【文献】
JACKSON, B.A. et al.,"A versatile mismatch recognition agent: specific cleavage of plasmid DNA at a single base mispair.",BIOCHEMISTRY,1999年 4月13日,Vol.38, No.15,pp.4655-4662,doi: 10.1021/bi990255t
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
サンプルからの核酸の混合物中の標的核酸の変異体の富化方法であって、前記核酸は単一のヌクレオチド位置で異なる、2種の変異体配列の形で存在し:
前記標的核酸を含むサンプルを提供し、ここで富化されるべき変異体が大過剰の他の変異体中に低存在量でサンプルに存在し;
標的核酸に対してモル過剰で存在する濃度で標的核酸の一方の鎖に対して相補的であるオリゴヌクレオチドを提供し、ここで前記オリゴヌクレオチドは、親和性標的により結合され、そし
て、富化されるべき変異体と、単一のヌクレオチド位置で
完全に一致し、そして他の変異体とは、単一のヌクレオチド位置でミスマッチを有し;
標的核酸への前記オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのために適切な条件を提供し、前記オリゴヌクレオチド及び前記標的核酸の何れかの変異体の一本鎖から成る二本鎖ポリヌクレオチドを形成させ;
前記二本鎖ポリヌクレオチドと、ミスマッチを含む二本鎖ポリヌクレオチドのみに対して選択的に結合するミスマッチ層間化合物とを接触させ、ここで前記化合物がさらに、前記ミスマッチ部位で前記二本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の切断を光により触媒することができ;
前記二本鎖ポリヌクレオチドを光に供し、切断された及び未切断の両二本鎖オリゴヌクレオチドを得;
切断された及び未切断の両二本鎖オリゴヌクレオチドを、そのオリゴヌクレオチド上の親和性標識を認識し、そしてそれに結合する親和性マトリックスに適用し;
切断された二本鎖ポリヌクレオチドのみが変性される条件を提供し、そして親和性マトリックスから前記変性された一本鎖を除去し;そして、
未切断ポリヌクレオチド二本鎖を変性する条件下で緩衝液を提供し、そして標的核酸の富化された変異体の一本鎖を含む緩衝液を回収すること、
を含み、
ミスマッチ層間化合物が、
図1に示され
る、Rh(bpy)
2(chrysi)
3+、
又はRh(bpy)
2(phzi)
3+(ここで、Nは窒素を示し、Rhはロジウムを示し、R
1、R
2及びR
3は各々独立に、水素、アルキル、アリール、固体支持体、親和性標識に結合したリンカーからなる群より選ばれる)である、方法。
サンプルからの核酸の混合物中の標的核酸の変異対立遺伝子の検出方法であって、前記変異対立遺伝子が単一のヌクレオチド位置で野生型対立遺伝子とは異なり、そし大過剰の野生型対立遺伝子中に低存在量でサンプルに存在し:
前記サンプル中の変異対立遺伝子を富化し、ここで前記富化が、
標的核酸に対してモル過剰で存在する濃度で標的核酸の一方の鎖に対して相補的であるオリゴヌクレオチドを提供し、ここが前記オリゴヌクレオチドは、親和性標的により結合され、そし
て、変異対立遺伝子と、単一のヌクレオチド位置で
完全に一致し、そして野生型対立遺伝子とは、単一のヌクレオチド位置でミスマッチを有し;
標的核酸への前記オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのために適切な条件を提供し、前記オリゴヌクレオチド及び前記変異対立遺伝子又は野生型対立遺伝子の何れかの一本鎖から成る二本鎖ポリヌクレオチドを形成させ;
前記二本鎖ポリヌクレオチドと、ミスマッチを含む二本鎖ポリヌクレオチドのみに対して結合することができるミスマッチ層間化合物とを接触させ、ここで前記化合物がさらに、前記ミスマッチ部位で前記二本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の切断を光により触媒することができ;
前記二本鎖ポリヌクレオチドを光に給し、切断された及び未切断の両二本鎖オリゴヌクレオチドを得;
切断された及び未切断の両二本鎖オリゴヌクレオチドを、そのオリゴヌクレオチド上の親和性標識を認識し、そしてそれに結合する親和性マトリックスに適用し;
切断された二本鎖ポリヌクレオチドのみが変性される条件を提供し、そして親和性マトリックスから前記野生型対立遺伝子の変性された一本鎖を除去し;
未切断ポリヌクレオチド二本鎖を変性する条件下で緩衝液を提供し;そして標的核酸の富化された変異対立遺伝子の一本鎖を含む緩衝液を回収すること
により実施され;そして、
富化された変異対立遺伝子の生成物、又はその増幅された富化変異対立遺伝子から生成されるシグナルを検出すること、
を含み、
ミスマッチ層間化合物が、
図1に示され
る、Rh(bpy)
2(chrysi)
3+、
又はRh(bpy)
2(phzi)
3+(ここで、Nは窒素を示し、Rhはロジウムを示し、R
1、R
2及びR
3は各々独立に、水素、アルキル、アリール、固体支持体、親和性標識に結合したリンカーからなる群より選ばれる)である、方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
特にことわらない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者により通常理解される意味を有する。次の参考文献は、本発明で使用される用語の多くの一般的定義を、当業者に提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);及びHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書において使用される場合、次の用語は、特にことわらない限り、それらに与えられた意味を有する。
【0008】
用語「核酸(nucleic acid)」とは、直鎖状又は分岐鎖状の様式で一緒に共有結合されるヌクレオチドを含む、ヌクレオチドのポリマー(例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、等)を言及し、そしてデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNA−RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ペプチド核酸(PNA)、PNA−DNA接合体、PNA−RNA接合体、等を包含する。核酸は典型的には、一本鎖又は二本鎖であり、そして一般的には、ホスホジエステル結合を含むが、但しある場合、別の主鎖、例えばホスホルアミド(Beaucage et al. (1993), Tetrahedron 49(10):1925)、ホスホロチオエート(Mag et al. (1991), Nucleic Acids Res. 19:1437; 及び米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briu et al. (1989), J. Am. Chem. Soc. 111:2321)、O−メチルホスホルアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press (1992)を参照のこと)、及びペプチド核酸主鎖及び結合(Egholm (1992), J. Am. Chem. Soc. 114:1895を参照のこと)を有することができる核酸類似体が包含される。他の類似体核酸は、正に荷電された主鎖(Denpcy et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6097);非イオン性主鎖(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号及び第 4,469,863号)及び非リボース主鎖を有するそれら、例えば米国特許第5,235,033号及び第5,034,506号に記載されたそれらを包含する。1又は2以上の炭素環式糖を含む核酸もまた、核酸の定義内に包含され(Jenkins et al. (1995), Chem. Soc. Rev. pp. 169-176を参照のこと)、そして類似体はまた、例えばRawls, C & E News Jun. 2, 1997, 35頁に記載されている。リボース−リン酸主鎖の修飾は、追加の部分、例えば標識の付加を促進するか、又は生理学的環境下でそのような安定性及び半減期を変えるために行われ得る。
【0009】
核酸に、典型的には見出される天然に存在する複素環式塩基(例えば、アデニン、グアニン、チミン、シストシン、及びウラシル)の他に、ヌクレオチド類似体はまた、天然に存在しない複素環式塩基、例えば、Seela et al. (1999), Helv. Chim. Acta 82:1640に記載されるそれらも包含することができる。ヌクレオチド類似体に使用される特定の塩基は、融点(Tm)モディファイアとして作用する。例えば、それらのいくつかは、7−デアザプリン(例えば、7−デアザグアニン、7−デアザアデニン、等)、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、プロピニル−dN(例えば、プロピニル−dU、プロピニル−dC、等)、及び同等のものを包含する。例えば、米国特許第5,990,303号を参照のこと。他の代表的な複素環式塩基は、例えば次のものを包含する:ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン; 2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの8−アザ誘導体;アデニン、グアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの7−デアザ−8−アザ誘導体;6−アザシチジン; 5−フルオロシチジン; 5−クロロシチジン; 5−ヨードシチジン; 5−ブロモシチジン; 5−メチルシチジン; 5−プロピニルシチジン; 5−ブロモビニルウラシル; 5−フルオロウラシル;5−クロロウラシル; 5−ヨードウラシル;5−ブロモウラシル;5−トリフルオロメチルウラシル; 5−メトキシウラシル; 5−エチニルウラシル; 5−プロピニルウラシル、及び同等のもの。
【0010】
「ヌクレオシド(nucleoside)」とは、糖部分(リボース糖又はデオキシリボース糖)、糖部分の誘導体、又は糖部分の機能的同等物(例えば、炭素環)に対して共有結合される塩基又は塩基性基(少なくとも1つの炭素環、少なくとも1つの複素環、少なくとも1つのアリール基、及び/又は同様のものを包含する)を含む核酸成分を意味する。例えば、ヌクレオシドが糖部分を含む場合、塩基は典型的には、糖部分の1′−位置に結合される。上記のように、塩基は、天然に存在する塩基又は天然に存在しない塩基であり得る。典型的にヌクレオシドは、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、ジデオキシリボヌクレオシド及び炭素環ヌクレオシドを包含する。
【0011】
「ヌクレオチド(nucleotide)」とは、ヌクレオシドのエステル、例えばヌクレオシドの糖部分の5′位置に共有結合される、1,2,3又はそれ以上のリン酸基を有するヌクレオシドのリン酸エステルを言及する。
【0012】
用語「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」及び「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」は、交換可能的に使用される。「オリゴヌクレオチド」は、より短いポリヌクレオチドを記載するために時々使用される用語である。オリゴヌクレオチドは、指定されたヌクレオチド配列の領域に対応する、少なくとも6個のヌクレオチド、例えば少なくとも約10〜12個のヌクレオチド、又は少なくとも約15〜30個のヌクレオチドを含んでも良い。
【0013】
用語「標的核酸配列の変異体を富化する(enriching a variant of a target nucleic acid sequence)」とは、標的核酸配列の所望する変異体の量を高めること、及びサンプル中の所望しない変異体に対する所望の変異体の比率を高めることを意味する。一般的に、富化されるべき所望の変異体は、所望しない変異体よりも、核酸サンプルにおいてあまり優勢的ではなく、そして標的核酸配列の全ての変異体の合計量の50%未満を構成する。多くの場合、所望する変異体は、変異対立遺伝子を意味し、そして所望しない変異体は野生型対立遺伝子を意味する。
【0014】
用語「野生型(wild type)」とは、本明細書において使用される場合、天然に存在する源から単離される場合、その遺伝子又は対立遺伝子の特性を有する遺伝子又は対立遺伝子を意味する。野生型遺伝子又は野生型対立遺伝子とは、集団において、最も頻繁には観察され、そして遺伝子又は対立遺伝子の「正常」又は「野生型」として任意には企画されるものである。
【0015】
対照的には、用語「変異体(mutant)」又は「突然変異誘発された(mutated)」とは、野生型遺伝子又は対立遺伝子に比較される場合、配列において修飾を示す遺伝子又は対立遺伝子を意味する。用語「突然変異(mutation)」とは、正常(変更されていない)又は野生型配列から分化されるような変異体の形成をもたらす、通常保存された核酸配列のヌクレオチドの配列の変化を意味する。突然変異は一般的に、2種の一般的クラス、すなわち後者は、1〜いくつかのヌクレオチド対の挿入又は欠失を伴う。
【0016】
用語「対立遺伝子(allele)」とは、わずか1個又は数個の塩基により異なる2種の配列を意味する。
【0017】
用語「ミスマッチ(mismatch)DNA又は「ヘテロ二本鎖(heteroduplex)」DNAとは、1又は2以上のミスマッチ塩基対合を含むDNAを意味する。ミスマッチ塩基対合は、DNA二重鎖の場合、水素結合された塩基対、TとA又はGとCの対の1つを形成することができない、反対側の塩基の特定対を意味する。ヘテロ二重鎖DNAは、反対側の鎖に比較して、1つの鎖における挿入又は欠失のために、1つの鎖における1又は2以上の塩基が反対側の鎖における塩基を補充するか又は補充していない二本鎖DNA、及び何れかの鎖中の1又は2以上の塩基が反対側の塩基を有するか又は有さない二本鎖DNAを包含する。対照的に、ホモ二本鎖DNAとは、各鎖が他の鎖の完全な補体であり、そして各塩基が反対側の塩基と水素結合された塩基対を形成する二本鎖DNAを意味する。
【0018】
用語「分子結合パートナー(molecular binding partners)」及び「特異的結合パートナー(specific binding partners)」とは、特異的結合を示す、分子対、典型的には、生体分子対を意味する。非制限的側として、受容体及びリガンド、抗体及び抗原、ビオチン及びアビジン、及びビオチン及びストレプタビジンを挙げることができる。分子結合パートナーはまた、下記に定義されるような、「親和性標識(affinity label)」と「親和性マトリックス(affinity matrix)」との間の結合により表され得る。
【0019】
「親和性(affinity)」標識とは、その分子結合パートナーに対して特異的に結合する分子である。結合は、共有又は非共有(例えば、イオン、水素、等)結合を介してであり得る。本明細書において使用される場合、親和性標識、例えばビオチンは、親和性マトリックス、例えばストレプタビジン被覆のビーズ又は粒子に対して選択的に結合することができる。親和性標識は、オリゴヌクレオチドの3′末端、5′又は内部位置に結合され得る。
【0020】
「親和性マトリックス(affinity matrix)」とは、本明細書において使用される場合、その分子結合パートナーに対して特異的に結合できる、固体支持体又は固体マトリックス(例えば、磁気ラテックス粒子、ガラスビーズ)の表面に結合される分子を言及する。結合は、共有又は非共有結合を介してであり得る。本明細書において使用される場合、親和性マトリックス、例えばストレプタビジン被覆の磁気ラテックス粒子は、親和性標識、例えばビオチンに対して、選択的に結合することができる。
【0021】
「アルキル基(alkyl group)」とは、線状、分岐状、又は環状飽和炭化水素部分を言及し、そして全ての位置異性体、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル及び1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、及び同様のものを包含する。アルキル基は典型的には、約1−20個の炭素原子を含み、そしてより典型的には、約2−15個の炭素原子を含む。アルキル基は、置換されるか、又は非置換され得る。
【0022】
「アリール基(aryl group)」とは、芳香族化合物に由来する原子又は部分の置換基を言及する。典型的なアリール基は、例えばフェニル基、又は同様のものを包含する。アリール基は任意には、複数の芳香族環(例えば、ジフェニル基、等)を包含する。さらに、アリール基は、置換されるか、又は非置換され得る。
【0023】
「PCR増幅(PCR amplification)」又は単純に、「PCR」とは、核酸配列に対する多数の補体を生成するための鋳型としての核酸配列の使用を包含するポリメラーゼ鎖反応を意味する。鋳型は、鋳型配列の一部に対して相補的な配列を有するプライマーにハイブリダイズされ得、そしてdNTP及びポリメラーゼ酵素を含む適切な反応混合物と接触され得る。プライマーは、元の鋳型に対して相補的な核酸を生成するポリメラーゼ酵素により伸長される。二本鎖核酸分子の両鎖の増幅のためには、2つのプライマーが使用され、それらの個々は、1つの核酸鎖の一部に対して相補的である配列を有することができる。核酸分子の鎖は、例えば加熱により変性され、そしてその工程が、今度は、続く工程において鋳型として作用する前の工程の新しく合成された鎖により反復される。PCR増幅プロトコルは、十分な量の標的核酸を生成するために、変性ハイブリダイゼーション及び伸長反応の少数〜多数のサイクルを包含することができる。
【0024】
用語「対立遺伝子−特異的プライマー(allele-specific primer)」又は「ASプライマー(AS primer)」とは、標的配列の2つ以上の変異体に対してハイブリダイズするが、標的配列の変異体間を区別できるプライマーのことであり、ここで前記変異体の1つによってのみ、プライマーは適切な条件下で核酸ポリメラーゼにより効果的に延長される。標的配列の他の変異体によれば、その延長は低効率的又は非効率的である。
【0025】
用語「共通プライマー(common primer)」とは、対立遺伝子特異的プライマーを含むプライマー対における第二プライマーのことである。共通プライマーは、対立遺伝子特異的ではなく、すなわち対立遺伝子特異的プライマーが区別する標的配列の変異体間を区別しない。
【0026】
用語「相補的(complementary)」又は「相補性(complementarity)」は、ワトソン−クリック塩基対規則により関連するポリヌクレオチドの逆平行鎖に関連して使用される。用語「完全に相補的」(perfectly complementary)又は「100%相補的」(100% complementary)とは、逆平行鎖間のすべての塩基のワトソン−クリック対を有する相補的配列のことであり、すなわちポリヌクレオチド二重鎖における任意の2つの塩基間にミスマッチは存在しない。しかしながら、二重鎖は、完全な相補性の不在下でさえ、逆平行鎖間で形成される。用語「部分的に相補的」(partially complementary)又は「不完全に相補的」(incompletely complementary)とは、100%未満、完全である逆平行ポリヌクレオチド鎖間の塩基の任意の配置のことである(例えば、ポリヌクレオチド二重鎖に少なくとも1つのミスマッチ又はマッチしない塩基が存在する)。部分的に相補的な鎖間の二重鎖は一般的に、完全に相補的な鎖間の二重鎖よりも低い安定性を有する。
【0027】
用語「サンプル(sample)」とは、核酸を含むか又は含むと推定される任意の組成物のことである。これは、個人から単離された組織又は体液、例えば皮膚、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙、血液細胞、器官及び腫瘍のサンプル、並びに、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)又はコア針生検を含む、個人から採取された細胞から確立されたインビトロ培養物、及びそれらから単離される核酸のサンプルのことである。
【0028】
用語「一次配列(primary sequence)」とは、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドにおけるヌクレオチドの配列のことである。ヌクレオチド修飾、例えば窒素含有塩基修飾、糖修飾又は他のバックボーン修飾は、一次配列の一部ではない。標識、例えばオリゴヌクレオチドに接合される発色団 (chromophore) もまた、一次配列の一部ではない。従って、2つのオリゴヌクレオチドは、同じ一次配列を共有することができるが、修飾及び標識に関しては異なることができる。
【0029】
用語「プライマー(primer)」とは、標的核酸における配列とハイブリダイズし、そして核酸の相補鎖に沿って合成の開始点として、そのような合成のために適切な条件下で作用することができるオリゴヌクレオチドのことである。本明細書において使用される場合、用語「プローブ」(probe)とは、標的核酸における配列とハイブリダイズし、そして通常、検出可能に標識されるオリゴヌクレオチドのことである。プローブは、修飾、例えば核酸ポリメラーゼによってプローブを延長できなくさせる修飾、及び1つ又は2つ以上の発色団を有することができる。同じ配列を有するオリゴヌクレオチドは、1つのアッセイにおけるプライマーとして、及び異なったアッセイにおけるプローブとして作用することができる。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語(「標的配列(target sequence)」、「標的核酸(target mucleic acid)」又は「標的(target)」とは、増幅されるか、検出だれるか、又はその両者がなされる核酸配列の一部を言及する。
【0031】
用語「ハイブリダイズされる(hybridized)」及び「ハイブリダイゼーション(hybridization)」とは、二重鎖の形成をもたらす、2つの核酸間の塩基対合相互作用のことである。2種の核酸は、ハイブリダイゼーション及び鎖伸長を達成するために、それらの全長にわたって100%の相補性を有することは必要条件ではない。
【0032】
用語「選択的ハイブリダイゼーション(selective hybridization)」及び「特異的ハイブリダイゼーション(specific hybridization)」とは、他の核酸もまた存在する複合混合物に存在する特定の核酸に対する、主に(ハイブリダイズする分子の50%又はそれ以上)、又はほぼ独占的に(ハイブリダイズする分子の90%又はそれ以上に)、核酸のハイブリダイゼーションを意味する。例えば、典型的なPCR条件下で、プライマーは、溶液にまた存在する非標的核酸の排除のために、標的核酸に対して特異的にハイブリダイズする。特異的にハイブリダイズされたプライマーは、少なくとも優勢的な増幅生成物であり、そして好ましくは、ほぼ独占的な(例えば、サンプル中のすべての増幅生成物の90%又はそれ以上を表す)増幅生成物である標的核酸の増幅生成物を生成するために標的核酸の増幅を駆動する。好ましくは、非特異的増幅生成物は、検出され得ないか、又は特異的増幅生成物から容易に区別できるような小量で検出されるかどうかであるような小量で存在する。同様にプローブは、反応混合物にまた存在する非標的核酸の排除のために標的核酸に対して特異的にハイブリダイズする。特異的にハイブリダイズされたプローブは、少なくとも最も優勢的なシグナルであり、そして好ましくは、ほぼ独占的な(例えば、サンプル中のすべての増幅生成物の90%又はそれ以上を表す)シグナルである検出可能シグナルを生成するために、標的核酸の特異的検出を可能にする。
【0033】
高精度と感度を伴って、種々のタイプの癌に関連する希体細胞突然変異を検出できる新規方法を開発するための継続的な必要性がある。より感度の高い検出方法についての特定の必要性が、周辺流体、例えば血液、癌及び尿からの癌バイオマーカー検出の分野にある。過去数年の間、血液中の定義される突然変異をモニターすることにより、治療予測、薬剤耐性の開発の治療モニターリング、及び腫瘍力学及び癌再発についての血液ベースの癌バイオマーカー検出の価値を明確に確立して来た多くの研究が公開されている。さらに、周辺生物学的流体からの突然変異検出のための高感度方法は、いつか、癌スクリーニング及び早期癌検出のための「液体生検」アプローチの約束を果たすことができる。
【0034】
希突然変異検出の感度を高めるための多くの方法が、長年にわたって開発されて来た。それらの方法のほとんどは一般的に、対立遺伝子−特異的PCR(AS−PCR)と、通常、呼ばれる、PCRの間、プライマー又はプローブベースの識別を使用することにより、変異体と野生型との間の配列ベースの差異の活用に焦点を当てて来た。それらの方法は、0.1−1%の変異体レベルまで成功しているが、しかしさらなる改良が、酵素に基く制限又はPCR誤差により制限されている。Bert Vogelsteinにより今日まで開発されたデジタルPCRは、希対立遺伝子検出の感度を都合良く高める最も有望な技法となっている。これは、サンプルを、数千のより小さな増幅反応に分割することにより達成される。この方法は、実質的に野生型DNAを希釈し、そして野生型に対する変異体の比率を高める。現在、提案されている別のアプローチは、変異DNAを富化し、そしてそれにより、下流のアッセイにおいて検出の困難性を低減する先行サンプル調製方法を用いることである。
【0035】
PCRは、多くの異なった様式において、所望する配列の性質はバックグラウンドDNAとは有意に異なるが、多量のバックグラウンドDNAの存在下で特定の配列の単一のコピーを、文字通りに容易に検出できる強力な技法である。これは、過剰のヒトゲノムDNAをまた含む生物学的検体から外因性病原性配列の存在を検出しようとする場合の事例である。しかしながら、目的の配列が、希体細胞突然変異の検出の場合に良くあるが、バックグラウンドDNAに存在する配列に、ますます類似するようになる場合、問題がますます課題になっている。一般的に、突然変異状態は、大過剰の野生型配列をまた含むサンプルにおいて決定されるべきである。これは、現在利用できる突然変異検出のための方法は変異配列のために選択的であるが、それらは特異性において絶対的ではなく、そして変異体に対する野生型の比率が上昇するにつれて、野生型DNAから変異体を区別することは、ますます困難になっているので、課題である。
【0036】
本発明に記載される方法は、以下に開示されるように、バルキーロジウム(III)錯体の使用に基かれている:米国特許第6,031,098号、第6,306,601号、Nature Protocols 2: 357-371, 2007、ここでBartonなどは、それぞれ、Rh(bpy)
2(chrysi)
3+又はRh(bpy)
2(phzi)
3+を生成するために、1対のバルキー層間リガンド、5,6−クリセンキノンジイミン(chrysi)及び3,4−ベンゾ[a]フェナジンキノンジイミン(phzi)に基く2つのファミリーのミスマッチ−特異的ロジウム−ベースのインターカレーターの合成及び機能を記載している。それらの化合物は、DNA二重鎖内のヌクレオチドミスマッチにより創造される隆起中に選択的にそれ自体を挿入するそれらの能力について知られている。結合機構は、複数のNMR及び結晶学に基く調査により評価されており、そして結果は顕著であった。結合剤が主要溝からDNA二重鎖に入り、そして塩基対間にインターカレートする従来の層間結合モードとは異なって、それらの新規化合物は、DNAのマイナーな溝に入り、バルキー芳香族リガンドを挿入し、そしてミスマッチされた塩基を、主要溝中に取り出す。光活性化に基いて、複合体は、二重鎖内の単一塩基ミスマッチ部位での直接的鎖切断を促進する。部位特異的切断は、ナノモル濃度で明白である。それらのロジウム化合物の使用についてのこれまでの主な焦点は、単一ヌクレオチド多型現象(SNP)及び新規化学療法の検出にあった(Boon, EM et al., Methods in Enzymology, 353:506-522, 2002, 米国特許第6,444,661号、米国特許第6,777,405号)。
【0037】
本発明においては、それらのロジウム化合物が、希対立遺伝子(例えば、希変異対立遺伝子)の富化のために適用されて来た。この研究のために選択される化合物の構造は、
図1に示されており、ここでR1、R2、R3は、H、アルキル、アリール又は固相、又は親和性標識を有するリンカー(例えば、ビオチン)であり得る。記載される化合物は、ミスマッチDNA二重鎖に結合し、そして光切断を触媒できることが、これまで示されて来たが、光切断は2本の鎖の1つのみの切断を単にもたらすこともまた、示されている。切断されていない野生型鎖はまだ存在し、そして増幅のための鋳型として機能できるので、これは、変異DNAの富化適用において少なからずとも有用である。
【0038】
本発明の全体的戦略は、
図2上にグラフで示されており、そして目的の塩基ミスマッチ領域へのそれらのロジウム錯体化合物の結合する能力を活用し、そして光活性化に基いて、特定のホスホジエステル結合の切断を引起す。ここに記載される方法によれば、標的核酸が野生型対立遺伝子(センス鎖「WT−S」上に「C」ヌクレオチドを、及びアンチセンス鎖「WT−AS」上に「G」ヌクレオチドを有するものとして
図2に示される)、及び変異対立遺伝子(センス鎖「M−S」上に「T」ヌクレオチドを、及びアンチセンス鎖「M−AS」上に「A」ヌクレオチドを有するものとして示される)の両者を含むサンプルが提供される。
【0039】
次に、富化されるべき変異対立遺伝子の1つの鎖に対応し、そして親和性リガンド(例えば、ビオチン)を含む一本鎖オリゴヌクレオチド(M−AS−ビオチンとして
図2に示される)が、サンプル中の標的核酸の量に対して過剰に提供される。(
図2は、その3′末端上にビオチン標識を有するアンチセンス鎖に対応するオリゴヌクレオチドを示すが、その方法はまた、変異部位以外の任意の位置で結合されるビオチン標識を有する変異対立遺伝子のセンス鎖の配列を有するオリゴヌクレオチドによって実施され得る。)次に、混合物は、すべての二本鎖サンプルDNAを変性するために、まず加熱され、そして次に、相補的一本鎖のアニーリングを可能にするために、冷却される。M−AS−ビオチンオリゴヌクレオチドは過剰に存在するので、標的核酸のほとんどすべてのセンス鎖(野生型対立遺伝し、WT−S及び変異対立遺伝子、M−Sの両者)は、オリゴヌクレオチドにハイブリダイズされるであろう。変異センス鎖二重鎖は好ましくは、一致するが、野生型センス鎖は突然変異の位置で単一の塩基ミスマッチを有するであろう。
【0040】
次に、ロジウム錯体化合物(「Rh(bpy)
2」として
図2に示される)が、混合物に添加される。光活性化に基いて、ミスマッチ−含有二重鎖がM−AS−ビオチンオリゴヌクレオチド(
図2に示されるような)又は野生型センス鎖、WT−S上で切断されるが、ところが変異センス鎖、M−Sに結合されるM−AS−ビオチンオリゴヌクレオチドを有する二重鎖は、突然変異位置で、完全な一致のために切断されないであろう。オリゴヌクレオチドの親和性部分(
図2においてビオチンとして示される)を用いて、すべてのオリゴヌクレオチド結合配列(すなわち、野生型及び変異センス鎖)が、固相(ストレプタビジン被覆固体支持体として
図2に示される)上に捕捉され、そして全ての過剰野生型及び変異アンチセンス鎖が洗浄される。次の工程において、固相が適切な緩衝液に配置され、そして温度が、捕捉された野生型センス鎖のみが、切断−含有二重鎖の低い溶融温度のために開放されるまで、高められる。次に、これが洗浄され、支持体上に変異センス鎖のみを残す。最終的二、変異センス鎖が、温度又はアルカリ性pH溶出工程の何れかにより、緩衝液に回収される。
【0041】
図2は変異センス鎖の富化のためへのアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドの使用を示すと共に、同様に、センス鎖オリゴヌクレオチドが変異アンチセンス鎖の富化のために使用され得る。一般的に、オリゴヌクレオチドのために使用する鎖の選択は、最高の結合親和性を有する、最も熱力学的に不安定化されたミスマッチ部位と共に、ミスマッチ位置へのロジウム錯体化合物の結合親和性に依存する(さらなる詳細については、Jackson, B.A. and Barton, J.K., Biochemistry 39: 6176-6182, 2000を参照のこと)。
【0042】
次の実施例及び図は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は、添付される請求の範囲に示される。修飾が、本発明の精神から逸脱することなく示される手順に従って行われ得ることが理解される。
【実施例】
【0043】
実施例1:一本鎖オリゴヌクレオチドを用いての制御実験
変異オリゴヌクレオチドに完全に一致し、そして野生型オリゴヌクレオチドと1塩基一致を有する、親和性標識されたアンチセンス鎖(AL−AS)オリゴヌクレオチドを用いることにより、センス鎖野生型(WT−S)オリゴヌクレオチドの存在下でセンス鎖変異(MU−S)オリゴヌクレオチドを富化するために、次の実験を用いる。オリゴヌクレオチドの配列は次の通りである(ミスマッチ部位は太字である):
【0044】
【表1】
【0045】
10μlの150mMグリシン、pH9.5、2μlの5M NaCl及び55μlの水により、反応混合物を調製する。この溶液に、10μlの10μM WT−S、10μlの10μM MU−S、及び10μlの50μM AL−AS及び3μlの100μM Rh(bpy)
2(phzi)
3+を添加する。この溶液をボルテックスし、そして室温で5分間インキュベートする。(最終濃度:15μMのグリシンpH9.5、100μMのNaCl、1μMのWT−S、1μMのMU−S、5μMのAL−AS及び3μMのRh(bpy)
2phzi
3+)。次に、反応混合物を、365nmの電球を用いて、30分間、Stratagene UV Stratalinker 1800において照射し、ミスマッチを含むセンス−アンチセンス二重鎖の1つの鎖を切断する。
【0046】
25μlの10mg/ml Solulinkストレプタビジン磁気ビーズの別の溶液を、1mlの15μMグリシン(pH9.5)緩衝液により洗浄し、そしてビーズを、磁石を用いて、上清液から分離する。切断された及び切断されていないオリゴヌクレオチド二重鎖を有する反応混合物を、磁気ビーズペレットに添加し、そして混合する。得られる混合物を、室温で30分間インキュベートする。その後、その溶液を、60℃に、又は切断されたAl−AS鎖に結合される切断されていないWT−S鎖(又は切断されていないAL−AS鎖に結合される切断されたWT−S鎖)の決定された溶液温度に加熱し、磁気的に分離し、そして上清液を除去し、その結果、切断されていないMU−S鎖のみが磁気ビーズ上の切断されていないAL−AS鎖にまだ結合されている。MU−S鎖を、100μlの20μMのNaOHにより磁気ビーズを処理し、溶液を磁気的に分離し、そしてさらなる分析のために、上清液を試験管中にデカントすることにより除去する。
【0047】
実施例2:二本鎖オリゴヌクレオチドを用いて制御実験
MU−ASオリゴヌクレオチドに対して同一の配列を有し、そしてWT−ASオリゴヌクレオチドと1塩基一致を有する、親和性標識されたアンチセンス鎖(AL−AS)オリゴヌクレオチドを用いることにより、センス鎖野生型(WT−S)オリゴヌクレオチド、アンチセンス鎖野生型(WT−AS)オリゴヌクレオチド及びアンチセンス鎖変異(WT−AS)オリゴヌクレオチドの存在下でセンス鎖変異(MU−S)オリゴヌクレオチドを富化するために、次の実験を用いる。オリゴヌクレオチドの配列は次の通りである(ミスマッチ部位は太字である):
【0048】
【表2】
【0049】
反応混合物を、10μlの150mMグリシンpH9.5及び57μlの水により調製する。この溶液に、10μMのWT−S及びWT−ASの混合物10μl、10μMのMU−S及びMU−ASの混合物10μl、及び10μlの100μMのAL−ASを添加する。得られる溶液を、95℃で5分間インキュベートし、二本鎖オリゴヌクレオチドを一本鎖に解離し、そして次に、その溶液を室温に冷却し、一本鎖オリゴヌクレオチドの再アニーリングを可能にする。3μlの100μlのRh(bpy)
2phzi
3+を、溶液に添加し、その溶液をボルテックスし、そして室温で5分間インキュベートする。(最終濃度:15μMのグリシンpH9.5、1μMのWT−S、1μMのWT−AS、1μMのMU−S、1μMのMU−AS、10μMのAL−AS及び3μMのRh(bpy)
2phzi
3+)。次に、反応混合物を、365nmの電球を用いて、15分間、Stratagene UV Stratalinker 1800において照射し、ミスマッチを含むセンス−アンチセンス二重鎖の1つの鎖を切断する。10倍濃度過剰のAL−ASオリゴヌクレオチドは、MU−S鎖のほとんどがUM−AS鎖よりもむしろAL−ASに結合する確率を高めるよう作用する。
【0050】
50μlの10mg/ml Solulinkストレプタビジン磁気ビーズの別の溶液を、1mlの15μMグリシン(pH9.5)緩衝液により洗浄し、そしてビーズを、磁石を用いて、上清液から分離する。切断された及び切断されていないオリゴヌクレオチド二重鎖を有する反応混合物を、磁気ビーズペレットに添加し、そして混合する。得られる混合物を、室温で30分間インキュベートする。その後、その溶液を、60℃に、又は切断されたAl−AS鎖に結合される切断されていないWT−S鎖(又は切断されていないAL−AS鎖に結合される切断されたWT−S鎖)の決定された溶液温度に加熱し、磁気的に分離する。全てのWT−AS、MU−AS及びWT−S鎖を上清液により除去し、その結果、切断されていないMU−S鎖のみが磁気ビーズ上の切断されていないAL−AS鎖にまだ結合されている。MU−S鎖を、100μlの20μMのNaOHにより磁気ビーズを処理し、溶液を磁気的に分離し、そしてさらなる分析のために、上清液を試験管中にデカントすることにより除去する。
【0051】
実施例3:EGFR変異DNAの富化及び検出
核酸、例えばヒトゲノムDNAの混合物が抽出され得るサンプルを供給する。サンプルは、組織、例えば皮膚、器官及び腫瘍、又は流体、例えば血液、血漿、血清、尿、又は核酸を含むか又は含むと推定される任意の組成物からであり得る。核酸のこの混合物から、目的の標的遺伝子、例えばヒトEGFR遺伝子は、特定の変動、例えば非変異又は野生型遺伝子である、大過剰の遺伝子の他の変異体中で小量で存在する点突然変異を含むことができる。癌の発生に臨床学的関連性を有するEGFR遺伝子変異の例は、T790Mの突然変異である。
【0052】
EGFR遺伝子の低量T790M変異対立遺伝子を富化するために、T790M変異対立遺伝子のセンス鎖に相補的であり、そして完全に一致する、過剰のビオチン標識アンチセンス鎖オリゴヌクレオチド(BL−AS)を、抽出されたゲノムDNAを含む溶液に添加する。次に、その溶液を、90℃又はより高い温度に加熱し、二本鎖ゲノムDNAを変性し、そして次に、室温に徐々に冷却し、発生する単一のDNA鎖のアニーリングを可能にする。アニーリング工程の間、BL−AS鎖は、完全に一致するT790変異センス鎖、及びまた、点突然変異の位置でミスマッチを有するであろう野生型センス鎖の両者で二重鎖を形成することができる。
【0053】
次に、ロジウムキレーターRh(bpy)
2(phzi)
3+を、溶液に添加し、そしてインキュベートし、その結果、キレーターは、ミスマッチの位置でBL−AS:野生型センス鎖二重鎖に対してのみ結合できる。次に、反応混合物を、365nmの電球を用いて、15分間、Stratagene UV Stratalinker 1800において照射し、BL−AS:野生型センス鎖二重鎖の1つの鎖を切断する。次に、ストレプタビジンにより被覆された固体マトリックスを添加する。そのような固体マトリックスの例は、ストレプタビジン被覆磁気粒子、例えばInvitrogen からのストレプタビジン−カップリングされたDynabeads(登録商標)、 Promega からのストレプタビジンMagneSphere(登録商標)常磁性粒子、及びSolulinkからの NanoLink(登録商標)及び MagnaLink(登録商標)ストレプタビジン磁気ビーズであり得る。インキュベーション(例えば、40℃で1時間)に続いて、磁石を用いて、粒子を分離し、そして変異及び野生型アンチセンス鎖及び任意の余分なBL−ASを含む、粒子に結合されていないすべての核酸を洗浄する。野生型センス鎖(ミスマッチ部位で切断されるか、又は切断されたBL−ASオリゴヌクレオチドに結合されている)を、ミスマッチ二重鎖の溶融温度に対応する温度で、適切な溶出緩衝液を用いて、磁気粒子から溶出する。結果的に、T790Mセンス鎖のみが、切断されていないビオチン標識T790Mアンチセンスオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされることにより、磁気粒子に結合されたまま存続する。次に、粒子を、高温又はアルカリ性pH溶液のいずれかにゆだねることにより、T790Mセンス鎖は、BL−ASオリゴヌクレオチドから解離することができ、そして検出のための増幅反応への使用のために集められる。
【0054】
本発明は特定の実施例を参照して詳細に記載されて来たが、種々の修飾が本発明の範囲内で行われ得ることは、当業者に明らかであろう。従って、本発明の範囲は、本明細書に記載される制限されるものではない。