特許第6553654号(P6553654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553654鋳造粉末、鋳造スラグおよび鋼の鋳造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553654
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】鋳造粉末、鋳造スラグおよび鋼の鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/108 20060101AFI20190722BHJP
   B22D 11/111 20060101ALI20190722BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20190722BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20190722BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B22D11/108 F
   B22D11/111
   C22C38/00 301A
   C22C38/06
   C22C38/14
   C22C38/00 302A
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-574905(P2016-574905)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公表番号】特表2017-528321(P2017-528321A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2015063749
(87)【国際公開番号】WO2015197470
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月13日
(31)【優先権主張番号】102014108843.3
(32)【優先日】2014年6月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(73)【特許権者】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】バリシェフ,エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】ドレスラー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ルドニツキ,ジェニー
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−346708(JP,A)
【文献】 特開平09−253808(JP,A)
【文献】 特開平09−085404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/108
B22D 11/111
C21C 7/076
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性成分を除く構成成分
40〜60重量%の予備融解されたカルシウムアルミネート、
10〜30重量%のフッ化物含有構成成分、
3〜6.5重量%のSiO
5〜15重量%のNaO、
2〜5.5重量%のLiO、
≦10.5重量%のAl、および
≦15重量%の炭素
を含み、
前記予備融解されたカルシウムアルミネート中のCaOとAlとの比が、0.6〜1.1の範囲である、鋳造粉末。
【請求項2】
構成成分
≦5.0重量%のTiO
≦5.0重量%のMgO、
≦3.0重量%のMnO、
≦1.0重量%のFe、および
≦1.0重量%のFeO
の1つ以上を含む、請求項1に記載の鋳造粉末。
【請求項3】
構成成分
40〜60重量%の前記予備融解されたカルシウムアルミネート、
15〜25重量%のフッ化物含有構成成分、
3〜6重量%のSiO
7〜12重量%のNaO、
2〜5.5重量%のLiO、
≦10重量%のAl
≦15重量%の炭素、
≦3.0重量%のTiO
≦1.0重量%のMgO、
≦1.0重量%のMnO、
≦1.0重量%のFe、および
≦1.0重量%のFeO
を含む、請求項1または2に記載の鋳造粉末。
【請求項4】
前記フッ化物含有構成成分がCaFである、請求項1から3のいずれかに記載の鋳造粉末。
【請求項5】
前記SiO含有量が、≦6重量%、好ましくは≦5.5重量%、より好ましくは≦5重量%である、請求項1から4のいずれかに記載の鋳造粉末。
【請求項6】
前記TiO含有量が1.5〜3重量%である、請求項1から5のいずれかに記載の鋳造粉末。
【請求項7】
前記SiO含有量が3〜5重量%であり、前記TiO含有量が1.5〜3重量%である、請求項1から6のいずれかに記載の鋳造粉末。
【請求項8】
構成成分
30〜50重量%のCaO、
20〜45重量%のAl
7〜15重量%のF(フッ素イオン)、
3〜6.5重量%のSiO
5〜15重量%のNaO、および
2〜5%のLi
を含み、
構成成分
≦5.0重量%のTiO
≦5.0重量%のMgO、
≦3.0重量%のMnO、および
≦2.0重量%のFeO
の1つ以上をさらに含む鋳造スラグ。
【請求項9】
構成成分
33〜48重量%のCaO、
23〜43重量%のAl
8〜13重量%のF(フッ素イオン)、
3〜6.5重量%のSiO
7〜12重量%のNaO、
2〜5重量%のLiO、
≦3重量%のTiO
≦1.5重量%のMgO、
≦1.0重量%のMnO、および
≦1重量%のFeO
を含む、請求項8記載の鋳造スラグ。
【請求項10】
前記フッ素イオン含有量がCaFによって調整される、請求項8または9に記載の鋳造スラグ。
【請求項11】
前記SiO含有量が、≦6重量%、好ましくは≦5.5重量%、より好ましくは≦5重量%である、請求項8から1のいずれかに記載の鋳造スラグ。
【請求項12】
前記TiO含有量が1.5〜3重量%である、請求項8から1のいずれかに記載の鋳造スラグ。
【請求項13】
前記SiO含有量が3〜5重量%であり、前記TiO含有量が1.5〜3重量%である、請求項8から1のいずれかに記載の鋳造スラグ。
【請求項14】
請求項1から7のいずれかに記載の鋳造粉末または請求項8から1のいずれかに記載の鋳造スラグを用いた、鋼の鋳造方法。
【請求項15】
前記方法が、連続鋳造方法である、請求項1に記載の鋼の鋳造方法。
【請求項16】
≧1重量%、好ましくは≧1.5重量%、より好ましくは≧3.0重量%、非常に好ましくは≧5.0重量%のアルミニウム含有量を有する鋼の鋳造のための、請求項1または1に記載の鋼の鋳造方法。
【請求項17】
≧15重量%、好ましくは≧17.5重量%、より好ましくは≧20重量%のマンガン含有量を有する鋼の鋳造のための、請求項1から1のいずれかに記載の鋼の鋳造方法。
【請求項18】
≧0.2重量%、好ましくは≧0.5重量%のチタン含有量を有する鋼の鋳造のための、請求項1から1のいずれかに記載の鋼の鋳造方法。
【請求項19】
≧1重量%、好ましくは≧1.5重量%、より好ましくは≧3.0重量%、非常に好ま
しくは≧5.0重量%のアルミニウム含有量および≧0.2重量%のチタン含有量を有す
る鋼の鋳造のための、請求項1に記載の鋼の鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造粉末、鋳造スラグおよび鋼の鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の鋳造において、鋳造粉末は、鋳造モールドに位置する溶融鋼の表面に連続的に適用される。ここで、この粉末は、熱によって溶融されて、スラグ層を形成し、これが鋳造モールドと鋼の凝固シェルとの間のギャップに連続的に流れ、この結果消費される。鋳造粉末および/または得られたスラグの最も重要な機能は、鋳造モールドと凝固シェルとの間の潤滑、硬化鋼からの熱の除去に対する制御、脱酸生成物の調整、再酸化の防止、および溶融鋼の断熱の機能である。
【0003】
鋼の連続鋳造のための典型的な鋳造粉末は、ケイ酸カルシウムを基礎として含み、慣習的に多量の二酸化ケイ素(SiO)および同様に他の容易に還元可能な構成成分、例えば酸化マンガン(MnO)および酸化鉄(FeO)を含み、そのためアルミニウム合金化シートの鋳造の間、鋳造スラグの酸化アルミニウム含有量は、鋼中のアルミニウム(Al)と二酸化ケイ素および同様に鋳造スラグ中の酸化マンガンおよび酸化鉄との間の化学反応により急激に増大する。
【0004】
4Al+3SiO←→2Al+3Si
2Al+3MnO←→Al+3Mn
2Al+3FeO←→Al+3Fe。
【0005】
Alキルド鋼の鋳造において酸化アルミニウム(Al、アルミナとも称される)の典型的な吸収は約2〜4重量%である。鋼中のより高いアルミニウム含有量では、鋳造スラグ中のAl吸収が増大する。例えば、約1.2〜1.5重量%のAl含有量を有するTRIP鋼の製造において、鋳造スラグ中のAl濃度は、約35〜40重量%に上昇する。
【0006】
鋳造スラグのSiO含有量は、二酸化ケイ素がアルミニウムによって還元されるので、対応して低減する。概して、これは鋳造スラグの特性を変更する。例えばAlの吸収および関連するSiOフラクションの低減の観点から、鋳造スラグの塩基性、粘度および結晶化傾向が増大し、結果として潤滑効果に損傷をきたす。概して、鋳造スラグを非晶質に凝固することは、結晶形態において凝固する鋳造スラグより良好な潤滑効果を有する。先行技術において、ケイ酸カルシウムに基づくスラグシステムが慣習的に使用される。これらのケイ酸カルシウム系スラグシステムは、鋼のアルミニウムフラクションが高過ぎない限り、すなわち特に<1重量%である限り、通常、主に非晶質である凝固を有する。しかし、溶融物中のAl含有量が高くなる場合、ケイ酸カルシウム系スラグシステムの凝固は主に結晶性である。
【0007】
同時に高いマンガン含有量を有する(例えばMn含有量≧15重量%およびAl含有量≧1重量%を有する)アルミニウム合金化鋼の鋳造において、鋳造プロセスに対する追加の複雑性は、これらの鋼の液相線温度が、高いMn含有量のために、例えばTRIP鋼の液相線温度よりも約100℃低い。これは、高いAl−Mn含有量を有する鋼について、鋳造スラグの溶融および結晶化温度は、同様に、高いAl含有量の他の鋼よりも約100℃低くなければならないことを意味する。そうでなければ鋳造スラグは、鋳造モールドの下半分において完全に結晶化する場合があり、それによってその潤滑効果が失われる。
【0008】
Al合金化鋼の鋳造の間に鋳造スラグの特性における上記で記載された変化のために、スラグは、適切にまたは全くその機能を満たすことがもはやできないことが多い。したがって高いアルミニウム含有量またはアルミニウムおよびマンガン含有量を有する鋼は特に、先行技術から既知の鋳造粉末に関して操作上確実な方法で製造することはできない。
【0009】
国際公開第2011/090218号パンフレットから鋼の鋳造のための鋳造粉末組成は既知であるが、15〜30重量%の高いSiO含有量の観点から、高いアルミニウム含有量を有する鋼の鋳造において使用するのに特に不向きである。同じことはまた、国際公開第2007/148939号パンフレットから既知の鋳造粉末および鋼の鋳造におけるそれらの使用にもあてはまる。特開昭57−184563号公報には、比較的低いSiO含有量を有する溶融金属をコーティングするための粉末が開示されている。しかしその化学組成のために、この粉末から得られたスラグは、必要な機能上の品質、例えば潤滑効果および熱移動を、例えば特に高いAl−Mn鋼については確実にできない。経験から、特開昭57−184563号公報に開示される鋳造粉末から得られる鋳造スラグは、操作上関連する範囲において過剰に高い結晶化温度および過剰に高い粘度を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2011/090218号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/148939号パンフレット
【特許文献3】特開昭57−184563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、≧1重量%の高いアルミニウム含有量、および選択的に≧15重量%の高いマンガン含有量、さらに選択的に≧0.2重量%のチタン含有量を有する鋼の製造を可能にする、鋳造粉末および鋳造スラグを提供することが本発明の目的である。本発明のさらなる目的は、鋼の鋳造方法、より詳細にはこの鋳造粉末または鋳造スラグを用いて鋼の連続鋳造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、説明および特許請求の範囲の主題によって達成される。
【0013】
第1の態様において、本発明は、以下の構成成分を含む鋳造スラグに関する:
30〜50重量%のCaO;
20〜45重量%のAl
7〜15重量%のF(フッ素イオン);
5〜15重量%のNaO;
3〜6.5重量%のSiO
2〜5%重量%のLiO。
【0014】
この鋳造スラグは、CaOおよびAl構成成分を、特に予備融解されたカルシウムアルミネートの形態において含む鋳造粉末から得られる。本質的に予備融解とは、本発明の意味において、カルシウムアルミネートは>50%、好ましくは>60%、より好ましくは>70%、非常に好ましくは>80%、最も好ましくは>90%で、100%まで予備融解されることを意味する。
【0015】
さらに、鋳造粉末は、フッ化物含有構成成分、好ましくはCaF、SiO(同様にCaSiOの形態であってもよい)、NaO(NaCOの形態であってもよい)、LiO(LiCOの形態であってもよい)を含む(およびさらにAlを含んでいてもよい)。
【0016】
この鋳造粉末はまた、例えば加熱時に脱ガスされる揮発性成分、例えば水またはCOを含んでいてもよい。
【0017】
したがってさらなる態様において、本発明は、以下の構成成分を含む鋳造粉末に関する:
40〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
10〜30重量%フッ化物含有構成成分、好ましくはCaF
3〜6.5重量%のSiO
5〜15重量%のNaO;
2〜5.5重量%のLiO;
≦10.5重量%のAl
≦15重量%の炭素。
【0018】
予備融解カルシウムアルミネート中のCaOとAlとの比が約40/60(2:3)〜約50/50(1:1)の範囲にあることが、所望の鋳造スラグ組成を達成し、必須の鋳造スラグ特性、例えば粘度を得るために重要である。予備融解カルシウムアルミネート中のCaOとAlとの比は、そうでなければカルシウムアルミネートの液相線温度が高過ぎ、鋳造粉末の構成要素としてのカルシウムアルミネートが溶融し、したがって鋳造粉末は十分溶融されないので、顕著に0.6未満または顕著に1.0超過となるべきではない。比は、好ましくは0.6〜1.1、より好ましくは0.65〜1.05、非常に好ましくは0.7〜1または0.7〜0.9である。
【0019】
さらに、カルシウムアルミネートは鋳造粉末において予備融解形態であることが重要である。カルシウムアルミネートの好ましい組成は、実質的に共晶組成であり、これは結果として、鋳造粉末のより迅速な溶融、およびさらにこの鋳造粉末から得られた鋳造スラグでは低い結晶化傾向をもたらし、それによって操作上の信頼性を上げる。予備融解カルシウムアルミネートの使用に対する別の理由は、CaO添加の容易な取扱いにある。生石灰(CaO)の使用では、生石灰は高度に吸湿性であり、湿分を吸収することによってその重量を変更し得るので、鋳造粉末を製造することがより困難である。これは、鋳造粉末または鋳造スラグ組成においてCaO/Al比のシフトを導く場合があり、その特性が損なわれ得る。
【0020】
ケイ素は、非晶質状態を安定化することに寄与し、鋳造スラグの非晶質凝固を促進する。鋳造粉末におけるSiOフラクションは、そうでなければ得られた鋳造スラグの非晶質フラクションが60%未満であるので、3重量%未満になるべきではない。鋳造粉末中のSiOフラクションは、そうでなければSiOの追加のフラクションが鋼溶融物に存在するアルミニウムと反応するので、6.5重量%を超えるべきではない。遊離酸素は、アルミニウムと結合し、こうしてスラグは、追加的にAlを構成する。スラグシステムは、もはや化学的に安定ではなくなり、この場合もはやCaOとAlとの目標最適比ではないことを意味する。
【0021】
鋳造粉末中のフッ化物含有構成成分は、NaOおよびLiOは、凝固温度に影響し、さらに得られた鋳造スラグの結晶化挙動に影響する。そうでなければ凝固温度が上昇し、結晶形態で凝固するスラグのフラクションが増大することになるので、フッ化物含有構成成分のフラクションは10重量%未満になるべきではなく、NaOのフラクションは5重量%未満になるべきではなく、LiOのフラクションは2重量%未満になるべきではない。この文脈においてLiOの影響はNaOの場合を超えるので、LiOが少量でのみ混合されなければならない。しかし、NaOと比較して、LiOは非常に高価であるので、コストの理由からLiOの効果はNaOを用いて可能である限り補われる。
【0022】
そうでなければ凝固温度は低過ぎ、鋳造スラグの粘度が低過ぎることになるので、フッ化物含有構成成分のフラクションは、30重量%を超えるべきではなく、NaOのフラクションは15重量%を超えるべきではなく、LiOのフラクションは5.5重量%を超えるべきではない。低粘度鋳造スラグは鋼表面から流れ落ち、これはスラグの潤滑効果が、鋼ストランドシェルとモールド壁との間の接触領域の全体にわたってもはや提供されないことを意味する。これは、依然として薄いストランドシェルの破壊を導き得、ストランド破壊の結果として製造損失を導く。さらに、不完全に形成されたスラグ膜は、不均一な徐熱条件を導き、したがってこれは結果として、ストランドシェル内の熱応力をもたらし、したがってストランド破壊と同様の可能性がある。
【0023】
予備融解カルシウムアルミネート内で結合したAlに加えてさらにAlを鋳造粉末に添加できる。追加のAlは、カルシウム含有構成要素のレベル、特にCaFのレベルが相対的に高い場合に、カルシウム含有構成成分、特にCaFの添加がカルシウムアルミネートによって導入されるCaOとAlとの初期比をシフトさせるので、CaOとAlとの比を約0.6〜約1.0の目標最適範囲内に維持するために、鋳造粉末に添加される。追加のAlのフラクションは、CaOとAlとの比がAlに有利になるように強くシフトし過ぎないように(したがってこれは鋳造スラグの形成および機能性について負の結果を有し得る)、10.5重量%を超えるべきではない。追加のAlの添加時に、鋳造粉末において0.7〜0.9のCaOとAlとの比が、特に有利であることが証明されている。
【0024】
炭素を、鋳造粉末の溶融を加速するために鋳造粉末に添加できる。鋳造粉末の炭素含有量は、鋼溶融物の炭化を防止するために、15重量%を超えるべきではない。炭素は、鋳造粉末において、好ましくは4〜10重量%、より好ましくは5〜7重量%で存在してもよい。この炭素は、当業者に既知の慣習的な形態、例えばカーボンブラック、グラファイト、またはコークダストの形態で使用されてもよい。
【0025】
当業者は、本発明の鋳造粉末が、厳密に粉末形態である必要はないが、代わりに少なくとも一部またはさらには完全に、別の形態、例えば顆粒の形態または中空ビーズの形態(およびさらには液体の形態であってもよい)で存在してもよいことを理解する。
【0026】
凝固時、本発明の鋳造スラグは、実質的に非晶質の構造を有するはずである、すなわち鋳造スラグ中の非晶質フラクションは、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%であるはずである。特に良好な特性は、少なくとも90%の非晶質フラクションを有するスラグによって保持される。高い非晶質フラクションは、良好な潤滑特性および均一な熱伝導を維持するために重要である。
【0027】
本発明の鋳造スラグは、これらの鋳造スラグがAl含有量≧1重量%を有する鋼を用いても化学的に安定であるので、特に、Al含有量≧1重量%を有する鋼の製造に有利である。化学的に安定とは、鋳造過程のスラグが鋼溶融物中に溶解したアルミニウムと反応せず、その化学組成が実質的に変化しないままであることを意味する。これにより、操作の信頼性および製品の品質を向上させる。
【0028】
例えば≧15重量%の高マンガン含有量をさらに有する鋼を用いると、高い操作の信頼性も、本発明の鋳造スラグを用いて達成できる。Mn含有量≧15重量%を有する鋼は、低いMn含有量の鋼よりも相当低い液相線温度を有する。Mn含有量≧15重量%を有する鋼に典型的な液相線温度は、1400〜1430℃である。
【0029】
例えばAl含有量≧1重量%および≧0.2重量%の追加の高チタン含有量を有する鋼は、化学的に活性な元素としてAlだけでなく、化学的に活性な元素としてTiも相当高い割合で存在するので、操作上での問題がある。こうした鋼を製造するために使用される鋳造スラグは、AlおよびTiに関して良好な化学的安定性を示さなければならない。これは、本発明の鋳造スラグにあてはまる。
【0030】
チタンは化学的に活性な元素であり、SiまたはMnに結合した酸素と結合することによって、スラグからSiまたはMnを浸出し得る。二酸化チタン含有量が高い場合、チタンカルシウムオキシド化合物(TiO−CaO)が形成する場合があり、鋳造スラグの結晶性凝固を促進する。この問題を防止するために、こうした構成要素、例えば酸化マンガンおよび酸化鉄を本発明の鋳造粉末に加えないことが有利である。したがってこれらの構成成分は、意図的には添加されないが、本発明の鋳造粉末において、ひいては本発明の鋳造スラグにおいて所望でない付随元素として存在し得る。
【0031】
本発明の鋳造スラグ組成はさらに、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物または遷移金属酸化物を含んでいてもよい。したがって本発明の鋳造スラグ組成は、以下の構成成分の1つ以上を含む:
≦5.0重量%のTiO
≦5.0重量%のMgO;
≦3.0重量%のMnO;
≦2.0重量%のFeO。
【0032】
したがって関連して好ましい鋳造粉末組成はさらに、以下の構成成分の1つ以上を含む:
≦5.0重量%のTiO
≦5.0重量%のMgO;
≦3.0重量%のMnO;
≦1.0重量%のFe
≦1.0重量%のFeO。
【0033】
TiOは、本発明の鋳造粉末に添加されてもよい。しかし、鋳造粉末中のTiOのフラクションは、この数字を超えるTiOのフラクションが鋼溶融物中に存在するアルミニウムと反応し得るので、5.0重量%を超えるべきではない。遊離酸素は、アルミニウムと結合し、スラグは追加的にAlを吸収する。スラグシステムは、もはや化学的に安定ではなくなり、すなわちこの場合もはやCaOとAlとの目標最適比はあてはまらない。さらに、>5重量%のTiOフラクションにおいて、元素形態のチタンは、鋼溶融物に移動し、その化学組成を不必要に変更し得る。
【0034】
MgO、MnO、Fe、およびFeOは、鋳造粉末中に付随元素として存在し得るが、鋳造スラグ特性を調整するためには意図的に添加されない。
【0035】
1つの好ましい実施形態において、本発明の鋳造スラグは、以下の構成成分を含む:
33〜48重量%のCaO;
23〜43重量%のAl
7〜13重量%のF(フッ素イオン);
3〜6.5重量%のSiO
7〜12重量%のNaO;
2〜5重量%のLiO;
≦3重量%のTiO
≦1.5重量%のMgO;
≦1.0重量%のMnO;
≦1重量%のFeO。
【0036】
関連する好ましい鋳造粉末組成は、揮発性成分を含まず計算されて、以下の構成成分を含む:
40〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
15〜30重量%のフッ化物含有構成成分、好ましくはCaF
3〜6重量%のSiO
7〜12重量%のNaO;
2〜5.5重量%のLiO;
≦10.5重量%のAl
≦15重量%の炭素;
≦3.0重量%のTiO
≦1.0重量%のMgO;
≦1.0重量%のMnO;
≦1.0重量%のFe
≦1.0重量%のFeO。
【0037】
鋳造スラグおよび鋳造粉末の上述の組成について記述される重量数字は、いずれの場合も、鋳造スラグ組成または鋳造粉末組成のそれぞれの構成成分の総合計に基づく。
【0038】
本発明の鋳造スラグおよび鋳造粉末組成中のフッ素イオンおよびフッ化物含有構成成分は、慣習的なフッ化物の形態において、いずれの場合も添加されてもよく、例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属および/または遷移金属のフッ化物、より詳細にはCaF、MgF、NaF、LiFおよびこれらフッ化物の2つ以上の混合物からなる群から選択されるフッ化物の形態である。
【0039】
本発明の鋳造スラグおよび鋳造粉末の実施形態において、いずれの場合も、フッ素イオンおよび/またはフッ化物含有構成成分のフラクションはCaF(蛍石とも称される)から生じることが特に好ましい。
【0040】
構成成分カルシウムアルミネート(CaO−Al)およびCaFを含む鋳造粉末の組成は、得られた鋳造スラグの特性の一貫性、特に同様にAl合金化鋼の製造の操作の信頼性を改善するために特に有利であることが明らかである。この三元CaO−Al−CaF混合物の構成成分は、鋼に存在するアルミニウムとの反応に関与せず、鋳造の間に得られた鋳造スラグの一貫した特性のように、こうして鋳造粉末の化学的安定性が確実になる。
【0041】
使用された鋳造粉末の明確な組成は変動してもよく、こうして優勢な条件に、例えば鋼の組成にまたは鋳造プロセスのタイプにさらに適合されてもよい。
【0042】
原理上、鋳造粉末添加剤として三酸化ホウ素(B)を用いることも可能である。粉末またはスラグに存在する三酸化ホウ素は、以下の反応式にしたがって、鋼に存在するアルミニウムによって還元され得る:
2Al+B←→Al+2B
還元されたホウ素は、所望ではない付随の元素として溶融物に混入され得る。これを防止するために、ホウ素は、好ましくは本明細書に記載された鋳造粉末および鋳造スラグ組成から取り除かれる。
【0043】
機能特性、例えば鋼とモールドとの間の鋳造ギャップ中の潤滑特性を最適化するために、例えば鋳造スラグの組成は、鋳造される鋼の等級の液相線温度に適合させてもよい。これは、例えば鋳造粉末中のフラックスの規定含有量、例えば酸化ナトリウム(NaO)および/または酸化リチウム(LiO)および/またはフッ化物含有構成成分の量を設定することによって行われる。
【0044】
高い液相線温度、例えば1500〜1530℃を有する鋼等級の鋳造において、例えば5〜11重量%のNaO含有量、約2〜3重量%のLiO含有量、および8〜10.5重量%のF含有量が鋳造スラグに設定されてもよく、NaO、LiO、およびFの総合計が好ましくは<25重量%である。NaO、LiOおよびFの総合計は、スラグの粘度が低くなり過ぎるのを防止するために、<25重量%となるべきである。
【0045】
したがってさらなる態様において、本発明は、以下の構成成分を含む、高い液相線温度を有する鋼の鋳造スラグ組成に関する:
30〜50重量%のCaO;
20〜45重量%のAl
8〜10.5重量%のF(フッ素イオン);
3〜6.5重量%のSiO
5〜11重量%のNaO;
2〜3重量%のLiO;
≦3重量%のTiO
≦5重量%のMgO;
≦3重量%のMnO;
≦2重量%のFeO。
【0046】
関連する鋳造粉末組成は、揮発性成分を含まず計算されて、以下の構成要素を含む:
40〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
10〜30重量%のフッ化物含有構成成分、好ましくはCaF
3〜6.5重量%のSiO
5〜11重量%のNaO;
2〜3重量%のLiO;
≦10.5重量%のAl
≦15重量%の炭素;
≦3.0重量%のTiO
≦5.0重量%のMgO;
≦3.0重量%のMnO;
≦1.0重量%のFe
≦1.0重量%のFeO。
【0047】
1つの好ましい実施形態において、高い液相線温度を有する鋼の鋳造スラグ組成は以下の構成成分を含む:
33〜48重量%のCaO;
23〜43重量%のAl
8〜10.5重量%のF(フッ素イオン);
3〜5重量%のSiO
5〜11重量%のNaO;
2〜3重量%のLiO;
≦3重量%のTiO
≦1.5重量%のMgO;
≦1.0重量%のMnO;
≦1.0重量%のFeO。
【0048】
関連した好ましい鋳造粉末組成は、揮発性成分を含まずに計算されて、以下を含む:
40〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
10〜25重量%のフッ化物含有構成成分、好ましくはCaFの形態;
3〜5重量%のSiO
5〜11重量%のNaO;
2〜3重量%のLiO;
≦8重量%のAl
≦5重量%の炭素;
≦3.0重量%のTiO
≦1.0重量%のMgO;
≦1.0重量%のMnO;
≦1.0重量%のFe
≦1.0重量%のFeO。
【0049】
低い液相線温度、例えば1400〜1430℃を有する鋼について、特に想定された鋳造スラグは、9〜15重量%のNaO含有量、4〜5重量%のLiO含有量、および12.5〜15重量%のF含有量を有し、NaO、LiOおよびFの総合計は≧25重量%である。ここで、相対的に高いフラックス含有量を有する場合に関して、測定された粘度は、低温方向に約100℃シフトする(図2)。
【0050】
したがってさらなる態様において、本発明は、以下の構成成分を含む、低い液相線温度を有する鋼の鋳造スラグ組成に関する:
30〜50重量%のCaO;
20〜45重量%のAl
12.5〜15重量%のF(フッ素イオン);
3〜6.5重量%のSiO
9〜15重量%のNaO;
4〜5重量%のLiO;
≦3重量%のTiO
≦5重量%のMgO;
≦3重量%のMnO;
≦2重量%のFeO。
【0051】
関連した鋳造粉末は、揮発性成分を含まずに計算されて、以下の構成成分を含む組成を有する:
40〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
15〜30重量%のフッ化物含有構成成分、好ましくはCaFの形態;
3〜6.5重量%のSiO
9〜15重量%のNaO;
3〜5重量%のLiO;
≦10重量%のAl
≦15重量%の炭素;
≦3重量%のTiO
≦5重量%のMgO;
≦3重量%のMnO;
≦1重量%のFe
≦1重量%のFeO。
【0052】
1つの好ましい実施形態において、低い液相温度を有する鋼のための本発明の鋳造スラグ組成は以下の構成成分を含む:
33〜48重量%のCaO;
23〜43重量%のAl
12.5〜15重量%のF(フッ素イオン);
3〜5重量%のSiO
11〜15重量%のNaO;
3〜5重量%のLiO;
≦3重量%のTiO
≦1.5重量%のMgO;
≦1重量%のMnO;
≦1重量%のFeO。
【0053】
関連した好ましい鋳造粉末組成は、揮発性成分を含まずに計算されて、以下を含む:
40〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
15〜30重量%のフッ化物含有構成成分、好ましくはCaFの形態;
3〜5重量%のSiO
11〜15重量%のNaO;
3〜5重量%のLiO;
≦10重量%のAl
≦15重量%の炭素;
≦3.0重量%のTiO
≦1.5重量%のMgO;
≦1.0重量%のMnO;
≦1.0重量%のFe
≦1.0重量%のFeO。
【0054】
鋳造スラグの別の重要な特性は、それらの熱伝導率である。鋳造ギャップ内において、この伝導率は、鋼からモールドへの熱の移動を決定する。熱伝導率は、鋳造スラグの結晶化挙動によって主に影響を受ける。ここで、鋳造スラグは非晶質または結晶性凝固を行うかどうかが重要である。ケイ酸カルシウムに基づく典型的な鋳造スラグは、主に非晶質凝固を有し、または迅速に冷却される場合に非晶質および結晶性構成要素を形成する。鋳造スラグの非晶質フラクションは、潤滑特性に有利であり、より大きな熱移動を確実にする。
【0055】
包晶凝固を示す鋼の鋳造において、より低い熱移動は、縦方向クラックを防止するために所望される。この低い熱移動は、非晶質/結晶性比および鋳造スラグの関連熱伝導率が鋼の等級に適合される場合に、相対的に高い結晶性フラクションを有する鋳造スラグの使用を含む方法によって達成できる。したがって適合は、フラックス(NaO、LiO、F)の量を通して可能になる。フラックスの高いフラクションは、同時に鋳造スラグにおいてより高い非晶質フラクションを導く。
【0056】
6.5重量%以下のSiOの添加により、鋳造スラグにおいて過剰な非晶質フラクションを防止する。
【0057】
したがって本発明の好ましい実施形態において、上記で同定される組成において、SiO構成成分の量は、≦6重量%、好ましくは≦5.5重量%、より好ましくは≦5重量%である。
【0058】
相対的に低いTiO含有量を供給することによりさらに、上記で同定される鋳造粉末組成のSiO含有量を低減できる。同様にTiOは、鋳造スラグの非晶質フラクションの形成の利益をもたらし、さらに鋼に存在するAlとの反応に関してSiOよりも熱力学的により安定である。鋳造スラグの粘度は、SiOの低減および同時にTiOの添加時に変化しないままである(図3)。
【0059】
したがってさらなる態様において、本発明は、以下の構成成分を有する鋳造スラグ組成に関する:
30〜50重量%のCaO;
20〜45重量%のAl
8〜15重量%のF(フッ素イオン);
3〜5重量%のSiO
5〜15重量%のNaO;
2〜5重量%のLiO;
1.5〜5重量%のTiO
≦5重量%のMgO;
≦3重量%のMnO;
≦2重量%のFeO。
【0060】
関連する鋳造粉末は、揮発性成分を含まずに計算されて、以下の構成成分を含む組成を有する:
40〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
10〜30重量%のフッ化物含有構成成分、好ましくはCaFの形態;
3〜5重量%のSiO
5〜15重量%のNaO;
2〜5重量%のLiO;
≦10重量%のAl
≦15重量%の炭素;
1.5〜5重量%のTiO
≦5重量%のMgO;
≦3重量%のMnO;
≦1重量%のFe
≦1重量%のFeO。
【0061】
1つの好ましい実施形態において、本発明の鋳造スラグ組成は、以下の構成成分を含む:
33〜48重量%のCaO;
23〜43重量%のAl
8〜13重量%のF(フッ素イオン);
3〜4重量%のSiO
8〜13重量%のNaO;
3〜5重量%のLiO;
1.5〜3重量%のTiO
≦1.5重量%のMgO;
≦1重量%のMnO;
≦1重量%のFeO。
【0062】
関連する好ましい鋳造粉末は、揮発性成分を含まずに計算されて、以下の構成成分を含む組成を有する:
50〜60重量%の予備融解カルシウムアルミネート;
15〜25重量%フッ化物含有構成成分、好ましくはCaFの形態;
3〜4重量%のSiO
8〜13重量%のNaO;
3〜5重量%のLiO;
≦10重量%のAl
≦15重量%の炭素;
1.5〜3重量%のTiO
≦1.5重量%のMgO;
≦1.0重量%のMnO;
≦1重量%のFe
≦1重量%のFeO。
【0063】
本発明の鋳造スラグの際立った特徴は、それらが鋼中のアルミニウムフラクションに対して反応性を有していないまたは非常にわずかにのみ反応性を有し、それによって鋳造可能な鋼等級の範囲を拡張し、高いフラクションのアルミニウムまたは高いフラクションのアルミニウムおよびマンガンを有する鋼であっても信頼性の高い製造を可能にすることである。これはまた、最終的に、これらの鋳造粉末を用いて得られる鋼の製品の品質における改善をもたらす。
【0064】
本発明のさらなる態様は、上記で記載されるような鋳造粉末を用いた鋼の鋳造方法に関する。
【0065】
本発明の鋳造粉末と関連して上記で記載された好ましい実施形態はすべて同様に、鋼の鋳造のための本発明の方法に準じて有効であり、したがってこの点において繰り返さない。
【0066】
鋼の鋳造方法は、好ましくは連続操作によって、より詳細には連続鋳造方法にしたがって行われる。
【0067】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、≧1重量%、好ましくは≧1.5重量%、より好ましくは≧3.0重量%、非常に好ましくは≧5.0重量%のアルミニウム含有量を有する鋼の鋳造のための本発明の方法に関する。
【0068】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、≧15重量%、好ましくは≧17.5重量%、より好ましくは≧20重量%のマンガン含有量を有する鋼の鋳造のための本発明の方法に関する。
【0069】
別の好ましい実施形態において、本発明は、≧0.2重量%、好ましくは≧0.5重量%のチタン含有量を有する鋼の鋳造のための本発明の方法に関する。
【0070】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、≧1重量%、好ましくは≧1.5重量%、より好ましくは≧3.0重量%、非常に好ましくは≧5.0重量%のアルミニウム含有量を有し、≧15重量%、好ましくは≧17.5重量%、より好ましくは≧20重量%のマンガン含有量を有していてもよく、および≧0.2重量%、好ましくは≧0.5重量%のチタン含有量を有していてもよい鋼の鋳造のための本発明の方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】構成成分CaO、Al、およびCaFの有利な組成を示す。
図2】Bahrからの高温回転粘度計を用いて測定された、異なるフラックス含有量に関する温度の関数としての多くの鋳造スラグの粘度を示す。
図3】SiOフラクションの低減およびTiOフラクションの増大における多数の鋳造スラグの測定粘度を示す(約5重量%のSiOを有するPr.9およびPr.25;約4重量%のSiOおよび約2重量%のTiOを有するPr.42およびPr.44)。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明は、実施例により以下で説明される。説明は単に例であり、本発明の一般概念を制限しない。
【0073】
[実施例]
表1に示される組成を有する種々の鋳造粉末を調査した。C含有サンプルPr.5、19、32、40、および44は、600℃で8時間プレ焼成され、アルゴン雰囲気下で1500℃にて溶融させた。Cを含まないサンプルはプレ焼成されず、代わりにアルゴン雰囲気下で1500℃にて直接溶融された。溶融された後、サンプルはそれぞれ1500℃で15分間維持され、続いて鋼基材上に鋳造され、これを冷却のために空気中で室温に置いた。冷却されたサンプルは、15mmまでの厚さを有し、これはサンプル表面にわたって変動した。後続の調査のために、位置は、凝固したスラグ層が5〜7mm厚さである位置を選択した。これらの位置において、サンプル断面の非晶質および/または結晶性凝固を伴うフラクションは、光学顕微鏡により決定した。
【0074】
表2は、得られたスラグの化学組成およびさらに非晶質フラクションを示す。鋳造粉末および鋳造スラグの化学組成は、X線蛍光方法によっていずれの場合もサンプル上で3回決定した。フッ素イオンの含有量は、DIN51723およびDIN51727に従う水素化熱分解と、後続のDIN EN ISO10304に従うイオンクロマトグラフィによって決定した。NaO濃度は、DIN EN ISO11885に従うICPOS測定による適切なサンプル調製後に決定した。
【0075】
さらに、サンプル31、40および48の組成を有する鋳造粉末サンプルは選択された溶融物と接触させ、1450℃〜1550℃にて15分間アルゴン雰囲気下で保持した(表3参照)。スラグおよび溶融物を次いで別個に鋳造し、それぞれ分析した。関連した液相線温度は、示差熱分析(DTA)によって決定した。生じた鋳造スラグ組成および非晶質鋳造スラグのフラクションは、表2においてサンプル31、40、および48についての結果と同一である。したがって、先に分析された鋳造スラグシステムはまた、鋼溶融物と接触した状態も表すことを示した。
【0076】
したがって、表1に示されるような本発明の鋳造粉末組成は、所望の鋳造スラグの製造に顕著に好適である。
【表1】
【表2】
【0077】
スラグサンプル26は、関連する鋳造粉末サンプルに対して能動的に添加された二酸化ケイ素はないにもかかわらず、0.7重量%の二酸化ケイ素を含有する。この理由は、少量の二酸化ケイ素が溶融炉およびるつぼに使用された耐火性材料中にあり、実験の間に溶融鋳造スラグ中に拡散し得たためである。
【表3】
図1
図2
図3