【実施例】
【0098】
以下の実施例は、概念実証として示しており、本質的に例示であり、本明細書に開示した発明の限定を意図するものではない。
【0099】
複合材
種々の概念構想実証を複合材の分野で試験した。例示的実施形態を以下に示す。
【0100】
繊維ガラス複合材
試験の際に使用した繊維ガラス材は2.5オンスの繊維ガラスクロスとした。最終複合材生成物がこの繊維ガラスクロス材の複合材マットになることを意図した。
【0101】
繊維ガラスクロスをまず切断し、2インチ×2インチのサイズの正方形に準備した。これらの層を、保持(lay−up)および結合の準備のために個々に研究室の作業台の上に並べた。接着剤結合に使用した開始剤は、3重量%の1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)を含有するアセトン溶液とした。この開始剤は例示にすぎず、他のアニオン開始剤およびフリーラジカル開始剤が本発明の実施において使用され得る。この例示的実施形態では、重合性組成物をジエチルメチレンマロネート(DEMM)(約99%純粋)にした。この重合性組成物は例示にすぎず、他のメチレンマロネートおよび化学的に関連した成分が、本発明の実施において同様に使用され得る。
【0102】
方法論:
3mL容スポイトを使用し、繊維ガラスシートの半分を開始剤溶液で飽和させ、繊維ガラスシートの残りの半分をDEMMで飽和させた。次いで、この繊維ガラスマット複合材を、繊維ガラス材の個々の正方形を積層することにより準備した。積層の順序は系が交互に含まれるようにし、この場合、繊維ガラス材のサンドイッチ構造を、開始剤で飽和させた繊維ガラスの層、続いてDEMMで飽和させた層、この次に続いて開始剤で飽和させた層、・・・のようにして構成した。例示的な一実施形態では、合計8枚の繊維ガラスシートを使用した。すべての層を所定の位置に配置した後、ゴムローラーを用いて複合材サンドイッチを圧縮した。
【0103】
結果および観察結果:
硬化方法中、複合材生成物から少量の発熱が示された。硬化速度は非常に急速であり、取り扱いが可能な固形の複合材構造体がおおよそ2分以内に作製された。初期硬化後、サンプルを24時間状態調節し、剛性の繊維ガラス複合材構造体を得た。この複合材構造体は研究室の作業台で、加熱または相当な量の加圧なしで形成されたことに注目されたい。繊維ガラス層またはガラス繊維の一部または全部において活性化表面をもたらす択一的な方法も示され得る。例えば、繊維ガラスを、別個の操作にて開始剤または開始剤前駆体とともにサイジングまたは別の方法で前処理し、該重合性物と接触させて「オンデマンド式」重合を可能にすることもできる。このおよび他の例示的実施形態では、対象となるさらなる例示的開始剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ソルビン酸カリウム、酢酸ナトリウムおよびターシャリーブチルアンモニウムフルオリドが挙げられる。
【0104】
カーボン繊維複合材
カーボン繊維複合材を、繊維ガラス複合材に関して上記に示したものと同様の様式で作製した。試験の際に使用したカーボン繊維材は織布のカーボン繊維クロスとした。最終複合材生成物がこのカーボン繊維クロス材の複合材マットになることを意図した。
【0105】
方法論:
カーボン繊維クロスをまず切断し、2インチ×2インチのサイズの正方形に準備した。これらの層を、結合の準備のために個々に研究室の作業台の上に並べた。接着剤結合に使用した開始剤は、3重量%の1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)を含有するアセトン溶液とした。複合材の作製に使用した重合性組成物は99%純粋なジエチルメチレンマロネート(DEMM)とした。
【0106】
3mL容スポイトを使用し、カーボン繊維シートの半分を開始剤溶液で飽和させ、カーボン繊維シートの残りの半分をDEMMで飽和させた。次いで、このカーボン繊維マット複合材を、カーボン繊維材の個々の正方形を積層することにより準備した。積層の順序は系が交互に含まれるようにし、この場合、カーボン繊維材のサンドイッチを、開始剤で飽和させたカーボン繊維の層、続いてDEMMで飽和させた層、この次に続いて開始剤で飽和させた層、・・・のようにして構成した。合計8枚の正方形を一体に積層した。すべての層を所定の位置に配置した後、ゴムローラーを用いて複合材サンドイッチを圧縮した。
【0107】
結果および観察結果:
硬化方法中、複合材生成物から少量の発熱が示された。硬化速度は非常に急速であり、取り扱いが可能な複合材構造体がおおよそ2分以内に作製された。初期硬化後、サンプルを24時間状態調節し、剛性のカーボン繊維複合材を得た。
【0108】
木質複合材
木質複合材物品を、以下の方法論に従って作製した。最終複合材生成物が、ポリマーマトリックス中に担持された木質粒子を有する3次元複合材構造体になることを意図した。木質複合材に使用した材料は、おがくずよりもわずかに大きい粘稠度を有する流動性の顆粒状木製材とした。
【0109】
方法論:
木材チップを、3重量%のDBUを含有するアセトン溶液を入れたバイアルに、該材料が開始剤溶液で一様に飽和され得るように入れた。次いで、この木材チップをアルミニウム秤量皿に入れ、一様な層が形成されるように広げた。3mL容スポイトを使用し、次いでDEMMを、木材チップが皿の中で充分に飽和されるように試みながら木材チップに添加した。
【0110】
結果および観察結果:
DEMMをアルミニウム皿に添加すると、プライマーにより非常に急速な反応が開始され、発煙および強い発熱が生じた。硬化は非常に急速に起こり、得られる生成物は2分以内に取り扱いが可能となる。初期硬化後、サンプルを24時間状態調節し、剛性の木質粒状複合材を得た。
【0111】
酸化アルミニウム複合材:
純粋な酸化アルミニウムをDEMMと組み合わせて使用し、複合材料を形成した。
【0112】
方法論:
粉末形態の酸化アルミニウムをアルミニウム秤量皿に入れ、均一な層が形成されるように広げた。次いで、3mL容スポイトを使用し、DEMMを粉末材料が飽和されるように試みながらアルミニウム皿に添加した。
【0113】
結果および観察結果:
酸化アルミニウム/DEMMは、プライマーまたは開始剤の添加の使用は全くなしで硬化し、充分に硬化した複合材が15分以内に得られ、固形で剛性で耐衝撃性の白色ディスクが得られた。
【0114】
複合材構造体に関するこの概念実証試験により、DEMMおよび他の化学的に関連した化合物は、複合材構造体におけるポリマーマトリックスの形成に適していることが示される。適した配合添加剤が、所望の仕様に合うように複合材構造体の物性を個別調整するために使用され得る。同様の結果が他のメチレンマロネート、メチレンベータ−ケトエステル、メチレンベータ−ジケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニル(単官能性、二官能性または多官能性のいずれか)でもみられることが想定される。
【0115】
さらなる複合材の例を以下に示す。一部の場合では、多官能性モノマーとDEMMのブレンドを重合性組成物として使用した。多官能性モノマー(二官能性モノマーなど)および重合性組成物は、発明の名称が多官能性モノマー、多官能性モノマーの作製方法、重合性組成物およびこれにより形成される製品である同時係属の特許出願第PCT/US12/60830号(この全体が本明細書に組み込まれる。)に開示している。例示的な一実施形態において、多官能性モノマーは、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)と1,6−ヘキサンジオール(HD):
【0116】
【化2】
のエステル交換によって得られるものであり、本明細書では「多官能性(DEMM/HD)生成物」と称する。
【0117】
以下の実施例に記載している多官能性(DEMM/HD)生成物は例示の目的で示しているにすぎず、限定を意図するものでない。同時係属の特許出願に開示した他の多官能性メチレンモノマーも、本明細書に開示した原理に従う組成物を形成するために使用され得ることが予測される。
【0118】
例示的重合性組成物は、およそ85重量%のDEMM、およそ10重量%の多官能性(DEMM/HD)生成物およびおよそ5重量%の他の(例えば、マロン酸ジエチル(DEM))を含むものであり、本明細書では「多官能性ブレンド」と称する。
【0119】
さらなる安定剤:KK030.136.FM1を用いたアルミナ/多官能性複合材
この実験の目的は、およそ60重量%のアルミナ(前硬化重量)を用いた多官能性ブレンド(500ppmのMSAで過剰安定化)の重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0120】
出発材料は、多官能性ブレンド;10000ppmのメタンスルホン酸(MSA)含有DEMM(安定剤として);アルミナ(Admatechs高純度アルミナ,99.9+%,サイズ=0.7um,比表面積=6.0m2/g,表面pH=5.3,製品番号AO−802(ロット番号PWG112)(表1に示した量で供給)とした。
【0121】
手順:
【0122】
【表1】
【0123】
多官能性ブレンドと10000ppmのMSA含有DEMMストック溶液を100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内で合わせ、1インチ分散ブレードを備えたオーバーヘッド機械的撹拌器で250RPMにて混合した。次に、粘度が上昇し始めたら撹拌速度を増大しながら、アルミナ粉末を10分間かけてゆっくり添加した。2500RPMの剪断速度で28分間の混合後、溶液がわずかに発熱し始め、混合物をアルミニウム秤量パンに移し、硬化させた。
【0124】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:293℃;空気中Td5%:261℃;Tg:14℃。
【0125】
アルミナ/シリカ/多官能性複合材:KK030.137.FM1
この実験の目的は、およそ40重量%のアルミナ、20重量%のシリカ(前硬化重量)を使用し、さらなる安定剤の使用はなしの多官能性ブレンドの重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0126】
出発材料は、多官能性ブレンド;シリカ(Admatechsメタクリル表面官能化シリカ,99.0+%,サイズ=10nm,比表面積=300m2/g,表面pH=5.0から7.0,製品番号YA010C−SM1(ロット番号VWL170−124));アルミナ(Admatechs高純度アルミナ,99.9+%,サイズ=0.7um,比表面積=6.0m2/g,表面pH=5.3,製品番号AO−802(ロット番号PWG112))(表2に示した量)とした。
【0127】
手順:
【0128】
【表2】
【0129】
多官能性ブレンドを100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内に計り入れた。1インチ分散ブレードを備えたIKA RW−20混合機を250RPMで用いてモノマーを混合した。ゆっくりと、シリカを低剪断(350RPM)下で添加した。約15分後、シリカはすべて組み込まれ、溶液は安定であるように思われた。次に、粘度が上昇し始めたら撹拌速度を増大しながらアルミナ粉末を1時間かけてゆっくり添加した。均一になったら、混合物をアルミニウム秤量パンに移し、硬化させた。
【0130】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:265℃;261℃;Tg:3.7℃。
【0131】
おがくず/多官能性ブレンド複合材:KK030.138.FM1
この実験の目的は、およそ60%の多官能性ブレンドと40%のおがくずの重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0132】
出発材料は、多官能性ブレンド;おがくず(ソフトメープル、ホワイトオークおよび桜の混合,pH=5.7);1%の安息香酸カリウム含有エタノール、活性剤;離型剤(Eagle One製のSuperior Nanowax(水、カルナバワックス、エチレングリコール製))(表3に示した量)とした。
【0133】
手順:
【0134】
【表3】
【0135】
多官能性ブレンドを100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内に計り入れた。1インチ分散ブレードを備えたIKA RW−20混合機を250RPMで用いてモノマーを混合した。ゆっくりと、おがくずを低剪断(350RPM)下で、ペースト粘稠度に達するまで添加した。機械的撹拌器を外し、残りのおがくずを手動でブレンドした。次に、安息香酸カリウム溶液を滴下し、軽度の発熱が検出されるまで手動でブレンドした。混合物を、離型剤をプレコートしたアルミニウムホイル片に移し、手動プレスで0.25インチ厚に圧縮した。30分後、複合材をプレスから取り出し、一晩硬化させた。
【0136】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:148℃;N
2中Td5%(おがくず):201℃;Tg:−25℃。
【0137】
砂/DEMM複合材:KK030.139.FM2
この実験の目的は、およそ33%のDEMMと67%の酸洗処理砂の重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成することであった。
【0138】
出発材料は、DEMM(およそ96%純粋);酸洗処理砂(Alfa Aesar,ロット番号10172008);0.5%の専売グルカレート含有水(活性剤として)(表4に示した量)とした。
【0139】
手順:
【0140】
【表4】
【0141】
砂をアルミニウム秤量パン内に計り入れた。この砂に活性剤溶液を添加し、手動で撹拌した。パンを121℃の炉内に1時間入れ、水分を蒸発させた。砂の表面全体が覆われるようにDEMMをゆっくり滴下し、放置して硬化させた。
【0142】
得られた複合材の熱分析:N2中Td5%:266℃;Tg:28℃。
【0143】
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)/DEMM複合材:KK030.141.FM2
この実験の目的は、およそ88.3%のDEMMと11.7%のABS削りくずの重合性組成物を硬化させることにより複合材を形成すること、およびDEMMによりさらなる活性剤なしで重合し得るかどうかを調べることであった。
【0144】
出発材料は、DEMM(およそ96%純粋)およびABS削りくず(表5に示した量)とした。
【0145】
手順:
【0146】
【表5】
【0147】
ABS削りくずは、ABS片をナイフで削ることにより作出した。この削りくずをアルミニウム秤量パン内に計り入れた。削りくずが全部覆われるようにDEMMを滴下し、放置して硬化させた。混合物全体が1時間以内に固化した。
【0148】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:226℃;Tg:22℃;一方、得られたABSに対して行った熱分析:N
2中Td5%(ABS):340℃;Tg(ABS):110℃。
【0149】
アルミナ/DEMM複合材:KK030.141.FM3
この実験の目的は、60%のアルミナと40%のDEMMを用いて複合材を作製し、次いで、アルミナ/多官能性ブレンドを用いて作製した同様の複合材と比較することであった。
【0150】
出発材料は、DEMM(96%純粋);10000ppmのMSA含有DEMM;アルミナ(Admatechs高純度アルミナ,99.9+%,サイズ=0.7um,比表面積=6.0m2/g,表面pH=5.3,製品番号AO−802(ロット番号PWG112))(表6に示した量)とした。
【0151】
手順:
【0152】
【表6】
【0153】
DEMMと10000ppmのMSA含有DEMMストック溶液を100ml容ポリプロピレン製Tri−Pourビーカー内で合わせ、1インチ分散ブレードを備えたオーバーヘッド機械的撹拌器で250RPMにて混合した。次に、粘度が上昇し始めたら撹拌速度を増大しながら、アルミナ粉末を10分間かけてゆっくり添加した。2500RPMの剪断速度で10分間の混合後、溶液が発熱し始め、混合物をアルミニウム秤量パンに移し、硬化させた。
【0154】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:283℃;Tg:24℃。
【0155】
松のかんなくず/DEMM複合材:KK030.142.FM1
この実験の目的は、松のかんなくず(25%)とDEMM(75%)を用いて複合材を作製することであった。
【0156】
出発材料は、DEMM(およそ95%純粋)、1%のDBU含有アセトンおよび松のかんなくず(表7に示した量)とした。
【0157】
手順:
【0158】
【表7】
【0159】
かんなくずとDBU/アセトン混合物をアルミニウム秤量パン内で合わせた。さらなるアセトンを用いてかんなくずを飽和させた。秤量パンを82℃の炉内に1時間入れ、蒸発させた。木材チップが秤量パンの底面に均一な層で配された。この木材チップに注意深くDEMMを滴下した。木材がすべて覆われたら、この小片を圧縮し、充分に硬化させた。
【0160】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:203℃;一方、得られた松のかんなくずだけに対する熱分析:N
2中Td5%:157℃;Tg:31℃。
【0161】
木粉/DEMM複合材:KK030.142.FM2
この実験の目的は、木粉(31%)とDEMM(69%)を用いて複合材を作製することであった。
【0162】
出発材料は、DEMM(95%純粋);1%のDBU含有アセトン、およびSystem Three Resins,Inc.から入手した木粉(表8に示した量)とした。
【0163】
手順:
【0164】
【表8】
【0165】
木粉とDBU/アセトン混合物をアルミニウム秤量パン内で合わせた。さらなるアセトンを用いて木粉を飽和させた。秤量パンを82℃の炉内に1時間入れ、蒸発させた。木粉が秤量パンの底面に均一な層で配された。この木粉に注意深くDEMMを滴下した。木材がすべて覆われたら、この小片を圧縮し、充分に硬化させた。
【0166】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:238℃;Tg:27℃;一方、得られた木粉だけに対する熱分析:N
2中Td5%:211℃
【0167】
ポリカーボネート/DEMM複合材:KK030.143.FM1
この実験の目的は、さらなる活性剤の添加なしでポリカーボネート/DEMM複合材を作出することであった。
【0168】
出発材料は、DEMM(95%純粋)およびMakrolonシートポリカーボネート(以下に表9に示した量で供給)とした。
【0169】
手順:
【0170】
【表9】
【0171】
ポリカーボネート削りくずは、ポリカーボネートシート片をナイフで削ることにより作出した。この削りくずをアルミニウム秤量パン内に計り入れた。削りくずが全部覆われるようにDEMMを滴下し、放置して硬化させた。混合物全体が1時間以内に固化した。
【0172】
得られた複合材の熱分析:N
2中Td5%:234℃;Tg:24℃;一方、得られたPCのみの熱分析:N
2中Td5%(PC):440℃;Tg(PC):150℃。
【0173】
他の複合材は、本明細書に開示したJamestown Distributors製のDEMMと織布充填材料を用いて作製したものである。充填材料としては:繊維ガラス(マット、クロス、ベールマット、テキサリウムクロス、二軸クロス)、カーボン(平織,2×2の綾織り,一方向,ケブラーとのハイブリッド)、ケブラー(平織,3×2の綾織り,カーボンとのハイブリッド)、剥離布、Siウェハ、Kapton(登録商標)ポリイミドフィルム(DuPont(商標))が挙げられる。活性剤としては:1N KOH含有メタノール、0.1%の1,1,3,3−テトラメチルグアニジン含有エタノールまたはアセトン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。特に指定のない限り、サンプルは周囲温度で硬化させた。
【0174】
Barracuda布/DEMM:KK030.144.FM1
手順:
【0175】
【表10】
【0176】
Barracuda(登録商標)(アルミ箔張繊維ガラス)布BGF 2510×50(#65691)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは4時間以内に充分硬化した。
【0177】
Barracuda布/多官能性ブレンド KK030.144.FM2
手順:
【0178】
【表11】
【0179】
Barracuda布BGF 2510×50(#65691)を正方形の小片に切断し、多官能性ブレンドで飽和させた。重合性組成物は、72時間後、おそらく余分な酸安定剤(100ppmのMSA)のため硬化していなかった。
【0180】
ベールマット/DEMM:KK030.144.FM3
手順:
【0181】
【表12】
【0182】
ベールマット0.09オンス/ヤード(#53498)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは1時間以内に充分硬化した。
【0183】
繊維ガラスマット/DEMM:KK030.145.FM1
手順:
【0184】
【表13】
【0185】
繊維ガラスマット2.0オンス(#53525)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは4時間以内に充分硬化した。
【0186】
二軸クロス/DEMM:KK030.145.FM3
手順:
【0187】
【表14】
【0188】
二軸クロス17.0オンス(#15035)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは4時間以内に充分硬化した。
【0189】
剥離布/DEMM:KK030.145.FM13
手順:
【0190】
【表15】
【0191】
剥離布(#37895)を正方形の小片に切断し、DEMMで飽和させた。DEMMは8時間以内に充分硬化した。
【0192】
カーボン繊維クロス/DEMM:KK030.147.FM3
手順:
カーボン繊維クロス(#5374)を正方形の小片に切断し、1%のLICA(Ken−React(登録商標)LICA(登録商標)44 Titanate Coupling Agent)含有エタノール溶液で飽和させ、次いで、121℃の炉内に10分間入れた。クロスを冷却し、次いで、DEMM(95%純度)で飽和させた。DEMMは8時間以内に充分硬化した。
【0193】
ポリプロピレンフェルト/DEMM:KK030.147.FM5
手順:
ポリプロピレンフェルト、1/16インチ厚(Buffalo Felt Products Corp,MS−29710790)を正方形の小片に切断し、0.1%の1,1,3,3テトラメチルグアニジン(TMG)含有エタノールで飽和させ、次いで、121℃の炉内に10分間入れた。このフェルトを冷却し、次いで、DEMM(95%純度)で飽和させた。DEMMは周囲条件下では硬化しなかった。
【0194】
ヒュームドシリカ/DEMM:KK030.147.FM6
手順:
シリカ(Cabot TS−720(ロット番号3273445))をアルミニウムパンに入れ、0.25%TMG溶液で飽和させ、次いで、121℃の炉内に20分間入れた。このシリカを冷却し、次いで、DEMM(95%純度)で飽和させた。硬化は数分以内に起こった。
【0195】
ケブラー/DEMM:KK030.147.FM7
手順:
ケブラー(5オンス,平織(#4201))をアルミニウムパンに入れ、1.0NのKOH含有メタノール溶液で10分間エッチングした。このクロスを脱イオン水で3回すすぎ洗浄し、次いで、121℃の炉内に15分間入れた。DEMM(95%純度)を滴下してケブラーフィルムを飽和させた。硬化は数時間以内に起こった。
【0196】
表16は、一部の複合材業界および製品の一覧を示す。現在の当該技術分野の水準の複合材の多くが、本明細書に教示した原理の適用によって、具体的には、本明細書に開示した重合性組成物をポリマーマトリックスとして使用することによって改善され得る。本明細書に教示した重合性組成物は、硬化速度がほぼ瞬間的、または所望により長時間に個別調整されるように設計され得る。例示的重合性組成物では、スチレン、高い触媒負荷量、高温硬化、または複合材業界でみられる他の面倒なことが使用されない。さらに、一部の用途では、感熱性であり、従って高温硬化が必要とされる系における使用に利用可能でない充填材が、本明細書に開示した重合性組成物には使用できるため、改善がなされ得る。
【0197】
従って、本明細書に示したように、さまざまな材料および形態が複合材用充填材に使用され得る。一例としては、粒状物、ガラス、繊維(短、長、細断、一方向、二方向)、布地(織布、不織布)、ナノ粒子、カーボン、クレイ、砂、岩、木材、ゴムおよびプラスチックが挙げられる。
【0198】
ポリマーマトリックスは本明細書に開示した重合性組成物を含むもの、例えば、共反応性または担体樹脂を有するものであり得る。
【0199】
本明細書に開示した例示的実施形態は、ラミナ構造体ならびにバルク重合材を包含している。
【0200】
特に重要なものは、例えば、自動車用、航空宇宙産業、風力タービンおよびスポーツ用品業界における使用のための高性能複合材料である。本明細書に開示した複合材により省エネルギー(周囲条件硬化性ポリマーマトリックス)および製品の軽量化の大きな機会がもたらされる。従って、例示的実施形態は、自動車部材、建築部材、スポーツ用品部材、摩擦材業界の部材、高性能複合材部材、歯科部材、建築部材、家具部材、船舶部材、航空宇宙産業部材を形成するために使用され得る。
【0201】
【表16】
【0202】
ラミネート
特定の重合性組成物を、プライマー処理した、またはプライマー処理していない基材上に流延し、結合し、次いで、硬化および/または剥離強度について試験した。
【0203】
方法論:
3種類のプライマー:Michem Flex P1852、Michem Flex P2300およびDigiPrime 4431(Michelman(シンシナティ,OH)製)を、3種類の異なる基材:二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリカーボネート(PC)上に#2.5ワイヤロッドを用いて流延し、0.25ミルのプライマーコートを得た。次いで、サンプルを100℃の炉内で60秒間硬化させた。次いで、ジエチルメチレンマロネート(DEMM)をプライマー溶液の上面に#14ロッドを用いて流延し、1ミル厚の膜を得た。コーティングしたサンプルを、次いで、接着剤面に一体に配置し、Carverプレスで50psiにて60秒間結合した。サンプルを1インチに切断し、Thwing−Albert EJAシリーズ試験機のT型剥離モードで、25Nロードセルを用いて試験した。剥離強度は2インチの距離で試験した。剥離の結果を以下に表に示す。ほとんどの破壊様式は接着剤であったが、ポリカーボネート(PC)サンプルでは基材の破壊が示された。
【0204】
結果および観察結果:
【0205】
【表17】
【0206】
表17にまとめたこの概念実証試験により、DEMMを用いるとラミネート構造体の層間に接着結合が形成される配合物が作製され得ることが示される。当業者には、本明細書に開示した原理を使用すると、ラミネート構造体に所望の剥離強度がもたらされる基材、プライマーおよび重合性材料の好適な組合せが見出され得ることが認識されよう。さらに、PC基材では、DEMMにより、さらなるプライマーなしで優れた剥離強度結果が得られた。
【0207】
DEMM:KK030.146.FM1を用いたSiウェハ上へのカプトンラミネート加工
別のラミネート構造体を、DEMM(99%純度)を用いてシリコンウェハ上にカプトンフィルムをラミネート加工して作製した。1%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン含有エタノールを表面カップリング剤として使用した。1.0 1.0N KOH含有メタノール,Alfa Aesar,ロット番号H29Y020
【0208】
手順:
カプトンフィルムをKOHのメタノールの1.0N溶液中に浸漬させ、10分間エッチングした。このフィルムをエタノールで3回すすぎ洗浄した。次に、1%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン含有エタノールの層を、カプトンおよびSiウェハの両方の上面で#10Myerロッドを用いて下方に引き延ばした。このフィルムおよびウェハを121℃の炉内に10分間入れた。フィルムとウェハを炉から取り出して冷却した後、次いで、数滴のDEMMをウェハに塗布し、カプトンフィルムをこの上面にしっかりと配置し5秒間保持した。フィルムとウェハ間に相応な付着性が観察された。
【0209】
表18は、他のラミネート構造体の例を示す。これらの例は、本明細書に開示した原理の多用途性を示すものであるが、本発明を限定することを意図しない。「x」は、DEMMを接着剤として使用した2つの基材の成功裡のラミネーションを示す。
【0210】
【表18】
【0211】
適した配合添加剤が、所望の仕様に合うようにラミネート構造体の物性を個別調整するために使用され得る。本明細書に開示した原理は、他の二重活性化ビニル化合物、例えば、メチレンマロネート、メチレンベータ−ケトエステル、メチレンβ−ジ−ケトン、ジアルキル二置換ビニル、ジハロアルキル二置換ビニルの単官能性、二官能性または多官能性のいずれかにも使用され得る。
【0212】
また、特定の例示的実施形態では、本明細書に開示した重合性組成物は複合材またはラミネート構造体において接着剤としても使用され得る。例としては、靴底、防弾チョッキおよび風車の羽根用の複合材などの多様な用途が挙げられる。
【0213】
さらに、本明細書に開示した原理に従って形成される複合材およびラミネートは、所望の用途に応じて剛性であっても柔軟性であってもよい。例えば、構造材、建築用パネル、航空宇宙産業における本体部材は剛性の複合材またはラミネートのほんの一例である。他の実施形態としては、柔軟性複合材またはラミネートを必要とするものであり得る装飾的フィルムまたは包装材料が挙げられる。かかる剛性および柔軟性の部材は本発明の範囲に含まれる。
【0214】
活性化剤、プライマーまたは開始剤
本発明の実施における使用に適した活性化剤は広くさまざまである。具体的な活性化剤の選択は、重合性組成物の化学的性質、使用される硬化機構の性質、重合が行われる方法および/または条件、最終使用用途および/または本発明の実施において使用される任意の基材の性質に依存する。活性化剤としては、1種類以上の重合性モノマー、プレポリマーおよび/または低分子量ポリマーもしくはオリゴマーの重合に関与するもの、例えば、活性剤、共活性剤、促進剤、共促進剤、触媒、共触媒、開始剤および共開始剤などが挙げられ得る。メチレンマロネートなどの二置換ビニルモノマーに一般的に重要なものは塩基、塩基前駆体、塩基変換体および塩基向上体である。便宜上、本明細書において特に記載のない限り、用語「重合活性剤」、「活性剤」、「活性化剤」、「プライマー」または「開始剤」は、本明細書において、かかる任意のすべての薬剤を意味するために用いている。
【0215】
本明細書に開示される系に適した活性化剤としては、限定されないが、酢酸ナトリウムもしくは酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅、コバルトもしくは他の金属カチオンのアクリル酸、マレイン酸もしくは他の酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージドもしくはヒドロキシドなどの塩;または化学的に塩基性の材料、例えば、アミンおよびアミド;またはポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4−ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;もしくはプロピオン酸塩が挙げられる。
【0216】
種々の活性化方法が、本明細書において論考している重合性組成物の活性化に使用され得る(基材の既に塩基性の表面を含む。)。他の活性化方法としては、重合を助長するためのエネルギー曝露による触媒量の封入型塩基、塩基前駆体または塩基創出体の放出が挙げられる。他の想定される活性化方法としては、物理的分配法による(例えば、シリンジ、噴霧機構などによる)塩基、塩基前駆体または塩基創出体の適用が挙げられる。本明細書に開示した複合材組成物に適用可能な種々の活性化方法は、同時係属のPCT国際特許出願の出願番号第PCT/US13/34636号(2013年3月29日出願)(発明の名称が「重合性組成物の活性化方法、重合系およびこれにより形成される製品」であり、米国特許仮出願第61/618,147号(2012年3月30日出願)の優先権を主張)(これは引用によりこの全体が本明細書に組み込まれる。)に、より詳細に論考している。
【0217】
均等物
当業者には、常套的な範囲内の実験手法を用いて、本明細書に記載の発明の具体的な実施形態の多くの均等物が認識され、または確認することができよう。かかる均等物は本発明に包含されることを意図する。