【実施例1】
【0017】
図1から
図3を参照して、実施例1の摩擦撹拌接合装置および摩擦撹拌接合方法について説明する。
図1および
図2は本実施例の摩擦撹拌接合装置1の全体概要を示す図である。
図1は被接合部材9(9a,9b)に接合ツール部6を挿入する前(つまり、接合開始前)の状態を示しており、
図2は被接合部材9(9a,9b)に接合ツール部6を挿入し摩擦撹拌接合を行っている接合中の状態を示している。
図3は本実施例による代表的な摩擦撹拌接合方法(制御方法)を示すフローチャートである。
【0018】
図1では、後述する「計測モード」において基準距離(L1)を計測する状態を示しており、実際には載置台10上に被接合部材9(9a,9b)を載置しない状態で「計測モード」が実行される場合が多いため、被接合部材9(9a,9b)を点線で示している。
【0019】
本実施例の摩擦撹拌接合装置1は、
図1に示すように、主要な構成として、装置本体2、上下動駆動機構部3を介して装置本体2に接続されるホルダ部(接合ヘッド)保持部4、ホルダ部(接合ヘッド)保持部4に接続(保持)されるホルダ部(接合ヘッド)5、ホルダ部(接合ヘッド)5により保持される接合ツール部6を備えている。上下動駆動機構部3には、
図1に例示するように、例えばボールスクリューなどが用いられる。接合ツール部6はショルダ部7およびプローブ部(接合ピン)8で構成され、ショルダ部7を介してプローブ部(接合ピン)8がホルダ部(接合ヘッド)5に保持される。装置本体2はホルダ部(接合ヘッド)5を保持し、接合ツール部6を回転させると共に、接合ツール部6を
図1のX軸方向およびZ軸方向に移動させる。
【0020】
このプローブ部(接合ピン)8が載置台10上に載置された被接合部材9(9a,9b)の突き合せ部に挿入され、高速回転することでプローブ部(接合ピン)8と被接合部材9(9a,9b)の間に摩擦熱が発生し、摩擦熱により被接合部材9(9a,9b)内で塑性流動が生じ、接合部が撹拌される。プローブ部(接合ピン)8が移動すると撹拌部(接合部)が冷却されて、被接合部材同士が接合される。
【0021】
なお、
図1では、ホルダ部5および接合ツール部6がホルダ部保持部4および上下動駆動機構部3を介して装置本体2に接続(保持)される構成を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、上下動駆動機構部3のみを介して装置本体2に接続(保持)される構成や、他の可動手段を介して装置本体2に接続(保持)される構成、ホルダ部5および接合ツール部6が直接装置本体2に接続(保持)される構成、或いは、
図1の構成に、さらにホルダ部5と装置本体2の間にC型フレームを設ける構成、多軸ロボットアームを有する装置本体2に接続(保持)される構成も本実施例の範囲に含むものとする。
【0022】
ホルダ部(接合ヘッド)5には、距離計測センサ11が設けられている。この距離計測センサ11は、接合時のホルダ部(接合ヘッド)5の進行方向(接合方向)とは反対側に配設されており、ホルダ部(接合ヘッド)5(距離計測センサ11)の所定の位置(第一の基準点と呼ぶ)と被接合部材9(9a,9b)を載置する載置台10の所定の位置(第二の基準点と呼ぶ)との間の距離を計測する。第一の基準点と第二の基準点は互いに対向する位置に配置(設定)される。
【0023】
距離計測センサ11には、例えば、レーザーを利用するレーザー変位センサなどの非接式の変位センサを用いる。或いは、距離計測や摩擦撹拌接合処理に影響が出なければ、リニアゲージなどの接触式の変位センサを用いてもよい。レーザー変位センサを用いた場合、第一の基準点は、
図1に示すように距離計測センサ11の距離計測信号照射点となる。
【0024】
装置本体2には、摩擦撹拌接合装置1の動作を制御する制御部(制御装置)12が設置されている。制御部(制御装置)12は、接合ツール部6による接合条件を決定する接合条件信号や上下動駆動機構部3による接合ツール部6の高さ方向(Z方向)の保持位置(接合ピン8の挿入量)を決定する保持位置決定信号などの接合パラメータ(FSW接合条件)を記憶する記憶部(図示せず)を備えている。
【0025】
また、装置本体2には、X軸方向に駆動可能なリニア駆動機構部13が設けられており、装置本体2の上部をX軸方向に設けられたリニアガイドのレール14に沿って移動させることで、ホルダ部(接合ヘッド)5をX軸方向(接合方向)へ移動させることができる。
【0026】
図2および
図3を用いて、上記で説明した距離計測センサ11を用いた代表的な摩擦撹拌接合方法(制御方法)を説明する。
【0027】
先ず、制御部(制御装置)12からの指令により、摩擦撹拌接合開始前(接合ツール部6を被接合部材9(9a,9b)の接合部へ挿入する前)に距離計測センサ11により、第一の基準点と第二の基準点との距離である基準距離(L1)を計測する。(ステップS1)ここで、このステップS1を「計測モード」と呼ぶ。
【0028】
つまり、制御部(制御装置)12は、接合ツール部6(プローブ部8)が被接合部材9(9a,9b)に挿入される前段階において、接合ツール部6(プローブ部8)の先端位置を接合時のZ軸方向位置まで降下して位置合わせを行い、第一の基準点と載置台10上の第二の基準点との間の距離である基準距離(L1)を距離計測センサ11から取得する「計測モード」を有している。
【0029】
次に、制御部(制御装置)12からの指令により、摩擦撹拌接合中(接合開始から所定の時間(t)経過後)に距離計測センサ11により、第一の基準点と第二の基準点との距離である現在距離(L2)を計測する。(ステップS2)
続いて、制御部(制御装置)12において、ステップS1で計測した基準距離(L1)とステップS2で計測した現在距離(L2)との偏差(ΔL)を算出し、予め設定した所定の値(閾値:Lt)と比較する。(ステップS3)この偏差(ΔL)は摩擦撹拌接合時の接合ツール部6の撓み量である。
【0030】
基準距離(L1)と現在距離(L2)の偏差(ΔL)が閾値(Lt)を超えた場合(ΔL>Lt)、制御部(制御装置)12の指令により、算出した偏差(ΔL)に基づいて接合ツール部6のZ軸方向(上下方向)の位置を所定の変化率(移動速度)で制御しながら被接合部材9(9a,9b)の摩擦撹拌接合を行う。(ステップS4)
ここで、このステップS4を「制御モード」と呼ぶ。制御部(制御装置)12は、この「制御モード」において、ステップS3で算出した偏差(ΔL)が所定の値(閾値:Lt)を超えた場合、Z軸方向において偏差(ΔL)の生じた方向と反対方向に偏差分(ΔL)を補正するホルダ部(接合ヘッド)5の変更位置信号を生成し、装置本体2に出力する。
【0031】
この変更位置信号は、例えば、ホルダ部(接合ヘッド)5を単位時間当たり所定の距離を移動させ、現在距離(L2)或いは偏差(ΔL)が所定の値の範囲内に到達するまで装置本体2に継続出力する。装置本体2は、制御部(制御装置)12から取得する変更位置信号に基づき、ホルダ部(接合ヘッド)5のZ軸方向の位置を設定して所定の変化率(移動速度)でホルダ部(接合ヘッド)5を移動させる。
【0032】
なお、この「制御モード」は摩擦撹拌接合中に継続的に行ってもよく、所定の時間間隔で断続的に繰返すように制御してもよい。
【0033】
また、「制御モード」を繰り返す所定の時間間隔は、被接合部材9(9a,9b)の特性に基づき予め決定し、被接合部材9(9a,9b)の特性と対応する所定の時間間隔を記憶した特性テーブルから被接合部材9(9a,9b)の特性に対応する値を選択することも可能である。
【0034】
さらに、「制御モード」において、偏差(ΔL)に基づいて変更位置信号を出力した後、制御モードを停止する「制御停止モード」を設定し、断続的に制御するようにしてもよい。
【0035】
一方、基準距離(L1)と現在距離(L2)の偏差(ΔL)が閾値(Lt)以下である場合(ΔL≦Lt)、接合ツール部6のZ軸方向(上下方向)の位置制御を行わずに、現在距離(L2)を計測した際の接合条件を維持したまま、被接合部材9(9a,9b)の摩擦撹拌接合を継続する。(ステップS5)
その後、制御部(制御装置)12からの指令により、接合ツール部6の移動量(経過時間)が所定の値(位置・時間)に達した時点で接合ツール部6を被接合部材9(9a,9b)の接合部から引き抜いて、摩擦撹拌接合処理を終了する。(ステップS6)
以上説明したように、本実施例の摩擦撹拌接合装置および摩擦撹拌接合方法によれば、摩擦撹拌接合開始前のホルダ部(接合ヘッド)5(距離計測センサ11)の所定の位置(第一の基準点)と被接合部材9(9a,9b)を載置する載置台10の所定の位置(第二の基準点)との間の距離(基準距離:L1)を計測し、摩擦撹拌接合中(接合開始から所定の時間(t)経過後)に再び第一の基準点と第二の基準点との距離(現在距離:L2)を計測し、その偏差ΔL(L2−L1)が所定の範囲内になるように接合ツール部6のZ軸方向(上下方向)の位置を補正することで、接合ツール部6の押圧により生じる撓みを補正することができる。
【0036】
これにより、要求タクトタイムの短い生産ラインであっても、被接合部材同士の高品質(高精度)な接合が可能となる。
【0037】
なお、
図3のステップS6において、被接合部材9(9a,9b)の一端から摩擦撹拌接合を開始し、被接合部材9(9a,9b)の他端まで連続的に摩擦撹拌接合を行う、いわゆる「線接合」を行うことで、接合の質(信頼性)をより高めることができる。
【0038】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。