(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記昇華状態検出手段は、水素炎イオン化検出器、光イオン化検出器、前記昇華性物質の昇華によって生じる気体の光吸収又は蛍光又は発光を検出する光検出器、の少なくとも1つを含んでいる請求項1に記載の基板処理装置。
前記昇華状態検出工程は、前記昇華性物質の昇華によって生じる気体の成分の変化を水素炎イオン化検出器または光イオン化検出器で検出する工程、前記昇華性物質の昇華によって生じる気体の光吸収又は蛍光又は発光を検出する工程、の少なくとも1つを含んでいる請求項3に記載の基板処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、各実施形態において、図面は模式的なものであり、装置や基板の寸法関係や比率等は現実のものとは必ずしも一致するわけではない。
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、基板処理装置及び基板処理方法の一例として半導体装置の製造装置に適用したものを、図面を参照して説明する。なお、基板処理装置及び基板の処理方法は、半導体装置の製造に限定されない。
【0012】
[構成]
まず、
図1に示す基板処理装置10の構成について説明する。基板処理装置10は、例えば洗浄液等の液体を用いた液体処理と、その液体処理後の乾燥処理と、を実行するものである。本実施形態の基板処理装置10は、パターンが形成された半導体装置の基板を処理対象としており、基板の洗浄工程及び乾燥工程を実行する。なお、処理対象となる基板には、例えばシリコンウェーハ、シリコンカーバイトウェーハ、シリコン元素を含む複数の成分から構成されたウェーハ、サファイアウェーハ、各種化合物半導体ウェーハ、プラスチックウェーハ、ガラス基板等がある。また、基板に形成されるパターンには、酸化ケイ素、窒化ケイ素、多結晶シリコン、又は単結晶シリコン等のシリコン系材料や、窒化チタン、タングステン、ルテニウム、窒化タンタル、又はスズ等のメタル系材料、及びこれらを組み合わせた材料を用いることができる。
【0013】
基板処理装置10は、処理室11、基板保持部12、加熱部13、駆動部14、及び液体供給部15を備えている。基板保持部12、駆動部14、及び液体供給部15は、処理室11内に設けられている。基板保持部12は、全体として円板状に構成されている。基板保持部12は、処理対象となる基板80を高い精度で水平に保持することが可能である。基板80は、基板保持部12の上面に置かれる。基板保持部12は、駆動部14によって駆動されて回転する。
【0014】
液体供給部15は、基板保持部12に保持された基板80の表面に、昇華性物質を含む昇華性物質含有液体を供給する液体供給手段の一例である。すなわち、液体供給部15は、基板保持部12に保持された基板80の表面に、昇華性物質を含む昇華性物質含有液体を供給する液体供給工程を実行するためのものである。
【0015】
液体供給部15は、例えば配管16と、配管16に接続されたノズル17と、を有している。液体供給部15は、外部から配管16を通して供給された液体を、基板保持部12上の基板80の中心部に向けて、ノズル17から吐出するものである。その際、基板保持部12は、駆動部14によって回転されている。基板80は、基板保持部12とともに回転する。これにより、液体供給部15から吐出された液体は、回転状態の基板80上に供給され、基板80の遠心力によって基板80の全体に亘って略均一に塗布される。
【0016】
液体供給部15によって供給される液体は、昇華性物質を融解したもの、又は昇華性物質を溶媒に溶解したものである。すなわち、液体供給部15によって供給される液体には、昇華性物質が含まれている。昇華性物質とは、常圧下又は減圧下のある温度で固体から気体への相転移が可能な物質である。昇華性物質には、例えばナフタレン、P−ジクロロベンゼン、樟脳、及び1,7−ナフタレンジオール等があるが、これらに限定されない。また、昇華性物質を溶解するための溶媒は、例えば水、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサン、ギ酸、酢酸、ピリジン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ホルムアミド等があるが、これらに限定されない。
【0017】
本実施形態において、溶媒にはイソプロピルアルコール(以下、IPAと称する)を用いている。また、以下の説明では、昇華性物質を融解した液体又は昇華性物質を溶媒に溶解した液体を、昇華性物質含有液体と称する。液体供給部15は、昇華性物質含有液体を吐出するノズル以外にも、例えば洗浄液を吐出するためのノズルや、純水等のリンス液を吐出するためのノズル等を含んでいてもよい。洗浄液には、例えばフッ酸、硫酸、塩酸、アンモニア、過酸化水素水等を含む水溶液、又はこれらを複数含有する水溶液を使用することができるが、これらに限られない。
【0018】
加熱部13は、基板保持部12の内部に設けられており、基板保持部12上に置かれた基板80を加熱する。この加熱部13は、析出手段の一例であり、析出工程を実行するためのものである。また、この加熱部13は、昇華除去手段の一例でもあり、昇華除去工程を実行するためのものでもある。加熱部13は、例えば電気ヒータ等であるが、加熱の方式は問わない。加熱部13の駆動によって、基板保持部12上に置かれた基板80が加熱されると、基板80上に塗布された昇華性物質含有液体の一部が蒸発する。すると、昇華性物質含有液体中に含まれる昇華性物質が、基板80上に析出する。そして、基板80の加熱を継続すると、析出した昇華性物質が昇華する。これにより、基板80上にある昇華性物質が、昇華除去される。
【0019】
基板処理装置10は、制御部18、真空ポンプ19、及び検出器20を備えている。制御部18は、図示しないCPU、RAM、ROM等を有したコンピュータで構成され、基板処理装置10の全般の制御を司っている。すなわち、加熱部13、駆動部14、液体供給部15、真空ポンプ19、及び検出器20は、制御部18によって駆動制御される。
【0020】
真空ポンプ19及び検出器20は、処理室11の外部に設けられている。真空ポンプ19は、連結部21を介して処理室11内に接続されている。検出器20は、真空ポンプ19と処理室11との間に設けられている。真空ポンプ19が駆動すると、処理室11内の気体は、検出器20を通って真空ポンプ19に吸引される。これにより、処理室11内の気体は、真空ポンプ19によって処理室11外へ排気される。
【0021】
真空ポンプ19は、析出手段の一例であり、析出工程を実行するためのものである。また、この真空ポンプ19は、昇華除去手段の一例でもあり、昇華除去工程を実行するためのものでもある。すなわち、液体供給部15から吐出される昇華性物質含有液体は、加熱若しくは減圧又はその両方が行われると、昇華性物質含有液体に含まれる昇華性物質が固化して析出する。この場合、加熱部13若しくは真空ポンプ19又はその両方が、析出手段となる。そして、更に加熱若しくは減圧又はその両方を行うことにより、その析出した昇華性物質は、昇華して有機性ガスを発生させる。この場合、加熱部13若しくは真空ポンプ19又はその両方が、昇華除去手段となる。
【0022】
検出器20は、基板80上に存在する昇華性物質の昇華除去の過程又は終点を検出する昇華状態検出手段の一例である。すなわち、検出器20は、昇華性物質が昇華する際に発生する有機性ガスを検出するものである。換言すれば、検出器20は、昇華性物質の昇華による基板処理装置10内の気体の成分の変化を検出するものである。検出器20の例としては、例えば光イオン化検出器(PID/Photo Ionization Detector)や、水素炎イオン化検出器(FID/Flame Ionization Detector)、赤外吸光検出器、分圧真空検出器等がある。
【0023】
[制御内容]
次に、基板処理装置10によって実行される制御内容について説明する。
図2に示すように、基板80の表面には、フォトリソグラフィやエッチング等の前工程を経て、例えばラインアンドスペースやシリンダ構造等の複数の構造物81が形成されている。その後、基板80は、基板処理装置10によって、基板80の洗浄及び乾燥が行われる。
【0024】
本実施形態において、構造物81の幅寸法は、例えば20nm以下に設定されている。ここで、洗浄用の液体が基板80の表面に供給されると、その液体は、構造物81間に侵入する。そして、基板80の乾燥のために、その液体を蒸発させると、その液体の水面が構造物81の先端部に対して構造物81の基端部側に下降する。すると、その液体の表面張力によって、隣接する構造物81が相互に引き寄せられる。この場合、構造物81の幅が20nm以下になると、その液体の表面張力により、構造物81が倒壊するおそれが高まる。そのため、本実施形態では、次のような工程によって、基板80の表面を乾燥させる。
【0025】
すなわち、基板80は、フォトリソグラフィやエッチング等の前工程が終了した後、基板処理装置10の基板保持部12上に載置される。そして、制御部18は、
図3に示す制御内容の実行を開始すると(スタート)、ステップS11〜S13において基板80の洗浄工程を実行する。この場合、制御部18は、まず、ステップS11において、駆動部14を駆動し、基板保持部12とともに基板80を回転させる。その後、制御部18は、ステップS12において、液体供給部15から、
図2(a)に示す洗浄液91を吐出する。これにより、洗浄液91が、基板80の回転による遠心力によって基板80の表面全体に亘って略均一に広がる。そして、その洗浄液91が、前工程において基板80上に付着したエッチング残渣やパーティクル等を洗い流す。
【0026】
次に、制御部18は、ステップS13において、液体供給部15から、
図2(b)に示すリンス液92を吐出する。これにより、基板80上に供給されたリンス液92が、基板80の回転による遠心力によって基板80の表面全体に亘って略均一に広がる。そして、基板80上に付着している洗浄液91が、リンス液92に置換される。
【0027】
次に、制御部18は、液体供給工程の一例として、ステップS14を実行する。制御部18は、ステップS14において、リンス液92が基板80の表面を覆っている間に、液体供給部15から
図2(c)に示す昇華性物質含有液体93を吐出する。これにより、基板80上に供給された昇華性物質含有液体93が、基板80の回転による遠心力によって基板80の表面全体に亘って略均一に広がる。そして、基板80上に付着しているリンス液92が、昇華性物質含有液体93に置換される。この場合、昇華性物質含有液体93の溶媒と、ステップS12で吐出されるリンス液92とは、同一であるか又は相互に馴染みやすいものであることが望ましい。
【0028】
次に、制御部18は、ステップS15において、基板保持部12の回転を停止させる。その後、制御部18は、析出工程及び昇華除去工程の一例として、ステップS16、S17を実行する。制御部18は、ステップS16において、加熱部13を駆動させて基板80を加熱するとともに、真空ポンプ19を駆動させて処理室11内を減圧する。すると、基板80上に存在する昇華性物質含有液体93中の溶媒が蒸発し、
図2(d)に示すように、基板80の表面に昇華性物質含有液体93中に含まれた昇華性物質94が析出する。すなわち、昇華性物質含有液体93が、構造物81間に充填されて固化する。この析出した昇華性物質94によって、構造物81が支持される。
【0029】
そして、ステップS16の状態よりも更に基板80の温度を上昇させるとともに処理室11内を減圧すると、基板80上の昇華性物質94は、昇華する。この昇華性物質94が昇華することによって、例えば有機系の気化ガスが発生する。制御部18は、昇華状態検出工程の一例として、ステップS17を実行する。制御部18は、ステップS17において、昇華性物質94の昇華によって発生する気化ガスを検出器20で検出する。制御部18は、検出器20で検出される気化ガスの濃度が所定値以上であれば(ステップS17でYES)、昇華性物質94が昇華している最中であると判断する。この場合、制御部18は、基板80上に昇華性物質94が残留していると判断し、加熱部13及び真空ポンプ19の駆動を継続する。この場合、加熱部13の温度を上昇させる、又は処理室11の排気速度を高くすることにより昇華性物質94の昇華を促進しても良い。昇華性物質94の昇華を促進する手段はこれらに限定されない。
【0030】
一方、制御部18は、検出器20で検出される気化ガスの濃度が所定値未満になれば(ステップS17でNO)、昇華性物質94の昇華が終了したと判断する。この場合、制御部18は、基板80上に残留する昇華性物質94は無いと判断し、ステップS18へ移行する。そして、制御部18は、加熱部13及び真空ポンプ19を停止し、一連の制御を終了する。これにより、基板80の乾燥が終了し、
図2(e)に示すように、昇華性物質94が昇華除去された基板80が得られる。
【0031】
これによれば、構造物81間の間隔が例えば20nm以下と微小であっても、構造物81間に析出された昇華性物質94が構造物81を支持するため、液体の表面張力による構造物81の倒壊を防ぐことができる。
【0032】
更に、基板処理装置10は、基板80上に析出した昇華性物質94の昇華による除去の過程及び終点を検出するための検出器20を備えている。これによれば、昇華性物質94の昇華除去の終了を、作業者による目視やSEMによる観察に頼ることなく、制御部18によって画一的に判断することができる。すなわち、昇華性物質94の昇華除去による乾燥工程の終了時期を適切に検出し、判断することができる。そのため、基板80に昇華性物質94が残留することが低減されることから、乾燥工程のやり直し等を防ぐことができ、その結果、品質の向上や歩止まりの向上が図られる。
【0033】
検出器20は、昇華性物質94が昇華する際に発生する有機性ガスを検出するもの、つまり気化ガスに含まれる成分を検出するものである。ここで、乾燥工程においては、基板80の一部分について昇華性物質94が昇華除去されていても、他の部分に昇華性物質94が残留していることがある。この場合、基板80上の一点を検査して昇華性物質94の昇華除去の過程及び終点を判断する方法では、基板80上の他の部分に昇華性物質94が残留し、ムラが生じる可能性がある。
【0034】
一方、本実施形態において、検出器20は、昇華性物質94が昇華する際に発生する有機性ガスを検出する。そのため、制御部18は、検出器20によって有機性ガスが検出されている間は、昇華除去の終点に至ったと判断しない。そして、制御部18は、基板80の全体について昇華性物質94が昇華除去され、検出器20によって有機性ガスが検出されなくなると、昇華除去の終点に至ったと判断する。したがって、本実施形態によれば、基板80上の一点を検査する場合に比べて、基板80全体について昇華性物質94の昇華ムラを低減することができる。
【0035】
なお、昇華性物質94を昇華除去する方法は、基板保持部12に設けられた加熱部13によるものに限られない。例えば、基板80上に析出した昇華性物質94に対して、光や電子線を照射して、昇華性物質94を昇華し除去する方法でもよい。例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching/RIE)等によって、昇華性物質を昇華除去するものでもよい。また、空間内全体を加熱する方法でもよい。
【0036】
昇華除去の過程及び終点を検出した後の制御部18による制御内容は、上述したものに限られない。例えば、制御部18は、昇華性物質94の昇華による除去が終了したと判断した場合であっても(
図3のステップS17でNO)、更に昇華性物質94の昇華除去の工程を所定期間継続してもよい。すなわち、制御部18は、昇華性物質94の昇華による気化ガスの濃度が所定値未満になった場合に(
図3のステップS17でNO)、更に加熱部13による基板80の加熱及び真空ポンプ19の駆動を所定期間継続することができる。これによれば、より確実に、昇華性物質94を基板80上から除去することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図4〜
図6を参照して説明する。
第2実施形態の基板処理装置30は、例えば半導体基板等の乾燥工程を実行するものである。すなわち、基板処理装置30は、第1実施形態における
図3のステップS16〜S18に示す処理を実行するためのものである。基板処理装置30は、処理室31、扉32、基板保持部33、捕集器34、真空ポンプ35、及び制御部36を備えている。制御部36は、第1実施形態の制御部18と同様の構成であり、基板処理装置30全体の制御を司っている。
【0038】
処理室31は、一面が開口した箱状であり、内部に複数枚の基板80を収容することができる。したがって、基板処理装置30は、複数枚の基板80についてバッチ処理が可能である。処理室31内には、例えば洗浄工程等の液体処理を終えた基板80が収容される。すなわち、処理室31内には、
図2(c)に示すような昇華性物質含有液体93が塗布された状態の基板80、又は
図2(d)に示すような昇華性物質94が充填された状態の基板80が収容される。
【0039】
扉32は、処理室31の開口を開閉するものである。扉32が閉じられると、処理室31内は密閉空間になる。扉32は、制御部36によって開閉制御される。処理室31内には、複数の基板保持部33が上下方向に並んで設けられている。1個の基板保持部33は、1枚の基板80を保持することができる。各基板80は、1枚ずつ基板保持部33に保持されることにより、処理室31内において相互に離間して上下方向に配置される。
【0040】
捕集器34及び真空ポンプ35は、処理室31の外部に設けられている。捕集器34は、真空ポンプ35と処理室31との間に設けられている。捕集器34は、連結部37を介して処理室31内に接続されている。捕集器34と真空ポンプ35とは、連結部38によって接続されている。真空ポンプ35は、制御部36によって駆動制御される。真空ポンプが駆動すると、処理室31内の気体は、捕集器34を通って真空ポンプ35に吸引される。捕集器34は、図示しないフィルタ等を有している。そして、捕集器34は、当該捕集器34を通る気体に含まれる昇華性物質を吸着し捕集することができる。
【0041】
基板処理装置30は、第1加熱部39及び第2加熱部40を備えている。なお、第1加熱部39は処理室31の内側の少なくとも1つの面に設置されていれば良く、設置位置は限定されない。第1加熱部39及び第2加熱部40は、例えば電気ヒータであるが、加熱の方式は電気ヒータ式に限られない。第1加熱部39及び第2加熱部40は、それぞれ制御部36によって駆動制御される。第1加熱部39は、処理室31内に設けられており、処理室31内全体を加熱することができる。つまり、第1加熱部39は、処理室31内の気体を加熱することができる。第2加熱部40は、処理室11と捕集器34とを繋ぐ連結部37に設けられている。第2加熱部40は、連結部37内を通る気体を加熱することができる。
【0042】
連結部37内の温度は、処理室31内の温度よりも高いことが望ましい。本実施形態の場合、制御部36は、連結部37内の温度が処理室31内の温度よりも高くなるように、第2加熱部40を制御する。これにより、基板80から昇華した気化ガスに含まれる昇華性物質が、捕集器34に至る前に、連結部37内で冷却されて析出することが抑制される。なお、捕集器34の温度を、処理室31内及び連結部37内の温度よりも低く冷却するようにしてもよい。すなわち、捕集器34を、いわゆるコールドトラップにしてもよい。これによれば、捕集器34内において昇華性物質が冷却されて析出するため、より効果的に昇華性物質を捕集することができる。
【0043】
基板処理装置30は、
図5に示すように、検出器41を備えている。検出器41は、基板80上に存在する昇華性物質94の昇華除去の過程又は終点を検出する昇華状態検出手段の一例である。すなわち、検出器41は、昇華性物質94の昇華除去の過程又は終点を検出する昇華状態検出工程を実行するためのものである。
【0044】
検出器41は、例えば基板80の表面に光を照射し、その反射光に基づいて昇華性物質の昇華除去の過程及び終点を検出するものである。すなわち、基板80の表面に昇華性物質94が存在する場合と存在しない場合とでは、基板80の表面で反射する光の性質が異なる。検出器41は、基板80の表面における反射光の変化を検出することで、基板80の表面に昇華性物質94が存在するか否かを検出することができる。
【0045】
具体的には、検出器41は、制御部36に接続されており、制御部36によって駆動制御される。検出器41は、投光部411と受光部412とを有している。投光部411から照射された光は、基板80の表面で散乱及び反射する。その散乱光を含む反射光は、受光部412によって検出される。制御部36は、投光部411から照射する光のスペクトルと、受光部412で受光した反射光のスペクトルとの差分を算出することで、基板80上に存在している昇華性物質94の有無を検出することができる。
これによっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0046】
処理室31は、複数枚の基板80を同時に収容可能である。そして、第1加熱部39は、処理室31内全体を加熱可能である。したがって、基板処理装置30は、複数の基板80に対して同時に乾燥工程を実行することができる。このように、基板処理装置30は、複数の基板80についてバッチ処理が可能であるため、作業効率が向上し、生産性が向上する。
【0047】
検出器41は、処理室31内に収容された複数の基板80のうち、第1加熱部39から最も離れた1枚の基板80を検出対象としている。例えば本実施形態の場合、第1加熱部39は、処理室31内の底部に設けられている。したがって、本実施形態の検出器41は、処理室31の最上部に配置された基板80を検出対象としている。これは、第1加熱部39からの距離が大きくなるほど、基板80の温度が上昇し難くなるためである。すなわち、最も温度が上昇し難い基板80について昇華性物質94の昇華除去の終点を検出することができれば、他の基板80についても既に終点に至っていると推定できるからである。
【0048】
これによれば、基板処理装置30がバッチ処理をするものであって、かつ、検出器41が基板80の表面状態を直接検出するものであっても、全ての基板80に対して検出器41を設ける必要がない。すなわち、本実施形態によれば、バッチ処理を行うものにおいて、1つの基板80を検出対象としても、基板80毎に生じる昇華ムラを低減することができる。また、検出器41を基板80毎に設ける必要がないため、基板処理装置30のコストダウンを図ることができる。
【0049】
なお、処理室31は、
図6に示すように、真空予備室42と接続可能であってもよい。真空予備室42は、制御部36によって開閉可能な扉43と複数の基板保持部44とを有し、複数枚の基板80を収容可能である。また、真空予備室42は、真空ポンプ35又は他の図示しない真空ポンプによって、内部を大気圧以下に減圧することができる。扉32、43を閉じた状態で真空予備室42を減圧し、その後、扉32、43を開けることにより、処理室31内を大気開放することなく複数枚の基板80を真空予備室42と処理室31とで移動させることができる。真空予備室42は、処理室31に着脱可能であって、基板80を真空予備室42に収容して後工程へ移送するための容器であってもよい。
【0050】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図7を参照して説明する。
第3実施形態の基板処理装置30は、上記第2実施形態の検出器41に換えて、検出器45を備えている。検出器45は、基板80上に存在する昇華性物質94の昇華除去の過程及び終点を検出する昇華状態検出手段の一例である。この場合、検出器45は、昇華性物質94の昇華によって生じる気体の光吸収又は蛍光又は発光に基づいて昇華除去の過程及び終点を検出する光検出器の一例である。
【0051】
検出器45は、昇華性物質94の昇華によって生じる気体の光吸収に基づいて昇華除去の過程及び終点を検出するものである。検出器45は、具体的には次のようにして昇華性物質94の昇華除去の過程及び終点を検出する。例えば検出器45は、昇華性物質94の昇華によって発生した気化ガスつまり気体に光を照射し、その光の光吸収の変化に基づいて昇華性物質94の昇華除去の過程及び終点を検出する。検出器45による検出方法は、例えば赤外分光法ややラマン分光法があるが、これらに限られない。
【0052】
具体的には、検出器45は、制御部36に接続されており、制御部36によって駆動制御される。検出器45は、投光部451と受光部452を有している。投光部451から照射された光は、一部が昇華性物質94を含む気体に吸収され、他の一部が受光部452で受光される。検出器45は、気体の光吸収の変化を検出することで、昇華性物質94の昇華除去の終点を検出することができる。
【0053】
検出器45は、処理室31と捕集器34とを繋ぐ連結部37に設けられている。昇華性物質94を含む気化ガスは、真空ポンプ35に吸引されて連結部37を通る。そのため、連結部37内には、処理室31から真空ポンプ35側へ向かう気体の流れが生じる。したがって、昇華性物質94を含む気化ガスが特定の場所に滞留することが抑制されるため、検出器45は、昇華除去による変化を随時検出することができる。なお、検出器45は、必ずしも連結部37に設ける必要はなく、処理室31内から捕集器34に至る経路上に設ければよい。
この第3実施形態によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0054】
また、検出器45は、昇華性物質94の昇華によって生じる気体の蛍光又は発光に基づいて昇華除去の終点を検出するものであってもよい。すなわち、検出器45は、昇華性物質94の昇華によって発生した気化ガスに高電圧を印加して蛍光又は発光を生じさせ、その蛍光又は発光の変化に基づいて昇華性物質94の昇華除去の終点を検出するものでもよい。この場合、検出器45は、投光部451に換えて、気体に対して高電圧を印加することが可能な電圧印加部451を有する構成とする。電圧印加部451から高電圧が印加されると、気体に反応して蛍光又は発光が発生する。そして、受光部452は、その蛍光又は発光を検出する。これにより、検出器45は、気体の蛍光又は発光の変化を検出することで、昇華性物質94の昇華除去の終点を検出することができる。
【0055】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図8を参照して説明する。
第4実施形態の基板処理装置30は、上記第2実施形態の検出器41等に換えて、検出器46を備えている。検出器46は、処理室31の底部付近に設けられているが、設置箇所はこれに限られない。検出器46は、基板80上に存在する昇華性物質94の昇華除去の過程又は終点を検出する昇華状態検出手段の一例である。この場合、検出器46は、昇華性物質94の昇華によって生じる気体の圧力の変化に基づいて昇華除去の過程及び終点を検出する圧力検出器の一例である。例えば制御部36は、検出器46によって検出される圧力が所定値未満になった場合に、基板80上の昇華性物質94の昇華除去が終了したと判断する。
【0056】
検出器46には、例えば昇華性物質94の機械的現象を利用する真空計、昇華した昇華性物質94の輸送現象を利用する真空計、昇華した昇華性物質94を電離して検出する真空計等を採用することができる。また、検出器46は、気化ガスに含まれる昇華性物質94の質量を分析するものであってもよい。
この第4実施形態によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について
図9を参照して説明する。
第5実施形態の基板処理装置30は、上記第2実施形態の検出器41等に換えて、検出器47を備えている。検出器47は、基板80上に存在する昇華性物質94の昇華除去の過程又は終点を検出する昇華状態検出手段の一例である。この場合、検出器47は、昇華性物質94の昇華によって生じる基板80の重量の変化基づいて昇華除去の過程及び終点を検出する基板重量検出器の一例である。検出器47は、例えば基板保持部33に組み込まれており、基板保持部33に載置された基板80の重量を検出することができる。
【0058】
ここで、基板80が直径300mm、厚み750umのシリコンウェーハである場合、基板80の重量は約128gになる。そして、基板80上に昇華性物質94を析出させた場合、基板80の重量は、昇華性物質94によって0.01〜0.03g程度増加する。検出器47は、基板80の重量の変化を検出することで、昇華性物質94の昇華除去の終点を検出することができる。この場合、例えば制御部36は、乾燥工程終了後の基板80の重量を統計処理し、その統計処理の結果を終点の判断の基準に反映させることで、より高い精度で終点検出を行うことができる。
この第5実施形態によっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0059】
以上実施形態によれば、基板処理装置は、表面に複数の構造物を有しかつ構造物間に昇華性物質が析出した基板について昇華性物質を昇華除去する昇華除去手段と、昇華性物質の昇華除去の過程又は終点を検出する昇華状態検出手段と、を備える。
【0060】
これによれば、昇華性物質の昇華除去の過程及び終点を、作業者による目視やSEMによる観察に頼ることなく画一的に判断することができる。したがって、昇華性物質の昇華除去による乾燥工程の終了時期を適切に検出し判断することができる。
なお、上記各実施形態の構成は、適宜組み合わせることができる。
【0061】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。