(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記容器本体は、前記ポートの位置と反対側の前記容器本体の底部の位置に非貫通ボスを有し、前記非貫通ボスは、前記容器本体の内側と外側との間の空気の流れを遮断する機能を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の継目無容器の製造方法。
前記非貫通ボスは、前記容器本体の前記底部から外部に突出するように設けられた円筒部分と、前記円筒部分の内部表面に形成された雌ねじと、前記雌ねじに螺着されたプラグと、を有する請求項12に記載の継目無容器の製造方法。
【背景技術】
【0002】
現在、宇宙空間に打ち上げられる宇宙用ロケット推進系システムには、燃料となる液体水素を充填した液体水素容器及び酸化剤である液体酸素を充填した液体酸素容器が搭載されている。この液体水素容器には、ロケット推進の制御やロケットの姿勢制御に用いられるヘリウム(He)ガスを充填した気蓄器が複数個、例えば3個取り付けられている。
このような気蓄器には、金属製容器や、複合(コンポジット)容器等の高圧ガス用圧力容器が用いられており、その形状的には、円筒容器や、球形容器等が用いられている。
【0003】
現在、このような複合(コンポジット)圧力容器としては、円筒形、又は球形の樹脂ライナーをブロー成形などで一体に作製し、その外面を、炭素繊維等の補強材料を用いて被覆した継目無し構造の圧力容器が作製されている。
しかしながら、このような複合容器は金属製容器に比べて高価になる。
なお、複合圧力容器としては、円筒形、又は球形の金属製容器をライナーとして作製して、その外面を、炭素繊維等の補強材料を用いて被覆した構造の圧力容器も作製されている。
【0004】
また、現在、金属製円筒形圧力容器としては、円筒形胴部の両側が球形である、又は両側端部(底部)が湾曲している円筒容器、例えば円筒形胴部の両側にそれぞれ半球鏡板を溶接で接合したものや、深絞り加工、又はスピニング加工によって円筒形胴部の一方の側の球形部、又は湾曲部を形成した後に、他方の側に半球鏡板や皿形鏡板を溶接で接合したものや、一方の側の球形部や湾曲底部を形成した有底の円筒体(U字状カップ)の他方の側をネッキング加工によって球形化又は湾曲底部化した継目無円筒容器等が用いられている。
例えば、
図14に示すように、高圧ガス用金属製円筒形継目無容器80は、金属板から深絞り加工を行って一方の側の湾曲底部82aを形成した有底の円筒体(U字状カップ)82の円筒形胴部82bをスピニングマシン84を用いて、即ちスピニングマシン本体46の本体チャック44によってチャックし、円筒形胴部82bの他方の側の円筒状開口部82cを、加熱用バーナ54で加熱しながらローラ56で押圧しながら、少しずつ湾曲させて湾曲部82dを形成し、端部を閉塞してバルブ取り付け用のボス86を成型する(ネッキングともいう)ことが一般的である。
【0005】
ところで、航空宇宙などで用いられる、例えばロケットに搭載する金属製圧力容器は、重力に抗して宇宙に運ばれるために軽量であることが要求される。
しかしながら、圧力容器の形状は、球形が最も省スペースであり、軽量となることから、円筒形圧力容器は、球形圧力容器に比べて、肉厚になり、容器重量も重くなるという問題がある。
このように、航空宇宙などで軽量且つ省スペースが要求される圧力容器の場合、最適形状としては球状が要求されるので、胴部平行部、例えば円筒形胴部を有しない球形容器などが多く用いられている。
しかしながら、金属製球形容器の場合は、円筒形胴部平行部が無く、スピニングマシンでチャッキングすることが出来ないので、半球状の鏡板をプレス成形、又はへら絞りで成型したものを2個合わせて中央部で直接溶接接合して製作された溶接容器が用いられている。
【0006】
溶接容器の場合、溶接欠陥は、低圧で容器を破壊し、また、ガスが漏れるなどの致命欠陥となるために、その施工には、製品設計、使用材料、溶接作業者、溶接施工方法などがJIS規格で詳細に決められている。代表的なJIS規格を抜粋すると、以下のようなものがある。
(1)JIS Z 3801 手溶接技術検定における試験方法及び判定基準
(2)JIS Z 3841 半自動溶接技術検定における試験方法及び判定基準
(3)JIS B 8285 圧力容器の溶接施工方法の確認試験
(4)JIS B 8265 圧力容器の構造− 一般構造
(5)JIS Z 3410 溶接管理− 任務及び責任
その他、溶接部に漏れがないかどうかを全数調べるためにヘリウムガスを用いて使用圧力まで加圧してヘリウムディテクタなど高精度の検査器具を用いて気密検査を行う必要がある。
そのため、溶接容器は、継目無容器に比べて品質の信頼性が低く、また、多くの費用もかかる等の問題がある。
このように、金属製球形圧力容器でも、金属製円筒形圧力容器でも、半球鏡板を溶接で接合した圧力容器では、溶接品質を保つために溶接方法、溶接作業者、溶接条件、溶接環境、品質管理等に大きな負担を強いられるという問題がある。
また、圧力容器を溶接で作ると、溶接効率を考慮しなければならず、継目のない構造よりも余分な肉厚が必要となるし、上述したように、肉厚が厚くなると容器重量も重くなるという問題がある。
【0007】
このため、特許文献1及び非特許文献1に、円筒形、又は球形の継目のない構造の金属製圧力容器、及びその製造方法が提案されている。
特許文献1及び非特許文献1に開示された金属製の球形継目無圧力容器は、管状の金属製半製品(以下、単に管状半製品ともいう)の両方の開放端を共にドーム状に成形して球形のシェル構造にしたものである。
この金属製の球形継目無圧力容器の製作は、以下のように行われている。
先ず、第1の製作方法では、先端にドーム状(半球形状)の凹部を持つ1つの固定モールドと、先端にドーム状(半球形状)の凹部を持つ1つの可動モールドとを、管状半製品が内側に嵌り合う円筒状のガイドスリーブに沿って対向して配置し、固定モールドと可動モールドとの間に管状半製品を取り付け、管状半製品の中心軸方向に円筒状のガイドスリーブに沿って可動モールドを固定モールドに向かって近接させるように1回ストロークさせることにより、管状半製品の両方の開放端を同時にドーム状に成形している。
この時、管状半製品の内側に、良好な成形性と管状半製品より低い強度とを持つフレキシブルマンドレルを取り付けておき、成形時に管状半製品を支持し、球形のシェル構造の厚みを制御し、球形のシェル構造の両極の開口のサイズを最小化し、しわ、不安定性、クラック、及び割れ(亀裂)等の成形上の問題を減らし又は取り除く手助けをし、より良い外表面性状を与える。
【0008】
次に、第2の製作方法では、一端にドーム状(半球形状)の凹部を持ち、管状半製品が内側に嵌り合う円筒状の1つの固定モールドと、管状半製品の中心軸方向に固定モールドの円筒状の部分に沿って固定モールドの凹部に向かって移動する第1押圧部材と、の間に固定モールドの円筒状の部分の内側に嵌り合うように取り付けられた管状半製品の内側を支持した状態で、第1押圧部材を固定モールドの凹部に向かって1回目のストロークをさせることにより、管状半製品の一方の開放端をドーム状に成形し、次に、第1押圧部材、及び成形した管状半製品を固定モールドから取り外し、管状半製品の向きを反転して他方の開放端がドーム状の凹部側になるように管状半製品を固定モールドに取り付け、先端にドーム状(半球形状)の凹部を持つ第2押圧部材を管状半製品のドーム状部分に当接させるように取り付けて、第2押圧部材を固定モールドの凹部に向かって2回目のストロークをさせることにより、管状半製品の他方の開放端をドーム状に成形している。
この場合も、成形時の不要な変形や成形上の問題を防止し、より良好な厚みや形状や、外表面性状を得るためには、管状半製品の内面にフレキシブルマンドレルを取り付けておく必要があるのは勿論である。
なお、金属製の円筒形圧力容器も、管状半製品の円筒部分を残し、同様に、第1又は第2の作成方法によって、管状の金属製半製品の両方の開放端をドーム状に成形して、両側のドーム状(半球形状)のシェル構造に成形している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る継目無容器、継目無容器の製造方法、複合容器、及び複合容器の製造方法を添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、以下に詳細に説明する。
本発明の第1の実施形態の金属製継目無容器は、円筒形状の胴部を有していない、又は胴部の長さが胴部直径の1/2以下であり、継ぎ目が無く、凸曲面体の形状を有し、ガスが充填される金属材料製の容器本体と、容器本体に付属し、ガスを出し入れする円筒形の金属材料製のポートと、を有するものである。
【0022】
ここで、容器本体の形状としては、凸曲面体の形状であって、円筒形状の胴部を全く有していない形状、又は、長さが胴部直径の1/2以下である円筒形状の胴部を有する形状であれば、いかなる形状であっても良い。例えば、円筒形状の胴部を全く有していない形状としては、球形(後述する
図1及び
図5参照)、又は楕円体形状(後述する
図7参照)等を挙げることができ、円筒形状の胴部を有する形状としては、皿形鏡板の形状(後述する
図8参照:皿形鏡板を合わせた形状)等を挙げることができる。
本発明の凸曲面体の形状の容器本体は、スピニングマシンのチャックを用いてチャックできないような短い円筒形状の胴部を有していても良く、胴部の長さが胴部長さの1/2以下であれば良いが、円筒形状の胴部を有していない形状であることが好ましい。
なお、胴部の長さを胴部長さの1/2以下に限定する理由は、胴部の長さが、胴部長さの1/2超では、従来型のスピニングマシンのチャックを用いて胴部をチャックして加工できるからである。
【0023】
以下では、始めに、容器本体の形状として、球形容器を代表例として説明するが、本発明は、これに限定されないのは勿論である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る金属製球形継目無容器の断面図である。
図1に示すように、本発明の金属製球形継目無容器10は、円筒形状の胴部を有しておらず、継ぎ目がなく、凸曲面体の形状を有する金属材料製の容器本体12と、この容器本体12に付属する円筒形の金属材料製のポート14と、を有する。
【0024】
なお、球形継目無容器10の球形容器本体12には、ポート14の位置と反対側の容器本体12の底部16の位置に、
図1には示されていないが、
図2、又は
図3(A)及び(B)に示す底部ボス18、又は20を有していることが好ましい。
図2に示す底部ボス18は、球形容器本体12の底部16の位置において球形容器本体12のシェルを外側に向かって突出するように変形させたものである。底部ボス18の平面形状は、特に制限的ではないが、円形、又は正方形等の四角形であることが好ましい。
また、
図3(A)及び(B)に示す底部ボス20は、正四角柱部分20aとその基部となる円柱部分20bからなるもので、円柱部分20bが溶接によって容器本体12に取り付けられているものである。
【0025】
また、球形継目無容器10の球形容器本体12には、ポート14の位置と反対側の容器本体12の底部16の位置に、
図2、又は
図3(A)及び(B)に示す底部ボス18、又は20の代わりに、ポート14と同様の形状を有する円筒部分21aを備えている場合には、
図3(C)及び(D)に示すボス21を有していることが好ましい。
ボス21は、金属材料製の容器本体12の底部16から外部に突出するように設けられる円筒部分21aと、円筒部分21aの内部表面に形成された雌ねじ21bと、雌ねじ21bに螺着されたプラグ21cと、を有する。また、プラグ21cは、雌ねじ21bに螺合する雄ねじ21dと、ねじ軸と平行な2つの平面21eを持つ頭部21fと、を有する。底部ボス18及び20には貫通孔がないので、底部ボス18及び20は、容器本体12の内側を大気圧として外側を真空吸引した場合に、容器本体12の内側と外側との間の空気の流れを遮断する機能を有する。プラグ21cは、円筒部分21aの先端を密閉するためのものであり、ボス21を有する容器本体12は、底部ボス18及び20を有する容器本体12と同様に、容器本体12の内側と外側との間の空気の流れが遮断されるので、真空吸引による製造装置へのセットが可能になる。
【0026】
容器本体12は、充填された所定量の高圧ガスを貯留しておくためのもので、その外径が、50mm〜1000mmである必要がある。外径の数値限定の理由は、外径が50mm未満では、内部の容量が小さ過ぎて、高圧ガス容器としての用途に、特に宇宙航空用途には向かないからであり、外径が1000mm超では、内部の容量が大き過ぎて、高圧ガス容器として用途に、特に宇宙航空用途には向かないからである。
なお、容器本体12の外径は、200mm〜800mmであることが好ましく、300mm〜600mmであることがより好ましい。
容器本体12が球形である場合においては、ポート14(及びその接続部14a)、並びに
図2及び3図に示すように底部ボス18及び20並びにボス21がある場合には底部ボス18又は20並びにボス21を除く、球形容器本体12の全球面の外径と、全球面の外径の平均値の差が平均値に対して±2%の範囲にあることが好ましく、±1%の範囲にあることがより好ましい。上記差を好ましい±2%の範囲に数値限定する理由は、容器本体12の外径とその平均値との差が、平均値に対して±2%の範囲を超える場合には、球形胴の一部に円筒胴を含む恐れがあり、また、部分的に球形胴を構成する曲率から外れる恐れがあるからである。
【0027】
また、球形継目無容器10の耐圧、即ち、球形容器本体12の耐圧は、1MPa〜100MPaであることが好ましく、5MPa〜30MPaであることがより好ましい。球形容器本体12の耐圧を好ましい1MPa〜100MPaの範囲に限定する理由は、容器本体12の耐圧が、1MPa未満では、圧力容器として必要性が少ないからであり、100MPa超では、圧力容器の肉厚が厚くなり、後述する本発明の継目無容器の製造方法を用いて加工することが難しくなるからである。
また、容器本体12の外径をDmmとし、容器本体12の肉厚をt1mmとする時、外径Dと肉厚t1との比D/t1が、10〜500であることが好ましい。比D/t1を好ましい10〜500の範囲に限定する理由は、比D/t1が、10未満では、低い強度の材料を使うことになるからであり、500超では、金属材料の靱性と強度を考慮したときに上限の強度が限定されるからである。
ここで、球形継目無容器10の球形容器本体12の肉厚t1は、ポート14の位置と反対側の容器本体12の底部16の位置(
図2及び
図3の底部ボス18、20並びにボス21の位置)からポート14に向かって漸増するものであることが好ましい。
【0028】
なお、球形以外の容器本体の場合(後述する
図7及び
図8参照)には、容器本体12の外径Dの代わりに、容器本体の凸曲面体の上の各点における凸曲面の曲率半径r(球形の場合には=D/2)を用いればよく、容器本体12の外径Dと肉厚t1との比D/t1の代わりに、容器本体の凸曲面体の上の各点の曲率半径rと容器本体の肉厚t1との比r/t1を用いればよく、比r/t1は、比D/t1の半分、即ち5〜250であることが好ましい。比r/t1を好ましい5〜250の範囲に限定する理由は、比r/t1が、5未満では、低い強度の材料を使うことになるからであり、250超では、金属材料の靱性と強度を考慮したときに上限の強度が限定されるからである。
【0029】
また、本発明の第1の実施形態の球形継目無容器10の球形容器本体12の肉厚をt1mm、容器本体12の外径をDmm、容器本体12の耐圧をPMPa、金属材料の強度をσMPa、とする時、肉厚t1は、薄肉計算式で計算すると、下記式1で表される。
t1=PD/(4σ) …(1)
一方、
図14に示すような従来の円筒形継目無容器80の円筒形容器本体88の胴部82bの肉厚をt0mm、容器本体88の胴部82bの外径、耐圧、及び金属材料の強度を、それぞれ同様に、Dmm、PMPa、及びσMPa、とする時、肉厚t0は、薄肉計算式で計算すると、下記式2で表される。
t0=PD/(2σ) …(2)
したがって、t1=PD/(4σ)=t0/2となり、本実施形態の球形継目無容器10の球形容器本体12の肉厚t1は、従来の円筒形継目無容器80の円筒形容器本体88の胴部82bの肉厚t0の半分となる。したがって、本実施形態の球形継目無容器10の容器重量は、従来の円筒形継目無容器80の容器重量の大凡半分となり、軽量であることが分かる。
【0030】
ポート14は、容器本体12にガスを充填するためにガスを導入し、容器本体12に充填されているガスを外部に放出するためにガスを通過させるためのものであり、ガスを出し入れする円形の貫通孔を有し、容器本体12に付属する円筒形の金属材料製の部材であって、容器本体12と継目が無く一体であり、容器本体12から外部に突出している。
ポート14は、その外径が、5mm〜200mmである必要がある。ポート14の外径の数値限定の理由は、外径が5mm未満では、内部のガスの通路となる貫通孔の径が小さくなり過ぎて、所定量のガスを出し入れするのが難しくなるからであり、外径が200mm超では、バルブ、又は配管との接合時に相手部品の大きさが大きくなりすぎるからである。
なお、ポート14の外径は、20mm〜100mmであることが好ましく、30mm〜50mmであることがより好ましい。
【0031】
なお、ポート14には、バルブ、又は配管が、ねじ込み、溶接、もしくは機械的係合によって取り付けられることが好ましい。
また、ポート14の肉厚は、容器本体12の肉厚以上である必要がある。その理由は、ポート14の肉厚が、容器本体12の肉厚未満であると、バルブ、又は配管等を取り付けるのが難しくなり、取り付けられたバルブ、又は配管等を支持することが困難となるし、また、ポート部に相手部品とシールをするOリング溝を設置する事が難しくなるからである。
【0032】
容器本体12とポート14とを継目無く一体的に形成する金属材料は、比強度が、100kN・m/kg以上の金属材料であることが好ましい。その理由は、宇宙航空用途においては、軽量でありながら高圧ガスを充填する必要があり、十分な強度が必要であるからである。比強度が、100kN・m/kg未満の金属材料では、充填できるガス量に比して重量が重くなるからである。
このような金属材料としては、比強度が、100kN・m/kg以上の金属材料であればどのような金属材料であっても良いが、例えばアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、高張力綱等の金属材料を挙げることができる。
【0033】
また、本発明の球形継目無容器10の球形容器本体12内に充填するガスは、特に制限的ではなく、いかなるガスであっても良いが、宇宙航空用途に用いられるガスであることが好ましく、例えばヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、酸素(O
2)、水素(H
2)、窒素(N
2)、キセノン(Xe)、二酸化炭素(CO
2)等のガスを挙げることができる。
本発明の金属製球形継目無容器10の他、従来の円筒形継目無容器80より、省スペースであり、軽量となる継目無容器としては、後述する楕円体形状(楕円体鏡板形状)の継目無容器64(
図7参照)や皿形鏡板形状の継目無容器74(
図8参照)なども挙げられるが、それらについては本発明の第2の実施形態の継目無容器の製造方法の説明と共に後述する。
本発明の第1の実施形態の金属製継目無容器は、基本的に以上のように構成される。
【0034】
次に、本発明の第3の実施形態に係る複合容器、及び本発明の第4の実施形態の複合容器の製造方法について説明する。
本実施形態の複合容器は、本発明の第1の実施形態の金属製継目無容器と、この金属製継目無容器の容器本体の凸曲面体の外表面全体を被覆する補強材料と、を有するものであり、金属製継目無容器の容器本体の凸曲面体の外表面全体は、補強材料を用いてフィラメントワインディング法で被覆されたものである。
即ち、本実施形態の複合容器は、予め製造された本発明の第1の実施形態の金属製継目無容器を、本発明の第4の実施形態の複合容器の製造方法に従って、補強材料を用いてフィラメントワインディング法で被覆することにより製造することができる。
本発明の複合容器は、宇宙用ロケットに搭載されることが好ましく、宇宙航空用途であることが好ましい。
【0035】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る球形複合容器の一例の断面図である。
図4に示すように、本実施形態の球形複合容器30は、金属材料製の容器本体12、及びこの容器本体12に継ぎ目なく一体化された円筒形の金属材料製のポート14を有する本発明の第1の実施形態の金属製球形継目無容器10と、金属製球形継目無容器10の容器本体12の外表面全体を被覆する補強材料の被覆層32と、を有する。
なお、容器本体12は、底部16に
図3(A)、(B)に示すような底部ボス20が取り付けられている。なお、容器本体12の底部16に取り付けられる底部ボスは、
図3に示すような底部ボス20に限定されず、
図2に示すような底部ボス18又は
図3(C)、(D)に示すようなボス21であっても良いのは勿論である。
【0036】
ここで、被覆層32は、金属製球形継目無容器10のポート14及び底部ボス20を除く、容器本体12の外表面全体に隙間なく設けられている補強材料の層である。
被覆層32を構成する補強材料としては、金属製球形継目無容器10の容器本体12の外表面全体を被覆することにより保養できる材料であれば、特に制限的ではなく、例えば炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの繊維であることが好ましい。なお、有機繊維としては、ケブラー、及びザイロンの少なくとも1つが好ましい。
被覆層32は、球形継目無容器10のポート14及び底部ボス20を除く、容器本体12の外表面全体に、フィラメントワインディング法を用いて、補強材料である上記繊維を被覆して得られたものである。
即ち、本実施形態に係る球形複合容器30は、予め製造された金属製球形継目無容器10のポート14及び底部ボス20を除く、容器本体12の外表面全体を、補強材料となる上記繊維を用いてフィラメントワインディング法で被覆して被覆層32を形成することにより製造することができる。
【0037】
なお、フィラメントワインディング法(Filament Winding)では、金型(マンドレル)の代わりに、ポート14、及び底部ボス20を中心軸として金属製球形継目無容器10を回転させ、上記繊維の粗紡糸(ロービング)を1〜数十本引き揃え、樹脂含浸槽を通して樹脂(マトリックス)を含浸させながら、回転する球形継目無容器10に所定の厚さまで、張力(テンション)を掛けて球面に合わせて角度を調整しながら連続的に巻き付けて硬化させて被覆層32を成形する。
こうして、球形継目無容器10のポート14、及び底部ボス20を除く、容器本体12の外表面全体に、軽量かつ、機械的強度、電気絶縁性、耐薬品性、寸法安定性に優れた被覆層32を形成することができる。
本発明の第3の実施形態の複合容器、及び本発明の第4の実施形態の複合容器の製造方法は、基本的に以上のように構成される。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態の金属製継目無容器の製造方法について説明する。
本実施形態の継目無容器の製造方法は、第1の実施形態の凸曲面体形状の継目無容器を製造する製造方法である。
本実施形態の継目無容器の製造方法は、金属材料製板材、又はパイプ材等から、鍛造加工、プレス加工、スピニング加工、又は深絞り加工等の公知の塑性加工を行って継目無容器の容器本体の凸曲面体の半分の半凸曲面体部分と円筒部分を持つU字状カップを作製する塑性加工工程と、
U字状カップの半凸曲面体部分と嵌合する凹み部(半球状凹部)を持つ雌型チャックをスピニングマシンに取り付けてチャックするとともに、半凸曲面体部分を雌型チャックの凹み部に取り付けて凹み部を真空吸引することにより、半凸曲面体部分を雌型チャックにチャックするチャッキング工程と、
スピニングマシンに雌型チャックを介して半凸曲面体部分がチャックされたU字状カップの円筒部分のネッキング加工を行って容器本体の凸曲面体の残りの半分の半凸曲面体部分とその中心にポートとなるネックを成形する成形工程と、を有するものである。
【0039】
図5は、
図1に示す本発明の第1の実施形態の金属製球形継目無容器を製造する本発明の第2の実施形態に係る金属製球形継目無容器の製造方法を実施する継目無容器の製造装置の一実施例の断面模式図である。
図6は、
図5に示す金属製球形継目無容器の製造方法を実施している時にワークに発生する力を説明する説明図である。
図5に示す金属製球形継目無容器の製造装置40は、予め、金属材料製板材から深絞り加工等の公知の塑性加工を行って作製され、球形継目無容器10の容器本体12の球体の半分の半球体部分22aと円筒部分22bを持つU字状カップ22の底部の半球体部分22aを真空で吸引して雌型チャック42で把持しながら円筒部分22bにネッキング加工を行って、容器本体12の球体の残りの半分の半球体部分22cと、ポート14となるネックを成形して、半球体部分22aと半球体部分22cとからなる球形の容器本体12とポート14とからなる球形継目無容器10を製造するためのスピニングマシンである。
【0040】
図5に示す製造装置(スピニングマシン)40は、U字状カップ22の半球体部分22aを一端側の把持部42aで把持(チャック)する雌型チャック42と、雌型チャック42の他端側の円筒状のボス42bを把持(チャック)する本体(スピニング)チャック44と、雌型チャック42を把持(チャック)した本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、雌型チャック42の他端側の取り付けられるロータリージョイント48と、真空ポンプ50と、真空ポンプ50とロータリージョイント48とを接続する配管52と、ネッキング加工時にU字状カップ22の円筒部分22bを所定温度に加熱するバーナ54と、U字状カップ22の円筒部分22bにネッキング加工を施すローラ56とを有する。
【0041】
雌型チャック42は、一端側には、U字状カップ22の半球体部分22aとぴったり(中心部を除き略隙間なく)一致する、即ち嵌合する半球状の凹み部(半球状凹部)43を有する把持部42aを備え、他端側には、本体チャック44にチャックされる円筒状ボス42bを備える。把持部42aの先端側の内面には、環状のOリング溝が設けられ、Oリング58が取り付けられており、U字状カップ22の半球体部分22aの外表面の凸状球面と把持部42aの内面の凹状球面との間の気密を保っている。また、円筒状ボス42bの中心には、一端側の把持部42a内面側からロータリージョイント48が取り付けられる円筒状ボス42bの他端まで貫通する貫通孔42cを備えている。
【0042】
即ち、雌型チャック42の特徴は、第1に、一端側の把持部42aにはU字状カップ22をセットする半球状凹部と、中央には真空引きを行う貫通孔42cとを設け、反対側(他端側)には本体(スピニング)チャック44に取りけるための円筒状ボス42bを付けることである。
また、第2に、真空引きを行う貫通孔42cには、ロータリージョイント48を取り付けて、パイプなどの配管52を通じて真空ポンプ50につなぐことである。
また、第3に、把持部42aの半球状凹部43の端部にはOリング溝を設けてOリング58を配置することである。
【0043】
スピニングマシン本体46は、U字状カップ22をその半球体部分22aでチャックした雌型チャック42をその円筒状ボス42bで本体チャック44にチャックさせるとともに、本体チャック44がU字状カップ22をチャックした雌型チャック42をチャックして支持している状態で、本体チャック44を回転させることにより、U字状カップ22及び雌型チャック42を同時に回転させる。こうして、U字状カップ22の円筒部分22bは、その中心を回転中心軸として回転する。
【0044】
雌型チャック42の円筒状ボス42bの他端には、ロータリージョイント48が取り付けられ、ロータリージョイント48の他端に配管52を介して取り付けられた真空ポンプ50によって、回転している雌型チャック42の円筒状ボス42bの貫通孔42cと、Oリング58によって外部と気密に遮断されたU字状カップ22の半球体部分22aの凸状球面と把持部42aの凹状球面との間とを真空吸引することができるようになっている。
こうして、U字状カップ22は、その半球体部分22aによって回転している雌型チャック42に堅固に把持され、回転しているU字状カップ22の円筒部分22bをバーナ54によって加熱しながら回転するローラ56を押し付けて押圧することによって少しずつ湾曲させ、球形にしつつネックを成形するネッキング加工を行うことができる。
【0045】
本発明の第2の実施形態の金属製継目無容器の製造方法は、以下のように実施される。
まず、予め、鍛造加工、プレス加工、スピニング加工、又は深絞り加工などの公知の塑性加工方法を用いて、金属材料製板材、又はパイプ材から
図5に示すような半球体部分22aを持つU字状カップ22を作る。
次に、
図5に示すスピニングマシン40に雌型チャック42を取り付けて、U字状カップ22を真空で吸引してチャックし、ネッキング加工でネックを成形する。
具体的な加工工程を下記に示す。
(1)まず、第1ステップでは、U字状カップ22を雌型チャック42の把持部42aの半球状凹部43にセットして真空ポンプ50を稼働する。
(2)次に、第2ステップでは、スピニングマシン40を稼働させて加工部となる円筒部分22bを加熱用バーナ54で加熱する。
(3)次に、第3ステップでは、U字状カップ22の円筒部分22bの加工部の温度が約400℃前後になった時にスピニングマシン40のローラ56を動かして円筒部分22bを湾曲させて球形化すると共にポート14となるネックを成形するネッキング加工(ボス部の成形加工)を行う。
【0046】
ここで、ネッキング加工中にU字状カップ22の円筒部分22bの加工部(ワーク)に発生する力は、
図6に示すように、軸方向の圧縮力、引張力、半径方向の力、及びワークを回転する回転力の4種類となる。
1.まず、ワークの軸方向にかかる圧縮荷重は雌型チャック42、具体的にはその把持部42aで受ける。
2.次に、ワークの軸方向にかかる引張荷重は、雌型チャック42、具体的にはその把持部42aのOリング58内にかかる真空圧力によりワークを引っ張る力で受け持つ。
3.また、ワークにかかる半径方向の力は、チャック把握力(雌型チャック42によりワークを真空ポンプ50による真空で吸引する力−ワーク軸方向にかかる引張荷重)による雌型チャック42、具体的にはその把持部42aの半球状凹部とワークとの摩擦抵抗が受け持つ。
ワークの外径が小さい場合は、チャック把握力よりも半径方向の力が大きくなり、ワークが雌型チャック42、具体的にはその把持部42aの半球状凹部の中で滑ることが発生する。
その場合は、ローラ56の送りを、後送りを主として前送りをしないでワークにかかる引張荷重が発生しないようにすれば良い。
又は、ローラ56をワーク軸に180度対向した位置に2個設けることによりワークに生ずる半径方向の荷重を相殺してゼロにする等の対策方法も考えられる。
又は、容器本体12の底部16に
図2及び
図3の底部ボス18、20並びにボス21を有することにより、U字状カップ22を、その軸端部分の底部ボス18、20並びにボス21によって支持することができる。即ち、ネッキング加工時に、回転するU字状カップ22を、一方の軸端部分となる底部ボス18、20並びにボス21によって円筒部分22bに半径方向に加わる力に対してU字状カップ22を支持することができる。
【0047】
4.ワークにかかる回転力は、ローラ56がワークを半径方向に局部的に押しつぶす時にワークの変形抵抗により生じる力と、ワークに接するローラ56の軸のベアリングの摩擦係数による力により発生する。
一方、ワークは、雌型チャック42(把持部42aの半球状凹部)に、真空による吸引力で固定されているので、ワークと雌型チャック42の静止摩擦が回転力に勝れば、ワークが雌型チャック42内で滑ることはない。
なお、回転力によりワークが雌型チャック42内で滑る場合は、雌型チャック42のチャック内表面をアルミナ等によるショットブラストを施工して表面を粗くするか、もしくは回転力が大きくなるワーク(U字状カップ22の円筒部分22b)の外周に近い部分の加工を行う場合はローラ56の加工度を下げるか、もしくはスピニングマシン40の芯押し台でワークを固定するか、あるいはワーク(U字状カップ22)の底部16の中央に角形の底部ボス20を溶接するか、もしくはワーク(U字状カップ22)の底部16の中央の円筒部分21aにプラグ21cを取り付ける(
図3参照)等、種々の対策が考えられる。
以上のようにして、ワークの半球体部分22aの底部16を真空で引いて半球体部分22aをチャックしながら、加工条件、例えばローラ56の送り速度等を適切に調整し、また、ワークの加工温度を適度に調節することによりネッキング加工が可能となる。
【0048】
本実施形態においては、
図5に示すように、スピニングマシン40を用いて球形継目無容器10を製造するものに限定されず、
図7及び
図8に示すように、スピニングマシン60、及び70を用いて、楕円体形状の継目無容器64、及びスピニングマシン40の本体チャック44でチャックできない長さの円筒状胴部76aを持つ凸曲面体形状の継目無容器74を製造しても良い。
即ち、本発明の凸曲面体形状の継目無容器は、円筒状胴部を全く持たない
図1及び
図5に示す球形継目無容器10や、
図7に示す楕円体形状の継目無容器64であっても良いし、
図8に示す、スピニングマシン40の本体チャック44でチャックできない長さの円筒状胴部76aを持つ凸曲面体形状の継目無容器74であっても良い。
なお、
図7及び
図8に示す楕円体形状の継目無容器64及び凸曲面体形状の継目無容器74は、
図1及び
図5に示す球形継目無容器10と、容器本体66及び76の形状が、容器本体12の形状と異なる以外は、同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は、省略する。
【0049】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る金属製楕円体形状継目無容器の他の一例、及び本発明の第2の実施形態に係る金属製楕円体形状継目無容器の製造方法を実施する継目無容器の製造装置(スピニングマシン)の一実施例の断面模式図である。
図7に示すスピニングマシン60は、予め、金属材料製板材等から深絞り加工等を行って作製され、楕円体形状継目無容器64の容器本体66の楕円体の半分の半楕円体部分68aと円筒部分68bを持つU字状カップ68の底部の半楕円体部分68aを真空で吸引して雌型チャック62で把持しながら円筒部分68bにネッキング加工を行って、容器本体66の楕円体の残りの半分の半楕円体部分68cと、ポート14となるネックを成形して、半楕円体部分68aと半楕円体部分68cとからなる楕円形の容器本体66とポート14とからなる楕円体形状継目無容器64を製造するためのスピニングマシンである。
【0050】
図7に示すスピニングマシン60は、U字状カップ68の半楕円体部分68aを一端側の把持部62aで把持(チャック)する雌型チャック62と、雌型チャック62の他端側の円筒状のボス62bを把持(チャック)する本体(スピニング)チャック44と、雌型チャック62を把持(チャック)した本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、雌型チャック62の他端側の取り付けられるロータリージョイント48と、真空ポンプ50と、真空ポンプ50とロータリージョイント48とを接続する配管52と、ネッキング加工時にU字状カップ68の円筒部分68bを所定温度に加熱するバーナ54と、U字状カップ68の円筒部分68bにネッキング加工を施すローラ56とを有する。
雌型チャック62の把持部62aは、U字状カップ68の半楕円体部分68aと嵌合する半楕円状の凹み部(半楕円状凹部)69を持ち、先端側の内面には、環状のOリング溝が設けられ、Oリング58が取り付けられており、雌型チャック62の円筒状ボス62bの中心には、把持部62a内面側から円筒状ボス62bの他端まで貫通する貫通孔62cが設けられている。この貫通孔62cの断面形状が、例えば多角形である場合には、U字状カップ68の半楕円体部分68aの中心に同じ多角形状の底部ボス18を設けておくことにより、底部ボス18をU字状カップ68の回り止めとして機能させることもできる。
【0051】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る金属製凸曲面体形状継目無容器の他の一例、及び本発明の第3の実施形態に係る金属製凸曲面体形状継目無容器の製造方法を実施する継目無容器の製造装置(スピニングマシン)の一実施例の断面模式図である。
図8に示すスピニングマシン70は、予め、金属材料製板材等から深絞り加工等を行って作製され、凸曲面体形状継目無容器74の容器本体76の凸曲面体の半分の半凸曲面体部分78aと円筒部分78bを持つU字状カップ78の底部の半凸曲面体部分78aを真空で吸引して雌型チャック72で把持しながら円筒部分78bにネッキング加工を行って、容器本体76の凸曲面体の残りの半分の半凸曲面体部分78cと、ポート14となるネックを成形して、半凸曲面体部分78aと半凸曲面体部分78cとからなる凸曲面形の容器本体76とポート14とからなる凸曲面体形状継目無容器74を製造するためのスピニングマシンである。
【0052】
図8に示すスピニングマシン70は、U字状カップ78の半凸曲面体部分78aを一端側の把持部72aで把持(チャック)する雌型チャック72と、雌型チャック72の他端側の円筒状のボス72bを把持(チャック)する本体(スピニング)チャック44と、雌型チャック72を把持(チャック)した本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、雌型チャック72の他端側の取り付けられるロータリージョイント48と、真空ポンプ50と、真空ポンプ50とロータリージョイント48とを接続する配管52と、ネッキング加工時にU字状カップ78の円筒部分78bを所定温度に加熱するバーナ54と、U字状カップ78の円筒部分78bにネッキング加工を施すローラ56とを有する。
雌型チャック72の把持部72aは、U字状カップ78の半凸曲面体部分78aと嵌合する半凸曲面状の凹み部(半凸曲面状凹部)79を持ち、先端側の内面には、環状のOリング溝が設けられ、Oリング58が取り付けられており、雌型チャック72の円筒状ボス72bの中心には、把持部72a内面側から円筒状ボス72bの他端まで貫通する貫通孔72cが設けられている。この貫通孔72cの断面形状が、例えば多角形である場合には、U字状カップ78の半凸曲面体部分78aの中心に同じ多角形状の底部ボス18を設けておくことにより、底部ボス18をU字状カップ78の回り止めとして機能させることもできる。
【0053】
なお、
図7及び
図8に示すスピニングマシン60及び70は、
図5に示すスピニングマシン40と、
図7及び
図8に示す継目無容器64及び74、容器本体66及び76、並びにU字状カップ68及び78の形状が、
図5に示す球形継目無容器10、容器本体12、及びU字状カップ22の形状と異なるために、
図7及び
図8に示す雌型チャック62及び72の把持部の形状が、
図5に示す雌型チャック42の把持部の形状と異なる以外は、同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は、省略する。
以上から、
図7及び
図8に示すスピニングマシン60及び70を用いて、それぞれ
図7及び
図8に示す継目無容器64及び74を製造することができる。
【0054】
次に、本発明の第5の実施形態に係る継目無容器の製造方法について説明する。
図9は、本発明の第5の実施形態に係る継目無容器の製造方法の一例を実施する継目無容器の製造装置の一実施例の断面模式図であり、
図10は、
図9に示す製造装置で実施される製造方法の工程に続く他の工程を実施する製造装置の断面模式図である。
図11は、本発明の第5の実施形態に係る継目無容器の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【0055】
まず、本実施形態の継目無容器の製造方法の説明に先立って、本実施形態の製造方法で製造される継目無容器について説明する。
図10に示す継目無容器90は、金属材料製で凸曲面体形状、具体的には球形状を成す継目無容器であって、金属材料製の容器本体92と、頂部に円筒形状の金属材料製のポート94と、ポート94とは点対称な位置となる底部96に円筒形状の金属材料製のボス98と、を有する。
ここで、
図10に示す継目無容器90、容器本体92、及びポート94は、容器本体92の底部96にボス98を有している点を除いて、
図1及び
図5に示す継目無容器10、容器本体12、及びポート14と同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は省略する。
【0056】
金属材料製の容器本体92は、継ぎ目が無く、球形状を有し、ポート94を通してガスが充填されるものであり、
図10に示すように、後述する
図9に示すU字状カップ102の半球体部分102aと、U字状カップ102の円筒部分102bをネッキング加工によって成形した半球体部分102cとを有する。ここで、
図9、又は
図10に示すU字状カップ102、半球体部分102a、円筒部分102b、及び半球体部分102cは、
図5に示すU字状カップ22、半球体部分22a、円筒部分22b、及び半球体部分22cと同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は省略する。
金属材料製のポート94は、容器本体92に付属し、ガスを出し入れするものである。また、ポート94は、容器本体92と継目が無く一体であり、ポート94の肉厚は、容器本体92の肉厚以上である。
【0057】
ボス98は、金属材料製の容器本体92の底部96から外部に突出するように設けられる円筒形状の部分である。このボス98の先端は、開放され、ポート94と同様の機能を有していても良いし、逆に閉じられていても良い。なお、容器本体92の底部96は、
図1の容器本体12の底部16のように、ボス98が設けられていない球面形状であっても良いが、ボス98を有する方が好ましい。なお、本実施形態では、ボス98の代わりに、
図3(C)及び(D)に示すボス21を用いても良い。
容器本体92の底部96にボス98を有することにより、U字状カップ102を、その軸端部分のボス98によって支持することができる。即ち、ネッキング加工時に、回転するU字状カップ102を、一方の軸端部分となるボス98によって円筒部分102bに半径方向に加わる力に対してU字状カップ102を支持することができる。
【0058】
なお、本実施形態の継目無容器の製造方法では、U字状カップ102から加工中間体104を成形する1回目の成形加工(第1成形工程)と、加工中間体104から継目無容器90を成形する2回目の成形加工(第2成形工程)と、を行う。
U字状カップ102は、
図9に示すように、容器本体92の球体の半分となる半球体部分102a、及びボス98と、円筒部分102bと、を有する。
加工中間体104は、
図10に示すように、1回目の成形加工によって、U字状カップ102において、円筒部分102bが成形されたもので、半球体部分102a、及びボス98と、円筒部分102bが成形された球面加工部分106と、円筒部分108とを有する。加工中間体104は、2回目の成形加工によって、継目無容器90に成形される。
【0059】
次に、本実施形態の継目無容器の製造方法を実施する継目無容器の製造装置について説明する。
図9は、後述する1回目の成形加工を行う状態の製造装置(スピニングマシン)110を示すものであり、
図10は、後述する2回目の成形加工を行う状態のスピニングマシン110を示すものである。
【0060】
図9、及び
図10に示すスピニングマシン110は、U字状カップ102の半球体部分102aを一端側の把持部112aでチャックする雌型チャック112と、半球体部分102aの内側表面(内周面)に一方の端部(先端部)114aが当接して内周面を押圧して半球体部分102aを雌型チャック112の把持部112aの内周面に固定する芯押し棒114(
図9参照)と、本体チャック44による雌型チャック112を介してのU字状カップ102の回転に同期させて芯押し棒114を回転させる回転手段(図示せず)と、加工中間体104の球面加工部分106の外側表面に当接して加工中間体104の半球体部分102aを雌型チャック112に押し付けて固定するサブチャック116(
図10参照)と、サブチャック116を雌型チャック112の把持部112aの先端のフランジ112dに設けられたねじ孔112eに固定するボルト118(
図10参照)と、雌型チャック112の他端側の円筒状ボス112bをチャックする本体チャック44と、雌型チャック112をチャックした本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、ネッキング加工時にU字状カップ102の円筒部分102bを所定温度に加熱するバーナ54と、U字状カップ102の円筒部分102bにネッキング加工を施すローラ56と、を有する。
なお、
図9、及び
図10に示すスピニングマシン110は、
図5に示すスピニングマシン40と、雌型チャック42、ロータリージョイント48、真空ポンプ50、及び配管52の代わりに、雌型チャック112、芯押し棒114、芯押し棒114の回転手段(図示せず)、サブチャック116、及びボルト118を有している点を除いて、同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の番号を付し、その説明は省略する。
【0061】
雌型チャック112は、
図9、及び
図10に示すように、一端側には、U字状カップ102の半球体部分102aとぴったり(中心部を除き略隙間なく)一致する、即ち嵌合する内周面を有する半球状の凹み部(半球状凹部)113を有する円錐台形状の把持部112aを備え、他端側には、本体チャック44に把持(チャック)される円筒状ボス112bを備え、円筒状ボス112bの一端側の把持部112aの半球状凹部113の中心には、金属材料製の容器本体92の底部96のボス98を収容する円筒状の凹部112cを備えている。なお、金属材料製の容器本体92の底部96がボス98を有しない場合には、雌型チャック112は、凹部112cを備えなくても良い。
また、雌型チャック112は、更に、把持部112aの一端側(先端側)の円筒部の外周に設けられる円板状のフランジ112dと、フランジ112dに複数、好ましくは3つ以上設けられたねじ孔112eと、を有する。なお、円板状のフランジ112dの代わりに、ねじ孔112eを備える突起を複数把持部112aの円筒部の外周に設けても良い。
【0062】
芯押し棒114は、
図9に示すように、U字状カップ102の半球体部分102aを雌型チャック112の半球状凹部113にスリップすることが無いように固定するために、U字状カップ102の半球体部分102aを雌型チャック112の半球状凹部113に押し付けるためのものである。芯押し棒114の先端部114aの当接部分は、半球体部分102aの内側表面の当接部分に一致する、又は合わせた形状であるのが好ましい。こうすることにより、芯押し棒114が半球体部分102aの内側表面に所定の押圧力で押し付けられた時にも、半球体部分102aの内側表面の当接部分が損傷したり、変形したりすることがない。芯押し棒114の押圧力は、U字状カップ102の半球体部分102aが、雌型チャック112の半球状凹部113、及び芯押し棒114の先端部114aのいずれに対してもスリップすること無く、また、芯押し棒114の先端部114aがU字状カップ102の半球体部分102aの内周面を傷つけることが無い程度の力とすることが好ましい。また、芯押し棒114の太さは、U字状カップ102の円筒部分102bの内径、その金属材料の材質(例えば硬軟)、及びネッキング加工の状況に基づいて最適化されることが好ましい。即ち、円筒部分102bの内径に応じて芯押し棒114の外径を太くしたり、細くしたりするのみならず、ネッキング加工の容易性等に応じて、芯押し棒114の外径を増減しても良い。
図示しないが、芯押し棒114の回転手段は、本体チャック44によって雌型チャック112を介して回転されるU字状カップ102の回転に同期させて芯押し棒114を回転させる必要があるので、本体チャック44を回転させるスピニングマシン本体46によって同一速度で回転されるものであることが好ましい。
【0063】
サブチャック116は、
図10に示すように、雌型チャック112のフランジ112dのねじ孔112eにボルト118を締めることによってフランジ112dに固定される。 サブチャック116は、1回目の成形工程でU字状カップ102から成形された加工中間体104の球面加工部分106の外側表面に当接する当接部を先端に有するL字状の板材である。サブチャック116は、球面加工部分106の外側表面に当接して、加工中間体104を雌型チャック112の側に押圧し、好ましくはばね材として機能してばね力によって押し付け、加工中間体104の半球体部分102aの外側表面(外周面)を雌型チャック112の把持部112aの半球状凹部113に押し付けて、雌型チャック112の回転に対してスリップしないように固定するためのものである。即ち、サブチャック116は、加工中間体104の半球体部分102aを雌型チャック112の半球状凹部113に押し付けることにより、半球体部分102aを雌型チャック112に固定するために、球面加工部分106を円筒部分108の中心軸に沿って半球体部分102aの方向に押圧するものである。
【0064】
加工中間体104の球面加工部分106に対するサブチャック116の当接部分は、球面加工部分106の外側表面の当接部分の形状に一致する、又は合わせた形状であるのが好ましい。これにより、サブチャック116が、球面加工部分106の外側表面(外周面)に所定の押圧力で押し付けられた時にも、球面加工部分106の外側表面の当接部分が損傷したり変形したりすることがない。サブチャック116の押圧力は、加工中間体104の半球体部分102aが、雌型チャック112の半球状凹部113、及びサブチャック116当接部分のいずれに対してもスリップすること無く、また、サブチャック116当接部分が加工中間体104の半球体部分102aの内周面を傷つけることが無い程度の力とすることが好ましい。サブチャック116の形状は、球面加工部分106を円筒部分108の中心軸に沿って半球体部分102aの方向に押すことができれば、
図10に示すような板材の形状に限定されず、どのような形状でも良い。
【0065】
次に、本発明の第5の実施形態に係る継目無容器の製造方法について説明する。
図11は、本実施形態の継目無容器の製造方法の手順の各工程の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、予め、金属材料製の板材、又はパイプ材に鍛造加工、プレス加工、又はパイプ材にスピニング加工を行って作製したU字状カップ102を準備しておくと共に、雌型チャック112を本体チャック44にチャックしたスピニングマシン110を用意しておく。
【0066】
ステップS12において、U字状カップ102の容器本体92の底部96のボス98を雌型チャック112の半球状凹部113の中心の円筒状の凹部112cに挿入し、U字状カップ102の半球体部分102aを雌型チャック112の半球状凹部113に嵌め込むと共に、芯押し棒114をU字状カップ102の円筒部分102bから挿入して、芯押し棒114の先端部114aで半球体部分102aの内周面を押圧して、半球体部分102aの外周面を半球状凹部113の内周面に密着させて、半球体部分102aを雌型チャック112に固定するとともに、芯押し棒114を本体チャック44と同期して回転させる回転手段(図示せず)に接続する。
このステップS12は、本発明の第1チャッキング工程を構成する。
【0067】
ステップS14において、雌型チャック112を介してスピニングマシン110にU字状カップ102の半球体部分102aを固定した状態で、スピニングマシン110を稼働させて、本体チャック44及び芯押し棒114を同期して所定速度、例えば100rpm〜300rpmで回転させると共に、U字状カップ102の円筒部分102bを、加熱用バーナ54で加熱する。
次に、ステップS16において、U字状カップ102を回転させながら、U字状カップ102の円筒部分102bの温度が加工温度、例えば300℃〜350℃に達した時に、スピニングマシン110のローラ56を動かして、U字状カップ102の円筒部分102bに対して1回目の成形を行う。
1回目の成形においては、ローラ56によってU字状カップ102の円筒部分102bを湾曲させて球形化して球面加工部分106を成形するネッキング加工を行うと共に、芯押し棒114の外周面に倣うネックとなる円筒部分108を成形するネッキング加工(ボス部の成形加工)を行う。円筒部分108の成形においては、芯押し棒114がネッキング加工の際の加工芯となるので、ネッキング加工を容易に行うことができる。
【0068】
この球面加工部分106は、容器本体92の球体の残りの半分の半球体部分に対応する部分となる。即ち、円筒部分102bは、球面加工部分106と円筒部分108とに成形され、その結果、U字状カップ102は、半球体部分102aとボス98と球面加工部分106と円筒部分108から構成される加工中間体104に成形される。
1回目の成形においては、円筒部分108の内径は、芯押し棒114の外径より僅かに大きいが、ほぼ等しいと言える。このため、円筒部分108の内外径は、それぞれ継目無容器90のポート94の内外径よりおおきい。したがって、2回目の成形において、円筒部分108を、その内外径がそれぞれ継目無容器90のポート94の内外径に等しくなるように成形する必要がある。
ステップS14及びS16は、本発明の第1成形工程を構成する。
【0069】
次に、ステップS18において、スピニングマシン110の稼動、即ち加熱用バーナ54の加熱、本体チャック44、雌型チャック112、加工中間体104、及び芯押し棒114の回転、ローラ56の移動を停止し、加工中間体104の温度が、例えば100℃以下まで低下した後、スピニングマシン110から芯押し棒114と及び芯押し棒114の回転手段(図示せず)を取り外した後、雌型チャック112の把持部112aのフランジ112dにサブチャック116を取り付け、フランジ112dのねじ孔112eにボルト118をねじ込んで(螺合して)、サブチャック116を固定する。
サブチャック116が球面加工部分106を押す力を利用して半球体部分102aを雌型チャック112の半球状凹部113に押し付けることにより、半球体部分102aを雌型チャック112に固定する。
なお、図示例では、ワークの肩、即ち加工中間体104の球面加工部分106を雌型チャック112に固定されたサブチャック116で押さえ付けているが、本発明はこれに限定されず、ワークの肩を押させつけることができれば、いかなる方法を用いても良い。
ステップS18は、本発明の第2チャッキング工程を構成する。
【0070】
次に、ステップS20において、雌型チャック112を介してスピニングマシン110に加工中間体104の半球体部分102aを固定した状態で、スピニングマシン110を稼働し、加工中間体104の円筒部分108を上記所定速度で回転しながら、上記所定温度まで加熱する。
次いで、加工中間体104の円筒部分108の温度が上記所定温度に達したら、ステップS22において、加工中間体104の円筒部分108を上記所定速度で回転しながら、また、上記所定温度に維持しながら、加工中間体104の円筒部分108のネッキング加工を行う。
ステップS22においては、加工中間体104の円筒部分108からその直径より小さい直径を持つポート94を成形するために、球面加工部分106側の円筒部分108の端部を球面加工部分106に連なる球面加工部分106aを成形した後、円筒部分108を細径化してポート94となるネックを成形する。こうして、加工中間体104の円筒部分108は、球面加工部分106a及びポート94となる。その結果、球面加工部分106及び106aは、継目無容器90の容器本体92の半球体部分102aに対応する残りの半球体部分102cを構成する。
こうして、ステップS22において、加工中間体104から、半球体部分102a、及び半球体部分102cを備え、継ぎ目のない容器本体92と、ポート94と、底部96のボス98と、を有する継目無容器90が成形される。
【0071】
継目無容器90の成形が終了すると、スピニングマシン110の稼動、即ち加熱用バーナ54の加熱、本体チャック44、雌型チャック112、及び継目無容器90の回転、ローラ56の移動が停止され、継目無容器90の温度が、例えば100℃以下まで低下した後、雌型チャック112の把持部112aのフランジ112dのねじ孔112eからボルト118を抜き出し、固定されていたサブチャック116をフランジ112dから取り外して、成形された継目無容器90を雌型チャック112から取り外す。こうして、ステップS22は、終了する。
ステップS22は、本発明の第2成形工程を構成する。
なお、ステップS18、S20、及びS22は、加工中間体104のネックとなる円筒部分108の直径を小さくしてポート94を成形するための工程である。したがって、ポート94を成形するのに十分な細い芯押し棒を使用することができ、細い芯押し棒によってポート94を成形することができる場合には、ステップS18、S20、及びS22は、不要である。
【0072】
本実施形態においては、上記第2の実施形態と同様に、
図9、及び10に示すスピニングマシン110を用いて球形継目無容器90を製造するものに限定されず、
図12、及び
図13に示すように、スピニングマシン140を用いて、円筒状胴部122aを持つ凸曲面体形状の継目無容器120を製造しても良い。
ここで、本実施形態の製造方法で製造される継目無容器としては、円筒状胴部の長さが胴部直径の1/2以下である本発明の凸曲面体形状の継目無容器であるのが良く、スピニングマシン140の本体チャック44でチャックできない長さの円筒状胴部を持つ凸曲面体形状の継目無容器であることがより好ましいが、本実施形態では特に制限的ではなく、円筒状胴部の長さが胴部直径の1/2超である凸曲面体形状の継目無容器であっても良いのは勿論である。
なお、
図12、及び
図13に示す楕円体形状の継目無容器120は、
図9、及び
図10に示す球形継目無容器90と、容器本体122の形状が、容器本体92の形状と異なる以外は、同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は、省略する。
【0073】
図12は、本実施形態に係る継目無容器の製造方法の他の一例を実施する継目無容器の製造装置の断面模式図である。
図13は、
図12に示す製造方法の工程に続く他の工程を実施する製造装置の断面模式図である。
図12に示すスピニングマシン140は、1回目の成形加工を行うためのもので、基本的には、
図9に示すスピニングマシン100と同様の構成、及び作用を有し、第1回目の成形工程において、予め、金属材料製板材、又はパイプ材等から鍛造加工、プレス成型加工、又は金属材料製パイプ等からその一端をスピニング加工(ヘラ絞り加工)、又は深絞り加工等の公知の塑性加工を行って作製され、継目無容器120の容器本体122の半分の半球体部分132aと、容器本体122の底部126のボス128と、半球体部分132aに続く円筒状胴部122aと、円筒状胴部122aに続く円筒部分132bとを有するU字状カップ132の底部126のボス128を、雌型チャック142の半球状凹部143の中心の円筒状の凹部142cに挿入し、U字状カップ132の半球体部分132aを雌型チャック142の把持部142aの半球状凹部143に嵌め込むと共に、芯押し棒144の先端部144aで半球体部分132aの内周面を押圧して、半球体部分132aの外周面を半球状凹部143の内周面に密着させて、芯押し棒144を用いて半球体部分132aを雌型チャック142に固定して、雌型チャック142、U字状カップ132、及び芯押し棒144を同期して回転させて、U字状カップ132の円筒部分132bにネッキング加工を行って、容器本体122の残りの半分の球面加工部分136と円筒部分138を成形する。
なお、本実施形態では、ボス128の代わりに、
図3(C)及び(D)に示すボス21を有するU字状カップを用いても良い。
こうして、スピニングマシン140は、まず、半球体部分132aと、ボス128と、円筒状胴部122aと、球面加工部分136と、円筒部分138とからなる加工中間体134を製造する。
【0074】
次いで、
図13に示すスピニングマシン140は、1回目の成形加工を行うためのもので、
図10に示すスピニングマシン100と同様の構成、及び作用を有し、第1回目の成形工程において第1回目の成形工程において成形された加工中間体134から芯押し棒144を取り外し、第2回目の成形工程において、雌型チャック142の把持部142aのフランジ142dにサブチャック146を取り付けてねじ孔142eにボルトをねじ込んで固定し、加工中間体134を雌型チャック142にチャックして、加工中間体134の円筒部分138にネッキング加工を行って、円筒部分138の内側端部を球面加工部分136に続く球面加工部分136aに、残りの円筒部分138を細径化してポート124となるネックを成形する。こうして、加工中間体134の円筒部分138は、球面加工部分136a、及びポート124となる。その結果、球面加工部分136、及び136aは、継目無容器120の容器本体122の半球体部分132aに対応する残りの半球体部分132cを構成する。
こうして、スピニングマシン140は、半球体部分132aと、ボス128と、円筒状胴部122aと、半球体部分132cと、ポート124とからなる継目無容器120を製造する。
なお、
図13に示す継目無容器120は、
図10に示す球形継目無容器90と、容器本体122の形状が、円筒状胴部122aを有している点で異なるが、同様の構成を有するものであるので、参照符号は異なるが、同様な構成要素には、同じ名前を付し、その詳細な説明は、省略する。
【0075】
図12、及び
図13に示すスピニングマシン140は、U字状カップ132の半球体部分132a、底部及び円筒状胴部122aを一端側の把持部142aでチャックする雌型チャック142と、半球体部分132aの内周面に先端部144aを押し付けて半球体部分102aを雌型チャック142の把持部142aの内周面に固定する芯押し棒144(
図9参照)と、本体チャック44による雌型チャック142の回転に同期させて芯押し棒114を回転させる回転手段(図示せず)と、加工中間体134の球面加工部分136の外周面に押圧して半球体部分132aを雌型チャック142に押し付けて固定するサブチャック146(
図10参照)と、サブチャック146を雌型チャック142の把持部142aの先端のフランジ142dに設けられたねじ孔142eに固定するボルト148(
図10参照)と、雌型チャック142の他端側の円筒状ボス142bをチャックする本体チャック44と、雌型チャック142をチャックした本体チャック44を支持すると共に回転させるスピニングマシン本体46と、ネッキング加工時にU字状カップ132の円筒部分132bを所定温度に加熱するバーナ54と、U字状カップ132の円筒部分132bにネッキング加工を施すローラ56と、を有する。
【0076】
なお、
図12及び
図13に示すスピニングマシン140は、
図9及び
図10に示す雌型チャック112の把持部112aと形状が異なる把持部142aを有する雌型チャック142を用いて、
図9及び
図10に示すスピニングマシン110で製造される継目無容器90とは円筒状胴部122aを有している点で異なる継目無容器120を製造するものであるが、これらの点を除いて同様の構成を有するものであるので、参照符号は異なるが、同様な構成要素には、同じ名前を付し、その詳細な説明は、省略する。
したがって、
図12及び
図13に示すスピニングマシン140は、
図9及び
図10に示すスピニングマシン110による
図11に示す継目無容器90の製造方法と同様にして、継目無容器120を製造することができることから、同様の製造工程を有するものであるということができるので、
図12及び
図13に示すスピニングマシン140による継目無容器120の製造方法についての詳細な説明は省略する。
【0077】
以上のように、本発明の第5の実施形態に係る製造方法で製造される継目無容器90、120は、円筒状胴部を全く持たない
図9及び
図10に示す球形継目無容器90に限定されず、楕円体形状又は皿形鏡板形状の継目無容器であっても良いし、
図12及び
図13に示す、スピニングマシンの本体チャック44でチャックできない長さの円筒状胴部122aを持つ凸曲面体形状の継目無容器120であっても良い。
また、本発明の第5の実施形態に係る製造方法で製造される継目無容器90、120は、
図5、
図7及び
図8に示すスピニングマシン40、60及び70のように真空ポンプを使用して半凸曲面体部分を雌型チャックにチャックする方法と併用することができる。
本発明の第5の実施形態に係る継目無容器の製造方法は、基本的に以上のように構成される。このような構成とすることで、本発明の第5の実施形態に係る継目無容器の製造方法は、凸曲面体形状の金属製の継目無容器を容易、かつ確実に歩留まり良く製造することができる。
【0078】
従来の容器の加工方法は、容器円筒部をスピニングマシンの中空チャックに挿入して胴部をチャックして、肩部をネッキング加工している。このため、容器の外径が大きくなるとスピニングマシンの中空チャックを支えるベアリングも当然の如く大きくなり、スピニングマシンの設備費用は高額となるので航空宇宙に使用する容器のように少量製作する場合は、そのための設備を設置することが難しい。
また、従来の容器の加工方法では、球形容器の様に胴部がない容器、又は胴部が短くて充分に把持できない容器の加工はできない。
しかしながら、本発明によれば、胴部の無い容器、又は胴部が短くて従来の胴部をチャックする方法で成形できなかった継目無短尺胴部容器のドーム加工が可能となる。なお、
本発明の製造方法で加工できる容器の胴部長さには限定がないのはもちろんである。
【0079】
以上詳述したように、本発明においては、円筒状胴部が全く無いか、あるいは円筒状胴部が短すぎてスピニングチャックの把握力が充分に得られず、通常のスピニングマシンを使った時にネッキングができない容器(U字状カップ)でもネッキングが可能となり継目無容器を作ることができる。
本発明の継目無容器は、溶接部分がないので製造肉厚に溶接効率を考慮する必要がなく理論式を満足する最小の肉厚で製造可能となり、継目無容器を軽量とすることができる。
また、本発明の継目無容器は、溶接部分がないので溶接にかかる、技能者の確保、溶接設備、設備の管理、溶接部の非破壊検査及び気密検査などが不要となるのでコストダウンとなる。
本発明の球形継目無容器の場合、材料肉厚は円筒部を有する円筒形継目無容器の1/2の厚さでよいことが分かる。
本発明の継目無容器では、容器の収納場所が狭い場合でも、容器の鏡板部形状を皿形、又は楕円体にすることにより、本発明の継目無容器を円盤に近い形で継ぎ目なく製作することができる。
【0080】
以上、本発明の継目無容器、及びその製造方法、並びに複合容器、及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。