特許第6553505号(P6553505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553505複合材およびラミネート物品ならびにこれらを作製するための重合系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553505
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】複合材およびラミネート物品ならびにこれらを作製するための重合系
(51)【国際特許分類】
   C08L 31/06 20060101AFI20190722BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190722BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190722BHJP
   C08F 22/14 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
   C08L31/06
   C08K3/013
   C08F2/44 A
   !C08F22/14
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-503651(P2015-503651)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公表番号】特表2015-518503(P2015-518503A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】US2013034641
(87)【国際公開番号】WO2013149168
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】61/618,154
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513099186
【氏名又は名称】シラス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マロフスキー,バーナード・マイルス
(72)【発明者】
【氏名】マロフスキー,アダム・グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】エリソン,マシュー・マクブレイヤー
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−215344(JP,A)
【文献】 特開昭56−069258(JP,A)
【文献】 特開昭63−277218(JP,A)
【文献】 特開2005−113109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 31/00− 31/08
C08L 101/00−101/14
C08F 2/00− 2/60
C08K 3/00− 3/40
C08K 7/00− 7/28
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性材料;および
強化または充填材料;
を含み、
前記重合性材料が、
メチレンマロネートモノマー
を含む
ことを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
重合性材料が、多官能性のモノマーを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
強化または充填材料が、粒状物、ガラス、天然および合成繊維、織布および不織布、ナノ粒子、カーボン、クレイ、繊維ガラス、カーボン繊維、木質粒子、かんなくず、木粉、アルミナ、シリカ、砂、プラスチック、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アルミ箔張繊維ガラス、ベールマット、繊維ガラスマット、二軸クロス、剥離布、カーボン繊維クロス、ヒュームドシリカ、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、チタニアおよびアラミド繊維からなる群のうちの少なくとも1つの構成員を含む、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
さらに配合添加剤を含み、前記配合添加剤が、可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、充填材、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、体質顔料、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤、つや消し剤、平滑化剤、ワックス、傷防止添加剤、スクラッチ防止添加剤、および不活性樹脂のうちの一種以上を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
メチレンマロネートモノマーが、ジエチルメチレンマロネートモノマーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
メチレンマロネートモノマーが、多官能性モノマーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の複合材料を準備すること;
該複合材料に、重合活性剤を取り入れること;ならびに
該複合材料を成型すること
を含む、複合材物品の作製方法。
【請求項8】
重合活性剤が、塩基、塩基前駆体、塩基創出体または塩基向上体の形態である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合活性剤が、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4−ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;ならびにポリアクリル酸コポリマーの塩のうちの一種以上を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
メチレンマロネートモノマーが、ジエチルメチレンマロネートと1,6−ヘキサンジオールとのエステル交換生成物である、請求項1からのいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
33%から89%の重合性材料および11%から67%の強化または充填材料を含んでなる、請求項1から6および10のいずれか一項に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年3月30日に出願された、発明の名称が複合材およびラミネート物品ならびにこれらを作製するための重合系である米国特許仮出願第61/618,154号の優先権を主張する。この仮出願の内容は、引用によりこの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
引用による組み込み
本明細書において言及もしくは引用したすべての文献、および本明細書において言及した文献中に言及もしくは引用されたすべての文献、ならびに本明細書に記載した製品の製造業者の使用説明書、説明書、製品仕様書およびプロダクトシートまたは引用により本明細書に組み込まれる文献中に言及もしくは引用されたすべての文献は引用により本明細書に組み込まれ、本発明の実施において使用され得る。
【0003】
本明細書に開示した例示的実施形態は、複合材およびラミネート構造体ならびにこれらのための重合系に関するものである。特に重要なものは、重合性で二置換型の二重活性化ビニル組成物、例えば限定されないが、メチレンマロネート、メチレンβ−ケトエステル、メチレンβ−ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルなどの単官能性、二官能性または多官能性のモノマー、オリゴマーまたはポリマーある。
【背景技術】
【0004】
メチレンマロネートは、一般式(I):
【0005】
【化1】
(式中、RおよびR’は同じであっても異なっていてもよく、ほぼあらゆる置換基または側鎖を表すものであり得る。)
を有する化合物である。かかる化合物は1886年以降から知られており、このとき、ジエチルメチレンマロネートの形成が、W.H.Perkin,Jr.(Perkin,Ber.19,1053(1886))によって最初に示された。
【0006】
しかしながら、メチレンマロネートを生産するための初期の方法は、商業的に実現可能なモノマーを得る際の使用に支障があるという大きな欠点を有する。かかる欠点としては、合成時のモノマーの不要な重合、望ましくない副生成物の形成、生成物の分解、不充分なおよび/または低い収率、ならびに有効でないおよび/または機能性が不充分なモノマー生成物が挙げられる。これらの問題は、市販品および工業製品の生産における実用化に悪影響を及ぼしている。
【0007】
本出願の一部の共同発明者らは、最近、メチレンマロネートの合成の改善された方法に関する特許出願、即ち、第PCT/US11/056903号(実質的に不純物を含有していないメチレンマロネートの合成)および第PCT/US11/056926号(熱伝導剤の存在下での迅速回収を用いたメチレンマロネートの合成)を出願した。これらに示された合成手順により、これまででは得がたい高品質のメチレンマロネートおよび他の重合性組成物の改善された収率がもたらされる。
【0008】
該重合性組成物は、アニオン開始またはフリーラジカル開始による連鎖構築および/または架橋性重合に適しており、化学合成および新たな化学製品の配合のための非常に有益で大規模基盤の基礎が構築される可能性を有する。
【0009】
複合材は、一般的に、有意に異なる物理的または化学的特性を有する2種類以上の構成要素材料で作製された材料と定義され、該特性を組み合わせると、個々の構成要素とは異なる特性を有する材料が得られる。個々の構成要素は、完成品の複合材構造体において別個で相違したままである。
【0010】
典型的な複合材料の一例としては、建築用材、例えば、セメントおよびコンクリート、強化プラスチック、例えば、繊維強化ポリマー、金属複合材ならびにセラミック複合材が挙げられる。当該技術分野では、複合材料、例えば木材−プラスチック複合材の拡張および改善ならびにこの製造方法に関心がよせられている。用語「木材−プラスチック複合材」は、木材(任意の形態)と熱硬化系または熱可塑性プラスチックを含む任意の複合材をいう。かかる複合材は、材料が厳しいストレスまたは環境的課題にさらされる用途、または大型の木材部材が現実的でない用途のための金属または熱可塑性プラスチックの魅力的な代替品である。例えば、配向性ストランドボード(OSB)は、典型的には熱および圧力下で樹脂により薄い木片を一体に結合して製造される構造的用途の加工パネルであり、住居用および商用の建設における屋根、壁および床の被覆材に広く使用されている。Gaylordに対する米国特許第3,958,069号には、木材−プラスチック複合材および当該技術分野における多くの場合にみられる問題が論考されている。しかしながら、該特許に提案された解決策は、重合の誘導に加熱と加圧を含む。硬化に必要とされる熱が排除され、同時に硬化時間が加速される系により、明らかに経済的で方法の簡素化の有益性が得られ得よう。
【0011】
さらに、投入エネルギーの低減またはゼロ、非常に高速重合性の基盤がもたらされ、生きているほとんどの生物体と環境的、生物学的または代謝的に適合できるように設計され得、また、持続的な広範な資源原料、例えば、糖類、大気中のガス、廃ガスおよび合成ガスから全部または一部のいずれかが作製される新たな技術により、社会は大きな恩恵を被ることができよう。
【0012】
既知の複合材は、多くの用途に有用であるが、幾つかの欠点、例えば、製造上の課題、長い硬化時間、複雑な製作設備、高いエネルギーコスト、原材料に対する制限(例えば、耐熱性の強化材料)および許容され得ないレベルの毒性化学薬品への曝露を有する。さらに、当該技術分野において非常に所望されてはいるが、採算性はまだ充分に明らかになっていない。この結果、複合材は従来の材料よりも高価であり得、設計者は、複合材料によってもたらされる利点と他の低コスト代替品との間で選択を行わなければならない。
【0013】
従って、複合材およびラミネートの両方に対し、依然として当該技術分野において、上記の付随する困難または高いエネルギー必要量のない、所望の物理的性能がもたらされる材料の長い間の切実な必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際出願公開第PCT/US11/056903号
【特許文献2】国際出願公開第PCT/US11/056926号
【特許文献3】米国特許第3,958,069号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】W.H.Perkin,Jr.(Perkin,Ber.19,1053(1886))
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本明細書に開示した例示的実施形態は、新たな類型の商業的に実現可能な製品、特に、複合材およびラミネートバインダー、マトリックス、堆積系、構造体およびかかる構造体を含む物品を提供することにより、これらおよび他の必要性を満たすものである。例示的系は、硬化に実質的なエネルギーを必要としないオンデマンド式で高速で、100%またはほぼ100%固形分の低触媒の系をもたらすものである。さらに、例示的実施形態は、場合により架橋性の系を含む。本明細書に開示した実施形態により、これまで満たされていない明確な必要性に対処した環境的、生物学的および/または代謝的に適合できる系が提供される。
【0017】
本明細書に開示した例示的系により、塗布および硬化時のエネルギー使用の排除または大幅な削減、複雑な溶剤の取り扱いおよび回収設備(水を含む。)の排除、硬化の開始および/または加速に必要とされる設備の排除ならびに感熱基材が使用できる可能性がもたらされる。例えば、本明細書に開示した原理が用いられた部材(複合材またはラミネート)は、高熱、例えば100℃より高温などに耐え得る感熱材料に使用され得る。本明細書に開示した系により、ほぼ瞬間的硬化を有する複合多層ラミネートが得られ、堆積時間が劇的に低減され、例えば包装業界において急な依頼時にジャストインタイム供給の手配が可能となり得る。
【0018】
また、無数の複合材の型、例えば、繊維強化骨材または粒子強化および/またはラミナ強化複合材用のバインダー系を開示する。該バインダー系は100%固形分の反応性組成物として設計され得、これは、所望によりほぼ即時的に、即ち、強化材のぬれの後、接触すると、硬化に必要とされる投入エネルギーがほとんどまたは全くなしで硬化され得るものである。
【0019】
例示的系により、高い触媒負荷量ならびに複雑な混合システムおよび計量システムの必要性が排除される。最後に、かかる系により未結合の化学成分の浸出が劇的に低減され、より容易な活性化がもたらされる。
【0020】
例示的系により、関連基材の製造における使用のための材料の型の変更が可能となる。例えば、特定の熱可塑性プラスチックまたは装飾的部材は典型的な硬化サイクル(350°F以上で20分以上)に耐え得ず、周囲温度では事実上、典型的には165°Fから200°Fより上で加熱されると極めて重要な特性がすべて損なわれる任意の既知材料(例えば、高配向ポリエチレン繊維)が使用され得る。
【0021】
また、例示的系は、慣用的な構造用金属、セラミックおよび関連材料よりも良好な特性をもたらす高性能複合材を包含する。かかる複合材には、卓越した特性を得るためにポリマー、金属またはセラミックマトリックス中に連続的な配向繊維が使用され得る。例示的系により、高温硬化の必要なく非常に高い耐熱性がもたらされる。
【0022】
一態様において、本発明は、
ポリマー材料;および
強化または充填材料
を含み;
該ポリマー材料は、二重活性化ビニル化合物を含み、該二重活性化ビニル化合物がシアノアクリレートでない重合性組成物の重合生成物を含む、
複合材料を提供する。
【0023】
該複合材料の一実施形態では、二重活性化ビニル化合物が、メチレンマロネート、メチレンベータケトエステル、メチレンベータジケトンからなる群のうちの少なくとも1つの構成員を含む。
【0024】
該複合材料の一実施形態では、メチレンマロネートモノマーは、式:R−O−C(O)−C(=CH)−C(O)−O−Rで表され、式中、R、Rが独立して、C1−C15アルキル、C2−C15アルケニル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール−(C1−C15アルキル)、またはアルコキシ−(C1−15アルキル)であり、これらは各々、場合により、C1−C15アルキル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリール、C1−C15アルコキシ、C1−C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルオキシ、カルボキシ、エステルまたはスルホニルで置換されていてもよく;
または、RとRが、これらが結合している原子と一体となって5から7員の複素環式の環を形成しており、該環は、場合により、C1−C15アルキル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリール、C1−C15アルコキシ、C1−C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルオキシ、カルボキシ、エステルまたはスルホニルで置換されていてもよい。
【0025】
該複合材料の別の実施形態では、メチレンベータケトエステルモノマーは、構造:R−C(O)−C(=CH)−C(O)−O−Rで表され、式中、R、Rが独立して、C1−C15アルキル、C2−C15アルケニル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール−(C1−C15アルキル)、またはアルコキシ−(C1−15アルキル)であり、これらは各々、場合により、C1−C15アルキル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリール、C1−C15アルコキシ、C1−C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルオキシ、カルボキシ、またはエステルで置換されていてもよく;
または
とRが、これらが結合している原子と一体となって5から7員の複素環式の環を形成しており、該環は、場合により、C1−C15アルキル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリール、C1−C15アルコキシ、C1−C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルオキシ、カルボキシ、またはエステルで置換されていてもよい。
【0026】
該複合材料のさらに別の実施形態では、メチレンベータジケトンモノマーは、構造:R−C(O)−C(=CH)−C(O)−Rで表されるものであり、式中、RおよびRが独立して、C1−C15アルキル、C2−C15アルケニル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール−(C1−C15アルキル)、またはアルコキシ−(C1−15アルキル)であり、これらは各々、場合により、C1−C15アルキル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリール、C1−C15アルコキシ、C1−C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルオキシ、カルボキシ、またはエステルで置換されていてもよく;
または
とRが、これらが結合している原子と一体となって5から7員の複素環式の環を形成しており、該環は、場合により、C1−C15アルキル、ハロ−(C1−C15アルキル)、C3−C6シクロアルキル、ハロ−(C3−C6シクロアルキル)、ヘテロシクリル、ヘテロシクリル−(C1−C15アルキル)、アリール、アリール−(C1−C15アルキル)、ヘテロアリール、C1−C15アルコキシ、C1−C15アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシルオキシ、カルボキシ、またはエステルで置換されていてもよい。
【0027】
該複合材料のまた別の実施形態では、重合性組成物が多官能性のモノマーまたはオリゴマーを含む。特定の実施形態では、多官能性モノマーまたはオリゴマーが、構造:−W−C(O)−C(=CH)−C(O)−W−(式中、Wは−O−または直接結合を表す。)で表される少なくとも2種類の単位を含む。さらに他の実施形態では、多官能性モノマーまたはオリゴマーが二重活性化ビニル化合物とジオールまたはポリオールとのエステル交換生成物である。
【0028】
該複合材料の別の実施形態では、重合性組成物が、少なくとも1種類の多官能性モノマーまたはオリゴマーと少なくとも1種類の単官能性モノマーのブレンドを含む。他の実施形態では、多官能性モノマーまたはオリゴマーがブレンド中に、該ブレンドの重量基準で少なくとも2%、少なくとも5%および少なくとも10%から選択される量で存在している。
【0029】
該複合材料の別の実施形態では、強化または充填材料が、粒状物、ガラス、天然および合成繊維、織布および不織布、ナノ粒子、カーボン、クレイ、繊維ガラス、カーボン繊維、木質粒子、かんなくず、木粉、アルミナ、シリカ、砂、プラスチック、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アルミ箔張繊維ガラス、ベールマット、繊維ガラスマット、二軸クロス、剥離布(release fabric)、カーボン繊維クロス、ヒュームドシリカ、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、チタニアおよびアラミド繊維からなる群のうちの少なくとも1つの構成員を含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、本発明の複合材料を含む製造物品を提供する。特定の実施形態では、該物品が、自動車部材、建築部材、スポーツ用品部材、摩擦材業界の部材、高性能複合材部材、歯科部材、建築部材、家具部材、船舶部材、航空宇宙産業部材、風力タービン部材からなる群のうちの少なくとも1つの構成員である。他の実施形態では、製造物品は、さらに、100℃を超える加熱に耐え得るものではない少なくとも1種類の感熱材料を含む。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、
a)重合性組成物;
b)強化または充填材料;および
c)前記重合性組成物と強化材料を複合材料に成型するための手段
を含む、複合材料を調製するための系を提供する。
【0032】
特定の実施形態では、本発明による複合材料を調製するための系は、さらに重合活性剤を含んでいる。一部の実施形態では、重合活性剤が強化または充填材料中または該材料上に存在している。他の実施形態では、重合活性剤が、純粋な形態、希釈形態、逸散性または非逸散性の形態で存在している。さらに他の実施形態では、重合活性剤に、塩基、塩基前駆体、塩基創出体または塩基向上体が包含される。さらに他の実施形態では、重合活性剤が、有機材料、無機材料もしくは有機金属材料またはこの組合せから選択される。具体的な実施形態では、重合活性剤が、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4−ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩から選択される少なくとも1つの構成員である。
【0033】
特定の実施形態では、本発明による複合材料を調製するための系は、さらに、配合添加剤を含んでいる。特定の実施形態では、配合添加剤が、可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、充填材、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、体質顔料、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤、つや消し剤、平滑化剤、ワックス、傷防止添加剤、スクラッチ防止添加剤、不活性樹脂から選択される少なくとも1つの構成員である。
【0034】
別の態様において、本発明は、二重活性化ビニル化合物を含み、該二重活性化ビニル化合物がシアノアクリレートでないものとする重合性組成物の重合生成物を含むラミネート用接着剤を提供する。
【0035】
本発明によるラミネート用接着剤の特定の実施形態では、二重活性化ビニル化合物が、メチレンマロネート、メチレンベータケトエステル、メチレンベータジケトンからなる群のうちの少なくとも1つの構成員を含む。他の実施形態では、重合性組成物が多官能性のモノマーまたはオリゴマーを含む。さらに他の実施形態では、多官能性モノマーまたはオリゴマーが、構造:−W−C(O)−C(=CH)−C(O)−W−(式中、Wは−O−または直接結合を表す。)で表される少なくとも2種類の単位を含む。また他の実施形態では、重合性組成物が、少なくとも1種類の多官能性モノマーまたはオリゴマーと少なくとも1種類の単官能性モノマーのブレンドを含む。具体的な実施形態では、多官能性モノマーまたはオリゴマーがブレンド中に、該ブレンドの重量基準で少なくとも2%、少なくとも5%および少なくとも10%から選択される量で存在している。
【0036】
別の態様において、本発明は、
a)第1基材を準備すること;
b)前記第1基材に:
二重活性化ビニル化合物を含み、該二重活性化ビニル化合物がシアノアクリレートでない重合性組成物
を含むラミネート用接着剤を塗布すること;および
c)第2基材を前記第1基材に該ラミネート用接着剤の硬化によって接着させること
を含む、ラミネート材の作製方法を提供する。
【0037】
該ラミネート作製法の特定の実施形態では、該方法は、さらに、重合活性剤を前記第1または第2基材に塗布する工程を含む。
【0038】
一部の実施形態では、第1および第2基材が同じ材料のものであっても異なる材料のものであってもよく、独立して:植物系材料、プラスチック、カーボン系材料、金属およびガラス系材料からなる群より選択される。特定の実施形態では、第1および第2基材が同じ材料のものであっても異なる材料のものであってもよく、独立して:紙、オーク材、ダグラスファー、バルサ材、ポリフェニレンエーテル(PPE)プラスチック、ポリカーボネート(PC)、シリコン、ガラス、繊維ガラス、銀被覆銅、銅、スチール、ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、一軸延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートおよびアルミニウムからなる群より選択される。
【0039】
該ラミネート作製法の他の実施形態では、該方法は、さらに、塩基、塩基前駆体、塩基創出体または塩基向上体の形態の重合活性剤を重合性組成物中または一方の基材上に準備することを含む。一部の実施形態では、重合活性剤が、有機材料、無機材料もしくは有機金属材料またはこの組合せから選択される。他の実施形態では、重合活性剤が、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4−ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩から選択される少なくとも1つの構成員である。
【0040】
該ラミネート作製法の他の実施形態では、該方法は、さらに、配合添加剤を準備することを含む。特定の実施形態では、配合添加剤が、可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、充填材、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、体質顔料、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤、つや消し剤、平滑化剤、ワックス、傷防止添加剤、スクラッチ防止添加剤、不活性樹脂から選択される少なくとも1つの構成員である。
【0041】
別の態様において、本発明は、本発明の方法によって作製されるラミネート製造物品を提供する。特定の実施形態では、ラミネート物品は柔軟性ラミネート物品である。他の実施形態では、柔軟性ラミネートがフィルムまたは包装材料である。
【0042】
さらに他の実施形態では、ラミネート製造物品が、さらに少なくとも1種類の感熱材料を含む。
【0043】
別の態様において、本発明は、
a)二重活性化ビニル化合物を含み、該二重活性化ビニル化合物がシアノアクリレートでない重合性組成物を準備すること;
b)強化または充填材料を準備すること;および
c)該重合性組成物中に担持させた、または該強化材料上に担持させた重合活性剤を準備すること;ならびに
d)該重合性組成物と該強化材料を成型すること
を含む、複合材物品の作製方法を提供する。
【0044】
該複合材の作製方法の特定の実施形態では、d)が100℃未満の温度条件下で行われる。他の実施形態では、d)が周囲温度で行われる。
【0045】
該複合材の作製方法の他の実施形態では、重合活性剤が塩基、塩基前駆体、塩基創出体または塩基向上体の形態である。特定の実施形態では、重合活性剤が、有機材料、無機材料もしくは有機金属材料またはこの組合せから選択される。さらに他の実施形態では、重合活性剤が、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4−ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;酸含有ポリマーの塩;ポリアクリル酸コポリマーの塩から選択される少なくとも1つの構成員である。
【0046】
該複合材の作製方法の他の実施形態では、さらに、配合添加剤を添加することが含まれる。特定の実施形態では、配合添加剤が、可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、充填材、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、体質顔料、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤、つや消し剤、平滑化剤、ワックス、傷防止添加剤、スクラッチ防止添加剤、不活性樹脂から選択される少なくとも1つの構成員である。
【0047】
特定の実施形態では、本発明の製造物品は柔軟性複合材物品を含む。他の実施形態では、柔軟性複合材物品がフィルム、包装部材、建設材である。
【0048】
特定の実施形態では、本発明の製造物品は剛性の複合材物品を含む。他の実施形態では、剛性複合材が構造物物品、家具物品、航空宇宙産業部材、建築用物品、建設用物品である。
【0049】
本発明の目的および利点は、以下の説明に示しており、該説明から自明である。本発明のさらなる利点は、記載の説明およびこの特許請求の範囲に具体的に示した方法および系によって、ならびに添付の図面から認識および達成されよう。
【0050】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細説明に開示されているか、または該詳細説明から自明であり、これに包含されている。
【発明を実施するための形態】
【0051】
定義
特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、当業者に、本発明において用いている用語の多くの一般的な定義を示すものである:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版 1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編,1988);The Glossary of Genetics,第5版,R.Rieger et al.(編),Springer Verlag(1991);およびHale &Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で用いる場合、以下の用語は、特に指定のない限り、以下のものに帰属する意味を有する。
【0052】
本明細書で用いる場合、用語「メチレンマロネート」は、式−O−C(O)−C(=CH)−C(O)−O−のコアを有する化合物をいう。ジエチルメチレンマロネートモノマーはエチル基を2つ有するメチレンマロネートであり、本明細書においてDEMMと表示する。ジメチルメチレンマロネートモノマーはメチル末端基を2つ有するものであり、本明細書においてDMMMまたはD3Mと表示する。
【0053】
本明細書で用いる場合、用語「メチレンベータ−ケトエステル」または「メチレンβ−ケトエステル」は、式−C(O)−C(=CH)−C(O)O−のコアを有する化合物をいう。
【0054】
本明細書で用いる場合、用語「メチレンベータ−ジケトン」または「メチレンβ−ジケトン」は、式−C(O)−C(=CH)−C(O)−のコアを有する化合物をいう。
【0055】
本明細書で用いる場合、用語「重合性組成物」は、鎖伸長、架橋または両方によって重合可能な分子を含むモノマー型、オリゴマー型またはポリマー型の組成物または混合物をいう。
【0056】
本明細書で用いる場合、用語「単官能性」は、付加モノマー(例えば、メチレンマロネート)が付加重合性基を1つだけ有していることをいう。
【0057】
本明細書で用いる場合、用語「二官能性」は、付加重合性官能部を含有しているモノマー、オリゴマー、樹脂またはポリマーが、かかる付加重合性基を2つ(例えば、2つのメチレンマロネート基)有しており、官能部の架橋が可能であることをいう。
【0058】
本明細書で用いる場合、用語「多官能性」は、付加重合性官能部を含有しているモノマー、オリゴマー、樹脂またはポリマーが、かかる付加重合性基を3つ以上(例えば、メチレンマロネート基を3つ以上)有していることをいう。従って、「二官能性」は「多官能性」の具体例の1つである。
【0059】
本明細書で用いる場合、用語「活性化剤前駆体」は、その重合開始能は限定的であるが、本明細書に開示した活性化剤に直接または間接的に変換され得る任意の薬剤をいう。
【0060】
本明細書で用いる場合、用語「係合を不活化する」とは、活性化剤が重合性組成物の重合を「活性化する」または「開始する」のを不能にすることを意味する。係合の不活化は、任意の適した手段によって、例えば、活性化剤の重合性組成物との物理的分離によって、または活性化剤を、前駆体形態が活性化剤に変換されるまで(例えば、有効量の紫外線の照射または放射の施与により)重合の活性化が不能である前駆体の形態で準備することにより行われ得る。
【0061】
本明細書で用いる場合、用語「重合系」または「配合系」は、重合性組成物と適した活性化剤を、他の配合添加剤とともに、またはなしで合わせたものをいう。
【0062】
本明細書で用いる場合、用語「配合添加剤」は、この物理的または化学的特性を向上させるためおよび所望の結果を得るために配合系に含められる添加剤をいう。かかる配合添加剤としては、限定されないが、染料、顔料、靱性付与剤、耐衝撃性改良剤、レオロジー調整剤、可塑化剤、チキソトロープ剤、天然または合成ゴム、充填剤、強化剤、増粘剤、乳濁剤、禁止剤、蛍光 マーカー、熱分解低減剤、耐熱性付与剤、界面活性剤、湿潤剤、安定剤が挙げられる。
【0063】
本明細書で用いる場合、用語「複合材」は、マトリックス成分を、典型的には(常にではないが)より強力でより堅い強化性構成要素によって強化した材料をいう。一部の場合では、複合材に、強化性構成要素の代わりに、または該構成要素に加えて充填材が含まれ得る。強化性構成要素は、一部の場合では繊維質であり得るが、該用語はこれに限定されない。強化性構成要素は、所望により特別な形態または形状を有するものであってもよい。強化性構成要素は、特定のパターンに配向させてもよく、該成分のいずれかの軸に沿ってランダムに配向させてもよく、所望の任意のサイズであり得る。例えば、用語「FRP」または「繊維強化プラスチック」は、通常、ガラス繊維を含有している熱硬化性ポリエステルマトリックスを示す。上記のように、OSBは、ポリマー樹脂で結合させた木材破片ベースの複合材である。アスファルトの車道は、粒状岩石とビチューメンマトリックスの複合材である。固体面のカウンタートップは、鉱物強化体と樹脂マトリックスの複合材であり得る。従って、用語「複合材」は、本明細書で用いる場合、これらおよび他の用途を包含するよう広く考慮されたい。
【0064】
本明細書で用いる場合、用語「二重活性化ビニル化合物」は、−EWG−C(=CH)−EWG−で表される二重活性化ビニル基を有する少なくとも1つの基を有する分子をいい;式中、EWGはシアノアクリレート以外の電子求引基である。
【0065】
本明細書で用いる場合、用語「塩基」は、アニオン重合を開始させ得る少なくとも1つの電気陰性基を有する成分をいう。
【0066】
本明細書で用いる場合、用語「塩基前駆体」は、なんらかの様式で、例えば、加熱、化学反応またはUV活性化によって作用を受けると塩基に変換され得る成分をいう。
【0067】
本明細書で用いる場合、用語「塩基変換体」は、活性塩基を生成させるため、または別の成分を活性塩基に変換させるために、なんらかの様式で作用し得る薬剤をいう。
【0068】
本明細書で用いる場合、用語「塩基向上体」は、薬剤の塩基性を改善または向上させるためになんらかの様式で作用し得る薬剤をいう。
【0069】
特に特定していない限り、パーセンテージ(%)はすべて「重量パーセント」である。以下に示す複合材およびラミネートの実施例について、重量パーセンテージは、特に記載のない限り、「前硬化」の重量を表す。
【0070】
熱分析
TGA熱分析では、実験はすべてTA Q50 TGAを用いて行った。TGAは熱重量分析を表す。これは、非常に高感度の計器であり、サンプルが加熱されるにつれてどれだけ重量が変化するかを測定する。この実験では、サンプルを600℃まで10℃/分の速度で500℃まで窒素中で加熱した。より多くの材料が燃焼するのを補助するため、500℃で計器を空気に切り替えた。次いで、収集されたデータを温度に対して重量パーセントとしてプロットし、5%質量減損時の温度を記録した。この温度を分解温度(Td5%)とみなす。
【0071】
ポリマーサンプルに関するDSC熱分析では、実験はすべて、RCS 90冷却システムを備えたTA Q2000 DSCを用いて行った。DSCは示差走査熱量測定法を表し、参照およびサンプルの温度を同じ速度で上昇させるのに要する熱量を測定する。次いで、サンプルと参照の熱フローを比較すると、放出された、または必要とされたエネルギーによるサンプルの相変化が観察される。この実験では、サンプルを10℃/分でこの分解温度(TGAによる測定時)の直前まで加熱し、次いで、20℃/分で−60℃まで冷却し、次いで、この分解温度の直前まで再度加熱した。最初の加熱は材料の熱履歴を消去するために必要とされ、2回目の加熱は、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)および融点(Tm)などの熱特性を測定するために使用されるものである。
【0072】
例示的実施形態
本明細書に開示した例示的実施形態は、重合性の単官能性および/または多官能性のモノマー、オリゴマーおよびポリマーを主体とする組成物、物品、および新規な複合材およびラミネートの作製方法、ならびに本明細書に示した他の組成物、ならびにこの用途に関するものである。
【0073】
本明細書に開示した例示的実施形態により、重合性組成物(例えば、モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマー)の使用における新規で非自明性の改善を提供する。特に重要なものは、限定されないが、二重活性化ビニル化合物、例えば、メチレンマロネート、メチレンβ−ケトエステル、メチレンβ−ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のいずれかなどの組成物である。
【0074】
例示的実施形態により、活性化機構または開始機構を有する重合性組成物を含む重合系を提供する。例えば、重合性組成物は、塩基性薬剤によるアニオン開始型のものであり得る。他の例示的実施形態の重合は、フリーラジカル機構によって開始され得るものである。他の実施形態では、活性化剤は、充填剤基材に内在するものであってもよく、添加されるものであってもよい。
【0075】
種々の活性化方法(既に塩基性の表面を含む。)が強化材料または充填材に対して使用され得る。他の活性化方法としては、重合を助長するためのエネルギー曝露による触媒量の封入型塩基、塩基前駆体または塩基創出体の放出が挙げられる。他の想定される活性化方法としては、物理的分配法による(例えば、シリンジ、噴霧機構などによる)塩基、塩基前駆体または塩基創出体の適用が挙げられる。
【0076】
本明細書に開示した重合性組成物の特定のものはアニオン重合するものであり、従って、空気または大気中の湿気の存在によって有意に影響されない。それどころか、塩基と接触すると急速に硬化し得る。塩基は、最初は、なんらかの様式で活性塩基形態に変換される塩基前駆体または塩基創出体として供給してもよい。例示的な実施形態では、触媒量しか必要とされず、該材料は元のままであり得、必要に応じて予備塗布または塗布され得る。
【0077】
本明細書に開示した例示的実施形態により、複合材物品のポリマーマトリックス材料を形成するのに有用な重合系を提供する。
【0078】
本明細書に開示した例示的実施形態により、ポリマーマトリックス中に分散されたさまざまな強化材料を含む複合材物品を提供する。
【0079】
本明細書に開示した例示的実施形態により、ラミネート構造体の層同士を接着するのに有用な重合系を提供する。
【0080】
本明細書に開示した例示的実施形態により、ラミネート構造体の層を形成するのに有用な重合系を提供する。
【0081】
本明細書に開示した例示的実施形態は、接着剤を含み、二重活性化ビニル化合物、例えば、メチレンマロネート、メチレンベータ−ケトエステル、メチレンベータ−ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーのいずれかから形成されるポリマー材料を含む複合材料を含む。
【0082】
本明細書に開示した例示的実施形態は、メチレンマロネート、メチレンベータ−ケトエステル、メチレンベータ−ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーのいずれかから形成されるポリマー材料を含むラミネート構造体を包含している。
【0083】
本明細書に開示した例示的実施形態により、低投入エネルギーまたは投入エネルギーゼロの非常に高速重合性の付加および/または架橋重合体の基盤の実践への商業的削減のための手段を提供する。
【0084】
本明細書に開示した例示的実施形態により、広範囲にわたる一連の特性を有するポリマー基盤および重合系を提供する。
【0085】
本明細書に開示した例示的実施形態により、架橋性の系を提供する。
【0086】
本明細書に開示した例示的実施形態により、全部または一部のいずれかが、持続的な広範な資源原料、例えば、糖類、大気中のガス、廃ガスおよび合成ガスで作製される重合系を提供する。
【0087】
本明細書に開示した例示的実施形態により、無数の複合材の型、例えば、繊維強化骨材または粒子強化および/またはラミナ強化複合材用のバインダー系を提供する。
【0088】
本明細書に開示した例示的実施形態は、強化材料のぬれの後、接触すると、所望によりほぼ即時的に硬化し得る100%固形分の反応性組成物として塗布され得る。
【0089】
特定の例示的実施形態は、投入エネルギーなし、または低投入エネルギーで硬化し得る。
【0090】
本明細書に開示した例示的実施形態により、系の複雑で厳密な混合および計量システムが必要とされる縮合重合系または付加重合系の二部構成の必要性が排除される。さらに、かかる系により、事前の系の充分な硬化に必要な熱を供給するための精巧な炉の必要性が排除される。なおさらには、かかる系により、溶剤の蒸発を制御する必要性が排除される。
【0091】
本明細書に開示した例示的実施形態では、必要とされる触媒は約2重量%未満、またはより好ましくは約1重量%未満の触媒であり、未結合の化学成分の浸出が劇的に低減される。
【0092】
本明細書に開示した例示的実施形態により、化学量論的比率での実質的な混合の必要のない、より容易な活性化を提供する。
【0093】
本明細書に開示した例示的実施形態により、これ以外ではこれまでの既知の系での典型的な高熱/高圧硬化方法には耐えられないであろう材料の使用が可能な低温硬化を提供する。
【0094】
本明細書に開示した例示的実施形態は、高温硬化の必要がない高い耐熱性をもたらす系を対象とするものである。
【0095】
本明細書に開示した例示的実施形態は、特別な貯蔵(例えば、冷蔵)または取り扱いプロトコルを必要としない。
【0096】
本明細書に開示した例示的材料は、広範な環境で硬化し得るものである。
【0097】
本明細書に開示した例示的実施形態は、広範にわたる物性を示すように設計され得る。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、概念実証として示しており、本質的に例示であり、本明細書に開示した発明の限定を意図するものではない。
【0099】
複合材
種々の概念構想実証を複合材の分野で試験した。例示的実施形態を以下に示す。
【0100】
繊維ガラス複合材
試験の際に使用した繊維ガラス材は2.5オンスの繊維ガラスクロスとした。最終複合材生成物がこの繊維ガラスクロス材の複合材マットになることを意図した。
【0101】
繊維ガラスクロスをまず切断し、2インチ×2インチのサイズの正方形に準備した。これらの層を、保持(lay−up)および結合の準備のために個々に研究室の作業台の上に並べた。接着剤結合に使用した開始剤は、3重量%の1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)を含有するアセトン溶液とした。この開始剤は例示にすぎず、他のアニオン開始剤およびフリーラジカル開始剤が本発明の実施において使用され得る。この例示的実施形態では、重合性組成物をジエチルメチレンマロネート(DEMM)(約99%純粋)にした。この重合性組成物は例示にすぎず、他のメチレンマロネートおよび化学的に関連した成分が、本発明の実施において同様に使用され得る。
【0102】
方法論:
3mL容スポイトを使用し、繊維ガラスシートの半分を開始剤溶液で飽和させ、繊維ガラスシートの残りの半分をDEMMで飽和させた。次いで、この繊維ガラスマット複合材を、繊維ガラス材の個々の正方形を積層することにより準備した。積層の順序は系が交互に含まれるようにし、この場合、繊維ガラス材のサンドイッチ構造を、開始剤で飽和させた繊維ガラスの層、続いてDEMMで飽和させた層、この次に続いて開始剤で飽和させた層、・・・のようにして構成した。例示的な一実施形態では、合計8枚の繊維ガラスシートを使用した。すべての層を所定の位置に配置した後、ゴムローラーを用いて複合材サンドイッチを圧縮した。
【0103】
結果および観察結果:
硬化方法中、複合材生成物から少量の発熱が示された。硬化速度は非常に急速であり、取り扱いが可能な固形の複合材構造体がおおよそ2分以内に作製された。初期硬化後、サンプルを24時間状態調節し、剛性の繊維ガラス複合材構造体を得た。この複合材構造体は研究室の作業台で、加熱または相当な量の加圧なしで形成されたことに注目されたい。繊維ガラス層またはガラス繊維の一部または全部において活性化表面をもたらす択一的な方法も示され得る。例えば、繊維ガラスを、別個の操作にて開始剤または開始剤前駆体とともにサイジングまたは別の方法で前処理し、該重合性物と接触させて「オンデマンド式」重合を可能にすることもできる。このおよび他の例示的実施形態では、対象となるさらなる例示的開始剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ソルビン酸カリウム、酢酸ナトリウムおよびターシャリーブチルアンモニウムフルオリドが挙げられる。
【0104】
カーボン繊維複合材
カーボン繊維複合材を、繊維ガラス複合材に関して上記に示したものと同様の様式で作製した。試験の際に使用したカーボン繊維材は織布のカーボン繊維クロスとした。最終複合材生成物がこのカーボン繊維クロス材の複合材マットになることを意図した。
【0105】
方法論:
カーボン繊維クロスをまず切断し、2インチ×2インチのサイズの正方形に準備した。これらの層を、結合の準備のために個々に研究室の作業台の上に並べた。接着剤結合に使用した開始剤は、3重量%の1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)を含有するアセトン溶液とした。複合材の作製に使用した重合性組成物は99%純粋なジエチルメチレンマロネート(DEMM)とした。
【0106】
3mL容スポイトを使用し、カーボン繊維シートの半分を開始剤溶液で飽和させ、カーボン繊維シートの残りの半分をDEMMで飽和させた。次いで、このカーボン繊維マット複合材を、カーボン繊維材の個々の正方形を積層することにより準備した。積層の順序は系が交互に含まれるようにし、この場合、カーボン繊維材のサンドイッチを、開始剤で飽和させたカーボン繊維の層、続いてDEMMで飽和させた層、この次に続いて開始剤で飽和させた層、・・・のようにして構成した。合計8枚の正方形を一体に積層した。すべての層を所定の位置に配置した後、ゴムローラーを用いて複合材サンドイッチを圧縮した。
【0107】
結果および観察結果:
硬化方法中、複合材生成物から少量の発熱が示された。硬化速度は非常に急速であり、取り扱いが可能な複合材構造体がおおよそ2分以内に作製された。初期硬化後、サンプルを24時間状態調節し、剛性のカーボン繊維複合材を得た。
【0108】
木質複合材
木質複合材物品を、以下の方法論に従って作製した。最終複合材生成物が、ポリマーマトリックス中に担持された木質粒子を有する3次元複合材構造体になることを意図した。木質複合材に使用した材料は、おがくずよりもわずかに大きい粘稠度を有する流動性の顆粒状木製材とした。
【0109】
方法論:
木材チップを、3重量%のDBUを含有するアセトン溶液を入れたバイアルに、該材料が開始剤溶液で一様に飽和され得るように入れた。次いで、この木材チップをアルミニウム秤量皿に入れ、一様な層が形成されるように広げた。3mL容スポイトを使用し、次いでDEMMを、木材チップが皿の中で充分に飽和されるように試みながら木材チップに添加した。
【0110】
結果および観察結果:
DEMMをアルミニウム皿に添加すると、プライマーにより非常に急速な反応が開始され、発煙および強い発熱が生じた。硬化は非常に急速に起こり、得られる生成物は2分以内に取り扱いが可能となる。初期硬化後、サンプルを24時間状態調節し、剛性の木質粒状複合材を得た。
【0111】
酸化アルミニウム複合材:
純粋な酸化アルミニウムをDEMMと組み合わせて使用し、複合材料を形成した。
【0112】
方法論:
粉末形態の酸化アルミニウムをアルミニウム秤量皿に入れ、均一な層が形成されるように広げた。次いで、3mL容スポイトを使用し、DEMMを粉末材料が飽和されるように試みながらアルミニウム皿に添加した。
【0113】
結果および観察結果:
酸化アルミニウム/DEMMは、プライマーまたは開始剤の添加の使用は全くなしで硬化し、充分に硬化した複合材が15分以内に得られ、固形で剛性で耐衝撃性の白色ディスクが得られた。
【0114】
複合材構造体に関するこの概念実証試験により、DEMMおよび他の化学的に関連した化合物は、複合材構造体におけるポリマーマトリックスの形成に適していることが示される。適した配合添加剤が、所望の仕様に合うように複合材構造体の物性を個別調整するために使用され得る。同様の結果が他のメチレンマロネート、メチレンベータ−ケトエステル、メチレンベータ−ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニル(単官能性、二官能性または多官能性のいずれか)でもみられることが想定される。
【0115】
さらなる複合材の例を以下に示す。一部の場合では、多官能性モノマーとDEMMのブレンドを重合性組成物として使用した。多官能性モノマー(二官能性モノマーなど)および重合性組成物は、発明の名称が多官能性モノマー、多官能性モノマーの作製方法、重合性組成物およびこれにより形成される製品である同時係属の特許出願第PCT/US12/60830号(この全体が本明細書に組み込まれる。)に開示している。例示的な一実施形態において、多官能性モノマーは、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)と1,6−ヘキサンジオール(HD):
【0116】
【化2】
のエステル交換によって得られるものであり、本明細書では「多官能性(DEMM/HD)生成物」と称する。
【0117】
以下の実施例に記載している多官能性(DEMM/HD)生成物は例示の目的で示しているにすぎず、限定を意図するものでない。同時係属の特許出願に開示した他の多官能性メチレンモノマーも、本明細書に開示した原理に従う組成物を形成するために使用され得ることが予測される。
【0118】
例示的重合性組成物は、およそ85重量%のDEMM、およそ10重量%の多官能性(DEMM/HD)生成物およびおよそ5重量%の他の(例えば、マロン酸ジエチル(DEM))を含むものであり、本明細書では「多官能性ブレンド」と称する。
【0119】
さらなる安定剤:KK030.136.FM1を用いたアルミナ/多官能性複合材
この実験の目的は、およそ60重量%のアルミナ(前硬化重量)を用いた多官能性ブレンド(500ppmのMSAで過剰安定化)の重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0120】
出発材料は、多官能性ブレンド;10000ppmのメタンスルホン酸(MSA)含有DEMM(安定剤として);アルミナ(Admatechs高純度アルミナ,99.9+%,サイズ=0.7um,比表面積=6.0m2/g,表面pH=5.3,製品番号AO−802(ロット番号PWG112)(表1に示した量で供給)とした。
【0121】
手順:
【0122】
【表1】
【0123】
多官能性ブレンドと10000ppmのMSA含有DEMMストック溶液を100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内で合わせ、1インチ分散ブレードを備えたオーバーヘッド機械的撹拌器で250RPMにて混合した。次に、粘度が上昇し始めたら撹拌速度を増大しながら、アルミナ粉末を10分間かけてゆっくり添加した。2500RPMの剪断速度で28分間の混合後、溶液がわずかに発熱し始め、混合物をアルミニウム秤量パンに移し、硬化させた。
【0124】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:293℃;空気中Td5%:261℃;Tg:14℃。
【0125】
アルミナ/シリカ/多官能性複合材:KK030.137.FM1
この実験の目的は、およそ40重量%のアルミナ、20重量%のシリカ(前硬化重量)を使用し、さらなる安定剤の使用はなしの多官能性ブレンドの重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0126】
出発材料は、多官能性ブレンド;シリカ(Admatechsメタクリル表面官能化シリカ,99.0+%,サイズ=10nm,比表面積=300m2/g,表面pH=5.0から7.0,製品番号YA010C−SM1(ロット番号VWL170−124));アルミナ(Admatechs高純度アルミナ,99.9+%,サイズ=0.7um,比表面積=6.0m2/g,表面pH=5.3,製品番号AO−802(ロット番号PWG112))(表2に示した量)とした。
【0127】
手順:
【0128】
【表2】
【0129】
多官能性ブレンドを100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内に計り入れた。1インチ分散ブレードを備えたIKA RW−20混合機を250RPMで用いてモノマーを混合した。ゆっくりと、シリカを低剪断(350RPM)下で添加した。約15分後、シリカはすべて組み込まれ、溶液は安定であるように思われた。次に、粘度が上昇し始めたら撹拌速度を増大しながらアルミナ粉末を1時間かけてゆっくり添加した。均一になったら、混合物をアルミニウム秤量パンに移し、硬化させた。
【0130】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:265℃;261℃;Tg:3.7℃。
【0131】
おがくず/多官能性ブレンド複合材:KK030.138.FM1
この実験の目的は、およそ60%の多官能性ブレンドと40%のおがくずの重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0132】
出発材料は、多官能性ブレンド;おがくず(ソフトメープル、ホワイトオークおよび桜の混合,pH=5.7);1%の安息香酸カリウム含有エタノール、活性剤;離型剤(Eagle One製のSuperior Nanowax(水、カルナバワックス、エチレングリコール製))(表3に示した量)とした。
【0133】
手順:
【0134】
【表3】
【0135】
多官能性ブレンドを100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内に計り入れた。1インチ分散ブレードを備えたIKA RW−20混合機を250RPMで用いてモノマーを混合した。ゆっくりと、おがくずを低剪断(350RPM)下で、ペースト粘稠度に達するまで添加した。機械的撹拌器を外し、残りのおがくずを手動でブレンドした。次に、安息香酸カリウム溶液を滴下し、軽度の発熱が検出されるまで手動でブレンドした。混合物を、離型剤をプレコートしたアルミニウムホイル片に移し、手動プレスで0.25インチ厚に圧縮した。30分後、複合材をプレスから取り出し、一晩硬化させた。
【0136】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:148℃;N中Td5%(おがくず):201℃;Tg:−25℃。
【0137】
砂/DEMM複合材:KK030.139.FM2
この実験の目的は、およそ33%のDEMMと67%の酸洗処理砂の重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0138】
出発材料は、DEMM(およそ96%純粋);酸洗処理砂(Alfa Aesar,ロット番号10172008);0.5%の専売グルカレート含有水(活性剤として)(表4に示した量)とした。
【0139】
手順:
【0140】
【表4】
【0141】
砂をアルミニウム秤量パン内に計り入れた。この砂に活性剤溶液を添加し、手動で撹拌した。パンを121℃の炉内に1時間入れ、水分を蒸発させた。砂の表面全体が覆われるようにDEMMをゆっくり滴下し、放置して硬化させた。
【0142】
得られた複合材の熱分析:N2中Td5%:266℃;Tg:28℃。
【0143】
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)/DEMM複合材:KK030.141.FM2
この実験の目的は、およそ88.3%のDEMMと11.7%のABS削りくずの重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成すること、およびDEMMによりさらなる活性剤なしで重合し得るかどうかを調べることであった。
【0144】
出発材料は、DEMM(およそ96%純粋)およびABS削りくず(表5に示した量)とした。
【0145】
手順:
【0146】
【表5】
【0147】
ABS削りくずは、ABS片をナイフで削ることにより作出した。この削りくずをアルミニウム秤量パン内に計り入れた。削りくずが全部覆われるようにDEMMを滴下し、放置して硬化させた。混合物全体が1時間以内に固化した。
【0148】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:226℃;Tg:22℃;一方、得られたABSに対して行った熱分析:N中Td5%(ABS):340℃;Tg(ABS):110℃。
【0149】
アルミナ/DEMM複合材:KK030.141.FM3
この実験の目的は、60%のアルミナと40%のDEMMを用いて複合材を作製し、次いで、アルミナ/多官能性ブレンドを用いて作製した同様の複合材と比較することであった。
【0150】
出発材料は、DEMM(96%純粋);10000ppmのMSA含有DEMM;アルミナ(Admatechs高純度アルミナ,99.9+%,サイズ=0.7um,比表面積=6.0m2/g,表面pH=5.3,製品番号AO−802(ロット番号PWG112))(表6に示した量)とした。
【0151】
手順:
【0152】
【表6】
【0153】
DEMMと10000ppmのMSA含有DEMMストック溶液を100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内で合わせ、1インチ分散ブレードを備えたオーバーヘッド機械的撹拌器で250RPMにて混合した。次に、粘度が上昇し始めたら撹拌速度を増大しながら、アルミナ粉末を10分間かけてゆっくり添加した。2500RPMの剪断速度で10分間の混合後、溶液が発熱し始め、混合物をアルミニウム秤量パンに移し、硬化させた。
【0154】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:283℃;Tg:24℃。
【0155】
松のかんなくず/DEMM複合材:KK030.142.FM1
この実験の目的は、松のかんなくず(25%)とDEMM(75%)を用いて複合材を作製することであった。
【0156】
出発材料は、DEMM(およそ95%純粋)、1%のDBU含有アセトンおよび松のかんなくず(表7に示した量)とした。
【0157】
手順:
【0158】
【表7】
【0159】
かんなくずとDBU/アセトン混合物をアルミニウム秤量パン内で合わせた。さらなるアセトンを用いてかんなくずを飽和させた。秤量パンを82℃の炉内に1時間入れ、蒸発させた。木材チップが秤量パンの底面に均一な層で配された。この木材チップに注意深くDEMMを滴下した。木材がすべて覆われたら、この小片を圧縮し、充分に硬化させた。
【0160】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:203℃;一方、得られた松のかんなくずだけに対する熱分析:N中Td5%:157℃;Tg:31℃。
【0161】
木粉/DEMM複合材:KK030.142.FM2
この実験の目的は、木粉(31%)とDEMM(69%)を用いて複合材を作製することであった。
【0162】
出発材料は、DEMM(95%純粋);1%のDBU含有アセトン、およびSystem Three Resins,Inc.から入手した木粉(表8に示した量)とした。
【0163】
手順:
【0164】
【表8】
【0165】
木粉とDBU/アセトン混合物をアルミニウム秤量パン内で合わせた。さらなるアセトンを用いて木粉を飽和させた。秤量パンを82℃の炉内に1時間入れ、蒸発させた。木粉が秤量パンの底面に均一な層で配された。この木粉に注意深くDEMMを滴下した。木材がすべて覆われたら、この小片を圧縮し、充分に硬化させた。
【0166】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:238℃;Tg:27℃;一方、得られた木粉だけに対する熱分析:N中Td5%:211℃
【0167】
ポリカーボネート/DEMM複合材:KK030.143.FM1
この実験の目的は、さらなる活性剤の添加なしでポリカーボネート/DEMM複合材を作出することであった。
【0168】
出発材料は、DEMM(95%純粋)およびMakrolonシートポリカーボネート(以下に表9に示した量で供給)とした。
【0169】
手順:
【0170】
【表9】
【0171】
ポリカーボネート削りくずは、ポリカーボネートシート片をナイフで削ることにより作出した。この削りくずをアルミニウム秤量パン内に計り入れた。削りくずが全部覆われるようにDEMMを滴下し、放置して硬化させた。混合物全体が1時間以内に固化した。
【0172】
得られた複合材の熱分析:N中Td5%:234℃;Tg:24℃;一方、得られたPCのみの熱分析:N中Td5%(PC):440℃;Tg(PC):150℃。
【0173】
他の複合材は、本明細書に開示したJamestown Distributors製のDEMMと織布充填材料を用いて作製したものである。充填材料としては:繊維ガラス(マット、クロス、ベールマット、テキサリウムクロス、二軸クロス)、カーボン(平織,2×2の綾織り,一方向,ケブラーとのハイブリッド)、ケブラー(平織,3×2の綾織り,カーボンとのハイブリッド)、剥離布、Siウェハ、Kapton(登録商標)ポリイミドフィルム(DuPont(商標))が挙げられる。活性剤としては:1N KOH含有メタノール、0.1%の1,1,3,3−テトラメチルグアニジン含有エタノールまたはアセトン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。特に指定のない限り、サンプルは周囲温度で硬化させた。
【0174】
Barracuda布/DEMM:KK030.144.FM1
手順:
【0175】
【表10】
【0176】
Barracuda(登録商標)(アルミ箔張繊維ガラス)布BGF 2510×50(#65691)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは4時間以内に充分硬化した。
【0177】
Barracuda布/多官能性ブレンド KK030.144.FM2
手順:
【0178】
【表11】
【0179】
Barracuda布BGF 2510×50(#65691)を正方形の小片に切断し、多官能性ブレンドで飽和させた。重合性組成物は、72時間後、おそらく余分な酸安定剤(100ppmのMSA)のため硬化していなかった。
【0180】
ベールマット/DEMM:KK030.144.FM3
手順:
【0181】
【表12】
【0182】
ベールマット0.09オンス/ヤード(#53498)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは1時間以内に充分硬化した。
【0183】
繊維ガラスマット/DEMM:KK030.145.FM1
手順:
【0184】
【表13】
【0185】
繊維ガラスマット2.0オンス(#53525)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは4時間以内に充分硬化した。
【0186】
二軸クロス/DEMM:KK030.145.FM3
手順:
【0187】
【表14】
【0188】
二軸クロス17.0オンス(#15035)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは4時間以内に充分硬化した。
【0189】
剥離布/DEMM:KK030.145.FM13
手順:
【0190】
【表15】
【0191】
剥離布(#37895)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは8時間以内に充分硬化した。
【0192】
カーボン繊維クロス/DEMM:KK030.147.FM3
手順:
カーボン繊維クロス(#5374)を正方形の小片に切断し、1%のLICA(Ken−React(登録商標)LICA(登録商標)44 Titanate Coupling Agent)含有エタノール溶液で飽和させ、次いで、121℃の炉内に10分間入れた。クロスを冷却し、次いで、DEMM(95%純度)で飽和させた。DEMMは8時間以内に充分硬化した。
【0193】
ポリプロピレンフェルト/DEMM:KK030.147.FM5
手順:
ポリプロピレンフェルト、1/16インチ厚(Buffalo Felt Products Corp,MS−29710790)を正方形の小片に切断し、0.1%の1,1,3,3テトラメチルグアニジン(TMG)含有エタノールで飽和させ、次いで、121℃の炉内に10分間入れた。このフェルトを冷却し、次いで、DEMM(95%純度)で飽和させた。DEMMは周囲条件下では硬化しなかった。
【0194】
ヒュームドシリカ/DEMM:KK030.147.FM6
手順:
シリカ(Cabot TS−720(ロット番号3273445))をアルミニウムパンに入れ、0.25%TMG溶液で飽和させ、次いで、121℃の炉内に20分間入れた。このシリカを冷却し、次いで、DEMM(95%純度)で飽和させた。硬化は数分以内に起こった。
【0195】
ケブラー/DEMM:KK030.147.FM7
手順:
ケブラー(5オンス,平織(#4201))をアルミニウムパンに入れ、1.0NのKOH含有メタノール溶液で10分間エッチングした。このクロスを脱イオン水で3回すすぎ洗浄し、次いで、121℃の炉内に15分間入れた。DEMM(95%純度)を滴下してケブラーフィルムを飽和させた。硬化は数時間以内に起こった。
【0196】
表16は、一部の複合材業界および製品の一覧を示す。現在の当該技術分野の水準の複合材の多くが、本明細書に教示した原理の適用によって、具体的には、本明細書に開示した重合性組成物をポリマーマトリックスとして使用することによって改善され得る。本明細書に教示した重合性組成物は、硬化速度がほぼ瞬間的、または所望により長時間に個別調整されるように設計され得る。例示的重合性組成物では、スチレン、高い触媒負荷量、高温硬化、または複合材業界でみられる他の面倒なことが使用されない。さらに、一部の用途では、感熱性であり、従って高温硬化が必要とされる系における使用に利用可能でない充填材が、本明細書に開示した重合性組成物には使用できるため、改善がなされ得る。
【0197】
従って、本明細書に示したように、さまざまな材料および形態が複合材用充填材に使用され得る。一例としては、粒状物、ガラス、繊維(短、長、細断、一方向、二方向)、布地(織布、不織布)、ナノ粒子、カーボン、クレイ、砂、岩、木材、ゴムおよびプラスチックが挙げられる。
【0198】
ポリマーマトリックスは本明細書に開示した重合性組成物を含むもの、例えば、共反応性または担体樹脂を有するものであり得る。
【0199】
本明細書に開示した例示的実施形態は、ラミナ構造体ならびにバルク重合材を包含している。
【0200】
特に重要なものは、例えば、自動車用、航空宇宙産業、風力タービンおよびスポーツ用品業界における使用のための高性能複合材料である。本明細書に開示した複合材により省エネルギー(周囲条件硬化性ポリマーマトリックス)および製品の軽量化の大きな機会がもたらされる。従って、例示的実施形態は、自動車部材、建築部材、スポーツ用品部材、摩擦材業界の部材、高性能複合材部材、歯科部材、建築部材、家具部材、船舶部材、航空宇宙産業部材を形成するために使用され得る。
【0201】
【表16】
【0202】
ラミネート
特定の重合性組成物を、プライマー処理した、またはプライマー処理していない基材上に流延し、結合し、次いで、硬化および/または剥離強度について試験した。
【0203】
方法論:
3種類のプライマー:Michem Flex P1852、Michem Flex P2300およびDigiPrime 4431(Michelman(シンシナティ,OH)製)を、3種類の異なる基材:二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリカーボネート(PC)上に#2.5ワイヤロッドを用いて流延し、0.25ミルのプライマーコートを得た。次いで、サンプルを100℃の炉内で60秒間硬化させた。次いで、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得た。コーティングしたサンプルを、次いで、接着剤面に一体に配置し、Carverプレスで50psiにて60秒間結合した。サンプルを1インチに切断し、Thwing−Albert EJAシリーズ試験機のT型剥離モードで、25Nロードセルを用いて試験した。剥離強度は2インチの距離で試験した。剥離の結果を以下に表に示す。ほとんどの破壊様式は接着剤であったが、ポリカーボネート(PC)サンプルでは基材の破壊が示された。
【0204】
結果および観察結果:
【0205】
【表17】
【0206】
表17にまとめたこの概念実証試験により、DEMMを用いるとラミネート構造体の層間に接着結合が形成される配合物が作製され得ることが示される。当業者には、本明細書に開示した原理を使用すると、ラミネート構造体に所望の剥離強度がもたらされる基材、プライマーおよび重合性材料の好適な組合せが見出され得ることが認識されよう。さらに、PC基材では、DEMMにより、さらなるプライマーなしで優れた剥離強度結果が得られた。
【0207】
DEMM:KK030.146.FM1を用いたSiウェハ上へのカプトンラミネート加工
別のラミネート構造体を、DEMM(99%純度)を用いてシリコンウェハ上にカプトンフィルムをラミネート加工して作製した。1%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン含有エタノールを表面カップリング剤として使用した。1.0 1.0N KOH含有メタノール,Alfa Aesar,ロット番号H29Y020
【0208】
手順:
カプトンフィルムをKOHのメタノールの1.0N溶液中に浸漬させ、10分間エッチングした。このフィルムをエタノールで3回すすぎ洗浄した。次に、1%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン含有エタノールの層を、カプトンおよびSiウェハの両方の上面で#10Myerロッドを用いて下方に引き延ばした。このフィルムおよびウェハを121℃の炉内に10分間入れた。フィルムとウェハを炉から取り出して冷却した後、次いで、数滴のDEMMをウェハに塗布し、カプトンフィルムをこの上面にしっかりと配置し5秒間保持した。フィルムとウェハ間に相応な付着性が観察された。
【0209】
表18は、他のラミネート構造体の例を示す。これらの例は、本明細書に開示した原理の多用途性を示すものであるが、本発明を限定することを意図しない。「x」は、DEMMを接着剤として使用した2つの基材の成功裡のラミネーションを示す。
【0210】
【表18】
【0211】
適した配合添加剤が、所望の仕様に合うようにラミネート構造体の物性を個別調整するために使用され得る。本明細書に開示した原理は、他の二重活性化ビニル化合物、例えば、メチレンマロネート、メチレンベータ−ケトエステル、メチレンβ−ジ−ケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のいずれかにも使用され得る。
【0212】
また、特定の例示的実施形態では、本明細書に開示した重合性組成物は複合材またはラミネート構造体において接着剤としても使用され得る。例としては、靴底、防弾チョッキおよび風車の羽根用の複合材などの多様な用途が挙げられる。
【0213】
さらに、本明細書に開示した原理に従って形成される複合材およびラミネートは、所望の用途に応じて剛性であっても柔軟性であってもよい。例えば、構造材、建築用パネル、航空宇宙産業における本体部材は剛性の複合材またはラミネートのほんの一例である。他の実施形態としては、柔軟性複合材またはラミネートを必要とするものであり得る装飾的フィルムまたは包装材料が挙げられる。かかる剛性および柔軟性の部材は本発明の範囲に含まれる。
【0214】
活性化剤、プライマーまたは開始剤
本発明の実施における使用に適した活性化剤は広くさまざまである。具体的な活性化剤の選択は、重合性組成物の化学的性質、使用される硬化機構の性質、重合が行われる方法および/または条件、最終使用用途および/または本発明の実施において使用される任意の基材の性質に依存する。活性化剤としては、1種類以上の重合性モノマー、プレポリマーおよび/または低分子量ポリマーもしくはオリゴマーの重合に関与するもの、例えば、活性剤、共活性剤、促進剤、共促進剤、触媒、共触媒、開始剤および共開始剤などが挙げられ得る。メチレンマロネートなどの二置換ビニルモノマーに一般的に重要なものは塩基、塩基前駆体、塩基変換体および塩基向上体である。便宜上、本明細書において特に記載のない限り、用語「重合活性剤」、「活性剤」、「活性化剤」、「プライマー」または「開始剤」は、本明細書において、かかる任意のすべての薬剤を意味するために用いている。
【0215】
本明細書に開示される系に適した活性化剤としては、限定されないが、酢酸ナトリウムもしくは酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅、コバルトもしくは他の金属カチオンのアクリル酸、マレイン酸もしくは他の酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージドもしくはヒドロキシドなどの塩;または化学的に塩基性の材料、例えば、アミンおよびアミド;またはポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4−ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;もしくはプロピオン酸塩が挙げられる。
【0216】
種々の活性化方法が、本明細書において論考している重合性組成物の活性化に使用され得る(基材の既に塩基性の表面を含む。)。他の活性化方法としては、重合を助長するためのエネルギー曝露による触媒量の封入型塩基、塩基前駆体または塩基創出体の放出が挙げられる。他の想定される活性化方法としては、物理的分配法による(例えば、シリンジ、噴霧機構などによる)塩基、塩基前駆体または塩基創出体の適用が挙げられる。本明細書に開示した複合材組成物に適用可能な種々の活性化方法は、同時係属のPCT国際特許出願の出願番号第PCT/US13/34636号(2013年3月29日出願)(発明の名称が「重合性組成物の活性化方法、重合系およびこれにより形成される製品」であり、米国特許仮出願第61/618,147号(2012年3月30日出願)の優先権を主張)(これは引用によりこの全体が本明細書に組み込まれる。)に、より詳細に論考している。
【0217】
均等物
当業者には、常套的な範囲内の実験手法を用いて、本明細書に記載の発明の具体的な実施形態の多くの均等物が認識され、または確認することができよう。かかる均等物は本発明に包含されることを意図する。