(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553672
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】静脈カテーテル装置
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
A61M25/06 512
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-91868(P2017-91868)
(22)【出願日】2017年5月2日
(62)【分割の表示】特願2014-540575(P2014-540575)の分割
【原出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2017-127751(P2017-127751A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年5月29日
(31)【優先権主張番号】3159/DEL/2011
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】510250652
【氏名又は名称】ポリー メディキュア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイド リシ
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/036574(WO,A1)
【文献】
特表2005−512637(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0299291(US,A1)
【文献】
特開2009−022732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈カテーテル装置であって、
カテーテルチューブ(10)の近位端に配置され、チャンバ(16)を画定する内部表面(14)を有するカテーテルハブ(12)と、
軸方向を規定し、針先(24)を有する針(20)であって、準備位置にあるときに前記チャンバ(16)および前記カテーテルチューブ(10)を貫通して延びる針(20)と、
前記針(20)上に摺動可能に配置され、前記針(20)が前記準備位置にあるときに前記チャンバ(16)に収容される針保護具(32)であって、前記針保護具(32)は、ベース部(34)と、前記ベース部(34)から延びる第1のアーム(36)と第2のアーム(38)とを含み、前記針(20)が前記準備位置にあるときに前記第1のアーム(36)が前記針(20)によって復元力に抗して半径方向外側へ湾曲され、前記針保護具(32)が前記カテーテルハブ(12)に係止接触する、針保護具(32)と、
を含み、
前記針保護具(32)は、前記カテーテルハブ(12)から前記針(20)を引き抜くときに、前記針(20)に設けられた係合手段と係合して当該針保護具(32)から前記針(20)が滑り落ちるのを防止する止め具要素(46)であって、前記係合手段と係合したとき、前記針先(24)が前記第1のアーム(36)と前記第2のアーム(38)の間に収容される、止め具要素(46)を有し、
前記第1のアーム(36)は、前記湾曲を容易にするために、前記第2のアーム(38)に対向する面に設けられた窪みによって形成された断面が縮小された狭小部分(52)を有し、前記狭小部分(52)は、前記第1のアーム(36)の長手方向の中央部に位置する、
静脈カテーテル装置。
【請求項2】
前記第2のアーム(38)もまた、前記第2のアーム(38)の湾曲を容易にするために、断面が縮小された狭小部分(54)を有し、前記狭小部分(54)は、前記第2のアーム(38)の長手方向の中央部に位置する、請求項1に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項3】
前記針先(24)が前記第1および第2のアーム(36,38)の間に収容されているときに、前記第2のアーム(38)は半径方向内側に湾曲することができる、請求項1〜2のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項4】
前記第1および第2のアーム(36,38)は、弾性材料から作製される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項5】
前記第1および第2のアーム(36,38)は、プラスチック材料から作製される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項6】
前記第1および第2のアーム(36,38)は、前記ベース部(34)と一体成形されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項7】
前記復元力が、前記第1のアーム(36)と少なくとも部分的に前記第1および第2のアーム(36、38)を取り囲む付加的な張力要素のうち少なくとも1つによって生成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項8】
前記第1のアーム(36)は、前記第2のアーム(38)よりも長い、請求項1〜7のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項9】
前記第1のアーム(36)が、前記針先(24)を引っ掛けるための逃げ溝(51)を有する遠位端部(50)を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項10】
前記遠位端部(50)は、前記第2のアーム(38)に向かって傾斜し、前記第2のアーム(38)と重なっている、請求項9に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項11】
前記第1のアーム(36)が湾曲状態にある間、前記チャンバ(16)内に前記針保護具(32)を係止する係止手段をさらに備え、前記係止手段は、前記第1のアーム(36)上に設けられた第1のディスク状係止突起(58)と、前記内部表面(14)に形成され、前記係止突起(58)を収容するように構成された係止窪み(18)と、を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項12】
前記係止突起(58)が、略平行な近位面(60)および遠位面(62)および/または、凸状であって、具体的には、円筒形の一部である周面(64)を有する、請求項11に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項13】
第2のディスク状係止突起(66)が前記第2のアーム上(38)に配置され、前記係止窪み(18)に係合するように構成された、請求項11または12に記載の静脈カテーテル装置。
【請求項14】
前記針保護具(32)が、前記第1の係止突起(58)の近位領域において前記第1および第2のアーム(36,38)を少なくとも部分的に取り囲むか、または前記第1および第2のアーム(36,38)を共に付勢する線形付勢力を加える、張力要素を備える、請求項11〜13のいずれか1項に記載の静脈カテーテル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルチューブの近位端に配置されチャンバを画定する内部表面を有するカテーテルハブと、針先を有し準備位置にあるときにチャンバおよびカテーテルチューブを通じて延びる針と、針上に摺動可能に配置されて針が準備位置にあるときにチャンバに収容される針保護具と、を備える静脈カテーテル装置であって、針保護具は、カテーテルハブから針を引き抜くときに針先を保護するように構成される、静脈カテーテル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2011年11月8日に出願されたインド国仮特許出願第3159/DEL/2011号に係わる優先権を主張するものである。同仮特許出願の内容は本明細書に参考として組み込まれる。出願人は、この仮出願の権利を主張する。
【0003】
このタイプの静脈カテーテル装置は、一般に知られている。針保護具は、静脈カテーテル装置を扱う人が、患者の静脈にカテーテルチューブを留置し、その後患者の静脈から針を除去した後に、誤って針先に接触することを防止する役割を果たす。それによって、静脈カテーテル装置は、血液媒介感染症の望まない伝染を回避するのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/010847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、針先による不慮の穿刺に対して向上した保護を提供し、同時に、製造が安価な静脈カテーテル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に係る静脈カテーテル装置によって達成される。
【0007】
本発明の静脈カテーテル装置は、カテーテルチューブの近位端に配置され、チャンバを画定する内部表面を有するカテーテルハブと、軸方向を規定し、針先を有する針であって、準備位置にあるときにチャンバおよびカテーテルチューブを貫通して延びる針と、針上に摺動可能に配置され、針が準備位置にあるときにチャンバに収容される針保護具であって、当該針保護具は、ベース部と、ベース部から延びる第1のアームと第2アームとを含み、針が準備位置にあるときに第1のアームが針によって復元力に抗して半径方向外側に湾曲され、当該針保護具がカテーテルハブと係止接触する、針保護具と、を備える。第1のアームが湾曲状態にある間、針保護具をチャンバ内に係止する係止手段と、を備えることができる。係止手段は、第1のアーム上に設けられた第1のディスク状係止突起と、カテーテルハブの内部表面に形成され、係止突起を収容するように構成された係止窪みと、を含むことができる。ディスク状係止突起は、カテーテルハブの内部表面に形成された対応する係止窪みを有する円形接触面に沿った係合であるという利点を有する。第1のアームは、湾曲を容易にするために、断面が縮小された狭小部分を有し、狭小部分は、第1のアームの長手方向の中央部に位置する。第2のアームもまた、第2のアームの湾曲を容易にするために、断面が縮小された狭小部分を有するようにでき、狭小部分は、第2アームの長手方向の中央部に位置するようにできる。
【0008】
従来技術から知られているIVカテーテル装置とは異なり、これは、係止突起の略環状部分および係止窪みに沿って針保護具とカテーテルハブとの間の係合を提供し、それによって、針保護具が、その準備位置にあって、針ハブの外に引き抜かれないようにする場合に、当該2つの構成要素間の安全かつ確実な係合を提供する。カテーテルハブ内で針保護具が回転した場合でも、カテーテルハブと針保護具との間のこの確実な係合により、針保護具はカテーテルハブ内に安全に保持される。
【0009】
針保護具をチャンバ内に係止するために、カテーテルハブの内部表面には、突起などの代わりに窪みが形成されているため、カテーテルハブは、より容易に製造可能であり、したがって、特に、カテーテルハブが、射出成形などにより形成されたプラスチック部品である場合には、製造コストが小さくなる。同時に、針保護具上に設けられた第1の係止突起の特有の構造により、係止突起と係止窪みとの効果的係合が確実になり、そのため、カテーテルハブ内に針保護具が確実に係止される。したがって、カテーテルハブから針を引く間に、カテーテルハブから針保護具が早期に放出されるリスク、ひいては、針による不慮の穿刺のリスクが低減する。
【0010】
好適な実施形態によれば、係止突起は、円形の一部であって、具体的には、半円形である。さらに具体的には、係止突起は、略平行な近位面と遠位面および/または凸状であって、具体的には、円筒形の一部である周面を有する。
【0011】
別の実施形態によれば、第1の係止突起が、第1のアームの遠位端領域に配置されている。
【0012】
さらに別の実施形態によれば、第2のアーム上に第2のディスク状係止突起が配置され、第1のアームが湾曲状態にある間、係止窪みと係合するように構成されている。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、針先がアーム同士の間に収容されているとき、第2のアームは、その全長に亘って半径方向内側に湾曲させることができ、それにより、第2の係止突起が係止窪みから外れる。
【0014】
さらに別の実施形態によれば、第2の係止突起が、第2のアームの遠位端領域に配置されている。
【0015】
具体的には、第2の係止突起は、第1の係止突起の反対側に配置されてもよい。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、係止窪みは、環状の、または環形状の一部である窪みであって、環状の窪みであるのが好ましい。さらに別の実施形態によれば、第1のアームの弾性特性および付加的な張力要素のうち少なくとも1つによって復元力がもたらされる。例えば、第1の係止突起の近位領域において、両アームを少なくとも部分的に取り囲むか、または、2つのアームを取り囲む代わりに、線形付勢作用によって2つのアームを付勢する、張力要素を含んでもよい。
【0017】
この代わりにまたはこれに追加して、第1および第2のアームは、弾性材料から作製されることが可能である。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、第1および第2のアームは、プラスチック材料から作製される。第1および第2のアームは、同じくプラスチック材料から作製されるベース部と射出成形などによって一体成形されているのが好ましい。
【0019】
さらに別の実施形態によれば、針は、針保護具と係合し、針保護具から針が滑り落ちるのを防止するために、針先から距離を置いて設けられる係合手段を備える。係合手段は、針の主要外径と比較して少なくとも一方向における針の半径方向寸法の拡張部によって形成される。係合手段は、例えば、局所ひだ、肩部、環状の拡幅部として形成される隆起によって設けることができる。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、針保護具は、針先が第1のアームと第2のアームとの間に収容されるときに針の係合手段と係合する止め具要素を備える。止め具要素は、針の主要外径に適合しているものの針の拡張部よりも小さい断面を有する軸方向穴を画定するのが好ましい。さらに、止め具要素は、ベース部の材料とは異なる材料であって、具体的には、金属材料から作製されてもよい。止め具要素は、ディスク状の形状または管状の形状をしており、加えて/またはベース部の遠位側に配置されている。止め具要素は、ベース部内に固定するかまたは針の上に浮くようにして支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の静脈カテーテル装置の縦断面図である。
【
図2】張力要素のない
図1の静脈カテーテル装置の針保護具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態について、単に例示の目的で添付の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、カテーテルチューブ10と、カテーテルチューブ10の近位端に取り付けられたカテーテルハブ12と、を備える静脈カテーテル装置を示している。「近位」という用語は、静脈カテーテル装置を取り扱う人に近い位置または方向を示し、逆に、「遠位」という用語は、この人から遠い位置または方向を示し、ここでは、針20の長手方向Aが基準方向である。
【0024】
カテーテルハブ12は、略円形の断面のチャンバ16を画定する内部表面14を有する。チャンバ16は、カテーテルハブ12の近位部に位置している。チャンバ16の遠位領域では、カテーテルハブの内部表面14に環状係止窪み18が設けられ、その機能については以下にさらに詳細に説明する。
【0025】
遠位端および近位端を有する針20は、カテーテルハブ12のチャンバ16およびカテーテルチューブ10を貫通して延びている。針20は、針軸22と、その遠位端にある針先24と、を備える。針20の近位端には針ハブ26が取り付けられている。針20は上記軸(長手)方向Aを規定しており、また、針軸22は略一定な主要外径を有しているが、該主要外径と比べて少なくとも一方向において針20の半径方向寸法が拡張した部分であって、針先24の領域に配置された係合手段を形成している拡張部(図示せず)は、この限りではない。係合手段は、針20を押して変形させることによって作られるのが好ましい。ただし、係合手段は、針を溶接、フライス加工、冷間圧造、または押し広げ加工することによって作製することもできる。係合手段の機能については以下にさらに詳細に説明する。
【0026】
図1は、使用前の状態の静脈カテーテル装置を示しており、針20が、カテーテルハブ12のチャンバ16およびカテーテルチューブ10を貫通してずっと延びており、針先24がカテーテルチューブ10の遠位端から突き出ている。このような関係において、針20のこの位置を準備位置とも呼ぶ。針20は、カテーテルハブ12に係合している針ハブ26によってその準備位置に固定されることに注意されたい。
【0027】
使用前の静脈カテーテル装置の針20による不慮の穿刺を防止するために、管状カバー30が、カテーテルチューブ10および針20のカテーテルチューブ10を貫通して延びている部分を覆っている。カバー30の近位端部は、カテーテルハブ12の遠位端部に取り外し可能に固定されている。
【0028】
静脈カテーテル装置は、針20の使用後、つまり、患者の静脈内にカテーテルチューブ10を留置し、患者の静脈から針20を引き抜いた後に、針先24を保護するための針保護具32をさらに備える。針保護具32は、針軸22上に摺動可能に配置され、チャンバ16内に収容される。
【0029】
図2〜
図5により詳細に示されているように、針保護具32は、管状ベース部34と、管状ベース部34の遠位側から略軸方向に延びる第1のアーム36と第2のアーム38と、を備えている。
【0030】
ベース部34およびアーム36,38は、射出成形などによってプラスチック材料で一体成形されている。ベース部34は、針20を収容するための軸方向貫通穴40を有する。貫通穴40は、針20の主要外径より大きい断面を有する第1の部分42と第2の部分44とを備え、第2の部分44の断面は、第1の部分42の断面よりもさらに大きい。
【0031】
座金などのディスク状プレートの形をした止め具要素46が、インサート成形などによってベース部34の遠位側に配置される。止め具要素46は、ベース部34とは異なる材料であって、例えば、金属材料から作製される。止め具要素46は、ベース部34の貫通穴40と位置合わせされ、ベース部34の貫通穴40の断面より小さい断面を有する軸方向穴48を有する。すなわち、止め具要素46の軸方向穴48の断面は、止め具要素46が針軸22に沿って最小限の摩擦で摺動できるように針20の主要外径に適合している。ただし、軸方向穴48の長手方向Aを横切る最大寸法は、係合手段が止め具要素46を通過するのを防止するために、ひいては、針保護具32から針20が滑り落ちるのを防止するために、針20上に設けられた係合手段の長手方向を横切る最大寸法よりも小さくなっている。
【0032】
針保護具32の第1のアーム36は、第2のアーム38よりも長く、また、針先24を引っ掛けるための逃げ溝51を有する広範囲遠位端部50を有する。遠位端部50は、第2のアーム38に向かって傾斜しており、第2のアーム38と重なっている(
図2)。針20は、準備位置にあるとき、針保護部32を完全に貫通している(
図1)。この状況において、第1のアーム38の遠位端部50は針軸22上に支持され、それによって第1のアーム38は半径方向外側に湾曲している。第1のアーム36の湾曲を容易にするために、第1のアーム36は、第1のアーム36のほぼ中間領域に断面が縮小された狭小部分52を有する。第2のアーム38は、第1のアーム36とは対照的に、傾斜した遠位端部がないので針保護具32を貫通する針20によって大きく湾曲することはない。それにもかかわらず、第2のアーム38も、以下の説明で明らかになる理由により、同様の狭小部分54を有している。
【0033】
たとえ、第1および第2のアーム36,38が、一定の弾性特性を有していても、ゴムバンド56などの張力要素が、第1のアーム36の湾曲が主に張力要素の復元力に抗して発生するようにして、アーム36,38の遠位部を取り囲んでいる。
【0034】
患者の静脈内にカテーテルチューブ10を留置した後、カテーテルチューブ10から針20を引き抜くとき、針20は、針先24が第1のアーム36の傾斜遠位端部50を通過するまで、針保護具32を通って摺動する。この時点で、傾斜遠位端部50は、もはや針軸22に支持されず、第1のアーム36は、主にゴムバンド56の力によって、傾斜遠位端部50が針先24をブロックする弛緩状態に弾き戻される。当然のことながら、第1のアーム36の長さおよび針先24からの係合手段までの距離は、針保護具32に収容される針先24が、針保護具32内の軸方向移動について最小離間距離を有するように互いに構成されている。
【0035】
針保護具32がカテーテルハブ12のチャンバ16からあまりにも早く、つまり、針先24が針保護具32に覆われる前に、取り外されるのを防止するため、第1のアーム36は、第1のアーム36が湾曲状態にあるときにカテーテルハブ12の内部表面14の係止窪み18と係合するディスク状の第1の係止突起58を備える。第1の係止突起58は、略平坦な近位面60および遠位面62と、凸状であって、具体的には、円筒形の一部である周面64を有し、周面64の半径は、係止窪み18の領域におけるカテーテルハブ12の内部表面14の半径に適合している。第1の係止突起58の高さ、すなわち、半径方向における寸法は、第1のアーム36が弛緩状態に弾き戻されると、第1の係止突起58が係止窪み18から外れるように構成されている。
【0036】
第2のアーム38は、第1の係止突起58に似たディスク状の第2の係止突起66を備え、この第2の係止突起66は、半径方向において第1の係止突起58の反対側から延びている。また、第2の係止突起66は、略平行な近位面60および遠位面62と、凸状であって、具体的には円筒形の一部である周面64を有する。第2の係止突起66の高さ、すなわち、半径方向における寸法は、針20が準備位置にあるときに、係止突起66が係止窪み18と係合するように構成されている。係止窪み18から係止突起66を外すために、第2のアーム38は、針20にかかる引張力が十分に大きくなると、針20に向かって半径方向内側にわずかに湾曲することが可能である。
【0037】
図1に示されるように、係止窪み18の軸方向寸法、すなわち、幅は、係止突起58,66の軸方向寸法、すなわち、幅よりも著しく大きい。例えば、係止窪み18の幅は、係止突起58,66の幅の3倍〜5倍となることが可能であるが、係止窪み18と係止突起58,66との間の確実な係合が確保される限り、その他の比率も取り得る。
【符号の説明】
【0038】
10 カテーテルチューブ、12 カテーテルハブ、14 内部表面、16 チャンバ、18 係止窪み、20 針、22 針軸、24 針先、26 針ハブ、30 管状カバー、32 針保護具、34 ベース部、36 第1のアーム、38 第2のアーム、40 貫通穴、42 第1の部分、44 第2の部分、46 止め具要素、48 軸方向穴、50 遠位端部、51 逃げ溝、52 狭小部分、54 狭小部分、56 ゴムバンド、58 係止突起、60 近位面、62 遠位面、64 周面、66 係止突起、A 長手方向。