(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553899
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】車両用灯具におけるハウジングの補強構造
(51)【国際特許分類】
F21S 45/37 20180101AFI20190722BHJP
F21V 31/00 20060101ALI20190722BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20190722BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20190722BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20190722BHJP
【FI】
F21S45/37
F21V31/00 100
F21W103:00
F21W103:35
F21W103:20
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-48195(P2015-48195)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-170882(P2016-170882A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西山 孝平
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅紀
【審査官】
河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭51−049903(JP,Y1)
【文献】
特開2011−148397(JP,A)
【文献】
特開2004−322951(JP,A)
【文献】
特開2006−088735(JP,A)
【文献】
特開2003−236890(JP,A)
【文献】
特開昭49−105684(JP,A)
【文献】
実開昭60−188406(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第00745510(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00−45/00
F21V 15/01
F21V 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体開口部の周縁をシールするガスケットを車体側に押圧するガスケット圧縮リブを外周に形成したハウジングを備える車両用灯具における前記ハウジングの補強構造であって、
前記車両用灯具は、ボックス状に形成されたハウジングと、その開口部を覆うアウタレンズと、前記ハウジングと前記アウタレンズによって画成されランプを収容してなる灯室とを有し、
前記ガスケットは、前記開口部の周縁に配置された環状形状をなし、
前記ハウジングには、前記開口部の上部側に対応する位置に設けた上部のガスケット圧縮リブと、当該ハウジングに立設され前記上部のガスケット圧縮リブよりも高さの低い他のガスケット圧縮リブが当該ハウジングと一体に形成されており、
前記上部のガスケット圧縮リブは、前記ハウジングの外周上部より上側に延びる垂直壁と、当該垂直壁の上端から前記車体側に屈曲し水平方向に延び前記ガスケットを前記車体側に押圧する押圧部とを備えており、
前記垂直壁の前記ハウジングの外周上部に設けた傾斜面上の位置には、前記車体と反対側に向かって膨出する中空三角柱状の補強部が部分的に一体に形成されており、
前記補強部は、前記垂直壁側から前記傾斜面に向かって下がるように傾斜した上面と、当該上面と前記傾斜面とを繋ぐ側面とを備えることを特徴とする車両用灯具におけるハウジングの補強構造。
【請求項2】
前記補強部の側面のうち1つの側面を前記ハウジングの傾斜面に沿う水の流れに沿って配置したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具におけるハウジングの補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具におけるハウジングの補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具のハウジングやリフレクタの剛性や強度を高める手段として補強リブを一体に形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。ここで、車両の後部左右に配置されるリアコンビネーションランプにおけるハウジングの補強構造の従来例を
図5及び
図6に示す。
【0003】
即ち、
図5はリアコンビネーションランプにおける補強構造の従来例を示すハウジングの部分斜視図、
図6は
図5のD−D線断面図であり、
図6に示すように、車体110の後部には、メンテナンス等のための開口部110aが形成されており、この開口部110aは、その周縁に配置されたガスケット111によってシールされている。
【0004】
他方、ハウジング101の周縁には、断面逆L字状のガスケット圧縮リブ102が一体に立設されており、このガスケット圧縮リブ102の先端の水平な押圧部102bがガスケット111を車体110側に押圧することによって、ガスケット111に高いシール機能が確保されている。
【0005】
ところが、上述のようにハウジング101のガスケット圧縮リブ102がガスケット111を強い力で押圧すると、該ガスケット圧縮リブ102がガスケット111からの反力によって
図6の矢印方向に倒れてしまい、ガスケット111のシール性が低下するという問題が発生する。
【0006】
そこで、
図5に示すように、ガスケット圧縮リブ102の垂直な縦壁102aに複数(図示例では3つ)の三角リブ102Aを適当な間隔で形成し、これらの三角リブ102Aによってガスケット圧縮リブ102の剛性を高め、前記問題が発生しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−255516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図5に示すように、ハウジング101に形成されたガスケット圧縮リブ102を複数の三角リブ102Aで補強する補強構造を採用する場合、ハウジング101の上部の傾斜面101aに沿って流れる水が三角リブ102Aの根元に溜まり、排水性が悪いという問題がある。このため、各補強リブ102Aの根元の厚さを厚くして水が流れ易いようにする構成が考えられるが、このような構成では、各三角リブ102Aの根元部が駄肉となったり、各三角リブ102Aの成形にスライド金型を要するために金型構造が複雑化するという問題が発生する。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ガスケット圧縮リブの補強効果と排水性の向上を両立させることができる車両用灯具におけるハウジングの補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車体開口部の周縁をシールするガスケットを車体側に押圧するガスケット圧縮リブを外周に形成したハウジングを備える車両用灯具における前記ハウジングの補強構造として、
前記車両用灯具は、ボックス状に形成されたハウジングと、その開口部を覆うアウタレンズと、前記ハウジングと前記アウタレンズによって画成されランプを収容してなる灯室とを有し、
前記ガスケットは、前記開口部の周縁に配置された環状形状をなし、
前記ハウジングには、前記開口部の上部側に対応する位置に設けた上部のガスケット圧縮リブと、当該ハウジングに立設され前記上部のガスケット圧縮リブよりも高さの低い他のガスケット圧縮リブが当該ハウジングと一体に形成されており、
前記上部のガスケット圧縮リブは、前記ハウジングの外周上部より上側に延びる垂直壁と、当該垂直壁の上端から前記車体側に屈曲し水平方向に延び前記ガスケットを前記車体側に押圧する押圧部とを備えており、
前記垂直壁の前記ハウジングの外周上部に設けた傾斜面上の位置には、前記車体と反対側に向かって膨出する中空三角柱状の補強部が部分的に一体に形成されており、
前記補強部は、前記垂直壁側から前記傾斜面に向かって下がるように傾斜した上面と、当該上面と前記傾斜面とを繋ぐ側面とを備えるたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記
補強部の側面のうち1つの側面を前記ハウジングの傾斜面に沿う水の流れに沿って配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ハウジングのガスケット圧縮リブは、これに形成された中空三角柱状の補強部によって剛性が高められるため、これがガスケットからの反力を受けても倒れることがなく、ガスケットに高いシール性が確保される。又、ガスケット圧縮リブは、中空三角柱状を成しているため、これに水が溜まる箇所がなく、水がスムーズに流れるために高い排水性が確保される。
【0013】
従って、本発明に係るハウジングの補強構造によれば、ガスケット圧縮リブの補強効果と排水性の向上を両立させることができる。又、ガスケット圧縮リブの補強部に駄肉部が生じることがなく、補強部の成形にスライド金型を必要としないために金型構造が複雑化することがない。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、ガスケット圧縮リブの補強部をハウジングの上部外周の傾斜面に向けて膨出させ、その1つの側面をハウジングの傾斜面に沿う水の流れに沿って配置したため、ハウジングの傾斜面に落下した水は、傾斜面と補強部の側面に沿ってスムーズに流れて効率良く排出される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る補強構造を備える車両用灯具(リアコンビネーションランプ)のハウジングの斜視図である。
【
図5】リアコンビネーションランプにおける補強構造の従来例を示すハウジングの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る補強構造を備える車両用灯具(リアコンビネーションランプ)のハウジングの斜視図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3は
図1のB部拡大斜視図、
図4は
図3のC−C線断面図である。
【0018】
図1に示すリアコンビネーションランプのハウジング1は、樹脂にて矩形ボックス状に一体成形されており、該ハウジング1とその開口部を覆う不図示のアウタレンズによって画成される灯室内には、テールランプ、ストップランプ、ターンシグナルランプ(何れも不図示)等の機能が異なる複数のランプが収容されている。尚、車両の後部左右に配置されるリアコンビネーションランプのハウジング1の基本構成は同じであるため、以下、一方のハウジング1の補強構造についてのみ図示及び説明する。
【0019】
ところで、車体10の後部には、
図2に示すように、リアコンビネーションランプのメンテナンス等のために開口部10aが形成されており、この開口部10aは、その周縁に配置された環状のガスケット11によってシールされている。そして、ガスケット11は、ハウジング1の上部外周に一体に立設された比較的大きなガスケット圧縮リブ2と、ハウジング1の外周の他の部位(ガスケット圧縮リブ2が形成された上部以外の部位)に一体に立設された高さの低いリブ3によって車体10側に押圧されることによって高いシール機能が保持されている。
【0020】
ここで、ハウジング1の外周上部に形成されたガスケット圧縮リブ2は、
図3及び
図4に示すように、垂直な垂直壁2aと、該垂直壁2aの上端から車体10側に直角に屈曲する水平な押圧部2bを備えており、押圧部2bがガスケット11を車体10側に押圧している。
【0021】
而して、ガスケット圧縮リブ2の垂直壁2aには、正面側(
図3の手前側)に膨出する中空三角柱状の補強部2Aが一体に形成されている。この補強部2Aは、ハウジング1の上部外周の傾斜面1aに向けて膨出しており、その1つの側面2cは、
図3に矢印にて示すハウジング1の傾斜面1aに沿う水の流れに沿って配置されている。尚、
図4に示すように、補強部2Aの上面は、ハウジング1の傾斜面1aに向かって下がるよう傾斜しており、補強部2Aは、その一部が車体10側に向かって開口している。
【0022】
而して、本実施の形態においては、ハウジング1に形成されたガスケット圧縮リブ2は、これに形成された中空三角柱状の補強部2Aによって剛性が高められるため、これがガスケット11からの反力を受けても倒れることがなく、ガスケット11に高いシール性が確保される。又、ガスケット圧縮リブ2は、中空三角柱状を成しているため、これに水が溜まる箇所がなく、水がスムーズに流れるために高い排水性が確保される。特に、本実施の形態では、ガスケット圧縮リブ2の補強部2Aをハウジング1の上部外周の傾斜面1aに向けて膨出させ、その1つの側面2cをハウジング1の傾斜面1aに沿う水の流れに沿って配置したため、ハウジング1の傾斜面1aに落下した水は、傾斜面1aと補強部2Aの側面2cに沿ってスムーズに流れて効率良く排出される。又、ガスケット圧縮リブ2の補強部2A上に落下した水(雨水や洗車水)は、該補強部2Aの傾斜した上面2dに沿ってハウジング1の傾斜面1a上にスムーズに落下する。
【0023】
従って、本発明に係るハウジング1の補強構造によれば、ガスケット圧縮リブ2の補強効果と排水性の向上を両立させることができる。又、ガスケット圧縮リブ2の補強部2Aに駄肉部が生じることがなく、補強部2Aの成形にスライド金型を必要としないために金型構造が複雑化することがない。
【0024】
尚、以上は本発明をリアコンビネーションランプのハウジングの補強構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、車体開口部をシールするためのガスケットを押圧するガスケット圧縮リブを備える他の任意の車両用灯具におけるハウジングの補強構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 ハウジング
1a ハウジングの傾斜面
2,3 ガスケット圧縮リブ
2A ガスケット圧縮リブの補強部
2a 補強部の垂直壁
2b 補強部の押圧部
2c 補強部の側面
2d 補強部の上面
10 車体
10a 車体開口部
11 ガスケット