特許第6553785号(P6553785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553785
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   H04R1/10 101Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-151872(P2018-151872)
(22)【出願日】2018年8月10日
(62)【分割の表示】特願2014-207320(P2014-207320)の分割
【原出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2018-170811(P2018-170811A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】Pioneer DJ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内 貴史
【審査官】 鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/108370(WO,A1)
【文献】 特開2011−182201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスピーカユニットが配置されたイヤカップと、
前記一対のイヤカップを連結するヘッドバンドと、を備え、
前記イヤカップは、装着者側の第1の空間と、反装着者側の第2の空間とを区画する隔壁部を有し、
前記隔壁部には、前記第1の空間と前記第2の空間を連通する第1の孔部が形成され、
前記第2の空間を構成する壁部は、前記隔壁部に略直交する第1の壁部を含み、
前記第1の壁部には前記第2の空間と外部とを連通する第2の孔部が形成されていることを特徴とするヘッドホン。
【請求項2】
前記第2の空間を構成する壁部は、さらに、前記隔壁部に対向する第2の壁部を含むことを特徴とする請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記第2の空間を構成する壁部は、さらに、前記第1の壁部に対向し、湾曲形状を有する第3の壁部を含むことを特徴とする請求項2に記載のヘッドホン。
【請求項4】
前記第2の空間を構成する壁部は、さらに、前記隔壁部、前記第1の壁部、前記第2の壁部、および前記第3の壁部に略直交する第4の壁部と、該第4の壁部に対向する第5の壁部とを有し、
前記第1の壁部と前記第3の壁部との間隔は、前記第4の壁部と前記第5の壁部との間隔よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載のヘッドホン。
【請求項5】
前記第2の孔部は、装着した際の前記ヘッドバンドの延在方向を上下方向として、前記第1の壁部に上下方向に開口するように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項6】
前記スピーカユニットは、前記第1の空間に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項7】
前記第2の孔部の大きさは、前記第1の孔部よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項8】
前記第1の孔部及び前記第2の孔部は、複数形成されており、
複数の前記第1の孔部の大きさの合計は、複数の前記第2の孔部の大きさの合計と略等しいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【請求項9】
前記隔壁部は、前記第1の空間と複数の前記第2の空間との間を区画し、
前記第1の孔部は、前記第1の空間と複数の前記第2の空間との間をそれぞれ連通する複数の孔部を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドホン本体(イヤカップ)のハウジングに操作用ツマミが取り付けられることにより、ハウジング内の第1の空間と、ハウジングと操作用ツマミとの間の第2の空間と、が形成されるとともに、2つの空間を接続可能な孔がハウジングに形成され、第2の空間と外部とを接続する孔が操作用ツマミに形成されたヘッドホンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された従来のヘッドホンでは、操作用ツマミを回動させて第1の空間と第2の空間とを接続する孔の開口度合いを大きくしていくと、第1の空間に収容されたスピーカユニットは、外部に接続された第2の空間を後方側の空間として利用することができるようになり、振動板が振動しやすくなって音質が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3107718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来のヘッドホンでは、ハウジングの孔と操作用ツマミの孔とが対向配置されるため、操作用ツマミの孔を通過して外部から第2の空間に侵入した音波が、さらにハウジングの孔を通過して第1の空間に侵入してしまうことがあり、ノイズとなってしまう可能性がある。
【0005】
したがって、本発明の課題は、ノイズを抑制することができるヘッドホンを提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のヘッドホンは、一対のスピーカユニットが配置されたイヤカップと、前記一対のイヤカップを連結するヘッドバンドと、を備え、前記イヤカップは、装着者側の第1の空間と、反装着者側の第2の空間とを区画する隔壁部を有し、前記隔壁部には、前記第1の空間と前記第2の空間を連通する第1の孔部が形成され、前記第2の空間を構成する壁部は、前記隔壁部に略直交する第1の壁部を有し、前記第1の壁部には該第2の空間と外部とを連通する第2の孔部が形成されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例に係るヘッドホン全体を示す斜視図である。
図2】前記ヘッドホンのイヤカップを示す分解斜視図である。
図3】前記イヤカップを示す分解斜視図である。
図4】前記イヤカップのX−X断面図である。
図5】前記ヘッドホンのヘッドバンドによる前記イヤカップの支持構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係るヘッドホンは、一対のイヤカップと、一対のイヤカップを連結するヘッドバンドと、を備え、イヤカップの内側には、2つの空間が形成され、2つの空間のうち一方の空間を囲む壁部には、角部、一方の空間と外部とを接続する第1孔部、及び、他方の空間と一方の空間とを接続する第2孔部が形成され、第1孔部及び第2孔部の間に角部が設けられるか、又は、第1孔部及び第2孔部のうち一方が角部に形成されるとともに他方が角部及び一方と異なる位置に設けられる。また、イヤカップは、耳当て部、スピーカユニット、及び、スピーカユニットを収容するハウジングを有している。
【0009】
2つの空間のうち一方の空間が外部に接続され、2つの空間が互いに接続されていることで、他方の空間にスピーカユニットを配置することにより、スピーカユニットがこの2つの空間を後方側の空間として利用し、振動板を振動させやすくすることができる。また、第1孔部と第2孔部との間に角部が設けられるか、又は、第1孔部及び第2孔部のうち一方が角部に形成されるとともに他方が角部及び一方と異なる位置に設けられることで、第1孔部を通過して外部から一方の空間に侵入して直進する音波が第2孔部に直接到達しにくく、この音波を他方の空間に侵入しにくくしてノイズを抑制することができる。
【0010】
壁部のうち第1孔部と対向する面が湾曲形状を有していることが好ましい。それにより、第1孔部を通過して外部から一方の空間に侵入した音波は、湾曲した面によって様々な方向に向けて反射される。外部から侵入した音波が第2孔部A2に到達してしまっても、それまでに反射によって進行する距離が長くなることで減衰しやすくなり、ノイズを低減することができる。尚、第1孔部と対向する面は、第1孔部に向かって凸に湾曲していることがより好ましく、このような構成によれば、音波がこの湾曲面によって拡散されるように反射され、ノイズをさらに低減することができる。
【0011】
壁部は、第1孔部が形成された面とその対向面とで構成される第1面対と、第2孔部が形成された面とその対向面とで構成される第2面対と、第1面対及び第2面対に交差する第3面対と、を備え、第1面対間の距離が第3面対間の距離よりも長いことが好ましい。それにより、第1孔部を有する第1面対間の距離が比較的長いことで、この面対間で反射される音波の進行距離を長くして減衰しやすくし、この音波が第2孔部に到達してしまってもノイズを低減することができる。尚、このような構成において上記のように第1孔部との対向面が湾曲形状を有する場合、この対向面は、第3面対にその表面を向けるように湾曲することがより好ましい。このような構成によれば、一方の空間に侵入した音波は、孔部の形成されない第3面対間で反射されつつ第1面対間で往復するように反射されて減衰しやすくなり、ノイズをより一層低減することができる。
【0012】
イヤカップは、ヘッドバンドに連結される連結部を備え、一方の空間は、連結部の内側に形成され、第1孔部は、壁部のうち、ヘッドバンドの延在方向における連結部よりもヘッドバンド側の面と、その反対側の面と、のうち少なくとも一方に形成されていることが好ましい。それにより、ヘッドバンドが装着者の頭上に位置するようにヘッドホンを装着すると、第1孔部が上下方向に開口する。外部において上下方向に進行する音波は発生しにくいことから、外部から一方の空間に音波を侵入しにくくすることができる。さらに、第1孔部がヘッドバンド側の面に形成されるとともにヘッドバンドが第1孔部と対向する部分を有していれば、この対向する部分によって第1孔部を保護し、一方の空間への音波の侵入をさらに抑制することができる。
【0013】
スピーカユニットは、他方の空間に設けられ、スピーカユニットの音放射側の反対側に位置する他方の空間の一部と、一方の空間と、が第2孔部によって接続されていることが好ましい。それにより、スピーカユニットが、他方の空間の一部と一方の空間とを音放射側の反対側の空間として利用することができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。図1は、本発明の実施例に係るヘッドホン1全体を示す斜視図であり、図2、3は、イヤカップ2Aを示す分解斜視図であり、図4は、イヤカップ2AのX−X断面図であり、図5は、ヘッドバンド3によるイヤカップ2Aの支持構造を示す側面図である。
【0015】
ヘッドホン1は、左右一対のイヤカップ2A、2Bと、一対のイヤカップ2A、2B同士を連結するヘッドバンド3と、一対のイヤカップ2A、2B間に亘って設けられるコード部4と、回動部材8と、を備える。
【0016】
左耳用のイヤカップ2Aと右耳用のイヤカップ2Bとは、左右略対称な形状を有するとともに略同一の構成を有しており、本実施形態では左耳用のイヤカップ2Aについて説明する。イヤカップ2Aは、図2、3に示すように、クッション5と、図示しないスピーカユニットと、スピーカユニットを収容するハウジング6と、備える。また、左耳用のイヤカップ2Aには、スピーカユニットに信号を送信するコード部7が接続され、この信号がコード部4を介して右耳用のイヤカップ2Bのスピーカユニットに送信される。
【0017】
クッション5は、スポンジ等のクッション部材が合成皮革等の被覆部材で覆われて円環状に形成され、ハウジング6の装着者側に取り付けられる。クッション5は、後述するハウジング本体61と内側蓋部62とによって表面部材の一部が挟み込まれることによってハウジング6に取り付けられるものとするが、接着剤や両面テープ等を用いて取り付けられてもよい。
【0018】
ハウジング6は、ハウジング本体61と、ハウジング本体61の装着者側に固定される内側蓋部62と、ハウジング本体61の装着者と反対側に固定される外側蓋部63と、外側蓋部63を覆うカバー部64と、を備える。
【0019】
ハウジング本体61は、例えば樹脂によって全体が一体に形成され、装着者の耳や側頭部と略平行になる円盤状の外面部611と、外面部611の外周に沿って装着者側に立設された内側立設壁612と、外面部611から装着者と反対側に立設された外側立設壁613と、内側蓋部62を固定するための固定部614と、外側蓋部63を固定するための固定部615と、外側立設壁613の内側において外面部611から装着者と反対側に立設された連結用立設部616と、を有する。
【0020】
外側立設壁613は、連結用立設部616よりもヘッドバンド3の延在方向におけるヘッドバンド3側(図2における上側)の第1壁部613Aと、連結用立設部616を挟んで第1壁部613Aの反対側(図2における下側)の第2壁部613Bと、第1壁部613Aと第2壁部613Bとの間においてヘッドバンド3の延在方向に沿って延びる第3壁部613C及び第4壁部613Dと、で構成される。
【0021】
第1壁部613A及び第2壁部613Bには、貫通孔である複数の第1孔部A1がそれぞれ形成されている。
【0022】
連結用立設部616は、第1壁部613Aと第2壁部613Bとの間の略中央部に形成され、第3壁部613Cと第4壁部613Dとの間に亘って形成されて第1壁部613Aに対向する第5壁部616Aと、第3壁部613Cと第4壁部613Dとの間に亘って形成されて第2壁部613Bに対向する第6壁部616Bと、を有するとともに、後述する回動部材8を収容する凹部616Cが形成されている。第5壁部616A及び第6壁部616Bは、その表面を第3壁部613C及び第4壁部613Dに向けるように第1孔部A1に向かって凸の湾曲形状を有する。
【0023】
外面部611のうち、第1壁部613Aと第3壁部613Cと第4壁部613Dと第5壁部616Aとで囲まれた部分が第1底壁部611Aとなり、第2壁部613Bと第3壁部613Cと第4壁部613Dと第6壁部616Bとで囲まれた部分が第2底壁部611Bとなる。第1底壁部611A及び第2底壁部611Bには、貫通孔である複数の第2孔部A2がそれぞれ形成されている。第2孔部A2は、それぞれ、第5壁部616A及び第6壁部616Bから離れた位置に配置される。
【0024】
これらの壁部の間には、それぞれ角部が形成される。即ち、第1底壁部611Aと第1壁部613A、第3壁部613C、第4壁部61D、第5壁部616Aとの間には、順に、第1角部617A、第2角部617B、第3角部617C、第4角部617Dが形成される。また、第2底壁部611Bと第2壁部613B、第3壁部613C、第4壁部61D、第6壁部616Bとの間には、順に、第5角部617E、第6角部617F、第7角部617G、第8角部617Hが形成される。さらに、第1壁部613Aと、第3壁部613C、第4壁部613Dと、の間には、順に、第9角部617I、第10角部617Jが形成され、第5壁部616Aと、第3壁部613C、第4壁部613Dと、の間には、順に、第11角部617K、第12角部617Lが形成される。さらに、第1壁部613Bと、第3壁部613C、第4壁部613Dと、の間には、順に、第13角部617M、第14角部617Nが形成され、第6壁部616Bと、第3壁部613C、第4壁部613Dと、の間には、順に、第15角部617O、第16角部617Pが形成される。
【0025】
以上のような第1孔部A1及び第2孔部A2は、それぞれ、第1角部617A及び第5角部617Eを挟んで設けられ、第1孔部A1が形成された第1壁部613Aと第2孔部A2が形成された第1底壁部611Aとが略直交し、第1孔部A1が形成された第2壁部613Bと第2孔部A2が形成された第2底壁部611Bとが略直交する。
【0026】
第1孔部A1の大きさは、第2孔部A2の大きさよりも小さく形成されている。これにより、第2孔部A2よりも第1孔部A1の方がより大きい空気抵抗(空気が孔を通過するための抵抗)を有するので、外部から音のうち特に中高域の音波が第1孔部A1を通過する際に減衰しやすくなり、外部から後述する一方の空間S1に侵入する音(ノイズ)を低減することができる。
【0027】
複数の第1孔部A1の大きさの合計は、複数の第2孔部A2の大きさの合計と略等しく設定されている。これにより、後述するように他方の空間S2に設けられたスピーカユニットが音を放射する際に、振動板の後方側における空気が流動しやすく、振動板を動きやすくして低域の音圧を向上させることができる。
【0028】
内側蓋部62は、例えば樹脂によって板状に形成され、音波が通過可能な複数の孔と、ハウジング本体61の固定部614に固定するための図示しないビスが挿通される挿通孔621と、を有する。
【0029】
外側蓋部63は、例えば樹脂によって板状に形成され、固定部615に固定するためのビス9が挿通される挿通孔631と、連結用立設部616の凹部616Cとの間に回動部材8を挟み込む挟持部632と、を有する。外側蓋部63のうち、第1底壁部611Aに対向する部分が第1天壁部63Aとなり、第2底壁部611Bに対向する部分が第2天壁部63Bとなる。
【0030】
カバー部64は、例えば樹脂によって板状に形成され、その表面に適宜な意匠が形成されるとともに接着剤や両面テープ等によって外側蓋部63を覆うように固定される。
【0031】
以上のようなハウジング6では、第1壁部613Aと第5壁部616Aと、及び、第2壁部613Bと第6壁部616Bとがそれぞれ第1面対を構成し、第1底壁部611Aと第1天壁部63Aと、及び、第2底壁部611Bと第2天壁部63Bとがそれぞれ第2面対を構成し、第3壁部613Cと第4壁部613Dとが第3面対を構成する。ハウジング本体61に外側蓋部63が固定されると、図4に断面して示すように、第1面対と第2面対と第3面対とによって、2つの一方空間S1が形成される。また、第1面対間の距離は、第3面対間の距離よりも大きくなっている。また、外面部611及び連結用立設部616よりも装着者側に他方の空間S2が形成される。
【0032】
イヤカップ2Aのスピーカユニットは、他方の空間S2に設けられ、装着者側を前方側として音を放射するように振動板を振動させる。放射された音波は、内側蓋部62の孔及びクッション5の内側を通過して装着者の耳に到達する。また、スピーカユニットは、クッション5の内側の空間を前方側の空間として利用し、他方の空間S2の一部(スピーカユニットから見て装着者と反対側の空間)と、第2孔部A2によって他方の空間S2に接続された2つの一方の空間S1と、を後方側の空間として利用する。
【0033】
ヘッドバンド3は、装着された際に装着者の頭上に位置するヘッドバンド本体31と、一対のイヤカップ2A、2Bのそれぞれを支持する支持部材32と、ヘッドバンド本体31と支持部材32とを連結する連結部33と、装着者の頭部に当接する当接バンド部34と、を備える。
【0034】
ヘッドバンド本体31は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属によって前方から見て湾曲形状に形成され、装着者の頭部の大きさに合わせて撓み変形可能に構成されている。
【0035】
支持部材32は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属によって形成されるとともに、連結部33側の端部を基端として分岐部321から二股に延びる第1挟持部322と第2挟持部323とを備える。分岐部321には、イヤカップ2Aを支持した際に第1壁部613Aに対向可能な対向部324が形成されている。
【0036】
当接バンド部34は、例えば、人工皮革等で形成された表面部材と、表面部材で覆われるとともに平らなゴム部材で形成された弾性部材と、を備える。弾性部材が連結部33に固定されることで、装着者の頭部の大きさに合わせて表面部材がヘッドバンド本体に近づくようにゴム部材が弾性変形することができる。また、表面部材の内側には左右のイヤカップ2A、2Bのスピーカユニット同士を接続するコード部4が挿通される。
【0037】
回動部材8は、例えば樹脂によって全体が一体に形成され、図2、5に示すように、支持部材32の挟持部322、323の先端部322A、323Aを係止する係止溝81と、凸部82と、を有する。
【0038】
次に、支持部材32によるイヤカップ2Aの支持方法及び支持構造について説明する。まず、2つの回動部材8の係止溝81によって挟持部322、323の先端部322A、323Aをそれぞれ係止する。これらの回動部材8を凹部616Cに収容し、外側蓋部63をハウジング本体61に固定することで、凹部616Cと挟持部632とによって回動部材8が回動可能に挟持される。このように、連結用立設部616と、これを囲む第1〜第4壁部613A〜613Dと、外側蓋部63と、がヘッドバンド3とイヤカップ2Aとを連結する連結部として機能し、一方の空間S1は連結部の内側に形成されている。
【0039】
このような凹部616Cにおいて、図5中上下方向に対向する上面616Dと下面616Eとの間隔は、回動部材8の凸部82の幅寸法(上下方向寸法)よりも大きく形成されている。従って、回動部材8は、図5(A)に示すように凸部82が下面616Eに当接した状態から、図5(B)に示すように凸部82が上面616Dに当接した状態まで回動可能に構成される。即ち、凹部616Cの内面と凸部82とによって回動部材8の回動が所定の範囲内に規制される。
【0040】
次に、回動部材8が回動する際の支持部材32とハウジング6との位置関係について説明する。図5(A)に示すように回動部材8の凸部82が下面616Eに当接する場合、凸部82が上面616Dと下面616Eとの中間位置に位置する場合よりも、支持部材32の挟持部322、323は、ハウジング本体61の外面部611の近くに位置して略平行となり、対向部324が第1壁部613Aに対向して第1孔部A1を覆うように位置づけられる。凸部82が下面616Eから離れていくと、挟持部322、323が外面部611に対して傾斜していき、対向部324が第1孔部A1から離れていく。
【0041】
上記の構成により、スピーカユニットが外部に接続された一方の空間S1を後方側の空間として利用することで、振動板を振動させやすくすることができる。また、第1孔部A1と第2孔部A2とが互いに略直交する壁部に形成され、その間に角部617A、617Eが形成されていることで、外部から第1孔部A1を通過して一方の空間S1に侵入した音波が第2孔部A2に直接到達しにくく、この音波を他方の空間S2に侵入しにくくしてノイズを抑制することができる。
【0042】
また、第5壁部616A及び第6壁部616Bが第1孔部A1に向かって凸の湾曲形状を有していることで、第1孔部A1を通過して外部から一方の空間S1に侵入した音波を拡散するように反射することができる。外部から侵入した音波が第2孔部A2に到達してしまっても、それまでに反射によって進行する距離が長くなることで減衰しやすくなり、ノイズを低減することができる。
【0043】
また、第1孔部A1を有する第1面対間の距離が比較的長いことで、この面対間で反射される音波の進行距離が長くなって減衰しやすくなり、この音波が第2孔部A2に到達してしまっても、ノイズを低減することができる。さらに、第1面対を構成する第5壁部616A及び第6壁部616Bが表面を第3壁部613C及び第4壁部613D(即ち、第3面対)に向けた湾曲形状を有することで、一方の空間S1に侵入した音波は、孔部の形成されない第3面対間で反射されつつ第1面対間で往復するように反射されて減衰しやすくなり、ノイズをより一層低減することができる。
【0044】
また、第1孔部A1がヘッドバンド3の延在方向におけるヘッドバンド3側の第1壁部613Aと、その反対側の第2壁部613Bとに形成されていることで、装着者がヘッドホン1を装着すると第1孔部A1が上下方向に開口する。外部において上下方向に進行する音波は発生しにくいことから、外部から一方の空間S1に音波を侵入しにくくすることができる。
【0045】
また、ヘッドバンド3の支持部材32が、第1壁部613Aに対向して第1孔部A1を覆うことができる対向部324を有していることで、対向部324によって第1孔部A1を保護し、一方の空間S1への音波の侵入をさらに抑制することができる。このとき、回動部材8の回動が所定の範囲内に規制されていることで、対向部324が第1孔部A1から離れすぎないようにすることができ、対向部324による第1孔部A1の保護機能を低減しにくくすることができる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例では、第1孔部A1と第2孔部A2とが互いに略直交する壁部に形成され、その間に角部617A、617Eが形成されるものとしたが、第1孔部A1と第2孔部A2とは、適宜な角度を有して交差する2つの壁部のそれぞれに形成されていればよく、これらの壁部の間に角部が形成されていればよい。また、複数の壁部が交差する角部に第1孔部A1と第2孔部A2とのうち一方が形成され、他方が壁部のうち角部とは異なる位置に形成されてもよい。また、第1孔部A1と第2孔部A2とが滑らかな角部を有して連続した1つの壁部に形成されていてもよく、例えば一方の空間が球状の壁部に囲まれ、この球の任意の二箇所に第1孔部A1と第2孔部A2とが形成されてもよい。以上のような第1孔部A1と第2孔部A2との間の角部は、合計角度が180°以外となっている、即ち、第1孔部A1が形成された部分の延長面と、第2孔部A2が形成された部分の延長面と、が互いに交差すればよい。
【0048】
また、前記実施例では、第1底壁部611A及び第2底壁部611Bが平坦であるものとしたが、第1底壁部611A及び第2底壁部611Bは、後方(即ち、外側蓋部63側)に向かって凸に湾曲した形状としてもよい。このように第1底壁部611A及び第2底壁部611Bを湾曲させることで、第1孔部A1から侵入した音波を拡散し、一方の空間S1内で音波を充分に減衰することができる。また、第5壁部616A及び第6壁部616Bが第1孔部A1に向かって凸に湾曲するものとしたが、第5壁部616A及び第6壁部616Bは、凹に湾曲していてもよい。また、第5壁部616A及び第6壁部616Bの表面に、例えば音波を乱反射する微細な凹凸が形成されてもよいし、吸音材が設けられてもよく、このように第1孔部A1から侵入した音波を充分に拡散したり吸音したりする構成や、音波が一方の空間S1内で充分に減衰する構成であれば、第1孔部A1に対向する壁部は湾曲していなくてもよい。
【0049】
また、前記実施例では、第1面対間の距離が第3面対間の距離よりも大きいものとしたが、第1面対間の距離は、第1孔部A1から侵入した音波が一方の空間S1内で充分に減衰するように適宜に設定されればよく、第3面対間の距離との大小は適宜に設定されればよい。
【0050】
また、前記実施例における第3面対は、平板状であってもよいし、曲面状に形成されていても構わない。曲面状に形成されている場合には、第1孔部A1から侵入した音波を一方の空間S1内で拡散及び減衰させることができる。
【0051】
また、前記実施例では、第1孔部A1がヘッドバンド3の延在方向におけるヘッドバンド3側の第1壁部613Aと、その反対側の第2壁部613Bと、に形成され、装着時に上下方向に開口するものとしたが、1つの連続した一方の空間が形成される場合、第1孔部A1はこれらの壁部のうちいずれか一方に形成されてもよい。また、音波が一方の空間S1内で充分に減衰する構成や、音波が他方の空間S2に充分に侵入しにくい構成であれば、第1孔部A1の開口方向は適宜に設定されてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、ヘッドバンド3の支持部材32が対向部324を有するとともに、回動部材8の回動が所定の範囲内に規制されるものとしたが、外部から第1孔部A1に音波が侵入しにくく構成されていれば、対向部324は省略されていてもよいし、回動部材8の回動が規制されていなくてもよい。
【0053】
また、前記実施例では、イヤカップ2Aとヘッドバンド3とを連結する連結部の内側に一方の空間S1が形成されるものとしたが、連結部は一方の空間S1から離れた位置に設けられてもよく、これらの相対位置は適宜に設定されればよい。
【0054】
また、ヘッドバンド3は頭部に装着されるバンドとしたが、首に装着するネックバンドであっても構わなく、すなわち一対のイヤカップ2A、2Bを連結するバンドであればよい。
【0055】
なお、確認事項として上述した実施の形態から抽出される特徴について記載する。
【0056】
[ヘッドホン1]
一対のイヤカップと、
前記一対のイヤカップを連結するヘッドバンドと、を備え、
前記イヤカップの内側には、2つの空間が形成され、
前記2つの空間のうち一方の空間を囲む壁部には、角部、当該一方の空間と外部とを接続する第1孔部、及び、他方の空間と前記一方の空間とを接続する第2孔部が形成され、
前記第1孔部及び前記第2孔部の間に前記角部が設けられるか、又は、前記第1孔部及び前記第2孔部のうち一方が前記角部に形成されるとともに他方が該角部及び該一方と異なる位置に設けられることを特徴とするヘッドホン。
【0057】
[ヘッドホン2]
上記ヘッドホン1において、
前記壁部のうち前記第1孔部と対向する面が湾曲形状を有していることを特徴とする。
【0058】
[ヘッドホン3]
上記ヘッドホン1又は2において、
前記壁部は、前記第1孔部が形成された面とその対向面とで構成される第1面対と、前記第2孔部が形成された面とその対向面とで構成される第2面対と、該第1面対及び該第2面対に交差する第3面対と、を備え、
前記第1面対間の距離が前記第3面対間の距離よりも長いことを特徴とする。
【0059】
[ヘッドホン4]
上記ヘッドホン1〜3のいずれかにおいて、
前記イヤカップは、前記ヘッドバンドに連結される連結部を備え、
前記一方の空間は、前記連結部の内側に形成され、
前記第1孔部は、前記壁部のうち、前記ヘッドバンドの延在方向における前記連結部よりも該ヘッドバンド側の面と、その反対側の面と、のうち少なくとも一方に形成されていることを特徴とする。
【0060】
[ヘッドホン5]
上記ヘッドホン1〜4のいずれかにおいて、
前記スピーカユニットは、前記他方の空間に設けられ、
前記スピーカユニットの音放射側の反対側に位置する前記他方の空間の一部と、前記一方の空間と、が前記第2孔部によって接続されていることを特徴とする。
【0061】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 ヘッドホン
2A、2B イヤカップ
3 ヘッドバンド
5 クッション
6 ハウジング
A1 第1孔部
A2 第2孔部
S1 一方の空間
S2 他方の空間
図1
図2
図3
図4
図5