(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベイジアンネットワークから出力された前記複数の設定項目の設定値の少なくとも1つを表示する表示部を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気炉の運転制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る電気炉の運転制御システムが適用される電気炉の一例を示す断面図である。まず、
図1を用いて、本実施形態の電気炉の運転制御システムが適用される電気炉10について説明する。
【0012】
電気炉10は、スクラップ等の鉄源が装入される炉本体12と、炉本体12の上部を塞ぎ、炉本体12に対して着脱自在に設けられた炉蓋14を有する。炉本体12の側面には、水管16が内部に配された水冷パネル18が設けられている。また、炉蓋14の内部にも水管20が設けられている。水冷パネル18の水管16および炉蓋14の水管20には、冷却水が循環される。これにより、炉本体12および炉蓋14が冷却される。
【0013】
炉本体12の外周側底部には、溶鋼22を出鋼するための出鋼口24が設けられている。また、炉本体12の出鋼口24の反対側には、作業口26が設けられている。その作業口26は、作業扉28によって開閉可能となっている。この作業口26から溶鋼22の上の溶融スラグ30が排滓される。
【0014】
アーク電極32は、炉蓋14の中央部を貫通して炉本体12内に垂直に挿入されている。アーク電極32は、不図示の昇降装置と接続されており、当該昇降装置によって上下方向に移動する。炉本体12内に挿入されたアーク電極32は、通電されることによってアークプラズマが発生し、これにより炉本体12内に装入された鉄源を溶解する。
【0015】
また、炉本体12の側面からは、バーナー34およびシュート36が炉本体12内に挿入されている。バーナー34には燃料であるバーナーガスが供給され、バーナー34は、炉本体12に装入された鉄源を側面からカッチングする。なお、カッチングとは、バーナー34を用いて鉄源を側面から切断して崩すことをいう。シュート36は、不図示の炉上ホッパと接続されている。炉上ホッパには、副原料等が収納されている。炉上ホッパに収納された副原料等は、シュート36を介して炉本体12内に装入される。
【0016】
作業口26からは、酸化精錬用の酸素ガスを供給する酸素ランス38が炉本体12内に挿入されている。また、出鋼口24の下側には、受鋼用の取鍋40が配置されている。
【0017】
このような電気炉10を用いて、鉄源の電気炉精錬は、以下の手順によって実施される。まず、炉蓋14を炉本体12の上部から取り外し、初回の鉄源を炉本体12に装入する。その後、炉蓋14およびアーク電極32を炉上に移動し、アーク電極32を炉本体12内の下方に移動する。
【0018】
アーク電極32を下方に移動しながらアーク電極32への通電を開始する。アーク電極32へ通電すると、アーク電極32が形成するアークプラズマによって鉄源が溶解される。さらに、アーク電極32を下方に移動することで、鉄源にボーリング孔が形成される。また、炉本体の側面から挿入されたバーナー34を用いて、鉄源の側面から鉄源をカッチングする。炉本体12内に装入された鉄源は、アーク電極32によって形成されたアークプラズマおよびバーナー34によるカッチングによって溶解される。
【0019】
初回に装入された鉄源が溶解し、追加の鉄源の装入が可能な状態にまで鉄源の体積が減少した段階で、アーク電極32への通電を停止する。また、バーナー34を用いたカッチング作業も停止して、炉蓋14とアーク電極32を炉上部から移動させて、炉本体12の上部を開放する。その後、炉本体12の上部から、追加の鉄源が装入される。
【0020】
追加の鉄源が装入された後、炉蓋14およびアーク電極32は炉上に移動され、再び、アーク電極へ通電して、追加で装入された鉄源を溶解していく。このような炉本体12への鉄源の装入およびアーク電極32およびバーナー34を用いた鉄源の溶解は、予め定められた量の鉄源が炉本体12に装入され、溶解されるまで繰り返し実行される。
【0021】
予め定められた量の鉄源の溶解が完了した後、アーク電極32への通電を継続しつつ、炉上ホッパから消石灰等の造滓材が添加されるとともに酸素ランス38から酸素が供給されて酸化精錬が実施される。その後、生成した溶融スラグを排滓した後、微粉炭等が添加されて還元精錬が実施される。
【0022】
酸化精錬および還元精錬により溶鋼成分が調整された溶鋼は、出鋼口24から取鍋40に出鋼される。なお、出鋼の際、「出鋼温度」が測定され、「溶鋼成分」を分析するための試料が採取される。また、電気炉精錬における「エネルギー効率」および「生産能率」が算出されて、電気炉精錬の1チャージが終了する。
【0023】
電気炉10においては、例えば、「出鋼温度」、「溶鋼成分」、「エネルギー効率」および「生産能率」といった目標項目が予め定められた目標値を満足するように、電気炉10の複数の設定項目を操業条件として設定できる。例えば、電気炉10で使用した電力量は、追加装入前の初期に挿入された鉄源を溶解するのに使用した「追装時電力量」と、炉本体12に装入された全ての鉄源を溶解するのに使用した「溶解電力量」と、溶解後の酸化精錬および還元精錬で使用した「精錬電力量」として設定できる。また、アーク電極32への通電電流および電電圧は、「電流値」および「電圧値」として設定できる。さらに、アーク電極32の高さは、「電極高さ」として設定できる。
【0024】
また、炉本体12に装入する鉄源の種類は、「鉄源種類」として設定でき、鉄源の量は「鉄源量」として設定できる。なお、追加で装入される鉄源種についても、初回に装入される鉄源同様に種類および量がそれぞれ設定できてよいが、本実施形態においては、初回と、それ以降に装入される鉄源とを分けずに、1つの「鉄源種」および「鉄源量」としている。さらに、追加で鉄源が装入される場合には、その初回の装入から追加の鉄源が装入されるまでの時間を「追装タイミング」として設定できる。
【0025】
また、バーナー34に供給される原料としてのバーナーガスの量は、「バーナーガス量」として設定できる。また、酸素ランスより炉上ホッパから装入される炭材量、副原料量およびアルミ灰量についても、「炭材量」、「副原料量」および「アルミ灰量」として、これらの装入量が設定できる。さらに、炉本体12に設けられた水冷パネル14の水管16に循環させる冷却水量は、「水冷パネル水量」として設定でき、炉蓋14に設けられた水管20に循環させる冷却水量は、「炉蓋水量」として設定できる。
【0026】
次に、電気炉10の運転を制御する電気炉の運転制御システムについて説明する。
図2は、本実施形態に係る電気炉の運転制御システム100の一例を示す機能ブロック図である。電気炉の運転制御システム100は、目標項目入力部102と、運転制御部104と、表示部106と、警告部108と、設定項目入力部110と、センサ群112とを有する。
【0027】
目標項目入力部102は、作業者から電気炉10の操業目標、例えば、「出鋼温度」、「溶鋼成分」、「エネルギー効率」および「生産能率」といった目標項目の目標値の入力を受付ける。目標項目入力部102は、受付けた目標値を、運転制御部104に出力する。運転制御部104は、目標値を受付けると、ベイジアンネットワークを用いて当該目標値を達成する複数の設定項目の設定値を出力する。なお、運転制御部104の構成およびベイジアンネットワーク126を用いた処理の詳細は後述する。
【0028】
運転制御部104は、出力された設定値の少なくとも1つを表示部106に表示する。これにより、電気炉10を管理する作業者は、表示部106に表示された設定値を視認できる。
【0029】
設定項目入力部110は、電気炉10を管理する作業者から設定項目の入力を受付ける。設定項目入力部110は、受付けた入力値を運転制御部104に出力する。運転制御部104は、電気炉10の操業条件として当該入力値を設定して電気炉10の操業を制御する。
【0030】
センサ群112は、センサ114およびセンサ116を有する。センサ114および116は、電気炉10の操業後に、電気炉10の目標項目として目標項目入力部110が受付けた「鋼の出鋼温度」、「溶鋼成分」、「エネルギー効率」および「生産能率」の操業結果である結果値を算出するために必要な情報を測定する。なお、
図2に示した例においては、センサ群112は2つのセンサ114、116を有する例を示したが、これに限られず、上述した目標項目の目標値を算出するために必要となる情報を測定するのに必要な数のセンサを備えてよい。センサ群112は、目標値を算出するために必要な情報を測定し、当該情報である測定値を運転制御部104に出力する。
【0031】
運転制御部104は、センサ群112より測定値を取得すると、当該測定値を用いて、当該チャージにおける目標項目である「鋼の出鋼温度」、「溶鋼成分」、「エネルギー効率」および「生産能率」の結果値を算出する。運転制御部104は、設定項目入力部110から入力された入力値と、結果値とを用いてベイジアンネットワークを更新する。
【0032】
次に、運転制御部104の構成およびその処理の詳細について、同じく
図2を用いて説明する。運転制御部104は、目標設定値算出部120と、結果推定値算出部122と、格納部124と、操作部128とを有する。また、格納部124には、複数の設定項目のそれぞれを親ノードとし複数の目標項目のそれぞれを子ノードとするベイジアンネットワーク126が格納されている。このようなベイジアンネットワーク126は、電気炉10の過去の操業データを用いて事前に作成され、格納部124に格納される。
【0033】
図3は、ベイジアンネットワークの一例を示す。ベイジアンネットワーク126は、電気炉10の設定項目である「鉄源種類」、「鉄源量」、「追装タイミング」、「電極高さ」、「電流値」、「電圧値」、「追装時電力量」「溶解電力量」、「精錬電力量」、「バーナーガス量」、「酸素量」、「炭材量」、「副原料量」、「アルミ灰量」、「水冷パネル水量」、「炉蓋水量」を親ノード140とし、電気炉10の目標項目である「鋼の出鋼温度」、「溶鋼成分」、「エネルギー効率」および「生産能率」を子ノード150とする。
【0034】
目標設定値算出部120は、目標項目入力部102から入力された目標値を、
図3に示したベイジアンネットワーク126の結果変数として入力する。そして、ベイジアンネットワーク126の原因変数として、当該目標値を達成するための設定項目の設定値を出力させる。この設定値は、目標項目入力部102に入力された複数の目標項目の全ての目標値を達成するための設定値を意味する。例えば、
図3に例示したベイジアンネットワークを用いる場合、目標項目入力部102から入力された「鋼の出鋼温度」、「溶鋼成分」、「エネルギー効率」および「生産能率」を結果変数として入力し、これらの目標値を達成するための「鉄源種類」、「鉄源量」、「追装タイミング」、「電極高さ」、「電流値」、「電圧値」、「追装時電力量」「溶解電力量」、「精錬電力量」、「バーナーガス量」、「酸素量」、「炭材量」、「副原料量」、「アルミ灰量」、「水冷パネル水量」、「炉蓋水量」の設定値を出力させる。なお、これらの入出力の値は、計算機の処理能力の制約により連続値ではなく、離散値にしてある。
【0035】
目標設定値算出部120は、ベイジアンネットワーク126から出力された設定項目の設定値の少なくとも1つを表示部106に表示させる。上述したように、ベイジアンネットワーク126から出力される設定値は、目標項目入力部102に入力された複数の目標項目の全ての目標値を達成するための設定値である。このような設定値を表示部106に表示させることで、電気炉10を管理する作業者は、表示部106に表示された設定値を視認しながら複数の目標項目の全ての目標値を達成するため設定値を設定項目入力部110から入力できる。これにより、電気炉10を、複数の目標項目の目標値を達成できるように制御できる。
【0036】
操作部128は、設定項目入力部110から入力された設定項目の入力値を電気炉10の操業条件として当該入力値を設定することによって電気炉10の操業を制御する。また、操作部128は、電気炉10の操業条件として設定した入力値を目標設定値算出部120へ出力する。
【0037】
なお、上記において、操作部128は、設定項目入力部110から入力された入力値を電気炉10の操業条件として設定するとしたが、これに代えて、目標設定値算出部120から操作部128に、ベイジアンネットワーク126から出力される設定値を出力させ、操作部128は、当該設定値を電気炉10の操業条件として設定するとしてもよい。また、目標設定値算出部120から、当該設定値が出力されてから予め定められた時間が経過しても、設定項目入力部110から入力値が入力されない場合に、目標設定値算出部120は、ベイジアンネットワーク126から出力された設定値を操作部128に入力値として出力するとしてもよい。
【0038】
結果推定値算出部122は、センサ群112から出力された目標項目の結果値を算出するための情報を用いて、当該チャージの結果値を算出する。結果推定値算出部122は、結果値を目標設定値算出部120へ出力する。
【0039】
目標設定値算出部120は、操業条件として設定した入力値と、結果推定値算出部122から算出された結果値とを格納部124に格納されているベイジアンネットワーク126に電気炉10の実績データに追加して記録し、追加された実績データを含む全ての実績データに基づいてベイジアンネットワーク126における各ノードの確率テーブルを再計算させる。これにより、ベイジアンネットワーク126を更新できる。
【0040】
また、目標設定算出部120は、電気炉10の操業が正常に行なわれたことを判断した場合にベイジアンネットワーク126を更新するとしてもよい。この場合に、結果推定値算出部122は、結果値をベイジアンネットワーク126の結果変数として入力する。そして、ベイジアンネットワーク126の原因変数として、結果値に対応した設定項目の推定値を出力させる。この推定値は、当該チャージの操業結果から推定される設定項目の推定値である。なお、ベイジアンネットワークの子ノードに結果変数を入力し親ノードの原因変数を出力させるといった演算手法は、公知であるので詳細な説明は省略する。
【0041】
結果推定値算出部122は、結果値と、ベイジアンネットワーク126から出力された推定値を目標設定値算出部120に出力する。目標設定値算出部120は、入力値と、入力値に対応した推定値との差を算出し、当該差が予め定められた閾値より大きい場合に、電気炉10の操業が正常に行なわれず、異常であったと判断する。この場合に、目標設定値算出部120は、警告部106に警告を表示させてもよい。
【0042】
例えば、目標設定値算出部120は、「追装時電力量」の入力値と、「追装時電力量」の推定値との差を算出する。そして、当該差が予め定められた閾値より大きい場合は、電気炉10の操業に何らかの異常が発生した蓋然性が高いので、その場合には警告部106に警告を表示させる。これにより、電気炉10を管理する作業者は電気炉10の操業に何らかの異常があったことを視認することができる。
【0043】
一方、目標設定値算出部120は、入力値と、入力値に対応した推定値との差を算出し、当該差が予め定められた閾値以下である場合に、電気炉10の操業が正常に行なわれたと判断する。この場合に、目標設定値算出部120は、入力値と結果値とを格納部124に格納されているベイジアンネットワーク126に電気炉10の実績データとして追加して記録し、追加された実績データを含む全ての実績データに基づいてベイジアンネットワーク126における各ノードの確率テーブルを再計算させる。これにより、ベイジアンネットワーク126を更新できる。
【0044】
なお、入力値と、入力値に対応した推定値との差を算出する項目は、
図3に例示した設定項目の少なくとも1つであればよい。また、入力値と推定値との差を算出する設定項目に対応させて、電気炉10の操業における異常の種類を推定してもよい。目標設定値算出部120は、入力値と入力値に対応した推定値との差に代えて、入力値と入力値に対応した推定値との差の絶対値を算出してもよい。
【0045】
また、
図2に示した運転制御部104は、例えば、CPUを具備するPC等で構成されてよい。その場合に、運転制御部104の各機能は、格納部に格納されたプログラムを読み出して、当該CPUで実行することによって実現される。また、
図2に示した例においては、運転制御部104は、目標項目入力部102、表示部106、警告部108および設定項目入力部110を含まない例を示したが、運転制御部104は、これらの一部または全部を含んでもよい。さらに、センサ群112は、電気炉10が有していてもよい。
【0046】
さらに、1つの電気炉の運転制御システム100は、電気炉10に対し1つ設けられた例を示したが、これに限られない。例えば、1つの電気炉の運転制御システム100で複数の電気炉の操業を制御してもよい。また、1つの電気炉の運転制御システム100に対して格納部124に格納されたベイジアンネットワーク126を有する例を示したが、これに限られない。例えば、1つのベイジアンネットワーク126を複数の電気炉の運転制御システム100で共有してもよい。
【0047】
次に、電気炉の運転制御システム100で行われる処理について説明する。
図4は、電気炉の運転制御システムによる設定項目の表示処理を説明するフロー図である。
図4に示した処理は、電気炉の運転制御システム100が立ち上げられた場合に開始される。まず、目標項目入力部102から作業者による目標値が入力され、目標設定値算出部120は、当該目標値を取得する(ステップS101)。目標設定値算出部120は、ベイジアンネットワーク126を用いて、当該目標値を達成するため設定値を出力させる(ステップS102)。目標設定値算出部120は、出力された設定値の少なくとも1つを表示部106に表示させる(ステップS103)。
【0048】
目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されているか否かを判断する(S104)。目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されていると判断した場合(ステップS104:Yes)、当該処理を終了する。一方、目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されていないと判断した場合(ステップS104:No)、処理をステップS101に戻して、再び目標値を取得するまで待機する。
【0049】
図4に示した処理が実行されることで、電気炉の運転制御システム100は、ベイジアンネットワーク126を用いて、複数の目標値を同時に達成するための設定値を表示部106に表示できる。これにより、電気炉10を管理する作業者は、表示部106に表示された設定値を視認でき、複数の目標項目の全ての目標値を達成するため設定値を設定項目入力部110から入力できる。これにより、管理者は、電気炉10を複数の目標項目の目標値を達成できるように制御できる。
【0050】
図5は、電気炉の運転制御システムによるベイジアンネットワークの更新処理を説明するフロー図である。
図5に示した処理も、電気炉の運転制御システム100が立ち上げられた場合に開始される。なお、
図5に示した処理におけるステップS201およびステップS202の処理は、
図4に示した処理におけるステップS101およびステップS102と同じ処理が実行されるので、その説明を省略する。
【0051】
ステップS203において、目標設定値算出部120は、操作部128に入力された入力値を取得する。また、結果推定値算出部122は、センサ群112から測定値を取得する(ステップS204)。結果推定値算出部122は、測定値を用いて電気炉10の目標値に対応した結果値を算出し(ステップS205)、当該結果値を目標設定値算出部120に出力する。目標設定値算出部120は、入力値と結果値を格納部124に格納されているベイジアンネットワーク126に電気炉10の実績データとして追加して記録し、追加された実績データを含む全ての実績データに基づいてベイジアンネットワーク126における各ノードの確率テーブルを再計算させて、ベイジアンネットワーク126を更新する(ステップS206)。
【0052】
目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されているか否かを判断する(S207)。目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されていると判断した場合(ステップS207:Yes)、当該処理を終了する。一方、目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されていないと判断した場合(ステップS207:No)、処理をステップS201に戻して、再び目標値を取得するまで待機する。
【0053】
図5に示した処理が実行されることで、電気炉の運転制御システム100は、電気炉10の操業データを用いて、ベイジアンネットワークを更新できる。これにより、仮に電気炉10がチャージ数によって状態が変化したとしても、当該変化に追従してベイジアンネットワークを更新できる。
【0054】
図6は、電気炉の運転制御システムによるベイジアンネットワークの他の更新処理を説明するフロー図である。
図6に示した処理も、電気炉の運転制御システム100が立ち上げられた場合に開始される。なお、
図6に示した処理におけるステップS301からステップS305までの処理は、
図5に示した処理におけるステップS201からステップS205までと同じ処理が実行されるので、その説明を省略する。
【0055】
ステップS306において、結果推定値算出部122は、ベイジアンネットワーク126を用いて、結果値に対応した設定項目の推定値を出力させ、当該結果値と推定値とを目目標設定値算出部120に出力する。目標設定値算出部120は、入力値と推定値との差が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する(ステップS307)。目標設定値算出部120は、入力値と推定値との差が予め定められた閾値以下であると判断した場合(ステップS307:Yes)、目標設定値算出部120は、入力値と結果値を格納部124に格納されているベイジアンネットワーク126に電気炉10の実績データとして追加して記録し、追加された実績データを含む全ての実績データに基づいてベイジアンネットワーク126における各ノードの確率テーブルを再計算させて、ベイジアンネットワーク126を更新する(ステップS308)。
【0056】
一方、目標設定値算出部120は、入力値と推定値との差が予め定められた閾値より大きいと判断した場合(ステップS307:No)、目標設定値算出部120は、電気炉10の操業が正常に行なわれず、異常であったと判断する。この場合に、目標設定値算出部120は、警告部106に警告を表示させる(ステップS309)。
【0057】
目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されているか否かを判断する(ステップS310)。目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されていると判断した場合(ステップS310:Yes)、当該処理を終了する。一方、目標設定値算出部120は、電気炉の運転制御システム100の終了条件が満足されていないと判断した場合(ステップS310:No)、処理をステップS301に戻して、再び目標値を取得するまで待機する。
【0058】
図6に示した処理が実行されることで、電気炉の運転制御システム100は、電気炉10の操業が正常に行なわれたか否かを判断し、正常に行われた場合に限って、ベイジアンネットワークを更新するようになる。これにより、何らかの問題により、電気炉10の操業が正常に行なわれなかった場合に、当該操業の結果値でベイジアンネットワーク126が更新されることを防ぐことができる。
【0059】
なお、本実施形態において、センサ114および116は、電気炉10の操業後に操業結果である結果値を算出するために必要な情報を測定する例を示したが、これに限られない。センサ114および116は、電気炉10の操業中においても目標値に対する結果値を算出するために必要な情報を測定してもよい。
【0060】
その場合に、予め、格納部124に、電気炉精錬の各途中段階における目標値に対する設定値を出力できる複数のベイジアンネットワークを格納してよい。例えば、初期鉄源が溶解されるまでの目標値を子ノードとし初期の設定値を親ノードとするベイジアンネットワークを格納してよく、さらに、全ての鉄源が溶解されるまでの目標値を子ノードとし初期の設定値を親ノードとするベイジアンネットワークを格納してよく、酸化精錬が終了するまでの目標値を子ノードとし初期の設定値を親ノードとするベイジアンネットワークを格納してよく、さらには、還元精錬が終了するまでの目標値を子ノードとし初期の設定値を親ノードとするベイジアンネットワークを格納部124に格納してよい。そして、各途中段階においてセンサ114および116によって測定された情報を用いて、結果推定値算出部122は、各途中段階における目標値に対する結果値を算出する。結果推定値算出部122は、各途中段階に対応したベイジアンネットワークを用いて、結果値に対応した設定項目の推定値を出力させる。そして、目標設定値算出部120は、当該推定値と入力値との差を用いて、途中段階における電気炉10の操業が異常であるか否かを判断し、異常と判断した場合に、警告部106に警告を表示させてもよい。これにより、電気炉10の操業の異常を早期に発見でき、早期に対処できる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中に示した装置、システムおよび方法における動作、手順およびステップの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるものでない限り、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書および図面中のフローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。