特許第6553675号(P6553675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553675脈管構造を数値的に評価するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553675
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】脈管構造を数値的に評価するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   A61B6/03 360D
   A61B6/03 360G
   A61B6/03 377
   A61B6/03ZDM
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-102448(P2017-102448)
(22)【出願日】2017年5月24日
(62)【分割の表示】特願2015-537831(P2015-537831)の分割
【原出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2017-140495(P2017-140495A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年5月24日
(31)【優先権主張番号】13/656,183
(32)【優先日】2012年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513030879
【氏名又は名称】ハートフロー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー フォンテ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン タン
(72)【発明者】
【氏名】ギルウー チョイ
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/021307(WO,A2)
【文献】 特表2007−505645(JP,A)
【文献】 特表2008−525126(JP,A)
【文献】 特表2009−542332(JP,A)
【文献】 特表2007−527743(JP,A)
【文献】 特表2007−526016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対する心血管スコアを自動的に生成するための方法であって、前記方法は、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者の1つ以上の冠動脈の幾何学的形状に関する非侵襲的に取得された患者固有の画像データを受け取ることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者固有の画像データを使用して前記患者の前記1つ以上の冠動脈の複数の部分を表現する3次元モデルを作製することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記3次元モデルを使用して前記1つ以上の冠動脈の前記複数の部分の各々に対する血流特性の値を自動的に決定することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、機能的重要度の所定閾値を満たす前記血流特性の値を有する前記1つ以上の冠動脈の前記部分のサブセットを自動的に決定することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記1つ以上の冠動脈の前記部分の前記サブセットの複数の特性を自動的に評価することであって、前記複数の特性のうちの少なくとも1つの特性は、左/右の優位性、全体的閉塞、弁口病の存在、蛇行値、疾患血管セグメントの長さ、石灰化プラークの1つ以上の寸法、血栓、および汎発性疾患の存在の群から選択され、前記複数の特性を自動的に評価することは、各特性の少なくとも一部の数値尺度を自動的に生成することを含む、ことと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記複数の特性の各々に、各特性の前記評価および生成された数値尺度に基づいて点数値を自動的に割り当てることと、
前記機能的重要度の所定閾値を満たす前記1つ以上の冠動脈の前記部分の前記サブセットに対して、前記割り当てられた点数値を使用してアルゴリズムを自動的に実行することにより心血管スコアを生成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記患者固有のデータを受け取ることは、非侵襲的撮影モダリティから生成されたデータを受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の特性の各々は、左/右の優位性、疾患を有する冠動脈のセグメント(単数または複数)の特定、全体的閉塞の存在、二叉分岐および三叉分岐の存在、弁口病の存在、蛇行の計算、疾患セグメント(単数または複数)の長さの計算、石灰化プラークの寸法の計算、血栓の特定、ならびに汎発性疾患の存在からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血流特性は、少なくとも前記冠動脈の前記サブセットに対する1つ以上の冠血流予備量比値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定閾値の値は、0.7〜0.9の範囲内の冠血流予備量比値である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記幾何学的形状に関する前記患者固有のデータ以外にいかなる追加的な入力も受け取ることなく実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
患者に対する心血管スコアを生成するためのコンピュータにより実施される方法であって、前記方法は、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者の1つ以上の冠動脈の幾何学的形状に関する非侵襲的に取得された患者固有の画像データを受け取ることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者固有の画像データを使用して前記患者の前記1つ以上の冠動脈の複数の部分を表現する3次元モデルを作製することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記3次元モデルを使用して前記1つ以上の冠動脈の複数の部分の各々に対する血流特性の値を自動的に決定することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムおよび前記3次元モデルを使用して、機能的重要度の所定閾値を満たす前記血流特性の値を有する前記1つ以上の冠動脈の前記部分のサブセットを自動的に決定することと、
前記機能的重要度の所定閾値を満たす前記1つ以上の冠動脈の前記部分の前記サブセットに対して、前記機能的重要度の所定閾値を満たす前記1つ以上の冠動脈の前記部分の前記サブセットの複数の特性の各々に数値を自動的に割り当てることと、
前記機能的重要度の所定閾値を満たす前記1つ以上の冠動脈の前記部分の前記サブセットに対して、前記少なくとも1つのコンピュータシステムおよび前記割り当てられた数値を使用してアルゴリズムを自動的に実行することにより心血管スコアを生成することと
を含む、方法。
【請求項8】
前記患者固有のデータを受け取ることは、非侵襲的撮影モダリティから生成されたデータを受け取ることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特性は、左/右の優位性、疾患を有する冠動脈のセグメント(単数または複数)の特定、全体的閉塞の存在、二叉分岐および三叉分岐の存在、弁口病の存在、蛇行の計算、疾患セグメント(単数または複数)の長さの計算、石灰化プラークの寸法の計算、血栓の特定、ならびに汎発性疾患の存在からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記心血管スコアを生成することは、前記冠動脈のうちの少なくとも1つに対する冠血流予備量比値を生成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記所定閾値の値は、0.7〜0.9の範囲内の冠血流予備量比値である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記幾何学的形状に関する前記患者固有のデータ以外にいかなる追加的な入力も受け取ることなく実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
患者に対する心血管スコアを提供するための方法であって、前記方法は、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者の1つ以上の冠動脈の幾何学的形状に関する非侵襲的に取得された患者固有の画像データを受け取ることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記非侵襲的に取得された患者固有の画像データに基づいて1つ以上の冠動脈を表現する3次元モデルを作製することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記3次元モデルを使用して前記1つ以上の冠動脈の複数の箇所における冠血流予備量比値を自動的に計算することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、機能的重要度の所定閾値を満たす冠血流予備量比の値を有する前記1つ以上の冠動脈の部分のサブセットを自動的に決定することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者固有の画像データから抽出された前記部分の前記サブセットの1つ以上の幾何学的特徴を特定することによって、前記3次元モデルにより表現される前記1つ以上の冠動脈の前記部分の前記サブセットの複数の特性を自動的に評価することと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記評価に基づいて前記複数の特性の各々に数値を自動的に割り当てることと、
前記少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、アルゴリズムを自動的に実行することにより、前記機能的重要度の所定閾値を満たす冠血流予備量比値を有する前記1つ以上の冠動脈の前記部分の前記決定されたサブセットに対して機能的心血管スコアを計算することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記複数の特性の各々は、左/右の優位性、疾患を有する冠動脈のセグメント(単数または複数)の特定、全体的閉塞の存在、二叉分岐および三叉分岐の存在、弁口病の存在、蛇行の計算、疾患セグメント(単数または複数)の長さの計算、石灰化プラークの寸法の計算、血栓の特定、ならびに汎発性疾患の存在からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記所定閾値の値は、0.7、0.8、および0.9のうちの1つである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記冠血流予備量比値は、前記3次元モデルと、血流の次数低減モデル、物理ベースモデル、および集中パラメータモデルのうちの1つとに基づいて計算される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の特性は、前記3次元モデルを使用して評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の特性は、前記3次元モデルの画像コントラスト、画像輪郭、画像勾配、後処理された画像、画像強度、形状、および体積メッシュのうちの1つ以上を解析する前記コンピュータシステムに基づいて評価される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記機能的重要度の所定閾値を満たす前記複数の特性は、前記3次元モデルを使用した割り当てられた数値である、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の特性は、前記3次元モデルの画像コントラスト、画像輪郭、画像勾配、後処理された画像、画像強度、形状、および体積メッシュのうちの1つ以上を解析する前記コンピュータシステムに基づいた割り当てられた数値である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、脈管構造を数値的に評価(例えば冠動脈の解剖学構造をモデル化することにより冠動脈脈管構造をスコア化するなど)するためのシステムおよび方法を含む。さらに詳細には実施形態は、冠動脈の解剖学的構造に基づく、および所望により冠血流予備量比または血流のコンピュータ化されたモデル化から計算された他の機能的なメトリクス値にも基づく、冠動脈脈管構造の患者固有のスコア評価のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈病は、血液を心臓に提供する血管において、狭窄(血管が異常に狭くなること)などの冠動脈病変を生じさせ得る。その結果、心臓への血流が制限されることとなり得る。冠動脈疾患を患う患者は、身体運動の際における慢性安定狭心症と呼称される、または休息の際における不安定狭心症と呼称される、胸部の疼痛を経験し得る。病気がより深刻な形で発現した場合には、心筋梗塞または心臓発作が生じることとなり得る。
【0003】
例えばサイズ、形状、箇所、機能的重要度(例えば血流に影響を与えるかどうか)、その他の、冠動脈病変に関するより正確なデータを提供することが必要とされる。胸部の疼痛を患う、および/または冠動脈疾患の徴候を示す患者は、冠動脈病変に関する間接的証拠を提供し得る1つまたは複数の検査を受け得る。例えば非侵襲的検査は心電図、血液検査からのバイオマーカー評価、トレッドミル試験、超音波心臓検査、単一光子放射断層撮影(SPECT)、および陽電子断層撮影法(PET)を含み得る。しかしこれらの非侵襲的検査は通常、冠動脈病変の直接的な査定を提供ぜず、また血流速度を査定することもない。非侵襲的検査は、心臓の電気的活動における変化を(例えば心電図検査(ECG)を使用して)、心筋の動きを(例えば負荷心電図検査を使用して)、心筋の潅流を(例えばPETもしくはSPECTを使用して)、または代謝系の変化を(例えばバイオマーカーを使用して)、探すことにより冠動脈の病変の間接的な証拠を提供し得る。
【0004】
例えば解剖学的データは冠動脈CT造影(CCTA)を使用して非侵襲的に取得され得る。CCTAは、胸部疼痛を有する患者を撮影するために使用され得、コンピュータ断層撮影(CT)技術を使用して、造影剤を静脈注入した後に心臓および冠動脈を撮影することを伴う。しかしCCTAも、冠動脈病変の機能的重要度に関する直接的情報(例えば病変が血流に影響を及ぼすかどうか等)を提供することはできない。加えて、CCTAが純粋に診断検査であるため、CCTAは、他の生理学的状態(例えば運動)下での冠動脈血流、血圧、または心筋灌流における変化を予測するために使用することはできず、また、介入の結果を予測するために使用することもできない。
【0005】
したがって患者には、冠動脈病変を可視化するにあっては侵襲的検査(例えば診断用心臓カテーテル挿入など)が必要となり得る。診断用心臓カテーテル挿入は動脈のサイズおよび形状の画像を医師に提供することにより冠動脈病変に関する解剖学的データを収集するために従来の冠動脈造影(CCA)を実行することを含み得る。一方、CCAは冠動脈病変の機能的重要度を査定するためのデータを提供しない。例えば医師は、病変が機能的に重要であるかどうかを判断しないかぎり、冠動脈病変が有害であるかどうかを診断することはできない。したがってCCAは「oculostenotic reflex」(介入心臓病医の中には、CCAで発見されたあらゆる病変に対して、病変が機能的に重要か否かに関わらず、ステントを挿入する)と呼称される現象をもたらした。その結果としてCCAは、不必要な手術を患者にもたらし得、係る不必要な手術により患者のリスクが増大し得、不必要なヘルスケアコストが患者に対して生じることとなり得る。
【0006】
診断用心臓カテーテル挿入が実施される間、冠動脈病変の機能的重要度は、観察される病変の冠血流予備量比(FFR:fractional flow reserve)を測定することにより非侵襲的に査定され得る。FFRは、(例えばアデノシンの静脈内投与により誘導される)冠動脈血流が最大限に増加された条件下での病変から上流側の平均血圧(例えば大動脈血圧)により除算された病変下流側の平均血圧の比と定義される。この血圧はプレッシャワイヤを患者に挿入することにより測定され得る。したがって判定されたFFRに基づく病変治療の決定は、診断用心臓カテーテル挿入の初期コストおよびリスクが既に生じた後に、なされる。
【0007】
患者の冠動脈脈管構造を評価するための他の技法は、SYNTAXスコア評価システムおよび方法であり、このシステムおよび方法は、冠動脈疾患の複雑度および重大度をスコア評価する技法である。SYNTAXスコアは、患者が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパスグラフト(CABG)を用いて治療されるべきかどうかの判定を支援するために使用される格付け方法である。標準的なSYNTAXスコア評価は、血管造影、一連の質問に対する回答、質問に対する回答に基づいて点数値を割り当てることを介して、患者の冠動脈解剖学を評価することにより実施される。例えば心臓病医は、患者の血管造影図を点検し、例えば各病変の種類、形状、および患者の冠動脈枝における箇所に基づいて、ペナルティ点を割り当て得る。次に、査定された点が合計され、患者に対する単一のSYNTAXスコアが出力される。1つの代表的な実施形態では、スコアが34未満である場合はPCIが適切であり、スコアが34を越える場合はCABGがより良好な出力を生成する可能性が高い。SYNTAXスコアは、患者の冠動脈脈管構造における疾患の複雑度および程度を評価し、最も適切なインターベンションを特定する(例えばPCI対CABG)際に非常に効果的であることが見出されている。SYNTAXスコア評価システムの1つの実施形態はhttp://www.syntaxscore.com/で運用され、同ウェブサイトには、スコア評価のチュートリアル、血管セグメントの定義、およびスコア評価用計算器が含まれ、同ウェブサイトの開示の全体は、参照することにより本願に援用される。
【0008】
著しい利点を有するにも関わらず、SYNTAXスコア評価は従来、血管造影に基づいて実施されるため、侵襲的技法である。さらに、SYNTAXスコア評価は、心臓病医が手動的/視覚的に血管造影図を評価し、長い一連の質問に回答し、各回答に基づいてスコアを割り当てることを要求するものであるため、長時間を要するプロセスとなり得る。加えてSYNTAXスコア評価の結果は心臓病医に依存するものであり、他の心臓病医の認識および/またはスコア評価に比べて1人の心臓病医が血管造影図をどのように認識および/またはスコア評価するかに基づいて、いくぶん異なったものとなり得る。この理由によりSYNTAXスコア評価は、平均SYNTAXスコアを生成するために、数名の心臓病医(例えば3名構成の調査団)により実施されることもある。しかし係る手続は、使用可能なSYNTAXスコアの生成に伴う人時をさらに増大させることとなる。最終的に、従来のSYNTAXスコア評価は通常、特定の病変に関する計算による機能的結果にはまったく関係なく、患者の冠動脈脈管構造全体に基づいて実施される。例えば心臓病医は、SYNTAXスコアに、下流側のFFRに悪影響を及ぼさない病変に対するのペナルティ点を含み得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】URL:http://www.syntaxscore.com/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、冠動脈の解剖学的組織、冠動脈疾患、心筋灌流、および冠動脈血流を非侵襲的に査定するためのシステムおよび方法が必要とされる。加えて、患者の冠動脈脈管構造における疾患の複雑度および程度を非侵襲的に評価し、最も適切なインターベンションを特定すること(例えばPCI対CABG)も必要とされる。加えて、非侵襲的に取得された患者固有のデータに基づいて数値的評価を自動的に実施することにより、患者の冠動脈脈管構造における疾患の複雑度および程度を評価することも必要とされる。患者の冠動脈脈管構造を数値的に評価する際、例えば非侵襲的FFR計算に基づいて病変の機能的影響を組み込むシステムおよび方法も必要とされる。
【0011】
上述の全般的な説明および以下の詳細な説明は、単に代表的且つ説明的であるにすぎず、本開示を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの実施形態によれば、患者に対する心血管スコアを提供するための方法が開示される。この方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、患者の複数の冠動脈の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受け取ること、および、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、複数の冠動脈のうちの少なくとも一部を表現する3次元モデルを患者固有のデータに基づいて作製すること、を含む。この方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、当該モデルにより表現される冠動脈のうちの少なくとも一部の複数の特性を評価すること、および、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、複数の特性の評価に基づいて心血管スコアを生成すること、を含む。
【0013】
他の実施形態によれば、患者に対する心血管スコアを生成するためのコンピュータにより実施される方法が開示される。この方法は、患者の複数の冠動脈の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受け取ること、および患者固有のデータに基づいて複数の冠動脈の少なくとも一部を表現するモデルを作製すること、を含む。この方法は、3次元モデル上で表現される冠動脈の少なくとも一部の複数の特性を評価すること、複数の特性のうちのそれぞれの評価に基づいて複数の特性に数値を割り当てること、および査定された数値の関数として心血管スコアを生成すること、をさらに含む。
【0014】
他の実施形態によれば、患者に対する心血管スコアを提供するための方法が開示される。この方法は、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、患者の複数の冠動脈の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受け取ること、および、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、複数の冠動脈の少なくとも一部を表現する3次元モデルを患者固有のデータに基づいて作製すること、を含む。この方法はさらに、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、冠動脈の少なくとも一部の複数箇所における冠血流予備量比値を計算することと、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、モデルにより表現される冠動脈の少なくとも一部の複数の特性を評価することと、少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、少なくとも所定閾値の冠血流予備量比値を有する冠動脈の部分に対する評価された複数の特性に基づいて心血管スコアを生成することと、を含む。
【0015】
追加的な実施形態および特長は、以下の説明において部分的に説明されるか、または説明から部分的に明らかとなるか、または本開示の実施から理解され得るであろう。実施形態および特長は、以下で特定的に指摘される要素および組み合わせにより具体化および達成されるであろう。
【0016】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付の図面は、いくつかの実施形態を例示し、以下の説明とともに、本開示の原則を説明するものである。
実施形態において、本発明は、例えば、下記の項目を提供する。
(項目1)
患者に対する心血管スコアを提供するための方法であって、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者の複数の冠動脈の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受け取ること、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者固有のデータに基づいて前記複数の冠動脈の少なくとも一部を表現する3次元モデルを作製すること、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記モデルにより表現される前記冠動脈のうちの少なくともいくつかの複数の特性を評価すること、および、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記複数の特性を前記評価することに基づいて、前記心血管スコアを生成すること
を含む、方法。
(項目2)
前記患者固有のデータを受け取ることが非侵襲的撮影モダリティから生成されたデータを受け取ることを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記特性が、左/右の優位性、疾患を有する冠動脈のセグメント(単数または複数)の特定、全体的閉塞の存在、二叉分岐ならびに三叉分岐の存在、弁口病の存在、蛇行の計算、疾患セグメント(単数または複数)の長さの計算、石灰化プラークの寸法の計算、血栓の特定、および汎発性疾患の存在からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記特性が、前記3次元モデルの画像コントラスト、画像輪郭、画像勾配、後処理された画像、画像強度、形状、および体積メッシュのうちの1つまたは複数を解析する前記コンピュータシステムに基づいて評価される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記心血管スコアを生成することが、少なくとも所定閾値の血流特性を有する前記冠動脈の部分に対する複数の特性を評価することにより機能的心血管スコアを生成することを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記機能的心血管スコアを生成することが前記冠動脈のうちの少なくとも1つに対する少なくとも1つの冠血流予備量比値を生成することを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記血流特性が冠血流予備量比値であり、前記所定閾値は0.7〜0.9の範囲内である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記幾何学的形状に関する前記患者固有のデータ以外にいかなる追加的な入力も受け取ることなく実行される、項目1に記載の方法。
(項目9)
患者に対する心血管スコアを生成するためのコンピュータにより実施される方法であって、
前記患者の複数の冠動脈の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受け取ること、
前記患者固有のデータに基づいて前記複数の冠動脈の少なくとも一部を表現するモデルを作製すること、
前記モデル上で表現される前記冠動脈の少なくとも一部の複数の特性を評価すること、
前記複数の特性のうちのそれぞれの前記評価に基づいて前記複数の特性に数値を割り当てること、および、
前記査定された数値の関数として前記心血管スコアを生成すること
を含む、方法。
(項目10)
前記患者固有のデータを受け取ることが非侵襲的撮影モダリティから生成されたデータを受け取ることを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記特性が、左/右の優位性、疾患を有する冠動脈のセグメント(単数または複数)の特定、全体的閉塞の存在、二叉分岐ならびに三叉分岐の存在、弁口病の存在、蛇行の計算、疾患セグメント(単数または複数)の長さの計算、石灰化プラークの寸法の計算、血栓の特定、および汎発性疾患の存在からなる群から選択される、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記特性が、前記3次元モデルの画像コントラスト、画像輪郭、画像勾配、後処理された画像、画像強度、形状、および体積メッシュ、のうちの1つまたは複数を解析する前記コンピュータシステムに基づいて評価される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記心血管スコアを生成することが、少なくとも所定閾値の血流特性を有する前記冠動脈の部分に対する複数の特性を評価することにより機能的心血管スコアを生成することを含む、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記機能的心血管スコアを生成することが、前記冠動脈のうちの少なくとも1つに対する冠血流予備量比値を生成することを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記血流特性が冠血流予備量比値であり、前記所定閾値は0.7〜0.9の範囲内である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記幾何学的形状に関する前記患者固有のデータ以外にいかなる追加的な入力も受け取ることなく実行される、項目9に記載の方法。
(項目17)
患者に対する心血管スコアを提供するための方法であって、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者の複数の冠動脈の幾何学的形状に関する患者固有のデータを受け取ること、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記患者固有のデータに基づいて前記複数の冠動脈の少なくとも一部を表現する3次元モデルを作製すること、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記冠動脈の前記少なくとも一部の複数箇所における冠血流予備量比値を計算すること、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、前記モデルにより表現される前記冠動脈のうちの少なくとも一部の複数の特性を評価すること、および、
少なくとも1つのコンピュータシステムを使用して、少なくとも所定閾値の冠血流予備量比値を有する前記冠動脈の部分に対する前記評価された複数の特性に基づいて前記心血管スコアを生成すること
を含む、方法。
(項目18)
前記特性が、左/右の優位性、疾患を有する冠動脈のセグメント(単数または複数)の特定、全体的閉塞の存在、二叉分岐ならびに三叉分岐の存在、弁口病の存在、蛇行の計算、疾患セグメント(単数または複数)の長さの計算、石灰化プラークの寸法の計算、血栓の特定、および汎発性疾患の存在からなる群から選択される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記所定閾値が、0.7、0.8、および0.9のうちの1つである、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記冠血流予備量比値が前記3次元モデルに基づいて計算され、血流の次数低減モデル、物理ベースモデル、および集中パラメータモデルのうちの1つである、項目17に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】非侵襲的に取得された撮影データを使用して生成された、患者の冠動脈脈管構造の代表的な3次元モデルを示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る患者の冠動脈脈管構造をスコア評価するための代表的なシステムおよびネットワークのブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係る患者の冠動脈脈管構造をスコア評価するための代表的な方法のフローチャートである。
図4】本開示の実施形態に係る特定の患者における冠動脈血流に関する様々な情報を提供するためのシステムの概略図である。
図5】本開示の実施形態に係る特定の患者における冠動脈血流に関する様々な情報を提供するための代表的な方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで代表的な実施形態を詳細に参照し、係る実施形態の例が添付の図面で図示される。可能な場合、図面の全体を通して同一または類似の部分を示すにあたっては同一の参照番号が用いられるであろう。
【0019】
全般に本開示は、患者の解剖学的冠動脈モデルと、所望により、特定の患者内の血流に関する計算によるデータと、の解析に基づいて、患者の冠動脈脈管構造を(例えば患者の冠動脈脈管構造をスコア評価することにより)数値評価することに関する。1つの実施形態では、本開示は、非侵襲的に冠動脈の解剖学的組織、冠動脈疾患、心筋灌流、および冠動脈血流を査定するためのシステムおよび方法に関する。本開示のシステムおよび方法は、心臓病医が患者の冠動脈脈管構造における疾患の複雑度および程度を評価し、最も適切なインターベンションを特定する(例えばPCI対CABG)ことを支援する。したがって、非侵襲的に取得された患者固有のデータを自動的に数値的に評価することにより患者の冠動脈脈管構造における疾患の複雑度および程度を評価するためのシステムおよび方法が開示される。さらに、患者の冠動脈脈管構造を数値的に評価するときに、例えば非侵襲的FFR計算に基づいて、病変の機能的影響を組み込むためのシステムおよび方法が開示される。係るシステムおよび方法は、冠動脈疾患を有することが疑われる患者に対して診断および治療計画を行う心臓病医に、利益をもたらし得る。
【0020】
代表的な実施形態では、特定の患者における血流に関する様々な情報(例えばFFR値)は、患者から非侵襲的に取得された情報を使用して計算される。係る計算を実施するためのシステムおよび方法の様々な実施形態については、2011年1月25日に出願された「Method and System for Patient−Specific Modeling of Blood Flow」を発明の名称とする米国特許出願第13/013,561号により詳細に説明されている。なお同特許は本願の譲受人に譲渡され、同特許の全体は参照されることにより本願に援用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示に係るシステムおよび方法により判定される情報は患者の冠動脈脈管構造内の血流に関し得る。代替的に、係る判定される情報は、患者の脈管構造の他の領域(例えば頸動脈血管系、末梢血管系、腹部血管系、腎血管系、および脳血管系)における血流に関し得る。冠動脈脈管構造は、大動脈から細動脈、毛細管、細静脈、静脈、その他までの範囲の複雑な網状組織の血管を含む。図1は、複数の冠動脈主幹部4(例えば左前下行枝(LAD)、左回旋枝(LCX)、右冠動脈(RCA)、その他)に血液を供給する大動脈2を含む、血液を心臓へと循環させ心臓内で循環させる冠動脈脈管構造の1部分に関するモデル220を図示する。冠動脈脈管構造はさらに、動脈の分岐または大動脈2から下流側の他種類の血管に、および冠動脈主幹部4に、分割され得る。したがって代表的なシステムおよび方法は、大動脈、冠動脈主幹部、および/または、冠動脈主幹部から下流側に位置する他の冠動脈もしくは血管内の血流に関する様々な情報を判定し得る。大動脈および冠動脈(ならびに、冠動脈から延長する分岐)について以下で論じるが、本開示に係るシステムおよび方法は他種類の血管にも適用が可能である。
【0022】
代表的な実施形態では、本開示に係るシステムおよび方法により判定される情報は、冠動脈主幹部および/または他の冠動脈もしくは冠動脈主幹部から下流側に位置する血管の様々な箇所における血流速度、血圧(またはその比)、流速、およびFFRなどの様々な血流特性またはパラメータを含み得るがこれらに限定されない。この情報は、病変が機能的に重要であるかどうか、および/または、病変を治療すべきかどうか、を判定するために使用され得る。この情報は、患者から非侵襲的に取得された情報を使用して判定され得る。その結果として、病変を治療するかどうか、如何に治療するかの判定は、侵襲的処置に関連付けられたコストおよびリスクなしに行われ得る。
【0023】
図2は、血管の幾何学的形状、生理学的情報、および/または血流の情報から、患者の冠動脈脈管構造をスコア評価するための代表的なシステムおよびネットワークのブロック図を図示する。特に図2は複数の医師202および第三者提供者204を図示し、医師202および第三者提供者204のうちのいずれもが、1つまたは複数のコンピュータ、サーバ、および/またはハンドヘルド型モバイル装置を通してインターネットなどの電子ネットワーク200に接続され得る。医師202および/または第三者提供者204は、図3に関して以下で説明する用に、1名または複数名の患者の心臓系および/または血管系の画像を作製または別様に取得し得る。医師202および/または第三者提供者204は、年齢、病歴、血圧、血液粘度、その他などの、患者固有の情報の任意の組み合わせも取得し得る。医師202および/または第三者提供者204は、電子ネットワーク200を通して心臓/血管の画像および/または患者固有の情報をコンピューティングシステム206に伝送し得る。コンピューティングシステム206は、医師202および/または第三者提供者204から受け取った画像およびデータを格納するためのストレージ装置を含み得る。コンピューティングシステム206は本明細書で開示する方法にしたがってストレージ装置に格納された画像およびデータを処理するための処理装置も含み得る。
【0024】
図3は、本開示の代表的な実施形態にしたがって血管の幾何学的形状、生理学的情報、および/または血流情報のモデルから患者の冠動脈脈管構造を数値的に評価(すなわちスコア評価)するための代表的な方法300のブロック図である。さらに詳細には方法300は、患者の冠動脈脈管構造における疾患の複雑度および程度を非侵襲的に評価し、最も適切なインターベンションを特定する(例えばPCI対CABG)ことを含む。1つの実施形態では、方法300は、患者の冠動脈脈管構造を数値的に評価する際に、例えば非侵襲的FFR計算に基づいて、病変の機能的影響を組み込む。1つの実施形態では、図3の方法は、電子ネットワーク200を通して医師202および/または第三者提供者204から受け取られた情報に基づいて、コンピューティングシステム206により実行され得る。
【0025】
図3に示すように、方法300は患者固有の解剖学的データを受け取ることを含み得る(ステップ302)。例えば患者の解剖学的組織(例えば大動脈の少なくとも1部分、および大動脈に接続された冠動脈主幹部の近位部分(ならびに主幹冠動脈から延長する分岐))に関する情報が受け取られ、前処理され得る。患者固有の解剖学的データは以下で説明するように例えばCCTAにより非侵襲的に取得され得る。
【0026】
1つの実施形態ではステップ302はまず患者を選択することを含み得る。例えば患者は、患者が冠動脈疾患に関連付けられた徴候(例えば胸部疼痛、心臓発作、その他)を経験している場合に医師が患者の冠動脈血流に関する情報を取得することが望ましいと判定したとき、医師により選択され得る。
【0027】
患者固有の解剖学的データは、患者の心臓(例えば、患者の大動脈の少なくとも1部分、大動脈に接続された冠動脈主幹部の近位部分(ならびに冠動脈主幹部から延長する分岐)、および心筋)の幾何学的形状に関するデータを含み得る。患者固有の解剖学的データは例えば非侵襲的な撮影方法を使用して非侵襲的に取得され得る。例えばCCTAは、ユーザがコンピュータ断層撮影(CT)スキャナを操作して、ユーザが例えば心筋、大動脈、冠動脈主幹部、および冠動脈主幹部に接続された他の血管などの構造体を閲覧し、係る構造体の画像を作製する、撮影方法である。CCTAデータは経時変化し得、例えば心周期を通して血管形状の変化を示す。CCTAは、患者の心臓の画像を生成するために使用され得る。例えば患者の心臓のスライスに関するデータである64スライスCCTAデータが取得され、3次元画像に組み立てられ得る。
【0028】
代替的に、磁気共鳴映像法(MRI)または超音波(US)または侵襲的撮影方法(例えばデジタル差引血管造影法(DSA))などの他の非侵襲的な撮影方法が、患者の解剖学的組織の構造体に関する画像を生成するために使用され得る。これらの撮影方法は、解剖学的組織の構造体を特定することが可能となるよう、患者に造影剤を経皮的に注入することを伴い得る。結果的に生成される撮影データ(例えばCCTA、MRI、その他により提供される)は、放射線研究所または心臓病医などのサードパーティベンダにより、患者の医師、その他により、提供され得る。
【0029】
他の患者固有の解剖学的データも、患者から非侵襲的に判定され得る。例えば患者の血圧、基準心拍数、身長、体重、ヘマトクリット値、拍出量、その他などの生理学的データが測定され得る。血圧は、(例えば血圧計カフを使用して)患者の上腕動脈内の血圧(例えば最高(収縮期)血圧および最低(拡張期)血圧など)であり得る。
【0030】
上述のように取得された患者固有の解剖学的データは、セキュリティ保護された通信ライン(例えばネットワーク200)を通して伝達され得る。例えばデータは計算解析を実施するためにサーバまたは他のコンピュータシステム206に伝達され得る。代表的な実施形態ではデータは、ウェブベースのサービスを提供するサービスプロバイダにより運用されるサーバまたはコンピュータシステムに伝達され得る。代替的にデータは、患者の医師または他のユーザにより運用されるコンピュータシステムに伝達され得る。伝達されたデータは、データが許容可能であるかどうかを判定するために点検され得る。係る判定は、ユーザにより、および/またはコンピュータシステムにより、実行され得る。例えば伝達されたデータ(例えばCCTAデータおよび他のデータ)は、例えばCCTAデータが完全であり(例えば大動脈および冠動脈主幹部の十分な部分を含み)、正しい患者に対応するものであるかを判定するために、ユーザにより、および/またはコンピュータシステムにより、検証され得る。
【0031】
伝達されたデータ(例えばCCTAデータまたは他のデータ)に対して、前処理および査定も実施され得る。前処理および/または査定は、ユーザおよび/またはコンピュータシステムにより実施され、例えばCCTAテータ内の位置ずれ、不一致、または不鮮明箇所に対するチェック、CCTAデータ内で図示されるステントに対するチェック、内腔または血管の視覚化を妨害する他のアーチファクトに対するチェック、構造体(例えば大動脈、冠動脈主幹部、および他の血管)と患者の他の部分との間に十分なコントラストが存在するかどうかのチェック、その他、を含み得る。
【0032】
伝達されたデータが評価されると、上述の検証、前処理、および/または査定に基づいて、データが許容可能であるかどうかの判定がなされ得る。上述の検証、前処理、および/または査定が行われる間、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、データに関する特定のエラーまたは問題を修正することが可能である。しかしエラーまたは問題が多すぎる場合、データは許容不能であると判断され得、ユーザおよび/またはコンピュータシステムは、エラーまたは問題のために、伝達されたデータの拒絶が必要となった旨を説明する拒絶レポートを生成し得る。所望により、新規CCTAスキャンが実行され得、および/または、上述の生理学的データが患者から再度測定され得る。伝達されたデータが許容可能であると判定された場合、この方法は、以下で説明する3次元モデルを生成するためにステップ304に進行し得る。
【0033】
次に、図3に図示するように方法300は、取得された患者固有の解剖学的データに基づいて患者の解剖学的組織の3次元モデルを生成することを含み得る(ステップ304)。代替的な実施形態として、より低い次元のモデル(例えば血管サイズおよび血管の長さを符号化するアルゴリズムと組み合わされた血管の1次元モデルなど)も使用され得ることが理解されるであろう。
【0034】
1つの実施形態によれば、冠動脈血管の3次元モデルは受け取られたCCTAデータを使用して生成され得る。図1はCCTAデータを使用して生成された3次元モデル220の表面の1例を図示する。例えばモデル220は、例えば、大動脈の少なくとも1部分、大動脈の当該部分に接続された1つまたは複数の冠動脈主幹部の少なくとも近位部分、冠動脈主幹部に接続された1つまたは複数の分岐の少なくとも近位部分、その他、を含み得る。大動脈、冠動脈主幹部、および/または分岐のモデル化された部分は相互接続され、いずれの部分もモデル220の他の部分から分離されないよう、樹状となり得る。モデル220を生成するプロセスはセグメント化と呼称され得る。
【0035】
1つの実施形態ではコンピュータシステム206は、大動脈の少なくとも1部分および心筋(または他の心臓組織もしくはモデル化される大動脈に接続される他の組織)を自動的にセグメント化し得る。心筋または他の組織もステップ302で受け取られたCCTAデータに基づいてセグメント化され得る。例えばコンピュータシステムは、CCTAデータから生成された3次元画像または係る画像のスライスをユーザに表示し得る。コンピュータシステムは、大動脈に接続された冠動脈主幹部の少なくとも1部分もセグメント化し得る。代表的な実施形態ではコンピュータシステムは、ユーザが、冠動脈主幹部をセグメント化するために1つまたは複数の冠動脈基部または開始点を選択することを可能にし得る。
【0036】
セグメント化は様々な方法を使用して実施され得る。1つの実施形態ではセグメント化は閾値に基づくセグメント化、縁部に基づくセグメント化、グラフ理論、機械学習方法、またはこれらの方法の組み合わせに基づいて、実施され得る。セグメント化は、ユーザ入力に基づいて、または、ユーザ入力なしに、コンピュータシステムにより自動的に、実施され得る。例えば代表的な実施形態では、ユーザは第1初期モデルを生成するためにコンピュータシステムに入力を提供し得る。3次元画像は明度の強度が異なる部分を含み得る。例えば、より明るい領域は大動脈、冠動脈主幹部、および/または分岐の内腔を示し得る。より暗い領域は心筋および患者の心臓の他の組織を示し得る。表面の場所は、CCTAデータにおける心臓の他の構造体と比較したコントラスト(例えば相対的な明暗)および心筋の形状に基づいて、判定され得る。このようして心筋の幾何学的形状が判定され得る。例えば、CCTAデータを解析することにより、心筋の内部表面および外部表面(例えば左心室および/または右心室)の場所が判定され得る。
【0037】
大動脈、心筋、および/または冠動脈主幹部のセグメント化は、必要に応じて点検および/または修正され得る。点検および/または修正は、コンピュータシステムおよび/またはユーザにより、実施され得る。例えば代表的な実施形態では、コンピュータシステムが自動的にセグメント化を点検し、エラーが存在した場合(例えばモデル220において大動脈、心筋、および/または冠動脈主幹部のいずれかの部分が欠落するかまたは不正確である場合)、ユーザが手動でセグメント化を修正し得る。3次元モデルの生成はさらに、3次元モデルに基づいて患者の解剖学的組織の以下の特性のうちの1つまたは複数を特定または生成することを伴い得る。
【0038】
1つの実施形態では心筋質量は、例えばコンピュータシステムがモデル220を解析することにより、計算され得る。例えば心筋容積が、上述のように判定された心筋表面の箇所に基づいて計算され得、このようにして計算された心筋容積と心筋の密度とを乗算すると、心筋質量が求められ得る。心筋の密度は事前設定されてもよく、または計算されてもよい。
【0039】
1つの実施形態では、モデル220の様々な血管(例えば大動脈、冠動脈主幹部、その他)の中心線も例えばコンピュータシステムにより判定され得る。代表的な実施形態ではこの判定は、コンピュータシステムがモデル220における表面、形状、およびコントラストを解析することにより、自動的に実施され得る。中心線は、コンピュータシステムおよび/またはユーザにより、必要に応じて点検および/または修正され得る。例えば代表的な実施形態では、コンピュータシステムが自動的に中心線を点検し、エラーが存在した場合(例えば中心線が欠落するかまたは不正確であった場合)、ユーザが手動で中心線を修正し得る。
【0040】
1つの実施形態では、カルシウムまたはプラーク(血管に狭窄を生じさせる)は例えばコンピュータシステムにより検出され得る。代表的な実施形態では、コンピュータシステムは、モデル220における表面およびコントラストを解析することによりプラークを自動的に検出し得る。例えば3次元画像内で検出されたプラークはモデル220から除外され得る。プラークは、大動脈、冠動脈主幹部、および/または分岐の内腔よりも、より明るい領域またはより暗い領域として表示されるため、3次元画像内での特定が可能である。したがってプラークは、設定値より高い強度値を有するものとして、または設定値より低い強度値を有するものとして、コンピュータシステムにより検出されてもよく、またはユーザにより視覚的に検出されてもよい。形状情報、学習アルゴリズム、および画像解析も、プラークを検出およびセグメント化するために使用され得る。プラークの検出後、コンピュータシステムは、プラークが血管内の内腔または開放空間としてみなされることがないよう、モデル220からプラークを除外し得る。代替的にコンピュータシステムは、大動脈、冠動脈主幹部、および/または分岐と異なる色、形状、または他の視覚的指標を使用してモデル220上でプラークを指示し得る。
【0041】
1つの実施形態では検出済みのプラークは例えばコンピュータシステムにより自動的にセグメント化され得る。例えばプラークはCCTAデータに基づいてセグメント化され得る。CCTAデータを解析すると、プラーク(またはプラークの表面)の位置決めが、CCTAデータにおける心臓の他の構造体と比較したプラークのコントラスト(例えば相対的な明暗)に基づいて、可能となり得る。このようにしてプラークの幾何学的形状も判定され得る。プラークのセグメント化は、コンピュータシステムおよび/またはユーザにより、必要に応じて点検および/または修正され得る。例えば代表的な実施形態では、コンピュータシステムが自動的にセグメント化を点検し、エラーが存在した場合(例えばプラークが欠落するかまたは不正確に示された場合)、ユーザが手動でセグメント化を修正し得る。
【0042】
1つの実施形態では、冠動脈主幹部に接続された分岐は例えばコンピュータシステムにより自動的にセグメント化され得る。例えば分岐は冠動脈主幹部をセグメント化するための同様の方法を使用してセグメント化され得る。コンピュータシステムは、セグメント化された分岐におけるプラークも自動的にセグメント化し得る。代替的に分岐(および分岐に含まれるプラーク)は冠動脈主幹部と同時にセグメント化され得る。分岐のセグメント化は、コンピュータシステムおよび/またはユーザにより、必要に応じて点検および/または修正され得る。例えば代表的な実施形態では、コンピュータシステムが自動的にセグメント化を点検し、エラーが存在した場合(例えばモデル220において分岐のいずれかの部分が欠落するかまたは不正確であった場合)、ユーザが手動でセグメント化を修正し得る。
【0043】
1つの実施形態ではコンピュータシステムはモデル220の分岐を1つまたは複数の以下の定義されたセグメント(上述したhttp://www.syntaxscore.comにおいて定義される)にセグメント化し得る。
1 RCA近位
弁口から心鋭縁までの半分の距離まで。
2 RCA中央
第1セグメントの端部から心鋭縁まで。
3 RCA遠位
心鋭縁から後下行枝の始点まで。
4 後下行枝
後室間溝内で走行する。
16 RCAから後外側
心臓十字から遠位にある遠位冠動脈から発する後外側枝。
16a RCAから後外側
セグメント16からの第1後外側枝。
16b RCAから後外側
セグメント16からの第2後外側枝。
16c RCAから後外側
セグメント16からの第3後外側枝。
5 左主幹
LCAの弁口から分岐点を通って左前下行枝および左回旋枝に。
6 LAD近位
第1中隔枝の近位および第1中隔枝を含む。
7 LAD中央
第1中隔枝の始点から直接的に遠位に位置し、LADが角度をなす(右前斜位図)地点まで延長する、LAD。この角度が特定不能である場合、セグメントは第1中隔枝から心尖までの半分の距離の地点で終了する。
8 LAD尖端部
LADの末端部で、以前のセグメントの端部から始まり、心尖に向かって延長し、心尖を越えて延長する。
9 第1対角枝
セグメント6または7から発する第1対角枝。
9a 第1対角枝a
セグメント8の前でセグメント6または7から発する追加的な第1対角枝。
10 第2対角枝
セグメント8から発する第2対角枝またはセグメント7とセグメント8との間の遷移。
10a 第2対角枝a
セグメント8から発する追加的な第2対角枝。
11 近位旋回
左主幹部の始点から、第1鈍縁枝の始点までの、第1鈍縁枝の始点を含む、旋回枝の主幹。
12 中間/前外側
近位LADまたはLCX以外の三叉分岐左主幹からの分岐。旋回枝の領域に属する。
12a 鈍縁枝a
心臓の鈍縁枝の領域におおよそ向かって走行する旋回枝の第1側枝。
12b 鈍縁枝b
12と同一方向に走行する旋回枝の第2追加的側枝。
13 遠位旋回
最も遠位にある鈍縁枝の始点に対して遠位にあり、後方左房室溝に沿って走行する、旋回枝の主幹。内径は小さい場合もあり、または動脈が存在しない。
14 左後外側
左心室の左後外側表面に向かって走行する。不在であり得るか、または鈍縁枝の区分であり得る。
14a 左後外側a
14から遠位にあり、同一方向に走行する。
14b 左後外側b
14および14aから遠位にあり、同一方向に走行する。
15 後下行
存在する場合、主要左回旋枝の最遠位部分。中隔枝の始点である。この動脈が存在する場合、セグメント4は通常、不在である。
【0044】
モデル220は、位置ずれ、ステント、または他のアーチファクトが(例えばCCTAデータの点検中に)見出された場合、ユーザにより、および/またはコンピュータシステムにより、修正され得る。例えば、位置ずれ(misregistration)または他のアーチファクト(例えば、不一致、不鮮明箇所、内腔の可視性に影響を与えるアーチファクト、その他)が見出された場合、モデル220は、血管の断面領域における擬似的または虚偽的な変化(例えば擬似的な狭窄)を回避するために、点検および/または修正され得る。ステントが見出された場合、モデル220は、ステントの箇所を示すために、および/またはステントが見出された血管の断面積を、例えばステントのサイズに基づいて、修正するために、点検および/または修正され得る。
【0045】
モデル220のセグメント化が許容可能であると独立的に検証された場合、所望によりモデル220は出力および平滑化され得る。平滑化は、ユーザにより、および/またはコンピュータシステムにより、実施され得る。例えば隆起、先端、または他の不連続的部分が平滑化され得る。モデル220は、計算解析、その他に対する準備をするために、別個のソフトウェアモジュールに出力され得る。
【0046】
3次元モデルが生成されると、方法300はさらに、生成されたモデルの解析に基づいて、患者の冠動脈脈管構造を評価する(ステップ306)ことを含み得る。図3に図示するように、患者の冠動脈脈管構造の評価された特性は、(i)左/右冠動脈優位の特定、(ii)閾値パーセントの狭窄を有するセグメントの特定、(iii)閉塞の特定、(iv)二叉分岐/三叉分岐の特定、(v)弁口病(ostial bisease)の特定、(vi)血管蛇行の計算、(vii)疾患セグメントの長さの計算、(viii)石灰化プラークの寸法の計算、(ix)血栓の特定、および/または(x)汎発性疾患を有するセグメントの特定、を含む、特性350のうちの1つまたは複数を含み得る。代表的な特定された特性350に関わらず、評価ステップ306は、心血管の複雑度および/または疾患の程度をスコア評価することに関連する患者の冠動脈脈管構造の任意の他の特性を評価することを含み得る。
【0047】
一般に評価ステップ306は、特性350のうちの1つまたは複数を評価することと、各特性の評価に基づいて1つまたは複数の数値または「点数」を査定することと、を含み得る。例えば1つの実施形態では、評価ステップ306は、患者の冠動脈脈管構造の左側または右側が優位であるかどうかを判定することを含み得る。例えば、コンピュータシステム206は、モデル220を解析し、それにより血管サイズおよびトポロジー構造を判定し得、結果的に生成されたデータを処理し、それにより、もし存在するならば、左または右の優位が存在するかどうかを特定し得る。1つの実施形態では、コンピュータシステム206は患者の後下行枝(PDA)に標識付けし、患者の弁口までPDAを追跡する。弁口においてPDAは左回旋枝(LCX)(冠動脈は左優位であることを意味する)と、または右冠動脈(RCA)(冠動脈は右優位であることを意味する)と、分岐する。コンピュータシステム206は、モデル220における心室ランドマークと、「血管応答」(すなわちモデル化された形状がが通常の血管に対してどの程度類似するか)と、に基づいてPDAを検出し得る。機械学習アルゴリズムも、血管サイズおよび位置に基づいて左/右のいずれが優位であるかを確立するために、患者の解剖学的組織と他の患者のデータベースとを比較するために使用され得る。1つの実施形態では、コンピュータシステムは、遠位血管サイズに基づいて優位を特定する。すなわち、これにより、遠位RCAがLCXと比較して1.5mmまたは他の何らかの閾値だけ小さい場合、患者は左優位である。逆に所定サイズの近位RCAサイズは右側優位であることを示し得る。次に、コンピュータシステム206は、左または右の優位に基づいて、および/または特定された左または右の優位の程度に基づいて、1つまたは複数の点数を割り当て得る。左または右の優位は、構築された冠動脈トポロジーの接続解析を基礎にして自動的に判定され得る。例えばPDAがRCAと接続される場合には組織は右優位であると分類され、PDAが回旋枝と接続される場合には組織は左優位であると分類され得る。
【0048】
評価ステップ306は疾患を有するセグメントを特定することも含み得る。例えばコンピュータシステム206は、モデル220を解析し、それにより、例えば所定の閾値パーセントの狭窄を有するセグメントの特定に基づいて、どのセグメントが1つまたは複数の病変を含むかを判定する。コンピュータシステム206は画像コントラストに基づいて、または任意の他の好適な技法に基づいて、病変を特定し得る。1つの実施形態ではコンピュータシステム206は、セグメントが血管中心線と較べて輪郭における50%以上の差異を有するならば、狭窄を示すものとしてセグメントを特定し得る。狭窄病変は、数値微分により中心線に沿って断面積曲線の最小箇所を計算することにより、自動的に特定され得る。断面積曲線は、面積曲線におけるノイズ成分を排除するために、微分演算を行う前に(例えばフーリエ平滑化により)平滑化され得る。コンピュータシステムは、特定されたプラークセグメントを血管中心線に投影することにより、病変セグメントを特定し得る。機械学習は、プラークで標識付けされた区域と専門家の注釈付きデータのデータベースとを比較して、狭窄を格付けする信頼度が50%超であることまたは50%未満であることを判定するためにも、用いられ得る。次にコンピュータシステム206は、任意の疾患セグメントに基づいて、1つまたは複数の点数を割り当て得る。1つの実施形態では点数は、所与のセグメントに含まれる病変の個数、特定された病変の種類、および/または病変を含むセグメントの箇所または同定に基づいて、査定得る。例えば、重要度が低い血管セグメントとは対照的に、重要な血管セグメントにおける病変には、より大きい点数が割り当てられ得る。
【0049】
評価ステップ306は閉塞を特定することも伴い得る。例えばコンピュータシステム206はモデル220を解析することにより、閉塞地点を越えると腔内順行性血流を有さない(TIMI0)セグメントまたは領域を特定し得る。次にコンピュータシステム206は、任意の特定された閉塞に基づいて、1つまたは複数の点数を割り当て得る。アルゴリズムは、血管におけるコントラストの落下を探し、内腔コントラストが少なくとも最小距離に対して低下する地点を検出し得る。1つの実施形態では点数は、閉塞を含むセグメントの箇所または同定に基づいて、査定され得る。例えば、重要度が低い血管セグメントとは対照的に、重要な血管セグメントにおける閉塞には、より大きい点数が割り当てられ得る。コンピュータシステム206は、閉塞の種類(例えば鈍角的基部(blunt stump)、橋渡し側副路(bridging collateral)、その他)に基づいて、査定された点数を特定および調節し得る。閉塞は、中心線に沿って強度(ハウンズフィールド単位)変化を解析することにより自動的に特定され得る。例えば強度値が特定の閾値より低く急激に低下する場合、冠動脈に沿った位置が閉塞として分類され得る。強度変化の傾斜および強度の大きさがこの計算において利用され得る。
【0050】
評価ステップ306は患者の脈管構造における二叉分岐または三叉分岐を特定することも含み得る。二叉分岐は、1つの主要な親枝が少なくとも1.5mmの2つの娘枝に分割されることであるとみなされ得る。二叉分岐病変はメディナ分類(Medina classification)によれば、近位主血管、遠位主血管、および側枝を含み得る。2つの娘枝のうちの小さいほうが「側枝」と呼称されるべきである。主幹の場合、LCXまたはLADがそれぞれの直径に応じて側枝と呼称され得る。1つの実施形態では、二叉分岐は以下のセグメント接合部すなわち5/6/11、6/7/9、7/8/10、11/13/12a、13/14/14a、3/4/16、および13/14/15に対してのみ、スコア評価され得る。三叉分岐は、1つの主枝が少なくとも1.5mmの3つの枝に分割されることであるとみなされ得る。1つの実施形態では、三叉分岐は以下のセグメント接合部すなわち3/4/16/16a、5/6/11/12、11/12a/12b/13、6/7/9/9a、および7/8/10/10aに対してのみ、スコア評価され得る。次にコンピュータシステム206は、任意の二叉分岐または三叉分岐の特定に基づいて、および係る特徴を含む任意の欠陥セグメントの同定または箇所に基づいて、点数を査定し得る。1つの実施形態ではコンピュータシステム206は、二叉分岐/三叉分岐と直接的に接触する50%以上の直径狭窄を有するセグメント数の二叉分岐/三叉分岐に対してのみ、点数を査定し得る。二叉分岐/三叉分岐は、構築された冠動脈中心線の接合部において球体(半径〜親血管半径)を有する交差部分の個数を計数することにより、自動的に特定され得る。例えば3つの交差部分が存在する場合、接合部は二叉分岐である一方で、4つの交差部分が存在する場合、接合部は三叉分岐である。
【0051】
評価ステップ306は、弁口病の存在を特定することも伴い得る。特に、コンピュータシステム206は、モデル220からの画像データを処理することにより、患者の大動脈に混合する狭窄を、または弁口からの所定距離内の狭窄を、例えば輪郭を使用することにより、特定し得る。弁口病は、血管断面積を評価することにより、または弁口位置付近におけるプラークの存在を解析することにより、自動的に特定することが可能である。次に、コンピュータシステム206は任意の弁口病の特定に基づいて点数を査定し得、任意の血管セグメントの同定または箇所を記録し得る。コンピュータシステム206は、任意の特定された弁口病の特定された重大度または箇所に基づいて、査定された点数を調節し得る。
【0052】
評価ステップ306は重大な蛇行を有する血管セグメントを特定することも含み得る。例えばコンピュータシステム206は、上述した特定された血管中心線に基づいて、患者の冠動脈血管の曲率を計算し得る。コンピュータシステム206は1つまたは複数の点数を、所定レベルの曲率を有する(例えば疾患セグメントの近位における90度以上の湾曲、または45〜90度の3つ以上の湾曲など)血管セグメントに対して査定し得る。湾曲の個数は、十分に大きい間隔サイズ(例えば血管の直径の3倍または5倍)における中心線の接線ベクトル間の角度を計算することにより、自動的に査定され得る。次にコンピュータシステム206は、任意の重大な蛇行の特定に基づいて点数を査定し、係る重大な蛇行を含む任意の血管セグメントの同定または箇所を記録し得る。コンピュータシステム206は、任意の特定された重大な蛇行の特定された重大度または箇所に基づいて、査定された点数を調節し得る。
【0053】
評価ステップ306は、任意の特定された疾患セグメントの長さを計算することを含み得る。1つの実施形態ではコンピュータシステム206はモデル220を解析し、それにより、病変が最も長いと思われる突起において内腔直径の50%以上が短縮される、狭窄の任意の部分の長さを特定し得る。次に、コンピュータシステム206は任意の疾患セグメントのの特定された長さに基づいて点数を査定し得、所定閾値の長さの狭窄を含む任意の疾患セグメントの同定または箇所を記録し得る。コンピュータシステム206は、任意の特定された疾患セグメントの長さおよび/または箇所に基づいて、査定された点数を調節し得る。
【0054】
評価ステップ306は、任意の特定された石灰化プラークの寸法を計算することも含み得る。1つの実施形態ではコンピュータシステム206はモデル220を解析し、それにより、狭窄領域内の任意の石灰化プラークの体積および長さを特定し得る。コンピュータシステム206は代替的または追加的に、モデル220を解析し、それにより特定された石灰化プラークおよび近傍の内腔を取り囲む表面積を特定し得、および/または特定された狭窄領域内の係る表面積の比を特定し得る。次にコンピュータシステム206は、任意の特定された石灰化プラークの寸法に基づいて点数を査定し、任意の特定された石灰化プラークの箇所または寸法を記録し得る。コンピュータシステム206は、任意の特定された石灰化プラークの箇所または寸法に基づいて、査定された点数も調節し得る。特定された石灰化プラークの長さは、プラークセグメントを中心線に投影することにより、自動的に判定され得る。プラークの実効断面積は、プラーク体積を計算された長さで除算することにより計算され得る。
【0055】
評価ステップ306は、血栓の存在を特定することも含み得る。特にコンピュータシステム206はモデル220からの画像データを処理し、それにより例えば輪郭、コントラスト、その他を使用することにより血栓を特定し得る。次に、コンピュータシステム206は任意の血栓の特定に基づいて点数を査定し得、係る血栓を含む任意の血管セグメントの同定または箇所を記録し得る。コンピュータシステム206は、任意の特定された結線の特定された重大度および箇所に基づいて、査定された点数を調節し得る。しかし1つの実施形態では血栓は他の開示された特性350よりもより小さい重みが加えられるか、または心血管スコアから完全に省略され得る。
【0056】
評価ステップ306は任意の汎発性疾患を特定することも含み得る。1つの実施形態ではコンピュータシステム206はモデル220を解析し、それにより特定された狭窄セグメント内の輪郭から、または係る狭窄セグメント付近の輪郭から、平均血管サイズを計算し得る。例えばコンピュータシステム206は、領域の75%を越える部分が平均直径において2mm未満である場合、汎発性疾患を示すものとして狭窄セグメントを特定し得る。次にコンピュータシステム206は、任意の特定された汎発性疾患の程度に基づいて点数を査定し、汎発性疾患を有する任意の特定されたセグメントの箇所または寸法を記録し得る。コンピュータシステム206は、汎発性疾患を有する任意の特定されたセグメントの箇所または寸法に基づいて、査定された点数も調節し得る。
【0057】
したがって評価ステップ306は、1つまたは複数の特性350の特定および/または計算と、これらの特性350の各特定、計算、程度、および/または箇所に基づく、患者に対する1つまたは複数の点数の査定と、を含み得る。次いで評価ステップ306の後、評価された特性および査定された点数のうちの1つまたは複数に基づいて患者の心血管スコアを生成することが実施される(ステップ308)。例えばコンピュータシステム206は、ステップ306において評価された特性および/または査定された点数に対してアルゴリズムを実行することにより、患者の心血管スコアを生成し得る。1つの実施形態では患者の心血管スコアは、ステップ306で特性を評価するときに査定された全点数を合計することにより、生成され得る。例えばコンピュータシステム206は、(i)左/右冠動脈優位の特定、(ii)閾値パーセントの狭窄を有するセグメントの特定、(iii)閉塞の特定、(iv)二叉分岐/三叉分岐の特定、(v)弁口病の特定、(vi)蛇行の計算、(vii)疾患セグメントの長さの計算、(viii)石灰化プラークの寸法の計算、(ix)血栓の特定、および/または(x)汎発性疾患を有するセグメントの特定、のうちの1つまたは複数に対して査定された全点数を合計し得る。
【0058】
1つの実施形態では、単一の生成された心血管スコアは、生成されたスコアが何らかの所定スコアよりも小さい場合にはPCIが適切な特定されたインベンションとなり得、スコアが何らかの所定スコアより大きい場合にはCABGが適切な特定されたインベンションとなり得るよう、重み付けまたは正規化がなされ得る。1つの実施形態では生成された心血管スコアは、心臓病医または他のユーザに対して、コンピュータシステム206に接続されたディスプレイ装置を通して表示され得る。代替的または追加的に、生成された心血管スコアは電子ネットワーク200を通して心臓病医または他のユーザに伝達され得る。
【0059】
1つの実施形態では、ステップ308で生成された心血管スコアは、上述したSYNTAXスコア技法に対応するよう、重み付けまたは正規化がなされ得る。例えば、生成された心血管スコアは、生成されたスコアが34より小さい場合にはPCIが適切な特定されたインターベンションとなり、スコアが34より大きい場合にはCABGが適切な特定されたインターベンションとなり得るよう、重み付けまたは正規化がなされ得る。
【0060】
1つの実施形態では、ステップ308で生成された患者の心血管スコアは、血流または血圧に対する各病変またはセグメントの機能的重要度には関わりなく、患者の冠動脈脈管構造全体に基づいて計算され得る。係る心血管スコアは「解剖学的心血管スコア」と呼称され得る。一方、上述のように特定的な状況では、機能的に重要な病変または特性350に関する点数のみが、生成された心血管スコアに組み込まれることが有利となり得る。例えば軽微な狭窄の領域が血流の低下または下流側血圧の低下に寄与しない場合、係る領域に関連付けられた点数は、生成された心血管スコアに算入を避けるほうがが望ましいであろう。係る心血管スコアは「機能的心血管スコア」と呼称され得る。
【0061】
したがって1つの実施形態では、方法300は、患者の冠動脈脈管構造の複数箇所においてFFR値を計算することも含み得る(ステップ312)。次に方法300は、所定閾値レベルのFFR値を有する箇所のサブセットに対して評価された特性に基づいて患者の心血管スコア(すなわち、「機能的心血管スコア」)を生成することも含み得る(ステップ310)。例えば1つの実施形態では、少なくとも1つのFFR値が、患者の冠動脈脈管構造の各セグメントに対して計算され得る。患者の心血管スコアは、何からの所定閾値より低いFFR値を有する血管セグメントに対して査定された点数のみに基づいて計算され得る。代替的な実施形態では、FFR値以外の機能値が、機能的に重要な血管セグメントに対してのみスコア評価を実行するために使用され得る。例えば心筋灌流、流速、その他が、その特性が心血管スコアに組み込まれ得る血管セグメントを選別するために、考慮および使用され得る。1つの実施形態では、機能的重要度閾値を有するセグメントのみに基づいて心血管スコアを生成することに代わって、解剖学的(すなわち脈管構造全体)スコアは、機能的重要度閾値を満足しないこれらのセグメントを既存の計算から除外することにより、変更され得る。
【0062】
1つの実施形態では、患者の心血管スコアは、0.9より低いFFR値を有する血管セグメントに対して査定された点数のみに基づいて計算され得る。1つの実施形態では、患者の心血管スコアは、0.8より低いFFR値を有する血管セグメントに対して査定された点数のみに基づいて計算され得る。1つの実施形態では、患者の心血管スコアは、0.7より低いFFR値を有する血管セグメントに対して査定された点数のみに基づいて計算され得る。このように患者の心血管スコアは、患者の冠動脈脈管構造の機能不全に実際的に寄与する血管セグメントのみに基づいて計算され得る。上述のように、係る患者の心血管スコアのいずれもが、「機能的心血管スコア」と呼称され得る。
【0063】
FFR計算ステップ312が既知の方法にしたがって、好適には非侵襲的技法を使用して、実行され得ることが理解されるであろう。例えば1つの実施形態では、FFR計算ステップ312は、2011年1月25日に出願された「Method and System for Patient−Specific Modeling of Blood Flow」を発明の名称とする米国特許出願第13/013,561号に説明される係る計算に対するシステムおよび方法にしたがって実行され得る。なお同特許は本願の譲受人に譲渡され、同特許の全体は参照することにより本願に援用される。例えばFFR計算ステップ312は、図4および図5に関して以下で説明するシステムおよび方法にしたがって実行され得る。
【0064】
図4は、代表的な実施形態にしたがって、特定の患者における冠動脈血流に関する様々な情報(例えばFFR)を提供するためのシステムの態様を図示する。患者の解剖学的組織の3次元モデル10は、以下でより詳細に説明するように、患者から非侵襲的に取得されたデータを使用して、作製され得る。他の患者固有の情報も非侵襲的に取得され得る。代表的な実施形態では、3次元モデル10により表現される患者の解剖学的組織の一部は、大動脈の少なくとも1部分と、大動脈に接続された冠動脈主幹部の近位部分(および当該部分から延長または発する分岐)と、を含み得る。
【0065】
冠動脈血流に関する様々な生理学的法則および関係20は、以下でより詳細に説明するように、例えば実験的データから、導き出され得る。3次元解剖学的モデル10および導き出された生理学的法則20を使用して、冠動脈血流に関する複数の方程式30は、以下でより詳細に説明するように決定され得る。例えば方程式30は、任意の数値的方法(例えば、有限差分、有限体積、スペクトル、格子ボルツマン、粒子ベース、レベル集合、有限要素法、その他)を使用して、決定され、解かれ得る。方程式30を解くと、モデル10により表現される解剖学的組織内の様々な地点における患者の解剖学的組織内の冠動脈血流に関する情報(例えば圧力、速度、FFR、その他)が決定され得る。
【0066】
方程式30はコンピュータ40を使用して解くことができ得る。解かれた方程式に基づいて、コンピュータ40は、モデル10により表現される患者の解剖学的組織内の血流に関する情報を示す1つまたは複数の画像またはシミュレーションを出力し得る。例えば画像(単数または複数)は、以下でさらに詳細に説明するように、シミュレーションされた血圧モデル50、シミュレーションされた血流または流速モデル52、計算されたFFR(cFFR)モデル54、その他を含み得る。シミュレーションされた血圧モデル50、シミュレーションされた血流モデル52、およびcFFRモデル54は、それぞれ、モデル10により表現される患者の解剖学的組織における3次元に沿う様々な箇所における圧力、速度、およびcFFRに関する情報を提供する。cFFRは、モデル10内の特定箇所における血圧を、例えばモデル10の流入境界において、最大に増加された冠動脈血流の条件下で、例えばアデノシンを経皮的に投与することにより従来の手法で導入された、大動脈における血圧で除算した、比として計算され得る。
【0067】
代表的な実施形態では、コンピュータ40は、命令を格納する1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読ストレージ装置を含み得る。なお係る命令は、プロセッサ、コンピュータシステム、その他により実行されたとき、患者の血流に関する様々な情報を提供するための、本明細書で説明された操作のいずれかを実行し得る。コンピュータ40はデスクトップまたはポータブル型のコンピュータ、ワークステーション、サーバ、携帯情報端末、または任意の他のコンピュータシステムを含み得る。コンピュータ40は、プロセッサ、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、周辺装置(例えば入力装置、出力装置、ストレージ装置、その他)を接続するための入出力(I/O)アダプタ、入力装置(例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン、音声入力、および/または他の装置)を接続するためのユーザインターフェースアダプタ、コンピュータ40をネットワークに接続するための通信アダプタ、コンピュータ40をディスプレイに接続するためのディスプレイアダプタ、その他、を含み得る。例えばディスプレイは、方程式30を解くことにより生成される3次元モデル10および/または任意の画像(例えばシミュレーションされた血圧モデル50、シミュレーションされた血流モデル52、および/またはcFFRモデル54)を表示するために使用され得る。
【0068】
図5は他の代表的な実施形態に係る、特定の患者内の血流に関する様々な情報を提供するための方法の1つの態様を図示する。この方法は、患者の解剖学的組織(例えば大動脈の少なくとも1部分、および大動脈に接続される冠動脈主幹部の近位部分(ならびに主幹冠動脈から延長する分岐))に関する情報などの患者固有の解剖学的データを取得することと、取得したデータを前処理することと、を含み得る(ステップ502)。患者固有の解剖学的データは例えばCCTAにより非侵襲的に取得され得る。
【0069】
患者の解剖学的組織の3次元モデルは、取得された解剖学的データに基づいて作製され得る(ステップ504)。例えば3次元モデルは、図3を参照して上述したように生成された患者の解剖学的組織の3次元モデル10(図4)または3次元モデル220(図1)であり得る。
【0070】
3次元モデルは解析のために準備され得、境界条件が判定され得る(ステップ506)。例えば図4に関連して上述した患者の解剖学的組織の3次元モデル10はトリミングされ、体積メッシュ(例えば有限要素または有限体積メッシュ)に離散化され得る。体積メッシュは、図4に関連して上述した方程式30を生成するために使用され得る。
【0071】
境界条件も、割り当てられ、図4に関連して上述した方程式30に組み込まれ得る。境界条件は、境界(例えば流入境界、流出境界、血管壁境界、その他)における3次元モデル10に関する情報を提供する。流入境界は、血流が3次元モデルの解剖学的組織へと導かれる際に通過する境界(例えば大動脈起始部付近の大動脈の端部に位置する)を含み得る。各流入境界は、心臓モデルおよび/または集中パラメータモデルを境界、その他に連結することにより、例えば速度、流速、圧力または他の特性に対する規定値または規定フィールドを用いて、割り当てられ得る。流出境界は、血流が3次元モデルの解剖学的組織から外部へと導かれる際に通過する境界(例えば、大動脈弓付近の大動脈の端部に、および冠動脈主幹部の下流側端部ならびに当該部分から延長する分岐に、位置する)を含み得る。各流出境界は、例えば集中パラメータ−または分散(例えば1次元波動伝搬)モデルを連結することにより、割り当てられ得る。流入および/または流出境界条件の規定された価値は、患者の生理学的特性(例えば心拍出量(心臓から流出する血流体積)、血圧、心筋質量、その他を含むが、これらに限定されない)を非侵襲的に測定することにより、判定され得る。血管壁境界線は、3次元モデル10の大動脈、冠動脈主幹部、および/または他の冠動脈もしくは血管の、物理的境界を含み得る。
【0072】
準備された3次元モデルおよび判定された境界条件を使用して計算解析を実施すること(ステップ508)により、患者に対する血流情報が判定され得る。例えば計算解析を、図4に関連して上述した、方程式30を用い、コンピュータ40を使用して、実施すると、図4に関連して上述した画像(例えばシミュレーションされた血圧モデル50、シミュレーションされた血流モデル52、および/またはcFFRモデル54など)が生成され得る。
【0073】
この方法は、係る結果を使用して患者固有の治療オプションを提供することも含み得る(ステップ510)。例えばステップ504で作製された3次元モデル10、および/またはステップ506で割り当てられた境界条件は、1つまたは複数の治療(例えば冠動脈ステントを、3次元モデル10で表現された冠動脈のうちの1つに留置すること)を、または他の治療オプションを、モデル化するために、調節され得る。次に計算解析が、新規画像(血圧モデル50、血流モデル52、および/またはcFFRモデル54の更新済みバージョンなど)を生成するために、ステップ508で説明したように実施される。これらの新規画像は、治療オプションが採用された場合、血流速度および血圧における変化を判定するために使用され得る。
【0074】
本明細書で開示されたシステムおよび方法は、冠動脈内の血流を定量化すること、および冠動脈疾患の機能的重要度を査定することを行うための非侵襲的手段を提供するために、医師によりアクセスされるソフトウェアツールに組み込まれ得る。特に、cFFRモデル54内に反映される計算されたFFR値が、機能的心血管スコアを生成するステップに組み込まれ得る。特に、方法300のステップ310に関して上述したように心血管スコアは、所定の機能的範囲を有するFFR値を有する冠動脈セグメントのサブセットに対する評価された特性および査定された点数に基づいて生成され得る。したがって結果的に生成された心血管スコアは、患者の冠動脈脈管構造の様々なセグメントの実際の機能または機能不全に、より関連するものとなり得、望ましいインターベンション技法(例えばPCI対CABG)を示す可能性が高くなり得る。
【0075】
機能的心血管スコアを計算することに加えて、医師はこのシステムを使用することにより、冠動脈血流に対する医療、インターベンション、および/または外科治療の効果を予測し得る。このシステムは、頚部の動脈(例えば頚動脈)、頭部の動脈(例えば大脳動脈)、胸郭における動脈、腹部における動脈(例えば腹部大動脈ならびにその分岐)、腕部における動脈、または脚部における動脈(例えば大腿動脈および膝窩動脈)を含む心臓血管系の他の部分における疾患の予防、診断、管理、および/または治療を行い得る。このソフトウェアツールは、患者に対して最適なパーソナライズされた療法を医師が開発することが可能となるよう、インタラクティブであり得る。
【0076】
例えばこのシステムは、医師または他のユーザにより使用されるコンピュータシステム(例えば図4に図示されるコンピュータ40)に少なくとも部分的に組み込まれ得る。コンピュータシステムは、患者から非侵襲的に収集されるデータ(例えば、3次元モデル10を作製するために使用されるデータ、境界条件を適用するためにまたは計算解析を実施するために、使用されるデータ、その他)を受け取り得る。例えば、データは医師により入力されてもよく、または、係るデータにアクセスする能力または係るデータをアクセスし提供する能力を有する他の供給源(例えば放射線医学または他の医療の研究所など)から受け取られてもよい。データは、ネットワークまたはデータを通信するための他のシステムを介して、または直接的に、コンピュータシステムに伝達され得る。ソフトウェアツールはデータを使用して、図4に関連して上述した方程式30を解くことにより判定される、3次元モデル10または他のモデル/メッシュおよび/または任意のシミュレーションもしくは他の結果(例えばシミュレーションされた血圧モデル50、シミュレーションされた血流モデル52、および/またはcFFRモデル54など)を生成および表示し得る。したがってこのシステムはステップ302〜312および/またはステップ502〜510を実行し得る。ステップ502では医師が、可能な治療オプションを選択するためのさらなる入力をコンピュータシステムに提供すると、コンピュータシステムは、選択された可能な治療オプションに基づいて、医師に新規シミュレーションを表示し得る。さらに、図3および図5に図示されるステップ302〜312およびステップ502〜510のそれぞれは、別個のコンピュータシステム、ソフトウェアパッケージ、またはモジュールを使用して実行され得る。
【0077】
代替的にこのシステムは、例えば医師とは別個の事業主体により提供されるサービスなどの、ウェブベースのサービスまたは他のサービスの一部として、提供され得る。サービスプロバイダは例えば、ウェブベースのサービスを運用し、ネットワークまたはコンピュータシステム間でデータを通信する他の方法を介して医師または他のユーザによりアクセス可能なウェブポータルまたは他のウェブベースのアプリケーション(例えばサービスプロバイダにより運用されるサーバまたは他のコンピュータシステム上で実行される)を提供し得る。例えば、患者から非侵襲的に取得されたデータがサービスプロバイダに提供され、サービスプロバイダは当該データを使用して、図4に関連して上述した方程式30を解くことにより判定される、3次元モデル10または他のモデル/メッシュおよび/または任意のシミュレーションもしくは他の結果(例えばシミュレーションされた血圧モデル50、シミュレーションされた血流モデル52、および/またはcFFRモデル54など)を生成し得る。次いで、ウェブベースのサービスは、3次元モデル10および/またはシミュレーションが医師のコンピュータシステム上で表示されるよう、3次元モデル10または他のモデル/メッシュおよび/またはシミュレーションに関する情報を伝達し得る。このようにしてウェブベースのサービスは、ステップ302〜312および/またはステップ502〜510、および患者固有の情報を提供するための上述した任意の他のステップを実行し得る。ステップ502では医師が、例えば可能な治療オプションを選択するための、または計算解析に対する調節を実施するための、さらなる入力を提供すると、当該入力は、サービスプロバイダにより運用されるコンピュータシステムに(例えばウェブポータルを介して)伝達され得る。ウェブベースのサービスは、選択された可能な治療オプションに基づいて新規シミュレーションまたは他の結果を生成し、新規シミュレーションが医師に対して表示され得るよう、新規シミュレーションに関する情報を医師に通信し得る。
【0078】
本明細書で説明されたステップのうちの1つまたは複数は、1名または複数名の人間オペレータ(例えば、心臓病医もしくは他の医師、患者、ウェブベースのサービスもしくは第三者により提供される他のサービスを提供するサービスプロバイダの従業員、他のユーザ、その他)により、または人間オペレータ(1名または複数名)により使用される1つまたは複数のコンピュータシステム(例えば、デスクトップまたはポータブル型のコンピュータ、ワークステーション、サーバ、携帯情報端末、その他)により、実行され得る。コンピュータシステム(単数または複数)はネットワークまたはデータを通信する他の方法を介して接続され得る。
【0079】
任意の実施形態において説明された任意の態様は、本明細書で説明された任意の他の実施形態とともに使用され得る。本明細書で説明された各デバイスおよび装置は、任意の好適な医療処置において使用され得、任意の好適な身体内腔および体腔を通され得、任意の好適な身体部分を撮影するために使用され得る。
【0080】
様々な改変例および変化例が、本開示の範囲から逸脱することなく、開示されるシステムおよび処理において可能である。他の実施形態も、本明細書で開示される開示の仕様および実施を考慮するにより、当業者に明らかとなるであろう。仕様および実施例は例示のみを意図するものであり、本開示の真の範囲および精神は以下の請求項により示される。
図1
図2
図3
図4
図5