特許第6553679号(P6553679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553679
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/20 20060101AFI20190722BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20190722BHJP
   B23K 26/244 20140101ALI20190722BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20190722BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20190722BHJP
   B62D 25/04 20060101ALN20190722BHJP
   B23K 103/04 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
   B21D22/20 H
   B21D22/20 G
   B23K26/21 G
   B23K26/244
   C21D9/00 A
   C21D1/18 C
   !B62D25/04 B
   B23K103:04
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-131342(P2017-131342)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-13934(P2019-13934A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591077704
【氏名又は名称】東亜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107906
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康剛
(72)【発明者】
【氏名】岩沼 忠士
(72)【発明者】
【氏名】森 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 佑貴
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−124673(JP,A)
【文献】 特開2011−088484(JP,A)
【文献】 特開2007−029966(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102016013466(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20
B23K 26/21
B23K 26/244
C21D 1/18
C21D 9/00
B23K 103/04
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の亜鉛めっき鋼板をそれぞれ第1及び第2の加熱炉でオーステナイト域の温度に加熱し、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の本体をオーステナイトに変態せしめると共に、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の表面に酸化亜鉛皮膜及びFe−Zn固溶相を形成する工程と、
前記工程で加熱された第1の亜鉛めっき鋼板と第2の亜鉛めっき鋼板を溶接することなく重ね合わせた状態で熱間プレスする工程と、
熱間プレスされた第1の亜鉛めっき鋼板と第2の亜鉛めっき鋼板とを溶接する工程と、を備えることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【請求項2】
前記溶接は、レーザー溶接であることを特徴とする請求項1に記載のプレス成
形品の製造方法。
【請求項3】
第1及び第2の亜鉛めっき鋼板をオーステナイト域の温度に加熱し、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の本体をオーステナイトに変態せしめると共に、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の表面に酸化亜鉛皮膜及びFe−Zn固溶相を形成する工程と、
前記工程で加熱された第1の亜鉛めっき鋼板と第2の亜鉛めっき鋼板を溶接することなく重ね合わせた状態で熱間プレスする工程と、
熱間プレスされた第1の亜鉛めっき鋼板と第2の亜鉛めっき鋼板とをレーザー溶接する工程と、を備えることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形品の製造方法に関し、特に補強鋼板により局所的に補強されたプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両構造において、衝突時における乗員の安全確保のために、ベース鋼板を補強鋼板により局所的に補強したプレス成形品が用いられている。
【0003】
特許文献1には、ベース鋼板の補強が必要な領域に補強鋼板を重ね合わせ、重ね合わせ部分をスポット溶接することにより複合鋼板を形成し、この複合鋼板を熱間プレス(ホットプレス)することで、局所的に補強されたプレス成形品を製造する方法が記載されている。
【0004】
ここで、熱間プレスは、鋼板をオーステナイト域の温度に高温加熱し、続いて金型によりプレスするというもので、金型による急冷効果により鋼板が焼き入れ強化されるため、鋼板の引張強度を飛脚的に大きくできるというプレス技術である。
【0005】
また、熱間プレスに伴う高温加熱によるスケールの生成を抑制し、耐食性及び防錆性を向上させるために、素材として亜鉛めっき鋼板を用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−193712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のプレス成形品の製造方法に、亜鉛めっき鋼板を適用すれば、高温加熱時に鋼板の表面に酸化亜鉛皮膜及びFe−Zn固溶相が形成され、耐食性及び防錆性に優れ、局所的に補強されたプレス成形品が得られるはずである。
【0008】
ところが、そのような製造方法によれば、熱間プレス時に鋼板の曲げ部分のスポット溶接部付近で、「粒界割れ」と呼ばれる割れが生じるおそれがあった。これは、スポット溶接の急速加熱により液状になった亜鉛が鋼板本体(Fe)に入り込み、鋼板の組織が脆弱になるためであると考えられる。
【0009】
また、熱間プレスによるすべり応力によりスポット溶接部近傍で鋼板の裂け目が発生するという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題に鑑み、本発明のプレス成形品の製造方法は、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板をそれぞれ第1及び第2の加熱炉でオーステナイト域の温度に加熱し、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の本体をオーステナイトに変態せしめると共に、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の表面に酸化亜鉛皮膜及びFe−Zn固溶相を形成する工程と、前記工程で加熱された第1の亜鉛めっき鋼板と第2の亜鉛めっき鋼板を溶接することなく重ね合わせた状態で熱間プレスする工程と、熱間プレスされた第1の亜鉛めっき鋼板と第2の亜鉛めっき鋼板とを溶接する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スポット溶接に伴う粒界割れを生じさせることなく、耐食性及び防錆性に優れ、かつ局所的に補強されたプレス成形品を製造することが可能になる。また、熱間プレス後に2つの鋼板の溶接を行うようにしたので、熱間プレスによるすべり応力によりスポット溶接部近傍で鋼板の裂け目が発生するという問題も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の加熱工程の模式図である。
図2】第1及び第2の亜鉛めっき鋼板の断面図である。
図3】第1及び第2の亜鉛めっき鋼板を重ね合わせた状態を示す斜視図である。
図4】熱間プレスを示す断面図である。
図5】プレス成形品の断面図である。
図6】プレス成形品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。先ず、図1に示すように、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2をそれぞれ第1及び第2の加熱炉3,4によりオーステナイト域の温度T0に加熱し、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2の本体をオーステナイトに変態せしめる。第1の亜鉛めっき鋼板1はベース鋼板、第2の亜鉛めっき鋼板2は補強鋼板である。
【0014】
第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2をそれぞれ第1及び第2の加熱炉3,4により加熱することは、両鋼板の加熱量を個別に適切に制御するために好ましい。また、加熱時に第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を重ね合わせないことは、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2の表面全体に均一に酸化亜鉛皮膜5a及びFe−Zn固溶相5bを形成するために好ましい。
【0015】
上記加熱工程により、図2に示すように、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2の亜鉛めっき皮膜が酸化されて、その表面に耐食性及び防錆性に優れた酸化亜鉛皮膜5a及び、その下層に膜厚20−30μmを有するFe−Zn固溶相5bが形成される。Fe−Zn固溶相5bの中には、約7割の初期Zn量が残存している。
【0016】
オーステナイト域の温度T0は、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2の炭素含有量により異なるが、例えば、900℃前後である。また、亜鉛めっきとしては、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき等が含まれる。
【0017】
次に、図3に示すように、上記加熱工程後の第1の亜鉛めっき鋼板1の補強が必要な領域に第2の亜鉛めっき鋼板2を重ね合わせる。この一例では、平面的に見て、第2の亜鉛めっき鋼板2の全体が第1の亜鉛めっき鋼板1の面積領域の中に含まれている。この段階では両鋼板の溶接を行わない。
【0018】
続いて、図4に示すように、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を第1及び第2の加熱炉3,4から同時に取り出し、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を重ね合わせた状態で、熱間プレスを行う。
【0019】
図示のように、凹部6aを有する下金型6の上方に対向して凹部6aに嵌合する凸部7aを有する上金型7を備えた熱間プレス装置を準備する。そして、図4(a)に示すように、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を下金型6にセットし、上金型7を下動させることで、図4(b)に示すように、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を下金型6と上金型7の間に挟み、鋼板の急冷とプレス成形を同時に行う。
【0020】
これにより、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2はオーステナイト域の温度から急冷されるので、マルテンサイト変態が生じ、焼き入れが行われる。
【0021】
その後、金型を開放して、図5及び図6に示すプレス成形品8を取り出す。このような熱間プレスの結果、プレス成形品8を構成する第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2は例えば1500MPaという非常に高い引張強度を持っており、それらの重ね合わせ部分は、2枚の高張力鋼板により補強されている。
【0022】
続いて、プレス成形品8を構成する第1の亜鉛めっき鋼板1及び第2の亜鉛めっき鋼板2を溶接する。この場合、プレス成形品8は、例えば断面U字形等の複雑な3次元形状を有していることが多いことから、スポット溶接よりも、溶接箇所の自由度が高いレーザー溶接を用いることが好ましい。
【0023】
レーザー溶接を用いる場合、図5及び図6に示すように、例えば、プレス成形品8の底部、縦壁、底角部または端部に、破線で示したレーザービームを照射し、必要に応じてビームを走査することで第1の亜鉛めっき鋼板1及び第2の亜鉛めっき鋼板2を局所的に溶融させ、溶接部9を形成することが好ましい。この場合、溶接形状は直線形状に限る必要は無い。
【0024】
このように、この実施形態の製造方法によれば、スポット溶接をしていない状態で熱間プレスを行っているので、スポット溶接に伴う粒界割れを生じさせることなく、耐食性及び防錆性に優れ、かつ溶接性にも優れた、局所的に補強されたプレス成形品8を製造することが可能になる。
【0025】
また、熱間プレス時には第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を重ね合わせるものの両者のスポット溶接は行わず、熱間プレス後に溶接を行っていることから、熱間プレスによるすべり応力によりスポット溶接部近傍で鋼板の裂け目が発生するという問題も回避することができる。
【0026】
なお、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を別々の加熱炉により加熱すること、また、加熱時に第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を重ね合わせないことは、上記のスポット溶接に伴う粒界割れ防止の効果、スポット溶接部近傍で鋼板の裂け目発生防止の効果を得る上では必須事項ではなく、第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を1台の加熱炉により加熱し、加熱時に第1及び第2の亜鉛めっき鋼板1,2を重ね合わせてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 第1の亜鉛めっき鋼板
2 第2の亜鉛めっき鋼板
3 第1の加熱炉
4 第2の加熱炉
5 亜鉛皮膜
5a 酸化亜鉛皮膜
5b Fe−Zn固溶相
6 下金型
6a 凹部
7 上金型
7a 凸部
8 プレス成形品
9 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6