特許第6553863号(P6553863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553863
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/16 20060101AFI20190722BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B65D41/16
   A61J1/05 313Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-233278(P2014-233278)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-97972(P2016-97972A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190068
【氏名又は名称】伸晃化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】北野 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】土井 淳史
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実公平03−015480(JP,Y2)
【文献】 特開2012−081988(JP,A)
【文献】 実公平04−024817(JP,Y2)
【文献】 米国特許第03430798(US,A)
【文献】 登録実用新案第3142618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
A61J 1/00−19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きの口部を有する容器本体と、前記口部を閉じるキャップとを備えてなり、前記容器本体は、前記口部の外周に対し、複数の軸方向の駆動リブを形成するとともに周方向の係止溝を形成し、前記キャップは、前記駆動リブと上下に噛合する突条部を内面側に有するとともに前記係止溝に弾発的に係止する複数の係止爪を天面から垂設し、前記各駆動リブには、前記口部の径方向に斜めに膨出する後縁側の斜面と、後縁側から前縁側にかけて斜め上向きの傾斜面とを形成し、閉栓状態の前記キャップを開栓方向に回転操作すると、まず記突条部、斜面を介し、前記各係止爪が径方向に弾性変形して前記係止溝から外れ、さらに前記突条部、傾斜面を介し、前記キャップが上向きに相対移動して取外し可能になることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
上向きの口部を有する容器本体と、前記口部を閉じるキャップとを備えてなり、前記容器本体は、前記口部の外周に対し、複数の軸方向の駆動リブを形成するとともに周方向の係止溝を形成し、前記キャップは、前記駆動リブと上下に噛合する突条部を内面側に有するとともに前記係止溝に弾発的に係止する複数の係止爪を天面から垂設し、前記各駆動リブには、前記口部の径方向に斜めに膨出する後縁側の斜面と、後縁側の軸方向のリブとを形成し、前記各突条部には、後縁側から前縁側にかけて斜め上向きの傾斜面を形成し、閉栓状態の前記キャップを開栓方向に回転操作すると、まず前記突条部、斜面を介し、前記各係止爪が径方向に弾性変形して前記係止溝から外れ、さらに前記傾斜面、リブを介し、前記キャップ上向きに相対移動して取外し可能になることを特徴とする包装容器。
【請求項3】
前記係止爪は、スリットを介して軸方向に分割することを特徴とする請求項1または請求項記載の包装容器。
【請求項4】
前記各係止爪は、前記キャップの開栓方向に剛性を増大させることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか記載の包装容器。
【請求項5】
前記各駆動リブ、前記各突条部は、それぞれ上向き、下向きに尖らせることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の薬液や錠剤などを収納するために好適な包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
偏平な容器本体の口部を開閉するために、いわゆるツイストタイプのキャップを使用することがある(たとえば特許文献1〜3)。
【0003】
ツイストタイプのキャップは、容器本体の口部に対し、単に軸方向に押し込むだけで装着することができ、開栓方向にたとえば約45°程度回転させるだけで取り外し、口部を開放させることができる。すなわち、キャップの内部には、口部の外周の係止部に弾発的に係止する係止爪が垂設されている。そこで、キャップは、軸方向に押し込んで係止爪を口部側の係止部に係止させることにより、一挙動で口部に装着して口部を閉じることができ、所定の角度だけ回転させると、下端の直線部分が偏平な容器本体の斜めの肩部に乗り上げて取外し方向に駆動され、簡単に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−39714号公報
【特許文献2】特開平10−329855号公報
【特許文献3】特開2009−249007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、ツイストタイプのキャップは、下端の直線部分が容器本体の斜めの肩部に乗り上げることにより取り外すため、容器本体やキャップの形状が偏平形状に限定されてしまい、デザイン上の自由度が制約されるという問題があった。また、キャップは、開栓の際に、取外し方向に駆動することにより口部側の係止部に係止中の係止爪を無理に引き外すため、必要な回転操作力が過大になりがちであり、回転操作力を小さくしようとすると、係止爪による保持力が不足しがちであるという問題が避けられない。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、開栓に際し、キャップ側の係止爪を径方向に弾性変形させることによって、容器本体やキャップの形状に対する自由度を向上させるとともに、必要な回転操作力が過大になったりすることがない包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1の発明の構成は、上向きの口部を有する容器本体と、口部を閉じるキャップとを備えてなり、容器本体は、口部の外周に対し、複数の軸方向の駆動リブを形成するとともに周方向の係止溝を形成し、キャップは、駆動リブと上下に噛合する突条部を内面側に有するとともに係止溝に弾発的に係止する複数の係止爪を天面から垂設し、各駆動リブには、口部の径方向に斜めに膨出する後縁側の斜面と、後縁側から前縁側にかけて斜め上向きの傾斜面とを形成し、閉栓状態のキャップを開栓方向に回転操作すると、まず突条部、斜面を介し、各係止爪が径方向に弾性変形して係止溝から外れ、さらに突条部、傾斜面を介し、キャップが上向きに相対移動して取外し可能になることをその要旨とする。
【0008】
請求項2の発明の構成は、上向きの口部を有する容器本体と、口部を閉じるキャップとを備えてなり、容器本体は、口部の外周に対し、複数の軸方向の駆動リブを形成するとともに周方向の係止溝を形成し、キャップは、駆動リブと上下に噛合する突条部を内面側に有するとともに係止溝に弾発的に係止する複数の係止爪を天面から垂設し、各駆動リブには、口部の径方向に斜めに膨出する後縁側の斜面と、後縁側の軸方向のリブとを形成し、各突条部には、後縁側から前縁側にかけて斜め上向きの傾斜面を形成し、閉栓状態のキャップを開栓方向に回転操作すると、まず突条部、斜面を介し、各係止爪が径方向に弾性変形して係止溝から外れ、さらに傾斜面、リブを介し、キャップが上向きに相対移動して取外し可能になることをその要旨とする。
【0009】
また、係止爪は、スリットを介して軸方向に分割してもよく、各係止爪は、キャップの開栓方向に剛性を増大させてもよく、各駆動リブ、各突条部は、それぞれ上向き、下向きに尖らせてもよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、容器本体の口部に装着して閉栓状態のキャップを開栓方向に回転させると、キャップ側の突条部が口部側の駆動リブに係合し、キャップ側の各係止爪が径方向に弾性変形して口部側の係止溝から外れる。そこで、キャップは、各係止爪による保持力が実質的に失われるため、さらに開栓方向に回転させることにより、上向きに相対移動して口部から円滑に取り外し、口部を開放することができる。なお、キャップは、互いに係合する駆動リブ、突条部を介し、各係止爪を弾性変形させるとともに、上向きに相対移動させるに必要な駆動力を発生させるため、容器本体やキャップの形状が偏平形状に限定されることがない。また、キャップは、開栓時の初期における駆動リブ、突条部の係合位置を各係止爪の下端近くに設定することにより、開栓時に必要な回転操作力を十分小さくすることができる。
【0011】
各駆動リブには、キャップの開栓方向に斜め上向きの傾斜面を形成し、この傾斜面にキャップ側の突条部を係合させることにより、キャップを上向きに相対移動させて口部から円滑に取り外すことができる。ただし、各駆動リブには、径方向に膨出する係合用の斜面を併せて形成し、キャップ側の突条部は、斜め上向きの傾斜面に係合するに先き立って係合用の斜面に係合することにより、対応する係止爪を径方向に先きに弾性変形させて口部側の係止溝から外すものとする。なお、各駆動リブには、傾斜面に代えて軸方向のリブを形成し、キャップ側の突条部に形成する傾斜面をリブに係合させてキャップを上向きに相対移動させてもよい。
【0012】
キャップ側の係止爪は、スリットを介して軸方向に分割することにより、径方向の弾性変形の剛性を一定に揃え、口部側の係止溝から一層確実に外すことができる。また、各係止爪は、キャップの開栓方向に剛性を増大させることにより、開栓操作の初期において必要なキャップの回転操作力を相対的に十分小さくして操作性を向上させることができる。
【0013】
各駆動リブ、各突条部をそれぞれ上向き、下向きに尖らせると、キャップを口部に装着して閉栓する際に、駆動リブ、突条部を上下に噛合させてキャップを適切な相対回転位置に自動的にガイドし、キャップを軸方向に押し込むだけで口部に簡単に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】全体構成斜視説明図
図2】全体構成説明図
図3】要部構成説明図
図4】係止爪の内面側模式展開図
図5】係止爪の外面側模式展開図
図6】口部の外周模式展開図
図7】動作説明図(1)
図8】動作説明図(2)
図9】動作説明図(3)
図10】他の実施の形態を示す図5相当図
図11】他の実施の形態を示す要部構成説明図(1)
図12】他の実施の形態を示す要部構成説明図(2)
図13】他の実施の形態を示す要部構成説明図(3)
図14】他の実施の形態を示す図1相当図(1)
図15】他の実施の形態を示す図1相当図(2)
図16】他の実施の形態を示す駆動リブの構成説明図
図17】他の実施の形態を示す突条部の構成説明図
図18】他の実施の形態を示す図1相当図(3)
図19図18の要部模式展開説明図
図20図18の動作説明図
図21】他の実施の形態を示す図1相当図(4)
図22図21の要部模式展開説明図
図23図21の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
包装容器は、容器本体10と、キャップ20とを備えてなる(図1図2)。ただし、図1(A)、(B)は、それぞれキャップ20の一部破断全体斜視図、容器本体10の全体斜視図であり、図2(A)〜(C)は、それぞれキャップ20の縦断面図、容器本体10の要部正面図、キャップ20、容器本体10の組合せ状態縦断面図である。
【0017】
容器本体10は、たとえば点眼薬容器であり、有底円筒状の胴部11に上向きの円筒状の口部12を形成するとともに、ノズル孔13a付きのノズルチップ13を口部12に圧入して構成されている(図1(B)、図2(B)、(C))。口部12と胴部11との間には、外フランジ11aが形成されており、外フランジ11aの上方には、周方向の係止溝14、斜め下向きのフランジ14aが形成されている。なお、フランジ14aの上面側、下面側は、それぞれ長短の斜面に形成されている。また、フランジ14aの上方には、軸方向の駆動リブ15、15…が口部12の外周に等ピッチに形成されている。
【0018】
キャップ20は、上端を閉じ、下向きに僅かに拡径する略円筒状に形成されている(図1(A)、図2(A)、(C))。
【0019】
キャップ20の外面には、軸方向の滑り止め用の平面21、21…が形成されており、キャップ20の天面中央部には、容器本体10側のノズルチップ13、ノズル孔13aに適合するシールリング22a付きの突栓22が形成されている。また、キャップ20の天面からは、円弧状に湾曲する係止爪23、23…がリング状に垂設して等ピッチに配置されており、各係止爪23の内面側には、軸方向の突条部24が形成され、各係止爪23の下端には、内向きのフック25が形成されている。そこで、キャップ20は、ノズルチップ13を覆うようにして容器本体10の口部12に装着し、係止爪23、23…のフック25、25…をフランジ14a、係止溝14に弾発的に係止させることにより、突栓22、シールリング22aを介してノズルチップ13のノズル孔13aを封止し、容器本体10を閉栓することができる(図2(C))。
【0020】
係止爪23、23…は、各突条部24ごとに、長短のスリット23a、23a…、23b、23b…を介して軸方向に分割されている(図2(A)、図3(A))。長い方のスリット23aは、左右両側の係止爪23、23の下端からキャップ20の天面にまで到達しており、短い方のスリット23bは、係止爪23、23の下端から中間部にまで伸びている。また、各係止爪23の内面側は、中間部から下端のフック25までの間を所定の形状に薄肉にして、厚肉の突条部24が下向きに尖らせて形成されている。一方、容器本体10側の口部12の外周は、フランジ14aの上方を所定の形状に薄肉にして、厚肉の駆動リブ15、15…が上向きに尖らせて形成されている(図2(B)、図3(B))。ただし、図3(A)は、図2(A)のX−X線矢視相当断面図であり、図3(B)は、容器本体10の上面図である。
【0021】
キャップ20側の軸方向の突条部24、24…、容器本体10側の軸方向の駆動リブ15、15…は、図4図6に模式的に図示されている。ただし、図4図5は、それぞれキャップ20の係止爪23、23…の内面側、外面側から見たときの模式展開図であり、図6は、容器本体10の口部12の外周の模式展開図である。また、図4図6において、各矢印K方向は、キャップ20の開栓方向を示す。そこで、以下、各突条部24、各駆動リブ15について、キャップ20の開栓方向前方側、後方側をそれぞれ前縁側、後縁側ということにする。
【0022】
容器本体10側の各駆動リブ15の上端には、後縁側から前縁側にかけて斜め上向きの傾斜面15aが形成されている(図6)。また、各駆動リブ15の基部後縁側には、口部12の径方向に斜めに膨出する係合用の斜面15bが軸方向に形成され、斜面15bの上端は、連結用の斜面15cを介して傾斜面15aの下端に連結されている。各駆動リブ15の前縁側は、傾斜面15aの上端に対応する小さい斜面15dと、細幅の軸方向の斜面15eとを介して区画されており、駆動リブ15は、傾斜面15a、斜面15d、15eを介し、上向きに尖らせて形成されている。斜面15eの下部は、前縁側に隣接する他の駆動リブ15の係合用の斜面15bの後縁側に接している。
【0023】
キャップ20側の軸方向の突条部24、24…は、それぞれ下半部が細幅に形成され(図4図5)、上半部は、容器本体10側の傾斜面15aに対応する下向きの傾斜面24aを介して前縁側に拡幅され、略下向き三角形状に形成されている。突条部24の下端は、下向きの斜面24b、前縁側の三角形の斜面24cを介して下向きに尖らせて形成されている。また、突条部24の前縁側は、上方の傾斜面24aの下端と下方の斜面24cとの間に軸方向の連結用の斜面24dが形成され、突条部24の後縁側は、細幅の軸方向の斜面24eを介して区画されている。斜面24eの上端部は、後縁側に隣接する他の突条部24の傾斜面24aの上端部に接しており、下端部は、斜面24bの後縁側に接している。
【0024】
そこで、キャップ20は、口部12に装着して容器本体10を閉栓するとき、ノズルチップ13上に被せるようにして容器本体10の上方から下向きに移動させ、係止爪23、23…のフック25、25…が係止溝14に正しく係止され、ノズルチップ13のノズル孔13aが封止されるまでキャップ20を軸方向に押し下げるだけでよい(図2(C))。キャップ20側の下向きに尖る突条部24、24…は、容器本体10側の上向きに尖る駆動リブ15、15…と上下に噛合することにより、キャップ20と、容器本体10の口部12、ノズルチップ13とを正しく芯合せするとともに、各突条部24が隣接する駆動リブ15、15の間に正しく進入するように(図7(A))、容器本体10に対してキャップ20を自動的に相対回転させて位置決めすることができるからである。ただし、図7(A)は、キャップ20により容器本体10を閉栓するとき、図5の各突条部24と、図6の各駆動リブ15との相対位置関係を示す要部拡大模式展開図である。
【0025】
容器本体10の閉栓状態において、キャップ20側の任意の突条部24の前縁側の下端位置(たとえば図4図5の各A点)、突条部24の前縁側と傾斜面24aの下端との接合位置相当の係合部位(たとえば図4図5の各B点、以下、突条部24の係合部位という)は、対応する容器本体10側の駆動リブ15に対し、それぞれ図7(B)の点A1 、B1 に位置している。また、このとき、キャップ20側の突条部24、24…は、容器本体10側の駆動リブ15、15…と噛合してキャップ20を開栓方向にのみ回転可能に拘束しており(図8(A))、キャップ20の各係止爪23のフック25、25…は、容器本体10側の係止溝14、フランジ14aに弾発的に係止し(図9(A))、キャップ20は、ノズルチップ13のノズル孔13aを封止している。
【0026】
ただし、図8(A)〜(D)は、それぞれ閉栓状態のキャップ20を開栓操作するときの動作状態を示す図2(C)のY−Y線矢視相当拡大断面図である。また、図9(A)〜(D)は、それぞれ図8(A)〜(D)に対応する縦断面動作図である。
【0027】
閉栓状態(開栓前)のキャップ20を開栓方向(図4図6図8(B)、(C)の各矢印K方向)に回転操作すると、まず、各突条部24の前縁側の下端位置Aが対応する駆動リブ15の後縁側に乗り上げる(図7(B)の点A1 〜A2 、図8(B))。そこで、各係止爪23が径方向に弾性変形してフック25、25…が係止溝14、フランジ14aから外れ(図9(B))、キャップ20は、主としてノズルチップ13の弾性により上向きに僅かに相対移動する。なお、このとき、係止爪23、23…は、長い方のスリット23a、23a…の間隔が開くようにして径方向に弾性変形し(図8(B))、短い方のスリット23b、23b…は、間隔が殆ど開かない。また、このとき、各突条部24の係合部位Bが駆動リブ15側の傾斜面15a上に係合するに至る(図7(B)の点B1 〜B2 )。
【0028】
引き続いてキャップ20をさらに開栓方向に回転操作すると、各突条部24の係合部位Bは、対応する傾斜面15aに沿って斜め上向きに進行し(図7(B)の点B2 〜B3 、図8(C))、それに伴って、キャップ20が上向きに相対移動してノズルチップ13のノズル孔13aを開封し(図9(C))、容器本体10を開栓することができる。なお、このとき、各係止爪23のフック25、25…は、実質的にフランジ14aの最大径位置を下から上に乗り越えている。
【0029】
そこで、キャップ20をさらに開栓方向に回転操作し、最初の開栓前の状態から駆動リブ15、15…、突条部24、24…の1ピッチ相当だけ回転させると、各突条部24の係合部位Bは、対応する傾斜面15aを外れて駆動リブ15の前縁側の斜面15eを横切る(図7(B)の点B3 〜B4 )。したがって、各係止爪23は、突条部24が駆動リブ15から外れて径方向の弾性変形が元に復帰し(図8(D))、それに伴って、各係止爪23のフック25、25…がフランジ14aの斜めの上面に沿って滑るようにしてキャップ20を上向きに相対移動させ(図9(D))、キャップ20は、開栓完了となって容器本体10から上方にフリーに取外し可能となる。
【0030】
なお、図7(B)の点A1 〜A2 の実線、点A2 〜A3 〜A4 の点線は、それぞれ突条部24の前縁側の下端位置Aの駆動リブ15側に対する接触部分、非接触部分を示す。また、点B1 〜B2 の点線、点B2 〜B3 〜B4 の実線は、それぞれ突条部24の係合部位Bの駆動リブ15側に対する非接触部分、接触部分を示す。
【他の実施の形態】
【0031】
キャップ20側の係止爪23、23…は、短い方のスリット23b、23b…を省略し、長い方のスリット23a、23a…のみを介し、左右一対の突条部24、24ごとに軸方向に分割することができる(図10)。キャップ20を開栓方向に回転させて各係止爪23を径方向に弾性変形させるに際し、各係止爪23の剛性を一層強化することができる。
【0032】
キャップ20の各係止爪23は、キャップ20の開栓方向後方側において、外面側の基部に径方向の補強リブ23cを形成することによりキャップ20の開栓方向に剛性を増大させることができる(図11)。キャップ20を開栓方向に回転操作するとき、初期段階における所要回転操作力を相対的に小さくして操作性を向上させることができる。ただし、図11(A)、(B)は、それぞれ図9(A)相当図、図11(A)のX−X線矢視相当断面図であり、図11(B)の矢印K方向は、キャップ20の開栓方向を示す。
【0033】
キャップ20の各係止爪23は、キャップ20の開栓方向前方側から後方側にかけて、また、中間部から上方の基部にかけて、それぞれ厚さが滑らかに増加する厚肉部23dを外面側に形成することにより(図12)、キャップ20の開栓方向に剛性を増大させて図11と同様の効果を実現することができる。ただし、図12(A)、(B)は、それぞれ図11(A)、(B)相当図であり、図12(B)の矢印K方向は、キャップ20の開栓方向を示す。
【0034】
キャップ20の各係止爪23は、下端より高い中間位置に内面側のフック25を形成してもよい(図13)。このとき、各係止爪23の突条部24は、フック25の下方にまで延長して下向きに尖らせることができる(図13(A))。また、容器本体10側の係止溝14、フランジ14aは、フック25の位置に合わせ、前者を幅広に形成するとともに後者を口部12の外周の中間位置に形成するものとする(図13(B))。なお、容器本体10側の各駆動リブ15も、フランジ14aの下方の外フランジ11aにまで延長されている。各突条部24が係止爪23の下端において下向きに尖っているため、キャップ20の装着時に突条部24、24…を駆動リブ15、15…に一層円滑に噛合させることができ、操作性を向上させることができる。ただし、図13(A)、(B)は、それぞれ図2(A)、(B)相当図である。
【0035】
容器本体10は、たとえば広口の錠剤容器としてもよい(図14)。このときのキャップ20は、天面にパッキン26を装着するとともに、係止爪23、23…を軸方向に分割する長い方のスリット23a、23a…の上端は、係止爪23、23…の基部内面側にパッキン26の保持用の環状リブ26aを連続的に形成するために、キャップ20の天面に到達しない長さに形成されている。ただし、図14(A)、(B)は、それぞれ図1(A)、(B)相当図である。
【0036】
一般に、容器本体10側の駆動リブ15、15…は、それぞれの後縁側、前縁側に付随する斜面15b、15eを介し、口部12の外周に互いに接するようにして所定個数mを等ピッチに配置することが好ましい(図6図14(B))。一方、キャップ20側の突条部24付きの係止爪23、23…は、突条部24、24…が駆動リブ15、15…に正しく上下に噛合するように、駆動リブ15、15…と同一の個数n=mを同一ピッチに配置すればよい。ただし、係止爪23、23…は、突条部24、24…が駆動リブ15、15…に正しく噛合し得る限り、個数n(ただし、2≦n≦m)を口部12の外周に均等に分散させて配置してもよい。また、係止爪23、23…は、任意の個数a≧1ずつのn群(ただし、an≦m)を口部12の外周に均等に分散させて配置してもよい。さらに、2個以上の係止爪23、23…を単一の駆動リブ15に対応させて一挙に径方向に弾性変形させれば、係止爪23、23…の個数n>mとすることも可能である。
【0037】
容器本体10側の各駆動リブ15、キャップ20側の各突条部24は、それぞれ上向き、下向きに左右対称形に尖らせることができる(図15)。このときのキャップ20は、左右いずれの方向に回転操作しても開栓することができる(図15(A)の矢印K、K方向)。ただし、図15(A)、(B)は、それぞれ図1(A)、(B)相当図である。
【0038】
図1(A)、図4図5のキャップ20側の各突条部24と組み合わせる容器本体10側の駆動リブ15は、たとえば図16(A)〜(C)のように変形可能である。すなわち、基部後縁側の係合用の斜面15bを上方に延長して傾斜面15aの下端に直接連結してもよく(同図(A))、後縁側中間部の連結用の斜面15cを下方に延長して係合用の斜面15bを省略してもよく(同図(B))、傾斜面15aと連結用の斜面15cとを滑らかな曲面状に連続させてもよい(同図(C))。
【0039】
また、図1(B)、図6の容器本体10側の各駆動リブ15と組み合わせるキャップ20側の突条部24は、たとえば図17(A)〜(C)のように変形可能である。すなわち、突条部24の下半部は、細幅に形成するに代えて、前縁側、後縁側の斜面24d、24eを介して断面山形に形成してもよく(同図(A))、傾斜面24aに代えて、小さな斜面24fを介して前縁側の斜面24dの上方に軸方向の傾斜面24gを形成してもよく(同図(B))、さらに、前縁側の斜面24dをそのまま上向きに軸方向に延長して、軸方向の係合用のリブ24hを斜面24d上に形成してもよい(同図(C))。ただし、図17(A)〜(C)には、それぞれ図4図5の各A点、各B点に相当するA点、B点が併せて図示されており、図17(C)のB点は、リブ24hの下端に対応している。なお、リブ24hの断面形状は、半円形に限らず、かまぼこ形、三角形、四角形などとしてもよい。
【0040】
容器本体10側の各駆動リブ15は、斜め上向きの傾斜面15aを下部後縁側に形成するとともに、係合用の斜面15b、連結用の斜面15cを傾斜面15aの上方に順に形成することができる(図18(B)、図19(B))。また、このとき、キャップ20側の各突条部24は、一定幅の幅広にして軸方向に形成するとともに、下端の傾斜面24a、前縁側の軸方向の斜面24dが形成されている(図18(A)、図19(A))。
【0041】
そこで、キャップ20の閉栓状態(開栓前)において、突条部24、24…、駆動リブ15、15…は、上下に正しく噛合することができ(図20(A))、キャップ20を開栓方向(図19(A)、(B)の各矢印K方向)に回転操作すると、各突条部24の後縁側、前縁側の下端位置(たとえば図19(A)のA点、B点)が、対応する駆動リブ15に対してそれぞれ図20(B)の点A1 〜A4 、点B1 〜B4 の経路に沿って相対移動することにより、キャップ20を開栓することができる。なお、図20(B)の点B1 〜B2 において、キャップ20の係止爪23、23…が径方向に弾性変形してフック25、25…が係止溝14から外れ、点A2 〜A3 においてキャップ20が上向きに相対移動する。ただし、図18(A)、(B)は、それぞれ図1(A)、(B)相当図であり、図19(A)、(B)は、それぞれ図5図6相当図であり、図20(A)、(B)は、それぞれ図7(A)、(B)相当図である。
【0042】
図18図20と同一形態のキャップ20側の突条部24、24…は、後縁側の軸方向の斜面15f上に係合用のリブ15gを形成する容器本体10側の細幅の駆動リブ15、15…と組み合わせることができる(図21図23)。ただし、図21(A)、(B)、図22(A)、(B)、図23(A)、(B)は、それぞれ図18(A)、(B)、図19(A)、(B)、図20(A)、(B)相当図である。
【0043】
キャップ20の閉栓状態(開栓前)において、突条部24、24…、駆動リブ15、15…は、上下に正しく噛合する(図23(A))。閉栓状態のキャップ20を開栓方向(図22(A)、(B)の各矢印K方向)に回転操作すると、各突条部24の前縁側の下端(たとえば図22(A)のB点)が、対応する駆動リブ15に対し、図23(B)の点B1 〜B2 のように相対移動して係止爪23、23…を径方向に弾性変形させるとともに、各突条部24の前縁側下方の傾斜面24a上の1点(たとえば図22(A)のA点)が駆動リブ15の後縁側のリブ15gの上端に係合するに至る(図23(B)の点A1 〜A2 )。そこで、キャップ20をさらに開栓方向に回転操作すると、リブ15gの上端が傾斜面24aに沿って相対移動することによりキャップ20が上向きに相対移動し(図23(B)の点A2 〜A3 )、開栓動作を円滑に完了させることができる(同図の点A3 〜A4 )。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、目薬容器を含む任意の薬液容器の他、錠剤容器や軟膏容器などのあらゆる用途の包装容器に対して広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…容器本体
12…口部
14…係止溝
15…駆動リブ
15a…傾斜面
15g…リブ
20…キャップ
23…係止爪
23a、23b…スリット
24…突条部

特許出願人 伸晃化学株式会社
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