(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性中子の外周面において連続繊維からなる補強繊維を配し、前記樹脂材料の成形によって該補強繊維で補強された前記繊維補強樹脂からなる前記樹脂成形品を得る請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
前記弾性中子が分岐部を有していると共に、該分岐部において複数本の長手状の分割弾性中子が分離可能に連結されており、前記樹脂成形品の成形後に各分割弾性中子を分離させてそれぞれの長手方向へ抜き取る請求項1〜13の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた量産性が実現可能とされ得る、中空構造とされた樹脂成形品の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明の第一の態様は、中空構造とされた長手状の樹脂成形品の製造方法であって、弾性体と連続糸との複合体からなる長手状の
中空筒状を有する弾性中子
であり、該連続糸が組紐構造又はスパイラル構造とされて該弾性体の厚さ方向中間部分に埋設状態で一体化されることで該弾性体の周方向に連続して且つ長手方向の全長に亘って連続して延びているものを用い、該弾性中子の外周面上で樹脂材料を成形した後、該弾性中子
の長さ方向の一方の端部へ引張力を及ぼして長手方向に抜き取ることにより、中空構造とされた長手状の樹脂成形品を得る樹脂成形品の製造方法を、特徴とする。
【0011】
本態様の製造方法に従えば、樹脂成形用の中子として、弾性体と連続糸の複合体からなる弾性中子を用いたことで、樹脂成形後に一方の端部側から弾性中子へ引張力を及ぼすと、かかる引張力が連続糸を介して弾性中子の長さ方向へ効率的に伝達される。その結果、弾性中子に対して長さ方向の奥方まで引張力が効率的に及ぼされ、中空構造の長手状の樹脂成形品の内部で、断面積が縮小変形せしめられることから、樹脂成形品の内面からの弾性中子の離型が促進されて、長手状の樹脂成形品から弾性中子を長さ方向で容易に引き抜くことが可能となるのである。
【0012】
しかも、引き抜いた弾性中子は、引張力を解除することで弾性的に原形状へ速やかに復元することから、次の樹脂成形品の成形に際して繰り返して再使用することも可能となる。
【0013】
従って、本発明方法によれば、従来では難しかった中空断面の長手状の樹脂成形品を優れた量産性をもって製造することができるのである。
また、本態様の製造方法に従えば、弾性中子の長さ方向に対して傾斜して配された連続糸が引張力の作用で傾斜角度が小さくなる方向に変形することから、弾性中子に対して、引張力と共に断面積を縮小させる圧縮力も長さ方向で効率的に伝達させることができる。その結果、樹脂成形後の離型に際して、弾性中子をより効率的に全長に亘って縮径させて引き抜くことが可能となるのである。
【0015】
本態様の製造方法に従えば、弾性中子が中空断面とされていることで、樹脂成形後に弾性中子へ引張力を及ぼした際に、弾性中子の断面において外周長が小さくなる縮小形状への変形が一層容易に生ぜしめられる。それ故、より小さな引張力で弾性中子を樹脂成形品から引き抜いて離型させることが可能になる。
【0016】
本発明の第
二の態様は、前記第
一の態様に従う樹脂成形品の製造方法において、前記弾性中子の外周面上での前記樹脂材料の成形に際して、中空内に非圧縮性の不定形の非圧縮性充填材を充填して樹脂成形品を製造するものである。
【0017】
本態様の製造方法に従えば、樹脂材料を成形する際に弾性中子の外周面に対して樹脂材料の充填圧などが及ぼされた場合でも、弾性中子の不用意な変形が抑えられて、成形される樹脂成形品の内周面における形状や寸法の安定化と高精度化が図られ得る。なお、非圧縮性充填材として、液体や粒状固体などの不定形な充填材を採用したことで、樹脂成形後における弾性中子の中空内から流動的に取り出すことも容易となる。それ故、弾性中子から非圧縮性充填材を取り除いて弾性中子の断面縮小変形が容易に許容される状態にした後に、弾性中子に引張力を及ぼして樹脂成形品から引き抜くこともできる。
【0020】
本発明の第
三の態様は、前記第一
又は二の態様に係る樹脂成形品の製造方法において、前記樹脂材料を繊維補強した繊維補強樹脂で前記樹脂成形品を形成するものである。
【0021】
本態様の製造方法に従えば、後述するように、炭素繊維、アラミド繊維やガラス繊維などの補強繊維で適宜に補強された合成樹脂材からなる樹脂成形品を、中空構造をもって製造することが出来て、要求される強度や剛性を繊維補強で確保することで、より適用範囲の広い樹脂成形品を製造することが可能になる。
【0022】
本発明の第
四の態様は、前記第
三の態様に従って繊維補強樹脂成形品を製造するに際して、前記弾性中子の外周面において連続繊維からなる補強繊維を配し、前記樹脂材料の成形によって該補強繊維で補強された前記繊維補強樹脂からなる前記樹脂成形品を得るものである。
【0023】
本態様の製造方法に従えば、弾性中子の外周面で成形される樹脂成形品が連続繊維によって繊維補強されることから、短繊維や長繊維などの不連続繊維補強に比してより強度の大きい樹脂成形品が実現可能になる。
【0024】
本発明の第
五の態様は、前記第
四の態様に従って繊維補強樹脂成形品を製造するに際して、前記弾性中子を湾曲変形させつつ弾性中子の外周面に複数本の連続繊維を編組状として覆うように配するものである。
【0025】
本態様に従えば、弾性中子の弾性を利用して適宜に湾曲変形させることで、例えば湾曲部や屈曲部、分岐部などの異形状部を有する弾性中子の表面にも、外周から供給される複数本の連続繊維を導いて配することが可能になる。それによって、湾曲部等の異形状部を有する複雑な形状の樹脂成形品の製造に際しても、例えば組紐状のブレード編組やスパイラル状編組などの効率的な補強態様をもって連続繊維を弾性中子の外周面ひいては樹脂成形品内に配することが実現可能とされる。
【0026】
ここにおいて、連続繊維からなる補強繊維で繊維補強された樹脂成形品を得るに際しては、採用する樹脂材料が熱硬化性樹脂である場合と熱可塑性樹脂である場合とによって、好適に採用される成形工程が異なる。特に熱硬化性樹脂を採用する場合には、以下の第
六〜
七の態様の製造方法が好適とされる一方、熱可塑性樹脂を採用する場合には、以下の第
八〜
十の態様の製造方法が好適とされる。
【0027】
すなわち、本発明の第
六の態様は、前記第
四又は
五の態様に従って連続繊維による繊維補強樹脂成形品を製造するに際して、前記樹脂材料として熱硬化性樹脂を用いると共に、該熱硬化性樹脂を含浸させた前記連続繊維を前記弾性中子の外周面に被覆状態で配した後に、該熱硬化性樹脂を硬化処理することにより前記繊維補強樹脂からなる前記樹脂成形品を得るものである。
【0028】
また、本発明の第
七の態様は、前記第
四又は
五の態様に従って連続繊維による繊維補強樹脂成形品を製造するに際して、前記樹脂材料として熱硬化性樹脂を用いると共に、前記連続繊維を前記弾性中子の外周面に被覆状態で配した後に、該熱硬化性樹脂の成形に際して該連続繊維に該熱硬化
性樹脂を含浸させて硬化処理することにより前記繊維補強樹脂からなる前記樹脂成形品を得るものである。
【0029】
一方、本発明の第
八の態様は、前記第
四又は
五の態様に従って連続繊維による繊維補強樹脂成形品を製造するに際して、前記樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いて、繊維状とした該熱可塑性樹脂を前記連続繊維と共に前記弾性中子の外周面に被覆状態で配した後に、該熱可塑性樹脂を溶融成形処理することにより前記繊維補強樹脂からなる前記樹脂成形品を得るものである。
【0030】
また、本発明の第
九の態様は、前記第
四又は
五の態様に従って連続繊維による繊維補強樹脂成形品を製造するに際して、前記樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いて、パウダー状とした該熱可塑性樹脂を前記連続繊維に付着させて前記弾性中子の外周面に被覆状態で配した後に、該熱可塑性樹脂を溶融成形処理することにより前記繊維補強樹脂からなる前記樹脂成形品を得るものである。
【0031】
更にまた、本発明の第
十の態様は、前記第
四又は
五の態様に従って連続繊維による繊維補強樹脂成形品を製造するに際して、前記樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いて、前記連続繊維を前記弾性中子の外周面に被覆状態で配すると共に、未重合の該熱可塑性樹脂の材料を該弾性中子の外周面上に供給して該連続繊維に含浸させた後に重合成形処理することにより前記繊維補強樹脂からなる前記樹脂成形品を得るものである。
【0032】
このように、採用する成形用の樹脂材料に応じて、上述の第
六〜
十の何れかの態様に係る製造方法を採用することにより、前記第
四又は
五の態様に記載の如き、弾性中子の外周面に予め配した連続繊維で補強された繊維補強樹脂からなる樹脂成形品を、一層優れた量産性をもって製造することが可能になる。
【0033】
ところで、上述の第
四〜
十の態様に記載の連続繊維で補強すると否とに拘わらず、樹脂成形品を編組等されていない短繊維や長繊維を配合した樹脂材料で成形することも可能である。
【0034】
すなわち、本発明の第
十一の態様は、前記第
三〜
十の何れかの態様に従う樹脂成形品の製造方法において、非連続の補強繊維が配合された前記樹脂材料を、前記弾性中子の外周面上で成形することにより樹脂成形品を製造するものである。
【0035】
また、本発明の第
十二の態様は、前記第一〜
十一の何れかの態様に従う樹脂成形品の製造方法において、前記弾性中子を変形させた状態で、該弾性中子の外周面上で樹脂材料を成形するものである。
【0036】
本態様の製造方法に従えば、弾性中子の本来の形状に比して、それを弾性変形させることでより複雑な形状などを与えた状態で、弾性中子の外周面で樹脂成形することにより、比較的単純な形状の弾性中子を用いてより複雑な形状の樹脂成形品の製造なども可能になる。
【0037】
また、本態様では、例えば前記第
四〜
十の何れかの態様に記載の如き連続繊維で補強された樹脂成形品を製造するに際して、弾性中子の外周面に連続繊維を配した後に、かかる弾性中子を目的とする成形品の形状に応じて弾性変形させて外周面上で樹脂成形することも可能である。これにより、連続繊維を編組状等をもって弾性中子の外周面に配するための作業も、成形品の形状よりも単純化された弾性中子を対象として行うことで一層容易とすることが可能になる。
【0038】
さらに、本態様における弾性中子の変形は、長さ方向の少なくとも一部で長さ方向の形状を変化させる態様であっても良く、例えば直線形状とされた弾性中子を湾曲形状に保持して外周面上に樹脂成形する態様なども含む。その他、本態様における弾性中子の変形として、以下の第
十三の態様を採用することも可能である。
【0039】
すなわち、本発明の第
十三の態様では、前記第
十二の態様に従う樹脂成形品の製造方法において、前記弾性中子の変形が、長さ方向の少なくとも一部において断面形状を変化させるものとされる。
【0040】
そして、上述の第
十二又は
十三の態様に従えば、共通の弾性中子を採用しつつ、湾曲形状や断面形状等が異なる複数種類の樹脂成形品を成形することも可能となり、弾性中子の共用化が図られ得る。このような弾性中子の共用化は、類似の樹脂製品の製造に際してのコストダウンなどの他、例えば複数種類の樹脂試作品を製造してそれぞれの強度などの特性を測定比較する場合などにも有効である。
【0041】
本発明の第
十四の態様は、前記第一〜
十三の何れかの態様に従う樹脂成形品の製造方法において、前記弾性中子が分岐部を有していると共に、該分岐部において複数本の長手状の分割弾性中子が分離可能に連結されており、前記樹脂成形品の成形後に各分割弾性中子を分離させてそれぞれの長手方向へ抜き取ることで、樹脂成形品を製造するものである。
【0042】
本態様の製造方法に従えば、少なくとも一つの分岐構造を有する樹脂成形品を弾性中子を用いた本発明方法に従って製造することができ、より複雑な形状の樹脂成形品の製造に対しても本発明方法を適用することが可能になる。
【0043】
本発明の第
十五の態様は、中空構造とされた長手状の樹脂成形品であって、湾曲部分と分岐部分とを併せ備えていると共に、それら湾曲部分と分岐部分を含む全体に亘って、編組された連続繊維で樹脂材料が補強された複合構造とされていることを特徴とする樹脂成形品である。
【0044】
本態様に従う構造とされた中空構造の樹脂成形品は、湾曲部分と分岐部分を併せ備えていることから従来では実用化が実現され得なかった連続繊維による補強構造を備えている。そして、湾曲部分と分岐部分を併せ備えた複雑な異形状の中空樹脂成形品を連続繊維補強による複合構造をもって実現し得たことにより、従来から樹脂化が困難とされていた各種部品、例えば自動車用のサスペンションアームなどにも、樹脂部品を採用することが実現可能となるのである。なお、このような従来では存在していなかった連続繊維による補強構造を備えた複雑な異形状の中空樹脂成形品からなる本発明品は、前述の本発明に従う製造方法によって製造され得る。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、弾性体と連続糸との複合体からなる弾性中子を用い、樹脂材料の成形後に引張力を及ぼすことで、弾性中子の断面積の縮小変形を長さ方向で効率的に伝達せしめて、弾性中子を抜き取って中空構造の長手状の樹脂成形品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0049】
図1には、本発明の一実施形態としての樹脂成形品10が示されている。この樹脂成形品10は、内部に連続した中空孔12を有する中空構造を有しており、分岐部分14と湾曲部分16を備えた、単純な直管形状でない異形状とされている。そして、かかる樹脂成形品10は、各端部に対して取付部材が事後的に又は成形と同時に固着されることで、自動車用のサスペンション部材などとして用いられるようになっている。
【0050】
より詳細には、本実施形態の樹脂成形品10は、軸方向長さが長い長管部18と短い短管部20が一体的に連結された構造となっている。そして、長管部18の長さ方向中間部分から略直角に分岐して短管部20が設けられた分岐部分14を有している。また、長管部18は全体として略U字形状とされており、長さ方向の中央部分が半円状に湾曲した湾曲部分16とされている。
【0051】
また、本実施形態の樹脂成形品10は、後述するように連続繊維からなる補強繊維が樹脂材への埋設状態で配された複合体により、その全体が形成されている。このような樹脂成形品10の本発明に従う製造方法について、以下に一実施形態を説明する。
【0052】
先ず、樹脂成形品10の中空孔12の内周の成形面を与えるために、
図2に示されている如き弾性中子26を製作して準備する。この弾性中子26は、樹脂成形品10の長管部18に対応した長軸部28と、樹脂成形品10の短管部20に対応した短軸部30とを有している。
【0053】
これら長軸部28と短軸部30は、何れも、ゴム弾性体やエラストマー等の弾性材で形成されて弾性変形可能とされている。そして、長軸部28が、樹脂成形品10の湾曲部分16に対応した湾曲部分を含む形状に弾性変形可能とされている。また、長軸部28の長さ方向の略中央には、短軸部30の軸方向一方の端部が連結固定されている。
【0054】
なお、これら長軸部28と短軸部30は、中実形状でも良いが、本実施形態では長さ方向に貫通する貫通孔32を備えた中空の断面形状を有するパイプ状とされている。即ち、中実構造に比してパイプ形状の方が、断面積が縮小する方向の弾性変形が効率的に生ぜしめられることとなり、後述する樹脂成形品10の離型が一層容易となる。
【0055】
また、目的とする樹脂成形品10の分岐部分14に相当する、長軸部28に対する短軸部30の連結部33では、分割弾性中子としての長軸部28と短軸部30とを分離状態と連結状態とに適宜に変更可能とされている。具体的には、例えば図示されているように、短軸部30を貫通して挿通された連結ボルト34が、短軸部30の両端開口部に配された固定蓋体36,36に対して締結されており、更に、かかる連結ボルト34の一端が、長軸部28に対して取外し可能に連結されている。
【0056】
すなわち、短軸部30の軸方向一端側から突設された連結ボルト34が、長軸部28の周壁部に形成された連結用穴を通じて貫通孔32内へ挿し入れられており、長軸部28内に配された連結ブロック40に螺着されることによって、長軸部28の周壁部を、短軸部30の固定蓋体36と連結ブロック40との間で挟んで固定されるようになっている。なお、連結ブロック40は、長軸部28の内部に位置して、長軸部28に対して固着されていても良いし、長軸部28から取り外し可能とされていても良い。また、短軸部30から外部へ突出された連結ボルト34の外方端部から操作して、連結ボルト34を回転させることで、連結ブロック40から連結ボルト34を離脱させて、短軸部30を長軸部28から、連結部33において分離させることができるようになっている。
【0057】
なお、短軸部30と長軸部28との連結部33における連結構造は、例示の如きねじ構造に限定されるものでなく、例えばグロメットのようなスナップ機構等による係止構造や、磁力による吸着構造、面ファスナーなど、分離可能な連結構造が適宜に採用され得る。このような各種の連結構造であっても、短軸部30の一端側における長軸部28との連結を、短軸部30の他端側からの引張りなどの操作で、適宜に解除することができる。尤も、短軸部30と長軸部28との連結構造は、後述する樹脂成形時に当接状態に保持され得るものであれば良く、外力によって強制的に押し付けて当接状態に保持せしめ得る構造であっても良い。
【0058】
また、短軸部30を貫通する連結ボルト34を必要としない連結構造であれば、短軸部30も湾曲変形可能とすることが可能であるし、連結ボルト34を採用する場合でも、連結ボルト34の少なくとも長さ方向の中間部分を変形可能な材質とすることで、短軸部30の湾曲変形を許容しても良い。
【0059】
さらに、弾性中子26を構成する各長手状の長軸部28と短軸部30のうち、少なくとも長さが大きい長軸部28は、弾性体と連続糸との複合体から構成されている。なお、本実施形態では、短軸部30も長軸部28と同じ複合体から構成されている。即ち、長軸部28や短軸部30には、それを構成する弾性材42に対して、長さ方向に延びる複数本の連続糸44が固着されて配設されている。
【0060】
かかる連続糸44は、引張力を弾性材42の長さ方向に及ぼすものであり、長さ方向の一端部から及ぼされる引張力を長さ方向の略全体へ効率的に及ぼし得るように、少なくとも弾性材42よりも引張剛性が大きな材質とされ、例えばポリアミドやポリエステル等の樹脂繊維が好適に採用されるが、より引張強度や剛性が大きいアラミド繊維なども採用することができる。
【0061】
また、連続糸44は、引張力が及ぼされることで縮径方向への変形変位力を弾性材42の長さ方向で効率的に伝達して及ぼし得るように、長さ方向に対して傾斜配置されたり、所定の編組構造をもって配置されることが望ましい。具体的には、例えば複数本の連続糸44を組紐構造をもって長手方向で相互に編組したブレード編組が好適に採用される他、連続糸44を長手方向に所定のリード角でスパイラル状に配したり、互いに異なる方向に傾斜してスパイラル状に延びる複数本の連続糸44を重ね合わせて配したりした、スパイラル構造が好適に採用される。なお、組紐構造やスパイラル構造を採用する場合には、弾性材42の軸方向に対する連続糸44の傾斜角度を、静止角に近い角度か、それよりも所定量だけ大きく設定することで、引張力の作用に伴う弾性材42の断面縮小方向への力の作用および伝達の効率向上を図ることも好適である。
【0062】
このような複合体からなる長軸部28や短軸部30は、連続糸44を配した成形キャビティ内に弾性材料を充填して型成形することも可能であるが、例えば
図3に示されている如き成形装置を用いてより効率的に製造することができる。
【0063】
すなわち、中空又は中実(本実施形態では中空)の内層弾性材50を、ブレーダー52へ連続的に供給して、ブレーダー52から内層弾性材50の表面上へ複数本の連続糸44を供給しつつ、引取り機54で引き取ることによって、内装弾性材50の表面を覆うように複数本の連続糸44が組紐構造で編組されたブレード55を備えた中間材56を連続的に得る。なお、このようなブレーダー52は、例えばマンドレルの周囲に組紐状に編組する装置として公知のものを用いることが可能であり、一般に、ボビンキャリアに設けられた複数のボビンからそれぞれ供給される連続糸が、ガイドリングを経て組紐の組成点へ供給されるようになっており、マンドレル等の芯体の回りで複数の連続糸が交錯旋回されることで組紐状のブレードを編組する構造とされている。
【0064】
内層弾性材50の表面に連続糸44がブレーダー52で編組されることにより引取り機54から連続的に引き出される中間材56は、弾性材の押出成形機58に供給される。そして、押出成形機58において、外部から供給される弾性材料を用いて、中間材56の外周面を被覆する外層弾性材60を成形することにより、一体的に重ね合わされた内層弾性材50と外
層弾性材60との間に、長さ方向に連続して組紐構造で延びる複数本の連続糸44が埋設状態で配されて固着された連続筒体状の複合体62を製作する。
【0065】
かかる複合体62は、引取り機64で連続して押出成形機58から引き取り、必要に応じて内外層弾性材50,60の重合処理や加硫処理などの固定化処理を施すことにより、弾性材42とブレード構造の連続糸44の複合体からなる連続したチューブ状成形品65を得る。その後、このチューブ状成形品65を適切な長さで切断することによって、前述の長軸部28や短軸部30とすることが出来る。
【0066】
次いで、このようにして得られた長軸部28と短軸部30を組み合わせて形成した
図2に示す弾性中子26を用いて、
図1に示す繊維補強された樹脂成形品10を製造するに際しては、弾性中子26の外周面上に補強繊維を配設した後、弾性中子26の外周面上で樹脂成形を行うことにより、補強繊維と樹脂材料との複合構造とされた繊維補強樹脂からなる樹脂成形品10を得ることとなる。
【0067】
具体的には、
図4に示されているように、弾性中子26を構成する長軸部28と短軸部30の外周面を全体に亘って覆うように、補強繊維を適宜の編組構造をもって配設することで補強繊維層66を形成する。この補強繊維層66は、樹脂成形品10に要求される特性に応じて材質や繊維形態、編組構造などが適宜に選択されるものであって、特に限定されるものでないが、例えば連続繊維である炭素繊維やガラス繊維、高分子繊維等の補強繊維を組紐構造で編組した補強繊維層66が好適に採用される。
【0068】
なお、組紐構造の補強繊維層66は、例えば
図3に示す如きブレーダーを用い、複数本の補強繊維が供給される編組成中心上に弾性中子26を位置せしめて長さ方向に移動させつつ、弾性中子26の外周面上に組紐組成することでブレード状の補強繊維層66を形成することができる。また、補強繊維層66は、単層のブレード構造であっても良いが、弾性中子26の長軸部28や短軸部30の長さ方向で往復させて複層のブレード構造とすることも可能である。
【0069】
また、弾性中子26は、長い方の長軸部28が弾性変形可能であることから、分岐構造を有していても、ブレーダーを用いた編組に際して補強繊維の供給ライン等との関係で障害となる部位を湾曲や屈曲させて逃がすことが可能である。特に本実施形態では、長軸部28だけでなく短軸部30も弾性変形可能とする事もできることから、弾性中子26における分岐構造や全体形状が、補強繊維層66の形成に際して大きな支障となることが回避され得る。また、長軸部28や短軸部30を湾曲変形させた後も、その弾性に基づいて原形に速やかに復し得るから、その後の樹脂成形等に支障となることもない。更にまた、長軸部28や短軸部30の外周面に形成される補強繊維層66も、小径で変形可能な繊維の編組構造とされていることから、長軸部28や短軸部30に追従して変形および復元可能である。
【0070】
従って、補強繊維層66を外周面に形成した弾性中子26は、長軸部28の長手方向で弾性変形させることにより、
図5に示されているように、樹脂成形面とされる外周面を補強繊維層66と共に、目的とする樹脂成形品10(
図1参照)に対応する形状とすることができる。
【0071】
そして、
図6に示されているように、樹脂材料の成形型70の成形キャビティ内に弾性中子26を配し、目的とする樹脂成形品10(
図1参照)に対応する形状に弾性変形させた状態で位置決め保持せしめてセットする。その後、成形型70を型閉じして、弾性中子26の外周面の補強繊維層66上に樹脂材料を射出等で充填し、冷却後に型開きして脱型することにより、補強繊維層66が樹脂材に埋設状態で複合化されて繊維補強された樹脂成形品10を成形することができる。
【0072】
ここにおいて、弾性中子26として、本実施形態では貫通孔32を有する中空構造のものが採用されていることから、予め貫通孔32内へ非圧縮性で不定形の充填材74を充填しておくことが望ましい(
図5参照)。かかる充填材74としては、貫通孔32への充填や除去を容易に行うことができると共に、充填状態で長軸部28の変形が許容されるように、液体や数mm以下の固形粒状物が望ましく、水や砂粒等を採用することができる。充填材74を弾性中子26の中空内部へ充填することで、湾曲変形時の座屈状変形を防止して湾曲変形形状を安定化させたり、成形キャビティ72内へ充填される樹脂圧による変形を防止できるなどといった利点がある。一方、弾性中子26の中空内部へ充填材を充填するに際して、例えば弾性中子26が拡張される様に、液体などの充填材の充填圧力を高めておくと、弾性中子26を脱型する時に、充填圧力を開放し、弾性中子26を元の寸法に戻す事により脱型を一層容易に行うことができるようにすることも可能となる。
【0073】
なお、弾性中子26の中空内部に対して、充填材74を適宜に供給および排出できると共に、密充填した状態に保持できるように、弾性中子26の長軸部28や短軸部30の各開口部は、開閉可能なエンドキャップ76等によって封止されている。
【0074】
その後、
図6に示された成形型70から取り出した樹脂成形品10から弾性中子26を取り除くことで、目的とする樹脂成形品10が得られることとなる。かかる弾性中子26の取り除きに際しては、少なくとも一つのエンドキャップ76を開封して充填材74を中空内部から抜き取ると共に、連結ボルト34による連結を解除して、長軸部28と短軸部30とを分離させる。続いて、
図7に示されているように、長軸部28と短軸部30を、それぞれ、長さ方向の一端側から引張力を及ぼして樹脂成形品10から引き抜くことによって弾性中子26を取り除くことができる。
【0075】
その際、長軸部28および短軸部30は、弾性材42と連続糸44の複合構造とされていることから、長さ方向の一端側に及ぼされた引張力が、長さ方向に連続して配された連続糸44を通じて長さ方向の他端側に向かって十分に長い領域にまで効率的に及ぼされる。そして、長さ方向で引張力が及ぼされた長軸部28および短軸部30は、長さ方向の伸び変形と併せて、断面積が縮小する縮径変形を、十分に長い領域で生ずるのであり、特に本実施形態では長軸部28および短軸部30が中空断面形状とされていることで、断面縮小変形が一層効率的に生ぜしめられる。
【0076】
このように、長軸部28および短軸部30において、長さ方向の一端側から及ぼされる引張力が、長さ方向の伸び変形と共に断面縮小変形を伴って、十分に長い領域に亘って効率的に伝達される結果、樹脂成形品10の長管部18および短管部20のように十分に長く、湾曲や径方向に変形等していても、それらの内周面から弾性中子26としての長軸部28および短軸部30の外周面を強制的に分離させることができる。それ故、樹脂成形品10の成形後に、弾性中子26の長軸部28および短軸部30を長さ方向の一端側から引張ることで、樹脂成形品10の長管部18および短管部20から弾性中子26を容易に且つ速やかに抜き取ることが可能とされ、樹脂成形品10を離型させることができるのである。
【0077】
なお、弾性中子26から離型した後、或いは離型前に、樹脂成形品10には、端部のエッジ処理など、後加工が必要に応じて適宜に施されて、製品とされる。
【0078】
また、樹脂成形品10から抜き取った長軸部28および短軸部30は、それ自体の弾性に基づいて速やかに原形に復し得ることから、必要に応じて洗浄や検査などの確認処理を経て、弾性中子26として繰り返し樹脂成形品の製造工程に用いることができる。
【0079】
従って、上述の如き製造方法に従えば、弾性材42と連続糸44との複合体からなる長手状の弾性中子26を採用して外周面上で樹脂成形することにより、樹脂成形後に弾性中子26を容易に取り除いて中空構造の樹脂成形品10を、優れた量産性をもって製造することが可能となるのである。
【0080】
なお、前記実施形態では、成形キャビティ72にセットした弾性中子26の外周面に連続繊維からなる補強繊維層66を予め編組した状態で溶融樹脂材料を充填することで、繊維補強樹脂からなる樹脂成形品10を製造する場合を例示したが、本発明において補強繊維層66は必須でなく、繊維補強されていない樹脂成形品を製造することも可能である。また、短繊維や長繊維からなる非連続の補強繊維を混合した樹脂材料を成形キャビティ72に充填することにより、非連続繊維による繊維補強樹脂からなる樹脂成形品を製造することもできる。かかる非連続の補強繊維としては、例えばガラス繊維やアラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、炭素繊維などが何れも採用可能である。
【0081】
また、前記実施形態のように、補強繊維層66で覆われた弾性中子26の外周面上の成形キャビティに樹脂材料を注入して繊維補強樹脂製品を成形するに際して、補強繊維層66と樹脂材料との複合構造を安定して得るためには、成形キャビティに注入される樹脂材料の流動性が要求される。そこで、未重合で流動性が大きい樹脂原料を未重合状態で成形キャビティに注入充填した後に、成形キャビティ内で加熱等の重合処理を施して樹脂成形することも可能である。
【0082】
或いは、予め連続繊維状に成形した熱可塑性樹脂を、補強繊維(補強繊維層)66と共に、弾性中子26の外周面に編組等して被覆状態で配するようにしても良い。このように樹脂材料を連続繊維状として補強繊維66に絡ませるようにして弾性中子26の外周面上に配した後に、かかる樹脂材料を加熱溶融させることで、樹脂材料を補強繊維66へ効率的に含浸状態として、複合構造の繊維補強樹脂を安定して成形することが可能になる。
【0083】
また、熱可塑性樹脂をパウダー状として、それを付着させた連続繊維を補強繊維66として弾性中子26の表面へ編組状態等で配した後、かかる樹脂材料を加熱溶融させることで、樹脂材料を補強繊維66へ効率的に含浸状態として、複合構造の繊維補強樹脂を成形することもできる。
【0084】
このように、熱可塑性樹脂を連続繊維状やパウダー状などとして、加熱溶融による成形前に補強繊維66に絡ませるようにして補強繊維66の表面に密着させておき、或いは補強繊維66と絡ませておくことにより、十分な流動性を確保し難い樹脂材料の場合にも、補強繊維と一体化した複合構造の樹脂成形品を安定して得ることが可能になる。
【0085】
また、樹脂成形品10の樹脂材料として熱可塑性樹脂を採用する場合には、予めシート状やテープ状に成形された繊維補強樹脂シートからなるプリプレグを用い、かかるプリプレグを弾性中子26の外周面に編組したり、重ね合わせて貼り付けるように配置したり、巻き付けるように配置して、弾性中子26の表面の全体を覆った後に加熱溶融させて一体化させることで、繊維補強された樹脂成形品10を成形することも可能である。
【0086】
一方、樹脂成形品10の樹脂材料として熱硬化性樹脂を用いる場合には、硬化処理前の樹脂材料における良好な流動性を得やすいことから、熱可塑性樹脂のように事前の補強繊維との混在処理や成形キャビティへの高い充填圧などを不要とすることも可能である。具体的には、例えば予め熱硬化性樹脂材料を含浸させた連続繊維を弾性中子26の外周面上で編組等して配した後に硬化処理を施すことで繊維補強された熱硬化性樹脂成形品を得ることも可能であるし、また、連続繊維を弾性中子26の外周面上で編組した後に熱硬化性樹脂材料を含浸させて硬化処理することで繊維補強された熱硬化性樹脂成形品を得ることも可能である。より具体的な一例では、成形品が目的とする湾曲形状でない初期形状の弾性中子26の外周面に対して、予め樹脂材料を含浸させた連続繊維を編組した後に、かかる弾性中子26を目的形状に湾曲変形させて保持せしめた状態下で樹脂を硬化処理し、その後に弾性中子26を樹脂成型品から抜き取って脱型することで目的とする樹脂成型品を得るようにされる。なお、弾性中子の外周面に、樹脂材料を含浸した連続繊維を編組した後に、必要に応じてシーティングテープ等の樹脂シートを重ね合わせて巻き付けるようにしてから、弾性中子を目的形状に湾曲変形させて硬化処理することも可能であり、このように連続繊維の編組層の外周側や内周側に樹脂シートを重ねることで樹脂層の厚さ調節の自由度の向上などが図られ得る。
【0087】
さらに、前記実施形態では、弾性中子26を、
図2に示されている如き外力が及ぼされていない初期形状から、
図5〜6に示されているように外力を及ぼして湾曲変形させた状態で保持しつつ、外周面上で樹脂成形を行うことにより樹脂成形品10を形成していたが、例えば
図8に示されているように、予め湾曲部を有する目的形状をもって弾性中子26′を形成することも可能である。
【0088】
このように湾曲部や連結部33′を有する弾性中子26′を採用すれば、樹脂成形時に目的とする形状に変形保持させる必要がなくなり、樹脂成形作業の容易化と形状の安定化が図られ得る。また、初期形状で湾曲部が設けられた弾性中子26′であっても、弾性変形が可能であると共に、引張力の作用時における断面積の縮小変形が長さ方向に効率的に及ぼされ得ることから、前記実施形態と同様に、外周面上での樹脂成形品10の成形後に引張力を及ぼして長軸部28′と短軸部30′をそれぞれ樹脂成形品10から引き抜くことができる。
【0089】
また、湾曲部を有する弾性中子26′も、弾性変形が許容されることから、例えば
図9に示されているように、弾性中子26′の外周面にブレーダー80等を用いて補強繊維を編組するに際しても、弾性中子26′の各部位を適宜に引き伸ばすなどして弾性変形を加えつつ、編組成点へ供給される複数の補強繊維との干渉を回避することができることから、弾性中子26′の表面における補強繊維の編組作業も容易とされ得る。
【0090】
なお、前記実施形態における弾性中子26は、長軸部28や短軸部30が弾性材で形成されていることから、樹脂形成時に長さ方向で湾曲変形させて樹脂成形品10に湾曲部分16を形成する他、断面形状を弾性変形させて樹脂成形品10の断面形状を変更設定することも可能である。具体的には、例えば円形外周面の短軸部30において、軸直角方向の押圧力を及ぼして楕円形外周面に保持せしめた状態で樹脂成形品10を成形することにより、短
管部
20の断面形状が楕円筒形状とされた樹脂成形品10を得ることも可能である。
【0091】
このように本発明では、弾性変形可能な弾性中子26を採用したことにより、弾性中子26を交換等することなく、湾曲部分の形状や断面形状などが異なった別形状の樹脂成形品を成形することが可能となる。
【0092】
なお、前記実施形態では、長軸部28と短軸部30の連結部33を有する分岐状の弾性中子26を用いて分岐部分14と湾曲部分16を併せ備えた樹脂成形品10を製造する場合について説明したが、本発明方法は、実質的に長軸部のみからなる弾性中子を用いて、分岐部分を備えない中空構造の樹脂成形品を成形する場合にも適用され得る。また、2箇所以上の分岐部分や複数の湾曲部分を備えた樹脂成形品を製造するに際しても、それに対応した分岐構造をもって弾性中子を形成することで、本発明方法を適用することができる。
【0093】
更にまた、少なくとも一つの連結部33を有することで、長軸部28と短軸部30のように複数の長手状部をもって構成された弾性中子において、各長手状部を中空断面形状とする場合でも、各中空内部を相互に連通させる必要はなく、独立した中空断面形状としても良い。また、弾性中子26の断面形状は、例示の如き中実円形や中空円形の断面に限定されるものでなく、要求される樹脂成形品に応じて中実や中空の楕円や多角形などの各種断面形状が採用可能である。
【0094】
また、前述の如き弾性材42と連続糸44の複合体で形成される長軸部28に対して、短軸部30が十分に短い場合や、軸方向一方の側に向かって抜きテーパが付されるような場合には、かかる短軸部30をゴム等の弾性材の単体からなる弾性中子で形成することも可能であり、更に短軸部30に湾曲部が設定されない場合には短軸部30を金属等の硬質中子で形成することも可能である。
【0095】
ところで、本発明に従う構造とされた樹脂成形品10は、前記実施形態に示すように中空構造とされた長手状の樹脂成形品であって、湾曲部分16と分岐部分14とを併せ備えている構造とされ、且つ、それら湾曲部分16と分岐部分14を含む全長に亘って、編組された連続繊維からなる補強繊維66で樹脂材料が補強された複合構造とされているものを対象とする。
【0096】
このような樹脂成形品10は、湾曲部分16と分岐部分14を含む複雑な形状を有していることから、従来では、編組された連続繊維からなる補強繊維を有する複合構造をもって形成することができなかったのであり、上述の如き弾性変形可能な弾性中子26を提供したことに伴って、外周面への編組に際して各部位を適宜に湾曲させて編組繊維から逃がすことで実現可能と為し得たものである。従って、このような本発明に従う構造とされた複雑な異形状の樹脂成形品10は、本発明方法の提供によって初めて実現可能とされた一つの製品例であるといえる。
【0097】
さらに、本発明に従って樹脂成形品を製造するに際しては、別途に製造された他部材や他部品などを埋設したり、固着したり、鋳込むように固定したり等して、樹脂成形と同時に一体的に設けることも可能である。その際、かかる他部材や他部品などを、弾性中子に対して固定したり重ね合わせたりすることで、位置決めなどの取り扱いを容易にすることも可能であり、樹脂成形後に他部材や他部品から弾性中子を分離して型抜きすることにより、他部材や他部品を一体的に備えた樹脂成形品とすることができる。
【0098】
その際、前記実施形態の樹脂成形品10のように、連続繊維で補強された繊維強化樹脂製品とするに際しては、弾性中子の外周面を覆うように配される連続繊維を、上記他部材や他部品の外周面にまで覆うように配することで、当該他部材や他部品のまわりまで一体的に繊維補強された樹脂成形品を得ることもできる。
【0099】
例えば
図10に示されているように、前記実施形態の樹脂成形品10の端部(図示の実施形態では長管部18の長さ方向一方の端部)に対して、別部材からなる取付部品であるゴムブッシュ84を一体的に設けた構造の樹脂成形品10′を得ることが可能である。
【0100】
かかる樹脂成形品10′を製造するに際しては、例えば
図11に示されているように、前記実施形態に従って得られた弾性中子26の長軸分28の一端面に対して、別途形成したゴムブッシュ84を重ね合わせて配置する。なお、ゴムブッシュ84の構造は何等限定されるものでないが、例えばサスペンションブッシュ等として良く知られているように、厚肉円筒形状の防振ゴム86の内周面に対して円筒形状のインナ金具88を加硫接着せしめたものなどが採用され得る。
【0101】
そして、弾性中子26には、前記実施形態に記載のとおり、補強繊維66が編組等されて外周面を覆うようにして設けられるが、その際、弾性中子26の端部に配したゴムブッシュ84に対しても、防振ゴム86の外周面を覆うようにして、補強繊維66が編組等されて、弾性中子26と防振ゴム86の両外周面を連続して覆うように補強繊維66が配される。その後、樹脂成形を行って補強繊維66が埋設状態で一体化された複合構造の樹脂材を成形するに際して、弾性中子26の外周面から防振ゴム86の外周面まで全体を覆う状態で樹脂成形を行うことにより、
図10に示されているように、中空構造の長管部18および短管部20と一体的に、ゴムブッシュ84の防振ゴム86の外周面を覆うアウタ筒状部90を一体形成することができる。なお、樹脂成形後には、前記実施形態と同様に弾性中子26の長軸部28と短軸部30を抜き取って離型させることにより、目的とする兆繊維補強された中空構造の一体的な樹脂成形品10′が得られることとなる。
【0102】
従って、このようにして得られた樹脂成形品10′では、分岐部分14や湾曲部分16を備えた中空の所定形状を有すると共に、その成形と同時にゴムブッシュ84が一体的に組み付けられた構造とされているのである。特に本態様では、長管部18の周壁部とゴムブッシュ84のアウタ筒状部90とが連続した補強繊維によって補強されて一体成形された樹脂構造となっていることから、ゴムブッシュ84の組付けの工程が少なくされて製造が容易であるだけでなく、ゴムブッシュ84の組付部の強度も有利に確保され得る。
【0103】
なお、弾性中子26やゴムブッシュ84の外周面上での樹脂成形は、例えば
図11に示されているように、前記実施形態と同様な成形型を用いて、弾性中子26やゴムブッシュ84の外周面を覆うように連続補強繊維を編組したものを成形キャビティにセットした後、かかる成形キャビティに樹脂材料を供給して型成形することも可能である。
【0104】
また、前述のように、エポキシ樹脂などを採用する場合には、連続補強繊維と一体化したプレポリマーからなる樹脂シート状のプリプレグを用いて、かかるプリプレグで弾性中子26やゴムブッシュ84の外周面を覆った後に、熱等による硬化処理によりエポキシ基で架橋ネットワーク化させることで成形することも可能である。なお、プリプレグによる成形方法を採用する場合には、ゴムブッシュ84の全周をプリプレグで覆った上から、更に、弾性中子26とゴムブッシュ84の両外周面を連続して覆うようにプリプレグを配することで、ゴムブッシュ84の全周を覆う筒状のアウタ筒状部90を形成することも可能となる。
【0105】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。