(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板表面形状データBは、前記フォトマスクブランク、又は、前記フォトマスクブランクとする為の基板を、主表面が実質的に鉛直になるように保持した状態で、前記主表面上の複数の測定点の位置を測定することによって求められることを特徴とする、請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
前記厚み分布データTは、前記フォトマスクブランク、又は、前記フォトマスクブランクとする為の基板を、主表面が実質的に鉛直になるように保持した状態で、前記主表面上、及び前記主表面の反対側にある裏面上の、対応する位置にある複数の測定点の位置を測定することによって求められることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
前記描画工程においては、前記描画用座標ずれ量データGに基づいて、前記パターン設計データAを補正することにより得られた、補正パターンデータHを用いて描画を行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
前記描画工程においては、前記描画用座標ずれ量データGに基づいて、前記描画装置が有する座標系を補正し、得られた補正座標系と前記パターン設計データAを用いて描画を行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
前記転写用パターンの検査は、前記検査用座標ずれ量データKを、パターン設計データAに反映させて、得られた補正設計データMと、前記パターン座標データLとを用いて行うことを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法。
前記転写用パターンの検査は、前記検査用座標ずれ量データKを、前記パターン座標データLに反映させて、得られた補正座標データNと、パターン設計データAとを用いて行うことを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法。
主表面上に薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクの、前記薄膜をパターニングすることによってフォトマスクとなす、フォトマスクの製造方法において、
請求項11〜15のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法を含むことを特徴とする、フォトマスクの製造方法。
主表面に転写用パターンが形成されたフォトマスクに露光することにより、被加工層をもつデバイス基板に対してパターン転写を行うことを含む、表示装置の製造方法において、
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法によって製造されたフォトマスクを用いることを特徴とする、表示装置の製造方法。
それぞれの主表面に転写用パターンが形成された複数のフォトマスクと露光装置を用い、デバイス基板上に形成される複数の被加工層に対して順次パターン転写を行うことを含む表示装置の製造方法において、
前記複数のフォトマスクは、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする、表示装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置の製造においては、得ようとするデバイスの設計に基づいた転写用パターンを備えたフォトマスクが多く利用される。デバイスとして、スマートフォンやタブレット端末に代表される、液晶表示装置や有機EL表示装置には、明るく省電力、動作速度が速く、かつ、解像度の高い美しい画像が要求される。このため、上述の用途に使用されるフォトマスクに対し、新たな技術課題が発明者らによって顕在化した。
【0006】
微細な画像を鮮明に表現するためには、画素密度を高める必要があり、現在、画素密度400ppi(pixel per inch)を超えるデバイスが実現しようとしている。このため、フォトマスクの転写用パターンのデザインは、微細化、高密度化の方向にある。ところで、表示用デバイスを含む多くの電子デバイスは、微細パターンが形成された複数のレイヤ(Layer)の積層によって立体的に形成される。従って、これら複数のレイヤにおける座標精度の向上、及び互いの座標の整合が肝要になる。すなわち、個々のレイヤのパターン座標精度が、すべて所定レベルを満足していなければ、完成したデバイスにおいて適正な動作が生じないなどの不都合が起きる。従って、各レイヤに求められる座標ずれの許容範囲は益々小さくなっていく方向にある。
【0007】
ところで、特許文献1によれば、フォトマスクブランクの描画工程における膜面の形状と、露光時の膜面の形状との形状変化分を算定し、算定された形状変化分に基づいて、描画に用いる設計描画データを補正することが記載されている。該文献では、転写用パターンを描画する段階で、基板の膜面(透明基板においては、成膜される側の面、フォトマスクブランクにおいては膜が形成された面、フォトマスクにおいては、パターンが形成された面をいう。)における、理想平面からの変形要因のうち、露光時にも残留する分と、露光時には消失する分を区別して、補正した描画データを得る方法が記載されている。
【0008】
フォトレジスト付きのフォトマスクブランクに描画装置によりパターンを描画する際には、フォトマスクブランクは、描画装置のステージ上に膜面を上向きにした状態で載置される。その際、フォトマスクブランクの膜面の表面形状の、理想的な平面からの変形要因は、
(1)ステージの不十分なフラットネス、
(2)ステージ上の異物挟み込みによる基板のたわみ、
(3)フォトマスクブランク膜面の凹凸、
(4)フォトマスクブランク裏面の凹凸に起因する膜面の変形(すなわち(3)及び基板厚みのばらつきに起因する膜面の変形)、
があると考えられる。従って、この状態におけるフォトマスクブランクの表面形状は、上記4つの要因が累積して形成されている。そして、この状態のフォトマスクブランクに描画が行われる。
【0009】
一方、フォトマスクが露光装置に搭載される際には、膜面を下向きにし、フォトマスク外縁部のみを支持することにより固定される。レジスト膜を形成した被転写体(パターンが転写された後、エッチング等により加工されることから被加工体ともいう)をフォトマスクの下に配置して、フォトマスクの上から(裏面側から)露光光を照射する。この状態においては、上記4つの変形要因のうち、(1)ステージの不十分なフラットネス、及び(2)ステージ上の異物挟み込みによる基板のたわみは、消失する。また、(4)基板の裏面の凹凸は、この状態でも残るが、パターンが形成されていない裏面の表面形状は、表面(パターン形成面)の転写には影響しない。一方、フォトマスクが露光装置で使用される際にも残存する変形要因は、上記(3)である。
【0010】
つまり、(1)、(2)、(4)による変形要因は、描画時に存在し、露光時に消失する。この変化に起因して、描画時と露光時との座標ずれが生じることとなる。そこで、上記(1)、(2)、(4)が要因となっている、表面形状の理想平面からの変化分について、設計描画データを補正して描画データとする一方、(3)が要因となっている表面形状変化分は、上記補正に反映させないこととすれば、より正確な、座標設計データの転写性能をもつフォトマスクが得られることになる。
【0011】
従って、特許文献1の方法によれば、被転写体上に形成されるパターンの座標精度を高めることができる。
【0012】
一方、露光装置内におけるフォトマスクは、基板外縁近傍の保持領域において、露光装置の保持部材によってほぼ水平に保持され、支承される。このとき、保持部材によって強制的な拘束を受けて、基板の変形が生じる。更に、表示装置製造用などのフォトマスクであれば、大面積の基板を基板外縁近傍のみで支承するため、自重によるたわみも生じる。この場合、膜面の示す変形によって、フォトマスクのパターンの形成された領域にも影響を及ぼし、その座標精度を劣化させることが生じ得る。現在開発されている高性能の表示装置等におけるパターンの微細化や高集積化を考慮すると、こうした微細な影響も勘案する意義があることを、本発明者は見出した。
【0013】
例えば、表示装置等のデバイスは、パターニングされた薄膜が積層されて形成されているが、積層される個々のレイヤは、個々の異なるフォトマスクがもつ転写用パターンによって形成されたものである。使用される個々のフォトマスクは、厳しい品質管理のもとに製造されることは言うまでも無い。しかしながら、個々のフォトマスクが異なるものである以上、その表面の平坦度をすべて完全な理想平面並とすることは困難であり、また、その膜面形状を複数フォトマスクにおいて完全に一致させることも困難である。
【0014】
従って、個々のフォトマスクにおいて、その膜面形状に個体差があり、これら個々のフォトマスクが、露光装置内において保持されたときに示す膜面形状を考慮して、描画データの補正を行えば、より座標精度の高い転写用パターンを形成できることとなる。
【0015】
つまり、特許文献1の方法に対し、描画時と露光時の膜面姿勢の相違に起因する、座標精度の劣化を防止する事において、更に精度を高め、複数レイヤをもつデバイスの歩留まりを高めるためには、各レイヤに用いられるフォトマスク基板の膜面形状の個体差、およびそれらが露光装置内において受ける力による影響についても考慮し、この影響による転写性の劣化を実質的に解消する方法が有益であることが、本発明者によって見出された。
ところで、上記文献1には、フォトマスクブランクを、膜面を上側にして描画装置のステージに載置し、この状態でこのフォトマスクブランクの上側の面の高さ分布を測定する工程が記載されている。この工程は、上記4つの要因の結果を定量化することを可能にする点で、有用である。但し、この工程は、フォトマスクブランクの描画装置占有時間を増加させるデメリットがある。フォトマスクの生産効率やコストに対する、描画装置占有時間の影響は大きいため、これを改善する潜在的な技術課題があることにも、本発明者は着目した。
【0016】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、被転写体上に形成されるパターンの座標精度を高めることのできるフォトマスクの製造方法、描画装置、フォトマスクの検査方法、フォトマスクの検査装置、及び表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
(構成1)
基板の主表面上に薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクを用意し、描画装置により、所定の転写用パターンを描画することを含む、フォトマスクの製造方法において、
前記所定の転写用パターンの設計を基にパターン設計データAを用意する工程と、
前記基板の厚み分布を示す、厚み分布データTを用意する工程と、
前記フォトマスクを、露光装置に保持したときの前記主表面の形状を示す、転写面形状データCを用意する工程と、
前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCを用いて、描画差分データFを得る工程と、
前記描画差分データFに対応する、前記主表面上の複数点における、座標ずれ量を算定して、描画用座標ずれ量データGを求める工程と、
前記描画用座標ずれ量データGと、前記パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクブランク上に、描画を行う描画工程と、を有する、フォトマスクの製造方法。
【0018】
(構成2)
基板の主表面上に薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクを用意し、描画装置により、所定の転写用パターンを描画することを含む、フォトマスクの製造方法において、
前記所定の転写用パターンの設計を基にパターン設計データAを用意する工程と、
前記基板の厚み分布を示す厚み分布データT、及び前記主表面の表面形状を示す基板表面形状データBを用意する工程と、
前記フォトマスクが露光装置内において保持される際に、前記表面形状に生じる変位を、前記基板表面形状データBに対して反映させて、露光装置に保持したときの前記主表面の形状を示す、転写面形状データCを得る工程と、
前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCを用いて、描画差分データFを得る工程と、
前記描画差分データFに対応する、前記主表面上の複数点における、座標ずれ量を算定して、描画用座標ずれ量データGを求める工程と、
前記描画用座標ずれ量データGと、前記パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクブランク上に、描画を行う描画工程と、を有する、フォトマスクの製造方法。
【0019】
(構成3)
前記基板が露光装置内に保持される際に生じる、前記主表面の変形のうち、前記基板の自重たわみに起因する前記主表面の変形分を示す自重変形分データRを求め、
前記描画差分データFを得る工程において、前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとともに、前記自重変形分データRを用いることを特徴とする、構成1又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
【0020】
(構成4)
前記基板表面形状データBは、前記フォトマスクブランク、又は、前記フォトマスクブランクとする為の基板を、主表面が実質的に鉛直になるように保持した状態で、前記主表面上の複数の測定点の位置を測定することによって求められることを特徴とする、構成2に記載のフォトマスクの製造方法。
【0021】
(構成5)
前記厚み分布データTは、前記フォトマスクブランク、又は、前記フォトマスクブランクとする為の基板を、主表面が実質的に鉛直になるように保持した状態で、前記主表面上の複数の測定点の位置を測定することによって求められることを特徴とする、構成1〜4のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0022】
(構成6)
前記描画装置に固有の座標ずれ成分に関する、座標ずれ固有データQをあらかじめ求め、
前記描画工程においては、前記描画用座標ずれ量データG、前記パターン設計データAとともに、前記座標ずれ固有データQを用いて、前記フォトマスクブランク上に、描画を行うことを特徴とする、構成1〜5のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0023】
(構成7)
前記転写面形状データCを求める工程においては、有限要素法を用いることを特徴とする、構成1〜6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0024】
(構成8)
前記描画工程においては、前記描画用座標ずれ量データGに基づいて、前記パターン設計データAを補正することにより得られた、補正パターンデータHを用いて描画を行うことを特徴とする、構成1〜6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0025】
(構成9)
前記描画工程においては、前記描画用座標ずれ量データGに基づいて、前記描画装置が有する座標系を補正し、得られた補正座標系と前記パターン設計データAを用いて描画を行うことを特徴とする、構成1〜6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0026】
(構成10)
前記フォトマスクが露光装置内において保持される際に、保持部材によって保持される複数の保持点が平面上に配置されることを特徴とする、構成1〜9のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0027】
(構成11)
基板の主表面上に薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクに対して、転写用パターンを描画することに用いる描画装置であって、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す厚み分布データT、および
前記基板を露光装置に保持した状態の前記基板の主表面形状を示す転写面形状データC
を入力する入力手段と、
前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における描画用座標ずれ量データGを演算する演算手段と、
前記描画用座標ずれ量データGと、前記パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクブランク上に、描画を行う描画手段と、を有する、描画装置。
【0028】
(構成12)
基板の主表面上に薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクに対して、転写用パターンを描画することに用いる描画装置であって、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す厚み分布データT、
前記基板の主表面の形状を示す、基板表面形状データB、
前記基板を露光装置に保持するときの、保持状態に関する情報、および
前記基板素材の物性値を含む基板情報
を入力する入力手段と、
前記基板表面形状データB、前記保持状態に関する情報、及び、前記基板情報を用いて、露光装置内において保持された状態の前記基板の主表面形状を示す転写面形状データCを演算可能であるとともに、前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における描画用座標ずれ量データGを演算する演算手段と、
前記描画用座標ずれ量データGと、前記パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクブランク上に、描画を行う描画手段と、を有する、描画装置。
【0029】
(構成13)
前記基板が露光装置内に保持される際に生じる、前記主表面の変形のうち、前記基板の自重たわみに起因する前記主表面の変形分を示す自重変形分データRを保存する記憶手段を更に有し、
前記演算手段は、前記自重変形分データRを使用して演算することを特徴とする、
構成12に記載の描画装置。
【0030】
(構成14)
前記描画装置に固有の座標ずれ成分に関する、座標ずれ固有データQを保存する記憶手段を有し、
前記演算手段は、前記座標ずれ固有データQを使用して演算することを特徴とする、
構成12又は13に記載の描画装置。
【0031】
(構成15)
基板の主表面に薄膜をパターニングしてなる転写用パターンを有するフォトマスクを、検査装置を用いて検査する、フォトマスクの検査方法において、
前記フォトマスクを、前記検査装置のステージ上に載置した状態で、前記主表面に形成されたパターンの座標測定を行い、パターン座標データLを得る工程と、
前記基板の厚み分布を示す、厚み分布データTを用意する工程と、
前記フォトマスクを、露光装置に保持したときの前記主表面の形状を示す、転写面形状データCを得る工程と、
前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、検査差分データJを得る工程と、
前記検査差分データJに対応する、前記主表面上の複数点における、座標ずれ量を算定して、検査用座標ずれ量データKを求める工程と、
前記検査用座標ずれ量データKと、前記パターン座標データLを用いて、前記転写用パターンの検査を行う検査工程を有する、フォトマスクの検査方法。
【0032】
(構成16)
基板の主表面に薄膜をパターニングしてなる転写用パターンを有するフォトマスクを、検査装置を用いて検査する、フォトマスクの検査方法において、
前記フォトマスクを、前記検査装置のステージ上に載置した状態で、前記主表面に形成されたパターンの座標測定を行い、パターン座標データLを得る工程と、
前記基板の厚み分布を示す、厚み分布データT、及び前記主表面の表面形状を示す基板表面形状データBを用意する工程と、
前記フォトマスクが露光装置内において保持される際に、前記表面形状に生じる変位を、前記基板表面形状データBに対して反映させて、露光装置に保持したときの前記主表面の形状を示す、転写面形状データCを得る工程と、
前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、検査差分データJを得る工程と、
前記検査差分データJに対応する、前記主表面上の複数点における、座標ずれ量を算定して、検査用座標ずれ量データKを求める工程と、
前記検査用座標ずれ量データKと、前記パターン座標データLを用いて、前記転写用パターンの検査を行う検査工程を有する、フォトマスクの検査方法。
【0033】
(構成17)
前記基板が露光装置内に保持される際に生じる、前記主表面の変形のうち、前記基板の自重たわみに起因する前記主表面の変形分を示す自重変形分データRを求め、
前記検査差分データJを得る工程において、前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとともに、前記自重変形分データRを用いることを特徴とする、構成15又は16に記載のフォトマスクの検査方法。
【0034】
(構成18)
前記検査装置に固有の座標ずれ成分に関する、検査座標ずれ定数データSをあらかじめ求め、
前記検査工程では、前記検査用座標ずれ量データKと、前記パターン座標データLとともに、前記検査座標ずれ定数データSを用いて、検査することを特徴とする、構成15〜17のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法。
【0035】
(構成19)
前記転写面形状データCを求める工程においては、有限要素法を用いることを特徴とする、構成16〜18のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法。
【0036】
(構成20)
前記転写用パターンの検査は、前記検査用座標ずれ量データKを、パターン設計データAに反映させて、得られた補正設計データMと、前記パターン座標データLとを用いて行うことを特徴とする、構成15〜19のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法。
【0037】
(構成21)
前記転写用パターンの検査は、前記検査用座標ずれ量データKを、前記パターン座標データLに反映させて、得られた補正座標データNと、パターン設計データAとを用いて行うことを特徴とする、構成15〜19のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法。
【0038】
(構成22)
主表面上に薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクの、前記薄膜をパターニングすることによってフォトマスクとなす、フォトマスクの製造方法において、
構成15〜21のいずれかに記載のフォトマスクの検査方法を含むことを特徴とする、フォトマスクの製造方法。
【0039】
(構成23)
主表面に転写用パターンが形成されたフォトマスクに露光することにより、被加工層をもつデバイス基板に対してパターン転写を行うことを含む、表示装置の製造方法において、
構成1〜10のいずれかに記載の製造方法によって製造されたフォトマスクを用いることを特徴とする、表示装置の製造方法。
【0040】
(構成24)
それぞれの主表面に転写用パターンが形成された複数のフォトマスクと露光装置を用い、デバイス基板上に形成される複数の被加工層に対して順次パターン転写を行うことを含む表示装置の製造方法において、
前記複数のフォトマスクは、構成1〜10のいずれかに記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする、表示装置の製造方法。
【0041】
(構成25)
基板の主表面に薄膜をパターニングしてなる転写用パターンを有するフォトマスクを検査する、フォトマスクの検査装置であって、
前記主表面に形成されたパターンの座標測定を行い、パターン座標データLを得る、座標測定手段と、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す厚み分布データT、
前記基板を露光装置に保持した状態の前記基板の主表面形状を示す転写面形状データC
を入力する入力手段と、
前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における検査用座標ずれ量データKを演算する、演算手段と、
前記検査用座標ずれ量データKと、パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクの転写用パターンを検査する、検査手段を有する、フォトマスクの検査装置。
【0042】
(構成26)
基板の主表面に薄膜をパターニングしてなる転写用パターンを有するフォトマスクを検査する、フォトマスクの検査装置であって、
前記主表面に形成されたパターンの座標測定を行い、パターン座標データLを得る、座標測定手段と、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す、厚み分布データT、
前記基板の主表面の形状を示す、基板表面形状データB、
前記基板を露光装置に保持するときの、保持状態に関する情報、および
前記基板素材の物性値を含む基板情報
を入力する入力手段と、
前記基板表面形状データB、前記保持状態に関する情報、及び、前記基板情報を用いて、露光装置内において保持された状態の前記基板の主表面形状を示す転写面形状データCを演算可能であるとともに、前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における検査用座標ずれ量データKを演算する、演算手段と、
前記検査用座標ずれ量データKと、パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクの転写用パターンを検査する、検査手段を有する、フォトマスクの検査装置。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、被転写体上に形成されるパターンの座標精度を高めることのできる、効率的なフォトマスクの製造方法、描画装置、フォトマスクの検査方法、フォトマスクの検査装置、及び表示装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<実施の態様1>(描画)
本発明のフォトマスクの製造方法は、以下の工程をもつ。
【0046】
フォトマスクブランクの用意
本発明では、基板の主表面に、1又は複数の薄膜と、フォトレジスト膜を形成したフォトマスクブランクに、得ようとするデバイスに基づいて設計したパターンを形成してフォトマスクとなすための描画を行う。このため、基板の一主表面上に、上記薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクを用意する。
【0047】
用意するフォトマスクブランクは公知のものを使用できる。
基板としては、石英ガラスなどの透明基板を用いることができる。大きさや厚さに制限は無いが、表示装置の製造に用いられるものとしては、一辺300mm〜1800mm、厚さが5〜15mm程度のものが利用できる。
【0048】
本願では、薄膜を形成する前の基板のほか、主表面に一又は複数の薄膜を形成したもの、或いは、薄膜上にフォトレジスト膜を形成したものの基板を、「基板」(或いは、フォトマスクブランク基板、フォトマスク基板)とよぶことがある。
【0049】
尚、基板の主表面の平坦度や厚み分布(以下、TTV(total thickness variation)ともいう)を測定する工程において、主表面に成膜された薄膜やフォトレジスト膜の厚さの影響は、実質的に生じない。薄膜やフォトレジスト膜の膜厚は、十分に小さく、上記測定に実質的な影響を与えないからである。
【0050】
薄膜としては、フォトマスクを使用する際の露光光を遮光する遮光膜(光学濃度OD = 3以上)のほか、露光光を一部透過する、半透光膜(露光光透過率は、2〜80%)であってもよく、又は、位相シフト膜(例えば、露光光の位相シフト量が150〜210度、露光光透過率2〜30%程度のもの)、或いは、光の反射性を制御する反射防止膜などの光学膜であってもよい。更に、エッチングストッパ膜などの機能膜を含んでも良い。単一膜であっても、複数膜の積層であってもよい。例えば、Crを含む遮光膜や反射防止膜、Cr化合物や金属シリサイドを含む半透光膜や位相シフト膜などが適用できる。複数の薄膜が積層されたフォトマスクブランクを適用することもできる。これら複数の薄膜のそれぞれのパターニングに対して、本発明の方法を適用することによって、優れた座標精度の転写性をもつフォトマスクとすることができる。
【0051】
最表面に形成されるフォトレジストは、ポジ型でもネガ型でも良い。表示装置用のフォトマスクとしては、ポジ型が有用である。
【0052】
I パターン設計データAを用意する工程
パターン設計データは、得ようとするデバイス(表示装置など)に基づいて設計された、転写用パターンのデータである。
【0053】
本発明によるフォトマスクによって製造されるデバイスの用途に、制限は無い。例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置を構成する各構成物の、各レイヤに本発明を適用することによって、優れた効果が得られる。たとえば、ピッチが7μm未満のラインアンドスペースパターン(ライン又はスペースに線幅(CD: Critical Dimension)が4μm、或いは3μm未満の部分があるものなど)や、径が1.5〜5μm、特に1.5〜3.5μmのホールパターンなどをもつ、微細な設計の表示装置用のフォトマスクなどに、本発明は有利に用いられる。
【0054】
パターン設計データは、補正をせずにそのまま用いて描画を行うと、描画時(描画装置内に載置されたとき)と、露光時(露光装置内に保持されたとき)の、膜面形状の相違に起因して、転写用パターンが、被転写体に形成されたときの、座標精度が不十分となる。このため、以下の工程による補正を行う。
【0055】
II 基板の厚み分布を示す厚み分布データT、及び、基板表面形状データBを得る工程
厚み分布データTと基板表面形状データBの取得の順序はいずれが先でもよく、また、別々の工程で取得しても、ひとつの工程中で取得してもよい。ここでは、同一の平坦度測定器を用いてひとつの工程中で測定する場合について例示する。
例えば、測定対象の基板を、主表面が実質的に鉛直になるように保持する。すなわち、自重によるたわみが実質的に基板表裏の形状に影響しない状態として、平坦度測定機によって測定することができる(
図1参照)。
測定は、照射した光(レーザーなど)の反射光を検出するなど、光学的な測定方法を用いる平坦度測定機により行うことができる。測定装置の例として、例えば黒田精工株式会社製の平面度測定機FTTシリーズや、特開2007−46946号公報記載のものなどを挙げることができる。
このとき、主表面上に、等間隔(離間距離をピッチPとする)に、XY方向に描いた格子の交点(格子点)を、主表面上に複数設定し、これを測定点とすることができる(
図2参照)。
【0056】
例えば、実質的に鉛直な平面を基準面とし、この基準面と、上記の各測定点とのZ方向(
図2参照)の距離を、各測定点について測定する機能を有するような平坦度測定機を使用することができる。この測定により、基板の主表面の平坦度が把握でき、これによって、基板表面形状データBが得られる。
図2では、Pを10mmとした例を示す。
【0057】
図2(a)に示すとおり、主表面上の全測定点のZ方向の高さを測定する。これにより、基板表面形状データBが、平坦度マップの形で得られる(
図8(a)参照)。
【0058】
尚、上記基板表面形状データBを取得する際、基板裏面側(膜面となる主表面とは反対の面)についても、膜面側と対応する位置に測定点を設定して、同様の測定を行うことにより、基板裏面形状データ、及び、各測定点における基板の厚み(膜面と裏面の距離)分布データTを求めておくことができる(
図2(a)参照)。基板の厚み分布はTTV(Total thickness variation)とも表記する。この厚み分布データTは、後段で使用することができる。
【0059】
測定点の設定については、基板のサイズによる測定時間の観点と、補正精度の観点から、離間距離Pを決定することができる。離間距離Pは、例えば、2≦P≦20(mm)、より好ましくは5≦P≦15(mm)とすることができる。
【0060】
また、膜面側の表面平坦度測定を行った後、測定値から、最小二乗平面を求めることができる。この面の中心を原点Oとする。
【0061】
III 転写面形状データCを得る工程
次に、この基板がフォトマスクとなったとき、該フォトマスクが露光装置内において保持される状態を考える。露光装置にセットされたフォトマスクは、膜面を下側に向けた状態で保持される。この状態で、基板の膜面(転写面)は、保持状態に応じて、その状態に依存した力を受け、その形状が変化する。これは、保持部材の形状によっても異なる変形となる。
【0062】
III-1方式<1>
ここでは、
図6(a)(b)に示す方式で、マスク基板を保持する露光装置を使用する場合について説明する。
露光機内で、マスク基板は、膜面側(パターン形成面)を下方に向けてほぼ水平に支承され、外縁近傍にて保持部材と接触して、保持される。
【0063】
略水平に保持された基板は、自重によるたわみを生じ、主平面の中央付近の位置が外縁付近より下がる。そこで、フォトマスクの自重に対抗し、たわみを低減する目的で、フォトマスクの裏面(膜面側と反対の面)に所定の領域を設定し、該領域に、真空圧による力を及ぼすことができる(
図6b))。この場合、その領域や真空圧の大きさにより、フォトマスクの受ける力が変化する。ここで真空圧を及ぼす場合とは、フォトマスク転写面の裏面の空間を減圧することにより、フォトマスクを上方に吸引する状態をいう。
【0064】
こうした力を受けた状態で、基板表面形状(転写面形状)を、測定することができる。すなわち、露光機にセットされた状態のフォトマスク膜面に必要な数の測定点を設け、光学的手段等によって形状測定することにより、例えば
図10(b)に示すようなマップを得ることができる。この測定点は、上記基板表面形状データBで用いた測定点と同じ位置とすることが好ましい。
【0065】
但し、測定を行わなくても、本発明を実施することができる。
例えば、露光装置に保持された状態のフォトマスク膜面に生じる変位を算定し、これを、基板表面形状データBに対して反映させ、転写面形状データCを得ることができる(
図8((b)参照)。すなわち、露光装置に保持したときに主平面形状に及ぼす、保持状態に関する情報(保持部材による保持条件、及び、自重に対抗する真空圧条件がこれに含まれる)を用いて、転写面形状データCを、シミュレーションにより求めることができる。
【0066】
この工程においては、有限要素法を適用することが好ましい。そこで、その準備段階として、マスクモデルを作成する(
図3)。
【0067】
既述の、膜面側と裏面側の平坦度測定により、両表面の形状データが得られている。ここで、最外周の測定点に対して、基板端部側に1ピッチ分離間した位置に更に仮想の測定点をそれぞれ1点追加し、この仮想測定点のZ方向の高さを、最外周の測定点と同じ高さに設定する。これは、以下で用いる有限要素法において、基板のサイズと重量を正しく反映させるためのものである。また、膜面側と裏面側の対応する測定点の中間にも、仮想測定点を設定し、対応する2つの測定値の中央値を設定する。そして、隣接する測定点(仮想測定点を含む)を、直線で結ぶ(
図3(a)、(b)参照)。
【0068】
尚、上記の仮想測定点は、膜面と裏面の測定値の中央に設ける場合に限定されず、厚さ方向に等間隔で2点、又は3点設けてもかまわない。
【0069】
図4(a)〜(d)には、このマスクモデルを、表裏両面及び断面からみた模式図を示す。
【0070】
次に、このマスクモデルにおいて、フォトマスクが露光装置内で保持部材に保持される複数の保持点を設定する。これは、フォトマスクが露光装置内に搭載されたときに、保持部材によって接触、或いは吸着による保持、拘束される点であり、露光装置のメーカーや世代、サイズによって異なるので、使用する露光装置に基づいて決定する。
【0071】
本態様では、一例として、基板の主表面の外周をなす四辺の近傍に、四辺と平行に、外周から所定の距離だけ離間して配置された四角形帯状の保持部材が、転写用パターン形成領域を囲むように、基板の膜面側に接触する場合について説明する(
図5(b)の点線)。
すなわち、
図6(a),(b)に示すモデルにおいて、点線上にある測定点を、保持点とする。露光装置内において、保持点が保持部材と接触して拘束されることにより変位し、これによって、基板の有する物性により、膜面形状全体に変位が及ぶことがある。
更に、上記のとおり、基板には自重がかかり、たわみを生じるので、たわみを低減させるための上向きの力を与える。これは、基板の上(裏面側)から、真空圧を及ぼすことによって行う。(
図6(a))。真空圧を及ぼす領域は、
図6(b)に示すとおり、基板主表面の中心を含む、四角形領域とすることができる。
【0072】
図5(a)に示すモデルでは、保持点となった測定点の位置がZ軸上でゼロとなるように強制変位量を設定する。尚、Z軸方向のゼロ位置は、既に設定した最小二乗平面(及びその上にある原点)を参照する。例えば、保持点となったある測定点の膜面側平坦度の値が5μmであれば、その測定点の強制変位量は、「−5μm」となる。
ここで、裏面側から付加する真空圧の量を、膜面の平坦度が最小となる量に設定することが好ましい。
尚、所定の面の平坦度(フラットネス)を評価するとき、その面と、基準面(所定の面とほぼ平行な面を基準面とすることが多い)との距離において、その最大値と最小値の差として表現することがある。すなわち、平坦度の数値が小さい場合に、その面に凹凸が少なく、より平坦であることを意味する。
【0073】
そこで、シミュレーションに適用する真空圧の量を決定するためには、フォトマスク基板の裏面に与える真空圧を変化させたとき、膜面の平坦度が最小となるときの真空圧を求めれば良い。一般的に、基板の自重たわみによる変位は、基板中心付近で最大となるため、膜面(基板主表面)の中心点における、基準面からの距離が、基板外縁における基準面からの距離と、最も近くなる時、平坦度が最小であると考えられる。基板外縁における基準面からの距離の測定においては、外縁上に、測定点を複数設定してもよく、又は、特定の位置を、代表点として定めても良い。また、膜面平坦度が最小となるときの真空圧は、実際に露光装置に基板をセットして実測してもよく、又は、上記保持状態に関する情報を用いたシミュレーションの一環として求めても良い。
【0074】
次に、上記で用意したモデル条件を、有限要素法(FEM)のソフトウエアに入力し、上記強制変位によって、保持点以外の各測定点がどのような変位をするかを算定する。これによって、露光装置内における、フォトマスクの膜面形状を示す、「転写面形状データC」を得ることができる。
【0075】
有限要素法を適用する際には、各種物性値や条件のパラメータが必要である。本態様では、例として以下のものとする。
[基板(石英ガラス)物性値条件]
ヤング率 E:7341 kg/mm^2
ポアソン比 ν:0.17
重量密度m :0.0000022 kg/mm^3
[Mask Model条件]
各測定点の座標値(x、y、z)ファイル: (膜面、裏面、中間点のすべての測定点について)
測定点を結ぶ条件ファイル: 六面体
本態様では、膜面と裏面の対応する測定点、その中間点(仮想測定点を含む)に関し、隣接するもの同士をすべてつなぐことにより、六面体が集積するモデルとした(
図7参照)。
[保持条件]
強制変位量を設定したファイル: 上記保持点の強制変位量
[真空圧条件]
真空圧の量と、それを及ぼす領域を設定したファイル
【0076】
そして、有限要素法によって、保持点以外の全ての測定点の変位量を算出する。
露光装置内に保持されたフォトマスクは、これに働く力のつり合いにより静止している。このとき、
自重ベクトルG − 応力ベクトルσ − 真空圧力ベクトル = 0
が成立している。
【0077】
ここで、
応力ベクトルσ=[k] × 変位量ベクトルu
(但し、[k]は、ヤング率eとポアソン比νから構成される行列である)
自重ベクトルG= 要素体積 × 重量密度m × 重力方向ベクトル
である。
【0078】
ここで一つ一つの要素は、
図7に示すとおり、個々の六面体である。
全要素(基板全体)について、これを重ね合わせると、
G1−σ1−F1+G2−σ2−F2+G3−σ3−F3+・・・=0 (式<1>)
G1−F1+G2−F2+G3−F3+・・・=σ1+σ2+σ3+・・・=[k1]u1+[k2]u2+[k3]u3+・・・ (式<2>)
【0079】
ここで、変位量ベクトル(u1、u2、u3、・・・)が、各測定点にける変位量となり、求めようとする数値である。但し、保持点における変位量ベクトルは、上記のとおり強制変位量として入力される。
【0080】
上記有限要素法により算出した、各測定点の変位量ベクトルにより、露光装置内に保持されたフォトマスクの膜面形状のデータが得られる。すなわち、これが露光装置によってパターン転写がなされるときの、フォトマスクの膜面形状のデータであり、「転写面形状データC」である。
【0081】
III-2 方式<2>
方式<2>では、
図13のモデルを使用する。
ここでは、
図13(b)に示すように、露光装置の保持部材は、マスク基板主表面における、対向する2つの辺の近傍にそれぞれ接触する(
図13(b)の点線上にある測定点が、保持点となる)。そして、膜面側を下方に向けてフォトマスクを保持する。露光機内のフォトマスク基板主平面は、この保持点が保持部材に拘束され、強制的に変位し、これによって、基板の有する物性により、膜面形状全体に変位が及ぶことになる。
【0082】
図13(a)に示すモデルでは、保持点となった測定点の位置がZ軸上でゼロとなるように強制変位量を設定する。尚、Z軸方向のゼロ位置は、既に設定した最小二乗平面(及びその上にある原点)を参照する。例えば、保持点となったある測定点の膜面側平坦度の値が5μmであれば、その測定点の強制変位量は、「−5μm」となる。
【0083】
次に、上記で用意したモデル条件を、有限要素法(FEM)のソフトウエアに入力し、上記強制変位によって、保持点以外の各測定点がどのような変位をするかを算定する。これによって、露光装置内における、フォトマスクの膜面形状を示す、「転写面形状データC」が得られる。この転写面形状データCには、重力によるたわみ成分が含まれている(
図14(b)参照)。
【0084】
有限要素法を適用する際には、各種物性値や条件のパラメータが必要である。但し、本方式では、露光装置にセットされたマスク基板には真空圧を適用しない。従って、上記方式<1>における、真空圧条件を設定したファイルは不要である。
【0085】
ここでも一つ一つの要素は、
図7に示すとおり、個々の六面体とする。
六全要素(基板全体)の総和は、
G1−σ1+G2−σ2+G3−σ3+・・・=0 (式<3>)
G1+G2+G3+・・・=σ1+σ2+σ3+・・・=[k1]u1+[k2]u2+[k3]u3+・・・ (式<4>)
【0086】
ここで、変位量ベクトル(u1、u2、u3、・・・)が、各測定点にける変位量となり、求めようとする数値である。但し、保持点における変位量ベクトルは、上記のとおり強制変位量として入力される。
【0087】
上記有限要素法により算出した、各測定点の変位量ベクトルにより、露光装置内に保持されたフォトマスクの膜面形状のデータが得られる。すなわち、これが露光装置によってパターン転写がなされるときの、フォトマスクの膜面形状のデータであり、「転写面形状データC」である。
【0088】
転写面修正データDを得る工程
上記の転写面形状データCには、基板に働く重力によるたわみの影響が含まれている。一方、このような自重たわみによる膜面形状の変形、更に、その変形による各座標位置のずれ量は、基板のサイズや材料に由来する物性値等を与えられれば、比較的容易に算定することが可能である。このため、表示装置用マスクの製造に用いられる露光装置の中には、この自重たわみ成分に由来する座標ずれの補正の機能が備えられているものがあり、この場合、自重たわみ成分を補償して描画がなされる。
【0089】
そこで、描画補正パターンデータを求めるためには、露光装置に備えられた重力たわみ成分の補償機能による補正と、重複補正とならないよう、「転写面形状データC」から、重力たわみ成分を除去することが必要となる。そこで、上記転写面形状データCから、基板の自重たわみによる変形分、つまり自重たわみ成分を除去した、転写面修正データDを求める(
図14(e))。
【0090】
このため、自重たわみのみによる変形成分(自重たわみ成分)を算定する。すなわち、上記基板と同様の素材、形状、サイズであって、理想形状(主平面同士が平行な理想平面である)の基板(理想基板ともいう)について、主表面の重力たわみのみによる変形を求める(
図14(d))。これを参照形状データC1ともいう。ここでは上記と同様に有限要素法を適用することができる。
【0091】
或いは、仮想的な理想基板の重力たわみ成分を求める代わりに、所定の基準基板を用意し、これについて上記有限要素法の手順によって、自重たわみによる変形を求めることもできる。この場合に得られた参照形状データC2を、上記C1の代わりに用いても良い。特定の露光装置に対して、基準基板の仕様を定めている場合には、この方法が適用できる。
このC1又はC2は、基板が露光装置内に保持される際に生じる、前記主表面の変形のうち、前記基板の自重たわみに起因する前記主表面の変形分を示す自重変形分データRに相当する。
【0092】
そして、既に求めた転写面形状データCから、C1(又はC2)を減じて差分を求めれば、転写面修正データDを得ることができる。(
図14(e))
【0093】
IV 描画差分データFを得る工程
上述のとおり、フォトマスクブランクに描画装置によりパターンを描画する際には、フォトマスクブランクは、描画装置のステージ上に膜面を上向きにした状態で載置される。その際、フォトマスクブランクの膜面の表面形状の、理想的な平面からの変形要因は、
(1)ステージの不十分なフラットネス、
(2)ステージ上の異物挟み込みによる基板のたわみ、
(3)フォトマスクブランク膜面の凹凸、
(4)フォトマスクブランクの裏面の凹凸に起因する膜面の変形、
があると考えられる。従って、この状態におけるフォトマスクブランクの表面形状は、上記4つの要因が累積して形成されている。そして、この状態のフォトマスクブランクに描画が行われる。
【0094】
一方、描画後にパターニングが施され、露光装置内にセットされたフォトマスクにおいて、その主表面には、上記(1)、(2)、(4)による変形要因が消失している。この形状変化による座標ずれ分を定量化する必要がある。
【0095】
ここで、上記(1)は、描画装置のステージに固有のものであり、同一のステージを使用する限り、再現性をもって生じる座標ずれ要素である。従って、あらかじめ、描画装置のステージ面形状を精密に測定し、パラメータとして保有し、これを、後述の描画差分データFを求める際に使用することができる。このパラメータを、例えば、座標ずれ固有データQとする。
【0096】
また、上記(2)は、偶発的な座標ずれ要因であって、発生確率は大きくない。更に、この要因による座標ずれの発生を更に低減するためには、ステージのクリーニング工程をより厳格に行うことにより、異物の存在を極力排除することができる。
【0097】
上記(3)+(4)による、描画ステージ上での高さ変動は、換言すれば、(3)+(基板厚み変動)とすることができる。つまり、座標ずれに影響する要素のうち、(4)については、厚み分布データTの数値を使用してデータ補正を行うことができる。
【0098】
このため、本発明では、あらかじめ求めた、厚み分布データTと、転写面形状データCを用いて、描画差分データFを得る工程を実施することができる。
【0099】
方式<1>の場合(
図8):
図8に示すとおり、転写面形状データCと厚み分布データTの差分を求める。好ましくは、ここで得た差分から、さらにステージ面平坦度など、描画装置固有の座標ずれ要素を示す、座標ずれ固有データQを減じて、描画差分データFを求める。尚、この座標ずれ固有データQは、座標ずれ量としてXY座標値に変換したのちに、描画用座標ずれ量データGに対して反映させてもよい。
【0100】
方式<2>の場合(
図14、15)
図15に示すとおり、転写面修正データDと厚み分布データTの差分を求めることにより、描画差分データFを求める。好ましくは、ここで得た差分から、さらに座標ずれ固有データQを減じて、描画差分データFを求める。尚、この座標ずれ固有データQは、座標ずれ量としてXY座標値に変換したのちに、描画用座標ずれ量データGに対して反映させてもよい。
【0101】
一方、露光装置内に保持されたフォトマスク膜面の、理想平面からの変形要因は、
(5) フォトマスク膜面の凹凸(上記(3)と実質的に同じ)
(6) フォトマスク保持部材によって保持されることによって強制的になされる膜面の変形
(7) 自重によるたわみ(これを低減するために真空圧を与える場合は、それによる逆方向の変形)
が累積したものとなる。
【0102】
したがって、この2つの膜面形状の差異が、転写による座標ずれを生じる原因となる要素であるから、「パターン設計データA」の補正に適用されるべきものであると言える。これが、すなわち、上記描画差分データFである。
【0103】
V 描画用座標ずれ量データGを得る工程
上記描画差分データFを、XY座標上の変位(座標ずれ量)に変換する。例えば、以下の方法により変換することができる(
図9参照)。
【0104】
図9は、描画装置のステージ10上の基板13の断面の拡大図である。薄膜14は省略している。ステージ10上に配置された基板13の表面20の形状は、上記のとおり複数の要因により理想平面から変形したものとなっている。
【0105】
ここで、高さ0の測定点(つまり、高さが基準表面21と一致する測定点)に隣接する測定点における高さがHだった場合、この高さの違いによる基板13の表面20と基準表面21とがなす角の角度Φは、
sinΦ = H/Pitch・・・・・・(式1)
(Pitch: 測定点の離間距離、つまり隣接する測定点との距離P)
で表わされる。尚、上記において、H/Pitchは、基板表面の高さ方向の勾配と考えることもできる。
【0106】
尚、Φの値が十分に小さければ、
Φ= H/Pitch ・・・・・・(式1')
と近似することもできる。以下の説明では、(式1)を用いる。
【0107】
上記の場合、この高さの違いに起因する測定点のX軸方向のずれdは、
d= sinΦ × t/2 = H × (t/2Pitch) ・・・・・(式2)
で求めることができる。
【0108】
尚、上記においても、Φが十分に小さければ、
d= Φ×t/2 = H × (t/2Pitch) ・・・・・(式2')
と近似することもできる。
或いは、高さの違いに起因する測定点の座標ずれ量は、ベクトルを用いた手法で算出することもできる。
図12は、高さの違いに起因する測定点の座標ずれをベクトルで表現した図である。描画時高さ分布データEにおいて、任意の3箇所の測定点から作られる傾斜面を考える。この時、傾斜面とX軸方向のずれΔX、傾斜面とY軸方向のずれΔYは、下記の式で表される。
ΔX= t/2 × cosθx
ΔY= t/2 × cosθy ・・・・・(式3)
任意の3箇所の測定点から2本の傾斜ベクトルを作ることが出来る。この2本の傾斜ベクトルの外積計算から傾斜面に対する法線ベクトルが作られる。
さらに法線ベクトルとX軸単位ベクトルの内積計算からcosθxが、法線ベクトルとY軸単位ベクトルの内積計算からcosθyが算出される。
算出されたcosθx及びcosθyを(式3)に代入して、最終的にX軸方向のずれΔXとY軸方向のずれΔYが算出できる。
【0109】
なお、ここで、tは基板の厚さである。各測定点の厚さtは、既に上記にて取得済みのTTVに含まれている。
【0110】
そこで、本態様では、基板13上の全測定点について、転写面形状データC(方式<2>では、転写面形状データCから重力たわみ成分を減じた転写面修正データD)と厚み分布データTの差分に相当する高さ分を求め、得られた描画差分データFに対して、X方向、Y方向について、座標ずれ量を計算することにより、描画用座標ずれ量データGを得ることができる。もちろん発明の効果を損なわない限り、計算方法は、上記に限定されない。
【0111】
VI 補正パターンデータHの描画を行う描画工程
上記で得られた描画用座標ずれ量データGと、「パターン設計データA」とを用いて、補正パターンデータHの描画を行う。
このとき、描画用座標ずれ量データGに基づいて、パターン設計データAを補正し、描画補正パターンデータH(不図示)を求め、この描画補正パターンデータHに基づいて描画を行っても良い。
【0112】
パターン設計データAを補正するときには、測定点ごとに得られた描画用座標ずれ量データGを、加工して用いても良い。例えば、最小二乗法を用いた測定点ごとのデータの補間、又は所定のルールで規格化をしたのち、描画用座標ずれ量データGを、パターン設計データAに反映させても良い。
【0113】
又は、描画用座標ずれ量データGに基づいて、前記描画装置が有する座標系を補正し、得られた補正座標系と前記「パターン設計データA」を用いて描画を行っても良い。多くの描画装置においては、それが有する座標系に対して、所定の補正を与えた上で、該補正座標に基づく描画機能を有しているからである。
この際に用いる描画用座標ずれ量データGも、上記同様に、加工可能である。
【0114】
尚、本発明による描画方法は、上記態様に限定されない。
描画の際には、転写用パターン領域外に、マークパターンなどを適宜加えて行っても良い。後述するように、座標測定用のマークパターンをここで追加して描画することができる。
【0115】
例えば、露光装置のもつ保持部材の形状は、前述のとおり、装置によって異なる場合がある。
方式<1>では、基板の四辺に沿った、4つの直線状の保持部材を備えた露光装置を例示した。
方式<2>では、基板の対向する二辺の近傍に、平行に配置した保持部材が、基板の膜面側に接触する場合について説明した。
【0116】
但し、他の部材の形状をもつ装置においても、本発明を適用することができる。これは、上記した有限要素法の計算時のモデル条件と、保持条件、必要に応じて真空圧条件を与える際に、それらを適宜変更して行えばよい。
【0117】
また、上記態様では、保持部材にフォトマスクが保持される保持点が、平面上(基板膜面の最小二乗平面)に拘束されるものとした。これは、保持部材が単一平面でフォトマスクを保持するとしたものである。但し、保持部材の形状により、保持点が単一平面に乗らない場合には、転写面形状データCを得る工程で、強制変位量を設定する際に、保持部材の形状を反映させればよい。
【0118】
また、本発明の作用効果を妨げない限り、工程の順序を変更してもよい。また、演算の順序を変えても結果が変わらない場合は、本発明に含まれることは当然のことである。
【0119】
上記態様の描画方法によって、フォトマスクブランクに補正されたパターンデータを描画した後、パターニングのプロセスによって、フォトマスクが製造される。
【0120】
パターニングプロセスについて
描画が行われた、フォトマスクブランク(フォトマスク中間体)は、以下の工程を経て、フォトマスクとなる。
パターニングのプロセスについては、公知の方法を適用することができる。すなわち、描画を施されたレジスト膜は、公知の現像液によって現像され、レジストパターンが形成される。このレジストパターンをエッチングマスクとして、薄膜をエッチングすることができる。
エッチング方法は公知のものを使用できる。ドライエッチングを適用してもウェットエッチングを適用しても良い。本発明は、表示装置用のフォトマスクの製造方法として特に有用であるため、ウェットエッチングを適用する場合に、本発明の効果が顕著に得られる。
【0121】
尚、上記にて説明した本発明の描画工程につき、該描画の対象となるものは、フォトマスクブランク(転写用パターンが未描画のもの)のみでなく、複数の薄膜を備え、その一部にパターンが形成された、フォトマスク中間体であってもよい。
【0122】
複数の薄膜を備えたフォトマスクブランクに対しては、それぞれの薄膜のパターニングのための描画工程に、上記にて説明した本発明の描画工程を適用することができる。この場合、重ね合わせ精度に優れた、高精度のフォトマスクが製造できる点で極めて有利である。
【0123】
描画装置
尚、本願は上記のような描画方法を実施することができる、描画装置に関する発明を含む。
すなわち、該描画装置は、基板の主表面上に薄膜とフォトレジスト膜とが形成されたフォトマスクブランクに対して、転写用パターンを描画することに用いる描画装置である。
描画装置は、以下の手段を備える。
【0124】
入力手段
入力手段は、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す厚み分布データT、および
前記基板を露光装置に保持した状態の前記基板の主表面形状を示す転写面形状データC
を入力可能とする手段である。
【0125】
演算手段
演算手段は、前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における描画用座標ずれ量データGを演算する。
【0126】
そして、該描画装置は、前記描画用座標ずれ量データGと、前記パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクブランク上に、描画を行う描画手段を有する。
更に、本発明の描画装置は、以下の手段を備えても良い。
【0127】
入力手段
入力手段は、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す厚み分布データT、および
前記基板の主表面の形状を示す、基板表面形状データB、
前記基板を露光装置に保持するときの、保持状態に関する情報、および
前記基板素材の物性値を含む基板情報
を入力可能とする手段である。
【0128】
演算手段
演算手段は、前記基板表面形状データB、前記保持状態に関する情報、及び、前記基板情報を用いて、露光装置内において保持された状態の前記基板の主表面形状を示す、転写面形状データCを演算可能であるとともに、前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における描画用座標ずれ量データGを演算することのできる手段である。演算手段としては、例えば、パーソナルコンピュータ等の公知の演算装置を用いることが可能である。
【0129】
描画手段
描画手段は、前記描画用座標ずれ量データGと、前記パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクブランク上に、描画を行うことのできる手段である。
【0130】
尚、上記入力手段、演算手段、及び描画手段を制御する、制御手段を備えることが好ましい。
【0131】
ここで、保持状態に関する情報とは、例えば、保持条件(保持部材の形状、又は、基板を露光装置内に保持したときに、基板が保持部材に接触する基板保持点の座標(座標の情報により、保持点の強制変位量が算定可能である)を含み、更に、真空圧を用いる場合は、真空圧条件(真空圧の量と与える領域)を含むことが好ましい。
【0132】
基板情報は、例えば、基板のヤング率、ポアソン比及び重量密度であることができる。
【0133】
このような描画装置を用いることにより、上記にて説明した、フォトマスク製造方法に必要な描画工程を実施することができる。
【0134】
<実施の態様2>(検査)
以上において説明したとおり、本発明によると、被加工体に形成されるパターンの座標精度を極めて高いものとすることができるフォトマスクを得ることができる。
ところで、このようなフォトマスクを出荷前に検査するにあたっては、検査装置に載置された状態のフォトマスクと、露光装置に保持された状態のフォトマスクとの相違を考慮した検査を行うことが最も望ましい。
そこで、新たな検査方法の必要性が、発明者によって見出された。
【0135】
VII パターン座標データLを得る工程
パターン形成が行われたフォトマスクを、膜面(パターン形成面)を上側にして座標検査装置のステージに載置し、座標測定を行う。ここで得られたデータを、パターン座標データLとする。
ここで、座標測定とは、予め転写用パターンと同時にフォトマスクの主表面上に形成された、マークパターンの座標を測定することによって行うことが好ましい。このマークパターンは、主表面上であって、転写用パターンの領域外の複数位置に設けることが好ましい。
【0136】
VIII 前記基板の厚み分布を示す、厚み分布データTを用意する工程
上記実施の形態1のIIで説明した工程と同様に、厚み分布データTを得ることができる。
【0137】
IX 転写面形状データCを得る工程
上記実施の形態1のIIIで説明した工程と同様に、転写面形状データCを得ることができる。
【0138】
X 検査差分データJを得る工程
前記厚み分布データTと、転写面形状データCの差分を求めることにより、検査差分データJを得る(
図10(a)〜(d)参照)。
好ましくは、ここで得た差分に対し、ステージ面平坦度など検査装置固有の座標ずれ成分である、検査座標ずれ定数データSを更に減じる。
【0139】
XI 検査用座標ずれ量データKを得る工程
検査差分データJに対応する、前記主表面上の複数点における、座標ずれ量を算定して、検査用座標ずれ量データKを求める(
図10(d)〜(e)参照)。ここで、高さの差分を、座標ずれ量に換算する工程は、前述のVの工程と同様に行うことができる。
【0140】
そして、得られた検査用座標ずれ量データKと、前記パターン座標データLを用いて、前記転写用パターンの検査を行う。
具体的には、転写用パターンの検査は、検査用座標ずれ量データKを、パターン設計データAに反映させて、得られた補正設計データMと、パターン座標データLとを用いて(比較して)行うことができる。
或いは、前記転写用パターンの検査は、検査用座標ずれ量データKを、前記パターン座標データLに反映させて、得られた補正座標データNと、前記パターン設計データAとを用いて(比較して)行うこともできる。
【0141】
本発明の製造方法によって製造されたフォトマスクに対し、本発明の検査方法により検査を行うことが好ましい。
【0142】
尚、フォトマスクの用途に制限はなく、その構成にも制限はない。
いわゆるバイナリマスク、多階調マスク、位相シフトマスク等、いずれの膜構成をもつフォトマスクにおいても、本発明による作用効果が得られることは明らかである。
【0143】
検査装置
尚、本発明は上記のような検査方法を実施可能な、検査装置に関する発明を含む。
すなわち、
基板の主表面に薄膜をパターニングしてなる転写用パターンを有するフォトマスクを検査する、フォトマスクの検査装置であって、
前記主表面に形成されたパターンの座標測定を行い、パターン座標データLを得る、座標測定手段と、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す厚み分布データT、
前記基板を露光装置に保持した状態の前記基板の主表面形状を示す転写面形状データC
を入力する入力手段と、
前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における検査用座標ずれ量データKを演算する、演算手段と、
前記検査用座標ずれ量データKと、パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクの転写用パターンを検査する、検査手段を有する、フォトマスクの検査装置。
【0144】
更には、本発明は以下の検査装置を含む。
基板の主表面に薄膜をパターニングしてなる転写用パターンを有するフォトマスクを検査する、フォトマスクの検査装置であって、
前記主表面に形成されたパターンの座標測定を行い、パターン座標データLを得る、座標測定手段と、
前記転写用パターンのパターン設計データA、
前記基板の厚み分布を示す、厚み分布データT、
前記基板の主表面の形状を示す、基板表面形状データB、
前記基板を露光装置に保持するときの、保持状態に関する情報、および
前記基板素材の物性値を含む基板情報
を入力する入力手段と、
前記基板表面形状データB、前記保持状態に関する情報、及び、前記基板情報を用いて、露光装置内において保持された状態の前記基板の主表面形状を示す転写面形状データCを演算可能であるとともに、前記厚み分布データTと、前記転写面形状データCとを用いて、前記主表面上の複数点における検査用座標ずれ量データKを演算する、演算手段と、
前記検査用座標ずれ量データKと、パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクの転写用パターンを検査する、検査手段を有する、フォトマスクの検査装置。
【0145】
前記基板を露光装置に保持するときの、保持状態に関する情報、及び、前記基板素材の物性値を含む基板情報とは、前述のとおりである。
【0146】
露光装置内において保持された状態の前記基板の主表面形状を示す、転写面形状データCを演算するとは、前述のIII-1〜III-2の工程と同様の工程を行う為の演算を意味する。
【0147】
前記検査用座標ずれ量データKと、前記パターン設計データAを用いて、前記フォトマスクの転写用パターンを検査する際には、前記XIの工程に必要な比較(必要であれば比較のための演算)を行う。
【0148】
表示装置の製造方法
本発明は、主表面に転写用パターンが形成されたフォトマスクに露光することにより、被加工層をもつデバイス基板に対してパターン転写を行うことを含む、表示装置の製造方法において、本発明の製造方法によるフォトマスクを使用する、表示装置の製造方法を含む。
【0149】
すなわち、本発明の製造方法によるフォトマスクを用い、かつ、該フォトマスクを製造するとき、露光装置内に保持される状態について条件を決定した、当該露光装置を用いて、露光を行う、パターン転写方法を適用した、表示装置の製造方法である。パターン転写によって被加工体に転写されたパターンは、エッチング等の加工を施されることによって、表示装置となる。
【0150】
ここで、露光装置のもつ光学性能としては、例えば、以下のようなものであるときに、本発明の効果が顕著である。
LCD用(或いはFPD用、液晶用)として使用される、等倍露光の露光装置であり、その構成は、
光学系の開口数(NA)が0.08〜0.15 (特に0.08〜0.10)、
コヒレンスファクター(σ)が0.5〜0.9、
露光波長は、i線、h線、g線のいずれかを代表波長とする露光光、特に、i線、h線、g線をすべて含むブロード波長光源が好ましい。
尚、真空圧を適用する場合には、露光装置に、フォトマスクをセットする際、上記有限要素法において適用した真空圧を適用することが好ましい。
【0151】
被加工層とは、フォトマスクの有する転写用パターンを転写したのち、エッチング等のプロセスを経て、所望の電子デバイスの構成物となる、各レイヤを言う。例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置を駆動するための、TFT(薄膜トランジスタ)回路を形成する場合には、画素レイヤ、ソース/ドレインレイヤなどが例示される。
【0152】
デバイス基板とは、得ようとする電子デバイスの構成物となる回路を有する基板、例えば、液晶パネル基板、有機ELパネル基板などをいう。
【0153】
更に本発明は、上記露光装置と、それぞれの主表面に転写用パターンが形成された複数のフォトマスクを用い、デバイス基板上に形成される複数の被加工層に対して順次パターン転写を行うことを含む表示装置の製造方法において、本発明の製造方法によって製造されたフォトマスクを用いることを含む。
【0154】
本発明を適用して製造された表示装置は、それを構成する各レイヤの重ね合わせ(オーバーレイ)精度が極めて高い。従って、表示装置製造の歩留まりが高く、製造効率が高い。
【0155】
[実施例]
本発明のフォトマスクの製造方法(描画工程)による、発明の効果を
図17に示す模式図を用いて説明する。
ここでは、特定の基板表面形状(基板表面形状データB)をもつ基板(フォトマスクブランク)に、転写用パターンを描画した場合、露光装置内にセットされたときの転写用パターンの座標精度がどのようになるか(結果的に、被転写体上に形成されるパターンの座標精度がどのようになるか)をシミュレーションにより求めた結果を示す。
【0156】
まず上記フォトマスクブランクに、描画装置を用いて、特定のテストパターンを描画した。ここで用いるテスト用フォトマスクブランクは、850mm×1200mmのサイズをもつ石英基板の主表面に、遮光膜と、ポジ型のフォトレジスト膜を形成したものとした。
【0157】
ここで用いたパターン設計データとしては、X,Y方向に75mm間隔で、主表面のほぼ全面に配置した十字パターンを含むテストパターンとした。そして、このフォトレジストを現像し、遮光膜をウェットエッチングすることにより、遮光膜パターンをもつ、テスト用フォトマスクを得た。これを、座標検査装置にセットし、座標測定を行った結果が、
図17(a)である。
【0158】
尚、ここで、描画装置のステージフラットネスと、座標検査装置のステージフラットネスに起因する座標ずれ要因は、両装置のステージフラットネスを予め測定することにより、
図17(a)のデータからは除去されている。
【0159】
次に、このテスト用フォトマスクを露光装置(等倍プロジェクション露光方式)にセットした状態における座標ずれについて、シミュレーションを行った。ここでは、上記方式<1>の露光装置を用い、そのマスク保持部材の形状情報、真空圧条件、及び基板情報を用い、上記のテストパターンに生じる座標ずれを、有限要素法を用いて算定し、
図17(b)のデータ(比較例)を得た。
【0160】
一方、上記フォトマスクブランクに対して、同様のテストパターンを描画するに際し、描画機の座標系に対して補正を施してパターン設計データを描画した。座標系の補正に際しては、上記II〜Vの工程により、描画用座標ずれ量データを求めて行った。この結果得られたテスト用フォトマスクを座標検査装置にセットし、座標測定を行った結果を、
図17(c)に示す。
【0161】
次に、この結果得られたテスト用フォトマスクを露光装置にセットした状態における座標ずれについて、上記と同様にシミュレーションを行った。シミュレーションの結果を、
図17(d)(実施例)に示す。
【0162】
図17(d)により、
図17(b)に比較して、よりパターン設計データに近い転写像が、被転写体上に得られることがわかる。本発明の方法で製造したフォトマスクにおいては、座標精度が高く、座標エラー値を0.15μm未満に抑えることができる。すなわち、描画装置の能力に起因する座標ずれ以外のエラー成分が、ほぼ取り除かれた精度とすることができる。