【実施例】
【0024】
本発明の金属製メッシュコーヒーフィルター1(以下、単にフィルター1と称することがある)は、金属製メッシュにより下窄まりの容器状に形成されたフィルター本体2を主な構成部材とする。このフィルター本体2は、一例として
図1・
図2に示すように、市販されている一般的なペーパーフィルターと同様に、上方が開口されるとともに、下方に向かって窄まるような傾斜状に形成され、この傾斜面が実質的なフィルター面(濾過面)を構成する。また、当然ながら、コーヒー抽出の際には、上記フィルター面で周囲が取り囲まれたフィルター本体2の内側空間に、適量のコーヒー粉Pが投入されるものであり、この空間をコーヒー粉収容部Rとする。
そして、本発明では、このフィルター本体2を金属製メッシュによって形成するものであり、当該金属製メッシュにおいて、水平方向に沿って配設される横線同士の間隙寸法(空間距離)を、垂直方向に沿って配設される縦線同士の間隙寸法よりも小さく形成し、フィルター面の縦横でメッシュの目開きが異なるように形成している。なお、このように金属製メッシュの縦と横で目開きを異ならせるため、縦線と横線の線径も異なり、特に本発明では縦線の線径が横線よりも大きく形成される。
【0025】
また下窄まり状を呈するフィルター本体2は、一例として
図4の拡大図に示すように、横線同士の間隙寸法が、垂直方向から視た投影距離でコーヒー粉の微粉(例えば約20μm)よりも小さい寸法に設定される。一方、縦線同士の間隙寸法は、傾斜状のフィルター面を正面から視た正面視でコーヒー粉の微粉よりも大きな間隙寸法に設定される。
より詳細に上記寸法を説明すると、例えば横線の線径約20μm、間隙寸法約20μm(概ね600メッシュ程度)の場合、垂直方向から視た投影距離では横線同士の間隙寸法は約3μmとなり、これはコーヒー粉の微粉サイズ(約20μm)よりも小さい寸法である。なお、この垂直方向から視た投影距離は、フィルター面の傾斜角度によって異なるが、ここではフィルター本体2を、一般的な家庭で備えていることが多い簡易ドリッパーD(扇形ドリッパーとも呼ばれ、折り畳み状態で略等脚台形状(扇形状)のペーパーフィルターを拡げ、内密着状態にセットする簡易抽出器)の角度に合わせた傾斜角度としており、一例として片側の開き角度が約35度である。
【0026】
このように横線同士の間隙寸法(垂直方向から視た投影距離)を、コーヒー粉の微粉サイズ(約20μm)よりも小さい寸法に設定することで、微粉の通過を阻むようにしたものである。
一方、縦線同士の間隙寸法は、コーヒー粉の微粉サイズ(約20μm)よりも大きな間隙寸法、例えば線径約50μm、間隙寸法約104μm(概ね165メッシュ程度)とし、抽出したコーヒー液の通り抜け性を向上させ、抽出時間の長時間化を防ぐようにしている。
【0027】
すなわち、本発明では金属製メッシュの横線方向をコーヒー粉の微粉サイズよりも小さいメッシュ(目開き)に形成して、微粉の通過を阻止する一方、金属製メッシュの縦線方向をコーヒー粉の微粉サイズよりも大きいメッシュ(目開き)に形成して、抽出時間の短縮化を図るようにしたものである。
なお、上述したメッシュ(目開き)は、あくまでも一例であり、横線方向のメッシュは、500〜650メッシュ程度まで適用でき、縦線方向のメッシュは、100〜250メッシュ程度まで適用できる。
【0028】
また、フィルター本体2は、始発状態では平面展開状のフラット状メッシュW0を折り曲げて立体的な形状に形成するものであり、フラット状メッシュW0を得るには、例えば金属製のメッシュシートから打ち抜いて得る。ここでフラット状メッシュW0の平面展開形状としては、例えば
図2に示すように、略等脚台形を二枚連続して並べた形状を呈し、これを折れ線WBで重ね合わせるように折り曲げる。この際、当接する辺同士を接合して(接合部WJ)、立体的な下窄まり形状のフィルター本体2に形成するものであり(詳細は後述)、このためフィルター本体2には接合部WJや上方開口部等に補強枠3が設けられる
。ここでフィルタ本体2の接合部WJに設けられる補強枠3を接合部補強枠31とし、開口部に設けられる補強枠3を開口部補強枠32とする。以下、これら補強枠3について説明する。
【0029】
接合部補強枠31は、上記のようにフラット状メッシュW0を立体化形成する際に、当接辺同士を突き合わせ、適宜の幅寸法で接合するフレーム部材であり、一方の接合辺から折れ線WBを通過して他方の接合辺に至るまで連続状態に設けられる。すなわち、接合部補強枠31は、立体化状態で下窄まり状を成すフィルター本体2の下部となる折れ線WBと、その延長線上に位置する側周面上の対向二線(二つの接合線(接合部WJ))とを連続状につなぐように形成される。
なお、接合部補強枠31は、一例として
図2(c)に示すように、フラット状メッシュW0の当接辺同士(接合部WJ)を突き合わせとし、ここをフィルター本体2の内側(フィルター面側)と外側とから接合部補強枠31で挟持するようにしており、この挟持状態で接合部補強枠31と金属製メッシュ(突き合わせ部)を溶接(例えばスポット溶接等)して一体化させるものである。ここで接合部補強枠31を内側と外側で区別する場合には、接合部内側補強枠31A、接合部外側補強枠31Bとする。
またフィルター本体2(フィルター面)が、下窄まりの傾斜状に形成されることから、接合部外側補強枠31Bは、接合部内側補強枠31Aよりも幾らか幅広状に形成されることが好ましい。
【0030】
因みに、接合部WJは、
図2(d)に示すように、当接辺同士を重ね合わせるのではなく、上記
図2(c)に示すように、双方を突き合わせとすることが好ましく、これにより接合部補強枠31とフィルター面(金属製メッシュ)との間に段差(隙間)が生じ難く(特にフィルター本体2の内側)、抽出時に当該部位へのコーヒー粉Pの入り込みが効果的に防止できる。
逆に言えば、上記
図2(d)に示すように、当接辺同士を重複するように重ね合わせた場合には、接合部補強枠31とフィルター面との間に段差(隙間)が生じ易くなり、抽出時(特にフィルター本体の内側)、当該隙間にコーヒー粉Pが入り込み易くなることが懸念される。
【0031】
次に、開口部補強枠32について説明する。
開口部補強枠32は、上記のようにフィルター本体2の開口部を補強するために設けられるフレーム部材であり、開口部補強枠32もフィルター本体2の開口縁を内側と外側から全周にわたって挟持するように設けられる。そして、この挟持部分で開口部補強枠32と金属製メッシュ(フラット状メッシュW0)とを溶接(例えばスポット溶接等)して一体化させるものである。なお、開口部補強枠32を内側と外側で区別する場合には、開口部内側補強枠32A、開口部外側補強枠32Bとする。
因みに、開口部内側補強枠32Aは、一例として
図1の拡大図に示すように、天面で外周側に張り出すように折り曲げ状に形成され、更にその一部を外周側に突出状に張り出させて、フィルター1の把手33を構成するものである。
また、開口部補強枠32は、接合部補強枠31の上端に当接し、フレーム部材として一体化するように設けられることが好ましく、これによりフィルター本体2の全体的な強度アップを図ることができる。
【0032】
また、下窄まり状を成すフィルター本体2自体は、家庭用の簡易ドリッパーDの内側に装着されるペーパーフィルターの形状及び大きさに形成されることが好ましい。これにより例えば
図3に示すように、ユーザーが簡易ドリッパーDを既に所持している場合には、ペーパーフィルターの代わりに上記フィルター本体2を簡易ドリッパーDにセットして、コーヒーを抽出することができ、ペーパーフィルターを購入する必要がなくなるものである。
【0033】
もちろんコーヒー抽出にあたっては、このような簡易ドリッパーDを使用しない抽出態様を採ることも可能であり、以下、これについて説明する。
このための部材が、一例として
図1に示すように、フィルター本体2の下部に着脱自在に設けられるカップ載置台4であり、これによりたとえユーザが簡易ドリッパーDを所持していなくても、フィルター本体2をカップCの上方に保持することができる。
カップ載置台4は、例えばコーヒー液を貯留するカップC(二杯分以上のコーヒー液を貯留できるサーバ等を含む)の開口縁部に載置される中空円板41を具え、そのほぼ中央部にフィルター本体2(接合部補強枠31)との着脱自在構造40を具える。そして中空円板41と着脱自在構造40とは、適宜の接続ロッド42で接続され(ここでは断面矩形状のロッドを放射状に三本設置)、中空円板41に開口された中空部(接続ロッド42以外の部分)を通して、フィルター本体2で抽出したコーヒー液をカップCに落下投入させるものである。
【0034】
なお、カップ載置台4をフィルター本体2に着脱自在に取り付けられるようにした場合には、着脱自在構造40はフィルター本体2にも設けられる。
このような着脱自在構造40としては、例えばフィルター本体2(接合部補強枠31)の下部にオネジのネジ部を下向き突出状に設けておくとともに、カップ載置台4の中央部にメネジ(ナット)を設けておき、取付時には、カップ載置台4(メネジ)を回転させてフィルター本体2に取り付けるものである。もちろん、フィルター本体2(接合部補強枠31)の下部にメネジ(ナット)を設けておき、カップ載置台4の中央部にオネジを設けておくことも可能である。
なお、フィルター1のバリエーションとしては、例えばカップ載置台4をフィルター本体2(例えば対向する接合部WJを接合した接合部補強枠31の途中位置)に一体的に固定しておくことも考えられ、その場合にはフィルター本体2に対するカップ載置台4の着脱は行わないため、当然、上記着脱自在構造40も不要となる。
【0035】
本発明のフィルター1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、このようなフィルター1の製造方法について説明する。
(1)フラット状メッシュの平面展開形状
フィルター本体2は、上述したように始発状態で平面展開状を成すフラット状メッシュW0から立体的に形成されるものであり、その平面展開形状としては、一例として
図2(a)・(b)に示すように、フィルター本体2の下端縁(立体形成したときの下端縁)を対称線(ここが折れ線WBになる)として二枚の略等脚台形を左右対称に並べた展開形状とする。
なお、フラット状メッシュW0を得るにあたっては、上述したように例えば長尺状のメッシュシートから上記形状のフラット状メッシュW0を打ち抜くことで得ることができる。
また、上記
図2(b)は、
図2(a)に比べ、対称線(折れ線WB)を短く形成し、立体的なフィルター本体2として略円錐状を成すように形成した実施例であり、従来の円錐形ドリッパーに対応したフィルター本体2を想定したものである。
【0036】
(2)フラット状メッシュの折り曲げ
その後、平面展開形状のフラット状メッシュW0を立体的なフィルター本体2に形成するものであり、これには前記対称線である二枚の略等脚台形の上底を折れ線WBとして、各々の略等脚台形を互いに重ねわせるように折り曲げ、前記折れ線WBの端部を基点(始点)とする各々の略等脚台形の二辺を突き合わせるようにして立体化形成する。
【0037】
なお、フラット状メッシュW0の展開形状について「(二枚の)略等脚台形」と称したのは、フラット状メッシュW0を二枚の台形と見た場合、下底に相当する部分が、直線(線分)ではなく円弧状に形成されているためである。また、当該下底(台形として見た場合の下底)を円弧状に形成したのは、一般的なペーパーフィルター(扇形ペーパーフィルター)の形状に倣ったものであり、これは平面展開形状で扇形を丸めると立体的な円錐形状(底部が同一平面となる円錐)になることに起因する。しかしながら、当該下底は、立体的なフィルター本体2を形成した状態では、フィルター本体2の上端開口縁を構成する部位であり、コーヒー粉Pの通過を阻むフィルター機能は担っていないため、例えば立体化形成された状態でフィルター本体2の上端開口縁が同一平面上になくてもよい場合や、この上端開口縁に開口部補強枠32を設けない場合等には、必ずしも当該下底を平面展開状態で円弧状に形成する必要はない。このように当該下底の形状は、ある程度の自由度を持って形成され得るため、特許請求の範囲においても「略(等脚台形)」と称したものである。
【0038】
また、このような平面展開形状のフラット状メッシュW0を折れ線WB(対称線)で折
り曲げるようにして下窄まり状の立体的なフィルター本体2に形成するため、フラット状メッシュW0を得る段階で、例えば
図2(a)・(b)に示すように、メッシュの目開きを構成する横線が当該折れ線WB(対称線)と平行になるようにフラット状メッシュW0を得るものである。
なお、平面展開されたフラット状メッシュから立体的なフィルター本体、特に下端部が尖った円錐状フィルターを形成するには、例えば
図5に示すように、始発形状を扇形に形成しておき、この扇形の二辺を突き合わせるように扇形を丸めて立体的な円錐状フィルターに形成することが考えられるが、このような形成手法では、完成後の目開きの縦横の大小関係が立体的フィルターの各部で相違する部位があり、所望の抽出ができない。すなわち、この場合には、完成後の立体的フィルターにおいて、水平方向に沿って配設される横線同士の間隙寸法が、垂直方向に沿って配設される縦線同士の間隙寸法よりも大きく形成される部位が生じてしまい、当該部位ではコーヒー粉の微粉を通過させてしまうものである。
このため本発明ではフィルター本体2の形成にあたっては、あくまで二枚の略等脚台形を並べたフラット状メッシュW0を対称線(折れ線WB)で折り曲げるようにして立体化形成するものであり、かりに略円錐状のフィルター本体2を形成したい場合には、上記
図2(b)に示すように、対称線(折れ線WB)の長さを比較的短く形成して略円錐状のフィルター本体2を形成するものである。
【0039】
(3)突き合わせ部の接合(接合部補強枠)
以上のようにして、フラット状メッシュW0において対向する略等脚台形の二辺を突き合わせた後、この突き合わせ部(接合部WJ)を接合部補強枠31で、フィルター本体2の内側と外側とから挟み込み、この挟持状態で接合部補強枠31と金属製メッシュ(フィルター本体2)とを溶接(例えばスポット溶接)により接合するものである(
図2(a)・(c)参照)。
なお、スポット溶接の間隔は、突き合わせ部(接合部WJ)の上下にわたって等間隔でも構わないが、フィルター面の濾過作用は下側(約下半分)が主となるため、下方ほど溶接の間隔を小さくすることが好ましい。
また、接合部補強枠31は、前記折れ線WB(対称線)となるフィルター本体2の下端縁(立体化形成したときの下端縁)を通過して両側の突き合わせ部(接合部WJ)と連続するように設けられ、これによりフィルター本体2としての強化が図られ、またカップ載置台4の着脱自在構造40が構成し易い構造となっている。
【0040】
(4)開口部補強枠
またフィルター本体2の開口部にも全周にわたって開口部補強枠32を設ける。このうち、開口部内側補強枠32Aは、天面で外周側に張り出すように折り返し状に形成され、その一部を外周側に突出状に張り出し、フィルター1の把手33を構成するものである。
【0041】
(5)セラミックの焼き付け塗装
その後、このように形成されたフィルター本体2には、表面にセラミックの焼き付け塗装を施すことが好ましく、これは親水性を高める塗装処理である。具体的には、フィルター面に汚れが付着した場合、フィルター本体2を水に漬けておくだけで、水が塗装膜と汚れとの間に入り込み、汚れを浮かび上がらせ、落とし易くするものである。すなわち、このような塗装により、フィルター本体2が汚れても、水洗いだけで簡単に洗浄でき、日常的な衛生管理が誰でも手軽に行えるものである。
【0042】
なお、フィルター本体2にはカップ載置台4を設けることが可能であり、この場合にはフィルター本体2(接合部補強枠31)とカップ載置台4とに着脱自在構造40を設けることが好ましい。因みに、この着脱自在構造40としては、オネジとナット(メネジ)の組み合わせ等が適用できる。
また、カップ載置台4をフィルター本体2に取り付けた場合には、簡易ドリッパーDを用いてなくても、
図1に示すように、このカップ載置台4をカップCに載せることで、カップCの上方にフィルター本体2を安定的に保持することができ、安定したコーヒー抽出が行える。
もちろん、フィルター本体2にカップ載置台4を取り付けずに抽出を行うこともでき、この場合には例えば
図3に示すように、市販されているペーパーフィルターと同様に、簡易ドリッパーDにフィルター本体2を内嵌め状態にセットしてコーヒー抽出を行う。この場合、本発明のフィルター1(フィルター本体2)が繰り返し使用でき、ユーザはペーパーフィルターを購入する必要がなくなり、また今まで廃棄していたペーパーフィルターが不要になる分、ゴミ排出量の低減につながるものである。