【実施例】
【0023】
以下に本発明の組成物を用いたコラーゲン産生促進試験例を示し、 本発明を具体的に説明する。
(1)試験試料(サンプル)
バラ科バラ属の植物の花弁及び/又はつぼみのエキスとして、丸善製薬株式会社が販売しているローズバッツエキスパウダーMFを用いた。またコラーゲンペプチドとして、コラーゲントリペプチドが10〜20質量%含まれているゼライス株式会社製のコラーゲンペプチドHACP−01を用いた。
【0024】
(2)試験方法
1)使用細胞
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF:ロンザジャパン株式会社)
2)試験試料(サンプル)
コラーゲンペプチド(HACP−01:ゼライス株式会社:コラーゲントリペプチド10〜20質量%含有品)、バラつぼみエキス(ローズバッツエキスパウダーMF:丸善製薬株式会社:ポリフェノール10〜20質量%含有品)を試験試料(サンプル)とした。
【0025】
3)細胞培養
細胞は37℃、5%二酸化炭素、95%空気の条件下で培養を行った。培地は非働化したウシ胎児血清(FBS)(Hyclone laboratories)10%、penicilin−Streptmycin(Sigma Aldrich)1%を添加したダルベッコ改変イーグル培地(高グルコース含有、life technologies)を用いた。以降、この培地を基礎培地と表記する。通常培養には10cmまたは15cmディッシュを用い、継代時の細胞剥離には0.05%Trypsin−EDTA(Sigma Aldrich)を使用した。
【0026】
(3)サンプル調製
各サンプルは培地で溶解した。UVA照射前は基礎培地を用い、UVA照射後はFBS不含基礎培地を用いた。
サンプルの最終濃度
バラつぼみエキス(ローズバッツエキスパウダーMF) 6.25、12.5、25、50(μg/mL)
コラーゲンペプチド(HACP−01) 2000、4000、8000(μg/mL)
併用 各濃度の組合せ
下記の表1に示す添加濃度で試験を実施した。
【0027】
【表1】
【0028】
(4)細胞の形態観察
形態観察には倒立型システム顕微鏡(OLYMPUS IX70)を用いて行った。
【0029】
(5)コラーゲン産生量の確認試験
24wellプレートに細胞を1×10
5 cells/500μL/wellで播種した。1日前培養した後、サンプル入り基礎培地500μLと交換して1日培養した。その後、ハンクス平衡塩溶液(HBSS、カルシウム・マグネシウム含有、フェノールレッド不含)500μLに置換し、蓋を取ったディッシュをUVA照射ランプの下に一列に置いて12J/cm
2照射した(約132分)。照射後、HBSSを取り除き、サンプル入りのFBS不含基礎培地500μLと交換して2日間培養した。培地を回収し、−80℃中に保存した。培地回収後、ディッシュを500μLのリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液200μLで懸濁し、細胞を回収した。
回収した培地は4℃、10,000×gで10分間遠心し、その上清中のI型コラーゲン量をCollagen Type I, Human, ELISA Kit(株式会社エーセル)を用いて測定した。細胞懸濁液は4℃、10,000×gで10分間遠心し、その上清中のタンパク量をPierce BCA Protein Assay kit (Thermo Fisher SCIENTIFIC)を用いて測定した。培地中のI型コラーゲン量は細胞タンパク量で補正した。
【0030】
(6)試験結果
コラーゲンペプチドとバラつぼみエキスによるI型コラーゲン産生効果を
図1に示す。
なお、コラーゲンペプチドとバラつぼみエキスによるコラーゲン産生能の相乗効果については以下の基準で判定した。
相乗効果:理論値<実測値
理論値=(A/D−1)×100+(B/D−1)×100
実測値=(C/D−1)×100
A:バラつぼみエキス単独添加によるI型コラーゲン産生量
B:コラーゲンペプチド単独添加によるI型コラーゲン産生量
C:バラつぼみエキスとコラーゲンペプチドの併用によるI型コラーゲン産生量
D:コントロール群(無添加サンプル)のI型コラーゲン産生量
さらに、コラーゲンペプチドとバラつぼみエキスの併用効果の検定には、得られた測定結果について二元配置分散分析法(繰り返しあり)を用いた。以上の測定結果と併用効果の判定表を、下記の表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
図1から、コラーゲンペプチドとバラつぼみエキスの併用により、I型コラーゲンの産生量が顕著に上昇したことが確認できた。
【0033】
表2に示すように、すべてのコラーゲンペプチドとバラつぼみエキス併用群は、有意にコラーゲン産生を促進したと評価できる。また、二元配置分散分析において有意に差が認められたものに関しては判定を◎とした。また、このときのコラーゲンペプチドとバラつぼみエキスの配合比率は、表1からバラつぼみエキス1質量部に対してコラーゲンペプチドを40〜
640質量部の範囲において、コラーゲン産生を促進することがわかった。 なお、細胞観察の結果、各試験群においてコラーゲンペプチド及びバラつぼみエキスの添加は、細胞の生育や形態には影響しないことをWST−8アッセイ(CellCountingKit−8、株式会社同仁化学研究所)と顕鏡観察により確認している。
以上の試験結果の解析から、バラ科バラ属の植物の花弁及び/又はつぼみのエキスとコラーゲンペプチドを含有する組成物は、細胞の生育に影響を及ぼさずにコラーゲン産生を促進することがわかった。またバラ科バラ属の植物の花弁及び/又はつぼみのエキスとコラーゲンペプチドの配合比は、バラ科バラ属の植物の花弁及び/又はつぼみのエキス1質量部に対してコラーゲンペプチドを40〜
640質量部を含むように調製することが効果的であるものと考えられた。
【0034】
<比較試験例>
本発明の効果を正しく理解するために、比較試験例としてコラーゲントリペプチド含有量が5質量%未満の低分子コラーゲンを用いた試験を同様にして実施した。
【0035】
(1)試験試料(サンプル)
バラ科バラ属の植物の花弁及び/又はつぼみのエキスとして、丸善製薬株式会社が販売
しているローズバッツエキスパウダーMFを用いた。
またコラーゲントリペプチドの含有量が5質量%未満の低分子コラーゲン(平均分子量5000)を用いた。
【0036】
(2)試験方法
1)使用細胞
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF:ロンザジャパン株式会社)
2)試験試料(サンプル)
低分子コラーゲン(ゼライス株式会社)、バラつぼみエキス(ローズバッツエキスパウダーMF:丸善製薬株式会社:ポリフェノール10〜20質量%含有品)を試験試料(サンプル)とした。
【0037】
3)細胞培養
細胞は37℃、5%二酸化炭素、95%空気の条件下で培養を行った。培地は非働化したウシ胎児血清(FBS)(Hyclone laboratories)10%、penicilin−Streptmycin(Sigma Aldrich)1%を添加したダルベッコ改変イーグル培地(高グルコース含有、life technologies)を用いた。通常培養には10cmまたは15cmディッシュを用い、継代時の細胞剥離には0.05%Trypsin−EDTA(Sigma Aldrich)を使用した。
【0038】
(3)サンプル調製
各サンプルは培地で溶解した。UVA照射前は基礎培地を用い、UVA照射後はFBS不含基礎培地を用いた。
サンプルの最終濃度
バラつぼみエキス(ローズバッツエキスパウダーMF) 6.25、12.5、25(μg/mL)
低分子コラーゲン 2000、8000(μg/mL)
併用 各濃度の組合せ
下記の表3に示す添加濃度で試験を実施した。
【0039】
【表3】
【0040】
(4)細胞の形態観察
形態観察には倒立型システム顕微鏡(OLYMPUS IX70)を用いて行った。
【0041】
(5)コラーゲン産生量の確認試験
24wellプレートに細胞を1×10
5cells/500μL/wellで播種した。1日前培養した後、サンプル入り基礎培地500μLと交換して1日培養した。その後、ハンクス平衡塩溶液(HBSS、カルシウム・マグネシウム含有、フェノールレッド不含)500μLに置換し、蓋を取ったディッシュをUVA照射ランプの下に一列に置いて12J/cm
2照射した(約132分)。照射後、HBSSを取り除き、サンプル入りのFBS不含基礎培地500μLと交換して2日間培養した。培地を回収し、−80℃中に保存した。培地回収後、ディッシュを500μLのリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液200μLで懸濁し、細胞を回収した。
回収した培地は4℃、10,000×gで10分間遠心し、その上清中のI型コラーゲン量をCollagen Type I,Human,ELISA Kit(株式会社エーセル)を用いて測定した。細胞懸濁液は4℃、10,000×gで10分間遠心し、その上清中のタンパク量をPierce BCA Protein Assay kit (Thermo Fisher SCIENTIFIC)を用いて測定した。培地中のI型コラーゲン量は細胞タンパク量で補正した。
【0042】
(6)試験結果
バラつぼみエキスと低分子コラーゲンによるI型コラーゲン産生効果を、表4及び
図2に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
またバラつぼみエキスと低分子コラーゲンによるコラーゲン産生能の相乗効果については以下の基準で判定した。
相乗効果:相加効果の理論値<実測値
相加効果の理論値=(A/D−1)×100+(B/D−1)×100
実測値=(C/D−1)×100
A:バラつぼみエキス単独添加によるI型コラーゲン産生量
B:低分子コラーゲン単独添加によるI型コラーゲン産生量
C:バラつぼみエキスと低分子コラーゲンの併用によるI型コラーゲン産生量
D:コントロール群(無添加サンプル)のI型コラーゲン産生量
判定結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
図2、及び表4、5から、コラーゲンペプチドとバラつぼみエキスの併用によって、I型コラーゲンの産生量が相乗的に増加しないことが確認できた。
【0047】
表5において示すように、バラつぼみエキス6.25μg/ml、低分子コラーゲン8000μg/mlの組み合わせでは、相加効果の理論値<実測値の結果となった。しかし、実測値286.67%に対して相加効果理論値は276.64%と、その効果はごくわずかであり、その他の組み合わせはいずれも実測値のほうが理論値より小さいことから、低分子コラーゲンとバラつぼみエキス併用による相乗効果群は、統計学的な有意差は認められなかった。
【0048】
飲料に配合した処方
コラーゲンペプチド(ゼライス株式会社)6g、バラつぼみエキス(丸善製薬株式会社
)0.01g、ビタミンC300mg を用い、常法によりドリンク剤を製造した。
【0049】
参考製造例1
バラ科バラ属の植物のつぼみのエキスの製造例
バラのつぼみ(Rosa gallicaofficinalis)300gに50重
量%エタノールを2000mL加え、還流冷却器を付けて、80℃にて1時間抽出した後
、濾紙で濾過して抽出液1を得た。また、抽出残渣に50重量%エタノール1500mL
を加え、同様に還流冷却器を付けて、80℃にて1時間抽出した後、濾紙で濾過して抽出
液2を得た。得られた抽出液1、2を合せて減圧下で濃縮、乾燥させて粉末エキス100
gを得た(収率33.3%)。
【0050】
参考製造例2
バラ科バラ属の植物のつぼみのエキスの製造例
バラのつぼみ(Rosa centifolia)300gに水2000mLを加え、
90℃にて1時間抽出を行った後、濾紙にて濾過し、抽出液を得た。得られた抽出液を減
圧下で濃縮、乾燥させて、製造例2の粉末エキス100gを得た(収率33.3%)。
【0051】
参考製造例3
コラーゲンペプチドの製造例
コラーゲンタンパクとして、ウシ真皮より調製したゼラチン30gを蒸留水300ml
に加温溶解し、0.45μmのフィルターで滅菌ろ過した。
このゼラチン30gを蒸留水300mlに加温溶解した。コラゲナーゼタイプI(Wo
rthington Biochemical Corp.)300mgを加え、アンモ
ニア水にてpHを7.5に調整した後37℃で1時間放置した。反応終了後、反応液を1
00℃で3分間加熱しコラゲナーゼを失活させ、次いで0.45μmのフィルターで滅菌
ろ過した。このろ液をCDP−0とした。このろ液CDP−0を蒸留水で平衡化したSe
phadex LH−20(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)によりゲルろ過し、2
つの画分(CDP−1,CDP−2)に分け、それぞれを凍結乾燥した。それぞれのピー
クをSuperdex Peptide HR10/30(GEヘルスケア・ジャパン株
式会社)に供し、0.3M NaClを含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7
.2)を溶出液に用いて分子量を求めたところ、CDP−1が約12000〜500に分
布し、CDP−2が約350だった。CDP−2の約50%がGly−Pro−Hypで
あった。