特許第6553623号(P6553623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553623電磁エネルギー生成のための多素子カプラ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553623
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】電磁エネルギー生成のための多素子カプラ
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/378 20060101AFI20190722BHJP
   A61B 5/0402 20060101ALI20190722BHJP
   A61B 5/07 20060101ALI20190722BHJP
   H02J 50/23 20160101ALI20190722BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20190722BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   A61N1/378
   A61B5/04 310N
   A61B5/07 100
   H02J50/23
   G08C15/00 D
   G08C19/00 V
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-542874(P2016-542874)
(86)(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公表番号】特表2016-538090(P2016-538090A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014055885
(87)【国際公開番号】WO2015039108
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/878,436
(32)【優先日】2013年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/913,164
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516162733
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】プーン、エイダ シュク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イエ、アレクサンダー ジェシャン
(72)【発明者】
【氏名】タナベ、ユウジ
(72)【発明者】
【氏名】キム、サンフック
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ジョン
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−502602(JP,A)
【文献】 特表2008−516741(JP,A)
【文献】 特表2013−530016(JP,A)
【文献】 特表2012−514418(JP,A)
【文献】 特開2013−135557(JP,A)
【文献】 KIM Shanghoek et al.,Midfield Wireless Powering of Subwavelength Autonomous Devices,PHYSICAL REVIEW LETTERS,2013年 5月17日,Vol. 110, Issue 20,pp. 1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/378
A61N 1/40
H02J 50/00
G08C 15/00
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力システムであって、
複数のサブ波長構造体および制御装置を有する外部モジュールであって、
前記複数のサブ波長構造体は、それぞれ、該サブ波長構造体に与えられる励起信号に応答して、患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して前記患者の組織の内側に伝搬場を生成し、それによって組織内に空間的に集束した場を生成することにより、無線周波数電力信号を送信するように構成され、
前記制御装置は、前記複数のサブ波長構造体に与えられた前記励起信号の位相および/または振幅を調節して、前記組織内の前記空間的に集束した場の焦点を調節するように構成される、外部モジュールと、
送信された前記無線周波数電力信号を通じて前記外部モジュールから電力を無線で受け取るように構成される移植可能モジュールであって、前記移植可能モジュールが、前記組織のパラメータを感知するように構成される少なくとも1つのセンサー、または前記組織に刺激を与えるように構成される少なくとも1つの刺激装置を含む、移植可能モジュールと、
を含む、無線電力システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記少なくとも1つのセンサーが、熱センサー、化学センサー、圧力センサー、酸素センサー、PHセンサー、流量センサー、電気センサー、歪みセンサー、磁気センサー、および画像センサーからなる群から選ばれる、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記少なくとも1つの刺激装置が、電気刺激装置、光学刺激装置、化学刺激装置、および機械刺激装置からなる群から選ばれる、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のサブ波長構造体が、パッチ、PIFA、接地面内のスロット、接地面内のクロススロット、接地面内の開口部結合円形スロット、および接地面内のハーフスロットからなる群から選ばれる、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記外部モジュールがさらに、
記複数のサブ波長構造体にそれぞれ結合された複数の励起ポートと、
記複数の励起ポートに結合されて前記励起信号を提供するように構成された少なくとも1つの電圧源と、
含む、システム。
【請求項6】
請求項に記載のシステムであって、前記制御装置が、前記移植可能モジュールから受け取られた無線エネルギーの電力レベルを検出するように構成され、かつ、フィードバックを提供して前記焦点の位置を自動的に調節し無線電力送信を最適化するように構成される、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記移植可能モジュールが、心臓の上、中、または近傍に移植されて前記心臓にリードレスペーシングを適用するように構成される、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記移植可能モジュールが、脳の上、中、または近傍に移植されて前記脳に脳深部刺激を与えるように構成される、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記移植可能モジュールが、脊髄の上、中、または近傍に移植されて前記脊髄に刺激を与えるように構成される、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記移植可能モジュールが舌の筋肉組織の上、中、または近傍に移植されて前記舌に刺激を与え、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するように構成される、システム。
【請求項11】
線電力システムの作動方法であって、
患者の体外にある複数の異なるサブ波長構造体が、該サブ波長構造体にそれぞれ与えられる励起信号に応答して、組織の中に移植された無線電力受信モジュールに給電するために、前記無線電力受信モジュールへ中間場伝搬波を送信することであって、該送信することが、前記組織の外側のエバネッセント場を操作して前記組織の内側に前記中間場伝搬波を生成し、それによって前記組織内に空間的に集束した場を生成することを含む、前記送信することと、
制御装置が、前記励起信号の位相および/または振幅を調節することによって、前記無線電力受信モジュールに向けて前記中間場伝搬波を集束させることと、
前記組織のパラメータを感知するとともに前記組織から感知された前記パラメータに基づいて前記組織に刺激を提供するように構成された前記無線電力受信モジュールが、集束された前記中間場伝搬波を通じてエネルギーを受け取ることによって作動ることと、
を含む作動方法。
【請求項12】
請求項11に記載の作動方法であって、前記伝搬波の焦点を調節して前記モジュールへの無線電力送信を最適化することをさらに含む、作動方法。
【請求項13】
請求項11に記載の作動方法であって、前記送信するステップが、前記波に垂直で組織境界面に平行な電磁場を生成するサブ波長構造体を用いて、前記波を送信することを含む、作動方法。
【請求項14】
組織を通して無線電力を伝送するように構成された装置であって、
外部モジュールを備え、該外部モジュールは、
基板と、
前記基板上に配置された少なくとも1つのサブ波長構造体であって、該少なくとも1つのサブ波長構造体に与えられる励起信号に応答して無線周波数電力信号を送信するように構成された少なくとも1つのサブ波長構造体と、
前記少なくとも1つのサブ波長構造体に結合された少なくとも1つの無線周波数ポートと、
前記少なくとも1つの無線周波数ポートに結合された電圧または電流源と、
前記電圧または電流源を用いて前記少なくとも1つの無線周波数ポートおよびサブ波長構造体の励起を管理して、組織の外側のエバネッセント場を操作し、前記組織の内側に伝搬場を生成し、それによって前記組織内に空間的に集束した場を生成するように構成された制御装置と、を含み、
前記外部モジュールから送信された前記電力信号は移植可能モジュールによって受け取られるように構成され、前記移植可能モジュールは、前記組織のパラメータを感知するように構成される少なくとも1つのセンサー、または前記組織に刺激を与えるように構成される少なくとも1つの刺激装置を含む、装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記少なくとも1つのサブ波長構造体の各々が、それぞれの独立した無線周波数ポートに結合されている、装置。
【請求項16】
組織を通して無線電力を伝送するように構成された装置であって、
外部モジュールを備え、該外部モジュールは、
組織の外側のエバネッセント場を操作して該組織の内側に伝搬場を生成し、それによって前記組織内に空間的に適応可能な電磁場を生成して無線周波数電力信号を送信するように構成され配置された、複数のサブ波長構造体と、
前記複数のサブ波長構造体のそれぞれ1つを個別に励起し、それによって前記空間的に適応可能な電磁場を生成するように構成され配置された、複数の独立した供給ポートと、
ピーク表面電磁場を再分配して、許容可能な無線周波数出力電力を増加させるように構成された制御装置と、を備え、
前記外部モジュールから送信された前記電力信号は移植可能モジュールによって受け取られるように構成され、前記移植可能モジュールは、前記組織のパラメータを感知するように構成される少なくとも1つのセンサー、または前記組織に刺激を与えるように構成される少なくとも1つの刺激装置を含む、装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、前記複数のサブ波長構造体が、組織内に適応ステアリング磁場を生成するようにさらに構成され配置された、装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置であって、前記空間的に集束し且つ適応可能なステアリング磁場/信号が、300MHzと3000MHzの間の周波数を有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に無線電力伝送に関する。より具体的には、本開示は、人体または動物の体内に移植された機器へ組織を介して無線電力を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
電気配線無しで電力を供給するシステムおよび方法は、時には無線エネルギー伝送(WET:wireless energy transmission)と呼ばれる。無線エネルギー伝送は、電気駆動機器についての用途の種類を大幅に拡大する。移植可能な医療機器は、機器の妥当な寿命の間、適切な電力を供給することができる内部電源か、または、皮膚を横断する電気ケーブルを典型的に必要とする。
【0003】
さらに最近では、時には経皮エネルギー伝達システム(TETS:Transcutaneous Energy Transfer System)と呼ばれる、皮膚を通しての配線を用いることなく移植された機器に電力を供給するシステムに重点が置かれてきた。電力が皮膚を横切って磁気的に伝送されるように変圧器のように設定された、2つの磁気的に結合したコイルを用いて、頻繁なエネルギー伝送が成し遂げられる。従来のシステムは、コイルの位置および配向の変動に比較的に敏感であり、コイルが物理的に互いに近接し良く位置揃えされていることを典型的に必要とする。
【0004】
磁場に基づいて無線で電力を伝送する既存のシステムは、典型的に近接場でのみ動作し、送信機コイルと受信機コイルとの分離距離は、コイルの寸法以下である。
無線給電は、移植可能な電子機器の機能を向上させるために長年の関心事項であり、胸壁を横切って電磁エネルギーを運ぶ実験と共に1960年代初頭に始まった。近接場で結合された物体同士を通して空気を介して電力を伝送するための理論体系を概念的に描きながら、初期の具現化されたものは、かさばるコイルの限界から、体内での長期間に渡る動作にとって深刻な課題を提起する真空管電源または電池までをも含んでいた。以降、半導体技術における進歩は、細胞規模の寸法内部での感知機能および刺激機能を組み込んだ高性能の機器を可能にした。しかしながら、ほぼ全ての既存のシステムは、エネルギーの貯蔵または集積のためにしばしば全体サイズの最大寸法で数センチメートルとなる大規模な構造と、重量と、体内への統合の機会を制約する効率特性とを必要とし続けている。
【0005】
近接場のアプローチは、共振およびインピーダンスなどの調和した電気特性を備えた物体間で発生する強い結合に依存している。これらの近接場のアプローチは、極端なサイズ非対称性を有する幾何学形状には容易には一般化されず、一方で、遠距離場の伝送は身体の表面上での吸収によって制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、以前の無線電力伝送方法の制約を克服する、無線電力伝送のための方法および装置について説明する。本開示は、中間場のアプローチを提供し、このアプローチでは、構造体のエバネッセント成分および放射成分の両方が、源から連続的にエネルギーを運び出す組織内のモードと結合されている。これらの成分間の位相差から得られる干渉は、組織内部の空間的に集束した動的に調節可能な電磁界パターンについて、追加の機会をもたらす。この開示に記載されたアプローチから取得可能な性能のレベルは、医学、神経科学、または人間−機械インターフェースでの用途のための高度なモニタリング機能および制御機能に対する要件を超えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態においては、無線電力システムが提供され、この無線電力システムが、患者の組織外部のエバネッセント場を操作して組織の内部に伝搬場を生成し、それによって組織内部に空間的に集束した場を生成することにより、無線電力を送信するように構成された1つまたは複数のサブ波長構造体を有する外部モジュールと、外部モジュールから無線電力を受け取るように構成された移植可能なモジュールと、を含み、この移植可能なモジュールが、組織のパラメータを感知するようにまたは組織に刺激を与えるように構成された、少なくとも1つのセンサーまたは刺激装置を含む。
【0008】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つのセンサーが、熱センサー、化学センサー、圧力センサー、酸素センサー、PHセンサー、流量センサー、電気センサー、歪みセンサー、磁気センサー、および画像センサーからなる群から選ばれる。
【0009】
他の実施形態においては、少なくとも1つの刺激装置が、電気刺激装置、光学刺激装置、化学刺激装置、および機械刺激装置からなる群から選ばれる。
一実施形態においては、移植可能な機器は、交換可能なセンサーおよび/または刺激装置を可能にするモジュラー設計を含む。
【0010】
幾つかの実施形態においては、1つまたは複数のサブ波長構造体は、パッチ、PIFA、接地面内のスロット、接地面内のクロススロット、接地面内の開口部結合円形スロット、および接地面内のハーフスロットからなる群から選ばれる。
【0011】
別の実施形態においては、外部モジュールが、1つまたは複数のサブ波長構造体に結合された1つまたは複数の励起ポートと、この1つまたは複数の励起ポートに結合された少なくとも1つの電圧源と、この1つまたは複数のサブ波長構造体に伝送された位相および/または振幅を調節して組織内部の空間的に集束した場の焦点の位置を調節するように構成された制御装置と、をさらに含む。
【0012】
一実施形態においては、制御装置は、移植されたモジュールから受け取られた無線エネルギーの電力レベルを検出するように構成され、かつ、フィードバックを提供して焦点位置を自動的に調節し無線電力送信を最適化するように構成される。
【0013】
別の実施形態においては、移植可能なモジュールが、心臓の上、中、または近傍に移植されて心臓にリードレスペーシングを適用するように構成される。
幾つかの実施形態においては、移植可能なモジュールが、脳の上、中、または近傍に移植されて脳に脳深部刺激を与えるように構成される。別の実施形態においては、移植可能なモジュールが、脊髄の上、中、または近傍に移植されて脊髄に刺激を与えるように構成される。さらに別の実施形態においては、移植可能なモジュールが舌の筋肉組織の上、中、または近傍に移植されて舌に刺激を与え、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するように構成される。
【0014】
患者へ治療を提供する方法が提供され、この方法は、無線電力受信モジュールを患者の内部に移植することと、無線電力受信モジュールに中間場伝搬波を送信しモジュールに電力を供給することと、無線電力受信モジュールを用いて患者のパラメータを感知することと、感知されたパラメータに基づいて無線電力受信モジュールを用いて患者に治療を提供することと、を含む。
【0015】
幾つかの実施形態においては、送信ステップがさらに、患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して患者の組織の内側に伝搬場を生成し、それによって組織内に空間的に集束した場を生成することを含む。
【0016】
患者における心臓ペーシングの方法も提供され、この方法は、無線電力受信モジュールを心臓の中、上、または近傍に移植することと、無線電力受信モジュールに中間場伝搬波を送信しモジュールに電力を供給することと、無線電力受信モジュールを用いて心臓のパラメータを感知することと、感知されたパラメータに基づいて無線電力受信モジュールを用いて心臓に電気的ペーシングを提供することと、を含む。
【0017】
幾つかの実施形態においては、送信ステップがさらに、患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して患者の組織の内側に伝搬場を生成し、それによって組織内に空間的に集束した場を生成することを含む。
【0018】
脳深部刺激の方法も提供され、この方法は、無線電力受信モジュールを脳の中、上、または近傍に移植することと、無線電力受信モジュールに中間場伝搬波を送信しモジュールに電力を供給することと、無線電力受信モジュールを用いて脳のパラメータを感知することと、感知されたパラメータに基づいて無線電力受信モジュールを用いて脳に刺激をもたらすことと、を含む。
【0019】
幾つかの実施形態においては、送信ステップがさらに、患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して患者の組織の内側に伝搬場を生成し、それによって組織内に空間的に集束した場を生成することを含む。
【0020】
組織を刺激する方法が提供され、この方法は、無線電力受信モジュールを組織の内部に移植することと、無線電力受信モジュールに中間場伝搬波を送信しモジュールに電力を供給することと、無線電力受信モジュールを用いて組織のパラメータを感知することと、感知されたパラメータに基づいて無線電力受信モジュールを用いて組織に刺激をもたらすことと、を含む。
【0021】
幾つかの実施形態においては、送信ステップがさらに、患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して患者の組織の内側に伝搬場を生成し、それによって組織内に空間的に集束した場を生成することを含む。
【0022】
別の実施形態においては、方法は、伝搬波の焦点を調節してモジュールへの無線電力送信を最適化することをさらに含む。
別の実施形態においては、送信ステップが、波に垂直で組織境界面に平行な電磁場を生成するサブ波長構造体を用いて、波を送信することを含む。
【0023】
組織を通して無線電力を伝送するように構成された装置が提供され、この装置は、基板と、この基板上に配置された少なくとも1つのサブ波長構造体と、この少なくとも1つのサブ波長構造体と結合した少なくとも1つの無線周波数ポートと、この少なくとも1つの無線周波数ポートと結合した電圧または電流源と、この電圧または電流源を用いてこの少なくとも1つの無線周波数ポートおよびサブ波長構造体の励起を管理して組織の外側のエバネッセント場を操作し組織内部に伝搬場を生成しそれによって組織内に空間的に集束した場を生成するように構成された制御装置と、を含む。
【0024】
幾つかの実施形態においては、少なくとも1つのサブ波長構造体の各々が、それぞれの独立した無線周波数ポートに結合されている。
組織を通して無線電力を伝送するように構成された装置も提供され、この装置は、組織内部に伝搬場を生成しそれによって組織内部に空間的に適応可能な電磁場を生成するように構成され配置された複数のサブ波長構造体と、複数のサブ波長構造体のそれぞれを個別に励起しそれによって空間的に適応可能な電磁場を生成するように構成され配置された複数の独立した供給ポートと、ピーク表面電磁場を再分配して許容可能な無線周波数出力電力を増加させるように構成された制御装置と、を含む。
【0025】
幾つかの実施形態においては、複数のサブ波長構造体は、組織内に適応ステアリング磁場(adaptive steering field)を生成するようにさらに構成され配置される。
【0026】
他の実施形態においては、空間的に集束し且つ適応可能なステアリング磁場/信号が、300MHzと3000MHzの間の周波数を有する。
本発明の新規の特徴が、以降の特許請求の範囲に詳細に記載される。本発明の原理を利用しており、添付の図面が次の通りである例示的な実施形態について記載している以下の詳細な説明を参照することにより、本発明の特徴および利点のより良い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1B】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1C】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1D】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1E】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1F】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1G】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1H】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1I】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1J】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1K】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1L】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1M】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図1N】外部の無線電力送信モジュールの様々な実施形態を示した図である。
図2】従来の誘導結合ループ源から生じる磁界を示した図である。
図3A】パッチサブ波長構造体から生じる磁界を示した図である。
図3B】PIFAサブ波長構造体から生じる磁界を示した図である。
図3C】開口部結合円形スロットサブ波長構造体から生じる磁界を示した図である。
図3D】クロススロットサブ波長構造体から生じる磁界を示した図である。
図3E】ハーフスロットサブ波長構造体から生じる磁界を示した図である。
図4A】中間場伝搬波技術により無線で給電される、ヒト患者内に移植された機器を示した図である。
図4B】誘導結合アプローチでの無線電力送信を示した図である。
図4C】中間場伝搬波アプローチでの無線電力送信を示した図である。
図5A図1A〜1Nの外部モジュールの制御装置についての、アーキテクチャの概略図である。
図5B図1A〜1Nの外部モジュールの制御装置についての、アーキテクチャの概略図である。
図6図1A〜1Nの外部モジュールから無線電力を受け取るように構成された移植機器の一実施形態を示した図である。
図7A図6の移植機器の制御装置についてのアーキテクチャの実施形態を示した図である。
図7B図6の移植機器の制御装置についてのアーキテクチャの実施形態を示した図である。
図7C図6の移植機器の制御装置についてのアーキテクチャの実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
患者の組織内の電磁波を制御し伝搬することによって、移植可能な機器および/またはセンサーを無線で給電することができる。そのような移植可能な機器/センサーは、非限定的な例として、心臓などの領域を刺激するために、ならびに/または血液、組織、および他の患者の側面の生物学的、生理学的、化学的属性を感知するために、患者における対象位置に移植することができる。無線電力伝送を達成する際の困難な点は、移植可能な機器/センサーおよび電力伝送源のサイズと、患者内の機器/センサーの深さと、さらには電力伝送源に対する機器/センサーの空間的配置との間の不整合において発生し得る。
【0029】
本開示の様々な態様が、添付の付録の説明/実施形態と同様に、上述の説明/実施形態の態様によって例示されるようなまたは支持されるような装置または方法に向けられている。たとえば、本開示の特定の実施形態は、患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して患者の組織内部の伝搬場を励起/制御し、それによって空間的に集束している適応ステアリング磁場/信号を組織内に生成するように向けられている。
【0030】
上述のサブ波長構造体の各々は、エバネッセント場を操作して患者の組織内部の伝搬場を励起/制御するために、それぞれのポートに接続することができる。これらの伝搬場は、さらに操作されて空間的に集束している適応ステアリング磁場/信号を組織内に生成することができる。源の近傍を支配する横断磁場を生成する任意のサブ波長構造体は、組織の加熱効果を最小限にするであろう。これらのサブ波長構造体は、組織の境界面に平行で、かつ、無線エネルギーを送信する伝搬波に垂直な、磁気近接場を生成するように構成することができる。特定の実施形態においては、上記で示したように、機構は、エバネッセント場を操作するために用いられる、1つ、2つ、3つ、または4つ以上のサブ波長構造体を含むことができる。他の実施形態においては、さらに多くのサブ波長構造体(たとえば、6つ、8つ、12)が使用されてエバネッセント場を操作するように、上述した2つ以上の機構を組み合わせることができる。
【0031】
特定の実施形態においては、機構は、エバネッセント場を操作するように構成され得る、2つ、3つ、4つ、またはそれより多くのサブ波長構造体を、含むことができる。他の実施形態においては、さらに多くのサブ波長構造体(たとえば、6つ、8つ、12、さらに多く)が使用されてエバネッセント場を操作するように、上述した2つ以上の機構を組み合わせることができる。
【0032】
本開示の様々な態様は、患者の組織内に空間的に適応可能な電磁場/信号(たとえば、中間場電磁場)を生成するように構成された複数のサブ波長構造体に向けられた装置および方法を含む。サブ波長構造体の各々は独立した供給ポートに接続することができ、この供給ポートは、サブ波長構造体のそれぞれを個別に励起し、それによって空間的に適応可能な電磁場/信号を生成する。この独立した供給ポートおよびサブ波長構造体は、装置からの制御に従って許容可能な無線周波数出力電力を増加させるために、ピーク表面電磁場を再分配するように適合されている。
【0033】
特定の実施形態においては、サブ波長構造体がエバネッセント場を操作して伝搬場を励起/制御し、それによって空間的に集束し且つ適応可能なステアリング磁場/信号を組織内に生成する。
【0034】
本開示の様々な態様は、電力信号および通信データ信号を含むことがある空間的に適応可能な電磁場/信号を生成しかつ受け取る複数のサブ波長構造体に向けられた装置および方法を含む。加えて、本開示の態様は、空間的に適応可能な電磁場/信号を生成する複数のサブ波長構造体を含み、複数の周波数帯域において空間的に適応可能な電磁信号を提供しかつ受け取ることができる。
【0035】
本開示の特定の態様は、空間的に適応可能な電磁場を送信するサブ波長構造体を介して送信された電力を受け取る移植可能な機器にも向けられている。本開示の様々な態様と整合の取れた移植可能な機器は、機器がカテーテル、カニューレ、または針を介して送達可能であるような大きさであり得る。加えて、移植可能な機器は、空間的に適応可能な電磁場からエネルギーを受け取るコイルを含むことができる。そのような実施形態において、空間的に適応可能な電磁場/信号は、コイル内の電流のおかげで磁性として受信される。さらに、移植可能な機器は、特定の例において、空間的に適応可能な電磁信号を受信するマルチターンコイルと、交流−直流電力変換を用いて空間的に適応可能な電磁信号を変換する整流回路と、パルス振幅、持続時間、および周波数を調節するための制御回路と、も含み得る。
【0036】
加えて、特定の実施形態においては、本開示の様々な態様と整合の取れたサブ波長構造体が、空間的に適応可能な電磁信号の動作周波数を調節して移植可能な機器またはセンサーの電力を調節する。幾つかの実施形態においては、空間的に適応可能な電磁信号は、300MHzと3000MHzの間の周波数を有することができる。
【0037】
本開示の様々な態様が、単一の電源を用いた、1つまたは複数の能動的な移植可能センサーまたは機器の給電に向けられている。本開示の様々な態様と整合が取れた、単一の電源を用いて給電することができる移植可能な機器/センサーの種類は、多数ある。たとえば、移植可能な機器は、筋肉の刺激、患者の心拍を調節するための刺激/感知、多部位脳深部刺激、薬物送達、ならびに/または生物学的、生理学的、および化学的感知のために使用することができる。
【0038】
本明細書で開示する機器は、個別にアドレス指定可能であり、独立して制御することができる。したがって、たとえば筋肉刺激のために用いられる機器などの機器は、異なる筋肉群に対応する異なる位置に配置し、同期した方式で刺激を実施することができる。同様に、脳刺激機器は、脳内の異なる位置に配置することができ、刺激は、同期した方式で実施することができる。同じことが、薬物送達機器についても言える。さらに、機器は個別にアドレス指定可能であり独立して制御できるので、機器は、同期的にも非同期的にも、活性化することができる、および/または給電することができる。特定の例においては、これらの機器は、組織内の機器の深さよりも機器がはるかに(たとえば、1、2、または3桁)小さい特徴寸法を有することができる。同様に、特定の例においては、機器は、機器に電力を供給する源よりも機器がはるかに(たとえば、1、2、または3桁)小さい特徴寸法を有することができる。
【0039】
本開示の態様は、装置、機器、および方法に向けられているので、単独で、または様々な他の態様と組み合わせて、利用することができる。
本明細書に記載される構造は、サブ波長構造体へのフィードバックを含むセンサー/機器と共に使用することができる。センサーのこれらの種類は、たとえば、移植可能な温度センサーまたは撮像機器を含むことができる。このように、機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号を生成する上記で示した構造に応答する。フィードバック型の機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号によって提供される信号の電力および/またはデータ部分に応答し、かつ、応答するように促される。たとえば、患者の内部に配置された温度センサーは、空間的に適応可能な電磁場/信号によって提供される信号の電力および/またはデータ部分に応答して、組織の温度を同報送信する/報告するであろう。加えて、組織内に移植された撮像機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号によって提供される信号の電力および/またはデータ部分に応答して、撮影された画像を同報送信する/報告することができる。さらに、空間的に適応可能な電磁場/信号の浸透の深さは、モデル化され制御されることができる。したがって、特定の実施形態においては、フィードバック機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号に応答して、データを示しデータにラベルを付けて、機器が動作している深さを記録することができる。このデータを患者ごとに記憶装置に格納することにより、統計目的のためにコンピュータがこのデータにアクセスし分析を行うことができる。
【0040】
プログラム可能なコンピュータを介して、メモリ回路内にフィードバック型機器の位置またはラベルを格納することにより、様々な患者のフィードバック追跡方法も実現することができる。たとえば、周辺の組織を分析することにより、移植可能な撮像機器の深さを最適化することができる。このように、移植可能な撮像機器の深さは、より最適な位置が可能であると判定された場合に、調節することができる。同様に、移植可能な刺激機器の深さは、刺激機器の周囲の組織領域の健康状態を判定し、かつ、空間的に適応可能な電磁場/信号に応答して機器の最適な位置を判定するために使用することができる。加えて、フィードバック型機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号に応答し、かつ、メモリ回路内に格納されたデータを同報送信することができる。したがって、フィードバック型機器は、機器によって追跡されているデータの医師に、連続的に最新情報を与えることができる。これにより、無線で患者を、リアルタイムに監視、診断、および/または治療することが可能になる。
【0041】
組織内の電磁波を制御し伝搬することによって、移植可能な機器/センサーを無線で給電することができる。移植可能な機器は、ヒト、またはペット、家畜、もしくは、マウス、ラット、および他の齧歯動物などの実験動物などの他の動物内に移植することができる。そのような移植可能な機器/センサーは、非限定的な例として、心臓などの領域を刺激するために、ならびに/または血液、組織、および他の患者の側面の生物学的、生理学的、化学的属性を感知するために、患者における対象位置に移植することができる。無線電力伝送を達成する際の困難な点は、移植可能な機器/センサーおよび電力伝送源のサイズと、患者内の機器/センサーの深さと、さらには電力伝送源に対する機器/センサーの空間的配置との間の不整合において発生し得る。
【0042】
本開示の様々な態様が、添付の付録の説明/実施形態と同様に、上述の説明/実施形態の態様によって例示されるようなまたは支持されるような装置または方法に向けられている。たとえば、本開示の特定の実施形態は、サブ波長構造体を用いて患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して患者の組織内部の伝搬場を励起/制御し、それによって空間的に集束している適応ステアリング磁場/信号を組織内に生成するように向けられている。サブ波長構造体が、源の近傍に、本質的にエバネッセントである場を生成する。対照的に、誘導結合を用いた従来の無線アプローチにおいては、組織の外側(源の近く)のエバネッセント成分は、有効な深さの浸透を可能にしない組織の内部で、エバネッセントの状態のままでいる。
【0043】
この開示は、サブ波長構造体の実施形態と、これらの構造体の励起を制御して組織の外側のエバネッセントモードから組織の内側の伝搬モードを励起するための方法と、を提供する。結果として、このアプローチは、組織内部の吸収が限定された深さにエネルギーを運ぶのに非常に有効である。本明細書で開示される設計は、体内にエネルギーを通す誘電性導波路として組織を使用する構造を含む。エネルギーは、以下で説明される移植されたモジュールによって受け取られて、従来の誘導結合技術では達成できない深さで移植された機器への無線電力伝送を可能にすることができる。
【0044】
この開示は、中間場無線給電アプローチを提供し、このアプローチは、無線電力を送信するように構成された外部モジュールと、インパルス発生器と少なくとも1つの刺激電極とを小型でリード無しの移植可能な機器に纏めて結合する無線電力を受け取るように構成された1つまたは複数の移植されたモジュールと、を統合する。幾つかの実施形態においては、移植されるモジュールは、カテーテルまたは皮下注射針を介して送達されるように十分に小さくすることができる。たとえば、移植されるモジュールは、直径が数ミリメートル(2〜3mm)から、およそ数百ミクロン以下の直径を有するまで小さくすることができる。この移植されるモジュールは、複雑な電子回路および生理的刺激の両方に対する要件をはるかに超える性能レベルで、体内のほぼ任意の位置への無線電力の伝送を可能にする。移植されるモジュールは小型なので、それらはリードおよび延長部分を必要とすることなしに対象となる神経、または筋肉領域に直接に注入されて、対象となる神経、筋肉、または組織領域に感知および刺激を提供することができる。
【0045】
例示の目的のために、図1A〜1Nは、本開示の様々な態様と整合の取れた、1つまたは複数のサブ波長構造体102を含む、無線電力送信モジュール100の様々な実施形態および図を示す。サブ波長は、患者の組織の外側のまたは空気中の場の波長に関して定義される。サブ波長構造体は、空気中の波長よりも小さい寸法のものとすることができるが、組織内の波長と同等であり得る。たとえば、1.6GHzでは、筋肉中の波長は空気中の波長よりも約7.3倍短くなる。およそ筋肉内のまたは組織内の波長の寸法である任意の源構造体は、サブ波長構造体であり得る。図1C〜1Eは、無線電力送信モジュールの3つの特定の実施形態の斜視図を示し、図1F〜1Hは、それぞれ、これらのモジュールの側面図を示す。同様に、図1I〜1Kは、幾つかの無線電力送信モジュールの斜視図を示し、図1L〜1Nは、それぞれ、これらのモジュールの側面図を示す。
【0046】
図1A〜1Nのサブ波長構造体は、患者の組織の外側のエバネッセント場を操作して患者の組織内部の伝搬場を励起/制御し、空間的に集束している適応ステアリング磁場/信号を組織内に生成するように構成することができる。図1A〜1Nに示される無線電力送信モジュール100は、基板104上に配置されるサブ波長構造体102と、(図1F〜1Hおよび図1L〜1Nの側面図に示される)1つまたは複数の接地面106とを含むことができる。幾つかの実施形態においては、サブ波長構造体102は、銅などの導電性材料を含むことができる。基板は、エポキシ樹脂、またはセラミックなどの絶縁材料を含むことができる。基板は、固体で剛性の基板とすることができ、または代替的に、患者の皮膚表面と適合するように構成される可撓性の基板とすることができる。幾つかの実施形態においては、サブ波長構造体102は、基板に結合されたまたは基板上に配置された接地面をさらに含むことができる。接地面は、基板の上面に(図1H、1L、1N)、底面に(図1F、1G)、または上面と底面の両方に(図1M)、配置することができる。
【0047】
各サブ波長構造体の設計は、特定の用途の設計要件に応じて、変更することができる。図1A〜1Bの両方は、複数のサブ波長構造体102を有する無線電力送信モジュールを示し、サブ波長構造体は、湾曲したまたは突出している帯状片または特徴を備えたX’に似ている。これら両方の実施形態において、サブ波長構造体102の各々は、電圧および/または電流源に接続された1つまたは複数の独立した無線周波数ポート103によって励起することができる。幾つかの実施形態においては、サブ波長構造体は、0.1Vから数十Vの範囲の電圧で励起することができ、または、0.1Aから数十Aの範囲の電流で励起することができる。源の周波数範囲は、300MHzから3GHzまでの範囲とすることができる。ポート信号間の適切な位相に対して、サブ波長構造体は、最適な電流密度によく似ている円形の電流経路を生成することができる。組織の上方に配置される場合、構造体は、低レベルの裏面放射線と散乱パラメータスペクトルの顕著な最小値の両方によって証明されるように、外部回路からの電力を組織容積に高効率(>90%)で結合する。
【0048】
入力ポート信号の位相によって提供される自由度は、様々な干渉パターンを、空間的にシフトされた焦点領域を有するものを含めて、合成することを可能にする。これらの位相のソフトウェア制御は、機械的な再構成無しで場に焦点を再び合わせることができ、このことは、律動的な器官に挿入された移植機器、または移動式の機器にとって有用であり得る。幾つかの実施形態においては、「欲張りの」位相探索アルゴリズムが、焦点強化電力伝送をリアルタイムで取得する閉ループフィードバックに基づいて実行され得る。他の実施形態においては、フィードバック信号が移植された機器から中間場源へ無線で送信され得る。
【0049】
図1Cおよび1Fは、基板の底面上に接地面106を備えた、基板104上に配置されたパッチサブ波長構造体102cを示す。フィード108も図1Fに示されており、このフィード108は、サブ波長構造体へ、またはサブ波長構造体から、電気信号を供給するまたは送信するために使用される。図1Dおよび1Gは、基板の底面上に接地面106を備えた、基板104上に配置されたPIFAサブ波長構造体102dを示す。構造体102dに接続された短絡110とともに、図1Gにフィード108が示されている。図1Eおよび1Hは、基板104上に配置された接地面106内のスロットサブ波長構造体102eを示す。図1Hにフィード108が示されている。図1Iおよび1Lは、基板104上に配置された接地面106内のクロススロットサブ波長構造体102iを示す。図1Lにフィード108が示されている。図1Jおよび1Mは、基板104上に配置された接地面106内の開口部結合円形スロットサブ波長構造体102jを示す。この実施形態は、基板の底面上に接地面106をさらに含み得る。図1Mにフィード108が示されている。最後に、図1Kおよび1Nが、基板の上面上に接地面106を備えた、基板104上に配置されたハーフスロットサブ波長構造体102kを示す。図1Nにフィード108が示されている。上記で説明したおよび図示した全ての実施形態において、1つまたは複数の電源および増幅器が、フィード(またはポート)を介してサブ波長構造体に接続されてエバネッセント場を操作することができる。さらに、幾つかの実施形態においては、各サブ波長構造体は1つまたは複数のフィードまたはポートを含むことができる。
【0050】
上述した無線電力送信モジュール100は一般的に、1つまたは複数のサブ波長構造体と、1つまたは複数の励起ポートと、基板と、1つまたは複数の接地面と、を含む。モジュール100は、制御装置(ハードウェアおよびソフトウェアの両方)によって制御されて、電磁場の焦点領域を動的にシフトすることができる。
【0051】
無線電力を伝送するための様々な技術についての幾らかの議論を説明する。図2は、yz平面およびxz平面の両方において、従来の誘導結合ループ源214によって生成された磁界212を示す。図から見て取れるように、磁界は組織境界面216に垂直に、かつ、移植機器218などの、ループ源の下の組織内に配置された移植物への所望の無線電力伝送の方向と平行に、生成される。
【0052】
対照的に、図3A〜3Eは、本開示の様々なサブ波長構造体によって生成される磁界312を示す。これらの構造体は、組織境界面316に平行で、かつ、移植機器318に無線電力を送信する組織内で生成された伝搬波に垂直な、磁界312を生成する。図3Aは、yz平面およびxz平面におけるパッチサブ波長構造体302c(図1Cおよび1F)を用いて生成された磁界を示す。図3Bは、yz平面およびxz平面におけるPIFAサブ波長構造体302d(図1Dおよび1G)を用いて生成された磁界を示す。図3Cは、yz平面およびxz平面におけるクロススロットサブ波長構造体302i(図1Iおよび1L)を用いて生成された磁界を示す。図3Dは、yz平面およびxz平面における開口部結合円形スロット構造体302j(図1Jおよび1M)を用いて生成された磁界を示す。図3Eは、yz平面およびxz平面におけるハーフスロットサブ波長構造体302k(図1Kおよび1N)を用いて生成された磁界を示す。
【0053】
図4Aは、無線電力送信モジュール400と人体内部の移植機器418とを含む、無線電力送信システムを示す。図4Aにおいて、機器が、心臓の内部または近傍などの患者の胸腔内に移植されて示されている。この図から、移植機器は、心臓、脳、肺、脊髄、骨、神経、副鼻腔、鼻腔、口、耳、腹膜腔、腕、脚、胃、腸、消化管、腎臓、膀胱、泌尿器、または、本明細書に記載されるシステムによってもたらされる感知および/または刺激機能から恩恵を受けることができる体の任意の他の臓器または部分などの、体内のどこにでも配置することができることが理解されるべきである。
【0054】
図4Aにおいて、送信モジュール400は患者の皮膚の上に配置することができ、受信コイルを含む移植モジュールは患者に移植することができる。電力伝送は、コイル構造と源の場との相互作用が、移植モジュール内の負荷によって押し出された作用に帰着する場合に、発生する。サブ波長コイルについては、最低次モードのみが重要であり、伝送機構は、動的磁場相互作用の電磁誘導特性によって説明することができる。源の導電体の表面上の時間高調波電流密度Jによって生成された電界および磁界は、電流密度をその空間周波数成分に分解することによって解決することができる。各成分は、平面状の境界上の屈折および反射に対する位相整合条件によって決定される伝搬を有する平面波に対応し、そこから、組織内の全体の場は、源のスペクトル上の統合によって、各深さzで回復することができる。
【0055】
中間場領域の特性が、最適な給電の鍵である。サブ波長構造体がエバネッセント場を操作して伝搬波(交互の電界および磁界)を励起/制御し、それによって、空間的に集束している適応ステアリング磁場/信号を移植機器上に収束している組織内に生成する。皮膚の表面への焦点面における場の逆伝搬は、源が、非常に振動しており、かつ、近接場でのみ重要である有意なエバネッセント成分から構成されていることを明らかにしている。しかしながら、従来の近接場の給電とは対照的に、これらのエバネッセント成分は、吸収が制限された深さにエネルギーを運ぶ組織における伝搬モードを励起する。
【0056】
図4B〜4Cは、本開示の中間場設計(図4C)と比較した、組織の奥部へ電力を伝送するための近接場または誘導結合無線電力伝送システム(図4B)の能力の違いを示す。図4Cに見られるように、本開示の中間場設計は、誘導結合システムによっては到達不可能である組織の奥部への無線電力の送信を可能にする。
【0057】
幾つかの実施形態においては、本開示の無線電力伝送システムの焦点は、伝搬波の方向を変えるように調節することができる。図4Cは、線419aに沿った、外部モジュールの真下の方向における伝搬波の形成を示す。しかしながら、幾つかの実施形態においては、焦点は、伝搬波が線419bまたは419cに沿ってなど、組織を通って操舵方向で伝搬するように調節することができる。この調節は、外部モジュールの1つまたは複数のサブ波長構造体の位相および/または振幅を調節することによって、達成することができる。
【0058】
図5A〜5Bは、サブ波長構造体のポートを励起するための、本明細書に記載される無線電力送信モジュールの制御装置についてのアーキテクチャの2つの実施形態を示す。これらのアーキテクチャは、無線電力送信モジュールの1つまたは複数のサブ波長構造体502a〜502nを制御するように構成することができる。各アーキテクチャにおいて、無線周波数信号は発振器520から供給されることができ、電力分配器を通して複数の無線周波数信号に対称的に分割することができる。図5Aのアーキテクチャにおいて、信号は次いで、可変制御可能な減衰設定を伴って減衰器522に供給される。信号は次いで、制御可能な位相を伴って移相器524を通して供給され、次いで増幅器526を用いて増幅され得る。このアーキテクチャは、モジュールの各ポートにおいて、制御された位相および振幅信号を生成する。図5Bにおけるアーキテクチャは、同一の制御された位相および振幅信号を生成するように構成されているが、増幅器と振幅制御素子を単一の部品528に結合することにより、より少ない部品を伴っている。
【0059】
移植されるモジュール。無線電力を受け取るための移植されるモジュールの一実施形態が、図6に示されている。移植されるモジュールは、集積チップセット(IC)632上に配置されたコイル630を含むことができる。コイル630は、導体の1つのループ(または複数のループ)とすることができる。幾つかの実施形態においては、コイル630は、2mm未満の直径を有する。コイルは、本明細書に記載された外部モジュールから送信された無線電力を受け取るように構成することができる。モジュールは、組織を感知および/または刺激するために、電極またはセンサーなどの特徴部634を任意選択により含むことができる。電極は、たとえば、スクリュー型電極、平板状電極、またはカフ電極を含み得る。他の実施形態においては、センサーは生体電位センサー、圧力センサー、O2センサー等を含み得る。移植されるモジュールは、コンデンサや電池636などの、エネルギーを貯蔵するための電気部品を任意選択により含むことができる。移植されるモジュール(直径2mm以下)の小さなサイズのおかげで、移植されるモジュールは、カテーテル638、カニューレ、針等を用いて、低侵襲的技術を用いて患者の体内に送達し移植することができる。
【0060】
中間場無線給電アプローチによって支持される電力レベルは、超小型電子技術に対する要件をはるかに超えているので(たとえば、一実施形態においては、外部モジュールからの500mWの入力電力レベルが、組織の5cmを越えて2mm直径の移植コイルへ約200uWの電力を送達することができる)、移植されるモジュールによって、慢性疾患状態のリアルタイム監視、または、閉ループの生物学的感知および制御などの、より高性能の機能が実行され得る。したがって、幾つかの実施形態においては、移植されるモジュールは1つまたは複数の以下の構成要素を含むことができる。
【0061】
電力管理。電磁的に弱結合の領域で動作している無線で給電される移植物の整流および電力管理の効率を高めるために、移植されるモジュール内の交流−直流変換回路を、低電圧ドメインおよび高電圧ドメインに分割することができる。図7Aは、移植されるモジュールのIC内に含まれて移植物の電力管理機能を操作することができるアーキテクチャを示す。図7Aは、交流−直流変換回路を低電圧ドメインおよび高電圧ドメインに分割するために、1つまたは複数のコンデンサ(または可変コンデンサ)740と、多段整流器742と、調節器744とに電気的に接続されたコイル730を示す。
【0062】
電池貯蔵。薄膜電池などの充電可能電池は、一時的なエネルギー貯蔵のために、かつ、電力管理回路用の効率的なチャージポンプとして使用するために、移植されるモジュール内に含めることができる。幾つかの実施形態においては、薄膜電池は、エネルギー密度を増加させるために、積み重ねることができる。
【0063】
電力検出。移植されるモジュールによって受け取られる瞬時電力レベルは、検出されて、中間場での移植モジュール上への適応的な集束のために、データ送信機を介して外部モジュールへ送信され得る。データは、移植されるモジュールと外部モジュールの間を、無線リンクを通して送信され得る。幾つかの実施形態においては、無線リンクは電力伝送の周波数範囲で動作することができ、または他の実施形態においては、無線リンクは異なる周波数範囲で動作することができる。検出された電力レベルは、システムの制御装置を用いた閉ループフィードバック制御に使用して、最適な無線電力伝送のために、外部モジュールの調節および焦点合わせを行うことができる。
【0064】
パルス化された無線周波数変調。従来の負荷変調は、移植アンテナの低品質要因のおかげで、中間場でははたらかず、不十分な信号対雑音比およびかなりのリンクマージンの変動につながる。この問題を克服するために、移植されるモジュールのデータ送信機は、パルス化された無線周波数変調を用いることができる。外部モジュールにおける検出を容易にするために、データ搬送波および電力搬送波は異なる中心周波数で動作することができる。
【0065】
プログラム可能な電流ドライバ。刺激用途は、主に、強度、持続期間、周波数、および形状などの電気パルスの特性によって、異なる。刺激のための電流ドライバは、これらのパラメータの広範囲をサポートするように設計されており、無線データリンクを介してプログラムすることができる。電流ドライバは、移動などの動きをサポートするように構成することもできる。
【0066】
プログラム可能なデジタルコア。デジタルコアは、移植されるモジュール内の様々なブロック間の相互作用と、移植モジュールと外部モジュールの間の通信と、マルチアクセスプロトコルと、を調整する。各移植モジュールは、移植されるモジュールのメモリに記憶されたIDを介してなど、それ自体の識別情報(ID)を有することができる。
【0067】
データ受信機および送信機。外部モジュールは、各移植されるモジュールと遠隔で通信して、各移植されるモジュールをデータ受信機を介してプログラムするまたは構成することができる。図7Bは、包絡線検波に基づくデータ受信機および超広帯域アーキテクチャに基づくデータ送信機の一実施形態を示す。受信機および送信機は、電力受信コイルまたは別々のアンテナに接続しているT/Rスイッチ746によって、時間多重化することができる。各移植されるモジュールは、マルチアクセスのために、それ自体のID748を有することができる。デジタル制御装置750は、マルチアクセスプロトコル752と、外部モジュールからのコマンドと、外部モジュールへのフィードバックデータとを処理するように実装することができる。
【0068】
感知フロントエンド。感知フロントエンドは、プリアンプと、プリアンプからの信号を離散化するためのアナログ−デジタル変換器(ADC)と、センサー用のドライバと、を含むことができる。ADCの出力からの信号は、移植されるモジュールの不揮発性メモリ内に格納されるか、または、パルス化された無線周波数変調器を介して外部モジュールに送信することができる。加えて、感知された信号は、電流ドライバのパラメータを調節するために生物学的なフィードバックを提供することができる。図7Cは、1つまたは複数のLEDドライバと、電気的感知および刺激のフロントエンドと、に対するアーキテクチャを示す。LEDドライバは、組織(神経)の光学的刺激のために、複数のLEDに接続することができる。電気的感知および刺激のフロントエンドは、生物学的活動を感知して電気経路を変更するために、電極に接続することもできる。
【0069】
不揮発性メモリ。たとえば、フラッシュメモリが、活性化の時間および電流ドライバの設定などの移植モジュールの使用モデルを記録するために、および/または、感知フロントエンドからの計測値を記憶するために、含まれ得る。
【0070】
モジュール構造。移植されるモジュールは、特定のニーズまたはエンドユーザの要求に応じてカスタマイズ可能であり得る。たとえば、移植されるモジュールは、無線電力受信コイルおよびICを含む幾つかの基本部品を含むことができ、かつ、ユーザによって所望される任意の種類のセンサーまたは刺激装置を受け取ることができるインターフェースをさらに含むことができる。たとえば、移植されるモジュールは、熱、化学、圧力、酸素、PH、流量、電気、歪み、磁気、光、または画像センサーなどの任意の種類のセンサー、または、電気、光、化学、もしくは機械的刺激装置などの任意の種類の刺激装置、または、薬物送達装置を受け取るように構成することができる。したがって、移植されるモジュールのモジュール式のアプローチは、ユーザの特定のニーズに適応するためにカスタマイズすることができる。
【0071】
移植されるモジュール内の上記の構成要素の全てが、システムオンチップ(SoC:system−on−chip)として単一のダイに、または、システムインパッケージ(SiP:system−in−package)として単一のモジュールに封入された複数のダイに統合することができる。
【0072】
外部モジュール。(上述の)外部モジュールは、移植されるモジュールを通電して制御するように、かつ、移植されるモジュールを用いて双方向無線リンク構成を通して非侵襲的な読み出しを実行するように、構成することができる。外部モジュールは、1つまたは複数の以下の構成要素を含むことができる。
【0073】
中間場カプラ。図1A〜1Nは、外部モジュールまたは中間場カプラについての様々な形状およびパターンを示し、この外部モジュールまたは中間場カプラは、1つまたは複数のサブ波長構造体を含むことができる。カプラは、固体の基板上に、または、患者の皮膚表面と適合するように構成される可撓性の基板上に、製作することができる。
【0074】
動的中間場集束回路およびアルゴリズム。移植モジュールからの電力計測フィードバックに基づいて、外部モジュールは、たとえば欲張り探索アルゴリズムなどのアルゴリズムを実行し、焦点領域を個々の移植モジュールへと動的にシフトするように、中間場カプラの各素子における位相および/または大きさの設定を変更することができる。たとえば、移植されるモジュールは、受け取られた無線エネルギーの電力レベルを検出することができ、外部モジュールは、サブ波長構造体の位相および/または振幅を自動的に調節して送信されたエネルギー信号の焦点を調節することができる。この調節は、自動的にかつリアルタイムで実施されて、外部モジュールと内部モジュールの間の無線電力送信を最適化することができる。
【0075】
移植モジュールへの双方向無線リンク。無線リンクは、移植されるモジュールを作動させ、移植されるモジュールの設定をプログラムし、移植されるモジュールの感知フロントエンドから計測値をダウンロードすることができる。下りリンクに対するデータレートは、外部モジュールから移植されるモジュールへは、数Mbps以下であることができ、一方、上りリンクに対するデータレートは、移植モジュールから外部モジュールへはより高いはずであり、数十Mbpsの範囲内か、またはより高くすることができる。
【0076】
マルチアクセスプロトコル。これらのプロトコルは、移植されるモジュールを調整して、協調的な多部位刺激などの同期タスクを実行することができる。幾つかの実施形態においては、マルチアクセス方式は、時間多重化および周波数多重化とすることができる。
【0077】
患者/臨床医ユーザインターフェース。ディスプレイを含む周辺機器が外部モジュールと統合されて、患者および/または臨床医とインターフェースすることができる。他の実施形態においては、統合された周辺機器は、スマートフォンまたはタブレットと通信している双方向無線リンクによって置き換えることができる。この実施形態においては、患者および臨床医は、無線リンクを介して、スマートフォンまたはタブレットのディスプレイを用いて、外部モジュールとインターフェースすることができる。
【0078】
幾つかの実施形態においては、外部モジュールの全体が、手のひらサイズの機器に統合されて、オンデマンドの用途のために患者によって保持されることができる。またそれは、身体に身に着けることができ、または、皮膚表面に貼ることができる。患者は、必要に応じて、外部モジュールを使用して移植モジュールの電池を充電することができる。幾つかの実施形態においては、移植されるモジュールは、週/月あたりわずか数分間の無線充電で充電することができる。充電中、患者は移植モジュールから使用記録をダウンロードし、かつ、分析のために臨床医に記録を送信することもできる。
【0079】
本開示の様々な態様が、単一の電源を用いた、複数の能動的な移植可能センサーまたは機器の給電に向けられている。本開示の様々な態様と整合が取れた、単一の電源を用いて給電することができる移植可能な機器/センサーの種類は、多数ある。たとえば、移植可能な機器は、筋肉の刺激、患者の心拍を調節するための刺激/感知、多部位脳深部刺激、薬物送達、ならびに/または生物学的、生理学的、および化学的感知のために使用することができる。本明細書に記載されるシステムは、以下の用途で使用されるように構成することもできる。
【0080】
心臓ペースメーカー。移植されるモジュールは、患者の右心室の中に脈管構造を通してカテーテルを介して送達することができる。別個の移植されるモジュールが、冠静脈洞を通して冠静脈の中に送達され、左心室心外膜上に配置されることができる。これらの移植されるモジュールは、刺激電極および感知電極を含んで、心臓にリードレスペーシングを適用することができる。したがって、リードレスの両心室のペーシングが低侵襲的な処置のみを用いて本システムを用いて達成することができる。加えて、処置時間は、従来のアプローチを超えて、相当に短くすることができる。このことは、複数のリードおよび延長部分に起因する任意の合併症を除去することもできる。
【0081】
脳深部刺激。現在の処置は、リードおよびリードから刺激モジュールへの延長部分を挿入するために、頭蓋骨に直径>1cmの穴をあけることを必要とする。処置の侵襲性のおかげで、限られた数の対象部位のみが、電極を配置するために選択される。対照的に、この開示における移植されるモジュールは、非常に小型であり、他のより侵襲性の低い経路を介して、脳内に注入することができる。本システムではリードおよび延長線が無いので、刺激のためのより多くの対象部位をサポートすることができる。このことは、より少ない感染症およびより低い規制リスクにつながる。
【0082】
脊髄刺激。脊髄刺激装置のより新規のモデルにおける電池は、高い電力要件のおかげで、充電可能である。しかしながら、それらの給電アプローチは、もっぱら誘導結合(または近接場結合)に基づいている。これらのシステムにおいては集積部品(harvesting components)は大型であるので、それらは皮下にのみ配置することができる。したがって、これらのシステムにおけるリードおよび延長線は、効果的な刺激のための電極の位置を潜在的に制限する。この開示においては、移植されるモジュールの電力集積部品は比較的小型である。移植されるモジュールの全体は、脊髄における対象神経領域の隣に簡単に配置することができ、それらを接続するリード線を必要としない。このことは、より少ない感染症、脊髄組織へのより少ない損傷、および、より効果的な刺激につながる。
【0083】
末梢神経刺激。現在の機器の大部分は低周波刺激をサポートしており、そのうちのほんの2、3が、はるかにより高い電力要件のおかげで、高周波低強度の刺激をサポートしている。この開示のシステムは、両方のモードをサポートすることができる。加えて、双方向無線リンクが、異なるモード間を切り替えながら、即時にプログラム可能であることをもたらす。
【0084】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:obstructive sleep apnea)を治療するための刺激。この開示の移植されるモジュールは、舌の近傍の筋肉組織に注入して直接埋め込むことができ、電気的刺激を提供して睡眠中に患者の気道を開けることができる。複数の移植モジュールが、異なる筋肉群に注入されて、筋肉収縮を強化することができる。必要な場合、患者は外部モジュールを用いて移植されるモジュールを充電することができ、同時に、各OSA症状の発現期間のタイムスタンプをダウンロードすることができる。この情報は、臨床医に送信することができる。収集されたデータは、移植されるモジュールを再プログラムするのに用いることもできる。
【0085】
医療センサー。無電池の移植されるモジュールは、典型的に本質的に受動的であり、すなわち、機器内に感知された信号を調整するための能動的な回路がない。貧弱な信号品質を補償するために、外部の読み取り装置は非常に高性能であり通常は大型である(手のひらに納めることはできない)ことが必要である。加えて、受動センサーによって多くの刺激を検出することができない。能動的な移植されるセンサーが欠如しているのは、主に、効率的な無線給電アプローチが不足していることに起因する。たとえば、脊髄刺激用の充電可能インパルス発生器において使用される誘導結合アプローチは、限られた浸透力を有し、受信機(移植される機器)は大型になる。本開示のシステムは、手のひらサイズの外部モジュールから体内のほぼ任意の位置における小型の移植されるモジュールへ、電力のかなりの量を伝送することを可能にする。このことは、たとえば、心臓および脳における術後の酸素感知などの、医療分野における連続的な監視のための多数の新規の感知用途を可能にする。
【0086】
無線内視鏡。現在のカプセル内視鏡は限られた電池寿命を有し、主な臨床的失敗のうちの1つである不完全な小腸の検査につながっている。本発明者らの発明における移植モジュールは小型であり無限の電源を有し、現在の内視鏡の不足点を解決する。加えて、本発明者らの移植モジュールは現在のカプセル内視鏡よりも何倍も小さいので、患者は複数の移植モジュールを同時に飲み込むことができる。それらは、腸内で異なって配向することが予期され、したがって、同一の位置において異なる角度から写真を撮ることができ、視野を改善する。それらから収集した画像は、診断を向上させるであろう。最後に、停留の可能性は劇的に低減されることが予想され、外科的なまたは内視鏡による回収の必要性を回避している。
【0087】
移植される薬物送達。現在の移植される薬物送達システムは大型であり、薬物が必要とされる部位に局所的に配置することがほとんどできない。この開示に基づいて、移植されるモジュールは、薬物が必要とされる対象組織領域(たとえば、腫瘍)の中に注入することができる。移植されるモジュールは、幾つかの薬物貯蔵器を含むことができる。薬物貯蔵器は、患者/臨床医ユーザインターフェースを介して、外部モジュールによって活性化されて、対象組織領域に薬物を放出することができる。
【0088】
一時的な治療。現在、永久インパルス発生器が移植される前に、スクリーニングテストが典型的に実施されている。スクリーニングテストの間、患者は一時的な、外部インパルス発生器を受け取ることができる。発生器は、体内に外科的に配置された延長部とリードとに接続することができる。この期間中、外部インパルス発生器は患者の使用データおよび治療の効力を収集する。しかしながら、この開示に従うと、電極とインパルス発生器とを有する移植されるモジュールを、対象となる神経/筋肉領域に注入することができ、リードを有する一時的な発生器についての必要性が除去される。したがって、外部の一時的なインパルス発生器の必要性がない。加えて、この開示は、心臓手術後に患者の体内に用いられる一時的な感知およびペーシングのリードを置き換えることもできる。
【0089】
実験室の実験。移植されるモジュールは、実験動物または齧歯動物(マウス、ラットなど)に注入して、動物のパラメータを監視または感知する、および/または、実験的設定で動物に刺激を与えることができる。移植されるモジュールの小さなサイズが、以前には利用されてこなかった動物を監視するための機会を、有利にも提供することができる。たとえば、移植されるモジュールは、齧歯動物の脳の上または近傍に移植されて、脳の電気信号を監視することができる。この移植物は、上記の外部モジュールを用いて無線で給電することができ、動物に関連する外部モジュールに情報を通信するように構成することができる。
【0090】
機器は個別にアドレス指定可能であり、独立して制御される。したがって、たとえば筋肉刺激のために用いられる機器などの機器は、異なる筋肉群に対応する異なる位置に配置し、同期した方式で刺激を実施することができる。
【0091】
同様に、脳刺激機器は、脳内の異なる位置に配置することができ、刺激は、同期した方式で実施することができる。同じことが、薬物送達機器についても言える。さらに、機器は個別にアドレス指定可能であり独立して制御できるので、機器は、同期的にも非同期的にも、活性化することができる、および/または給電することができる。特定の例においては、これらの機器は、組織内の機器の深さよりも機器がはるかに(たとえば、1、2、または3桁)小さい特徴寸法を有することができる。同様に、特定の例においては、機器は、機器に電力を供給する源よりも機器がはるかに(たとえば、1、2、または3桁)小さい特徴寸法を有することができる。
【0092】
本開示の態様は、装置、機器、および方法に向けられているので、単独で、または様々な他の態様と組み合わせて、利用することができる。
本明細書における教示と様々な程度で組み合わせることができる、他の実施形態、実験、および応用の詳細に関する情報のために、この特許書類の一部を形成し、本明細書に参照により完全に組み込まれる以下の添付書類において提供される、実験的教示および根底にある参照への参照がなされ得る。これらの付録において議論される実施形態は、特に断りのない限り、全般的な技術的開示、または、特許請求される開示の任意の部分に限定することを、どのような形であれ、意図してはいない。
【0093】
そのような文脈において、これらの構成要素および/またはモジュールは、1つまたは複数のこれらのまたは他の関連した動作/活動を実行する回路を表す。たとえば、上述した特定の実施形態において、1つまたは複数のブロックおよび/またはモジュールは、上述したおよび付録に記載された回路モジュール/ブロックと同様に、これらの動作/活動を実装するために構成され配置された、別々の論理回路またはプログラム可能な論理回路である。特定の実施形態においては、プログラム可能な回路は、命令(および/または設定データ)の集合(または複数の集合)を実行するようにプログラムされた、1つまたは複数のコンピュータ回路である。命令(および/または設定データ)は、メモリ(回路)に格納され、メモリ(回路)からアクセス可能なファームウェアまたはソフトウェアの形態であり得る。
【0094】
上述した特徴および例示的な図と関連して、このような構造は、サブ波長構造体へのフィードバックを含むセンサー/機器と共に用いることができる。センサーのこれらの種類は、たとえば、移植可能な温度センサーまたは撮像機器を含むことができる。
【0095】
このように、機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号を生成する上記で示した構造に応答する。フィードバック型の機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号によって提供される信号の電力および/またはデータ部分に応答し、かつ、応答するように促される。たとえば、患者の内部に配置された温度センサーは、空間的に適応可能な電磁場/信号によって提供される信号の電力および/またはデータ部分に応答して、組織の温度を同報送信する/報告するであろう。加えて、組織内に移植された撮像機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号によって提供される信号の電力および/またはデータ部分に応答して、撮影された画像を同報送信する/報告することができる。さらに、空間的に適応可能な電磁場/信号の浸透の深さは、モデル化され制御されることができる。したがって、特定の実施形態においては、フィードバック機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号に応答して、データを示しデータにラベルを付けて、機器が動作している深さを記録することができる。このデータを患者ごとに記憶装置に格納することにより、統計目的のためにコンピュータがこのデータにアクセスし分析を行うことができる。
【0096】
プログラム可能なコンピュータを介して、メモリ回路内にフィードバック型機器の位置またはラベルを格納することにより、様々な患者のフィードバック追跡方法も実現することができる。たとえば、周辺の組織を分析することにより、移植可能な撮像機器の深さを最適化することができる。このように、移植可能な撮像機器の深さは、より最適な位置が可能であると判定された場合に、調節することができる。同様に、移植可能な刺激機器の深さは、刺激機器の周囲の組織領域のヒースを判定し、かつ、空間的に適応可能な電磁場/信号に応答して機器の最適な位置を判定するために使用することができる。加えて、フィードバック型機器は、空間的に適応可能な電磁場/信号に応答し、かつ、メモリ回路内に格納されたデータを同報送信することができる。したがって、フィードバック型機器は、機器によって追跡されているデータの医師に、連続的に最新情報を与えることができる。これにより、無線で患者を、リアルタイムに監視、診断、および/または治療することが可能になる。
【0097】
(添付書類を含む)本開示が様々な修正および代替形式に対応できると同時に、その詳細は、図面において例として示され、さらに詳細に記載されるであろう。意図としては、本開示を、記載された特定の実施形態および/または用途に限定するものではないことが、理解されるべきである。上記で説明され、かつ図および添付書類に示された様々な実施形態が、一緒に、および/または他の方式で実施されることでもよい。図面/図形中に描かれた1つまたは複数の項目は、特定の用途に従うと有用であるように、より別々のまたは統合された方式で実施することができる。
【0098】
本発明に関係する追加の詳細としては、材料および製造技術は、関連する技術分野の当業者のレベルの範囲内で用いることができる。共通的にまたは論理的に用いられる追加の行為の観点から、本発明の方法に基づく態様に関して、同じことが当てはまることができる。また、記載された発明の変形例のあらゆる任意選択的な特徴は、独立して、または、本明細書に記載された任意の1つまたは複数の特徴と組み合わせて、記載されて特許請求され得ることが企図されている。同様に、単数の項目への参照は、複数の同じ項目が存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「および(and)」、「前記(said)」、および「その/前記(the)」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の指示物を含む。特許請求の範囲は、いかなる任意選択的な要素も排除するように起草され得ることに、さらに留意されたい。このように、この文は「唯一(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な用語の使用に対して、特許要素の記載、または「否定的(negative)」制限の使用に関連して、先立つ基礎として作用することを意図している。本明細書で別途定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の広さは、対象明細書によって限定されるのではなく、むしろ、用いられる特許請求の用語の純粋な意味によってのみ限定される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図1N
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C