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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つ又は複数のクロマトグラフィプロセスを使用して、前記精製済み溶液からVLPの第一亜集団を分離するステップをさらに含み、各クロマトグラフィプロセスが、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ、及びアフィニティクロマトグラフィから個別に選択される、請求項1に記載の方法。
前記溶媒及び/又は洗浄剤が、TnBP、オクチルフェノール、エチレンオキシド凝縮液、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びコール酸ナトリウム、Triton X−100、及びリン酸トリブチルのうち1つ又は複数を含む、請求項8に記載の方法。
前記VLPが、ノロウイルス遺伝子群I型VLP、ノロウイルス遺伝子群II型VLP、ノロウイルス遺伝子群IV型VLP、キメラノロウイルスVLP、及びサポウイルスVLPのうち1つ又は複数である、請求項8に記載の方法。
各クロマトグラフィプロセスが、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ、膜式クロマトグラフィ、及びアフィニティクロマトグラフィから個別に選択される、請求項8に記載の方法。
前記デプス濾過プロセスが、前記pH調整済み溶液を1つ又は複数のデプスフィルタと接触させるステップを含み、前記デプスフィルタの少なくとも1つが、珪藻土デプスフィルタである、請求項16に記載の方法。
前記分離が、1つ又は複数のクロマトグラフィプロセスを使用して、前記デプス濾過済み精製済み溶液からVLPの前記第一亜集団を分離するステップをさらに含み、各クロマトグラフィプロセスが、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アニオン交換クロマトグラフィ、カチオン交換クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ、及びアフィニティクロマトグラフィから個別に選択される、請求項16に記載の方法。
前記VLPが、ノロウイルス遺伝子群I型VLP、ノロウイルス遺伝子群II型VLP、ノロウイルス遺伝子群IV型VLP、キメラノロウイルスVLP、及びサポウイルスVLPのうち1つ又は複数である、請求項16に記載の方法。
前記VLPが、ノロウイルス遺伝子群I型VLPであり、前記第一亜集団が、完全長VP1サブユニットを有するノロウイルスVLPを含み、前記第二亜集団が、切断型VP1サブユニットを有するノロウイルスVLPを含む、請求項21に記載の方法。
生きたウイルスを含有し、前記生きたウイルスによって生成されたヒトノロウイルスVLPをさらに含有する溶液であって、前記VLPが少なくとも完全長VP1サブユニットを有するVLPを含むVLPの第一亜集団、及び切断型VP1サブユニットを有するVLPを含むVLPの第二亜集団を含む、溶液中において、前記生きたウイルスを除去及び/又は不活性化する方法であって、
前記生きたウイルスを含有する前記溶液のpHを5未満のpH値に調整して、pH調整済み溶液を生成するステップと、
濾過プロセスを使用して前記pH調整済み溶液から非VLP微粒子/凝集体、及びVLPの前記第二亜集団を除去して、精製済み溶液を生成するステップであって、前記精製済み溶液が、前記濾過プロセスにより得られるろ液であり、該精製済み溶液が、完全長VP1サブユニットを有するVLPを含むVLPの前記第一亜集団を実質的に保持し、前記切断型VP1サブユニットを有するVLPを実質的に含まない、ステップと、を含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0031] 本発明は溶液及び/又はワクチン組成物の調製に関し、特にVLPの精製方法に関する。具体的には、本発明の発明者は、VLP産生培養物の低pH処理工程が、VLP構造の免疫原性及び完全性を維持しながら、生きた宿主細胞ウイルス及び残留汚染タンパク質などのプロセス汚染物質、さらにVLP集団の幾つかの変異体を有利に除去することを発見した。例えば、ノロウイルスVLPの精製に関して、本発明の発明者は、低pH処理工程の結果、切断型VP1サブユニットを有する生きたウイルス及びノロウイルスVLPが実質的に除去及び/又は不活性化されたことを発見した。
【0025】
[0032] 本発明の態様は、任意のVLP及びその変異体の精製に適用可能であることが理解される。幾つかの実施形態では、VLPはカリシウイルス科に属するウイルスのものである。幾つかの実施形態では、VLPは、キメラ又は組み換え変異体などのノロウイルスVLPである。幾つかの実施形態では、VLPはサポウイルスVLPである。
【0026】
[0033] 本発明の態様は、生きたウイルスの感染性因子を除去することになるVLPの精製に適用可能であることも理解される。幾つかの実施形態では、生きたウイルスは、例えばパルボウイルス、ロタウイルスなどのような無エンベロープウイルスである。幾つかの実施形態では、生きたウイルスは、例えば、バキュロウイルス、レトロウイルス、エランチウイルス、アルボウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなどのようなエンベロープウイルスである。
【0027】
[0034] また、本発明の発明者は、バキュロウイルス発現系を使用してVLPが産生される場合、溶媒及び/又は洗浄剤での処理は、残留バキュロウイルスなどのウイルス汚染物質を不活性化し除去するために有用な工程であることを発見した。したがって、本発明の方法は、追加的又は代替的に、VLPを含む組成物と接触している(例えばクロマトグラフィカラムの)クロマトグラフィ材料を溶媒及び/又は洗浄剤で処理すること、及び/又はクロマトグラフィ材料と接触する前にVLPを含む組成物に溶媒/洗浄剤を添加することを伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスを含むことができる。その後に、クロマトグラフィ材料からVLPを溶出し、残留溶媒/洗浄剤を除去するためにSDR Hyper-Dを添加する。
【0028】
[0035] さらに、本発明の発明者は、バキュロウイルス発現系を使用してVLPが産生される場合、例えば珪藻土及び/又は合成デプスフィルタなどの1つ又は複数のデプスフィルタでのデプス濾過は、バキュロウイルス核酸などの残留汚染核酸を除去するのに有用な工程であることを発見した。したがって、本発明の方法は、追加的又は代替的に、精製したデプス濾過溶液を生成するために、VLP及び残留汚染核酸を含有するすべての溶液をデプス濾過プロセスによって浄化することを含むことができる。
【0029】
[0036] 本発明の発明者は、上述したプロセスのうち1つ又は複数によって生成された精製溶液の結果、任意の事前精製溶液と比較して、精製溶液中のVLPに対して残留汚染タンパク質が減少していることも発見した。したがって、本発明の溶液は、精製の結果、VLPに対して残留汚染タンパク質の減少を示すことができる。
【0030】
[0037] 本発明の発明者は、上述したプロセスのうち1つ又は複数によって生成された精製溶液の結果、任意の事前精製溶液と比較して、完全長VP1サブユニットを有するVLPのVLPレベルが相対的に上昇するので有利であることも発見した。したがって、本発明の溶液は、精製の結果、完全長VP1サブユニットのあるVLPのレベル上昇を示すことができる。
【0031】
[0038] ウイルス様粒子(VLP)を精製する方法は、上記VLPを含有する細胞可溶化物、培養上清、又は濾液を生成するか又は得ることを含む。方法は、pH調整済み溶液を生成するために、可溶化物、上清又は濾液のpHを約5未満のpH値に調整することも含む。方法は、精製済み溶液を生成するために、VLPを含有するpH調整済み溶液から非VLP微粒子/凝集体を除去することも含む。
【0032】
[0039] 幾つかの実施形態では、VLPの産生は、少なくともVLPの第一亜集団及び第二亜集団、さらに他のプロセス汚染物質材料を含む細胞可溶化物、培養上清、又は濾液を生成する。幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液は大量産生培養であるか、又は大量産生培養から生成される。幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液は、濾過及び/又は遠心分離によって事前除去されている培養上清から得られる。
【0033】
[0040] 幾つかの実施形態では、VLPの亜集団は、pH処理に対する様々な応答に基づき、誘発される抗原応答に基づき、及び/又は構造的差異に基づいて特徴付けられる。したがって、ウイルスに応じて、VLPの2つを超える亜集団が存在できることが想像される。幾つかの実施形態では、生成されたVLPはノロウイルスVLPであり、第一亜集団は完全長VP1サブユニットのあるノロウイルスVLPを含み、第二亜集団は切断型VP1サブユニットを有するノロウイルスVLPを含む。幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPはノロウイルス遺伝子群I型VLP、ノロウイルス遺伝子群II型VLP、ノロウイルス遺伝子群III型VLP、ノロウイルス遺伝子群IV型VLP、及びノロウイルス遺伝子群V型VLPのうち1つ又は複数である。幾つかの実施形態では、VLPは酸安定性VLPである。
【0034】
[0041] 本発明の方法は、プロセス汚染物質及び異常形成されたVLP様構造からVLPを分離するために、可溶化物、上清又は濾液のpHを調整することを含む。プロセス汚染物質は、多糖類、宿主細胞タンパク質などの残留汚染タンパク質、宿主細胞核酸などの残留汚染核酸、脂質、媒質成分、生宿主細胞ウイルス(例えばバキュロウイルス)などの生感染性因子など、さらに以上の汚染物質のいずれかの集合体又は凝集体を含むことができるが、これらに限定されない。異常形成されるVLP様構造は、環境条件(例えばpH処理又は温度)、誘発される抗原応答、構造的差異、分離プロフィール(例えばクロマトグラフィ、沈殿、又は濾過)などに基づいて所望のVLP構造から識別可能である任意のVLP構造とすることができる。
【0035】
[0042] 幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液のpHは、pH調整済み溶液を生成するために、約5未満に調整される。幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液のpHは、約4.5未満に、約4未満に、約3.5未満に、約3.4未満に、約3.3未満に、約3.2未満に、約3.1未満に、約3未満に、約2.9未満に、約2.8未満に、約2.7未満に、約2.6未満に、約2.5未満に、約2未満に、約1.5未満に、約1未満に、及びその間のすべての範囲/部分範囲に調整される。
【0036】
[0043] 可溶化物、上清又は濾液のpHは、当業者に知られている任意の方法で調整することができる。幾つかの実施形態では、pHは、酸性化をもたらす1つ又は複数の試薬を可溶化物、上清又は濾液に添加することによって調整される。例示的な酸性化試薬には塩酸、酢酸、硫酸、及びリン酸を含めることができる。添加試薬のpH、体積、及び組成物は、当技術分野で知られているように適切に選択することができる。
【0037】
[0044] 幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液のpH調整及び/又は処理の継続時間は、約30分である。幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液のpH調整及び/又は処理の継続時間は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約10時間、約15時間、約20時間、約25時間、約30時間、約35時間、約40時間、約45時間、約46時間、約47時間、約48時間、及びその間のすべての範囲/部分範囲である。
【0038】
[0045] 幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液は、上記説明したようにVLPの第一亜集団及び第二亜集団を含み、可溶化物、上清又は濾液の調整は、第一及び第二亜集団の不均質分布をもたらす。幾つかの実施形態では、pH処理は、pH調整済み溶液中の微粒子及び/又は凝集体形成をもたらし、VLPの第二亜集団は実質的に、その結果である微粒子/凝集体中に見られ、VLPの第一亜集団はpH調整済み溶液のボリューム中に残る。幾つかの実施形態では、本明細書で精製したノロウイルス遺伝子群II型VLPで例示されるように、完全長VP1タンパク質があるVLPを含む第一亜集団とは対照的に、第二亜集団は、切断型VP1タンパク質を含有するVLPを含む。
【0039】
[0046] 幾つかの実施形態では、VLPを精製する方法は、精製溶液を生成するために、pH調整済み溶液から非VLP微粒子/凝集体を除去することをさらに含む。幾つかの実施形態では、除去は以下のプロセス、すなわち、遠心分離、析出、凝集、沈降、及び濾過のうち1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、分離は、少なくとも微粒子/凝集体を除去する遠心分離を伴う。
【0040】
[0047] 幾つかの実施形態では、非VLP微粒子/凝集体の除去は、精製溶液を生成するためにpH調整済み溶液からVLPの第二亜集団を分離することを含み、精製溶液は実質的にVLPの第一亜集団を保持する。すなわち、微粒子/凝集体はVLPの第二亜集団を含む。この方法で、回収プロセスの早期段階で、すなわち、培養浄化中に、VLPの望ましくない亜集団の選択的除去を達成することができる。
【0041】
[0048] 幾つかの実施形態では、除去/浄化は1つ又は複数の濾過プロセスによって実行される。適切な濾過にはデプス濾過、膜濾過、化学的濾過などが含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの濾過プロセスは1つ又は複数のデプスフィルタを使用するデプス濾過である。デプス濾過は、多孔性フィルタ/濾過媒質を採用した任意の濾過プロセスを指すことができる。適切なデプスフィルタは珪藻土デプスフィルタ、合成デプスフィルタなどを含むが、これらに限定されない。デプス濾過を使用することの利点には、操作の容易さ、及び使い捨て材料の使用可能性があり、これによって再使用した機器に必要なクリーニングを確認する必要がなくなる。幾つかの実施形態では、ミクロン未満のフィルタを使用することなどの1つ又は複数の追加の濾過プロセスも任意選択で採用することができる。
【0042】
[0049] 幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの第一亜集団の比率は、この工程後に少なくとも約2倍増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの第一亜集団の比率は、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、及びその間のすべての値に増加している。
【0043】
[0050] 幾つかの実施形態では、濾過後、残留汚染核酸の少なくとも約50%が可溶化物、上清又は濾液から除去される。「残留汚染核酸」という用語は、宿主細胞核酸、宿主細胞ウイルスの核酸、産生ウイルス(すなわち、VLPの産生に使用される)の核酸などを含むことができるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾過から残留汚染核酸は少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約61%、少なくとも約62%、少なくとも約63%、少なくとも約64%、少なくとも約65%、少なくとも約66%、少なくとも約67%、少なくとも約68%、少なくとも約69%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、及びその間のすべての値だけ除去される。
【0044】
[0051] 概して、規定された加工工程後のVLPの精製程度は、(可溶化物、上清又は濾液に対して)任意の他の成分の濃度に対するVLPの濃度の比率の変化によって測定することができる。例えば、比率はVLP濃度と感染性因子の濃度の間、VLP濃度と残留汚染タンパク質の間、及び/又はVLP濃度と宿主細胞プロセス汚染物質の間で計算することができる。
【0045】
[0052] 幾つかの実施形態では、VLPの精製は、pH調製済み溶液からVLPの第二亜集団を除去した後、精製済み溶液からVLPの第一集団を分離することも含む。幾つかの実施形態では、精製済み溶液からVLPの第一集団を分離することには、例えば遠心分離(例えば連続流)、析出、相分離、タンジェント流路か、バッファ交換法などの任意の適切な分離プロセスが含まれる。幾つかの実施形態では、精製済み溶液からVLPの第一集団を分離することには、1つ又は複数のクロマトグラフィプロセスを使用することが含まれる。各クロマトグラフィプロセスは、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ及びアフィニティクロマトグラフィから個別に選択することができるが、これらに限定されない。イオン交換クロマトグラフィは、アニオン交換クロマトグラフィ又はカチオン交換クロマトグラフィとすることができる。
【0046】
[0053] 幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの第一亜集団の比率は、この工程後、少なくとも約2倍増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの第一亜集団の比率は、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、及びその間のすべての値だけ増加している。幾つかの実施形態では、この工程後、残留汚染核酸の少なくとも約50%が可溶化物、上清又は濾液から除去される。「残留汚染核酸」という用語は、宿主細胞核酸、産生ウイルスの核酸、ウイルス核酸、細菌核酸、真菌核酸、本明細書で述べたシステム及び方法に関連しても関連していなくてもよい他の生物からの核酸などを含むことができるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、可溶化物、上清又は濾液から残留汚染核酸が少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約61%、少なくとも約62%、少なくとも約63%、少なくとも約64%、少なくとも約65%、少なくとも約66%、少なくとも約67%、少なくとも約68%、少なくとも約69%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%。少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、及びその間のすべての値だけ除去される。
【0047】
[0054] 本発明の発明者は、VLP調製品から生きたウイルス感染性因子(例えばバキュロウイルス)を精製するために、溶媒及び/又は洗浄剤処理工程が有用であることも発見した。上述したように、溶媒及び/又は洗浄剤は、クロマトグラフィカラムと接触する前にVLP調製品に添加することができ、及び/又はクロマトグラフィカラムと接触する前に大量溶液に添加することができ、及び/又はVLP調製品と接触した後にクロマトグラフィカラムに添加することができる。このように、本明細書では単純さを期してオンカラム溶媒/洗浄剤に関して述べているが、これらの可能性はそれぞれ本明細書の範囲に入ることが理解される。このような実施形態では、本発明の方法は、VLPを含有する細胞可溶化物、培養上清、又は濾液を生成するか又は得ることと、多工程クロマトグラフィプロセスを使用してVLPを精製することとを含む。多工程クロマトグラフィプロセスの少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、可溶化物、上清又は濾液をクロマトグラフィ材料と接触させることを含み、 VLPが上記クロマトグラフィ材料に結合する。少なくとも1つのこのクロマトグラフィプロセスは、溶媒及び/又は洗浄剤でクロマトグラフィ材料を処理することも含む。少なくとも1つのこのクロマトグラフィプロセスは、処理後にクロマトグラフィ材料からVLPを溶出することをさらに含む。
【0048】
[0055] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、溶媒及び/又は洗浄剤でクロマトグラフィ材料を処理することも含む。幾つかの実施形態では、クロマトグラフィ材料はクロマトグラフィカラムであり、処理は溶媒及び/又は洗浄剤でのオンカラム処理又は洗浄を含む。任意の適切な溶媒及び/又は洗浄剤を使用することができる。幾つかの実施形態では、溶媒は有機溶媒であり、以下のうち1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。すなわち、リン酸トリブチル(TnBP)である。幾つかの実施形態では、洗浄剤は以下のうち1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。すなわち、Triton X-100、オクチルフェノールエチレンオキシド凝縮液、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びコール酸ナトリウム、及びその様々な組み合わせである。例示的組成物には非イオン洗浄剤(Triton X-100及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)、双性イオン洗浄剤(CHAPS及びZwittergent 3-12など)、及びイオン洗浄剤(コール酸ナトリウム及びホウ酸ジメチルジオクタデシルアンモニウムなど)がある。
【0049】
[0056] 幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤は少なくとも約0.01%の洗浄剤(w/v)、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%の洗浄剤(w/v)、及びその間のすべての値を含む。幾つかの実施形態では、溶媒及び/洗浄剤は少なくとも約0.01%の溶媒(w/v)、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%の溶媒(w/v)、及びその間のすべての値を含む。幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤は追加的に、一般的に使用されている生物学的緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、トリスなど)及び/又は塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなど)を含む。
【0050】
[0057] 幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤での処理の継続時間は約10分である。幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤での処理の継続時間は約20分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約10時間、約15時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、及びその間のすべての範囲/部分範囲である。
【0051】
[0058] 幾つかの実施形態では、細胞可溶化物又は培養上清/濾液は、上記説明したように遺伝子組換え法を使用して生成される。幾つかの実施形態では、VLPは以下のうち1つ又は複数の中で産生される。すなわち、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、植物、又は哺乳類細胞である。幾つかの実施形態では、VLPはノロウイルス遺伝子群I型VLP、ノロウイルス遺伝子群II型VLP及び/又はノロウイルス遺伝子群IV型VLPである。
【0052】
[0059] 幾つかの実施形態では、VLPを精製することは、多工程クロマトグラフィプロセスを使用してVLPを精製することを含む。各クロマトグラフィプロセスは上記列挙されたように個別に選択される。幾つかの実施形態では、多工程クロマトグラフィプロセスの第一クロマトグラフィプロセスは、カチオン交換クロマトグラフィであり、1つ又は複数のその後のクロマトグラフィプロセスも使用することができる。
【0053】
[0060] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、可溶化物、上清又は濾液をクロマトグラフィ材料と接触させることを含み、VLPが上記クロマトグラフィ材料に結合する。使用されるクロマトグラフィ材料は、採用される特定のクロマトグラフィプロセスによって決定され、カチオン交換カラム、ヒドロキシアパタイトカラム、疎水性相互作用カラム、サイズ排除カラム、アニオン交換カラム、混合モードカラム、又は親和カラムなどを含んでよいが、これらに限定されない。少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスがカチオン交換クロマトグラフィである場合、クロマトグラフィ材料はカチオン交換カラム又は膜である。
【0054】
[0061] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、オンカラム処理後に、クロマトグラフィ材料からVLPを溶出することも含む。溶出メカニズムは、クロマトグラフィプロセスの選択肢、使用される溶媒及び/又は洗浄剤、VLP/クロマトグラフィ基質と溶出液との相互作用などを含むが、これらに限定されない実験要素によって決定されることがある。溶出は、当技術分野で知られているように、任意の適切且つ一般的に使用されている生物学的緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、トリス)及び塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム)でクロマトグラフィシステムのpH及び/又はイオン強度を調整することによって実行することができる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスはカチオン交換クロマトグラフィであり、溶出はカチオン交換カラムを酢酸塩で洗浄することによって実行される。別の実施形態では、少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィであり、溶出は、ヒドロキシアパタイトカラムをリン酸ナトリウムで洗浄することによって実行される。
【0055】
[0062] 幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は、溶媒及び/又は洗浄剤処理を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスの後、可溶化物、上清又は濾液と比較して約2倍増加している。「残留汚染タンパク質」という用語は、宿主細胞タンパク質、宿主細胞ウイルスからのタンパク質成分、産生ウイルスの核酸、ウイルスの核酸、細菌の核酸、真菌の核酸、産生系に関係しても関係しなくてもよい他の生物の核酸などを含むことができるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも80倍、少なくとも85倍、少なくとも90倍、少なくとも95倍、少なくとも100倍、及びその間のすべての値に増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は、多工程クロマトグラフィプロセスの後、約2倍増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は、約3倍、約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約80倍、少なくとも約85倍、少なくとも約90倍、少なくとも約95倍、少なくとも約100倍、及びその間のすべての値に増加している。
【0056】
[0063] 幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤処理を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスの後、残留汚染タンパク質の少なくとも約30%が可溶化物、上清又は濾液から除去される。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質の少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、及びその間のすべての値が、可溶化物、上清又は濾液から除去される。
【0057】
[0064] 幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤処理を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスの後、可溶化物、上清、又は濾液中のVLPはいずれも失われていない。幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤処理を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスの後、可溶化物、上清又は濾液の約1%以下、約2%以下、約3%以下、約4%以下、約5%以下、約6%以下、約7%以下、約8%以下、約9%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、及びその間のすべての値が失われる。
【0058】
[0065] 幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤処理を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスの後、可溶化物、上清又は濾液からのVLPの回収率は約100%である。幾つかの実施形態では、溶媒及び/又は洗浄剤処理を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスの後、可溶化物、上清又は濾液からVLPの少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、及びその間のすべての値が回収される。
【0059】
[0066] 幾つかの実施形態では、本明細書で述べる本発明の方法は、生きたウイルスを含有し、生きたウイルスによって生成されたVLPをさらに含有する溶液中の生きたウイルスを除去及び/又は不活性化することも提供し、方法は、pH調整済み溶液を生成するために、生きたウイルスを含有する溶液のpHを約5未満のpH値に調整することを含む。生きたウイルスは、生宿主細胞ウイルス、産生ウイルス(例えばバキュロウイルス)、産生系に関連しても関連していなくてもよい汚染ウイルスなどでよいが、これらに限定されない。VLPは、遺伝子群I型VLP及び/又は遺伝子群II型VLPでよいが、これらに限定されない。
【0060】
[0067] 幾つかの実施形態では、pH調整済み溶液中の生きたウイルスのレベルは、生きたウイルスを含有する溶液より少なくとも約10倍低い。幾つかの実施形態では、pH調整済み溶液中の生きたウイルスのレベルは、生きたウイルスを含有する溶液より少なくとも約100倍、少なくとも約10
3倍、少なくとも約10
4倍、少なくとも約10
5倍、少なくとも約10
6倍、少なくとも約10
7倍、少なくとも約10
8倍、少なくとも約10
9倍、少なくとも約10
10倍、及びその間のすべての値だけ低い。
【0061】
[0068] 幾つかの実施形態では、非VLP微粒子/凝集体をpH調整済み溶液から除去して、精製済み溶液を生成することができ、次にそれを少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスで処理することができる。少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、精製済み溶液をクロマトグラフィ材料と接触させることを含むことができ、VLPがクロマトグラフィ材料に結合し、さらに溶媒及び/又は洗浄剤でクロマトグラフィ材料を処理することができる。少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、処理後にクロマトグラフィ材料からVLPを溶出して溶出液を生成することも含むことができる。幾つかの実施形態では、溶出液中の生きたウイルスのレベルは、生きたウイルスを含有する溶液と比較して、少なくとも約10
2倍低下する。幾つかの実施形態では、溶出液中の生きたウイルスのレベルは、生きたウイルスを含有する溶液と比較して、少なくとも約10
3倍、少なくとも約10
4倍、少なくとも約10
5倍、少なくとも約10
6倍、少なくとも約10
7倍、少なくとも約10
8倍、少なくとも約10
9倍、少なくとも約10
10倍、少なくとも約10
11倍、少なくとも約10
12倍、少なくとも約10
13倍、少なくとも約10
14倍、少なくとも約10
15倍、少なくとも約10
16倍、及びその間のすべての値だけ低下する。
【0062】
[0069] 幾つかの実施形態では、本明細書で述べる本発明の方法は、生きたウイルスを含有し、生きたウイルスによって生成されたVLPをさらに含有する溶液中の生きたウイルスを除去及び/又は不活性化することも提供し、方法は、少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスを使用して、生きたウイルスを含有する溶液を精製することを含む。少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、溶液をクロマトグラフィ材料と接触させることを含むことができ、VLPがクロマトグラフィ材料に結合し、さらに溶媒及び/又は洗浄剤でクロマトグラフィ材料を処理することを含むことができる。少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスは、処理後に、溶出液を生成するために、クロマトグラフィ材料からVLPを溶出することも含むことができる。幾つかの実施形態では、溶出液中の生きたウイルスのレベルは、生きたウイルスを含有する溶液と比較して、少なくとも約10倍低下している。幾つかの実施形態では、溶出液中の生きたウイルスのレベルは、生きたウイルスを含有する溶液と比較して、少なくとも約10
2倍、少なくとも約10
3倍、少なくとも約10
4倍、少なくとも約10
5倍、少なくとも約10
6倍、少なくとも約10
7倍、少なくとも約10
8倍、少なくとも約10
9倍、少なくとも約10
10倍、及びその間のすべての値だけ低下する。
【0063】
[0070] 幾つかの実施形態では、さらに、プロセス汚染物質及び/又はVLPの2次亜集団を除去する低pH処理工程及び濾過プロセス/工程、さらに生きたウイルスの感染性因子を不活性化するオンカラム溶媒及び/又は洗浄剤処理を伴う少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスを使用して、VLPを含有する可溶化物、上清又は濾液からウイルス様粒子(VLP)を精製するためにも操作可能である。幾つかの実施形態では、第一亜集団は完全長VP1サブユニットを有するノロウイルスVLPを含み、第二亜集団は切断型VP1サブユニットを有するノロウイルスVLPを含む。可溶化物、上清又は濾液は、上述したように任意の適切な手段によって生成される。
【0064】
[0071] 可溶化物、上清又は濾液のpHの調整は、pH値の状態(例えば約5未満)、処理の継続時間(例えば約30分)などを含め、既に述べたものと同様の方法で実行される。pH処理の結果、pH調整済み溶液のボリューム中にVLPの第一亜集団が残る一方、VLPの第二亜集団を含有する微粒子及び/又は凝集体が形成される。
【0065】
[0072] 濾過プロセスは、既に述べたものと同様の方法で実行され、デプス濾過プロセスでよい。濾過工程の結果、VLPの第二亜集団、さらに残留汚染核酸などのプロセス汚染物質を含有する微粒子/凝集体が除去されて、濾過された精製済み溶液が生成され、VLPの第一亜集団は濾過された精製済み溶液のボリューム中に残る。
【0066】
[0073] この実施形態では、pH処理工程及び濾過工程は多工程クロマトグラフィプロセスの前に実行され、VLPの精製は、多工程クロマトグラフィプロセスを使用して、濾過済み精製済み溶液からVLPの第一亜集団を分離することを含み、多工程クロマトグラフィプロセスの各クロマトグラフィプロセスは、上述したように個別に選択される。VLPの第一亜集団はクロマトグラフィ材料/カラムに結合し、これが溶媒及び/又は洗浄剤で処理される。上記列挙したように、任意の適切な溶媒及び/又は洗浄剤を使用することができる。次に、VLPの第一亜集団をクロマトグラフィ材料から溶出する。
【0067】
[0074] 幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は、低pH処理、及び少なくとも1つのクロマトグラフィプロセスの後、約2倍に増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は、約3倍、約4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、及びその間のすべての値に増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は、低pH処理及び多工程クロマトグラフィプロセスの後、約2倍増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するVLPの比率は、約3倍、約4倍、約5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、及びその間のすべての値に増加している。
【0068】
[0075] 幾つかの実施形態では、本発明はさらに、プロセス汚染物質及び/又は望ましくないVLPの亜集団、例えばVLPの第二亜集団を除去するために、低pH処理工程及びデプス濾過プロセス/工程を使用してVLPを精製するように操作可能である。pH処理工程は上述したように実行することができる。
【0069】
[0076] デプス濾過プロセスは、濾過済み精製済み溶液を生成するために、pH調整済み溶液を1つ又は複数のデプスフィルタと接触させることを含むことができる。1つ又は複数のデプスフィルタは、加工ボリューム、微粒子の負荷又は荷重、産生物の回収率、最終混濁度、フィルタ容量などの任意の産生要素に基づいて、精製システム用に適切に選択することができる。幾つかの実施形態では、デプスフィルタの少なくとも1つは珪藻土デプスフィルタである。幾つかの実施形態では、デプスフィルタの幾つかは、珪藻土デプスフィルタであり、それぞれが約50リットル/m
2、約100リットル/m
2、約200リットル/m
2、約300リットル/m
2、約400リットル/m
2、約500リットル/m
2、約600リットル/m
2、約700リットル/m
2、約800リットル/m
2、約900リットル/m
2、約1000リットル/m
2、及びその間のすべての値から個別に選択されたフィルタ容量を有する。幾つかの実施形態では、約150リットル/m
2、約200リットル/m
2、約250リットル/m
2、約300リットル/m
2、約350リットル/m
2、約400リットル/m
2、及びその間のすべての値から選択されたフィルタ容量を有する単一のデプスフィルタを使用する。使用可能な例示的デプスフィルタは、Millistak+HCポッドフィルタである。
【0070】
[0077] 幾つかの実施形態では、細胞可溶化物又は培養上清/濾液と比較して、残留汚染核酸の少なくとも約50%が、デプス濾過プロセスによってpH調整済み溶液から除去される。幾つかの実施形態では、細胞可溶化物又は培養上清/濾液と比較して、残留汚染核酸の少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%、及びその間のすべての値が、デプス濾過プロセスによってpH調整済み溶液から除去される。
【0071】
[0078] 幾つかの実施形態では、細胞可溶化物又は培養上清/濾液と比較して、デプス濾過プロセスによるpH調整済み溶液からのVLPの回収率は約100%である。幾つかの実施形態では、細胞可溶化物又は培養上清/濾液と比較して、デプス濾過プロセスによるpH調整済み溶液からのVLPの回収率は少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、及びその間のすべての値である。
【0072】
[0079] 幾つかの実施形態では、回収されるVLPはVLPの第一集団である。幾つかの実施形態では、1つ又は複数のクロマトグラフィプロセスを使用して、上述したようにデプス濾過済み精製済み溶液からVLPの第一亜集団を分離することができる。
【0073】
[0080] 幾つかの実施形態では、本発明の態様はさらに、サイズ排除クロマトグラフィ及びELISAで測定した状態で、VLPに対して80%以下の残留汚染タンパク質を含有するノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液を提供するように操作可能である。ノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液は、上述したように細胞可溶化物、培養上清、又は濾液から、又は上述したように、pH調整済み溶液、デプス濾過済み溶液などのような任意の他の溶液から生成することができる。幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液は、ノロウイルスVLPを含有する可溶化物、上清、又は濾液の溶液を精製することによって得られる。幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液は、以下のプロセスのうち1つ又は複数によって生成される。すなわち、pH処理、遠心分離、析出、凝集、沈降、濾過、及びクロマトグラフィである。幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液は、上述したように、pH処理工程及び濾過工程、その後の多工程クロマトグラフィプロセスなどによって、任意の処理済み/未処理溶液から生成される。
【0074】
[0081] 幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液は、細胞可溶化物又は培養上清/濾液と比較の溶液と比較して、残留汚染核酸を含有していない。幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液は、細胞可溶化物又は培養上清/濾液に対して、約1%以下、約2%以下、約3%以下、約4%以下、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約65%以下、約70%以下、約75%以下、約80%以下、及びその間のすべての値の残留汚染核酸を含有する。
【0075】
[0082] 幾つかの実施形態では、溶液は元の可溶化物、上清、又は濾液からのノロウイルスVLPの約100%を含有する。幾つかの実施形態では、溶液は、元の可溶化物、上清、又は濾液からのノロウイルスVLPの約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、及びその間のすべての値を含有する。
【0076】
[0083] 幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するノロウイルスVLPの比率は、元の可溶化物、上清、又は濾液と比較して少なくとも約50倍増加している。幾つかの実施形態では、残留汚染タンパク質に対するノロウイルスVLPの比率は、元の可溶化物、上清、又は濾液と比較して、少なくとも約45倍、少なくとも約40倍、少なくとも約35倍、少なくとも約30倍、少なくとも約25倍、少なくとも約15倍、少なくとも約10倍、少なくとも約5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約3倍、少なくとも約2倍、及びその間のすべての値に増加している。
【0077】
[0084] 幾つかの実施形態では、ワクチンの臨床及び大規模製造などの商業プロセスに、ノロウイルスVLPの精製済み集団の溶液を採用することができる。幾つかの実施形態では、臨床及び大規模製造プロセスに関連するプロセス体積は、わずか20リットルでもよい。例えば幾つかの実施形態では、ノロウイルスVLPを含む溶液からワクチンを調製することができる。
【0078】
[0085] 幾つかの実施形態では、本発明の態様はさらに、VLPの精製済み集団を有する溶液を提供するように操作可能であり、上記溶液は完全長VP1サブユニットを有する少なくとも約50%のVLPを含有する。幾つかの実施形態では、VLPの精製済み集団を有する溶液は、完全長VP1サブユニットを有するVLPを少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、及びその間のすべての値だけ含有する。言い換えると、VLPの精製済み集団を有する溶液は、切断型VP1サブユニットを有するVLPが実質的になくてもよい。幾つかの実施形態では、VLPの精製済み集団を有する溶液は、切断型VP1サブユニットを有するVLPを最大約5%、最大約10%、最大約15%、最大約20%、最大約25%、最大約30%、最大約35%、最大約40%、最大約45%、最大約50%、及びその間のすべての値だけ含有する。
【0079】
[0086] 幾つかの実施形態では、VLPの精製済み集団を有する溶液は、切断型VP1サブユニットを有するVLPを少なくとも約5%含有する未精製溶液から生成することができる。幾つかの実施形態では、未精製溶液は、切断型VP1サブユニットを有するVLPを少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、及びその間のすべての値だけ含有することができる。
【0080】
[0087] 未精製溶液は、細胞可溶化物、培養上清、濾液、pH調整済み溶液などの任意の処理済み/未処理溶液でよい。幾つかの実施形態では、VLPの精製済み集団を有する溶液は、上述したように、pH処理工程、及びpH処理から切断型VP1サブユニットを除去することによって、未精製溶液から生成される。除去は、遠心分離、析出、凝集、沈殿、濾過などのうち1つ又は複数によって実行することができる。幾つかの実施形態では、完全長VP1サブユニットを有するVLPの精製済み集団は、VLPの精製済み集団を有する溶液に1つ又は複数のクロマトグラフィプロセスを適用することによって生成することができる。
【0081】
[0088] これらの実施形態のいずれかによって産生された精製済みVLPには、生きたウイルスの感染性因子が実質的にないので有利である。感染性因子がないと言うのは、生宿主細胞ウイルス自体のように感染することができる活性因子が存在しないことを指すことがある。すなわち、精製済みVLPは、不活性で感染することができない因子を含有することがある。例示により、バキュロウイルスがもはや感染できないように処理されているバキュロウイルスを含有する試料は、試料がなお不活性化したバキュロウイルスを含有していても、感染性因子がないことになる。さらに、試料は、感染することができる活性因子が絶対的にない状態である必要はなく、むしろ試料は、適宜ヒト又は動物ワクチンとして意図された目的に使用できる(すなわち、適宜ヒト又は動物のワクチンにおける感染性因子の許容可能なレベルに適用される任意の米国連邦法規に適合する)ように、活性因子が十分に少ない状態であればよい。
【0082】
[0089] 本発明の方法は、臨床及び商業的製造のためにVLPの産生を拡大する方法として特に有用である。低pH処理及び/又はオンカラム溶媒及び/又は洗浄剤処理工程を組み込んだ精製法の結果、開始培養1L当たり精製済みVLPが少なくとも約50〜250mg、精製済みVLPが少なくとも約200〜400mg/L、精製済みVLPが少なくとも約350〜500mg/L、精製済みVLPが少なくとも約400〜750mg/L、精製済みVLPが少なくとも約700〜850mg/L、精製済みVLPが少なくとも約800〜1000mg/L、及びその間のすべての範囲及び部分範囲になる。産生されるVLPには、プロセス汚染物質及び異常VLP構造が実質的にない。この場合、実質的にない、とは、当業者に認識できるように、すべてのプロセス汚染物質及び異常VLP構造を除去するように意図することができるが、本明細書で述べる手順に関連する実際的態様の結果、最終的組成物から汚染物質及び異常VLP構造を完全には消去しないことがあるが、それでも意図された目的に使用できるという意味である。
【0083】
[0090] 本発明の実施形態はさらに、上記方法によって精製されたVLPの第一亜集団を含むワクチンを含むように操作可能である。通常、このようなワクチンは溶液又は懸濁液として注射可能物質として調製し、注射前に液体中の溶液又は懸濁液に適切な固体形態として調製することもできる。このような製剤は、乳化するか固体粉末として生産することもできる。活性の免疫原性成分を、薬学的に許容可能で活性成分と適合性のある賦形剤と混合することが多い。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組み合わせである。
【0084】
[0091] また、所望に応じて、ワクチンは湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、又はワクチンの有効性を強化するアジュバントなどの補助物質を含有することができる。幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は精製済みVLPと組み合わせた1つ又は複数のアジュバントを含む。大部分のアジュバントは、水酸化アルミニウム又は鉱物油などの急速な異化作用から抗原を保護するように設計された物質、及び百日咳菌又は結核菌由来のタンパク質などの免疫応答の刺激物質を含有する。適切なアジュバントは、例えばFreund's Incomplete Adjuvant及びComplete Adjuvant(Pifco Laboratories、ミシガン州デトロイト);Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc.、ニュージャージー州ローウェイ);水酸化アルミニウムゲル(明礬)又はリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛の塩;アシル化チロシン、アシル化糖の不溶性懸濁物;カチオン又はアニオン誘導体化多糖類;ポリホスファゼン;生分解性マイクロスフェア;及びクイルAとして販売されている。
【0085】
[0092] 適切なアジュバントにはToll様受容体(TLR)アゴニスト、特にToll様受容体タイプ4(TLR−4)アゴニスト(例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、合成リピドA、リピドA模倣体又は類似体)、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖類(LPS)、ポリホスファゼン、エマルジョン、ビロソーム、渦巻形、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマ粒子、微粒子、リポソーム、水中油型エマルジョン、MF59、及びスクアレンも含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、アジュバントは細菌由来の外毒素ではない。好ましいアジュバントには、3DMPL又はQS21などのTh1型応答を刺激するアジュバントが含まれる。
【0086】
[0093] モノホスホリルリピドA(MPL)、すなわち、サルモネラからのリピドAの非毒性誘導体は、ワクチンアジュバントとして開発されてきた強力TLR−4アゴニストである(Evans他、2003)。マウスの臨床前試験では、鼻腔内MPLが分泌、さらに体液の全身応答を向上させることが示されている(Baldridge他、2000;Yang他、2002)。120,000人を超える患者の臨床試験で、ワクチンアジュバントとして安全で有効であることも証明されている(Baldrick他、2002;Baldridge他、2004)。MPLはTLR−4受容体を通して先天性免疫の誘導を刺激し、したがってグラム陰性菌及びグラム陽性菌の両方、ウイルス、及び寄生生物などの広範囲の感染性病原体に対する非特異的免疫応答を誘発することができる(Baldridge他、2004;Persing他、2002)。ワクチン製剤にMPLを含めると、ワクチンの抗原成分によって生じた特異的応答を向上させながら、先天性応答を迅速に誘導し、ウイルス攻撃から非特異的免疫応答を誘発するであろう。
【0087】
[0094] 幾つかの実施形態では、本発明は適応免疫及び先天性免疫のエンハンサとしてモノホスホリルリピドA(MPL)又は3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)を含むワクチンを提供する。化学的に、3D−MPLは3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAと4、5又は6個のアシル鎖との混合物である。3De−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態が、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第0689454B1号(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。別の実施形態では、本発明は合成リピドA、リピドA模倣体又は類似体、例えばBioMiraのPETリピドA、又はTLR−4アゴニストのように機能すべく設計された合成誘導体を含むワクチン組成物を提供する。
【0088】
[0095] 特定の実施形態では、ワクチン組成物は2つのアジュバントを含む。アジュバントの組み合わせは上記から選択することができる。1つの特定の実施形態では、2つのアジュバントはMPL及び水酸化アルミニウム(例えば明礬)である。別の特定の実施形態では、2つのアジュバントはMPL及び油である。
【0089】
[0096] 「有効アジュバント量」又は「アジュバントの有効量」という用語は、当業者に十分理解されており、鼻洗浄でのIgA、血清IgG又はIgMレベル、又はB及びT細胞増殖に関して測定した場合の、投与された抗原に対する免疫応答を刺激することができる1つ又は複数のアジュバントの量、すなわち、投与された抗原組成物の免疫応答を増大させる量を含む。免疫グロブリンレベルの適切に効果的な増加は、アジュバントが全くない同じ抗原組成物と比較して、5%超、好ましくは25%超、特に50%超を含む。
【0090】
[0097] 一実施形態では、本発明は非経口投与用に調合されたワクチン組成物を提供し、組成物は水酸化アルミニウム及び緩衝剤と組み合わせた精製済みVLPを含む。緩衝剤は、L−ヒスチジン、イミダゾール、コハク酸、トリス、クエン酸、ビストリス、PIPES、MES、HEPES、グリシンアミド、及びトリシンからなる群から選択することができる。一実施形態では、緩衝剤はL−ヒスチジン又はイミダゾールである。好ましくは、緩衝剤は約15mM〜約50mM、さらに好ましくは約18mM〜約40mM、又は最も好ましくは約20mM〜約25mMの濃度で存在する。幾つかの実施形態では、抗原又はワクチン組成物のpHは約6.0〜約7.0、又は約6.2〜約6.8、又は約6.5である。ワクチン組成物は水性製剤とすることができる。
【0091】
[0098] 幾つかの実施形態では、ワクチン組成物はVLP、水酸化アルミニウム、及び緩衝剤に加えて、少なくとも1つのアジュバントをさらに含む。例えば、アジュバントはMPL、フラジェリン、CpGオリゴ、合成リピドA、又はリピドA模倣体又は類似体などのToll様受容体アゴニストでよい。幾つかの実施形態では、アジュバントはMPLである。
【0092】
[0099] 一実施形態では、本発明のワクチンは、免疫原としての1つ又は複数の精製済みVLP抗原、MPLなどのアジュバント、粘膜表面への付着を促進するキトサンなどのバイオポリマー、及びマンニトール及びスクロースなどの充填剤を含有する乾燥粉末として調合することができる。無エンベロープウイルスの非限定的例としてノロウイルスを使用すると、ノロウイルスワクチンは、1つ又は複数のノロウイルス遺伝子群抗原(例えばノーウォークウイルス、ヒューストンウイルス、スノーマウンテンウイルス)、MPLアジュバント、キトサン粘膜接着剤、及び充填剤として適切な流れ特性を提供するマンニトール及びスクロース(又はデキストロース、ラクトース、トレハロース及びグリセロールなどの他の糖類)を含有する10mgの乾燥粉末として調合することができる。製剤は、約7.0mg(25〜90%w/w範囲)のキトサン、約1.5mgのマンニトール(0〜50%w/w範囲)、約1.5mgのスクロース(0〜50%w/w範囲)、約25μgのMPL(0.1〜5%w/w範囲)、及び約100μgのノロウイルス抗原(0.05〜5%w/w範囲)を含むことができる。
【0093】
[00100] 上述したノロウイルスワクチン製剤を続けると、ノロウイルス抗原は、約0.01%(w/w)〜約80%(w/w)の濃度でワクチン中に存在することができる。幾つかの実施形態では、ノロウイルス抗原は、両方の鼻孔に投与するには10mgの乾燥粉末製剤毎に約5μg、約15μg、及び約50μg(0.025、0.075及び0.25%)、又は一方の鼻孔に投与するには約10μg、約30μg、及び約100μg(0.1、0.3及び1.0%w/w)の用量で調合することができる。製剤は、各投与中に一方又は両方の鼻孔に投与することができる。免疫応答を改善するために、最初の投与から1〜12週間後に、ブースタ投与することができる。ワクチン及び抗原製剤中のノロウイルス抗原の含有量は、1μg〜100mgの範囲、好ましくは1〜500μgの範囲、さらに好ましくは5〜200μg、最も一般的には10〜100μgの範囲とすることができる。各投与量で投与されるノロウイルス抗原の合計は、両方の鼻孔に投与する場合は合計20mgの乾燥粉末中に、又は一方の鼻孔に投与する場合は10mgの乾燥粉末中に、約10μg、約30μg、又は約100μgとすることができる。乾燥粉末は、粒子の10%未満が直径10μm未満となるような特徴である。平均粒子サイズは、直径10〜500μmの範囲である。
【0094】
[0100] 幾つかの実施形態では、ワクチン組成物は凍結乾燥した粉末であり、水性製剤に再構成する。それ故に、本発明は、精製済みノロウイルス組成物を作製する方法であって、(a)ノロウイルス抗原、スクロース、及びキトサンを含む事前凍結乾燥溶液を調製することを含み、キトサンに対するスクロースの比率が約0:1〜約10:1であり、さらに(b)溶液を冷凍することと、(c)冷凍した溶液を30〜72時間凍結乾燥することとを含み、最終的凍結乾燥産物が凝集した形態であるパーセンテージの上記ノロウイルス抗原を含有する方法を含む。凍結乾燥は周囲温度又は低温で実行するか、様々な温度で循環して進行することができる。例示のみを目的として、凍結乾燥は一連の工程で、例えば−69℃で開始し、3時間かけて徐々に−24℃に調整して、次にこの温度を18時間維持し、次に1時間かけて徐々に−16℃に調整して、次にこの温度を6時間保持し、次に3時間かけて徐々に+34℃に調整して、最後にこの温度を9時間維持するというサイクルで実行することができる。一実施形態では、事前凍結乾燥溶液は充填剤をさらに含む。別の実施形態では、上記充填剤はマンニトールである。
【0095】
[0101] 所望のパーセンテージの凝集体を生じるために適切なスクロースとキトサンの比率は、以下のガイドラインによって決定することができる。約2:1〜約10:1の範囲のスクロースとキトサンの質量比を含む事前凍結乾燥混合物から、事前凍結乾燥溶液の濃度に応じて、凍結乾燥後に約50%〜100%の範囲で無傷のウイルス抗原(すなわち、0%〜50%凝集した抗原)が生じる。スクロースとキトサンの質量比が0:1の場合は、無傷のノロウイルス抗原が30%未満になる(すなわち、凝集した抗原が70%を超える)。スクロース及びキトサンの両方を除外し、マンニトールなどの充填剤のみを使用すると、無傷な抗原が10%未満になる(すなわち、事前凍結乾燥溶液の濃度に応じて、凝集した抗原が90%を超える)。これらのガイドラインを使用することにより、当業者であれば、事前凍結乾燥混合物のスクロースとキトサンの質量比及び濃度を調整して、最適な免疫応答を生じるために必要な所望の量の凝集を得ることができる。
【0096】
[0102] ワクチンは、投与処方に適合する方法で、及び治療上有効且つ免疫原性になるような量で投与することができる。さらに、ワクチンにとって有効なアジュバントを達成する様々な方法が知られ、本明細書で開示するVLPと組み合わせて使用することができる。
【0097】
[0103] 様々な宿主発現ベクタシステムを使用して、VLPポリペプチドを発現させることができる。このような宿主発現システムは、VLPポリペプチドを産生してVLPを生成する手段となる媒体を意味する。
【0098】
[0104] 哺乳類の宿主細胞中で、多くのウイルス系発現システムを使用することができる。また、挿入された配列の発現を調整する、又は所望の特定の方法で遺伝子産物を修飾して処理する宿主細胞株を選択することができる。このようなタンパク質産物の修飾は、VLPの生成、又はVLPポリペプチド又はアジュバント又は追加的抗原などの追加的ポリペプチドの機能にとって重要になることがある。様々な宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後加工及び修飾にとって特徴的且つ特異的メカニズムを有する。適切な細胞系統又は宿主システムを選択して、発現した異種タンパク質の適正な修飾及び加工を確保することができる。そのために、遺伝子産物の一次転写、グリコシル化、及びリン酸化を適切に加工する細胞機構を有する真核性宿主細胞を使用することができる。
【0099】
[0105] 本発明の特定の態様は、VLP調製物質に関連する追加の抗原を含み、免疫応答を誘発することができる任意の物質でよい。幾つかの実施形態では、抗原は任意のアレルゲンとすることができる。アレルゲンは細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、多糖類結合体、多糖類及び他の分子のペプチド及び非ペプチド模倣体、小分子、脂質、糖脂質、及び炭水化物を含むが、これらに限定されない。
【0100】
[0106] 本発明は、以下の非限定的実施例を参照することにより、さらに良く理解される。本明細書で使用する単数形の「ある」及び「前記」は、文脈から明白に他の意味が規定されない限り、複数の指示対象も含む。上記方法及び/又は図解は特定の順序で生じる特定の事象及び/又はフローパターンを示すが、特定の事象及び/又はフローパターンの順序は変更することができる。例えば、低pH処理によるVLPの加工は、ワクチン製造プロセス中に生成される任意のプロセス中間体について実行することができ、それには大量産生培養、浄化した産生培養、クロマトグラフィ溶出分画、クロマトグラフィ流通/洗浄分画、限外濾過/ダイアフィルトレーション濃縮水分画、及び/又はプロセス分画濾液が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
[0107] また、可能な場合、特定の事象を並列プロセスで同時に実行する、さらに順番に実行することができる。
【0102】
実施例
[0108]Sf9培養
[0109] Sf9昆虫細胞のルーチン的培養を、27℃及び周囲空気飽和のフラスコ中で実施した。Sf9細胞を、バキュロウイルスの増大及びVLPの産生のために複数継代にわたって培養した。自動細胞カウンタ(T4 Celloメータ、Nexcelom Bioscience)を使用して、Sf9培養のルーチン的集計を実施した。
【0103】
[0110]組み換え型バキュロウイルス
[0111] 組み換え型バキュロウイルスは、製造業者の指示に従いCellfectinを使用して、転写ベクタ及び線状バキュロウイルスDNAを付着Sf9昆虫細胞に同時導入し、その後にプラークを精製して、バキュロウイルス増大の追加のラウンドを実行することによって生成した。次に、低速遠心分離によって得られた上清の分画として、組み換え型バキュロウイルスを回収した。その結果の組み換え型バキュロウイルスを調整して、最終的に10%(v/v)のDMSOにし、アリコーティングして−80℃で保存した。VLPを産生するための冷凍バキュロウイルスの増大は、以上で概略するように実施した。
【0104】
[0112]VLPの産生
[0113] ノロウイルスVLPの産生は、使い捨てのWaveバイオリアクタと使用して実施した。バイオリアクタで産生するには、Sf-900 II無血清媒質を無菌的にWaveバイオリアクタへと移動し、培養を接種した。適切な細胞密度に到達したら、組み換え型バキュロウイルスを無菌的にバイオリアクタ培養に添加し、以上で概略した条件で発現培養をインキュベートする。バイオリアクタの培養は通常、生細胞密度に基づいて感染後4〜6日で回収した。
【0105】
[0114] ノロウイルスVLPに加えて、サポウイルスVP1サブユニットを含有する組み換え型バキュロウイルスを感染させることによって、産生培養を生成することができる。あるいは、産生培養は、表面に露出したループ領域に異種アミノ酸及び/又は抗原を含有するように組み換えられているノロウイルスVP1サブユニット(キメラノロウイルスVLP)を含有する組み換え型バキュロウイルスに感染させることによって生成することができる。
【0106】
[0115]バイオリアクタの回収
[0116] 回収のために、HClを添加し、次に攪拌しながら周囲温度で2時間インキュベートすることによって、バイオリアクタ培養をpH3.0に調整した。次に、イミダゾールを添加し、次に低速遠心分離によって浄化することによって、培養をpH5.0(ノーウォーク)又はpH6.0(コンセンサス)に調整した。バイオリアクタの最終浄化は、遠心分離後の上清を濾過することによって実施した。その結果の回収材料(馴化培地)は、次にユニット操作の前に周囲室温で24時間以内保存、又は4℃で1週間以内保存した。
【0107】
[0117] サポウイルス又はキメラノロウイルスVLPを含有する大量産生培養の回収については、30分〜48時間の範囲の期間にわたってpH2.5で処理した後、汚染物質の除去及びVLPの回収率を評価する試験を実施することになる。構造的に無傷なVLPの最も好ましい回収率及びプロセス汚染物質の除去を示す条件を量産化加工に使用する。この目的に適切なキメラ変異体などの組み換えVLPのリストは、2011年1月21日出願で「Targeted Heterologous Antigen Presentation on Calicivirus Virus-Like Particles」と題したPCT特許出願第PCT/US2011/022094号、及び2009年8月10日出願で「Virus-Like Particles Comprising Composite Capsid Amino Acid Sequences for Enhanced Cross Reactivity」と題した米国実用新案出願第13/023,363号に見ることができ、その開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
[0118]カチオン交換捕捉クロマトグラフィ
[0119] Sartobind Sカプセルを使用して、ノロウイルスVLPのカチオン交換(CE)捕捉クロマトグラフィを実施した。精製するために、カプセルを酢酸塩(pH5.0)で平衡化し、馴化培地(≦1.5gVLP合計)を装填した。次に、280nm(A
280)での流通吸収が200mAU未満になるまで、カプセルを酢酸塩(pH5.0)で洗浄した。次に、カプセルを酢酸塩(pH5.0)、1%のTriton X-100、0.2%のリン酸トリブチルで飽和させ、洗浄した。このオンカラム溶媒/洗浄剤処理の後、A
280<50mAUになるまで、100mL/分の酢酸塩(pH5.0)でカプセルを洗浄した。酢酸塩(pH5.0)及びNaClでノロウイルスVLPの溶出を実施した。VLP溶出分画を使い捨ての瓶又はバイオプロセス用袋に採取した。
【0109】
[0120] カチオン交換クロマトグラフィによるコンセンサスVLPの精製は上述のように実施したが、すべてのプロセス緩衝剤に酢酸塩(pH5.0)ではなくクエン酸塩(pH6.0)を使用した。
【0110】
[0121]ヒドロキシアパタイト(HA)捕捉クロマトグラフィ
[0122] ノーウォークVLPのヒドロキシアパタイト(HA)捕捉クロマトグラフィは、総容積250mLのCHTセラミックヒドロキシアパタイトカラム(BioRad)を使用して実施した。精製するために、カプセルをMES(pH6.0)で平衡化し、馴化培地(≦250mgVLP合計)を装填した。次に、280nm(A
280)での流通吸収が200mAU未満になるまで、カプセルをMES(pH6.0)で洗浄した。次に、カプセルをMES(pH6.0)、1%のTriton X-100、0.2%のリン酸トリブチルで飽和させ、洗浄した。このオンカラム溶媒/洗浄剤処理の後、A
280<50mAUになるまで、70mL/分のMES(pH6.0)でカプセルを洗浄した。ノロウイルスVLPの溶出は、100mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)で洗浄し、VLPの溶出は400mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)で洗浄して実施した。VLP溶出分画を使い捨ての瓶又はバイオプロセス用袋に採取した。
【0111】
[0123] オンカラム溶媒/洗浄剤処理したサポウイルス又はキメラノロウイルスVLPのクロマトグラフィについては、カチオン交換カラム、ヒドロキシアパタイトカラム、疎水性相互作用カラム、サイズ排除カラム、アニオン交換カラム、混合モードカラム、又は親和カラムを含むが、これらに限定されないクロマトグラフィ基質からのVLPの効率的な結合及び溶出を可能にする緩衝条件(pH及びイオン強度)を評価する試験が実行されることになる。構造的に無傷なVLPの最も好ましい回収率及びプロセス汚染物質の除去を示す条件については、以上で概略したものと同様の方法でVLP加工(溶媒/洗浄剤処理など)が実行されることになる。
【0112】
[0124]VLPの特徴付け
[0125] 精製後、ノロウイルスVLPは分析法のパネルで純度を分析し、NuPAGE勾配ゲルを使用して、SDS−PAGE分析を実施した。その結果のPAGEゲルを、Imperial Protein Stain又は着色銀で着色した。捕捉クロマトグラフィ工程中に、産生培養の低pH処理及びオンカラム溶媒/洗浄剤処理の標準的プラークアッセイで、バキュロウイルスの不活性化を評価した。
【0113】
[0126] ノーウォークVLPの構造的完全性の分析は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)及び透過電子顕微鏡(EM)を使用した精製済み産物の分析によって実施した。SECについては、精製済みノーウォークVLPを希釈し、Superose 6カラムで分析した。EM分析については、VLPをL−ヒスチジン(pH6.5)、塩化ナトリウム中で希釈し、銅のメッシュグリッド上に点在させ、2%の酢酸ウラニルで着色した。
【0114】
[0127]結果
[0128] バイオリアクタ産生−VLPを産生する拡大可能な方法を開発するために、当技術分野で周知の技術を使用し、組み換え型バキュロウイルスに感染させるようにSf9培養をWaveバイオリアクタ中で増殖させた。
【0115】
[0129] バイオリアクタ回収−ノロウイルスVLPの産生後、バイオリアクタ培養は、高レベルの生バキュロウイルス(約10
7〜10
8pfu/mL)を含有し、これはVLPの製造中に不活性化して除去しなければならない。産生培養の低pH処理は回収中に実行可能な工程を示したかを判定する試験を実施した。表1に示すように、産生培養をpH<3.5で1時間、室温でインキュベートした試験で、高レベルのバキュロウイルス(AcNPV)の不活性化(ノーウォークVLPプロセスでは、5log
10超、コンセンサスVLPプロセスでは4log
10超)が達成された。表1は、高レベルのレトロウイルス(A−MLuV)の不活性化(ノーウォークVLPプロセスでは、7log
10超、コンセンサスVLPプロセスでは、6log
10超)を達成したことも示す。対照的に、SDS−PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィによる産生培養の分析は、産生培養の低pH処理後、ノーウォークVLPとコンセンサスVLPは両方とも可溶性のままで、構造的に無傷であることを示した。産生中に、ノロウイルスVP1サブユニット中に通例、N末端タンパク質分解性分割が観察された。また、有意なレベルのSf9宿主細胞タンパク質を除去すると、大量培養の低pH処理によって切断型VP1を含有するVLPが選択的に除去されることも示す(
図1A及び
図1B)。
【表1】
【0116】
[0130] 以上の発見事項に基づき、低pH処理による回収戦略、及び低速遠心分離による一次浄化が開発されている。下流の捕捉工程をさらに保護するために、その結果の低速上清/濾液分画をPESカプセルフィルタに通し、次にカプセルフィルタを封じ込めた無菌バイオプロセス袋に入れる。この回収戦略は、その結果となる馴化培地中で上述した保存条件にて安定しているノロウイルスVLPの効率的な回収率を提供し、下流加工のために比較的純粋なVLP分画を生成する。
【0117】
[0131] 下流加工−下流加工のために、量産化cGMP製造に非常に適した直交精製法に重点が置かれている。以下の手順は、開始馴化培地からVLPを加工するように設計されている。
【0118】
[0132] カチオン交換クロマトグラフィ−膜式クロマトグラフィは、大径(約1μm)膜ポアの効率的な物質移動により、大きい高分子複合体の精製に有用であることが判明した。Sartobind Sカチオン交換膜は、馴化培地からVLPを捕捉し、精製するために使用されてきた従来のビード系クロマトグラフィ基質と比較した場合、ノロウイルスVLPと効率的に結合する(
図2A)。ノロウイルスVLPの下流加工中にバキュロウイルスの不活性化を増大させるために、1%のTriton X-100、リン酸トリブチルを含有する平衡緩衝剤を使用したオンカラム溶媒/洗浄剤処理工程を、捕捉工程に組み込んである。溶媒/洗浄剤緩衝液を除去するカプセル洗浄の後、塩化ナトリウムを含有する平衡化緩衝液の段階的勾配でノロウイルスVLPを溶出する。現在の加工方式は、Sartobind Sの10”カプセルに装填した馴化培地中に最大1.5gのノロウイルスVLPを規定している。表2に示すように、高レベルのバキュロウイルス(AcNPV)の不活性化(ノーウォークVLPプロセスでは、4log
10超、コンセンサスVLPプロセスでは、4log
10超)が達成された。表2は、高レベルのレトロウイルス(A−MLuV)の不活性化(ノーウォークVLPプロセスでは、7log
10超、コンセンサスVLPプロセスでは、6log
10超)が達成されたことも示す。低pH処理とオンカラム溶媒/洗浄剤処理の両方を採用した場合に、表1及び表2に列挙した精製値の数字を加えると、エンベロープウイルスの不活性化の正確な尺度になったことも、さらに観察された。
【表2】
【0119】
[0133] カチオン交換クロマトグラフィと同様に、オンカラム溶媒/洗浄剤処理を伴うヒドロキシアパタイト捕捉クロマトグラフィも、ノロウイルスVLPの加工に効果的であることが示された(
図2B)。
【0120】
[0134] 精製済みノロウイルスVLPの特徴付け−多工程クロマトグラフィプロセスを使用した産生及び下流加工の後にVLPの集合状態を評価するために、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)及び透過電子顕微鏡(EM)で精製済みVLPを分析した。上述した条件にてSECで分析した場合、ノーウォークVLP及びコンセンサスVLPは、約7.2〜7.6分の保持時間を示し、これは数百万ダルトンの分子量を有する精製済み産物と一致する(
図3A)。分解したVP1カプシッドタンパク質は、約15分の保持時間で溶出するので、これらの結果は、カプシッドタンパク質の大部分が集合したVLPに取り込まれていることを確認する。透過による精製済み材料の分析は、ノーウォークVLPとコンセンサスVLPの両方で約34〜40nmの主に均一な粒子を示し、これはVP1カプシッドモノマーのT3正二十面体集合体と一致する(
図3B)。
【0121】
[0135]
溶媒/洗浄剤処理によるウイルスの不活性化/除去
[0136] コンセンサスVLPの馴化培地にモデルウイルスを固定し、オンカラム溶媒/洗浄剤処理を伴う、及び伴わないカチオン交換クロマトグラフィで加工した。表3に示すように、CE工程のみではモデルウイルスの減少が最小であり、オンカラム溶媒/洗浄剤処理を含むと、高レベルの除去/不活性化が観察された。
【表3】
【0122】
[0137]
低pH及び溶媒/洗浄剤処理によるウイルスの不活性化/除去
[0138] Sf9昆虫細胞中のノロウイルスVLP産生後、バイオリアクタ産生培養は、従来の方法(低速遠心分離及び濾過)で回収した後に高レベルの生バキュロウイルス(約10
8pfu/mL)を含有している。表4は、低pH処理のみでは、産生培養中に見られるレベルのバキュロウイルスを完全には不活性化しないことを示す。対照的に、低pH処理及び溶媒/洗浄剤処理の組み合わせによるバキュロウイルス不活性化のレベルは、産生培養中で約10pfu/mLを超える。
【表4】
【0123】
[0139]
低pH処理によるVP1タンパク質分解性フラグメントの除去
[0140] バキュロウイルス発現系の産生中、コンセンサスVP1サブユニットはタンパク質分解性分割を経験することができ、その結果、発現した材料の特定の分画でN末端の切断が生じる。このタンパク質分解性フラグメントは集合してVLPになり、下流加工中に完全長VP1サブユニットで構成されたVLPと同時精製される。開発試験中に、大量バイオリアクタ産生培養の低pH処理は、N末端切断産生物を含有するVLPの集団を選択的に除去し、より均質な材料を下流加工に提供することが発見された。
【0124】
[0141] 下流加工後、銀系統SDS−PAGE及び濃度測定によるコンセンサスVLP薬剤物質の分析は、回収時にpH処理されなかったバイオリアクタ培養から精製したVLPに有意のレベルのVP1のN末端切断産物を示した(表5)。対照的に、pH処理したバイオリアクタ培養から精製したVLPは、専ら完全長VP1サブユニットで構成されていた。
【表5】
【0125】
[0142]
オンカラム溶媒/洗浄剤処理による宿主細胞タンパク質の除去
[0143] バイオリアクタ産生培養の回収後、ノーウォークVLP及びコンセンサスVLPを、オンカラム溶媒/洗浄剤処理を伴うカチオン交換(CE)クロマトグラフィで加工した。VLP及びSfの宿主細胞タンパク質(HCP)の含有量を、バイオリアクタ回収材料(CEロード)及びカチオン交換溶出分画(CE溶出)の両方について評価した。これらの試験で、VLP含有量をサイズ排除クロマトグラフィで判定し、HCP含有量は、市販されているELISAキット(Cygnus Technologies、Cat: F020)を使用して判定した。表6は、プロセス分画のHCP含有量について、複数のVLPのロットで平均したデータを示し、上述したアッセイで判定して、CE工程によってHCPが有意に減少したことを示す。
【表6】
【0126】
[0144]
低pH処理及びデプス濾過によるノーウォーク及びコンセンサスVLPバイオリアクタ産生培養の回収
[0145] ノーウォークVLP及びコンセンサスVLPの現在の製造では、バイオリアクタ産生培養を低pH処理で回収し、遠心分離/濾過で浄化する。現在の回収手順の低pH処理工程は、ウイルスの不活性化及びプロセス汚染物質の除去に使用され、遠心分離は、産生培養の一次浄化に使用される。遠心分離は、バイオリアクタ浄化の確固たる拡大可能な方法であるが(
図4A参照)、一次浄化にデプス濾過を代替的に使用すると(
図4B参照)、操作の容易さ及び使い捨て材料の使用可能性など幾つかの利点があり、これによってクリーニングを確認する必要がなくなる。
【0127】
[0146] バイオリアクタ産生培養の回収をさらに特徴付け、洗練するために、1)バキュロウイルス及び宿主細胞核酸のプロセス汚染物質の除去を評価し、2)一次浄化用の珪藻土デプスフィルタの使用を評価する開発試験を実施した。以上で概略した試験が、
図4A〜
図4Bに要約され、以下のように実施された。
【0128】
[0147] ノーウォーク及びコンセンサスVLP産生培養を、振盪フラスコ又は攪拌タンクバイオリアクタ中で生成した。
【0129】
[0148] 産生培養は、低速遠心分離及び0.2μmの濾過で、低pH処理及びその後の低速遠心分離及び0.2μmの濾過で、低pH処理及びその後のデプス濾過及び0.2μmの濾過で回収した。
【0130】
[0149] プロセス分画の核酸含有量をqPCRで評価し、VLPの回収率をサイズ排除クロマトグラフィで評価した。
【0131】
[0150] 表7に示した試験では、回収時の低pH処理工程の結果、ノーウォークVLP産生培養(12.7〜47.4倍の減少)及びコンセンサスVLP産生培養(2.9〜3.0倍の減少)の両方で核酸汚染物質が有意に除去される。また、遠心分離の代わりにデプスフィルタを使用した一次浄化は、ノーウォークVLP産生培養(65.0〜110.9倍の減少)及びコンセンサスVLP産生培養(30.7〜51.9倍の減少)の両方で核酸汚染物質の全体的除去を増加させた。
【表7】
【0132】
[0151] 表8に示すように、様々なデプスフィルタを使用した回収試験で、155〜390L/m
2の範囲の容量及び73〜101%のVLP回収率が観察された。観察された好ましいフィルタ容量及びVLP回収率によって、このようなアプローチが量産化製造に使用するのに適切なものになる。
【表8】