特許第6553859号(P6553859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553859
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】間仕切壁の耐震支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20190722BHJP
   E04B 9/30 20060101ALI20190722BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20190722BHJP
   E04B 2/82 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   E04B9/18 F
   E04B9/18 B
   E04B9/30 A
   E04B9/00 R
   E04B2/82 501T
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-203755(P2014-203755)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-70036(P2016-70036A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康人
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸博
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−291761(JP,A)
【文献】 特開2001−164678(JP,A)
【文献】 実開平04−113606(JP,U)
【文献】 特開2006−233651(JP,A)
【文献】 特開平08−068145(JP,A)
【文献】 特開平07−034572(JP,A)
【文献】 米国特許第04621470(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00−9/36
E04B 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の垂直荷重を支持しない間仕切壁と、
井をその端部より内周側の部分で吊支し、前記間仕切壁の上端部よりも低い位置に前記天井を配置する吊りボルトと、
前記吊りボルトの吊り元より低位置で、かつ前記天井の端部の上方に位置させて前記間仕切壁に固定されたブラケットと、
前記ブラケットに固定されて、前記吊りボルトの吊り元と前記ブラケットとを連結するブレースと、
を備えることを特徴とする間仕切壁の耐震支持構造。
【請求項2】
前記間仕切壁が軽量鉄骨からなるスタッドにボードを張り付けたものであり、前記ブレースの一端が前記ブラケットを介して前記スタッドに結合されたものであることを特徴とする請求項1に記載の間仕切壁の耐震支持構造。
【請求項3】
前記天井は、前記間仕切壁に前記端部を接触させていることを特徴とする請求項1又は2に記載の間仕切壁の耐震支持構造。
【請求項4】
前記天井は、前記間仕切壁にクリアランスを設けず直接前記端部を接触させていることを特徴とする請求項1又は2に記載の間仕切壁の耐震支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の間仕切壁に関し、特に間仕切壁の耐震性能を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物の天井には、吊り天井が多く用いられている。この種の吊り天井において耐震性を高めるための一般的な考え方は、吊りボルトにブレースを設置して揺れにくくすると共に、天井の外周端部と壁との間に十分なクリアランスをとることによって、地震時に天井と壁が衝突しないようにするというものである。
【0003】
図4は、従来の技術による天井と壁の取り合い部分を示すもので、躯体スラブ100に、多数の吊りボルト201によって天井200が吊り下げられている。この天井200は、天井下地材202及びその下面に取り付けられた天井パネル203からなり、天井下地材202は、吊りボルト201の下端にハンガー204を介して結合され水平かつ互いに平行に並設された複数の野縁受け205と、この野縁受け205の下側に直交して結合され水平かつ互いに平行に並設された複数の野縁206からなり、天井パネル203が、この野縁206の下面にビス等によって取り付けられている。
【0004】
そして図中に破線で示すように、吊りボルト201の上部とこれに隣接する吊りボルト201の下部又は野縁受け205との間に、斜材であるブレース207を設置すると共に、天井200の端部と壁300との間に十分なクリアランスδが設定されている。
【0005】
しかしながら、天井裏空間S2における空調等の設備機器の配置によっては、計算上必要なブレース207を設けることができない場合があり、あるいはクリーンルームなどのように、天井200の下の室内空間S1の使用条件によっては十分なクリアランスδを設定することができない場合がある。そしてこのような場合は、天井200が地震発生時に大きく横揺れして、その端部が壁300に衝突し、その衝撃によって天井パネル203が野縁206から脱落したり、あるいは天井下地材202における野縁206や野縁受け205が脱落したりするおそれがある。
【0006】
一方、図5に示すように、天井200と壁300との間にクリアランスを設けず、地震等による水平方向の荷重を天井200の端部から壁300に直接伝達することによって、天井200の耐震性を確保するという方法もある。すなわち天井200の揺れをブレースによって押さえるのではなく、天井200と壁300とを接触させておくことで天井200の揺れを抑えるものであり、天井裏空間S2における空調等の設備機器の配置スペースを十分に確保することができる。
【0007】
このような構造において、壁300が、建物の垂直荷重を支持せず、一定間隔で配置された軽量鉄骨からなるスタッド302を下地材としてその両面に石膏ボード301を張った間仕切壁であるような場合は、地震等による天井200からの水平方向の荷重が、石膏ボード301から内側のスタッド302、及びその上下のランナ303を経て構造躯体(躯体スラブ100)へと伝達されるため、天井200からの水平方向の荷重によって間仕切壁300が損傷しないようにする必要がある。
【0008】
このような間仕切壁300の耐力を増大させるには、スタッド302の断面性能を上げることや、スタッド302の配置間隔を小さくすることによって本数を増やすことなどが考えられるが、必要な耐力が得られないことも想定される。そして間仕切壁300の剛性が低い場合には、地震等による天井200からの水平方向の荷重を受けたときの変形が大きくなり、変形によって天井200との間に隙間を生じて天井200と間仕切壁300の衝突現象が生じ、衝撃力が大きくなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−167737号公報
【特許文献2】特開2001−164678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、地震等における天井との衝突による間仕切壁の損傷を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明に係る間仕切壁の耐震支持構造の一態様は、鉛直に設置されて建物の垂直荷重を支持しない間仕切壁と、天井をその端部より内周側の部分で吊支し、前記間仕切壁の上端部よりも低い位置に前記天井を配置する吊りボルトと、前記吊りボルトの吊り元より低位置で、かつ前記天井の端部の上方に位置させて前記間仕切壁に固定されたブラケットと、前記ブラケットに固定されて、前記吊りボルトの吊り元と前記ブラケットとを連結するブレースと、を備える。
【0012】
なお、ここでいう吊りボルトの吊り元とは、吊りボルトの上部、又は吊りボルトの上端部とスラブとの固定部のことである。
【0013】
発明に係る間仕切壁の耐震支持構造の別の一態様、前記間仕切壁が軽量鉄骨からなるスタッドにボードを張り付けたものであり、前記ブレースの一端が前記ブラケットを介して前記スタッドに結合されたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る間仕切壁の耐震支持構造によれば、天井を吊支する吊りボルトの吊り元と間仕切壁をブレースで斜めに連結することによって、間仕切壁の剛性及び耐力が増大するため、地震等による天井からの水平方向の荷重を受けたときの間仕切壁の変形制することができる。
【0015】
特に、間仕切壁が軽量鉄骨からなるスタッドにボードを張り付けたものである場合に、ブレースの一端をスタッドに結合することによって、スタッドの断面性能や本数等に依存することなく間仕切壁の剛性を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る間仕切壁の耐震支持構造の好ましい実施の形態を示す要部鉛直断面図である。
図2】本発明に係る間仕切壁の耐震支持構造の好ましい実施の形態を示す要部平面図である。
図3】本発明に係る間仕切壁の耐震支持構造の好ましい他の実施の形態を示す要部鉛直断面図である。
図4】従来の技術に係る間仕切壁の耐震支持構造の一例を示す部分鉛直断面図である。
図5】従来の技術に係る間仕切壁の耐震支持構造の他の例を示す部分鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る間仕切壁の耐震支持構造の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2に示す実施の形態において、参照符号1は鉄筋コンクリート等からなる躯体スラブ、参照符号2は天井、参照符号3は間仕切壁、参照符号4はブレースである。
【0018】
天井2は吊り天井の形態を有するものであって、すなわち躯体スラブ1に垂設した多数(図1及び図2では2本のみ示す)の吊りボルト21(21,21)の下端に吊金具であるハンガー22を介して複数(図1及び図2では1本のみ示す)の野縁受け23を水平かつ互いに平行に吊支し、この野縁受け23の下に、結合金具であるクリップ24を介して複数の野縁25を野縁受け23と直交するように、水平かつ互いに平行に取り付けることによって、格子状の天井下地材20を構築し、野縁25の下面に耐火ボードからなる多数の天井パネル26を互いに縦横に並べて敷き詰めた状態に取り付けた構造を有する。
【0019】
間仕切壁3は、上下の端部(図1では上端部のみ示す)が金属からなるランナ32及び不図示のアンカー等を介して躯体スラブ1に固定された軽量鉄骨(軽量形鋼)等からなるスタッド31の両面に、石膏ボード33をビス等で張り付けて構成されている。ランナ32は図1に示す断面と直交する方向(水平方向)へ延びており、スタッド31は鉛直に延び、図1に示す断面と直交する方向へ所定間隔で配置されている。
【0020】
天井2は天井パネル26の外周端部26a又は天井下地材20の外周端部(野縁受け23又は野縁25の端部)20aが間仕切壁3の石膏ボード33と接触している。
【0021】
ブレース4は形鋼からなるものであって、その一端4aが、天井2の端部より適宜内周側の部分を吊支する吊りボルト21、すなわち図示の例では天井2の最も外周側に位置する吊りボルト21の内周側に隣接する吊りボルト21の吊り元(吊りボルト21の上部、又は躯体スラブ1における吊りボルト21の上端部の埋設部)Aに、ブレース取付金具41及び螺子部材42等を介して結合されており、他端4bが、前記吊り元Aより低位置にあって、間仕切壁3における天井2の端部(天井パネル26の外周端部26a又は天井下地材20の外周端部20a)との接触部の上側の位置に螺子部材44を介して取り付けられた金属製のブラケット43に、螺子部材45を介して結合されている。
【0022】
ブラケット43を間仕切壁3に固定している螺子部材44としては、間仕切壁3のスタッド31への穴あけ機能とその穴の内面へのネジ立て機能、及び螺合締結機能を有するドリリングタッピンネジを用い、あるいはスタッド31に予め下穴を穿孔してその穴にねじ込まれるボルトを用いることによって、強固に結合することができる。
【0023】
また、天井2は間仕切壁3との間にクリアランスを設けず、互いに接触させるタイプであるため、天井2の揺れを規制するためのブレースは設けないか、あるいはその本数が少ないもので良い。
【0024】
以上のように構成された実施の形態によれば、天井2の端部(天井パネル26の外周端部26a又は天井下地材20の外周端部20a)が、間仕切壁3と接触しているため、地震等によって天井2に生じる水平力は、天井パネル26の外周端部26a又は天井下地材20の外周端部20aからこれに接触している間仕切壁3の石膏ボード33を介してスタッド31へ伝達され、スタッド31へ伝達された水平力は、ランナ32を介して躯体スラブ1へ伝達される一方、ブラケット43及び螺子部材44,45、ブレース4、ブレース取付金具41及び螺子部材42を介して躯体スラブ1へ伝達される。すなわち、天井2と間仕切壁3が一体的に変位するので、天井2と間仕切壁3の衝突が有効に防止される。
【0025】
また、下地材であるスタッド31の上下端がランナ32を介して躯体スラブ1に固定された間仕切壁3は、天井2の端部との接触部との隣接位置が、ブレース4を介して吊りボルト21の上部、又は躯体スラブ1における吊りボルト21の上端部の埋設部に連結されているため、間仕切壁3の剛性及び耐力が増大し、躯体スラブ1との固定力も増大する。したがって、地震等による天井2からの水平方向の荷重を受けたときの間仕切壁3の変形が抑制され、このため間仕切壁3と天井2の端部との間に隙間を生じにくくなって、天井2の衝突によって間仕切壁3の石膏ボード33などが損傷したり、天井パネル26が野縁25から脱落して落下したり、あるいは野縁25が天井パネル26と共に脱落したりするのを防止して、安全性を確保することができる。
【0026】
次に図3は、本発明に係る間仕切壁の耐震支持構造の好ましい他の実施の形態として、ブレース4にターンバックルを用いた例を示すものである。
【0027】
すなわちこの実施の形態において、ブレース4は、天井2の最も外周側に位置する吊りボルト21の内周側に隣接する吊りボルト21の吊り元(吊りボルト21の上部、又は躯体スラブ1における吊りボルト21の上端部の埋設部)Aに、上端がブレース取付金具41等を介して結合された第一のブレース部材46と、前記吊り元Aより低位置にあって、間仕切壁3における天井2の端部(天井パネル26の外周端部26a又は天井下地材20の外周端部20a)との接触部の上側の位置に螺子部材44を介して取り付けられた金属製のブラケット43に、下端の取付プレート47aが螺子部材45を介して結合された第二のブレース部材47と、第一のブレース部材46の下部に形成された螺子部46a及び第二のブレース部材47の上部に形成された螺子部47bの双方に螺合されたターンバックル48からなる。そして螺子部46a,47bは互いに逆螺子状に形成されているため、ターンバックル48を適宜回転させることによって、螺子部46a,47bが互いに接近する方向又は互いに離間する方向へ移動するものである。
【0028】
すなわち、この実施の形態によれば、ターンバックル48によって、ブレース4の緊張力を適切に調整することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 躯体スラブ
2 天井
21 吊りボルト
3 間仕切壁
31 スタッド
32 ランナ
33 石膏ボード
4 ブレース
41 ブレース取付金具
43 ブラケット
46 第一のブレース部材
47 第二のブレース部材
48 ターンバックル
A 吊り元
図1
図2
図3
図4
図5