトリクスは、上下方向に並ぶ複数枚の半導体ウェーハWの枚数や配列ピッチに応じ、例えば4×25の行列とされる。
【0053】
ところで、複数の吹出口41は、ユニット本体31の不活性ガスの圧力差、及びダウンフローされたクリーンエアが容器本体1の正面2下方付近に大量に流入する点に配慮し、少なくとも下方の吹出口41aが残りの吹出口41よりも拡大形成される。すなわち、複数の吹出口41は、ユニット本体31内の上方側に不活性ガスが徐々に蓄積されて圧力が高まり、下方の吹出口41aよりも上方の吹出口41から不活性ガスが強く大量に吹き出すおそれが考えられるのに鑑み、少なくとも下方の吹出口41aの開口面積が残りの上方や中央の吹出口41の開口面積よりも拡大される。
【0054】
下方の吹出口41aは、最下方、好ましくは最下方から上方に向かう1〜3行、より好ましくは最下方から上方に向かう1〜5行の吹出口41aが該当する。この下方の吹出口41aの開口面積は、下方の吹出口41aからも不活性ガスが上方の吹出口41と同様に強く大量に吹き出るよう、上方や中央の吹出口41の開口面積よりも、1.1〜4.0倍、好ましくは1.2〜3.0倍、より好ましくは1.5〜2.5倍程度拡大される。下方の吹出口41aの開口面積は、一部が異なる面積で拡大されても良いし、最下方から上方に向かうにしたがい、徐々に拡大されても良い。
【0055】
また、全ての吹出口41の面積の合計を100%とした場合に、下方の最下段から3段目までの吹出口41aの合計面積が全体の15%以上、25%以下となるように設定することができる。このように下方の最下段のから3段目までの吹出口41aの合計面積が全体の15%以上であれば、下方の吹出口41aから噴出される不活性ガスの風量を大きくできるので、容器本体1の開口部である正面2の下方に流入しようとするダウンフローエアーの侵入を防止し、容器本体1内での気体の滞留部分をなくして不活性ガスに置換できるようになる。
【0056】
また、下方の最下段から3段目までの吹出口41aの面積が全体の25%以下であれば、下方の吹出口41a以外から噴出される不活性ガスの風量が極端に小さくなってしまい、容器本体1内に気体の滞留部分が生じることを防止し、不活性ガスの全体的な吹出バランスを好適に保ちながらパージすることができる。
【0057】
このように下方の最下段から3段目までの吹出口41aの合計面積が全体の15%以上、25%以下となるように設定することで、容器本体1内の相対湿度のばらつきをなくし、容器本体1に収納された各半導体ウェーハW上の相対湿度をパージ開始後短時間で一律に10%以下に低下させることができるようになる。
【0058】
上記構成において、容器本体1の正面2を蓋体12により閉鎖した状態でパージする場合には、蓋体開閉装置50に基板収納容器の容器本体1を位置決め搭載し、容器本体1の外部から内部に不活性ガスを供給すれば良い。すると、不活性ガスは、蓋体開閉装置50のパージ装置51から給気バルブ20を経由してユニット本体31の一対の接続管35にそれぞれ流入し、各接続管35、各ユニットボックス32のパージ空間、及び上方の連結部材39を順次流通して一対のユニットボックス32のパージ空間に充満し、一対のユニットボックス32のパージ空間の圧力を等しくした後、メンブレンフィルタ34を通過して各吹出口41から吹き出る。
【0059】
この際、不活性ガスは、各パージ空間の上部における圧力が増大するので、パージ空間の上部における流速がそれぞれ増速する。各吹出口41から不活性ガスが吹き出すと、この不活性ガスが半導体ウェーハWに接触しつつ複数枚の半導体ウェーハW間を経由して容器本体1の正面2方向に流出し、容器本体1内の空気が排気バルブ21により外部にパージされ、不活性ガスに置換される。この場合、容器本体1の内部は、蓋体12により閉鎖された閉鎖空間なので、外部から空気の流入がなく、円滑に不活性ガスに置換される。
【0060】
これに対し、容器本体1の正面2を開口させた状態でパージする場合には、EFEM52に併設された蓋体開閉装置50に容器本体1を位置決め搭載し、この容器本体1から蓋体12を蓋体開閉装置50により取り外した後、EFEM52天井のファンフィルターユニット53から床方向に大量のクリーンエアをダウンフローするとともに、容器本体1の外部から内部に不活性ガスを供給する。
【0061】
すると、不活性ガスは、蓋体開閉装置50のパージ装置51から給気バルブ20を経由してユニット本体31の一対の接続管35にそれぞれ流入し、各接続管35と各ユニットボックス32のパージ空間に順次流通した後、メンブレンフィルタ34を通過して各吹出口41から吹き出る。
【0062】
この際、不活性ガスは、各パージ空間の上部における圧力が増大するので、パージ空間の上部における流速が増速してしまい、下方の吹出口41aの開口面積が残りの吹出口41の開口面積と同じであれば、下方の吹出口41aにおける流量が減少することとなる。しかしながら、本実施形態では下方の吹出口41aの開口面積が残りの吹出口41の開口面積よりも拡大されているので、下方の吹出口41aにおける不活性ガスの流量減少を有効に防ぐことができる。
【0063】
各吹出口41から不活性ガスが吹き出すと、この不活性ガスが半導体ウェーハWに接触しつつ複数枚の半導体ウェーハW間を経由して容器本体1の開口した正面2方向に流出し、容器本体1内の空気が容器本体1の正面2から外部にパージされ、不活性ガスに置換される。
【0064】
上記構成によれば、下方に位置する吹出口41aの開口面積が上方や中央の吹出口41の開口面積よりも拡大されるので、下方に位置する吹出口41aにおける不活性ガスを増量することができる。したがって、圧力の不均衡により、不活性ガスが下方の吹出口41aよりも上方の吹出口41から強く大量に吹き出る事態を減少させることができる。
【0065】
これにより、ユニット本体31の上下方向で不活性ガスの吹き出し量に差異が生じるのを有効に抑制することができ、容器本体1の支持片5間における湿度がばらつき、容器本体1内の相対湿度を均一に下げることができないおそれを有効に排除することができる。特に、従来、問題となった最上段と最下段の半導体ウェーハWを支持する支持片5間における湿度のバラツキが大きくなるおそれをきわめて有効に排除することが可能となる。
【0066】
また、下方の吹出口41aからの不活性ガスの増量を図ることができるので、例え下方の吹出口41aからの不活性ガスが大量にダウンフローされたクリーンエアと部分的に衝突しても、容器本体1内の空気が不活性ガスに置換されずに滞留する事態を抑制することが可能になる。これらにより、ユニット本体31の上下方向で不活性ガスの吹き出し量に差異が生じるのを有効に抑制することができるので、半導体ウェーハWを収納した容器本体1の支持片5間における湿度がばらつき、容器本体1内の相対湿度を均一に下げることができないおそれを排除することができる。
【0067】
また、大型の吹出領域38における幅広の吹出口41と小型の吹出領域38における幅狭の吹出口41とが連続するのではなく、これら41・41の間にユニットボックス32の正面37が介在して強度を保つので、例え吹出口41を幅広に形成しても、パージユニット30のユニット本体31の強度向上が大いに期待できる。さらに、ユニット本体31が大きなスペースを占有しない薄形なので、容器本体1内に簡単に設置することが可能になる。
【0068】
なお、上記実施形態では給気バルブ20にパージユニット30のユニット本体31の接続管35を直接接続しても良いが、給気バルブ20に接続管35を継手部材を介して接続しても良い。また、パージユニット30のユニット本体31を合成樹脂により成形したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、ユニット本体31を通気性の多孔質パイプ製等としても良い。また、ユニット本体31を中空の円柱形や角柱形等としても良い。また、ユニットボックス32の開口した背面にカバープレート33を着脱自在に覆着しても良い。また、ユニット本体31の内部を複数のパージ空間に分割することもできる。
【0069】
また、各吹出口41の形を溝孔の他、円形、楕円形、多角形等とし、各吹出口41の周縁部にメンブレンフィルタ34を覆着することもできる。また、本実施形態では最下方から上方に向かう1〜5行の吹出口41aの開口面積を残りの吹出口41の開口面積よりも拡大したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、必要に応じ、マトリクスに配列された複数の吹出口41のうち、最下方から略中央付近まで(例えば、1〜12、1〜13行等)の複数の吹出口41aの開口面積を残りの吹出口41の開口面積よりも拡大することも可能である。この際、最下方から略中央付近に向かうにしたがい、複数の吹出口41aの開口面積を徐々に拡大することも可能である。
【0070】
また、パージユニット30のユニット本体31を略箱形に形成してその下部には給気バルブ20に接続するパージガス用の接続管35を設け、ユニット本体31の内部に、接続管35に連通するパージガス用の導通路を形成し、この導通路には、ユニット本体31の幅方向に伸びるパージガス用の導出路を接続するとともに、この導出路には、ユニット本体31の上下方向に伸びるパージガス用の分岐路を形成し、この分岐路を複数の吹出口41に対向させることが可能である。
【0071】
この場合、導通路と導出路とをL字形に組み合わせても良いが、T字形等に組み合わせても良い。また、導出路と分岐路とを正面略0字形のエンドレスに形成して複数の吹出口41に対向させ、不活性ガスを循環させながら吹出口41から吹き出すことも可能である。また、分岐路の幅を導出路側から閉じた末端部方向に向かうにしたがい徐々に狭くするとともに、分岐路の深さを導出路側から末端部方向に向かうにしたがい徐々に浅くしても良い。さらに、分岐路を複数本ではなく、単一にしてユニット本体31の左右幅方向に長い帯形に形成することもできる。