(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定交差点を自交差点とする請求項1又は2に記載の信号制御パラメータ設定装置を具備し、前記信号制御パラメータ設定装置により選択された信号制御パラメータに従って自交差点の交通信号を制御する交通信号制御機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[システム構成]
図1は、本実施形態の交通信号制御機10の設置例である。
図1において、交通信号制御機10が制御対象とする交差点1は、主道路と従道路とが交差して4つの流入路A〜Dを有する十字交差点である。流入路A〜Dそれぞれには、該流入路から交差点1へ進入する車両交通を対象とする車両用信号灯器20が設置されている。また、流入路A,Cそれぞれには、車両感知30が設置されている。なお、
図1は交差点1の一例であり、十字交差点に限らず、例えば三叉路交差点やT字交差点といった他の形状の交差点についても本実施形態を同様に適用可能である。
【0013】
車両用信号灯器20は、交差点1近傍の路側に設置された柱等の上部に、対象の車両交通に対面するように設置されている。車両用信号灯器20の表示灯色は、交通信号制御機10によって制御される。
【0014】
車両感知器30は、路側に設置された柱等の上部に、対象の流入路を上方から俯瞰する位置に設置されており、対象の流入路における所定位置を通過する車両の有無を感知する。車両感知器30は、超音波式や光学式、画像式等の公知の感知器を利用できる。車両感知器30の感知結果は、随時、交通信号制御機10に送信される。
【0015】
交通信号制御機10は、何れかの車両用信号灯器20が取り付けられた柱の下方やその近傍に設置され、車両用信号灯器20、及び、車両感知器30それぞれと有線又は無線によって通信接続されている。また、交通信号制御機10は、自律分散型の交通信号制御機であり、隣接交差点1B,1B,1B,1Bの交通信号制御機10B,10B,10B,10Bから受信した流出交通流予測情報をもとに、例えば5分以内といった近い将来の自交差点1の到着交通流を予測し、予測した到着交通流をもとに自交差点1の信号制御パラメータを変更する。また、本実施形態の交通信号制御機10は、到着交通流の予測情報を用いて車群を判定する。そして、判定した車群の情報を参照して、交差点1における車両の停止台数を少なくするように信号制御パラメータを変更する。したがって、交通信号制御機10は、信号制御パラメータ設定装置を具備した装置であるといえる。交通信号制御機10の制御対象の交差点1のことを以下適宜「自交差点」という。
【0016】
[原理]
具体的に説明する。先ず、自交差点に到着する車群を流入路ごとに判定する。
図2は、車群判定を説明する図であり、ある一つの流入路についての車群判定を示している。車群は、当該流入路の到着交通流予測情報をもとに判定する。到着交通流予測情報は、当該流入路から自交差点へ流入する到着交通流を予測した情報であり、停止線の位置を0秒目(図中の「0〜1s」に対応)として、単位時間である1秒毎に区切った単位期間毎の到着車両台数を時系列に示して構成される。この到着交通流予測情報は、上流交差点から自交差点への流出交通流予測情報を、交差点間の旅行時間分だけオフセットした上で、各単位期間内での到着車両台数の和として得られる。また、単位期間内の到着車両台数は、流出交通流予測情報に基づくため、直進右左折といった流出方向別の確率が乗算されて表される。そのため、小数を取り得る。したがって、到着交通流予測情報は、例えば、「0.0」,「0.8」,「0.0」,「0.5」・・・といった単位期間ごとの数値情報となる。但し、当該流入路に車両感知器30が設置されており、車両感知器30の感知結果を取得できた場合には、その感知結果に基づく実数の車両台数に補正することができる。この場合、例えば、到着交通流予測情報は、「0」,「1」,「0」,「0」・・・といった単位期間ごとの整数となる。
【0017】
また、本実施形態の特徴の1つとして、到着交通流予測情報に対して判定期間という概念を導入する。具体的には、到着交通流予測情報に対して所定時間であるN秒間の判定期間をM秒(N>M)ずつずらしながら設定して、各判定期間内での車群の存在を判定し、各判定期間の判定結果を統合することで車群の全容を判定する。判定期間は、長過ぎず短過ぎない、有る程度の長さの車群と判断できる長さとして、3秒以上10秒以下とする。本実施形態では、判定期間の長さを5秒(=N)、すなわち5つの単位期間で1つの判定期間を構成することとする。また、M秒を1秒、すなわち単位期間1つ分とする。また、各判定期間に係る車群が存在するかの判定を「個別車群判定」と称する。最終的な車群判定の結果は、車群判定テーブルとして生成される。
【0018】
図2は、個別車群判定を説明する図である。個別車群判定では、対象とする判定期間内の到着車両台数の合計が所定の判定閾値台数(本実施形態では、3台(より正確には3.0台)とする。)以上である場合に、当該判定期間内に車群が存在する(車群在り)と判定する。ここで、到着交通流予測情報における各単位期間の到着車両台数は、上流交差点の流出方向別の確率に基づく「0.8台」といった小数値、或いは、車両感知器30の感知結果に基づく「1台」といった整数値で表されている。
【0019】
そして、車群在りと判定した判定期間については、当該判定期間内の単位期間のうち、到着車両台数が所定の台数条件(本実施形態では、0台を超えることを本条件とする。)を満たす最初の単位期間を先頭とし、台数条件を満たす最後の単位期間を末尾として先頭から末尾までの連続する単位期間を当該判定期間内の車群と判定する。
【0020】
図2(a)では、3〜7秒目の判定期間について個別車群判定を行った例を示している。3〜7秒目の判定期間内の到着車両台数の合計は3.2台であるため、判定閾値台数である3.0台以上の条件を満たし、車群在りと判定する。また、到着車両台数が所定の台数条件を満たした最初の単位期間は3秒目(図中の「3〜4s」)であり、所定の台数条件を満たした最後の単位期間は6秒目(図中の「6〜7s」)であるため、3〜6秒目の期間を車群と判定する。同様に、
図2(b)では、7〜11秒目の判定期間について個別車群判定を行った例を示している。7〜11秒目の判定期間内は、到着車両台数の合計が1.1台であり、判定閾値台数である3.0台以上の条件を満たさないため、この判定期間は車群無しと判定する。
【0021】
このような判定期間毎の個別車群判定を行った後、判定結果を統合し、最終的な車群判定結果とする。その例を
図3に示す。図中の左側に到着交通流予測情報を示し、その到着交通流予測情報に対してずらして設定した各判定期間の個別車群判定の結果を図の中央に示す。各個別車群判定の結果を、対応する単位期間ごとに通算(OR条件で統計結合処理)し、いずれかの個別車群判定で“車群在り”と判定されていれば、当該単位期間を“車群在り”と判定する。図の右側に最終的な車群判定結果である車群判定テーブルを示す。
図2(a)で車群在りと判定された3〜7秒目の期間を含めて、1秒目〜6秒目までが車群在りと判定されている。
【0022】
本実施形態の車群判定では、単位期間ずつずらした複数の判定期間それぞれに対する個別車群判定を行う。つまり、判定期間を一部重複させながらずらして設定しているため、最初の0秒目の単位期間などの例外はあるが、基本的に、各単位期間について複数回の個別車群判定が行われることとなる。したがって、ある判定期間では車群在りと判定されない単位期間であっても、別の判定期間では同じ単位期間が車群在りと判定される場合が起こり得る。走行中の車両は、当然、車間をとって走行しているため、その車間の長さを車群が続いていると捉えるか、車群が切れたと捉えるかは判定基準次第となる。しかし、従来の車群判定手法では、その車間のスペースに対して僅か1回しか判定しなかった。これに対して、本実施形態では、各単位期間に対して複数の個別車群判定が行われる。このため、車群と判断される可能性が高まり、全体的に車群と捉える尤度(適合性ともいえる)を向上させることができる。
【0023】
車群判定テーブルは、単位期間それぞれについて、各個別車群判定の判定結果を統合した集計結果となるため、停止線の位置を0秒目とした、単位期間である1秒毎に車群が在るか否かを時系列に示す情報となる。
【0024】
次に、自交差点の交通信号制御機10は、車群判定結果を用いて、信号制御パラメータを変更する。具体的には、複数の信号制御パラメータ候補(仮の信号制御パラメータ)それぞれに従った簡易的な信号制御シミュレーションを行う。そして、1サイクルにおける自交差点の停止台数を選択基準の一つとして、所定の最良条件を満たす信号制御パラメータ候補を選択し、選択した信号制御パラメータ候補に従った信号制御パラメータに変更して自交差点の交通信号を実際に制御する。
【0025】
順を追って信号制御パラメータの変更手法について説明する。
図4(a)は、交通信号制御機10の制御対象である自交差点における現示階梯表の一例を、
図4(b)は
図4(a)の現示階梯を実現するための制御パラメータの変更範囲の一例を示す。
図4(a)によれば、自交差点の交通信号制御として、主道路に通行権を与える現示1φと、従道路に通行権を与える現示2φとを交互に表示するように定められている。現示1φは、主道路青(階梯1)、主道路黄(階梯2)、全赤(階梯3)の3つの階梯(ステップ)で構成され、現示2φは、従道路青(階梯4)、従道路黄(階梯5)、全赤(階梯6)の3つの階梯で構成される。つまり、1サイクルは6つの階梯で構成される。本実施形態では、信号制御パラメータは、サイクル長を固定とし、スプリットを変更可能とする。すなわち、スプリットに係るパラメータを変更することで、信号制御パラメータを変更するとして説明する。スプリットは、青信号である階梯1,4の表示秒数を変更することで変更される。階梯1,4の表示秒数は所定秒数の範囲内で1秒単位で変更することができる。但し、サイクル長を一定とするため、階梯1の表示秒数を長くする場合には、階梯4の表示秒数を短くする。複数の信号制御パラメータ候補は、このようなスプリットに係るパラメータを変更した信号制御パラメータである。
【0026】
次に、信号制御パラメータ候補それぞれに基づく簡易的な信号制御シミュレーションを行う。信号制御シミュレーションは、自交差点への各流入路について、到着交通流予測情報及び車群判定結果を用いて時系列の滞留台数を予測して行う。但し、車群に係る滞留台数については加重算出する。そして、時系列の滞留台数のうち、通行権が付与される信号になる直前の滞留台数を停止台数として、少なくとも信号サイクル1回分の全流入路の全停止台数を算出する。
【0027】
車群に係る滞留台数について加重算出する理由は、環境負荷を軽減するためである。ガソリン自動車の排出ガス量は、定速走行時よりも加速走行時の方が多いことが知られている。また、電気自動車やハイブリッド自動車、停止時にアイドリングストップする自動車であったとしても、停止から発進して一定速度に至るまでには、停止せずに通過するよりも多くのエネルギーを消費する必要があるため、環境負荷が高くなる。そこで、総合的な環境負荷を低減させるために、本実施形態では、車群に係る滞留台数については加重することとする。
【0028】
具体例を挙げて説明する。
図5は、停止台数の算出までの処理手順を説明する図である。
図5では、ある一つの流入路についての停止台数の算出を示している。到着交通流予測情報と、流出可否テーブルと、車群判定テーブルとに基づいて、単位期間毎に滞留台数を算出する。
【0029】
流出可否テーブルは、当該流入路に通行権(自交差点への進入権)が与えられている場合を「可」、与えられていない場合を「不可」として、単位期間毎に通行権が付与されているか否かを時系列に示した情報である。流出可否は、信号制御パラメータ候補によって定められ、対応する時刻の現示が青信号ならば流出が可能で「可」、それ以外ならば流出が不可能で「流不可」と設定される。
【0030】
そして、単位期間毎に、流出可否が「可」ならば、直前の単位期間の滞留台数に処理対象の単位期間の到着車両台数を加算するとともに、単位時間当たりの所定の流出台数(本実施形態では、1.0台とする)を減算して、処理対象の単位期間の滞留台数を算出する。また、流出可否が「不可」ならば、直前の単位期間の滞留台数に処理対象の単位期間の到着車両台数を加算して、滞留台数を算出する。また、処理対象の単位期間の到着車両台数を加算する際、車群判定テーブルにおいて「車群在り」と判定されている単位期間については、到着車両台数に所定の重み係数k(本実施形態では、k=2とする)を乗じて加重した台数を加算する。重み係数kを“2”としたが、これは一例であり、1より大きい数であれば“1.5”や“3”などでもよい。
【0031】
そして、単位期間毎の滞留台数を算出すると、通行権が付与される信号になる直前、すなわち、流出可否が「不可」から「可」に遷移する直前の単位期間の滞留台数を、停止台数とする。
図5では、流出可否は、11秒目までは「不可」であり、12秒目に「流出可」に遷移しているので、11秒目(
図5の「11〜12s」)の単位期間の滞留台数が停止台数となる。
【0032】
この停止台数の算出を全ての流入路それぞれについて行う。そして、流入路別の停止台数の合計を、その1つの信号制御パラメータ候補に係る自交差点の全停止台数とする。これを信号制御パラメータ候補それぞれについて実行する。そして、信号制御パラメータ候補のうち、全停止台数が最小となる信号制御パラメータ候補を、交通信号制御に用いるパラメータとして選択する。
【0033】
なお、停止台数の算出は、信号サイクル1回分の間の停止台数として説明するが、信号サイクル複数回分の停止台数を求めることとしてもよいことは勿論である。
【0034】
このように、信号サイクルの整数回数分の全ての流入路に係る停止台数の合計が最も小さくなる信号制御パラメータ候補を、実際の交通信号制御に用いるパラメータとするため、総合的に環境負荷が小さくなる信号制御を実現することができる。車群を途切れさせることなく通過できるような信号制御としたり、主道路に優先的に通行権を付与するような信号制御とするといった、部分的・断片的な信号制御技術とは異なり、交差点に係る交通を総合的に勘案した特異な信号制御を実現することができる。
【0035】
[機能構成]
図6は、交通信号制御機10の機能構成を示すブロック図である。
図6によれば、交通信号制御機10は、機能的に、操作部102と、表示部104と、時計部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備えて構成される。交通信号制御機10は、信号制御パラメータを設定する装置でもあるため、信号制御パラメータ設定装置を具備した装置ともいえる。
【0036】
操作部102は、例えばボタンスイッチやタッチパネル等の入力装置で実現され、交通信号制御機10の管理者の操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えばLCDやタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に従った各種表示を行う。なお、操作部102や表示部104は、交通信号制御機10の筐体内に収められており、歩行者等の一般人が操作・視認することはできない。
【0037】
時計部106は、現在時刻や、指定タイミングからの経過時間の計時を行う。通信部108は、有線或いは無線の通信装置で実現され、外部装置(主に、隣接交差点の交通信号制御機10Bや車両感知器30)との間で有線通信又は無線通信を行う。
【0038】
処理部200は、例えばCPU等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ、隣接交差点の交通信号制御機10Bからの受信情報、車両感知器30からの感知結果情報等に基づいて、交通信号制御機10の全体制御を行う。また、処理部200は、到着交通流予測部202と、流出交通流予測部204と、車群判定部206と、パラメータ変更部208と、信号制御部210と、を有する。
【0039】
到着交通流予測部202は、隣接交差点の交通信号制御機10Bから受信した隣接交差点の流出交通流予測情報304をもとに、自交差点の流入路それぞれについて到着交通流を予測して到着交通流予測情報306を生成する。具体的には、流入路それぞれについて、対応する上流交差点からの流出交通流を交差点間の旅行時間だけ遅らせて到着交通流とする。また、当該流入路に車両感知器30が設置されている場合には、車両感知器30の感知結果に基づく実数の車両台数に、当該流入路の到着交通流予測情報306を補正する。
【0040】
流出交通流予測部204は、到着交通流予測部202によって予測された到着交通流(到着交通流予測情報306)と、パラメータ変更部208により変更・設定された信号制御パラメータ(設定信号制御パラメータ328)とをもとに、自交差点から各方路への流出交通流を予測して、流出交通流予測情報308を生成する。具体的には、流出可能な各方路それぞれについて、所定の時間範囲内の単位期間毎に、信号制御パラメータから通行権が与えられているか否かを判断して滞留台数を算出するとともに、予め定められた進行方向別(右左折・直進など)の進行率に従って進行方向別の流出交通流を算出する。生成した流出路別の流出交通流予測情報308は、下流交差点の交通信号制御機10へ送信される。
【0041】
車群判定部206は、流入路それぞれについて、到着交通流予測部202によって予測された到着交通流(到着交通流予測情報306)に基づいて車群を判定する。具体的には、到着交通流予測情報306に対して、判定期間内に車群が存在するかを判定する個別車群判定を、判定期間を単位期間である1秒ずつずらしながら繰り返し、これらの個別車群判定の判定結果を統合して、最終的な車群判定である車群判定テーブル310を生成する。個別車群判定では、判定期間における到着車両台数の合計が所定の判定閾値台数以上であるか否かによって、当該判定期間内の車群の在り/無しを判定し、車群在りと判定した場合には、判定期間内の単位期間のうち、到着車両台数が所定の台数条件を満たす最初の単位期間から、所定の台数条件を満たす最後の単位期間までの期間を、車群と判定する(
図2,3参照)。
【0042】
パラメータ変更部208は、流入路別の到着交通流予測情報306、及び、車群判定テーブル310に基づいて、自交差点に係る交通信号制御パラメータを変更する。具体的には、先ず、信号制御パラメータの値を所定範囲内で変更して、複数の信号制御パラメータ候補を生成する。信号制御パラメータのうち、変更可能なパラメータの種類やその変更範囲は、パラメータ設定範囲情報314として記憶されている。本実施形態では、サイクル長を固定とし、青信号の表示時間を変更してスプリットを変更することとする(
図4参照)。
【0043】
そして、これらの信号制御パラメータ候補それぞれについて、自交差点での1サイクルにおける全停止台数を算出する。すなわち、流入路それぞれについて、信号制御パラメータ候補に従って単位期間ごとに流出可否を判定して流出可否テーブル320を生成し、到着交通流予測情報306と、車群判定テーブル310と、この流出可否テーブル320とをもとに、単位期間毎の滞留台数を算出する。このとき、車群と判定されている単位期間については、到着車両台数に所定の重み係数kを乗じて滞留台数に加算する。そして、全ての流入路それぞれの停止台数の合計を、自交差点の全停止台数とする。全ての信号制御パラメータ候補について全停止台数を算出すると、全停止台数が最小となる信号制御パラメータ候補を、交通信号制御に用いる信号制御パラメータとして選択・設定する。設定した信号制御パラメータは、設定信号制御パラメータ328として記憶される。
【0044】
信号制御部210は、パラメータ変更部208によって変更・設定された信号制御パラメータに従って、自交差点の車両用信号灯器20を制御する。
【0045】
記憶部300は、ROMやRAM、ハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部200が交通信号制御機10を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶している。また、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、通信部108を介して受信したデータ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、交通信号制御プログラム302と、隣接交差点の流出交通流予測情報304と、到着交通流予測情報306と、流出交通流予測情報308と、車群判定テーブル310と、現示階梯表312と、パラメータ設定範囲情報314と、パラメータ候補情報316と、設定信号制御パラメータ328と、が記憶される。
【0046】
パラメータ候補情報316は、パラメータ変更部208が生成した信号制御パラメータ候補に関する情報であり、信号制御パラメータ候補318それぞれについて、流出可否テーブル320と、滞留台数情報322と、停止台数324と、全停止台数326と、を対応付けて格納している。
【0047】
[処理の流れ]
図7は、交通信号制御処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、処理部200が交通信号制御プログラム302に従って実行する処理であり、所定時間毎(例えば、5秒毎でもよいし、10秒毎でもよい)に、繰り返し実行される。
【0048】
先ず、到着交通流予測部202が、自交差点の流入路それぞれについて、隣接交差点の流出交通流予測情報304に基づいて到着交通流を予測して到着交通流予測情報306を生成する(ステップS1)。次いで、車群判定部206が、流入路それぞれについて、到着交通流予測情報306をもとに、車群を判定して車群判定テーブル310を生成する(ステップS3)。続いて、パラメータ変更部208が、青時間を変更して、複数の信号制御パラメータ候補を生成する(ステップS5)。そして、これらの信号制御パラメータ候補それぞれを対象としたループAの処理を行う。
【0049】
ループAでは、自交差点の流入路それぞれを対象としたループBの処理を行う、ループBでは、対象の信号制御パラメータ候補に従って、対象の流入路の単位期間毎の流出可否を判定して流出可否テーブル320を生成する(ステップS7)。次いで、対象の流入路の到着交通流予測情報306、及び、車群判定テーブル310をもとに、単位期間毎に、到着車両台数に車群在り/無しに応じた重み係数kを乗じて滞留台数を算出して、滞留台数情報322を生成する(ステップS9)。またこのとき、流出可否テーブル320に従って、流出が「可」の単位期間については、流出台数分減算して滞留台数を算出する。そして、生成した滞留台数情報322において通行権が付与される直前の滞留台数を、停止台数として算出する(ステップS11)。
【0050】
全ての流入路を対象としたループBの処理を行うと、算出した流入路それぞれの停止台数の合計を、自交差点の全停止台数として算出する(ステップS13)。全ての信号制御パラメータ候補を対象としたループAの処理を行うと、全停止台数が最小となる信号制御パラメータ候補を選択し、交通信号制御に用いる信号制御パラメータとして設定する(ステップS15)。以上の処理を行うと、交通信号制御処理は終了となる。
【0051】
[作用効果]
このように、本実施形態の交通信号制御機10は、自交差点の流入路それぞれについて、到着交通流予測情報に対して、判定期間内に車群が存在するかの個別車群判定を判定期間を1秒ずつずらしながら繰り返し、これらの個別車群判定の判定結果を統合して車群の全容を判定する。次いで、信号制御パラメータ候補に従った信号制御を行った場合の1サイクルにおける自交差点の全停止台数を算出することを全ての信号制御パラメータ候補について実行する。そして、全停止台数が最小となる信号制御パラメータ候補を選択し、交通信号制御に用いる信号制御パラメータとして設定する。全停止台数は、流入路それぞれの停止台数の合計であり、流入路それぞれの停止台数は、到着予測交通流をもとに、車群の在り/無しに応じた到着車両台数に所定の重み付けを行って滞留台数を算出し、通行権が付与される信号になる直前の滞留台数を、当該流入路の停止台数として算出する。
【0052】
これにより、自交差点の到着交通流予測情報に対して、判定期間を一部が重なるようにずらしながら設定して各判定期間内での車群の存在を判定し、各判定期間の判定結果を統合することで車群の全容を判定するといった、新しい車群の判定手法が実現される。
【0053】
また、車群に係る滞留台数を加重算出して交差点における全停止台数を算出し、この全停止台数が最小となる信号制御パラメータを選択・設定することで、自交差点に係る全ての方路の交通において自動車の停止発進回数が総合的に少なくなるような信号制御、すなわち、環境負荷を低減することができる信号制御を実現することができる。
【0054】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0055】
(A)個別車群判定
上述の実施形態では、到着交通流予測情報に対して判定期間を1秒ずつずらしながら個別車群判定を行うこととしたが(
図3参照)、これを、到着車両台数が所定の台数条件(本実施形態では、0台を超えること、すなわちゼロでないことを条件とする。)を満たす単位期間を先頭する場合にのみ判定期間を設定して、個別車群判定を行うこととしても良い。例えば、
図2(b)に示す7〜11秒目の判定期間は、先頭の単位期間である7秒目の単位期間の到着車両台数が0台で台数条件を満たさないため、判定期間を設定せず、個別車群判定を行わない。これにより、処理負荷の軽減が図れる。ただし、到着車両台数が台数条件を満たす単位期期間については必ず1回以上個別車群判定が行われるとともに、車両が連なっている部分についてはより多くの回数の個別車群判定が行われるため、全体として車群判定の精度を高く保つことができる。
【0056】
(B)選択基準
上述の実施形態では、複数の信号制御パラメータ候補のうちから、交通信号制御に用いる信号制御パラメータを選択する基準として、全停止台数を用いることにしたが、この選択基準として、更に遅れコストを導入することにしても良い。遅れコストとは、交差点において停止した各車両の停止時間(滞留時間)と台数との積の総和である。例えば、2台の車両が10秒停止した場合、遅れコストは20[台・秒]となる。この場合、全停止台数が所定条件を満たし、且つ、遅れコストが所定条件を満たすことを最良条件として信号制御パラメータを選択・設定することとなる。
【0057】
具体的には、車群の在り/無しに応じて重み付けを行って算出した滞留台数情報(
図5参照)をもとに、1信号サイクル期間における流入路別の遅れコストを算出し、これらを合計して自交差点の全体の遅れコスト(「第1の遅れコスト」という)を算出する。また、同様に、信号制御パラメータ候補それぞれについて、車群の在り/無しによる重み付けを行わない場合の滞留台数を算出し、この滞留台数をもとに、1信号サイクル期間における自交差点の全体の遅れコスト(「第2の遅れコスト」という)を算出する。車群の在り/無しに応じて重み付けしているため、第1の遅れコストは第2の遅れコスト以上となる。
【0058】
そして、複数の信号制御パラメータ候補のうちから、全停止台数が最小となる信号制御パラメータ候補を選択した後、選択した信号制御パラメータ候補の第1の遅れコストと第2の遅れコストとの差を算出する。このコスト差が所定値以下ならば、選択した信号制御パラメータ候補を、交通信号制御に用いるとして設定する。一方、コスト差が所定値を超えるならば、信号制御パラメータ候補のうちから、第2の遅れコストが最小となる信号制御パラメータ候補を選択し、これを、交通信号制御に用いるとして設定する。
【0059】
(C)信号制御パラメータ設定装置
上述した実施形態では、交通信号制御機10が信号制御パラメータを変更・設定するため、交通信号制御機10が信号制御パラメータ設定装置でもあるとして説明した。この信号制御パラメータ設定装置を中央管理装置が担う構成としてもよい。
【0060】
つまり、上述した交通信号制御機10の処理部200が行う処理のうち、信号制御部210が行う処理以外を、管制センタに設置され、各交差点に設けられた複数の交通信号制御機と通信回線を介して接続された中央管理装置が行うこととしても良い。より具体的には、中央管理装置が、到着交通流予測部202と、流出交通流予測部204と、車群判定部206と、パラメータ変更部208とを有し、交差点ごとに機能させることとすればよい。この場合、中央管理装置は、各車両感知器の感知信号等をもとに、交差点それぞれについての到着交通流及び流出交通流の予測を行い、予測した到着交通流をもとに車群を判定して、各交差点の信号制御パラメータを変更・設定し、対応する交通信号制御機に送信する。そして、交通信号制御機は、中央管理装置から受信した信号制御パラメータに従った交通信号制御を行う。
【0061】
なお、交通信号制御部10の処理部200が行う処理に、到着交通流予測部202と、流出交通流予測部204とを残し、各交差点についての到着交通流、及び、流出交通流の予測を、当該交差点の交通信号制御機にて行うこととしても良い。この場合、各交通信号制御機が、予測した到着交通流や流出交通流の情報を中央管理装置へ送信し、中央管理装置は、各交通信号制御機から受信した各交差点の到着交通流予測情報をもとに、車群を判定し、信号制御パラメータを変更・設定し、対応する交通信号制御機に送信する。
【0062】
(D)信号制御パラメータ候補
また、上述した実施形態では、信号制御パラメータ候補318を生成することとして説明したが、予め信号制御パラメータ候補318を記憶しておくこととしてもよい。その場合、
図7のステップS5を省略することができる。
【0063】
(E)単位期間及び判定期間
また、上述した実施形態では、単位期間の長さを1秒とし、判定期間の長さを単位期間5つ分、すなわち5秒として説明したが、これは一例であり、他の長さとしてよいことは勿論である。但し、判定期間を一部重複させつつずらして設定するためには、N秒間の判定期間をM秒(N>M。N,Mは0より大きく、小数を含んでもよい。)ずつずらして設定できる必要がある。