(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553652
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】成層用取込装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20190722BHJP
F24H 9/00 20060101ALI20190722BHJP
F24H 1/18 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
F28D20/00 B
F24H9/00 E
F24H1/18 H
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-574334(P2016-574334)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公表番号】特表2017-512972(P2017-512972A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】DK2015050050
(87)【国際公開番号】WO2015135551
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年1月24日
(31)【優先権主張番号】PA201400140
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】516272467
【氏名又は名称】アイキュラー テクノロジーズ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スパングゴー, マーティン
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/039028(WO,A1)
【文献】
特開2001−304688(JP,A)
【文献】
特開2003−185251(JP,A)
【文献】
特開2009−097819(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02051016(EP,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0227468(US,A1)
【文献】
韓国登録特許第10−1346683(KR,B1)
【文献】
独国特許出願公開第10320569(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第02722888(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F24H 1/18
F24H 9/00
F16K 13/00
F16K 15/00,15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵槽(3)内の流体を成層化し、維持するための成層用取込装置(1)であって、少なくとも一部が弾性の非多孔性材料(5)で構成された少なくとも1つの取込管(2)を備え、取込管(2)には多数の穴(8)があり、取込管の内側の流体の温度が、取込管の外側の流体の温度よりも高くなる取込管の部位では、取込管の伸縮により、取込管の穴(8)を通る流体の交換がほぼ防止されるように構成されている、成層用取込装置(1)。
【請求項2】
前記取込管(2)は、拡張した状態において略円形の断面形状を呈する、請求項1に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項3】
成層用取込装置(1)は前記貯蔵槽内に垂直に配置され、前記取込管の穴(8)は、 相異なる垂直高さに設けられ、所定の垂直間隔を有し、成層用取込装置の異なる垂直熱層での流体の交換を可能にする、請求項1または2に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項4】
前記取込管の穴(8)は、前記流体内の浮遊物質によって詰りにくい寸法である、請求項1から3のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項5】
前記取込管の穴(8)は、取込管内に一列で配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項6】
前記取込管(2)には、取込管内の少なくとも1つの穴(8)の周りに封止領域(14)があって、封止領域(14)は、当該穴(8)を有効に閉じるように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項7】
前記取込管(2)には弾性の非多孔性材料層が2層以上形成され、各層は互いに当接するか、互いに距離を隔てて置かれている、請求項1から6のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項8】
前記取込管(2)が、ポリマーフィルム、金属フィルム、および/またはシリコーンフィルムから作製される、請求項1から7のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項9】
前記ポリマーフィルムが、エチレン−テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、および/または変性ポリテトラフルオロ−エチレンのうちの1つまたは複数から作製される、請求項8に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項10】
前記取込管(2)は、取込管内の流体と貯蔵槽内の流体との間に温度差がないときに、取込管の穴(8)が容易に開口されるようにした少なくとも1つの補強手段を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項11】
前記補強手段が、前記取込管の略全長に延在する1つまたは複数のロッド、1つまたは複数のリブ、ステッチ、および/または溶接である、請求項10に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項12】
前記取込管は、一部は弾性の非多孔性材料(5)で、一部は剛性材料(21)で構成され、弾性の非多孔性材料の長手方向の縁が前記剛性材料の長手方向の縁に取り付けられている、請求項1から11のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項13】
前記取込管の剛性材料の長手方向の縁には、前記非多孔性材料(5)の長手方向の縁(17)が点毎に取り付けられて、結合された縁に沿って穴が設けられる、請求項1から12のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の成層用取込装置(1)を提供する方法であって、弾性の非多孔性材料(5)から少なくとも部分的に作製された取込管(2)に対して、取込管内に穴(8)を設けることを含む、方法。
【請求項15】
前記取込管の剛性材料に対して、略長方形をなす弾性の非多孔性材料(5)を、長手方向の縁(17)の全長に亘って組み立てることにより、両者が重なって結合された縁(18)を得ることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
重なって結合された縁(18)内の区域(19)を取り除くことによって、前記取込管に穴(8)が設けられて、前記非多孔性材料(5)の長手方向の縁(17)が点毎に結合される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
取り除かれた区域(19)が平凸レンズに類似して、拡張された段階の穴(8)が両面凸レンズ(8a)に類似する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
長方形をなす、弾性の非多孔性材料(5)について、その長手方向の縁(17)を点毎に(20)組み立てることにより、結合された縁(18)に沿った円形の凹部が穴として形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
家庭用または産業的な温水の貯蔵、ならびに他のタイプの加熱のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の成層用取込装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成層用取込管(inlet stratification pipe)を備える成層用取込装置(inlet stratification device)、および、成層用取込管を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱は、後で使用する余剰熱エネルギーを事前に収集可能にすることから、効率的なエネルギー加熱のためにますます重要になってきている。
【0003】
熱的加熱システムにおいて鍵となる要素は、熱エネルギー貯蔵装置の成層効率である。熱エネルギー貯蔵器内の成層は、4℃より高い温度の水槽などの液体貯蔵システムにおいて直面する自然現象である。浮力に起因し、温水は、熱エネルギー貯蔵器の上部に蓄積する傾向があり、冷たい水は、常に下方へと移動されることになる。ゆえに、水をベースとする熱エネルギー貯蔵器は、常にある程度の成層を呈することになる。
【0004】
しかしながら、実験的および理論的調査は、例えば、家庭用の温水を準備するための太陽光加熱システムなどの熱エネルギー貯蔵器のシステム全体の性能は、貯蔵器内が成層化されていない条件のシステムに比べ、太陽蓄熱器(solar storage)内の最適な熱的成層によって高められ得ることを示している。
【0005】
様々な要因が成層を破壊する傾向にある。1つの例は、例えば、取り込む流体が、取込の位置の温度よりも温かい場合、または、熱エネルギー貯蔵器に、浸漬式熱交換器(immersed heat exchanger)が投入された場合などに、より冷たい流体によって取り囲まれた、より温かい流体の浮力により引き起こされる自然対流に起因する水の混合である。別の問題は、熱エネルギー貯蔵器に入る水の運動エネルギーにより引き起こされる噴流混合すなわち上昇流同伴(plume entrainment)、または、流体自体、熱エネルギー貯蔵器の壁、および流体内に浸漬された構成要素の中での熱的伝導ならびに拡散によるものである。
【0006】
よって、貯蔵装置内の流体の投入および排出中に成層を促進する力量は、貯蔵装置の構造だけでなく、成層を強化する何らかの装置が装置内に存在することにも依存する。ゆえに、成層効率を維持するには、投入排出プロセスの境界条件が重要な役割を負う。
【0007】
上述の問題の解決を目指す、いくつかの異なる種類の成層用装置が今日知られており、成層用システムは、貯蔵装置/槽の可変の高さでの流入を可能にする。
【0008】
投入された流体の導入高さ(admission height)の選択は、機械的処理を通じて、または、重力による誘起流を通じて行われることができ、開放された開口、またはロック式開口を有する垂直に設置されたチューブが使用される。これらには、開口と、「逆止」弁とを具備する剛性の成層取込部(inlet stratifiers)、および、貯蔵槽内に垂直に据え付けられる弾性の成層用取込管の両方が含まれている。
【0009】
剛性の管は、例えば、DE10320569およびDE102007046905から周知されている。しかしながら、実験は、異なるレベルに多数の開口を有する剛性のチューブは、特に最も低い開口を通って成層部内に冷水が吸引され、これにより熱的性能を著しく低下させるため、成層化する装置というよりも、混合する装置として働いてしまうことを示している(例えば、Shah L.Jら、Theoretical and experimental investigations of inlet stratifiers for solar storage tanks. Applied Thermal Engineering 2005年、25:2086−2099参照)。
【0010】
いくつかの布製の成層用取込管が、例えばWO2006084460において開示されている。しかしながら、布製の成層用取込管は、液体に対するフィルターとして作用することになる。材料の細孔より大きな全ての粒子、例えば、さび、泥、様々な薄片、および流体システム内のその他の浮遊物質は、多孔性材料によって捕らえられることになる。これにより、布内の細孔は徐々に塞がれ、最終的に、成層部の成層能力を完全に不能にする。また、炭酸カルシウム沈殿物は、布内の細孔に堆積物を築き上げる傾向にあり、やはり、徐々に細孔を塞ぎ、最終的に、成層部の成層能力を完全に不能にする。
【0011】
布製の成層用取込管が実験的に調査されており、例えば、Andersen Eら、Investigations of fabric inlet stratifiers for solar tanks. Proceedings of ISES Solar World Congress、オーランド、フロリダ州、アメリカ合衆国、2005年を参照されたい。著者は、布製の成層用取込管の欠点のうちの1つ、つまり、とても薄い布を通る活発な水平方向の伝熱は、1つの布の層のかわりに2つの布の層から成る布製の管を使用した場合に低減され得ることを発見した。しかしながら、これは、布がフィルターとして機能してしまい、作動中に成層用取込管の効率を低下させるという問題を大きくしてしまう傾向を唯一有している。
【発明の概要】
【0012】
したがって、使用中の信頼性が一貫して高く、不必要な乱流、および/または層間での熱交換を引き起こすことなく、流体が貯蔵槽内の正確な熱層に吐出され得ることを保証する、単純で高価でない成層用取込装置を提供する必要がある。
【0013】
本発明の第1の態様は、蓄熱用貯蔵槽および/または加熱システムの熱的性能の向上のために、成層化された層の固有の乱流および攪拌を伴う流入および流出をもたらすことなく、蓄熱用貯蔵槽内の取り込み流体(inlet fluid)を熱的に成層化するために配置された、成層用取込装置を提供することである。
【0014】
本発明の第2の態様は、貯蔵装置内の可変の高さでの流入を可能にするために配置された、成層用取込管を提供することである。
【0015】
本発明の第3の態様は、現存する蓄熱用貯蔵槽で使用されることができる、成層用取込装置を提供することである。
【0016】
本発明の第4の態様は、成層用取込管を、単純で高価でない方式で製造する方法を提供することである。
【0017】
本発明の第5の態様は、空間加熱、家庭用の温水、プロセス熱など用に使用されることができる、成層用取込装置を提供することである。
【0018】
本発明の第6の態様は、設置、使用、および維持が簡単な、単純な成層用取込装置を提供することである。
【0019】
本発明によるこれらおよびさらなる態様が達成される、新規でかつ独特な特徴は、成層用取込装置が、弾性の非多孔性材料から少なくとも部分的に作製された少なくとも1つの取込管を備え、当該管が、多数の穴を備え、管の穴を通る流体の交換が、管の内側の流体の温度が、管の外側の流体の温度よりも高い管の部位でほぼ防止されるように、縮み、かつ拡張するように構成されていることである。
【0020】
成層用取込装置は、好ましくは、垂直方向に温度勾配を有する流体を、貯蔵槽を通って循環させるために配置され、取込管は、貯蔵槽内に垂直に配置されるのが好ましい。槽内の流体と取込管内の流体との間の濃度差により生成された取込管にかかる力のおかげで、取込管から出る流体の温度と同じまたは近い、槽の中の層に流体が移動するまで、管からの流体の流れが、貯蔵槽内の流体と混合することが抑制される。
【0021】
拡張、または収縮(collapsing)可能な弾性の取込管を使用することにより、管内および槽内の圧力の均等化が図られ、管および槽内の等濃度、したがって等温度のレベルに達するまで、管内の穴を通る流入および流出が防止されることになる。したがって、取込管内の流体は、新しい流体が絶えず管の中に送り込まれことにより管から離れることを強制される管の上部に達するまで、または、管内の流体の温度が槽内の流体の温度と等しく、管内が槽内よりもわずかに高い静水圧となるときまで槽に入らない。管は、圧力差を均等化すべく拡張することになるが、管の拡張特性によって拡張は制限され、正しい温度のレベルでの管から槽の中への流体の流れへとつながる。
【0022】
取込管は、有利には、貯蔵槽内に「張設状態」で垂直に置かれ、これにより、穴の開/閉機能に影響を及ぼす恐れがあるしわおよび/または折りは、作動中に発生しないことが保証される。
【0023】
本発明では、「弾性材料」という用語は、管および槽内の流体の温度/濃度に反応して拡張/展開および収縮するために配置された、任意の種類の材料を意味する。材料は、約5%より多くクリープ変形する(creep)ことはあり得ず、好ましくは、5%未満でもクリープ変形することはあり得ず、かつ、作動中に材料がクリープ変形するのをほぼ防止する方式で、取込管が槽内に配置されることが好ましい。
【0024】
「非多孔性材料」という用語は、流体内に存在する粒子および/または沈殿物がせき止められ得る細孔、または、同様の小さな開口/チャネルを有さない材料を意味する。なお、材料は、取込管内の流体の少なくとも98%、好ましくは全てが、管内の穴を介して取り囲んでいる槽の中に入るように構成されることが好ましく、これにより、布または他のフィルター材料などの材料を自動的に排除する。
【0025】
上述の定義を満たす好ましい弾性の非多孔性材料は、例えば、広範囲の温度にわたる高耐食性および高強度を有するフッ素系プラスチックであるエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE:ethylene tetrafluoroethylene)、非反応性熱可塑性フルオロポリマーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF:polyvinylidene difluoride)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、または、極めて厳しい化学的条件に対する耐性、および/または高温耐性を要する応用例にとっての優れた選択肢となるフルオロポリマーフィルムである変性ポリテトラフルオロ−エチレン(mPTFE:modified polytetrafluoro−ethylene)などから作製された、例えばポリマーフィルムである。しかしながら、金属および/またはシリコーンフィルムなどの他の弾性の非多孔性材料から全てまたは部分的に作製された取込管も、本発明の範囲内と考えられる。弾性の非多孔性材料の選択は、貯蔵槽内の物理的および化学的条件に依存するということを当業者は理解するであろう。例えば、太陽光エネルギー用の貯蔵槽は、従来のエネルギーシステムで使用されている取込管用に使用される材料よりも、高い温度に耐えられ得る材料を要するであろう。
【0026】
好ましい実施形態では、拡張姿勢の取込管の断面形状は略円形であり、なぜならば、この形状が単純で高価でない実施形態を提供すると証明されているからである。しかしながら、例えば、楕円形または多角形などの他の断面形状も本発明の範囲内と考えられる。
【0027】
材料の厚さは、好ましくは、必要とされる管の弾力性が提供され、同時に、管の壁を通る伝熱が最低限に抑えられることを保証するように選択される。よって、管の壁の好ましい厚さは、およそ10から100μmの範囲、好ましくは、20から50μmの間、さらにより好ましくはおよそ25μmである。しかしながら、厚さは、使用される材料に応じてより厚く、またはより薄くてもよいことを当業者は理解するであろう。
【0028】
管の壁を通る熱損失を低減するために、取込管は、好ましい実施形態において、1つより多い層を備えることができる。当該層は、例えば、布製の成層用取込装置についてWO2006084460に記載されているように、例えば、互いに距離を隔てて置かれることができ、層間の間隔が断熱層として機能することを保証する。代替的な実施形態では、層は互いに対して当接し、なおも、絶縁効果を提供し、かつ/または、取込管は、ある特定の区域に1つまたは複数の追加の層の部分を備えることができる。
【0029】
管内の穴は、好ましくは、異なる垂直高さで、所定の垂直間隔を有して配置され、貯蔵槽の全ての適切で所望する垂直の熱層における流体の交換を可能にする。好ましくは、穴は管内で単列に配置され、これにより、とても単純で高価でない実施形態を提供するが、しかしながら、管の垂直高さにわたって配設された複数列の穴、または単列の穴も本発明の範囲内と考えられ、唯一の要件は、槽内の取り囲んでいる流体の温度が、管の内側の流体の温度よりも低いときに穴が個々に閉じられることができ、取込管内の流体が、温度差がなく、したがって圧力差がない熱層に達したときに個々に開口されることができるように、穴が管の垂直方向に分布される(管が貯蔵槽内に配置される場合)ことである。このレベルで管は拡張し、穴が開き、取込管内の流体は、正確な熱層の中に流されることになる。
【0030】
取込管の各穴は、穴が詰らないように、流体内に存在する粒子および/または沈殿物が問題なく通過することを可能にする大きさを有する。穴が拡張された段階、すなわち、流体が管から流出し、槽の中に流入することが可能であるとき、穴は伸長され、または、両面凸レンズの形状を有することがさらに好ましく、なぜならば、これらの形状は、管内および槽内の流体の温度それぞれに反応し、素早く開閉すると証明されているからである。
【0031】
取込管の穴が効果的に閉じられることを保証するために、取込管が、各穴の周りに、穴が効果的に閉じられることを保証する封止領域を備え、封止領域では、より高い熱層へ運ばれている流体がそれぞれの穴を通って逃れることができないように、取込管の壁が互いに対し平らであることが好ましい。なお、取込管は、穴が閉じられたときに、略滴形断面を有することが好ましい。流体が流れ得る管の表面面積が実質的に減らされるので、当該滴形は、管の壁を通る熱損失も低減することになる。
【0032】
なお、封止領域は、取込管の所与の断面の壁の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%を含むことが好ましい。しかしながら、所望の封止領域は、使用される材料の種類、取込管を通る流量、および/または蓄熱流体に依存する。
【0033】
管内の穴が閉じられたときに発生し得る封止領域内の静電引力を克服するために、取込管は、管内および槽内の流体間に温度差がないときに、穴が容易に開口され得ることを保証するために配置された補強手段を備えることができる。当該補強手段は、1つの実施形態では、管の略全長に延在する1つまたは複数のロッド、例えば単列の穴に対向する領域内に間隔を隔てて置かれた1つまたは複数のリブ、および/または、取込管内に戦略的に施されたステッチもしくは溶接とすることができる。当該補強手段が、熱を絶縁する材料、例えば、シリコーンから作製される場合、熱損失の低減ももたらされる。
【0034】
補強手段に加えて、または、代替として、管の取込開口が、楕円形の取込チューブに連結され、管の内側の流体の流れが、単純で効果的な穴の開閉に貢献するのを保証することが好ましい。これは、取込管内の流体柱の形状によるものだと考えられている。当該楕円形の取込管は、管の所望の滴形断面をもたらすことにも貢献することになる。
【0035】
本発明は、本発明による成層用取込管を製造する方法にも関する。当該方法は、非多孔性の弾性材料から少なくとも部分的に作製された取込管を提供することと、当該管内に穴を提供することとを備える。
【0036】
取込管は、非多孔性の弾性材料から全体的に作製されても、または、非多孔性の弾性材料が取り付けられた剛性材料から部分的に作製されてもよい。唯一の要件は、取り囲んでいる流体の温度が取込管の内側の流体の温度よりも低いときは、弾性材料内の各穴が閉じ得、管および槽内の流体間に温度差がなく、したがって、圧力差がないときは開き得ることが保証されるように、非多孔性の弾性材料が管の一部分を占めなければならないことである。
【0037】
とても単純で高価でない実施形態では、取込管は、略長方形を有する非多孔性の弾性材料のシートおよび/またはフィルムを提供することと、長方形の非多孔性の弾性のシートの長手方向の縁を2つの縁の完全な長さにおいて、例えば、封止または溶接によって組み立て、結合された縁を提供することとにより得られる。
【0038】
穴は、製造中にシート/フィルムに作製されるか、または、シート/フィルムが折られる前に作製されることができるが、シートが組み立てられた後で、管内の区域を切断および/または打ち抜きすることにより設けられることもできる。このような場合、区域が取り除かれた後、結合された縁が点的に(point wise)結合されているのみであるように、結合された縁内の区域を取り除くことによって穴が作製されることが好ましい。当該取り除かれた区域が平凸レンズに類似する場合、穴は、拡張された段階で、両面凸レンズに類似し、これは、実験で特に有利であると証明されている。
【0039】
穴を設ける他の方式、例えば、結合縁に沿った円形の凹部として穴を設けるために、長方形の非多孔性の弾性材料の長手方向の縁を点的に組み立てることにより設けるなども、本発明の範囲内と考えられる。
【0040】
代替的な実施形態では、取込管は、略長方形を有する2つ以上の非多孔性の弾性材料のシート/フィルムを提供し、これらを互いに結合し、取込管を提供することにより得られる。この方式では、補強手段を提供するために、弾性の管の一部を剛性の区域で置き換えることも可能である。弾性材料内の穴は、有利には上述のように設けられることができる。
【0041】
以下に、本発明が詳細に説明され、本発明による成層用取込装置の例示的な実施形態にみが記載される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1a】本発明による成層用取込装置の第1の実施形態の概略図である。
【
図2】取込管内の穴が閉じられている、
図1aの取込管の切断線II−IIにおける断面図である。
【
図3】取込管内の穴が開いている、
図1aの取込管の切断線II−IIにおける断面図である。
【
図4】本発明による取込管の第2の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、流体内におけるエネルギーの蓄熱のための成層用取込装置に関する。
【0044】
図1aは、本発明による成層用取込装置1の第1の実施形態の概略図を示す。取込管2は、例えば水などの蓄熱流体/液体4を備える蓄熱用貯蔵槽3内に、剛性の構造体11を用いて垂直に配置される。取込管2が垂直姿勢で留まる限り、槽内でどのように配置されるかは重要でないことに留意すべきである。
【0045】
図1bに斜視図でも示されている取込管2は、非多孔性の弾性材料5から作製され、取込開口6と、任意の上部開口7と、管2の長手方向に単列に配置された多数の穴8とを備える。
【0046】
槽3は、太陽光収集器などの1つまたは複数の加熱装置9に接続されており、加熱装置9は、加熱装置内で作り出された熱エネルギーを蓄熱液体4に伝達するための熱交換器または吸収器を備える。ポンプ10は、液体が最も冷たい状態の槽3の底部にある開口12から、取出管(図示せず)を通って熱交換装置9へ、そこから、取込開口13を通って取込管2の取込開口6の中へ、加熱された状態で蓄熱用貯蔵槽3へ戻る、加熱システム内の循環をもたらす。システムに自然対流がある場合、例えば、熱交換装置9または加熱装置が、貯蔵槽の内側に置かれていれば、循環ポンプは必要ではないだろう。
【0047】
加熱された水は、それから、取込管2の内側で上方に流れ、これにより、加熱された水は、熱的に成層化されることになる。
【0048】
取込管2が非多孔性の弾性材料から作製されるため、取込管は、拡張および/または収縮し、取込管2内および槽3内の圧力が均等になり、取込管2および槽3内の等濃度、したがって等温度がもたらされるまで、取込管内の穴8を通る流入および流出が防止されることを保証する。
図1bでは、単一の穴8aが、槽の中へ水が流れることを可能にする開口された姿勢で示されており、残りの穴8bは全て閉じられている。開口された穴8aは、略両面凸レンズ形状を有し、穴8bは、略平凸レンズ形状を有する。
【0049】
図2は、
図1の取込管2の切断線II−IIにおける断面図を示し、管の内側の液体の温度は、管の外側、すなわち槽3内の液体の温度と異なっている。
図2から明らかなように、管は、封止領域14を備え、封止領域14では、取込管2内の液体が、取り囲んでいる流体とは異なる温度を有するように、取込管2の壁15は互いに対して平らであることができ、すなわち、それぞれの穴8bは閉じられている。当該封止領域14は、取込管2の所与の断面の壁の少なくとも10%、好ましくは10%よりも多くを占有し、これにより、好ましくは、穴が閉じられると、取込管の滴形断面をもたらす。
【0050】
図3は、
図2と同じ断面を示すが、管2内の流体の温度が、槽3内の流体の温度と等しく、取込内の水(inlet water)の流れによって引き起こされた上方への力に起因し、取込管2内の圧力が、槽内よりもわずかに高くなった断面である。管は、圧力差を均等化する試みで拡張/展開することになるが、管の伸張によって拡張は制限され、これにより穴8aは、強制的に開かれ、流体は、正しい温度層で管2から槽3の中へ流れることが可能となる。
【0051】
よって、管2内の液体は、管内の流体の温度が槽内の液体の温度と等しくなり、管内の圧力が槽内よりもわずかに高くなるときに層に達するまで、または、新しい水が絶えず管2の中に送り込まれることにより管から離れることを強制される管の上部開口7(もしあれば)を通ってしか槽3に入らない。
【0052】
図1から
図3に示されている取込管2は、非多孔性の弾性材料5の長方形のフィルムを、長方形の2つの最長の縁17が合うように材料5の中心軸16を中心に折ることにより製造されている。フィルムが折られた後に、重なっている縁17が、例えば溶接により共に結合され、これにより、単一の結合された縁18を提供する。この後、平凸レンズ形状の区域19が、例えば打ち抜き技法を使用して、結合された縁18から取り除かれる。結合された縁に生成された開口は、多数の連結点20によって隔離された単列の穴8を規定する。この方式では、取込管は、容易に縮み、かつ拡張するように構成され、結合縁18は、封止領域14の一部を提供し、管の壁を、封止領域において、互いに対し平らにさせるのを補助することになる。
【0053】
本発明の第2の実施形態は、
図4の断面図で確認することができ、取込管は、非多孔性の弾性材料5から部分的に、かつ、剛性材料21から部分的に作製され、非多孔性の弾性材料が、剛性材料21に固定されている。示された実施形態では、剛性材料と弾性材料との比は、およそ30/70であるが、しかしながら、当該比は、例えば40/60、50/50、または70/30など、別の比とすることも容易にでき、唯一の要件は、取り囲んでいる流体の温度が取込管の内側の流体の温度よりも低いときは、弾性材料内の穴8が閉じることを可能にする程度に、好ましくは、さらに、断面径の少なくとも10%の封止領域14が提供され得るように、非多孔性の弾性材料5が取込管2の一部分を占めなければならないことである。
【0054】
実施例
図1から
図3に示されたものに相当する取込管2の一例を、25μmの厚さ、および17cm×120cmの寸法を有する、エチレン−テトラフルオロエチレンの長方形のフィルムを用意して作製した。当該フィルムは、長方形の2つの最長の側部が揃うように、長手方向の中間に沿って折った。それから、重なっている縁を共に溶接し、打ち抜き技法を使用して、重なっている縁から平凸レンズ形状の区域を取り除いた。各平凸レンズ、すなわち、各穴の高さは50mmであり、各穴間の(最大距離における)連結点の高さは10mmである。平凸レンズ形状の湾曲半径は75mmである。
【0055】
当該取込管は、単純で高価でない設計を有し、ゆえに、家庭用のみならず産業的な温水の貯蔵、ならびに他のタイプの加熱のために等しく良好に使用されることができる。成層用装置は、バックアップとして、例えば、太陽熱、ヒートポンプ、およびガスボイラなど、1つより多い熱源が、蓄熱媒体に供給することが可能となるように設計されてもよい。また、ラジエーター、床下暖房、スイミングプール用熱交換器、および、温水準備用の板状熱交換器などの熱貯蔵部から流体を引き出す「消費者」が存在する場合もある。
【0056】
上述の原理および設計の修正ならびに組合せは、本発明の範囲内であるとみなされる。