(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553521
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】排ガス循環システム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/22 20160101AFI20190722BHJP
F02M 26/29 20160101ALI20190722BHJP
【FI】
F02M26/22
F02M26/29
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-9709(P2016-9709)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-129080(P2017-129080A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 玄太郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 貴士
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−125215(JP,A)
【文献】
特開2011−052919(JP,A)
【文献】
特開2014−039900(JP,A)
【文献】
特開2001−140701(JP,A)
【文献】
特開2012−237277(JP,A)
【文献】
特開2014−051972(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0192049(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0345579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00 − 26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガスの一部であるEGRガスを冷却してエンジンの吸気側に戻すEGRクーラを含む排ガス循環システムであって、
EGRクーラは、
エンジン冷却水を流通する冷却水流路と、
EGRガスを流通するEGRガス流路と、
媒体を吸着することによって発熱し、媒体の脱離によって吸熱する化学蓄熱材を充填した反応部と、
を含み、
媒体流路は、EGRガス流路と反応部の間に存在するとともに、
EGRクーラが低温の場合に、反応部へ媒体を導入することによって化学蓄熱材に媒体を吸着することで化学蓄熱材を発熱させてEGRクーラを加温する、
排ガス循環システム。
【請求項2】
エンジンの排ガスの一部であるEGRガスを冷却してエンジンの吸気側に戻すEGRクーラを含む排ガス循環システムであって、
EGRクーラは、
エンジン冷却水を流通する冷却水流路と、
EGRガスを流通するEGRガス流路と、
媒体を吸着することによって発熱し、媒体の脱離によって吸熱する化学蓄熱材を充填した反応部と、
を含み、
EGRクーラが低温の場合に、媒体タンクからの媒体を反応部へ導入することによって化学蓄熱材に媒体を吸着することで化学蓄熱材を発熱させてEGRクーラを加温する、
排ガス循環システム。
【請求項3】
エンジンの排ガスの一部であるEGRガスを冷却してエンジンの吸気側に戻すEGRクーラを含む排ガス循環システムであって、
EGRクーラは、
エンジン冷却水を流通する冷却水流路と、
EGRガスを流通するEGRガス流路と、
媒体を吸着することによって発熱し、媒体の脱離によって吸熱する化学蓄熱材を充填した反応部と、
反応部に媒体を送り込むか否かを開閉で切り替えることが可能な媒体バルブと、
を含み、
エンジン始動後で、媒体バルブが閉じており、冷却水流路のエンジン冷却水が停止しており、EGRガス流路のEGRガスが停止している状態で、EGRクーラが低温の場合に、媒体バルブを開き反応部へ媒体を導入することによって化学蓄熱材に媒体を吸着することで化学蓄熱材を発熱させてEGRクーラを加温する、
排ガス循環システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の排ガス循環システムであって、
冷却水流路と、EGRガス流路は、流れの方向が反対である、
排ガス循環システム。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載の排ガス循環システムであって、
媒体流路は、EGRガス流路と反応部の間に存在する、
排ガス循環システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の排ガス循環システムであって、
EGRクーラが目標となる高温に到達した後に、EGRガスからの熱によって化学蓄熱材を加熱することで化学蓄熱材から媒体を脱離する、
排ガス循環システム。
【請求項7】
請求項6に記載の排ガス循環システムであって、
化学蓄熱材から脱離した媒体は媒体タンクに収容する、
排ガス循環システム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の排ガス循環システムであって、
化学蓄熱材から媒体を脱離する際にエンジン冷却水を冷却水流路に流通させる、
排ガス循環システム。
【請求項9】
請求項6または8に記載の排ガス循環システムであって、
化学蓄熱材から媒体を脱離する際にEGRガスをEGRガス流路に流通する、
排ガス循環システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の排ガス循環システムにおいて、
化学蓄熱材として、CaCl2またはSrCl2を用い、媒体としてNH3を用いる、
排ガス循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排ガスの一部であるEGRガスを冷却してエンジンの吸気側に戻すEGRクーラを含む排ガス循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排ガスの一部を吸気側に還流させることで、排ガス中のNOxの減少、エンジンの燃費の向上を図る排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システムが知られている。
【0003】
このEGRシステムにおいては、エンジンでの燃料の燃焼温度を適切なものにするために、EGRクーラを有し、還流する排ガス(EGRガス)の温度を適切なものにコントロールしている。
【0004】
一方、冷間時のエンジン始動時には、エンジンの暖機を促進することが求められる。特許文献1では、EGRクーラによって回収した排熱によってエンジンの暖機を行っている。
【0005】
また、特許文献2には、EGRクーラによって生じた凝縮水を化学蓄熱材と反応させて発熱させ、生じた反応熱によって加熱対象物を加熱することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−181654号公報
【特許文献2】特開2014−222057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷間時には、EGRクーラ自体が低温であり、ここでEGRガスが低温になると、酸性の凝縮水が発生し、腐食などの問題が発生する。また、低温のEGRガスを吸気側に戻すと、エンジンの運転にも問題が生じる。そこで、低温時には、EGRガスの循環は停止している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジンの排ガスの一部であるEGRガスを冷却してエンジンの吸気側に戻すEGRクーラを含む排ガス循環システムであって、EGRクーラは、
エンジン冷却水を流通する冷却水流路と、EGRガスを流通するEGRガス流路と、媒体を吸着することによって発熱し、媒体の脱離によって吸熱する化学蓄熱材を充填した反応部と、を含み、媒体流路は、EGRガス流路と反応部の間に存在するとともに、EGRクーラが低温の場合に、反応部へ媒体を導入することによって化学蓄熱材に媒体を吸着することで化学蓄熱材を発熱させてEGRクーラを加温する。
【0009】
また、本発明は、エンジンの排ガスの一部であるEGRガスを冷却してエンジンの吸気側に戻すEGRクーラを含む排ガス循環システムであって、EGRクーラは、
エンジン冷却水を流通する冷却水流路と、EGRガスを流通するEGRガス流路と、媒体を吸着することによって発熱し、媒体の脱離によって吸熱する化学蓄熱材を充填した反応部と、を含み、EGRクーラが低温の場合に、媒体タンクからの媒体を反応部へ導入することによって化学蓄熱材に媒体を吸着することで化学蓄熱材を発熱させてEGRクーラを加温する。
【0010】
また、本発明は、エンジンの排ガスの一部であるEGRガスを冷却してエンジンの吸気側に戻すEGRクーラを含む排ガス循環システムであって、EGRクーラは、
エンジン冷却水を流通する冷却水流路と、EGRガスを流通するEGRガス流路と、媒体を吸着することによって発熱し、媒体の脱離によって吸熱する化学蓄熱材を充填した反応部と、反応部に媒体を送り込むか否かを開閉で切り替えることが可能な媒体バルブと、を含み、エンジン始動後で、媒体バルブが閉じており、
冷却水流路のエンジン冷却水が停止しており、EGRガス流路のEGRガスが停止している状態で、EGRクーラが低温の場合に、媒体バルブを開き反応部へ媒体を導入することによって化学蓄熱材に媒体を吸着することで化学蓄熱材を発熱させてEGRクーラを加温する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、化学蓄熱材の発熱によってEGRクーラを暖機でき、またEGRガスの冷却による熱によって化学蓄熱材の再生ができる。従って、EGRクーラを効果的に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る排ガス循環システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】排ガス循環システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図4】ハイブリッド車の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<システム構成>
図1は、排ガス循環システムの構成を示すブロック図である。本実施形態において、排ガス循環システムは、車両に搭載される。エンジン10は、燃料を燃焼させて回転力を出力する内燃機関であり、この例ではガソリンエンジンである。エンジン10の出力は車両走行の駆動力として利用され、またハイブリッド車では発電機の駆動にも利用される。エンジン10には、吸気管および排気管が接続されており、吸気管から気筒内に吸気し、燃焼後の排ガスを排気管から排出する。燃料は、吸気に含ませても、気筒内に導入してもよい。また、通常は、複数の気筒を有しており、各気筒に吸気管、排気管が個別に接続されるが、外部において吸気管、排気管とも1つにまとめられている。
【0015】
排気管の排ガスは三元触媒などによって、有害物質が除去された後マフラーを介し排出される。ここで、排気管内の排ガスの一部が分岐されてEGRクーラ12に供給され、EGRクーラ12で冷却されたEGRガスが、吸気側に戻される。
【0016】
また、エンジン10には、冷却水通路が設けられ、ここに冷却水を流すことによって冷却される。この冷却水通路は、冷却水配管によってラジエータ14に接続されており、冷却水は、冷却水配管に設けられた冷却水ポンプ16によって、エンジン10内の冷却水通路からラジエータ14に循環される。ラジエータ14は、冷却水を空気との熱交換で冷却する。
【0017】
エンジン10の冷却水通路とラジエータ14を接続する冷却する配管には、三方弁18が設けられ、この三方弁18の操作によって冷却水がEGRクーラ12内の冷却水通路に供給できるようになっている。EGRクーラ12内の冷却水通路を通過した冷却水は冷却水配管を介し、エンジン10内の冷却水通路、ラジエータ14に循環される。
【0018】
そして、EGRクーラ12には、反応部32が設けられており、ここに媒体タンク20が媒体バルブ28を介し接続されている。従って、媒体バルブ28を開くことによって、媒体タンク20からの媒体を反応部32に供給でき、また反応部32からの媒体を媒体タンク20に戻すことができる。なお、媒体は例えばアンモニア(NH
3)であり、この場合には媒体タンク20に活性炭が充填される。
【0019】
<EGRクーラの構成>
図2には、EGRクーラ12の模式的断面図が示してある。ケーシング30は、金属製の密閉容器であり、例えば扁平な直方体状の形状を有する。このケーシング30の内部は反応部32となっている。ケーシング30および反応部32を貫通して2本の冷却水流路34が設けられている。
【0020】
2つの冷却水流路34は、エンジン10内部の冷却水通路とラジエータ14に循環する冷却水の一部の冷却水が流通されるものであり、基本的に反応部32の内部に位置し、端部はケーシング30を貫通して外部に至り、1つの冷却水配管にまとめられる。
【0021】
冷却水流路34の内側には、これを貫通して外部に至るEGRガス流路36が配置されている。このEGRガス流路36には、分岐バルブ24が設けられており、分岐バルブ24の操作によりエンジン10の排ガスの一部がEGRガスとして循環して流通される。
【0022】
図においては、EGRガスの流通方向と、冷却水の流通方向を同一方向としたが、熱交換のためには反対方向(向流)とすることが好適である。なお、ケーシング30が扁平なので、冷却水流路34、EGRガス流路36も扁平形状にすることが好適である。
【0023】
反応部32内の冷却水流路34の外壁には化学蓄熱材38が配置されている。この化学蓄熱材38としては、媒体としてアンモニアが用いられる場合には、塩化ストロンチウム(SrCl
2)や、塩化カルシウム(CaCl
2)が用いられる。化学蓄熱材38は、基本的に固体であり、固定金具や接着材で固定すればよいが、メッシュ材で全体を覆って固定するなどしてもよい。
【0024】
EGRクーラ12には、その温度を計測する温度計22が取り付けられている。温度計22は、EGRクーラ12のケーシングの温度を計測するものでよいが、内部の冷却水通路や、冷却水の温度を計測するものとしてもよい。
【0025】
温度計22の計測結果は、制御部26に供給される。制御部26は、冷却水ポンプ16、三方弁18、分岐バルブ24、媒体バルブ28を制御すると共に、システム全体を制御する。
【0026】
<媒体の吸着脱離>
ここで、反応部32の化学蓄熱材38への媒体の吸着、脱離について説明する。アンモニアは塩化ストロンチウムや、塩化カルシウムと配位結合して吸着され、その際に発熱する。また、アンモニアは活性炭に物理吸着されこの際にも発熱する。このような2つの反応は可逆的な反応であり、温度が高くなった場合には、アンモニアが脱離して吸熱される。そして、アンモニアに対する吸着、脱離の温度が塩化ストロンチウムや塩化カルシウムと、活性炭とで異なる。例えば、理論的な化学平衡の計算によれば、活性炭の温度が25°C、塩化ストロンチウムや塩化カルシウムの温度が50°Cの場合、活性炭からアンモニアが脱離し、塩化ストロンチウムや塩化カルシウムに吸着され、両者の圧力差が0.3atmとなる。従って、媒体タンク20が25°C程度、塩化ストロンチウム、塩化カルシウムが50°C以下の場合には、アンモニアは媒体タンク20から反応部32に圧力差で輸送され、反応部32の化学蓄熱材38がアンモニアを吸着して発熱する。
【0027】
実験によれば、媒体タンク20が25°C程度で、塩化ストロンチウム、塩化カルシウムが70°Cまではアンモニアが塩化ストロンチウム、塩化カルシウムに配位結合して吸着され発熱する。また、塩化ストロンチウム、塩化カルシウムが90°Cであれば、アンモニアは塩化ストロンチウム、塩化カルシウムから脱離し活性炭に物理吸着される。媒体タンク20を若干加熱することで、アンモニアの脱離を促進し、反応部32への移動を促進できる。そして、アンモニアの吸着により急速な加熱が行える。
【0028】
また、化学蓄熱材38として、ゼオライト、媒体として水を採用することもできる。この場合、媒体タンク20内に液体の水を貯留し、これを蒸発させて反応部32に導入してゼオライトに吸着させる。ゼオライトが水(水蒸気)を物理吸着することで、発熱する。ゼオライトを高温状態にすることで、ゼオライトから水蒸気を脱離させ、これを媒体タンク20に導入して液化(相変化)させて水として貯留する。この系では、水を低温で蒸発させる必要があり、系内は減圧状態とされる。
【0029】
<システムの動作>
図3に基づいて、システムの動作について説明する。まず、エンジン10が始動したかを判定し(S11)、エンジン10が始動し、S11の判定がYESになった場合に初期設定を行う(S12)。初期設定では、媒体バルブ28、分岐バルブ24、三方弁18を閉じ、EGRクーラ12への媒体、冷却水、排ガスの流通を停止する。また、始動時はエンジン10の温度も低いので冷却水ポンプ16もオフにするとよい。
【0030】
初期設定をした場合には、EGRクーラ12の温度が第1閾値(例えば、70°C)以上かを判定する(S13)。S13の判定でNOの場合には、EGRクーラ12の暖機運転を行う(S14)。この暖機運転では、媒体バルブ28を開く。エンジン10の始動時には、EGRクーラ12は第1閾値以下で、S13の判定はNOの場合が多いと考えられる。また、EGRクーラ12と、媒体タンク20の温度はあまり変わらない場合が多いと考えられ、媒体タンク20からアンモニアが反応部32に輸送される。これによって、アンモニアが化学蓄熱材38に吸着され、発熱し、急速な加熱が行える。すなわち、ケーシング30、冷却水通路およびその中の冷却水を含むEGRクーラ12が全体として加熱される。なお、排ガス温度が高ければ、EGRガスは流通してもよい。
【0031】
この状態で、S13に戻り判定を繰り返すことで、温度が第1閾値以上になった場合に、加温運転に入る(S15)。この加温運転では、媒体バルブ28を閉じ、分岐バルブ24を開いて排ガスをEGRガスとして、EGRクーラ12内に流通して、エンジン10の吸気側に戻す。エンジン10の排ガスは、その運転が開始されれば、高温となっており、EGRガスによってEGRクーラ12がさらに温度上昇する。また、EGRガスが吸気側に循環することで、エンジン10の燃費を改善できる。また、必要に応じて、冷却水ポンプ16の運転を開始し、エンジン10を冷却する。
【0032】
加温運転をしている状態で、EGRクーラ12の温度が目標となる高温に到達したか、すなわち第2閾値(90°C)以上になったかを判定する(S16)。S16の判定でYESとなった場合には、化学蓄熱材38の再生処理を行う(S17)。この再生処理では、媒体バルブ28を開く。三方弁18は、冷却水温度が第2閾値に到達する前の段階(例えば80°C)で開いておき、水量調整によってEGRクーラ12の温度があまり高くならないように制御する。また、冷却水が沸騰しないように、冷却水ポンプ16を制御する。
【0033】
再生処理の段階では、EGRクーラ12の温度が第2閾値以上の高温であり、媒体バルブ28が開いていれば、媒体(アンモニア)は化学蓄熱材38(塩化ストロンチウム、塩化カルシウム)から脱離され、圧力差で媒体タンク20に至り、活性炭に吸着される。
【0034】
そして、再生完了かを判定し(S18)、YESであれば媒体バルブ28を閉じ(S19)、再生処理を終了する。再生完了の判定は、所定時間としてもよいし、反応部32と媒体タンク20の圧力差、媒体の流量、媒体タンク20の温度(所定の温度上昇)などで判定することもできる。すなわち、冷却水量を制御してEGRガスを目標温度まで冷却する。
【0035】
S19で、媒体バルブ28を閉じた場合には、EGRガス、冷却水を循環する通常運転に入る。なお、通常運転は、エンジン10が停止したときに終了する。通常運転では冷却水量、EGRガス量などを通常通り制御する。
【0036】
<ハイブリッド車の構成>
ここで、
図4にハイブリッド車の概略構成を示す。駆動源としてエンジン10の他にモータジェネレータMG1,MG2を有する。モータジェネレータMG1,MG2には、バッテリ40からの直流電力がインバータなどから構成される電力変換器42−1,42−2でそれぞれ所定の交流電力に変換されて供給される。エンジン10、モータジェネレータMG1,MG2の出力軸は動力伝達機構44に接続されており、動力伝達機構44には駆動軸を介し車輪が接続されている。
【0037】
このようなハイブリッド車において、エンジン10の駆動力によって、車輪を駆動するとともに、モータジェネレータMG2を発電機として機能させて発電することができる。また、モータジェネレータMG2の出力によっても車輪を駆動でき、モータジェネレータMG2によって車輪を回生制動することもできる。モータジェネレータMG1の回生電力、モータジェネレータMG2の発電電力は、電力変換器42-1,42-1を介しバッテリ40に充電される。
【0038】
このようなハイブリッド車では、エンジン10を間欠的に動作して運転する。すなわち、高速走行時や、発電時においてエンジン10を運転するが、常時運転はしていない。このため、冷間時に始動される確率が高い。そして、EGRクーラ12を暖機するために必要な化学蓄熱材38の蓄熱量と、エンジン運転期間にEGRクーラ12を流通するEGRガスの冷却水量とのバランスがガソリン、ディーゼル車に比べてマッチする。そこで、本システムはハイブリッド車に好適である。
【0039】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、化学蓄熱材38の発熱によって急速な温度上昇ができ、EGRを早期に導入できる。すなわち、化学蓄熱材38による化学的蓄熱により、EGRクーラ12、その内部の冷却水(冷却水循環なし)を目標温度まで昇温させるため、発熱量が少なく、加えて化学的蓄熱は単位体積当たりの熱出力が大きいため、短時間で昇温が可能となる。
【0040】
EGRガスの冷却によって得られる熱によって化学蓄熱材38の再生が可能となるため、媒体バルブ28の開閉によってEGRクーラ12の暖機と、化学蓄熱材38の再生が行える。特に、高温のEGRガスを化学蓄熱材38の再生に利用する際、化学蓄熱材38と結合した媒体の脱離に伴う吸熱反応により、EGRガスを冷却できる。
【0041】
再生の際に、冷却水によりEGRクーラ12の温度調整を行っているため、高温のEGRガスによるアンモニアの分解、化学蓄熱材38の融解による性能劣化などを回避することができる。特に、EGRガスと、化学蓄熱材38との間に冷却水の層が存在し、その冷却水の流量調整機能を有することにより、化学蓄熱材38が高温にさらされる危険を回避することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 エンジン、12 EGRクーラ、14 ラジエータ、16 冷却水ポンプ、18 三方弁、20 媒体タンク、22 温度計、24 分岐バルブ、26 制御部、28 媒体バルブ、30 ケーシング、32 反応部、34 冷却水流路、36 EGRガス流路、38 化学蓄熱材、40 バッテリ、42−1,42−2 電力変換器、44 動力伝達機構。