【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、
図1に示すように、モータ30と、インバータ40と、バッテリ42と、メイン電子制御ユニット50と、充電システム70とを備える。
【0014】
モータ30は、例えば同期発電電動機として構成されており、駆動輪22a,22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。インバータ40は、モータ30と接続されると共に電力ライン44を介してバッテリ42と接続されている。モータ30は、メイン電子制御ユニット50によって、インバータ40の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。バッテリ42は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン44を介してインバータ40と接続されている。
【0015】
充電システム70は、充電器72と、充電用電子制御ユニット(
図1では「充電ECU」と表示)76とを備える。充電器72は、電力ライン44に接続されており、接続コネクタ73が自宅や充電ステーションなどの充電ポイントで家庭用電源や工業用電源などの外部電源79に接続されているときに、外部電源79からの電力を用いてバッテリ42を充電するように構成されている。この充電器72は、図示しないAC/DCコンバータとDC/DCコンバータとを備える。AC/DCコンバータは、接続コネクタ73を介して供給される外部電源79からの交流電力を直流電力に変換する。DC/DCコンバータは、AC/DCコンバータからの直流電力の電圧を変換してバッテリ42側に供給する。この充電器72は、接続コネクタ73が外部電源79に接続されているときに、充電用電子制御ユニット76によって、AC/DCコンバータとDC/DCコンバータとが制御されることにより、外部電源79からの電力をバッテリ42に供給する。
【0016】
充電用電子制御ユニット76は、図示しないがCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートなどを備える。充電用電子制御ユニット76には、充電器72に取り付けられた各種センサからの信号や、接続コネクタ73に取り付けられて接続コネクタ73が外部電源79に接続されているか否かを判定する接続スイッチ74からの接続信号などが入力ポートを介して入力されている。充電用電子制御ユニット76からは、充電器72のAC/DCコンバータやDC/DCコンバータへの制御信号などが出力ポートを介して出力されている。充電用電子制御ユニット76は、メイン電子制御ユニット50と通信をしており、メイン電子制御ユニット50と各種情報のやりとりを行なっている。
【0017】
メイン電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に、処理プログラムを記憶するROM54,データを一時的に記憶するRAM56,データを記憶保持する不揮発性メモリとしてのEEPROM58,入出力ポート,通信ポートなどを備える。メイン電子制御ユニット50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。メイン電子制御ユニット50に入力される信号としては、例えば、モータ30の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ30aからのモータ30の回転位置θmや、モータ30の各相に流れる電流を検出する電流センサからの相電流Iu,Iv,Iwなどを挙げることができる。また、バッテリ42の端子間に設置された電圧センサからのバッテリ42の電圧Vbや、バッテリ42の出力端子に取り付けられた電流センサからのバッテリ42の電流Ibなども挙げることができる。さらに、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号や、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP、アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ68からの車速Vなども挙げることができる。メイン電子制御ユニット50からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。メイン電子制御ユニット50から出力される信号としては、例えば、インバータ40の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号や、運転席の前方のインストルパネルに取り付けられた表示装置69への表示制御信号などを挙げることができる。メイン電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ30aからのモータ30のロータの回転位置θmに基づいてモータ30の角速度ωmや回転数Nmを演算したり、電流センサからのバッテリ42の電流Ibの積算値に基づくバッテリ42の蓄電割合SOCを演算したりしている。なお、バッテリ42の蓄電割合SOCは、バッテリ42の全容量に対するバッテリ42から放電可能な電力の容量の割合である。メイン電子制御ユニット50は、充電用電子制御ユニット76と通信をしており、充電用電子制御ユニット76と各種情報のやりとりを行なっている。
【0018】
こうして構成された実施例の電気自動車20は、メイン電子制御ユニット50により運転者の操作に基づいて駆動制御を実行することにより走行する。駆動制御は、基本的には、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸26に要求される要求トルクTp*を設定し、設定した要求トルクTp*をモータ30の最大許容出力Tlimで制限(上限ガード)してモータ30のトルク指令Tm*を設定し、モータ30がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ40の複数のスイッチング素子をスイッチング制御することにより行なわれる。
【0019】
実施例の電気自動車20では、システム起動時の異常検出や走行中の定期的な異常検出に異常を検出したときには、表示装置69にメッセージを表示出力する。
図2は、充電システム70に関する異常(以下、「充電系の異常」という。)が生じたときに表示装置69にメッセージを表示出力する際にメイン電子制御ユニット50により実行される異常表示処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、充電系の異常が検出されないときには所定時間毎(例えば1秒毎など)に繰り返し実行される。
【0020】
異常表示処理ルーチンが実行されると、メイン電子制御ユニット50のCPU52は、まず、充電系の異常を検出しているか否かを判定する(ステップS100)。充電系の異常検出には、充電用電子制御ユニット76による充電器72の機能チェックや接続コネクタ73の機能チェック、接続スイッチ74の故障チェック、充電器72や接続スイッチ74との信号線の断線チェックが含まれる。また、充電系の異常検出には、メイン電子制御ユニット50と充電用電子制御ユニット76との通信異常も含まれる。充電系の異常だけでなく各種の異常が検出されると、異常の部位と種類に基づいて区分されて異常判定フラグが設定され、EEPROM58に記憶される。したがって、ステップS100では、異常判定フラグにより充電系の異常が検出されているか否かを判定する処理となる。充電系の異常が検出されていないときには、異常のメッセージを表示する必要がないため、本ルーチンを終了する。
【0021】
一方、充電系の異常を検出しているときには、検出した充電系の異常が走行に影響のある異常であるか否かを判定する(ステップS110)。充電系の異常のうち走行に影響のある異常としては、接続コネクタ73の異常や接続スイッチ74の異常、充電用電子制御ユニット76との通信異常などを挙げることができる。充電器72の接続コネクタ73が外部電源79に接続されているときには、実施例では、走行停止する制御が行なわれるが、接続コネクタ73に異常が生じていたり接続スイッチ74に異常が生じていると、外部充電を行なっているか否かの判断を行なうことができず、走行停止する制御を行なうか否かの判断もできなくなってしまう。このため、実施例では、接続コネクタ73の異常や接続スイッチ74の異常は走行に影響のある異常に区分されている。また、メイン電子制御ユニット50と充電用電子制御ユニット76との通信に異常が生じると、メイン電子制御ユニット50は接続コネクタ73の異常や接続スイッチ74の異常を正しく受信することができないため、接続コネクタ73の異常や接続スイッチ74の異常と同様に充電用電子制御ユニット76との通信異常も走行に影響のある異常に区分されている。一方、充電系の異常のうち走行に影響のない異常としては、充電器72の機能異常などを挙げることができる。充電器72の機能異常は、外部電源79からの電力を用いてバッテリ42を充電する際に、良好に充電することができないだけで、走行には影響を及ぼさないため、実施例では走行に影響のない異常に区分されている。
【0022】
ステップS110で充電系の異常が走行に影響のある異常であると判定したときには、直ちに走行に影響のある異常が生じている旨のメッセージ、例えば「駆動系システム故障」のようなメッセージを表示装置69に表示出力して(ステップS120)、本ルーチンを終了する。これにより、運転者は直ちに走行に影響のある異常が生じたことを知り、退避走行して停車することができる。
【0023】
ステップS110で充電系の異常が走行に影響のない異常であると判定したときには、次のトリップが開始されるのを待って(ステップS130)、充電系に異常が生じている旨のメッセージ、例えば「充電システム故障」のようなメッセージを表示装置69に表示出力して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。これにより、運転者は走行を開始する前に充電システム70に異常が生じていることを知ることができる。ここで、次のトリップが開始されるタイミングとしては、次のシステム起動時の異常検出直後のタイミングを考えることができる。具体的には、システム起動時の異常検出においてチェックされるフラグに、充電系に異常が生じている旨のメッセージを表示装置69に表示出力する制御を実行するための表示用値をセットし、次のシステム起動時の異常検出において、フラグの値を調べ、その値が表示用値のときに充電系に異常が生じている旨のメッセージを表示装置69に表示出力することにより行なうことができる。
【0024】
以上説明した実施例の電気自動車20では、充電系の異常が検出されたときには、充電系の異常が走行に影響のある異常であるか否かを判定する。充電系の異常が走行に影響のある異常であると判定したときには、直ちに走行に影響のある異常が生じている旨のメッセージを表示装置69に表示出力する。これにより、運転者は直ちに走行に影響のある異常が生じたことを知り、退避走行して停車することができる。一方、充電系の異常が走行に影響のない異常であると判定したときには、次のトリップが開始されるのを待って充電系に異常が生じている旨のメッセージを表示装置69に表示出力する。これにより、運転者は走行を開始する前に充電システム70に異常が生じていることを知ることができ、走行中に走行に影響のない充電系の異常が表示装置69に表示されることによって生じる不都合(例えば、運転者が異常のメッセージに対して過剰に反応する不都合)を回避することができる。これらの結果、充電系の異常が生じたときに、より適切なタイミングで異常を報知することができる。
【0025】
実施例では、モータ30とインバータ40とバッテリ42と充電システム70とを備える電気自動車20の構成とした。しかし、
図3に例示するいわゆるプラグインハイブリッド自動車120に示すように、モータ30とインバータ40とバッテリ42とに加えて、エンジン122とプラネタリギヤ124とモータ130とインバータ140と充電システム70とを備える構成としてもよい。ここで、プラネタリギヤ124のサンギヤにはモータ130が接続されており、キャリヤにはエンジン122が接続されており、リングギヤには駆動軸26およびモータ30が接続されている。インバータ140は、モータ130を駆動すると共にバッテリ42と電力をやりとりする。このハイブリッド自動車120では、メイン電子制御ユニット50により、エンジン122を運転しながらエンジン122からの動力とモータ30,130からの動力とによって走行するハイブリッド走行(HV走行)モードで走行したり、エンジン122を運転せずにモータ30からの動力によって走行する電動走行(EV走行)モードで走行したりする駆動制御が行なわれる。この構成では、充電系の異常が走行に影響のある異常である場合には、例えば「ハイブリッドシステム故障」のようなメッセージを表示装置69に表示し、充電系の異常が走行に影響のない異常である場合には、例えば「プラグイン充電システム故障」のようなメッセージを表示装置69に表示するものとしてもよい。
【0026】
実施例の電気自動車20では、異常が生じた旨のメッセージを表示装置69に表示出力するものとしたが、異常が生じた旨のメッセージを表示装置69の表示出力と共に音声出力するものとしてもよいし、異常が生じた旨のメッセージを表示せずに音声出力するものとしても構わない。
【0027】
なお、本発明は、走行用のモータと、モータに電力を供給可能なバッテリと、バッテリを充電する充電システムとを搭載する自動車であれば、如何なる構成の自動車であっても適用可能である。
【0028】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ30が「モータ」に相当し、バッテリ42が「バッテリ」に相当し、充電システム70が「充電システム」に相当し、
図2の異常表示処理ルーチンを実行するメイン制御ユニット50と表示装置69とが「異常報知手段」に相当する。
【0029】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0030】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。