(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553591
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】溶融物処理設備を制御する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/50 20190101AFI20190722BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20190722BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
B29C48/50
B29C48/285
B29L7:00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-504512(P2016-504512)
(86)(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公表番号】特表2016-514635(P2016-514635A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014000806
(87)【国際公開番号】WO2014154354
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】102013005199.1
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515267482
【氏名又は名称】マーグ オートマティック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Maag Automatik GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】レーベルト,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ポール,ハラルド
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−060887(JP,A)
【文献】
特開昭57−087326(JP,A)
【文献】
特開2001−030338(JP,A)
【文献】
特開2003−062891(JP,A)
【文献】
特表2003−516847(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0132146(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/121696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融物処理設備を制御する方法であって、前記設備は、溶融物供給装置(1)と、濾過装置(2)と、溶融物処理装置(3)と、を備え、又はこれらに加えて溶融物ポンプ(6)を備え、
前記溶融物供給装置(1)及び/又は前記溶融物ポンプ(6)の体積供給量の単位時間毎の最大到達可能な体積変化率を決定し、前記溶融物処理装置(3)への単位時間毎の体積供給量の最大体積偏差を定義し、前記溶融物供給装置(1)及び/又は前記溶融物ポンプ(6)と前記溶融物処理装置(3)との間での前記濾過装置(2)の体積変化を、単位時間毎の前記体積変化に起因する前記濾過装置(2)の体積変化率が前記溶融物供給装置(1)及び/又は前記溶融物ポンプ(6)の前記最大到達可能な体積変化率より小さく、又はそれに等しく、又は若干のみ大きくなるようにして、前記最大体積偏差を超えないように設定することを特徴とする方法。
【請求項2】
測定装置(4)によって製造パラメータの値を確認し、前記最大体積偏差を超えないように前記溶融物供給装置(1)及び/又は溶融物ポンプ(6)からの体積供給量を調整する、及び/又は、前記濾過装置(2)の体積変化を設定する装置(5)に、前記製造パラメータの値を出力することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定装置(4)は、前記溶融物処理装置(1)内で製造する膜ウエブの膜厚dを決定する膜厚測定装置であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融物供給装置(1)及び/又は溶融物ポンプ(6)からの体積供給量を調整する、及び/又は、前記濾過装置(2)の体積変化を設定する前記装置(5)は、閉ループ制御系であり、当該閉ループ制御の基礎として前記製造パラメータの値を少なくとも使用し、前記最大体積偏差を超えないようにすることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融物供給装置(1)及び/又は溶融物ポンプ(6)からの体積供給量を調整する、及び/又は、前記濾過装置(2)の体積変化を設定する前記装置(5)は、開ループ制御系であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融物供給装置(1)及び/又は前記溶融物ポンプ(6)と前記溶融物処理装置(3)との間での前記濾過装置(2)の体積変化の値は、連続的に調整されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融物供給装置(1)及び/又は前記溶融物ポンプ(6)と前記溶融物処理装置(3)との間での前記濾過装置(2)の体積変化の値は、段階的に調整されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに係る溶融物処理設備を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融物供給装置、濾過装置ならびに溶融物処理装置と、該当する場合には更に溶融物ポンプとを備える請求項1のプリアンブルに記載の溶融物処理設備を用いて、プラスチック溶融物等が処理される。プラスチック溶融物は、高分子プラスチック溶融物等であり得る。ここでの溶融物は、例えば押出ラインで処理されるが、押出機又は溶融物ポンプを溶融物供給装置として使用可能であり、これによって溶融物をこれらの装置によって連続的に供給するが、通常は体積測定により(volumetrically)供給する。溶融物ポンプは、歯車ポンプ等で実現可能であり、連続押出プロセスにおいて、膜状、筒状、異形材状(profiles)、平坦異形材状、シート状等に押し出し又は成形する装置を溶融物処理装置として使用可能である。
【0003】
特にプラスチックの処理の際、例えば再利用プラスチック材料が適宜混合される場合には処理対象の溶融物が汚染されている可能性があり、及び/又は、特に高純度の要件が処理対象の溶融材料に課される場合があるので、溶融物処理装置の手前に対応する汚染物を濾過して取り除く濾過装置が設けられる。これらの濾過装置では一般に、時に非線形である圧力低下が起こり、溶融物供給装置/押出機によって又は溶融物ポンプ/歯車ポンプによって搬送される溶融物の塊に、対応する望ましくない圧力降下であって、該当する場合には補償される必要がある圧力降下が加わることになる。
【0004】
流体を濾過するための装置は、例えばスクリーン交換機として実現可能である。このような種類の装置を用いて、異物粒子を濾過対象の流体から、例えば高分子溶融物状の溶融プラスチックから濾過して取り除くことができる。例えば、上述の溶融再利用材料には、対応する汚染物質がより増加して発生する可能性がある。濾過をしているうちに、遅かれ早かれ対応するフィルタ又は対応するスクリーンネストが当然残留物によって塞がり、洗浄が必要となる。理想的には、二つのフィルタシステムを互いに並列に配置して、一方のフィルタシステムを洗浄している間にもう一方が動作を続けられるようにしておくとよい。これに関連して、洗浄は、逆洗(backwashing)と呼ばれる方法で行うことができ、流体の生産時の流れである通常の方向とは逆向きに既に濾過済みの流体を用いて行われる。このための装置が知られており、専門用語では逆流スクリーン交換機と呼ばれている。従って、所定回数の自動逆洗プロセスを行った後に初めて、必要があれば手動でのスクリーン交換作業が必要となる。
【0005】
この結果、特にこの種類の濾過装置を、流体の質量流量に関して非常に厳密な用途、例えばプラスチック薄膜の製造等で使う場合には、フィルタを洗浄したり又は交換したりする必要がある場合にも、単位時間当たりの際立った変動がないように、濾過された流体の連続的な流れを確保可能であることが望ましい。
【0006】
欧州特許EP1778379B1は、特にプラスチック処理設備において流体を濾過するための装置及び方法を記載しており、この文献も逆洗の際にも一定の体積流量を維持することを目的としている。この構造では、溶融物流路内においてフィルタネストの下流に追加の変位ピストンを採用し、逆洗プロセスでは、フィルタネストの適切な位置において、適切に配置されたフィルタを介して、製造時の方向とは逆の方向に洗浄後の溶融物を押すことができる。更に、複数の部分からなる構造及び変位ピストンと実際のフィルタを備えた様々なピストンとに機能を分散させることで、洗浄中であっても略一定の溶融流れを維持可能である。
【0007】
従って、特に、再利用プラスチック材料等の、汚染物の割合が相対的に高い溶融物材料の場合には、所謂逆流スクリーン交換機を連続的に稼働させる。この場合、前述のように、自己洗浄逆洗モードでは、逆流方向での溶融物の流れによって、フィルタ又は対応するスクリーンの孔に留まった汚染物を濾過装置から除去及び排出する。しかしながら、逆洗スクリーン交換機等の稼働中に溶融流れから多くの材料を除去しすぎると、通常の製造動作を乱す可能性があり、問題となる場合がある。
【0008】
とはいえ、逆洗時又は濾過装置の起こり得るスクリーン交換の際には、製造プロセスから材料を適宜除去することが必要であるため、このように生産時の流れから溶融物の体積を除去することが、溶融物材料を溶融物処理装置に連続的に供給することに関する問題につながる。特に平坦な膜等を製造する場合には、膜厚の変動又は膜材料の欠陥を確実に避けることを可能にするために、必要な製造時の溶融流れの1体積パーセント以内となるよう溶融物材料の供給を一定に保つ必要がある。
【0009】
プラスチック処理設備の制御方法及び対応するプラスチック処理設備が、本出願人の法律上の前任者によるドイツ公開公報DE102006019445A1により既に知られており、溶融物供給装置と溶融物処理装置との間で高分子溶融物の体積が変化する場合には、体積制御又は体積規制が追加的に起動し、溶融物供給装置に影響を与え、体積変化がこれによって補償される。この構造では、溶融物の圧力を、この出願の装置における方法に記載の溶融物の体積流量を一定圧力に制御するための制御変数として使用する。
【0010】
ドイツ公開公報DE102006040703A1は、プロセスから材料を除去したことによる圧力降下又は体積の減少を慎重に補償する濾過装置を記載しており、供給装置の充填レベルを制御する及び圧力発生装置を制御することにより、スクリーン交換機の排出流路において一定の圧力及び一定の体積が達成される。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、溶融物処理設備を制御する方法を提供することであり、特に、溶融物処理装置を介した溶融物材料の流れを遮断することなく、可能な限り最も簡便で最も確実かつ最も効率的な方法で、設備内の濾過装置のフィルタ要素の洗浄又は交換を可能とするようなプラスチック溶融物を処理するための方法であって、特に、全ての動作条件において、確実かつ一定に、又は可能な限り最大に一定に、溶融物を溶融物処理装置へと確実に流す方法を提供することである。
【0012】
本発明によれば、一定の溶融物の体積流量が上述のように乱れてしまうことを避けるべきである。特に、これに関連して本発明によれば、溶融物の逆洗も起こり得ることであり、逆洗中の主要流量において乱れや体積損失がないように作業を続けることができる。このようなプロセスにおいて、溶融物から体積除去した上述のような結果の状態は、できる限り短期間とするべきである。
【0013】
このような目的は、請求項1に準じた特徴を備える教示に従う溶融物処理設備の制御方法によって、本発明によって達成される。本発明に記載の方法の好適な実施形態は、関連する従属項にて規定される。
【0014】
本発明に記載の方法は、溶融物処理設備を制御するために使用され、この設備は、溶融物供給装置と、濾過装置と、溶融物処理装置と、を備え、又はこれらに加えて溶融物ポンプを備える。本発明によれば、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの体積供給量の単位時間毎の最大到達可能な体積変化率を決定するが、体積変化率は、単位時間毎の体積供給量の単位時間毎の変化と定義する。溶融物処理装置への単位時間毎の体積供給量の最大体積偏差を更に定義し、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプと溶融物処理装置との間での濾過装置の体積変化を、単位時間毎のこのような体積変化に起因する濾過装置の体積変化率が溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの最大到達可能な体積変化率より小さく、又はそれに等しく、又は若干のみ大きくなるようにして、溶融物処理装置での最大体積偏差を正にも負にも超えないように設定する。
【0015】
従って、本発明によれば、従来の公知技術と比較すると、全く新しくかつ異なった方法論をとる。方法シーケンスにおいて一定の圧力に主に依拠するのではなく、溶融物供給装置から濾過装置を介して溶融物処理装置への溶融物のスループットを、本発明の方法の意図の範囲内での装置の確実な動作のための関連するパラメータとして具体的に採用する。
【0016】
従って、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの体積供給量の単位時間毎の体積変化率によって、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの適切な制御を経て、溶融物のスループット(単位時間毎の体積)が時間と共にどのように増加又は減少し得るかの基準を設ける。言い換えれば、単位時間毎の体積供給量の最大到達可能な体積変化率という本発明の特徴的な量は、特定の時間内に単位時間毎の溶融物体積がどれぐらい追加的に又は減少するように供給可能であるかについての基準である。従って、本発明によれば、適切な供給量は、溶融物供給側で整合をとる。ここでの更なる基準は、単位時間毎の体積(スループット)として溶液処理装置に供給される溶融物の最大体積偏差が、最大許容体積偏差の範囲内に無くてはならないということである。言い換えれば、溶融物処理装置へと供給される溶融物のスループット(単位時間毎の体積)は、最大体積偏差の制限値内においてのみ可変でなくてはならない。本発明によれば、このようにすることでのみ、溶融物処理装置の上流で体積の変動があった場合にも、溶融物処理装置での製造プロセスを連続的かつ一定に確実に処理可能となる。
【0017】
濾過装置の領域で追加的な体積を除去すべき場合には(逆洗プロセスのためであろうと、対応するスクリーン孔を再充填するためのスクリーン交換等の保守作業の場合であろうと)、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプから供給された溶融物のスループットから溶融物がそこでも流用され、溶融物処理装置へと先に搬送されなくなる。このようなプロセスにおいて、本発明に記載の基準を維持する必要があり、つまり、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプと溶融物処理装置との間での濾過装置の体積変化を、結果として単位時間毎のこのような体積変化に起因する濾過装置の体積変化率が溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの最大到達可能な体積変化率より、好ましくは小さく、又はそれに等しく、又は若干のみ大きくなるよう設定する。つまり、濾過装置の領域での結果的なスループットの変化が溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプ領域での対応する経時的なスループットの変化によって本発明に記載のように補償可能なような、製造プロセスに悪影響を及ぼすようなスループットの変化が結果的に溶融物処理装置の領域で起こらないような速度でのみ、濾過装置の領域での生産流量から除去される単位時間毎の体積が経時的に変化することが許容され、即ち、本発明によれば、そこでのスループットの変化は常に定義されたような最大体積偏差の範囲内であることが基準となる。
【0018】
本発明によれば、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの単位時間毎の体積供給量の最大到達可能な体積変化率の特定又は決定は、予め決定、つまり既知のものとして特定するか、適切なセンサによって製造プロセスにおいてオンラインで決定可能である。濾過装置の許容体積変化率もまた、事前に定義した最大到達可能な体積変化率に応じて、及びそれに合わせて決定可能である。基準として不可欠な量であっても、最大体積偏差、即ち溶融物処理装置に対する最大許容スループット変動は、溶融物処理設備の設計時に事前に特定しても、設備の動作中に適切なセンサによって決定及び制御量/制御変数として検出してもよい。
【0019】
更に、本発明に記載の方法の有効な様態において、測定装置によって製造パラメータの値を確認することが好ましく、最大体積偏差を超えないように溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプからの体積供給量を調整する及び/又は濾過装置の体積変化を設定する装置に、製造パラメータの値を出力する。
【0020】
この結果、好適な測定装置による製造パラメータの決定の関数として適切なスループット量の設定を好ましくは確認する、体積供給量を調整するための装置を用いて、本発明の方法を制御可能である。好ましくは、このような測定装置は、溶融物処理装置が例えば、押出装置であって、適切な溶融物材料からプラスチックの膜ウエブを製造する装置である場合には、押し出された膜の厚さdを製造パラメータの測定に含めることができる。従って、本発明のより好ましい様態において、測定装置は、溶融物処理装置内で製造する膜ウエブ(web)の厚さd(即ち、ここでは膜厚)を確認する、膜厚測定装置であり得る。溶融物処理装置に溶融物を供給する圧力のうち製造パラメータの適切な測定値を、本発明の制御に使用してもよい。
【0021】
本発明によれば、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプからの体積供給量を調整する及び/又は濾過装置の体積変化を設定する装置は、閉ループ制御系であることが好ましく、閉ループ制御の根拠として製造パラメータの値を少なくとも使用して、最大体積偏差を超えないようにする。
【0022】
このような閉ループ制御によれば、関連する製造工程をオンライン制御することが可能となり、この方法によって製造される製品は、維持するべき製造許容誤差の範囲内で常に製造可能となる。このために、特に、製造するプラスチックの膜ウエブの膜厚d等の製造パラメータの値を制御の根拠として採用可能である。膜厚測定のエリアで逸脱が起これば直ちに、本発明に記載の上述の方法工程によるスループットの補正によって、特に、設定すべき溶融流れのスループット等の製造パラメータの閉ループ調整が行える。
【0023】
本発明に記載の方法の別の好ましい実施形態によれば、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプからの体積供給量を調整する及び/又は濾過装置の体積変化を設定する装置は、開ループ制御系である。溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプからの体積供給量の調整が開ループ制御の一部として行われ、少なくとも製造パラメータの値を用いて最大体積偏差を超えないようにする。このような開ループ制御系は、実施が比較的簡便であり、設備の設計時に定義された所定の設備パラメータに基づく。
【0024】
好ましくは、本発明に記載の方法において、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプと溶融物処理装置との間での濾過装置の体積変化の値は、連続的に調整される。
【0025】
本発明に記載の方法の別の好ましい実施形態によれば、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプと溶融物処理装置との間での濾過装置の体積変化の値は、段階的に調整してもよい。
【0026】
本発明に記載の方法に準じた有効な様態において、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの単位時間毎の体積供給量の最大値を決定してもよく、体積供給量の最大値が得られるまでの間のみ、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの最大到達可能な体積変化率が存在する。或いは、体積供給量の最大値から既に決定した製造目標値にまで体積供給量の値が戻るまでの間のみ、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの最大到達可能な体積変化率が存在する。
【0027】
溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの単位時間毎の体積供給量の最大値により、設備のスループットの最大可能値がどのくらいの高さまでとなり得るかを特定する。従って、この結果、濾過装置の領域での体積除去が可能な自然の上限値ともなる。つまり、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプのスループット増加性能がこの最大値まで利用されると、濾過装置の領域での更なる体積除去は補償できず、溶融物処理装置に対するスループットの最小体積逸脱量の条件を満たすことができなくなる。このように、設備を動作させる前に、又はシステムの動作中にオンラインにて、必要な製造許容誤差内で特に信頼性の高い設備の動作に到達することが容易となる。
【0028】
好ましくは、最大体積偏差は、溶融物処理装置への単位時間毎の体積供給量の0.0〜1.0%の範囲内にある。逸脱量が0.0〜1%の値であると、特に信頼性の高い設備の動作が確実となる。
【0029】
本発明によれば、除去されるスループットは常に濾過装置の領域で調整可能であり、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの部分に供給されるスループットに応じて、除去されるスループットに基づいて追従がなされる。この結果、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプのスループットの変化又は最大スループット変化及び濾過装置の領域でのスループットの変化を調整する機能を用いて、本発明によれば、濾過装置の領域において、単に時間と共に溶融物材料をゆっくりと除去するのではなく、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの部分での対応するスループットを増加させることで追加の溶融物材料の追従が可能となる限りにおいて、生産体積流量からの溶融物材料のより速い除去が可能となるような程度にまで、そこでの溶融物材料の除去を加速させ、除去するスループットを増加させ、更に、本発明に記載のように溶融物処理装置への溶融物供給領域での最大体積偏差を正にも負にも超えないようにする。
【0030】
この結果、記載したような様態での簡便な設計手段によって、濾過された溶融物の生産流量において相対的に大きな質量変動がなく、連続的な生産動作が可能であり、適切な逆洗洗浄又は個々のフィルタ要素の保守作業を同時に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下、厳密に例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態に制限されるものではない。
【
図1】本発明に記載の設備を制御する方法を使用可能な、溶融物処理装置の概略図である。
【
図2】本発明に記載の方法の実施形態に係る、スループットと体積変化率を示すグラフである。
【
図3】従来技術の溶融物処理設備の動作中の、体積変化率又はスループットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、溶融物処理設備の概略図である。本発明の方法は、この設備を用いて実行可能である。本発明の設備は、溶融物供給装置1と、濾過装置2と、溶融物処理装置3とを備える。
図1には、溶融物ポンプ6も示されている。一般的に、必要ならば溶融物ポンプ6が無い場合でも対応する設備で動作可能であり、本発明の方法を実行可能である。1軸押出機又は2軸押出機等が溶融物供給装置1として機能し得る。例えば、逆回転2軸スクリューを備えた2軸押出機を2軸押出機として使用可能である。逆回転2軸スクリューを備えたこの種類の押出機を使用すると、このような装置によって比較的高い溶融物圧力で十分な溶融物材料を特に確実に提供可能である。この場合、特に溶融物ポンプ6を使用する必要はないかもしれない。一方、共回転2軸スクリューを備えた2軸押出機を使用する際には、ここでの達成可能な圧力レベルが一般的には溶融物処理設備の動作に十分ではない可能性があることを考慮する必要があるため、圧力発生のために溶融物ポンプ6を追加的に使用すべきである。
【0033】
溶融物ポンプ6は、公知の歯車ポンプ等であってよい。
【0034】
濾過装置2に関して、出願人による呼称BFXで知られるスクリーン交換機等の、一般的に公知の逆洗スクリーン交換機を特に使用可能であり、溶融物材料の逆洗を、スクリーン洗浄用の2つ以上のスクリーン孔内で使用可能である。既に述べたように、これによって追加的な溶融物体積が必要となるが、濾過装置を通過する溶融物の生産流量から除去可能である。対応する体積除去及びその補償が本発明の主題である。
【0035】
シート押出金型等を、溶融物処理設備3として使用可能であり、好ましくはプラスチック溶融物材料から、幅が例えば60〜140cmの、溶融物材料からなる膜ウエブを製造可能である。
【0036】
図1には更に、測定装置4が図示されており、膜厚測定装置であることが好ましく、一例によればシート押出金型として実現された溶融物処理装置3によって製造可能な膜ウエブの膜厚dを測定する。このような膜厚測定装置は実際原理的に公知である。
図1に記載の膜ウエブは、
図1の右側に示した溶融物処理プロセスの端部においてロール状に巻かれている。
【0037】
図1には更に、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプからの体積供給量を調整するための及び/又は濾過装置2内の体積変化を設定するための装置5が示される。好ましくは、ここでの装置5は、閉ループ制御系であり、測定装置4によって決定した膜ウエブの膜厚dに基づいて、本発明による対応するスループットを規制可能である。
【0038】
図2は、本発明の方法の好ましい実施形態に係る、溶融物処理設備の体積変化率及びスループットの曲線を示す図である。
【0039】
本発明によれば、溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6の体積供給量の単位時間毎の最大到達可能な体積変化率を、オンラインで又は溶融物処理設備を稼働させる前に決定し、即ち、最速の場合に体積流量のスループットが単位時間毎にどのように変化するかを決定する。このことが、
図2の体積変化曲線の対応する直線の傾きによって表されている。
【0040】
溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6の(スループットの)単位時間毎の体積供給量の最大値も同様に決定され、即ち、溶融物供給の体積スループットがそこから最大でどの程度増加可能かを判断する。
図2から明らかなように、溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6と溶融物処理装置3との間の濾過装置2での体積変化は、このような単位時間毎の体積変化から生じる濾過装置2での体積変化率が、溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6の最大到達可能な体積変化率より小さい、又はそれに等しい、又は若干大きくなるように設定される。図には、溶融物装置2内の体積変化が溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6の最大の最速到達可能な体積変化率に対応する場合が示されている。この場合、本発明によれば、溶融物処理装置3への単位時間毎の体積供給量の最大体積偏差を正にも負にも超過しないように、この二つの溶融物体積変化が互いに補償される。この最大体積偏差は、
図2には示されていないが、
図2の例に従うと、濾過装置2の領域での体積が溶融物処理装置3への溶融流れから流用されるような期間においても、溶融物処理装置3への単位時間毎の体積供給量の図示した曲線は、逸脱なく直線として進む(
図2において、濾過装置2の体積変化を示す曲線の下の面積は、溶融物供給1及び/又は溶融物ポンプ6の体積変化の直線の下の面積と等しい)。
従って、本発明による方法は、以下のような式によって表される。
【0041】
dV
F/dt≦(dV/dt)max extr.
又は
dV
F/dt≧(dV/dt)max extr.
但し、dVz/dt<最大体積偏差、例えば、溶融物処理装置3に対する単位時間毎の体積供給量の目標値の例えば±1.0%、のような関係も常に成立する必要がある。
ここで、
dV
F/dt=濾過装置2での体積変化、であり、
dV/dt=溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6の体積変化、であり、
dVz/dt=溶融物処理装置3への単位時間毎の体積供給量、であり、
max extr.=溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6の最大到達可能体積変化/体積変化率、である。
【0042】
逆洗のために又は濾過装置2の領域で充填するために除去される溶融物の総体積は、濾過装置2での体積変化値の対応する曲線の下での積分に由来する。従って、溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6から利用可能となる追加の溶融物の体積は、溶融物供給装置1及び/又は溶融物ポンプ6の体積変化の対応する曲線と溶融物処理装置3への単位時間毎の体積供給量を特徴づける直線(
図2の水平な曲線)との間の積分となる。
【0043】
説明したように、
図2の例は、本発明に記載の方法によって定義した、容器を可能な限り最も速く充填し、一方で溶融物供給の可能な限り最大の再調整能力を活用して、体積流量から必要な体積量を可能な限り迅速に除去する場合を示している。
【0044】
除去がより幾分ゆっくりと行われるべき場合には、濾過装置2での体積変化の曲線の形状は、例えばのこぎり歯状となり、
図2の濾過装置2での体積変化の曲線形状内で移動し、その後包絡線として観測される。
【0045】
図3は、従来技術の溶融物処理設備を制御する方法における到達可能な体積変化率の形状を示す図である。
【0046】
図2の例とは違って、溶融物処理装置3への(スループットの)単位時間毎の体積供給量の最大体積偏差を正にも負にも超えないようにするために、体積変化率、即ち時間と共に溶融物の生産流量から除去される溶融物のスループット量は、濾過装置の領域でかなり長い時間をかけて行われねばならないことが明白である。濾過装置2の領域で単位時間毎の体積変化の曲線の下の面積が、総除去体積に等しく、逆洗または再充填のために濾過装置2の領域で利用可能である。この場合、この面積は、
図2に示した対応する曲線の下での面積にほぼ等しく、直接比較すると、
図2の方法に記載の設備である本発明の動作を通じて、対応する体積の充填が本発明によればかなり高速に行われることが明らかであり、本発明によれば、濾過装置2の領域での溶融物の滞留時間が減少し、濾過装置2の領域で体積が蓄積される間に溶融物材料がひび割れや固化によって生じる可能性がある乱れを大幅に避けることが可能であるため、逆洗処理を特に簡便に信頼性高いものとすることができる。
【0047】
図3により明らかなように、従来技術によれば、溶融物生成装置1及び/又は溶融物ポンプ6からの単位時間毎の体積供給量の再調整は行われない。溶融物生成装置1及び溶融物ポンプ6は、実質的に体積変化率を一定にした状態、即ち、一定のスループットで動作する。
【実施例】
【0048】
溶融物供給装置1として2軸押出機を用い、溶融物ポンプ6として歯車ポンプを用い、逆洗濾過装置2と、溶融物処理設備3としてスロットノズル装置を用いた場合、以下のような数値が実施例により結果として得られた。
【0049】
膜厚の変動が許容される最大膜厚偏差を基に、好ましくは当該偏差が膜厚の1%である場合を基にすると、50〜120barの領域での溶融物圧力に対して、約1〜4kgの溶融物が逆洗に必要となる。
【0050】
溶融物供給装置1又は溶融物ポンプ6は、通常の動作で1時間当たり質量500kgのスループットをもたらし、単位時間毎の質量供給量は、1時間当たり最大約550kgまで増やすことができる。
【0051】
必要とされる1〜4kgの溶融物を除去するためには、溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの単位時間毎の体積供給量の所定の最大到達可能な体積変化率によれば、70秒の時間で総供給流量の0〜9%の最大到達可能な体積変化率が可能である。従って、本発明によれば、対応する変化率を有する濾過装置における体積変化の対応する加速(
図2の曲線の上昇部分)にも減速(
図2の曲線の下降部分)にもこれを適用する。溶融物供給装置及び/又は溶融物ポンプの単位時間毎の体積供給量の対応する最大値(
図2の曲線の水平部分)を用いると、約11分で上述の体積の供給が総量で得られる。
【0052】
一方、
図3に再現するような従来の方法の場合、例えば、約1時間かければ対応する体積を提供することが可能となるが、これは、供給された体積量に対応する再調整によって、除去された体積流量の補償が行われないからである。