特許第6553800号(P6553800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553800保護フィルム、粘着層付き保護フィルム、及び保護フィルム付き透明フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6553800
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】保護フィルム、粘着層付き保護フィルム、及び保護フィルム付き透明フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20190722BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C08J5/18CES
   C08J5/18CET
   B32B27/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-243546(P2018-243546)
(22)【出願日】2018年12月26日
【審査請求日】2018年12月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】大石 倫仁
(72)【発明者】
【氏名】門脇 直美
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−156048(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/022786(WO,A1)
【文献】 特開2013−029792(JP,A)
【文献】 特開2006−243216(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/035684(WO,A1)
【文献】 特開2016−020458(JP,A)
【文献】 特開2012−107162(JP,A)
【文献】 特開2008−221560(JP,A)
【文献】 特開2004−162048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02
5/12−5/22
B32B 1/00−43/00
C09J 7/00−7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層されて、前記透明フィルムを保護するために用いられる、剥離可能な保護フィルムであって、
前記保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含み、
前記保護フィルムは、前記透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRaが、7nm以上50nm以下であり、
前記保護フィルムは、前記透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRzが、47nm以上250nm以下であり、
前記保護フィルムは、ヘイズが、10%以下である、保護フィルム。
【請求項2】
前記保護フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの含有量が、20質量%未満である、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記スチレン系エラストマーのスチレン含有量が、15質量%以上である、請求項1又は2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護フィルムの前記透明フィルム側の表面に、少なくとも、粘着層が積層されている、粘着層付き保護フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護フィルムの前記透明フィルム側の表面に、少なくとも、粘着層と、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムとがこの順に積層されている、保護フィルム付き透明フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム、粘着層付き保護フィルム、及び保護フィルム付き透明フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種光学用途には、様々な光学フィルムが使用されており、例えば、液晶表示装置やEL表示装置など画像表示装置には、液晶基板、偏光フィルムなどとして、光学透明性、耐熱性などに優れた透明樹脂基材が使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、このような透明樹脂基材を構成する材料として、特定の構造を有する反応性シリル基を含む環状オレフィン系付加重合体を含む光学透明材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−212927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムは、優れた透明性と耐熱性を兼ね備えており、光学フィルム等として好適に使用することができる。
【0006】
環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムは、ロール状に巻き取り、製造、流通させることが求められる。ところが、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムがロール状に巻き取られると、透明フィルム同士が密着して、ロールからの巻き出し難い(すなわち、アンチブロッキング性に劣る)という問題がある。
【0007】
環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムのアンチブロッキング性の問題を解決する手法としては、例えば、透明フィルムに表面処理を施したり、保護フィルムを積層する方法などが考えられる。
【0008】
しかしながら、アンチブロッキング性の問題を解決するために、透明フィルムに表面処理を施すと、光学フィルム等として要求される各種光学特性に影響を与える可能性がある。
【0009】
さらに、透明フィルムの製造工程や、巻き出し工程においては、外観検査などが行われる。このため、本発明者らは、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層してアンチブロッキング性を高めることができ、さらに、保護フィルムが透明フィルムに積層された状態で外観検査を行うことができれば、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムや、さらにはこれを用いた製品の生産効率が向上すると考えた。
【0010】
このような状況下、本発明は、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムのアンチブロッキング性を向上させることができ、かつ、当該透明フィルムに積層された状態で透明フィルムの外観検査を可能とする保護フィルムを提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該保護フィルムを用いた、粘着層付き保護フィルム、及び保護フィルム付き透明フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層されて、前記透明フィルムを保護するために用いられる、剥離可能な保護フィルムであって、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含み、透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRa,Rzをそれぞれ所定値以上に設定した上で、さらに、ヘイズを所定値未満に設定することにより、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムのアンチブロッキング性を向上させることができ、かつ、当該透明フィルムに積層された状態で透明フィルムの外観検査が可能となることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を重ねて完成した発明である。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層されて、前記透明フィルムを保護するために用いられる、剥離可能な保護フィルムであって、
前記保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含み、
前記保護フィルムは、前記透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRaが、7nm以上であり、
前記保護フィルムは、前記透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRzが、47nm以上であり、
前記保護フィルムは、ヘイズが、10%以下である、保護フィルム。
項2. 前記保護フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの含有量が、20質量%未満である、項1に記載の保護フィルム。
項3. 前記スチレン系エラストマーのスチレン含有量が、15質量%以上である、項1又は2に記載の保護フィルム。
項4. 項1〜3のいずれか1項に記載の保護フィルムの前記透明フィルム側の表面に、少な くとも、粘着層が積層されている、粘着層付き保護フィルム。
項5. 項1〜3のいずれか1項に記載の保護フィルムの前記透明フィルム側の表面に、少なくとも、粘着層と、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムとがこの順に積層されている、保護フィルム付き透明フィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムのアンチブロッキング性を向上させることができ、かつ、当該透明フィルムに積層された状態で透明フィルムの外観検査を可能とする保護フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、当該保護フィルムを用いた、粘着層付き保護フィルム、及び保護フィルム付き透明フィルムを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】保護フィルムの模式図である。
図2】粘着層付き保護フィルムの模式図である。
図3】保護フィルム付き透明フィルムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルム(以下、単に「透明フィルム」ということがある)に積層されて、前記透明フィルムを保護するために用いられる。本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムから剥離可能に積層されている。本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含む。また、本発明の保護フィルムは、透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRaが、7nm以上であり、かつ、透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRzが、47nm以上である。さらに、本発明の保護フィルムは、ヘイズが10%以下である。本発明の保護フィルムは、これらの構成を充足していることにより、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムのアンチブロッキング性(具体的には、本発明の保護フィルム付き透明フィルムのアンチブロッキング性)を向上させることができ、かつ、当該透明フィルムに積層された状態で透明フィルムの外観検査を可能となっている。
【0016】
前述の通り、透明フィルムの製造工程や、巻き出し工程においては、外観検査などが行われる。このため、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層してアンチブロッキング性を高めることができ、さらに、保護フィルムが透明フィルムに積層された状態で外観検査を行うことができれば、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムや、さらにはこれを用いた製品の生産効率が向上するといえる。本発明の保護フィルムは、透明フィルムに積層された状態で透明フィルムの外観検査が可能となっているため、透明フィルムの生産性、さらには、当該透明フィルムを用いた製品の生産性の向上に寄与することができる。
【0017】
以下、本発明の保護フィルム、粘着層付き保護フィルム、及び保護フィルム付き透明フィルムについて、詳述する。
【0018】
なお、本明細書において、「〜」で結ばれた数値は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「〜」で結ぶことができるものとする。
【0019】
1.保護フィルム
本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層されて、透明フィルムを保護するために用いられる、剥離可能な保護フィルムである。具体的には、本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムの製造、流通過程などにおいて、透明フィルムを保護するために用いられ、透明フィルムを光学フィルム等として使用する際には、透明フィルムから剥離される。なお、後述の通り、本発明の保護フィルムは、粘着層を介して透明フィルムに積層され、粘着層と共に透明フィルムから剥離するように使用されてもよい。
【0020】
本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含む。本発明の保護フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーは、それぞれ、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0021】
なお、本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層されて、透明フィルムを保護するために用いられることから、環状オレフィン系樹脂を含む必要がある。保護フィルムに環状オレフィン系樹脂が含まれることにより、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムと積層された積層体において、保護フィルムと透明フィルムとの熱収縮率などの物性が同様となり、製造時の不具合(例えば、熱収縮率差に起因するカールなど)の発生が抑制される。
【0022】
環状オレフィン系樹脂は、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0023】
環状オレフィン系樹脂は、その製造方法から、環状オレフィンの付加(共)重合体またはその水素添加物、環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体またはその水素添加物、環状オレフィンの開環(共)重合体またはその水素添加物がある。
【0024】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、 シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環の環状オレフィンやその他の多環の環状オレフィンが挙げられ、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独で使用することが好ましい。
【0025】
環状オレフィンと共重合可能なα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のエチレンまたはα−オレフィンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができるが、エチレンの単独使用が好ましい。
【0026】
以上の環状オレフィン系樹脂のなかで、環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体またはその水素添加物が、特性とコストのバランスが取れている。なかでもノルボルネンとエチレンとの共重合体である環状オレフィン樹脂は、ノルボルネンとエチレン比率が容易に調整でき、その比率によりガラス転移点(Tg)を容易に調整できるため、特に好ましい。
【0027】
環状オレフィン系樹脂には、その特性を損なわない範囲で、他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有してもよい。また必要に応じて、熱可塑性樹脂、無機あるいは有機充填剤、各種配合剤等を含有してもよい。
【0028】
環状オレフィン系樹脂の製造方法は特に限定されないが、例えば、環状オレフィンとα−オレフィンとを含むモノマー組成物を反応器に導入し、そこに重合触媒や重合溶媒を加え、所定の反応温度、反応圧力で反応させ重合溶液とし、その後溶媒を除去する方法が挙げられる。反応温度や反応圧力は、環状オレフィンとα−オレフィンとの樹脂中の含有比率が所望の範囲になるように適宜設定することができる。
【0029】
市販されている環状オレフィン系樹脂としては、TOPAS(ポリプラスチックス社製)、アペル(三井化学社製)、ゼオネックス(日本ゼオン社製)、ゼオノア(日本ゼオン社製)、アートン(日本合成ゴム社製)が挙げられる。なかでも、ガラス転移点(Tg)が170℃以上の環状オレフィン系樹脂としては、TOPAS6017S−04などが例示できる。
【0030】
スチレン系エラストマーは、スチレンとブタジエンもしくはイソプレン等の共役ジエンの共重合体、および/または、その水素添加物である。スチレン系エラストマーは、スチレンをハードセグメント、共役ジエンをソフトセグメントとしたブロック共重合体であり、加硫工程が不用であり、好適に用いられる。また、水素添加をしたものは熱安定性が高く、さらに好適である。
【0031】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)などが挙げられる。
【0032】
本発明で用いるスチレン系エラストマーは、環状オレフィン系樹脂との屈折率の差が小さいことが透明性において好ましく、具体的には屈折率の差が±0.02以内、更に好ましくは±0.015以内が好ましい。
【0033】
本発明の保護フィルムにおいては、前述のアンチブロッキング性及び外観検査の観点から、スチレン系エラストマー中のスチレン含有量が、15質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の保護フィルムにおいては、前述のアンチブロッキング性及び外観検査の観点から、保護フィルム中のスチレン系エラストマーの含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該スチレン系エラストマーの含有量は、20質量%未満であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。本発明の保護フィルムにおいては、特に、スチレン含有量が15質量%以上、さらには30質量%以上、さらには50質量%以上であるスチレン系エラストマーの含有量が、これらの含有量を充足することが好ましい。
【0035】
本発明の保護フィルムには、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーに加えて、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて各種配合剤を添加することができる。各種配合剤としては、光学フィルム等に使用されているものであれば特に制限されず、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料などの着色剤、近赤外線吸収剤、蛍光増白剤などの配合剤、充填剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の保護フィルムは、ヘイズが10%以下であり、外観検査における本発明の効果を損なわなければ、無色透明であっても着色透明であってもよい。
【0037】
本発明の保護フィルムは、ヘイズが10%以下である。前述のアンチブロッキング性及び外観検査の観点から、本発明の保護フィルムのヘイズは、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。保護フィルムのヘイズは、JIS K 7136の規定に準拠して測定され、具体的な測定方法については実施例に記載の通りである。なお、本発明において、保護フィルムのヘイズは、例えば、保護フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの前記の種類や含有量などによって調整する。
【0038】
本発明の保護フィルムの全光線透過率については、本発明の効果を阻害しなければ特に制限されず、前述のアンチブロッキング性及び外観検査の観点から、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。保護フィルムの全光線透過率は、JIS K 7361−1の規定に準拠して測定され、具体的な測定方法については実施例に記載の通りである。なお、本発明において、保護フィルムの全光線透過率は、例えば、保護フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの前記の種類や含有量などによって調整する。
【0039】
本発明の保護フィルムは、透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRa(算術平均高さ)は、前述のアンチブロッキング性及び外観検査の観点から、当該表面粗さRaは、好ましくは7nm以上、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下である。保護フィルムの表面粗さRaは、JIS R 1683の規定に準拠して測定され、具体的な測定方法については実施例に記載の通りである。なお、本発明において、保護フィルムの表面粗さRaは、例えば、保護フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの前記の種類や含有量などによって調整する。
【0040】
本発明の保護フィルムは、透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRz(最大高さ)は、前述のアンチブロッキング性及び外観検査の観点から、当該表面粗さRzは、好ましくは47nm以上、より好ましくは85nm以上であり、さらに好ましくは180nm以上であり、また、好ましくは250nm以下、より好ましくは230nm以下である。保護フィルムの表面粗さRzは、JIS R 1683の規定に準拠して測定され、具体的な測定方法については実施例に記載の通りである。なお、本発明において、保護フィルムの表面粗さRzは、例えば、保護フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの前記の種類や含有量などによって調整する。
【0041】
本発明の保護フィルムは、スリップ性の観点から、透明フィルム側とは反対側の表面の静摩擦係数が、10.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。保護フィルムの静摩擦係数は、ASTM−D−1894の規定に準拠して測定され、具体的な測定方法については実施例に記載の通りである。なお、本発明において、保護フィルムの静摩擦係数は、例えば、保護フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの前記の種類や含有量などによって調整する。
【0042】
本発明の保護フィルムの厚みについては、本発明の効果を阻害しなければ特に制限されないが、前述のアンチブロッキング性及び外観検査の観点から、例えば20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0043】
本発明の保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含む樹脂組成物を用いて形成することができる。具体的には、環状オレフィン系樹脂の重合溶液とスチレン系エラストマーとを混合し、高温、減圧条件で溶媒を除去して溶融状態の混合物を得る。この混合物を押出し、ペレットを製造する。そして、このペレットを用い、Tダイ法やカレンダー法によって所定の厚さ、好ましくは20〜300μmの保護フィルムを成形することができる。但し、製造方法はこれに限定されず、例えば環状オレフィン樹脂にスチレン系エラストマーを溶融混練して添加してからペレットを製造してもよい。
【0044】
本発明の保護フィルムは、好ましくは当該樹脂組成物の二軸延伸により形成される。二軸延伸においては、例えば、未延伸の前記樹脂組成物のフィルムをMD(機械流れ方向)及びTD(MDに直交する方向)に延伸することで、形成される。二軸延伸することにより、未延伸の保護フィルムと比較して、靱性が高く、フィルム単体での割れを抑制することができる。
【0045】
2.粘着層付き保護フィルム
本発明の粘着層付き保護フィルムは、図2の模式図に示すように、前述の本発明の保護フィルム1の透明フィルム側(すなわち、透明フィルムと積層される側)の表面に、少なくとも、粘着層2が積層された積層体である。保護フィルムの詳細については前述の通りである。
【0046】
粘着層は、透明性を有する粘着剤により構成されている。粘着剤は、保護フィルムを透明フィルムから剥離可能なように、これらを密着させる層である。粘着剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0047】
粘着層の形成方法は特に制限されず、剥離ライナーに粘着剤組成物を塗布し、乾燥後、保護フィルムに転写する方法(転写法)、保護フィルムに、直接、粘着剤組成物を塗布、乾燥する方法(直写法)や共押出しによる方法等があげられる。なお粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を適宜に使用することもできる。
【0048】
粘着層の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜50μmであり、さらに好ましくは15〜35μmである。
【0049】
3.保護フィルム付き透明フィルム
本発明の保護フィルム付き透明フィルムは、図3の模式図に示すように、前述の本発明の保護フィルム1の透明フィルム側(すなわち、透明フィルムと積層される側)の表面に、少なくとも、粘着層2と、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルム3とがこの順に積層された積層体である。保護フィルム及び粘着層の詳細については前述の通りである。
【0050】
環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムとしては、特に制限されず、例えば液晶表示装置、EL表示装置、タッチパネル等の入力装置に使用される光学フィルム等として公知のものを使用することができる。すなわち、本発明の保護フィルムは、公知の粘着層と共に、公知の環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに適用されて、当該透明フィルムを保護することができる。
【0051】
透明フィルムに含まれる環状オレフィン系樹脂としては、特に制限されず、例えば、前述した環状オレフィン系樹脂が挙げられる。また、透明フィルムには、環状オレフィン系樹脂に加えて、前述したスチレン系エラストマーがさらに含まれていてもよい。
【0052】
透明フィルムの厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは13〜50μmであり、さらに好ましくは23〜40μmである。
【0053】
本発明の保護フィルム付き透明フィルムにおいて、保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムの製造、流通過程などにおいて、透明フィルムを保護するために、粘着層と共に積層されており、透明フィルムを光学フィルム等として使用する際には、粘着層と共に透明フィルムから剥離される。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0055】
実施例1〜4及び比較例1,2
<保護フィルムの製造>
φ32mm単軸押出機を用い、環状オレフィン系樹脂としてシクロオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス株式会社製)、スチレン系エラストマーとしてセプトンシリーズ(株式会社クラレ製)を、スチレン系エラストマーの含有量及びスチレンエラストマー中のスチレン含有量が、それぞれ、表1の値となるようにして混練(スクリュー回転数150rpm)しながら、コートハンガーダイ(300mm幅、ギャップ1.3mm)から押出(押出温度310℃、吐出量20kg/hr)し、ロールに巻きとって、厚さを80μmの各保護フィルムを得た。
【0056】
<保護フィルム付き透明フィルムの製造>
得られた各保護フィルムの片面(表面粗さRa,Rz、及び静摩擦係数を測定した面と反対側の面)に、下記アクリル系粘着剤(アクリル粘着:日本合成化学工業製アクリル系粘着剤コーポニルN−4900を100重量部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学製「テトラッドC」)1重量部を加えて粘着剤組成物とした。)を乾燥後の厚みが25μmになるように塗工機にて塗布し、乾燥させて粘着層付き表面保護フィルムを得た。
【0057】
次に、前記の粘着層付き表面保護フィルムの粘着層側と、シクロオレフィン系透明フィルム(日本ゼオン社製の商品名ZF−14、厚さ50μm)とを、ニップロールを用いて積層して、保護フィルム付き透明フィルムを得た。
【0058】
<全光線透過率>
前記で得られた各保護フィルムを試験片とし、JIS K 7361−1の規定に準拠して、保護フィルムの全光線透過率を測定した。全光線透過率の測定には、ヘイズメーターNDH5000(日本電色工業(株)製)を用いた。結果を表1に示す。
【0059】
<ヘイズ>
前記で得られた各保護フィルムを試験片とし、JIS K 7136の規定に準拠して、保護フィルムのヘイズを測定した。ヘイズの測定には、ヘイズメーターNDH5000(日本電色工業(株)製)を用いた。結果を表1に示す。
【0060】
<表面粗さRa,Rz>
前記で得られた各保護フィルムを試験片とし、JIS R 1683の規定に準拠して、表面粗さRa(算術平均高さ)及び表面粗さRz(最大高さ)をそれぞれ測定した。具体的には、表面粗さRa,Rzの測定には、それぞれ、走査型プローブ顕微鏡SPM−9600(島津製作所)を用い、保護フィルムの測定対象とする表面に対して、50μm×50μmの領域内での算術平均高さ、最大高さを算出した。結果を表1に示す。
【0061】
<静摩擦係数>
前記で得られた各保護フィルムを試験片とし、ASTM−D−1894の規定に準拠して静摩擦係数を測定した。具体的には、静摩擦係数の測定には、表面性測定機トライボギアHEIDON14FW(新東科学(株)製)を用いた。試験片を移動テーブルに固定し、保護フィルムの対面同士を滑らせたときの試験力(荷重)を計測し、下記式から摩擦係数を算出した。測定条件は、平板圧子63.5×63.5mm、荷重200gf、表面圧力0.49kPa、速度5.0mm/sec、移動距離50mmとした。結果を表1に示す。
静摩擦係数:μs=ピーク試験力/重り 動摩擦係数:μk=平均試験力/重り
【0062】
<アンチブロッキング性の評価>
前記で得られた各保護フィルム付き透明フィルムを用意し、保護フィルム側と透明フィルム側とを重ねてガラス板の上に設置して試験サンプルとした(透明フィルム側をガラス板側とした)。次に、試験サンプルを保護フィルムの上から指で押さえ、指を離した直後の保護フィルムと透明フィルム界面のウォーターマークの発現状況を目視で確認した。なお、試験サンプルにおいては、重ね合わせた界面にエアギャップ(クリアランス)が形成されないようにして評価を行った。アンチブロッキング性を以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
(判定基準)
A:目視にて判別可能な大きさのウォーターマークが発現しなかった
B:目視にて判別可能な大きさのウォーターマークが発現するが、10秒以内に消失した
C:目視にて判別可能な大きさのウォーターマークが発現した
【0063】
<外観検査>
前記で得られた各保護フィルム付き透明フィルムを用いて、透明フィルムの外観検査を以下の方法で行い、保護フィルムが積層された状態で透明フィルムの外観検査が行えることの評価を行った。判定基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
(検査方法)
保護フィルム付き透明フィルムを三波長蛍光灯透過光下で外観検査を実施した。
(判定基準)
A:上記検査方法にて透明フィルムの0.1mm2の異物、傷、汚れ等の外観欠点を検査でき るもの。
C:上記検査方法にて透明フィルムの0.1mm2の異物、傷、汚れ等の外観欠点を検査でき ないもの。
【0064】
【表1】
【符号の説明】
【0065】
1 保護フィルム
2 粘着層
3 透明フィルム
20 粘着層付き保護フィルム
30 保護フィルム付き透明フィルム
【要約】
【課題】環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムのアンチブロッキング性を向上させることができ、かつ、当該透明フィルムに積層された状態で透明フィルムの外観検査を可能とする保護フィルムを提供する。
【解決手段】
環状オレフィン系樹脂を含む透明フィルムに積層されて、前記透明フィルムを保護するために用いられる、剥離可能な保護フィルムであって、
前記保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーを含み、
前記保護フィルムは、前記透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRaが、7nm以上であり、
前記保護フィルムは、前記透明フィルム側とは反対側の表面の表面粗さRzが、47nm以上であり、
前記保護フィルムは、ヘイズが、10%以下である、保護フィルム。
【選択図】なし
図1
図2
図3