(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553794
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】データ処理システムおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/18 20060101AFI20190722BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20190722BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
G06F1/18 E
G06F1/16 312K
H01R13/639 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-180439(P2018-180439)
(22)【出願日】2018年9月26日
(62)【分割の表示】特願2017-168518(P2017-168518)の分割
【原出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2019-16385(P2019-16385A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】201203884-0
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェオ チン ビイング
(72)【発明者】
【氏名】マ ユガング
【審査官】
佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0049247(US,A1)
【文献】
特開昭63−274070(JP,A)
【文献】
特開2005−339022(JP,A)
【文献】
特開2006−210269(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0081377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16− 1/18
H01R 13/56− 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子機器と、
第2の電子機器と
を備え、
前記第1の電子機器は、
第1のケーシングと、
前記第1のケーシングに設けられた突出部と、
電磁カプラよりなる第1の接続部と、
前記第1のケーシングに設けられた一以上の磁石と
を有し、
前記第2の電子機器は、
前記第1のケーシングよりも相対的に大きい第2のケーシングと、
前記第2のケーシングに設けられ、前記突出部を受容する形状の凹みと、
電磁カプラよりなる第2の接続部と、
前記第2のケーシングに設けられた一以上の磁石と
を有し、
前記凹みは、少なくとも一つの摺動面を有し、
前記凹みの任意の深さ位置における直径は、対応する高さ位置における前記突出部の直径よりも大きく、
前記第1の電子機器および前記第2の電子機器に、前記一以上の磁石により発生した力がかかると、前記第1の電子機器が前記少なくとも一つの摺動面に沿って摺動することにより、前記突出部が前記凹みに沈み込み、前記第1の電子機器が前記第2の電子機器に対して自動的に位置決めされ、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが整合すると共に前記第1の接続部と前記第2の接続部との接触面で高速データ通信が成立する
データ処理システム。
【請求項2】
前記第1の電子機器および前記第2の電子機器の各々は、
電子回路と、
前記電子回路と前記一以上の磁石との間に設けられ、または前記一以上の磁石に固定されたヨークと
を更に備えた請求項1記載のデータ処理システム。
【請求項3】
前記突出部は略円錐台形状を有し、前記凹みは略円錐台形状を有する
請求項1または2記載のデータ処理システム。
【請求項4】
前記突出部は、先端に向かって傾斜した第1の斜め側壁を有し、
前記凹みは、前記少なくとも一つの摺動面として、底面に向かって傾斜した第2の斜め側壁を有し、
前記第1の斜め側壁の傾斜よりも前記第2の斜め側壁の傾斜のほうが緩やかである
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
【請求項5】
前記突出部は湾曲面を有する
請求項1または2記載のデータ処理システム。
【請求項6】
前記突出部は先端として平坦な底面をもつ略半球状を有し、前記凹みは平坦な底面をもつ滑らかな凹状の形状を有する
請求項5記載のデータ処理システム。
【請求項7】
前記凹みの縁における直径は、前記突出部の付け根における直径よりも大きく、
前記凹みの底面における直径は、前記突出部の前記付け根における前記直径よりも小さく、かつ、前記突出部の先端における直径に等しい
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
【請求項8】
前記第1の接続部および前記第2の接続部は平坦である
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
【請求項9】
第2の電子機器に接続される第1の電子機器であって、
前記第1の電子機器は、
第1のケーシングと、
前記第1のケーシングに設けられた突出部と、
電磁カプラよりなる第1の接続部と、
前記第1のケーシングに設けられた一以上の磁石と
を有し、
前記第2の電子機器は、
前記第1のケーシングよりも相対的に大きい第2のケーシングと、
前記第2のケーシングに設けられ、前記突出部を受容する形状の凹みと、
電磁カプラよりなる第2の接続部と、
前記第2のケーシングに設けられた一以上の磁石と
を有し、
前記凹みは、少なくとも一つの摺動面を有し、
前記凹みの任意の深さ位置における直径は、対応する高さ位置における前記突出部の直径よりも大きく、
前記第1の電子機器および前記第2の電子機器に、前記一以上の磁石により発生した力がかかると、前記第1の電子機器が前記少なくとも一つの摺動面に沿って摺動することにより、前記突出部が前記凹みに沈み込み、前記第1の電子機器が前記第2の電子機器に対して自動的に位置決めされ、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが整合すると共に前記第1の接続部と前記第2の接続部との接触面で高速データ通信が成立する
第1の電子機器。
【請求項10】
第1の電子機器に接続される第2の電子機器であって、
前記第1の電子機器は、
第1のケーシングと、
前記第1のケーシングに設けられた突出部と、
電磁カプラよりなる第1の接続部と、
前記第1のケーシングに設けられた一以上の磁石と
を有し、
前記第2の電子機器は、
前記第1のケーシングよりも相対的に大きい第2のケーシングと、
前記第2のケーシングに設けられ、前記突出部を受容する形状の凹みと、
電磁カプラよりなる第2の接続部と、
前記第2のケーシングに設けられた一以上の磁石と
を有し、
前記凹みは、少なくとも一つの摺動面を有し、
前記凹みの任意の深さ位置における直径は、対応する高さ位置における前記突出部の直径よりも大きく、
前記第1の電子機器および前記第2の電子機器に、前記一以上の磁石により発生した力がかかると、前記第1の電子機器が前記少なくとも一つの摺動面に沿って摺動することにより、前記突出部が前記凹みに沈み込み、前記第1の電子機器が前記第2の電子機器に対して自動的に位置決めされ、前記第1の接続部と前記第2の接続部とが整合すると共に前記第1の接続部と前記第2の接続部との接触面で高速データ通信が成立する
第2の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも二つの電子機器を備えたデータ処理システムに係り、特にそれらの機器がデータ転送のためどのように接続されているかに関する。電子機器の一方または両方は、カメラおよびスマートフォンのようなモバイル機器並びに表示器具、記憶ドライブおよび他の任意のデータ処理用機器のような対応機器であってもよいが、これらに限られない。
【背景技術】
【0002】
機器間のデータ交換を高効率で信頼性の高いチャネルを介して行いたい状況は数多くある。多数の機器を接続する既存の手段には、データ通信用のケーブルまたはコネクタの使用(USB接続など)がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−277253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二つの機器をもっと便利かつ簡単に接続できるようにしたいという要望は増大し続けており、有線接続はそのような要望とは両立しにくい。その理由は、コネクタと機器のポートとを必ず手で位置合わせして接続しなければならないからである。コネクタと接続ポートの摩耗もまた問題である。
【0005】
有線接続のほか、ブルートゥース(登録商標)および赤外プロトコルのようなワイヤレスプロトコルも、二つの機器間のデータ通信に利用可能である。ワイヤレス接続チャネルは、簡単な接続手順という利点をもたらす。というのも、二つの機器が物理的に接続されることなく遠方から便利に通信可能となるからである。このようにして、コネクタとポートとを手で位置合わせしなくてもよくなり、データは空間を自由に伝播する電磁(electro-magnetic;EM)波により通信される。一方、ワイヤレス通信は、伝送の指向性が少ない。エネルギー損失および伝送効率の低さは、長距離ワイヤレス通信の問題である。より重大なことに、そのようなEM放射の人体への有害な副作用に関する懸念の増大がある。
【0006】
望ましいのは、簡便で摩耗しにくく手間のかからない電子機器間通信チャネルを提供し、接続ワイヤおよびコネクタを除去する一方、EM放射の損失を最小化することである。近年、近接接触データ通信が研究されている。この場合、二つの電子機器を所期の位置で接触させることにより、各機器の外装ケーシングに設けられたEMカプラを整列させ、これによりデータ通信のための面接続をとるようにしている。しかし、そのためには、二つの機器/カプラを何らかの手作業により整列させなければならないのが通常である。これまでは、この整列は、機械的なガイドまたは溝付きプラグにより行われている。
【0007】
従って、ユーザがカメラまたはスマートフォンなどの携帯機器を表示器具または記憶ドライブなどの対応機器に何気なく置くと、ユーザが意識的にそれらの機器を正確に整列させなくても、それらの機器の二つのカプラが自動的に整列されるカップリング技術を持つことが望ましいであろう。そのようにすれば、活発なデータ通信が面接触により達成可能となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概略的に言えば、本開示は、二つの電子機器を備え、それらの各々は外装ケーシングに埋め込まれた接続部を有し、第2の電子機器は、二つの機器間の相対移動を方向づける一以上の摺動面を有し、摺動時にそれらが自動的に正確に整列するデータ処理システムを提案するものである。機器のケーシングはプラスチックにより構成されていてもよい。
【0009】
具体的には、本開示のデータ処理システムは、第1の電子機器と、第2の電子機器とを備える。第1の電子機器は、第1のケーシングと、第1のケーシングに設けられた突出部と、電磁カプラよりなる第1の接続部と、第1のケーシングに設けられた一以上の磁石とを有する。第2の電子機器は、第1のケーシングよりも相対的に大きい第2のケーシングと、第2のケーシングに設けられ、突出部を受容する形状の凹みと、電磁カプラよりなる第2の接続部と、第2のケーシングに設けられた一以上の磁石とを有する。凹みは、少なくとも一つの摺動面を有する。凹みの任意の深さ位置における直径は、対応する高さ位置における突出部の直径よりも大きい。第1の電子機器および第2の電子機器に、一以上の磁石により発生した力がかかると、第1の電子機器が少なくとも一つの摺動面に沿って摺動することにより、突出部が凹みに沈み込み、第1の電子機器が第2の電子機器に対して自動的に位置決めされ、第1の接続部と第2の接続部とが整合すると共に第1の接続部と第2の接続部との接触面で高速データ通信が成立する。
本開示の電子機器は、第1の電子機器に接続される第2の電子機器である。第1の電子機器は、第1のケーシングと、第1のケーシングに設けられた突出部と、電磁カプラよりなる第1の接続部と、第1のケーシングに設けられた一以上の磁石とを有する。第2の電子機器は、第1のケーシングよりも相対的に大きい第2のケーシングと、第2のケーシングに設けられ、突出部を受容する形状の凹みと、電磁カプラよりなる第2の接続部と、第2のケーシングに設けられた一以上の磁石とを有する。凹みは、少なくとも一つの摺動面を有する。凹みの任意の深さ位置における直径は、対応する高さ位置における突出部の直径よりも大きい。第1の電子機器および第2の電子機器に、一以上の磁石により発生した力がかかると、第1の電子機器が少なくとも一つの摺動面に沿って摺動することにより、突出部が凹みに沈み込み、第1の電子機器が第2の電子機器に対して自動的に位置決めされ、第1の接続部と第2の接続部とが整合すると共に第1の接続部と第2の接続部との接触面で高速データ通信が成立する。
本開示の電子機器は、第2の電子機器に接続される第1の電子機器である。第1の電子機器は、第1のケーシングと、第1のケーシングに設けられた突出部と、電磁カプラよりなる第1の接続部と、第1のケーシングに設けられた一以上の磁石とを有する。第2の電子機器は、第1のケーシングよりも相対的に大きい第2のケーシングと、第2のケーシングに設けられ、突出部を受容する形状の凹みと、電磁カプラよりなる第2の接続部と、第2のケーシングに設けられた一以上の磁石とを有する。凹みは、少なくとも一つの摺動面を有する。凹みの任意の深さ位置における直径は、対応する高さ位置における突出部の直径よりも大きい。第1の電子機器および第2の電子機器に、一以上の磁石により発生した力がかかると、第1の電子機器が少なくとも一つの摺動面に沿って摺動することにより、突出部が凹みに沈み込み、第1の電子機器が第2の電子機器に対して自動的に位置決めされ、第1の接続部と第2の接続部とが整合すると共に第1の接続部と第2の接続部との接触面で高速データ通信が成立する。
【0010】
「傾斜」という用語は、「平行でもなく垂直でもない」という慣用的な意味を与えられている。ある面に向かって傾斜する方向の力とは、その力が、その面の法線方向に対して0より大きく90°より小さい角度を持つ方向であることを意味する。好ましくは、その角度は10°から80°まで、または20°ないし70°の範囲にある。互いに傾斜した二つの摺動面とは、二つの面の法線方向が互いに平行でもなく垂直でもないことを意味する。概ね非平坦すなわち湾曲した面は、互いに傾斜した無数の面を構成すると考えられる。
【0011】
機械的ガイドは二つの機器が互いに接近する明確な経路を規定するが、摺動面は、機械的ガイドとは異なり、そのような経路の選択肢の範囲を規定する。例えば、二つの機器は摺動面上の任意の位置でたまたま接触してもよく、摺動面は二つの機器間の相対移動を方向づけ、それらの一方を他方に対して摺動させ、手を使わずに所期の位置で自動的に停止させるであろう。有利なことに、二つの機器のケーシングに設けられた接続部は、磁気吸引の影響で自然と自動的に向かい合わせに整合し、外部からの荷重、追加の整合の支持物またはクランプ工具を用いなくてもよい。そのような面接続はEM波がそれらの間を進むのを促進すると共に、指向性を最大化し、放射漏れを最小化する。
【0012】
典型的には、第1および第2の電子機器の各々は、前述した力の成分を発生する一以上の磁石を更に備えている。典型的には、磁石は、接続部間の電磁信号が磁気干渉から遮蔽されるよう構成されている。
【0013】
有利なことに、二つの機器間の磁気吸引は、外部の道具や機械的ガイドを用いることなく電子機器を所期の位置で十分に接触させるのを効果的に助ける。この吸引は、更に、二つの接続部の面接続の安定性を高める。
【0014】
摺動面は、典型的には、それが設けられているケーシングの全体の輪郭に向かって傾斜
している。例えば、多くのケーシングは全体として直方体の輪郭(凸閉包)を有しており、少なくとも一つの摺動面の法線方向は直方体の各面に向かって傾斜している。
【0015】
一実施の形態では、第1の電子機器は平坦面を有し、第2の電子機器は斜め側壁および底面を有する凹みを備え、側壁および底面が摺動面であり、凹みは第1の電子機器を受容するように構成された形状を有する。
【0016】
他の実施の形態では、第2の電子機器は面およびこの面から突出する一以上の突起を備え、面と一以上の突起の表面とが摺動面であり、摺動面は、面が上向きの場合に第1の接続部および第2の接続部が整合する位置で二つの電子機器の相対移動を停止させるよう配置されている。典型的には、突起は複数設けられ、複数の突起は、面が上向きであり第1の接続部および第2の接続部が整合している場合に、第1の電子機器を載架するのに適したパターンで配置されている。典型的には、突起は円錐台形状を有する。典型的には、突起の断面積は、面に向かって減少する。
【0017】
「上向き」の用語は、「全体的に鉛直」であるという慣用的な意味を与えられる。ある面が上向きであるとは、一般に、面の法線が水平に対して0−20°、またはより好ましくは0−10°の角度をもつことを意味する。
【0018】
更に他の実施の形態では、第1の電子機器は湾曲面をもつ突出部を備え、第2の電子機器は第1の電子機器の突出部を受容するよう構成された形状の凹みを備えている。典型的には、第1の電子機器は、半球状の突出部を備える。典型的には、凹みは、滑らかな凹状の形状を有する。
【0019】
更に他の実施の形態では、第1の電子機器は円錐台形状の突出部を備え、第2の電子機器は第1の電子機器の突出部を受容するよう構成された形状の凹みを備えている。典型的には、凹みは円錐台形状を有する。
【0020】
上記実施の形態のいずれかにおいて、第1の接続部および第2の接続部は平坦であってもよい。少なくとも一つの摺動面は典型的には第2の接続部の面に向かって傾斜している。
【0021】
上記実施の形態のいずれかにおいて、電子機器の一方はポータブル/モバイル電子機器であってもよく、他方は持ち運び困難/固定の電子機器であってもよい。あるいは、両方の機器がモバイル機器であってもよい。更に、本開示は、追加の電子機器がある場合、すなわち全部で三つ以上の機器、例えば二つのモバイル電子機器を受容する大型固定電子機器がある場合に適用可能である。それらの電子機器は、個別に、例えば異なる製造者によって、製造され販売されるものであってもよい。従って、別の見方をすれば、本開示は、単一の電子機器であって、第2の、別途設けられた電子機器と接続されるよう組み合わせられるものとして定義されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態に係るデータ処理システムの断面を表す概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の他の実施の形態に係るデータ処理システムの概略図である。
【
図3a】
図3aは、本開示の第3の実施の形態に係るデータ処理システムの断面を表す概略図である。
【
図3b】
図3bは、第3の実施の形態に基づく変形された実施の形態のデータ処理システムの断面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の実施の形態を例示する添付図面に関して、本開示を更に説明することが便宜であろう。本開示の他の実施の形態は可能であり、従って、添付図面の詳細は、前述した本開示の記述の一般性に優先するものとして理解されるべきではない。
【0024】
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(第2の機器のケーシングに、傾斜した側壁と、平坦な側面とを有する凹みを設け、この凹みに第1の機器を受容する例)
2.第2の実施の形態(二つの機器の面接触が上向きになっている例)
3.第3の実施の形態(第1の機器のケーシングに、円錐台の形状をもつ突出部を設け、第2の機器のケーシングに、突出部を受容する形状をもつ凹みを設ける例)
4.第3の実施の形態に基づく変形された実施の形態(第1の機器のケーシングに、湾曲面をもつ突出部を設け、第2の機器のケーシングに、突出部を受容する形状をもつ凹みを設ける例)
5.変形例(第1および第2の機器にマグネットを設ける例)
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、データ処理システム100を表したものである。データ処理システム100は、第1のデータ処理機器101と、第2のデータ処理機器104とを備えている。第1のデータ処理機器101は、第1の機器101の外装ケーシング上に第1の電磁カプラ102を有している。第2のデータ処理機器104は、第2の機器104の外装ケーシング上に第2の電磁カプラ106を有している。第1の機器101のケーシングは、カプラ102が配置された平坦面108を有し、第2の機器104のケーシングは凹みを有している。
図1に示したように、この凹みは、斜め側壁110,112と、平坦な底面114とを有し、第1の機器110を受容するようになっている。側壁110,112は底面114に向かって傾斜している。
【0026】
従って、ユーザが何気なく第1の電子機器101を第2の機器104の凹みのどこかの部分に置くと、第1の機器101は重力により側壁110,112の一方および底面114に沿って摺動し、底面114に沈み込む。このようにして、二つの機器101,104の二つのカプラ102,106は、向かい合わせに整合され、それらの接触面で高速データ通信が成立する。
【0027】
本実施の形態では、斜め側壁110,112および底面114が摺動面の一具体例に対応し、側壁110,112はまた重力の方向に向かって傾斜している。好ましくは、第1の機器101は、第2の機器104よりも小型で軽量である。好ましくは、底面114の形状および寸法は、第1の機器101の面108のそれに適合している。なお、摺動面110,112,114の少なくとも二つは互いに傾斜している。
【0028】
(第2の実施の形態)
図2は、本開示の他の実施の形態を表したものである。本実施の形態では、二つの機器の接触面が上向きになっている。データ処理システム200は第1のデータ処理機器201と、第2のデータ処理機器204とを備えている。第1のデータ処理機器201は、第1の機器201の外装ケーシング上に第1の電磁カプラ202を有している。第2のデータ処理機器204は、第2の機器204の外装ケーシング上に第2の電磁カプラ206を有している。第2の機器204のケーシングは全体として上向きの面208を有し、この面208上にカプラ206が配置され、一以上の突起210が面208から突出している。
図2に示したように、複数の突起が設けられている場合には、突起210は、面208が上向きでありカプラ202,206が整合している場合に、第1の機器を載架するのに適したパターンに配置される。突起の上面は水平方向に対して傾斜している。
【0029】
ユーザが第1の機器201を突起210上に置くと、第1の機器201は重力により突起210の上面に沿って下方に摺動し、最終的に面208上の所期の位置で停止する。あるいは、ユーザが第1の機器201を面208上に置くと、第1の機器201はまず面208に沿って下方に摺動し、突起210の表面に沿って摺動したのち所期の位置で停止するよう方向づけられる。このようにして、二つの機器の二つのカプラ202,206が整合し、これにより、それらの接触面で高速データ通信が成立する。
【0030】
本実施の形態では、突起210の上面および面208が摺動面の一具体例に対応する。なお、突起210の少なくとも上面は、重力方向に対して傾斜している。また、摺動面の少なくとも二つが互いに傾斜している。
【0031】
なお、
図2に示した複数の突起210は、一以上の突起が設けられる可能性を例示したものである。また、面208が二つの機器の相対移動を方向づけて上記の所期の位置で停止させるように設けられていれば、面208は突起を一つだけ有することも可能である。
【0032】
好ましくは、第1の機器201は、第2の機器204よりも小型で軽量である。突起210は、断面積が面208に向かって減少する円錐台形状を有していてもよい。よって、突起210の上面は、第1の機器201を面208に向かって摺動させる斜面を集団で形成し、第1の機器201を集団で支持する。
【0033】
(第3の実施の形態)
図3aは、本開示の第3の実施の形態を表したものである。それは、第1のデータ処理機器301と、第2のデータ処理機器304とを備えている。第1のデータ処理機器301は、第1の機器301の外装ケーシング上に第1の電磁カプラ302を有している。第2のデータ処理機器304は、第2の機器304の外装ケーシング上に電磁カプラ306を有している。第1の機器301のケーシングは、円錐台形状をもつ突出部308を有し、第2の機器304のケーシングは、第1の機器301の突出部308を受容する形状の凹みを有している。この凹みは、底面314に向かって傾斜した斜め側壁310,312をもつ円錐台形状を有していてもよい。
【0034】
ユーザが第1の機器301の突出部308を第2の機器304の凹みのどこかの部分に置くと、第1の機器301は重力により斜め側壁310,312の一方および底面314に沿って摺動し、凹みの底面に沈み込む。
【0035】
本実施の形態では、側壁310,312および底面314が摺動面の一具体例に対応する。このようにして、二つの機器の二つのカプラ302,306が整合し、これにより、それらの接触面で高速データ通信が成立する。
【0036】
有利なことに、カプラの面接触面積が小さいので、第1の機器301の重量により両方のカプラが強固に押圧される(第1の機器101の重量が面108全体に分散される第1の実施の形態と対比した場合)。摺動面310,312,314の少なくとも二つは互いに傾斜している。
【0037】
(第3の実施の形態に基づいて変形された実施の形態)
図3bは、
図3aから少し変形された実施の形態を表したものである。本実施の形態では、第1の電子機器301のケーシングは、底部では概ね平坦な湾曲面をもつ突出部308を備え、第2の電子機器304のケーシングは、突出部308を受容する形状の凹みを備えている。突出部308は、概ね平坦な底面をもつ半球状の形状を有していてもよく、凹みは、概ね平坦な底面をもつ滑らかな凹状の形状を有していてもよい。凹状の凹みの直径は、底面を除き、半球状の突出部308のそれよりも大きくてもよい。有利なことに、これにより、円錐台形状の突出部308(
図3a参照。)を有する実施の形態に比べて、突出部308を凹みの側壁に沿ってより穏やかに滑らかに摺動させることが可能となる。
【0038】
本実施の形態では、凹みの表面の輪郭は、概ね湾曲しており、従って、互いに傾斜した無数の摺動面を構成していると考えられる。凹みの深さは、突出部308の高さに適合していてもよい。カプラ302,306の寸法に応じて、突出部308の平坦な底面および凹みの平坦な底面は、カプラ302,306の各々がそれぞれ水平方向で底面の中心に合うよう調整されていてもよい。
【0039】
(変形例)
上記実施の形態のいずれかにおいて、第1および第2の機器の各々は、磁気吸引を生じる一以上の小型マグネットを備え、二つの機器の相対移動を更に推進し、二つのカプラの整合の安定性を向上させるようにしてもよい。好ましくは、この磁石は、カプラ間で通信される電磁信号が磁石による磁気干渉から遮蔽されるように構成されている。これを実現するには、磁界を制限する/磁界の方向を変更する通常の方法を用いてもよい。例えば、少なくとも一枚の金属板(ヨーク)を設けて(例えば磁石に固定して)磁束を閉じ込め、第1および/または第2の機器内の電子回路が望まない破壊から保護されるようにすることが可能である。ヨークは磁石と電子回路との間にあってもよい。ヨークは薄い金属板でもよい。上記実施の形態のいずれかにおいて、二つのカプラは平坦であってもよい。
【0040】
第1の機器が第2の機器に対して自動的に位置合わせされ、カプラが整合すると、整合位置においてカプラ間で面接続が成立し、二つの機器間の活発なデータ通信が可能となる。両方のカプラはデータ通信動作期間中に十分な接触を維持する。
【0041】
以上の実施の形態は例として説明されたものに過ぎず、説明された実施の形態に対して請求項の精神および範囲を離れることなく細部において多様な変形がなされうることが理解されるであろう。
【0042】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
一以上のデータ処理部、前記一以上のデータ処理部を収容する第1のケーシング、および前記第1のケーシングに設けられた第1のデータ転送電磁カプラを有する第1の電子機器と、
一以上のデータ処理部、前記一以上のデータ処理部を収容する第2のケーシング、および前記第2のケーシングに設けられた第2のデータ転送電磁カプラを有する第2の電子機器と
を備え、
前記第1および第2の電子機器のうち少なくとも一方は、前記第1および第2の電子機器間の相対移動を方向づける複数の摺動面を備え、少なくとも二つの前記摺動面は互いに傾斜しており、
前記第1および第2の電子機器に、少なくとも一つの前記摺動面に向かって傾斜する方向に共に力がかかると、前記電子機器の他方が前記一以上の摺動面に沿って摺動することにより、前記データ転送電磁カプラを整合させ、
前記第1の電子機器が前記第2の電子機器に対して自動的に位置決めされると共に前記カプラが整合し、前記整合位置で前記カプラの面接続が成立し、前記二つの電子機器間で高速データ通信が可能となる
データ処理システム。
(2)
前記力は、前記電子機器の一つが受ける重力である
前記(1)記載のデータ処理システム。
(3)
前記第1および第2の電子機器の各々は、前記力の成分を発生させる一以上の磁石を更に備えた
前記(1)または(2)記載のデータ処理システム。
(4)
前記磁石は、前記カプラ間で通信される電磁信号が磁気干渉から遮蔽されるよう構成されている
前記(3)記載のデータ処理システム。
(5)
前記第1の電子機器は平坦な表面を有し、前記第2の電子機器は、斜め側壁および底面をもつ凹みを備え、前記側壁および底面が前記摺動面であり、前記凹みは前記第1の電子機器を受容するよう構成された形状を有する
前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
(6)
前記第2の電子機器は、面と、前記面から突出した一以上の突起とを備え、前記面および前記一以上の突起の表面が前記摺動面であり、前記摺動面は、前記面が上向きである場合に、前記二つのカプラが整合する位置で前記二つの電子機器間の相対移動を停止させるよう配置されている
前記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
(7)
前記突起を複数備え、前記複数の突起は、前記面が上向きであり前記カプラが整合している場合に、前記第1の電子機器を載架するのに適したパターンに配置されている
前記(6)記載のデータ処理システム。
(8)
前記突起は円錐台形状を有する
前記(7)記載のデータ処理システム。
(9)
前記突起の断面積は前記面に向かって減少する
前記(7)または(8)記載のデータ処理システム。
(10)
前記第1の電子機器は円錐台形状の突出部を備え、前記第2の電子機器は前記第1の電子機器の前記突出部を受容するよう構成された形状の凹みを備えた
前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
(11)
前記凹みは円錐台形状を有する
前記(10)記載のデータ処理システム。
(12)
前記第1の電子機器は湾曲面を有する突出部を備え、前記第2の電子機器は前記第1の電子機器の前記突出部を受容するよう構成された形状の凹みを備えた
前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
(13)
前記第1の電子機器は半球状の突出部を備えた
前記(12)記載のデータ処理システム。
(14)
前記凹みは滑らかな凹状の形状を有する
前記(12)または(13)記載のデータ処理システム。
(15)
前記二つのカプラは平坦である
前記(1)ないし(14)のいずれか1項に記載のデータ処理システム。
(16)
第2の電子機器に接続される第1の電子機器であって、
前記第1の電子機器は、一以上のデータ処理部、前記一以上のデータ処理部を収容する第1のケーシング、および前記第1のケーシングに設けられた第1のデータ転送電磁カプラを有し、
前記第1の電子機器は、前記第1および第2の電子機器間の相対移動を方向づける複数の摺動面を備え、少なくとも二つの前記摺動面は互いに傾斜しており、
前記第1および第2の電子機器に、少なくとも一つの前記摺動面に向かって傾斜する方向に力がかかると、前記第2の電子機器が前記一以上の摺動面に沿って摺動することにより、前記第1のデータ転送電磁カプラを前記第2の電子機器の第2のデータ転送電磁カプラに対して整合させ、
前記第1の電子機器が前記第2の電子機器に対して自動的に位置決めされると共に前記カプラが整合し、前記整合位置で前記カプラの面接続が成立し、前記二つの電子機器間で高速データ通信が可能となる
第1の電子機器。
【符号の説明】
【0043】
100,200…データ処理システム、101,201,301…第1のデータ処理機器、102,202,302…第1の電磁カプラ、104,204,304…第2のデータ処理機器、106,206,306…第2の電磁カプラ、108…平坦面、110,112…側壁、114…底面、208…面、210…突起、308,318…突出部、310,312…斜め側壁、314…底面。