特許第6553877号(P6553877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000002
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000003
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000004
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000005
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000006
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000007
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000008
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000009
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000010
  • 特許6553877-湿潤バイオマス焼却システム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553877
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】湿潤バイオマス焼却システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20190722BHJP
   F23C 10/18 20060101ALI20190722BHJP
   F23C 10/06 20060101ALI20190722BHJP
   F23C 10/08 20060101ALI20190722BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F23G5/30 AZAB
   F23G5/30 D
   F23C10/18
   F23C10/06
   F23C10/08
   F23J15/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-13429(P2015-13429)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-138694(P2016-138694A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 航哉
(72)【発明者】
【氏名】松田 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】太白 秀一
(72)【発明者】
【氏名】川本 直哉
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−275442(JP,A)
【文献】 特開2003−172503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/30
F23C 10/06
F23C 10/08
F23C 10/18
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉床の上方の空間が区画壁で区画されてなる乾燥室及び燃焼室を有し、かつ前記乾燥室内の下方と前記燃焼室内の下方とにわたって、流動媒体が流動する流動床が設けられた焼却炉と、
前記焼却炉の排ガスを用いて発電する発電装置と、
前記乾燥室側の前記流動床の下方に接続され、前記乾燥室内で湿潤バイオマスを前記流動媒体と混合しながら乾燥するための過熱蒸気を前記乾燥室内に供給する過熱蒸気供給路と、
前記燃焼室側の前記流動床の下方に接続され、前記湿潤バイオマスを乾燥して生成した乾燥バイオマスを前記燃焼室内で前記流動媒体と混合しながら燃焼するための酸化性ガスを前記燃焼室内に供給する酸化性ガス供給路と、
前記乾燥室に接続され、前記湿潤バイオマスの乾燥に用いられた過熱蒸気を前記乾燥室外に排出して前記発電装置に送る過熱蒸気排出路と、を備え、
前記乾燥室内の前記流動床の温度が、前記乾燥バイオマスの熱分解温度未満に設定され、前記排ガスが、前記過熱蒸気排出路を流通する過熱蒸気となり、前記発電装置が、前記乾燥バイオマスの熱分解に伴って生じるガスを用いることなく前記過熱蒸気により発電する、湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項2】
炉床の上方の空間が区画壁で区画されてなる乾燥室及び燃焼室を有し、かつ前記乾燥室内の下方と前記燃焼室内の下方とにわたって、流動媒体が流動する流動床が設けられた焼却炉と、
前記焼却炉の排ガスを用いて発電する発電装置と、
前記乾燥室側の前記流動床の下方に接続され、前記乾燥室内で湿潤バイオマスを前記流動媒体と混合しながら乾燥するための過熱蒸気を前記乾燥室内に供給する過熱蒸気供給路と、
前記燃焼室側の前記流動床の下方に接続され、前記湿潤バイオマスを乾燥して生成した乾燥バイオマスを前記燃焼室内で前記流動媒体と混合しながら燃焼するための酸化性ガスを前記燃焼室内に供給する酸化性ガス供給路と、
前記乾燥室に接続され、前記湿潤バイオマスの乾燥に用いられた過熱蒸気を前記乾燥室外に排出して前記発電装置に送る過熱蒸気排出路と、
前記焼却炉に接続され、前記湿潤バイオマスを前記乾燥室内に直接供給する第1の湿潤バイオマス供給路と、
前記過熱蒸気排出路に接続され、前記湿潤バイオマスを前記過熱蒸気排出路の一部を経由して前記乾燥室内に供給する第2の湿潤バイオマス供給路と、を備え、
前記乾燥室内の前記流動床の温度が、前記乾燥バイオマスの熱分解温度未満に設定され、前記排ガスが、前記過熱蒸気排出路を流通する過熱蒸気である、湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項3】
前記焼却炉は、前記乾燥室近傍の前記燃焼室側の前記流動床の内部に、前記燃焼室側の前記流動床の下方から、前記燃焼室の流動床の層高よりも低い高さまで延びるように設けられた仕切壁をさらに有する、請求項1または2に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項4】
前記乾燥室に前記過熱蒸気供給路が複数接続され、いずれかの前記過熱蒸気供給路同士の蒸気流量が異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項5】
前記乾燥室内で、前記湿潤バイオマス及び前記流動媒体が循環するように、複数の前記過熱蒸気供給路の蒸気流量が設定されている、請求項4に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項6】
前記過熱蒸気供給路は、第1過熱蒸気供給路であり、
前記乾燥室の側壁に接続され、前記流動床に対し、前記乾燥室から前記燃焼室に向けて前記流動媒体及び前記乾燥バイオマスの移動を促すように前記乾燥室内に過熱蒸気を供給する第2過熱蒸気供給路をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項7】
前記発電装置は、前記過熱蒸気排出路を流通する過熱蒸気と熱媒体とが熱交換する熱交換器と、前記熱交換器に接続され、前記熱媒体により発電する発電機とを有するバイナリー発電装置である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項8】
前記過熱蒸気排出路から前記発電装置を迂回するように分岐する迂回路と、前記過熱蒸気排出路の前記発電装置が設けられた位置よりも上流側から分岐し、かつ前記過熱蒸気排出路を流通した過熱蒸気を大気中に開放する開放路とのいずれかを含む分岐路をさらに備え、
前記分岐路には、前記発電装置に供給する過熱蒸気量を一定にするためのバルブが設けられている、請求項7に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項9】
前記過熱蒸気供給路と前記過熱蒸気排出路との間に接続され、前記過熱蒸気排出路を流通する過熱蒸気の一部を前記過熱蒸気供給路に戻す過熱蒸気還流路をさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項10】
前記過熱蒸気排出路の途中に設けられ、過熱蒸気に含まれる煤塵を回収する集塵機と、
前記集塵機と前記焼却炉の間に接続され、前記集塵機で回収された煤塵を前記燃焼室に戻す煤塵流通路と、をさらに備える、請求項1〜9のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項11】
前記過熱蒸気供給路から分岐して前記乾燥室に接続された過熱蒸気流通路をさらに備え、
前記過熱蒸気流通路を流通した過熱蒸気が、前記乾燥室内で、前記流動床に向かって落下する前記湿潤バイオマスに対して分散しながら噴出される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【請求項12】
前記焼却炉に接続され、前記乾燥室に前記湿潤バイオマスを供給する湿潤バイオマス供給路をさらに備え、
前記湿潤バイオマス供給路は、前記燃焼室内を経由して設けられている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の湿潤バイオマス焼却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤バイオマス焼却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥または木質系物質等の湿潤バイオマスを処理する施設として、例えば、焼却炉と、焼却炉からの排ガスで発電する発電装置とを備える湿潤バイオマス焼却システムが知られている。
【0003】
焼却炉の形式としては、例えば、内部循環流動層式が挙げられる。この形式の焼却炉は、例えば特許文献1に開示されるように、乾燥・熱分解室と燃焼室とを有する。乾燥・熱分解室と燃焼室との各々の下方には、流動媒体が流動する流動床が設けられる。乾燥・熱分解室では、流動床の下方から供給される高温の乾燥剤ガスで、湿潤バイオマスを流動媒体と混合しながら乾燥させて乾燥バイオマスとする。燃焼室では、流動床の下方から供給される高温の酸化剤ガスで、乾燥バイオマスを流動媒体と混合しながら燃焼する。
【0004】
なお、乾燥・熱分解室では、乾燥バイオマスを熱分解させる場合もある。この熱分解により生じたガスは、例えば乾燥・熱分解室の外へ排出され、発電装置等の動力回収装置を用いて熱回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−275442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
湿潤バイオマス焼却システムは、ランニングコストが低く、良好な燃焼効率で運転を行えることが求められる。従って、湿潤バイオマス焼却システムの熱回収効率は、良好であることが望ましい。また、湿潤バイオマス焼却システムは、ある程度の規模で構成されるので、設備費用を抑制することも求められる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたシステムにおいて、乾燥・熱分解室で熱分解により生じたガスから発電装置等の動力回収装置を用いて熱回収を行う場合、当該ガスを動力回収装置に供給する前に蒸気等の成分を除去する処理を行う。このため、熱回収の損失が生じるおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、発電装置の熱回収の損失を抑制することで、低いランニングコストかつ良好な燃焼効率で運転でき、設備費用を抑制できる湿潤バイオマス焼却システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る湿潤バイオマス焼却システムは、炉床の上方の空間が区画壁で区画されてなる乾燥室及び燃焼室を有し、かつ前記乾燥室内の下方と前記燃焼室内の下方とにわたって、流動媒体が流動する流動床が設けられた焼却炉と、前記焼却炉の排ガスを用いて発電する発電装置と、前記乾燥室側の前記流動床の下方に接続され、前記乾燥室内で湿潤バイオマスを前記流動媒体と混合しながら乾燥するための過熱蒸気を前記乾燥室内に供給する過熱蒸気供給路と、前記燃焼室側の前記流動床の下方に接続され、前記湿潤バイオマスを乾燥して生成した乾燥バイオマスを前記燃焼室内で前記流動媒体と混合しながら燃焼するための酸化性ガスを前記燃焼室内に供給する酸化性ガス供給路と、前記乾燥室に接続され、前記湿潤バイオマスの乾燥に用いられた過熱蒸気を前記乾燥室外に排出して前記発電装置に送る過熱蒸気排出路と、を備え、前記乾燥室内の前記流動床の温度が、前記乾燥バイオマスの熱分解温度未満に設定され、前記排ガスを、前記過熱蒸気排出路を流通する過熱蒸気とする。
【0010】
上記構成によれば、乾燥室内の流動床の温度を乾燥バイオマスの熱分解温度未満に設定することで、乾燥室内での乾燥バイオマスの熱分解を防止でき、乾燥室から過熱蒸気排出路に排出される過熱蒸気に、乾燥バイオマスの熱分解に伴って生じるガスが混入するのを防止できる。これにより、高純度の過熱蒸気を過熱蒸気排出路を介して発電装置に供給するので、発電装置に供給するガスの不純物成分を予め除去する工程が不要になる。よって、過熱蒸気排出路を流通するガスのほぼ全てを用いて熱回収できる。従って、熱回収の損失を抑制しながら、過熱蒸気の豊富な潜熱を有効に利用して、高い発電効率で安定して発電できる。
【0011】
また、過熱蒸気は、乾燥バイオマスの熱分解に伴って生じるガス等に比べ、発電装置及び排ガス流通路を汚染しにくいので、発電装置が汚染されて発電効率が低下するのを防止できる。これにより、良好な燃焼効率で焼却炉を運転できるとともに、湿潤バイオマス焼却システムのランニングコストを低減できる。また、乾燥室と燃焼室とを有するように焼却炉を一体的に構成することによって、焼却炉をコンパクトに構成でき、設備費用を抑制できる。
【0012】
前記焼却炉に接続され、前記湿潤バイオマスを前記乾燥室内に直接供給する第1の湿潤バイオマス供給路と、前記過熱蒸気排出路に接続され、前記湿潤バイオマスを前記過熱蒸気排出路の一部を経由して前記乾燥室内に供給する第2の湿潤バイオマス供給路と、をさらに備えてもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1及び第2の湿潤バイオマス供給路を通じて、複数の位置から湿潤バイオマスを乾燥室内に分散して供給でき、湿潤バイオマスを効率よく過熱蒸気で迅速に乾燥できる。また、乾燥室内で湿潤バイオマスが局所的に堆積するのを防止でき、乾燥室の炉床への負荷を抑制できる。
【0014】
前記焼却炉は、前記乾燥室近傍の前記燃焼室側の前記流動床の内部に、前記燃焼室側の前記流動床の下方から、前記燃焼室の流動床の層高よりも低い高さまで延びるように設けられた仕切壁をさらに有していてもよい。
【0015】
これにより、燃焼室内の燃焼ガスまたは酸化性ガスが乾燥室内に流入し、過熱蒸気に混入するのを仕切壁によって一層防止でき、過熱蒸気を用いて発電する発電装置の発電効率を向上できる。
【0016】
前記乾燥室に前記過熱蒸気供給路が複数接続され、いずれかの前記過熱蒸気供給路同士の蒸気流量が異なっていてもよい。
【0017】
このように、蒸気流量が異なる複数の過熱蒸気供給路を乾燥室に接続し、各過熱蒸気供給路から過熱蒸気を乾燥室に供給することで、乾燥室内で、流動媒体と湿潤バイオマスとを過熱蒸気流量が高い位置から低い位置に向けて移動できる。これにより、湿潤バイオマスと過熱蒸気とを良好に混合して、湿潤バイオマスの乾燥を早めることができる。
【0018】
前記乾燥室内で、前記湿潤バイオマス及び前記流動媒体が循環するように、複数の前記過熱蒸気供給路の蒸気流量が設定されてもよい。
【0019】
このように、湿潤バイオマス及び流動媒体を循環させて循環流を形成することで、湿潤バイオマスの乾燥を一層早めることができる。
【0020】
前記過熱蒸気供給路は、第1過熱蒸気供給路であり、前記乾燥室の側壁に接続され、前記流動床に対し、前記乾燥室から前記燃焼室に向けて前記流動媒体及び前記乾燥バイオマスの移動を促すように前記乾燥室内に過熱蒸気を供給する第2過熱蒸気供給路をさらに備えていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、乾燥室の下方と側方の複数の位置から湿潤バイオマスに過熱蒸気を接触させ、湿潤バイオマスの乾燥を早めることができる。また、焼却炉内の乾燥バイオマスの搬送を効率よく行うことができる。
【0022】
前記発電装置は、前記過熱蒸気排出路を流通する過熱蒸気と熱媒体とが熱交換する熱交換器と、前記熱交換器に接続され、前記熱媒体により発電する発電機とを有するバイナリー発電装置であってもよい。
【0023】
これにより、熱交換器において、熱媒体と過熱蒸気とを熱交換させ、熱媒体で発電装置を駆動することで、発電装置において効率よく発電できる。
【0024】
前記過熱蒸気排出路から前記発電装置を迂回するように分岐する迂回路と、前記過熱蒸気排出路の前記発電装置が設けられた位置よりも上流側から分岐し、かつ前記過熱蒸気排出路を流通した過熱蒸気を大気中に開放する開放路とのいずれかを含む分岐路をさらに備え、前記分岐路には、前記発電装置に供給する過熱蒸気量を一定にするためのバルブが設けられていてもよい。
【0025】
上記構成により、発電装置に流通する過熱蒸気量が一定になるように図ることができ、発電装置において、安定した発電電力が得られる。
【0026】
前記過熱蒸気供給路と前記過熱蒸気排出路との間に接続され、前記過熱蒸気排出路を流通する過熱蒸気の一部を前記過熱蒸気供給路に戻す過熱蒸気還流路をさらに備えていてもよい。
【0027】
これにより、例えば乾燥室内の過熱蒸気量が不足した場合であっても、過熱蒸気還流路から過熱蒸気を乾燥室内に供給でき、その不足分を補うことができる。
【0028】
前記過熱蒸気排出路の途中に設けられ、過熱蒸気に含まれる煤塵を回収する集塵機と、前記集塵機と前記焼却炉の間に接続され、前記集塵機で回収された煤塵を前記燃焼室に戻す煤塵流通路と、をさらに備えていてもよい。
【0029】
これにより、乾燥バイオマスの燃焼灰と煤塵とを一カ所に集約でき、燃焼灰と煤塵との管理を行い易くできる。
【0030】
前記過熱蒸気供給路から分岐して前記乾燥室に接続された過熱蒸気流通路をさらに備え、前記過熱蒸気流通路を流通した過熱蒸気が、前記乾燥室内で、前記流動床に向かって落下する前記湿潤バイオマスに対して分散しながら噴出されてもよい。
【0031】
これにより、分岐路を流通した過熱蒸気で湿潤バイオマスを分散させ、湿潤バイオマスと過熱蒸気とを効率よく接触させることにより、湿潤バイオマスの乾燥を早めることができる。
【0032】
前記焼却炉に接続され、前記乾燥室に前記湿潤バイオマスを供給する湿潤バイオマス供給路をさらに備え、前記湿潤バイオマス供給路は、前記燃焼室内を経由して設けられていてもよい。
【0033】
これにより、乾燥室に供給する前に湿潤バイオマスを予め加熱でき、乾燥室内における湿潤バイオマスの乾燥を早めることができる。
【発明の効果】
【0034】
上記した本発明の各態様によれば、発電装置の熱回収の損失を抑制することで、低いランニングコストかつ良好な燃焼効率で運転でき、設備費用を抑制できる湿潤バイオマス焼却システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの全体を示す図である。
図2】第2実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図3】第3実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図4】第4実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図5】第5実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図6】第6実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図7】第7実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図8】第8実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図9】第9実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
図10】第10実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システムの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の各実施形態について、各図を参照しながら説明する。
【0037】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の全体を示す図である。図1に示すように、湿潤バイオマス焼却システム1は、焼却炉2、集塵機3、発電装置4、湿潤バイオマス供給路R1、過熱蒸気供給路R2、過熱蒸気排出路R3、酸化性ガス供給路R4、燃焼ガス排出路R5及び燃焼灰排出路R6を備える。
【0038】
焼却炉2では、炉床2iの上方の空間S1、S2が区画壁2eで区画されることにより、湿潤バイオマスMを乾燥させる乾燥室2aと、乾燥バイオマス(乾燥された湿潤バイオマスM)を燃焼する燃焼室2bとが形成される。また、焼却炉2には、乾燥室2a内の下方と燃焼室2b内の下方とにわたって、流動床2c、2dが設けられる。流動床2c、2dは、流動媒体Fを用いて構成される。流動媒体Fは、例えば珪砂であるが、流動媒体Fは、これに限定されない。
【0039】
乾燥室2aの上方には、湿潤バイオマス供給口2a1が形成される。湿潤バイオマス供給口2a1には、外部から乾燥室2a内に湿潤バイオマスMを供給するための湿潤バイオマス供給路R1が接続される。乾燥室2aの流動床2cの下方には、内部が中空の箱体である風箱2fが設けられる。風箱2fの下方には、湿潤バイオマスMを流動媒体(粒子状物質)Fと混合させながら乾燥させるための過熱蒸気を乾燥室2aに供給する過熱蒸気供給路R2が接続される。乾燥室2aの上方には、湿潤バイオマスMの乾燥に用いられた過熱蒸気を排ガスとして、乾燥室2aの外部に排出するための過熱蒸気排出路R3が接続される。
【0040】
燃焼室2bの流動床2dの下方には、風箱2fとほぼ同様の構成の風箱2gが設けられる。風箱2gの下方には、乾燥バイオマスを流動媒体Fと混合させながら燃焼させるための酸化性ガスを燃焼室2bに供給する酸化性ガス供給路R4が接続される。風箱2f、2gの間は、仕切壁2hにより仕切られる。燃焼室2bの上方には、乾燥バイオマスの燃焼により生じた燃焼ガスを燃焼室2bの外部に排出するための燃焼ガス排出路R5が接続される。
【0041】
流動床2c、2dの下方に配置された炉床2iには、複数のノズル2jが、分散して設けられる。乾燥室2a内の各ノズル2jからは、過熱蒸気供給路R2から供給された過熱蒸気が、風箱2fを経由して乾燥室2a内に噴出される。流動床2cでは、各ノズル2jから噴出する過熱蒸気の流れにより、湿潤バイオマスMが流動媒体Fとともに流動し、撹拌混合されながら乾燥され、乾燥バイオマスとなる。図1に示すように、乾燥バイオマスは、乾燥室2aから燃焼室2bへと送られる。燃焼室2b内の各ノズル2jからは、酸化性ガス供給路R4から供給された酸化性ガスが、風箱2gを経由して燃焼室2b内に噴出される。酸化性ガスは、例えば空気であるが、これに限定されない。流動床2dでは、各ノズル2jから噴出する酸化性ガスの流れにより、乾燥バイオマスが流動媒体Fとともに流動し、撹拌混合されながら燃焼される。燃焼室2bの熱は、流動媒体Fとともに乾燥室2a側に移動し、乾燥室2a内における湿潤バイオマスMの乾燥に用いられる。
【0042】
燃焼室2bには、乾燥バイオマスの燃焼灰を排出するための燃焼灰排出路R6が接続される。乾燥バイオマスの燃焼に伴って発生した燃焼灰(焼却灰)は、燃焼灰排出路R6を介して燃焼室2bの外に排出される。
【0043】
集塵機3は、過熱蒸気排出路R3に設けられる。集塵機3は、過熱蒸気排出路R3内を流通する過熱蒸気に混入した煤塵を回収する。
【0044】
発電装置4は、一例としてバイナリー発電装置であり、蒸発器5、予熱器6、タービン発電機7、凝縮器8、冷却塔9及び複数のポンプP1〜P3を有する。発電装置4において、過熱蒸気排出路R3を流通する過熱蒸気は、ポンプP1により蒸発器5に送られ、熱媒体循環路R7を流通する低沸点熱媒体と熱交換される。その後、過熱蒸気は、予熱器6に送られてさらに熱交換に供され、外部に放出される。蒸発器5では、低沸点熱媒体が過熱蒸気と熱交換されて気化する。気化した低沸点熱媒体は、タービン発電機7に送られて発電に供される。低沸点熱媒体は、その後、凝縮器8に送られる。低沸点熱媒体は、冷却塔9にて冷却され、かつポンプP3により流路R8を流通する冷却水と熱交換されて凝縮される。これにより、低沸点熱媒体は液化し、ポンプP2により予熱器6に送られて予熱される。その後、低沸点熱媒体は、再び蒸発器5に送られる。
【0045】
湿潤バイオマス焼却システム1では、乾燥室2aに供給される過熱蒸気で湿潤バイオマスMを乾燥する。これによって生成した乾燥バイオマスを流動媒体Fとともに燃焼室2bに搬送することで、燃焼室2b内で乾燥バイオマスを着火し易くし、燃焼効率が高められている。また、乾燥室2aに供給される過熱蒸気の温度は、流動床2cの温度が乾燥バイオマスの熱分解温度未満になるよう設定されている。この過熱蒸気の温度は、適宜設定できるが、例えば、流動床2cの温度が100℃以上150℃以下となる範囲に設定できる。また、ここで言う「熱分解未満」の温度とは、乾燥室2a内の乾燥バイオマスが全く熱分解されない厳密な温度に限定されず、若干の熱分解を許容する温度(過熱蒸気排出路R3を流通するガス中の水蒸気以外の成分の濃度が数%以下となる温度)に設定できる。このように流動床2cの温度を乾燥バイオマスの熱分解温度未満に設定することにより、乾燥室2a内での乾燥バイオマスの熱分解が防止され、乾燥バイオマスの熱分解に伴って発生するガスが、乾燥室2aから過熱蒸気排出路R3を流通する過熱蒸気に混入するのが防止される。また、焼却炉2では、乾燥室2aの空間S1と、燃焼室2bの空間S2とが区画壁2eで区画されているので、乾燥室2aから過熱蒸気排出路R3を流通する過熱蒸気に燃焼室2b内の燃焼ガスが混入するのが抑制されている。よって、発電装置4に高純度の過熱蒸気を供給できる。このように、高純度の過熱蒸気が発電装置4に供給されるので、過熱蒸気排出路R3を流通するガスのほぼ全てを用いて発電装置4で熱回収することができる。これにより、例えば特許文献1のように、凝縮器やスクラバーを用いて、発電装置4に供給するガスの不純物成分(過熱蒸気以外の成分)を予め除去することによりガスを精製する工程が不要である。よって、湿潤バイオマス焼却システム1では、熱回収の損失を抑制しながら、過熱蒸気の豊富な潜熱を有効に利用して、高い発電効率で安定して発電できる。
【0046】
なお、一般にキルン式の乾燥機では、所定時間内で湿潤バイオマスを乾燥させるため、湿潤バイオマスを乾燥させる乾燥用ガスをかなり高温に設定する必要がある。これに対し、内部循環流動層式の焼却炉2を備える湿潤バイオマス焼却システム1では、湿潤バイオマスMを流動媒体Fと混合することで湿潤バイオマスM及び過熱蒸気の接触効率を高め、湿潤バイオマスMを効率よく乾燥できる。従って、乾燥室2aに供給される過熱蒸気の温度が、乾燥バイオマスの熱分解温度未満に設定されていても、湿潤バイオマスMを迅速且つ良好に乾燥できる。
【0047】
また、湿潤バイオマス焼却システム1では、湿潤バイオマスMを乾燥した後の過熱蒸気を過熱蒸気排出路R3に排出し、発電装置4の発電に用いることで、過熱蒸気の豊富な潜熱を利用して、高い発電効率で発電できる。また、乾燥バイオマスの熱分解に伴って生じるガスを発電に用いないので、発電装置4または排ガス流通路(過熱蒸気排出路R3)が前記ガスにより汚染され、発電効率が低下するのが防止される。従って、湿潤バイオマス焼却システム1では、良好な燃焼効率で焼却炉2を運転できるとともに、ランニングコストを低減できる。
【0048】
また、焼却炉2を乾燥室2aと燃焼室2bとを有するように一体的に構成することによって、焼却炉2をコンパクトに構成でき、その分、湿潤バイオマス焼却システム1の設備費用を抑制できる。
【0049】
なお、第1実施形態における湿潤バイオマス焼却システム1では、ポンプP1及び予熱器6は省略することもできる。
【0050】
以下、本発明のその他の各実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0051】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。図2に示すように、湿潤バイオマス焼却システム1は、焼却炉2に接続され、湿潤バイオマスMを乾燥室2a内に直接供給する第1の湿潤バイオマス供給路としての湿潤バイオマス供給路R1と、過熱蒸気排出路R3に接続され、湿潤バイオマスMを過熱蒸気排出路R3の一部を経由して乾燥室2a内に供給する第2の湿潤バイオマス供給路R1aと、をさらに備える。焼却炉2は、互いに離間して設けられた複数の湿潤バイオマス供給口2a1を有する。第1の湿潤バイオマス供給路R1と第2の湿潤バイオマス供給路R1aとは、個別に湿潤バイオマス供給口2a1に接続される。これにより、焼却炉2では、複数の位置から乾燥室2a内に湿潤バイオマスMが供給される。
【0052】
このように、第1の湿潤バイオマス供給路R1と第2の湿潤バイオマス供給路R1aとを通じて、複数の位置から湿潤バイオマスMを乾燥室2a内に分散して供給することで、例えば、乾燥室2a内で湿潤バイオマスMを搬送する際にも、湿潤バイオマスMを過熱蒸気で効率よく迅速に乾燥して、乾燥バイオマスを生成できる。また、乾燥室2a内で局所的に湿潤バイオマスMが堆積して炉床2iへの負荷が増大するのを防止することもできる。なお、第1の湿潤バイオマス供給路R1と第2の湿潤バイオマス供給路R1aとのいずれかには、乾燥室2a内への湿潤バイオマスMの供給を促進する目的で、スクリューコンベヤまたはモーノポンプを配設してもよい。
【0053】
なお、第2の湿潤バイオマス供給路R1aは、過熱蒸気排出路R3に接続せずに、湿潤バイオマス供給口2a1に直接接続してもよい。
【0054】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。図3に示すように、焼却炉2は、乾燥室2a近傍における燃焼室2b側の流動床2dの内部に、流動床2dの下方(炉床2i)から流動床2dの層高よりも低い高さまで延びるように設けられた仕切壁2kをさらに有する。一例として、仕切壁2kの板面は、区画壁2eの板面と間隔をおいて対向配置される。区画壁2eは、仕切壁2kよりも乾燥室2aに近接する位置に設けられる。これにより、焼却炉2の内部の中央には、区画壁2eと仕切壁2kとで挟まれた中間域Aが形成される。
【0055】
このような仕切壁2kを用いることで、燃焼室2b内の燃焼ガスまたは酸化性ガスが乾燥室2a内に流入し、燃焼ガスまたは酸化性ガスが過熱蒸気に混入するのを一層防止できる。従って、発電装置4では、過熱蒸気の豊富な潜熱を利用して発電を行えるので、発電装置4の発電効率を向上できる。なお、第3実施形態では、乾燥室2a内の気圧を燃焼室2b内の気圧よりも高くし、仕切壁2kと区画壁2eの中間域Aを通じて、乾燥室2a内の過熱蒸気の一部を燃焼室2bに流入させるように図ることで、乾燥室2a内の過熱蒸気に燃焼ガスまたは酸化性ガスが混入するのを一層防止できる。
【0056】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。図4に示すように、焼却炉2は、風箱2fが複数に分割された分割室2f1、2f2、2f3を有する。過熱蒸気供給路R2は、複数に分岐する複数の過熱蒸気供給分岐路(以下、単に分岐路という。)R2a、R2b、R2cを有する。分割室2f1、2f2、2f3には、分岐路R2a、R2b、R2cが順に接続される。分岐路R2a、R2b、R2cには、バルブV1、V2、V3が順に設けられる。このバルブV1、V2、V3を調節することで、分岐路R2a、R2b、R2c同士における各蒸気流量が、互いに異なるように設定される。
【0057】
このように、互いに蒸気流量が異なるように設定された各分岐路R2a、R2b、R2cを分割室2f1〜2f3を介して乾燥室2aに接続することで、乾燥室2a内において、流動媒体Fと湿潤バイオマスMとを、分岐路R2a、R2b、R2cのうちで蒸気流量が多い位置から少ない位置に向けて循環移動させることができる。これにより、湿潤バイオマスMと過熱蒸気とを良好に混合し、湿潤バイオマスMの乾燥を早めることができる。ここで、例えば、燃焼室2bから離隔するにつれて蒸気流量が少なくなるようにバルブV1、V2、V3をそれぞれ調節すれば、乾燥室2a内において、流動床2cの深さ方向に循環する湿潤バイオマスM及び流動媒体Fの循環流が形成され、一層、湿潤バイオマスMの乾燥を早められると考えられる。
【0058】
(第5実施形態)
図5は、第5実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。図5に示すように、過熱蒸気供給路R2は、第1過熱蒸気供給路として、乾燥室2aに接続される。湿潤バイオマス焼却システム1は、焼却炉2の乾燥室2aの側壁に接続された第2過熱蒸気供給路R9をさらに備える。第2過熱蒸気供給路R9は、流動床2cに対し、乾燥室2aから燃焼室2bに向けて、流動媒体F及び乾燥バイオマスの移動を促すように、乾燥室2a内に過熱蒸気を供給する。
【0059】
第1過熱蒸気供給路R2と第2過熱蒸気供給路R9との両方から、乾燥室2a内に過熱蒸気を供給することで、乾燥室2aの下方と側方との複数の位置から、湿潤バイオマスMに過熱蒸気を接触させることができ、湿潤バイオマスMの乾燥を早めることができる。また、第2過熱蒸気供給路R9から供給される過熱蒸気で、乾燥室2aから燃焼室2bへの流動媒体F及び乾燥バイオマスの移動を促すことで、焼却炉2内において、乾燥バイオマスを効率よく搬送できる。
【0060】
(第6実施形態)
図6は、第6実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。図6に示すように、湿潤バイオマス焼却システム1は、過熱蒸気排出路R3の分岐路として、発電装置4が設けられた位置よりも上流側の過熱蒸気排出路R3から分岐し、かつ過熱蒸気を大気中に開放する開放路R10と、発電装置4を迂回するように過熱蒸気排出路R3から分岐する迂回路R11をさらに備える。開放路R10にはバルブV4が設けられ、迂回路R11にはバルブV5が設けられる。バルブV4、V5は、発電装置4に供給する過熱蒸気量を所定の一定値以下に保つために設けられる。過熱蒸気排出路R3の過熱蒸気量が前記一定値より多くなると、バルブV4、V5の少なくとも一方が作動して、過熱蒸気の一部を外部に逃がすことにより、発電装置4に送られる過熱蒸気量が一定になるように図られる。
【0061】
このように、発電装置4に流通させる過熱蒸気量が一定になるように調整することで、例えば図1に示すように、発電装置4が、過熱蒸気とは別の熱媒体を利用して発電するバイナリー発電装置等である場合においても、その応答遅れを緩和することができ、安定した発電電力を得ることができる。
【0062】
なお、開放路R10及びバルブV4と、迂回路R11及びバルブV5とは、両方設ける必要はなく、このうちの一方のみを設けてもよい。
【0063】
(第7実施形態)
図7は、第7実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。図7に示すように、湿潤バイオマス焼却システム1は、過熱蒸気供給路R2と過熱蒸気排出路R3との間に接続され、過熱蒸気排出路R3を流通する過熱蒸気の一部を過熱蒸気供給路R2に戻す過熱蒸気還流路R12をさらに備える。過熱蒸気還流路R12には、例えば、過熱蒸気を過熱蒸気供給路R2に還流するためのポンプP4が設けられる。
【0064】
このような過熱蒸気還流路R12とポンプP4とを用いることで、例えば、乾燥室2a内の過熱蒸気供給量が不足した場合でも、過熱蒸気還流路R12を介して過熱蒸気を乾燥室2a内に還流でき、過熱蒸気量の不足分を補うことができる。
【0065】
(第8実施形態)
図8は、第8実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。図8に示すように、湿潤バイオマス焼却システム1は、集塵機3と焼却炉2との間に接続された煤塵流通路R13をさらに備える。煤塵流通路R13は、集塵機3で回収された煤塵を燃焼室2bに供給する目的で用いられる。煤塵流通路R13を用いることにより、煤塵と、燃焼室2bで生じた乾燥バイオマスの燃焼灰とを一カ所(燃焼室2b内)に集約できる。従って、例えば、煤塵と燃焼灰との後処理に関する管理を行い易くすることができる。
【0066】
(第9実施形態)
図9は、第9実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。湿潤バイオマス焼却システム1は、過熱蒸気供給路R2から分岐して乾燥室2aに接続された過熱蒸気流通路R14をさらに備える。過熱蒸気流通路R14の乾燥室2a側の先端には、複数のノズル口を持つ不図示のノズルが取り付けられている。過熱蒸気流通路R14を流通した過熱蒸気は、乾燥室2a内で、流動床2cに向かって落下する湿潤バイオマスMに対して、分散しながら噴出される。これにより、乾燥室2a内に過熱蒸気が豊富に供給されるとともに、湿潤バイオマスMが分散されて供給される。従って、湿潤バイオマスMの乾燥不足を防止でき、湿潤バイオマスMと過熱蒸気とを効率よく接触させて乾燥を早めることができる。また、乾燥室2a内に湿潤バイオマスMが局所的に堆積するのが抑制され、炉床2iへの負荷が増大するのを防止できる。
【0067】
(第10実施形態)
図10は、第10実施形態に係る湿潤バイオマス焼却システム1の一部を示す図である。焼却炉2に接続された湿潤バイオマス供給路R1は、燃焼室2b内の燃焼ガスと湿潤バイオマスMとが熱交換可能に、燃焼室2b内を経由するように設けられる。このように、湿潤バイオマス供給路R1を配置することで、乾燥室2aに供給する前に、湿潤バイオマスMを予め加熱でき、乾燥室2a内における湿潤バイオマスMの乾燥を早めることができる。よって、乾燥室2a内に供給する過熱蒸気が不足するのを防止できる。また、乾燥室2a内で湿潤バイオマスMを十分に乾燥できるために排過熱蒸気量を増加できるので、豊富な過熱蒸気を発電装置4に豊富に供給し、発電効率の向上も期待できる。
【0068】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は、互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成を、他の実施形態に適用してもよい。
【0069】
湿潤バイオマス焼却システム1は、過熱蒸気排出路R3を流通する水蒸気の濃度測定器と、過熱蒸気排出路R3を流通するガスを加圧する加圧装置(一例として、ファンまたはブロア)と、前記濃度測定器及び前記加圧装置に接続された制御部とを備えていてもよい。これにより、過熱蒸気排出路R3を流通するガス中の水蒸気の濃度が一定以下に低下した場合に、前記制御部が前記加圧装置を作動させて過熱蒸気排出路R3を流通するガス中の水蒸気分圧を上昇させ、発電装置4で安定して発電できるように図ることもできる。
【符号の説明】
【0070】
F 流動媒体
M 湿潤バイオマス
R1 湿潤バイオマス供給路(第1の湿潤バイオマス供給路)
R1a 第2の湿潤バイオマス供給路
R2 過熱蒸気供給路(第1過熱蒸気供給路)
R2a、R2b、R2c 過熱蒸気供給分岐路
R3 過熱蒸気排出路
R4 酸化性ガス供給路
R9 第2過熱蒸気供給路
R10 開放路
R12 過熱蒸気還流路
R13 煤塵流通路
R14 過熱蒸気流通路
S1 乾燥室の空間
S2 燃焼室の空間
V4、V5 低圧バルブ
2 焼却炉
2a 乾燥室
2a1 湿潤バイオマス供給口
2b 燃焼室
2c、2d 流動床
2e 区画壁
2k 仕切壁
3 集塵機
4 発電装置
5 蒸発器(熱交換器)
6 予熱器(熱交換器)
7 発電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10