【課題を解決するための手段】
【0017】
冒頭に記したタイプの方法に関して、この目的は、
画像生成対象の試料部を、対物レンズの光軸との角度δ≠90°を含む光シートで走査するステップであって、
光シートは、画像生成対象の試料部全体を伝搬方向に通過し、
対物レンズの焦点深度S
objは、この試料部の光軸の方向への深さTより小さい、走査するステップと、
検出ビーム経路内の焦点深度S
objをこの試料部の深さT以上である焦点深度S
effへと増大させるステップと、
試料部を焦点深度S
eff内に位置付けるステップと、
試料部における光画像信号の発生領域を割り当てつつ、増大させた焦点深度S
effで得られた光画像信号を電子画像信号に変換するステップと、
電子画像信号から走査された試料部の画像を生成するステップと
により達成される。
【0018】
画像生成対象の試料部は、検査対象の試料の体積全体か、またはその試料の体積全体中の検査対象の空間部分の何れかである。
本発明の意味において、それぞれ使用される対物レンズの設計により決定される公称焦点深度は、焦点深度S
objと定義される。例えば、高開口数の無収差対物レンズには下式:
【0019】
【数1】
が当てはまり、式中、αは対物レンズの開き角、nはイマージョンリキッドの反射率、NAはα=arcsin(NA/n)による開口数である。NAが1.2の水浸対物レンズの場合、Δzの焦点深度S
obj=S
obj=0.83μmが得られる。本発明による方法に使用できるような標準的な対物レンズの場合、焦点深度S
objは0.5μm〜170μmの範囲内にある。
【0020】
焦点深度S
effは、検出ビーム経路の過程で得られる有効焦点深度を意味するものと理解され、これは焦点深度S
objより大きい。本発明によれば、S
eff≧Tが当てはまる。
【0021】
対物レンズの光軸の方向は、デカルト座標系のz座標方向に対応する。光シートの空間アラインメントとは、本発明の意味において、光シートとして成形された照明光の伝搬方向により定義される。光シートは、照明ビーム経路のうち、試料部を照明するために提供される領域であり、この領域において、照明光は、検出方向に、すなわち対物レンズの光軸の方向に測定された例えば10μmの空間的広がりを超えず、従って、光シート顕微鏡の原理により試料部を検出または測定するのに適している。
【0022】
光シートは様々な手順で生成でき、例えばシリンドリカルレンズによって一方向のみに合焦される拡張コリメートレーザビームの形態で試料部内に投射することも、または点状レーザ焦点を走査式に移動させながら生成することもできる。例えばSLM(空間光位相変調器)等の光成形素子によって光シートを生成することも想定できる。
【0023】
走査対象の試料部に応じて、
対物レンズに関する光シートのx、yおよびz方向への位置、および/または
角度δ、および/または
光軸の周囲での中心または偏心回転により、前記試料部内での光シートのアラインメント
を変化させることができる。
【0024】
有利な態様では、試料部は反射光方式を用いて走査される。本発明により提供される軸方向に非弁別的な検出により、有利には、既知のチルトでの光シート照明と組み合わせて、試料領域を照明し、画像生成することが可能となり、この試料領域は検出用対物レンズの焦点面にあるだけでなく、軸方向に見たときに試料中の焦点面の上流または下流の様々な深さにある。
【0025】
本発明による方法の代替的な実施形態において、走査される試料部の2次元画像または3次元画像が、エリアセンサの受像面上に検出光を結像するための光学的手段の選択と、信号処理のためのアルゴリズムとによって異なる方法で生成される。拡張焦点深度方式またはライトフィールド技術、例えば回折光学素子(DOE)を検出ビーム経路中に組み込んだ技術により、走査対象試料部の2次元画像または3次元画像が生成される実施形態が有利である。
【0026】
透過光で、またはそれ以外に選択的平面照明顕微鏡(SPIM:Selective−Plane−Illumination−Microscopy)方式に従って横方向に、対物レンズを通じて試料を照明することは、本発明による方法の範囲内に含まれる。
【0027】
本発明による方法において誘導放出抑制(STED:stimulated emission−depletion)の原則を実行することもまた想定できる。ここで、画像生成に貢献する光シートの厚さは、ダブルライトシートのゼロ位置が実質的に励起光シートの位置にあるようにダブルライトシートを励起光シートの上に重ねることにより低減される。信号評価時にダブルライトシートの波長で刺激される発光は考慮されず、その結果、長手方向の分解能が高くなる。さらに、分解能が線形または非線形手段により高められる既知のあらゆる方法を、本発明による方法によって組み合わせることができる。この点で、2Dおよび3Dの画像を取得するための局在化顕微鏡法に属する方法、例えば光活性化局在化顕微鏡法PALM(Photo−activated Localization Microscopy)、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM:stochastic optical reconstruction microscopy)または超解像蛍光強度変動画像構成(SOFI:super−resolution optical fluctuation imaging)等が特に好適である。さらに、信号光を生成するための多光子方式、例えば2光子顕微鏡法または3光子顕微鏡法、SHG、THG顕微鏡法またはCARS励起等も使用できる。
【0028】
本発明の基礎となる目的はさらに、上述の本発明による方法を実行するための装置により達成される。この装置は、
画像生成対象の試料部を、対物レンズの光軸との角度δ≠90°を含む光シート(9)で走査するための手段であって、
光シートは、画像生成対象の試料部全体を伝搬方向に通過し、
対物レンズの焦点深度S
objは、この試料部の光軸の方向への深さTより小さい、走査するための手段と、
対物レンズの下流に設置され、焦点深度S
objをこの試料部の深さT以上である焦点深度S
effへと増大させるように具現化された光学装置と、
試料部を焦点深度S
effの領域内に位置付けるための手段と、
光学装置の下流に設置された空間分解光電子エリアセンサと、
エリアセンサにより出力された電子画像信号から試料部の画像を生成するように具現化されたハードウェアおよびソフトウェアと
を含む。
【0029】
例えば、対物レンズの公称焦点深度S
objは0.5μm〜170μmの範囲内にあり、対物レンズの下流に設置された光学装置は、焦点深度S
objを有効焦点深度S
effへと係数a≧5で増大させるように具現化され、常にS
eff≧Tが当てはまる。
【0030】
本発明による装置は好ましくは、
試料部内へと走査される光シートを生成し、ならびに
対物レンズに関する光シートのx、yおよびz方向の位置を変化させ、および/または
角度δを変化させ、および/または
光軸の周囲での中心または偏心回転により、試料部内の光シートのアラインメントを変化させるための光学的手段を備える。
【0031】
好ましくは、共通の対物レンズを照明および検出に利用でき、照明光を対物レンズの入射瞳へと対物レンズの光軸に平行にずれた位置において入射させるようになっている。この場合、
照明光の入射位置と対物レンズの光軸との間の距離を変化させ、
瞳面内の入射位置を、照明光の入射位置の光軸からの距離に対応する半径を有する部分円に沿って移動させ、および
照明光を対物レンズの入射瞳へと入射させる方向を変化させる
ように具現化された装置が存在する。
【0032】
本発明による装置の実施形態を動作させる際、光シートの角度δまたは傾斜位置は、照明用兼検出用対物レンズの入射瞳への照明光の中心を外した入射によりあらかじめ決定される。照明光の入射位置を瞳面内の部分円の円周に沿って移動させることにより、光シートが対物レンズの光軸の周囲で回転する。本発明の意味において、光軸と平行に延びる瞳の法線に関する照明光の入射方向または照明光の入射角度を変化させると、楕円ガウス光シートの場合に光シートが移動し、照明内の長尺状の点像分布関数を走査することによって生じる光シートの横方向の広がりに影響を与える。
【0033】
例えば、焦点深度S
objを増大させるための光学装置は、アキシコン、位相マスク、またはマイクロレンズアレイを含む。ここで、アキシコンまたは位相マスクは、拡張焦点深度方式による2次元画像または3次元画像の生成に関連して使用され、マイクレンズアレイは、ライトフィールド技術に従って2次元画像または3次元画像を生成することに関連して使用される。
【0034】
例えば、キューブ、対数、指数関数、分数乗位相マスクおよび有理数位相マスクを本発明の意味における位相マスクとして、検出PSFを長くするために使用可能なその他のあらゆる位相マスクと同様に使用できる。さらに、瞳マスクを使用することも可能であり、これは検出されるべき光の振幅に影響を与える。それゆえ、特定の領域における吸収率が増大しており、従ってアポダイゼーションをもたらすか、または対物レンズのNAの絞りにつながる瞳マスクが問題となる。ここで、マスクの吸収領域と位相に影響を与える領域との混合を有利に使用することが可能である。
【0035】
エリアセンサの受像面は、長方形であり、検出ビーム経路に少なくとも実質的に直角に整列され、かつ検出ビーム経路中の直角位置に、正確に言えば光のシートの位置もしくは傾斜の変化、すなわち回転に関係なく、固定して配置される。先行技術とは対照的に、光シートを移動させた後にエリアセンサまたは領域を更新する必要がない。その結果、機械的に移動される構成要素が不要となり、装置はよりエラーを発生させにくい。例えば、CCDセンサをエリアセンサとして提供できる。
【0036】
さらに、中間像を生成するための顕微鏡リレイシステムが不要であり、その結果、このような中間像を観察するための第二の光顕微鏡構造も必要ないため、先行技術と比較して、本発明による解決策に必要な技術的経費は実質的に削減され、その結果、コスト安となる。さらに、検出効率がより高く、それは、複数の光学ユニット、特に高開口数対物レンズの斜めの位置によってNAが制限されないからである。必要な光学ユニット数が少なくてよいため、システム全体の透過率が同等の先行技術より高い。
【0037】
本発明の実質的な利点はさらに、試料の空間画像が、比較的小さい公称焦点深度S
objの対物レンズにより得られる点である。その結果、費用対効果の高い標準的な対物レンズまたは標準的な画像生成条件を使用できる。標準的な対物レンズは様々な実践的用途で互換可能であり、これは、対物レンズの特性が全体的な構造と無関係であるからである。その結果、本発明による装置は、実質的により柔軟な方法で使用できる。
【0038】
PCと、2次元画像または3次元画像の電子的保存および視覚的に認識可能な再現のための手段とは、ハードウェアとして機能する。ソフトウェアは、信号評価と、信号評価の結果として2次元画像または3次元画像の生成とのための所定のアルゴリズムに対応する。
【0039】
補足的な実施形態において、本発明による装置は、任意選択により、照明用兼検出用対物レンズの入射瞳に照明光を入射させる位置を変化させ、入射を任意でその光軸に関して中心から外して、または中心で行うことができるようにする装置を有する。その結果、必要に応じて、光シート顕微鏡検査による選択された試料部の走査から従来のレーザ走査方式による走査へと切り替えることが可能である。それゆえ、照明光が中心で対物レンズの入射瞳に入射するときには、共焦点レーザ走査顕微鏡法に従って光学画像信号が得られる。
【0040】
例示として図面に基づいて本発明を以下により詳しく説明する。