(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態の区画貫通部用のカバー部材および区画貫通部構造を、
図1および2を参照しながら説明する。
【0010】
図1(a)を参照すると、区画貫通部用のカバー部材1は、長尺帯状のバンド部2と、バンド部2に第1端部5で取り付けられた環状本体4とを備えている。環状本体4は複数の折り返しひだ6、すなわちプリーツを有するため、第1端部6から、第1端部6とは反対側の第2端部7に向かって径方向に拡張可能である。
【0011】
環状本体4の第1端部5には、複数の熱膨張性充填材10が間隔を空けて、バンド部2の延びる方向と平行に配置されている。
図1(b)に示すように、複数の熱膨張性充填材10は環状本体4の径方向内側に、環状に配置されている。
【0012】
図1(a)に戻ると、バンド部2の2つの端部3の位置では、環状本体4に折り返しひだ6の途中まで切れ込み8が設けられており、後述するように、カバー部材1をケーブル・配管類16上に沿って移動させるときに、移動をし易くなっている。バンド部2の2つの端部3は、バンド部2の長さまたは直径を短くするための絞り手段として作用し、カバー部材1をケーブル・配管類上の所定位置に巻き付けるときに、互いに結び付けられる。
【0013】
バンド部2の材料は任意の耐火材から形成されてよく、例えば熱膨張性耐火材、アルミガラスクロス、ガラス不織布、および耐火性シート等が挙げられる。一つの実施形態では、バンド部2は樹脂成分に熱膨張性層状無機物と無機充填材とを含む熱膨張性耐火材から構成されたシート状の部材である。
【0014】
樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類が挙げられる。
【0015】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0016】
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0017】
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0018】
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を持っているものが好ましい。この様な性質を持つものは無機充填材を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。さらに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
次に上記熱膨張性層状無機物について説明する。前記熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0020】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0021】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、十分な膨張断熱層が得られず、また粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂に配合する際に分散性が悪くなり、物性が低下する。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0022】
次に上記無機充填材について説明する。
【0023】
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
【0024】
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満になると二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましい。粒径が100μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
【0026】
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
【0027】
さらに、熱膨張性耐火材を構成する熱膨張性樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0029】
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0030】
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
【0031】
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、さらにフェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等が添加されてもよい。また、一般的な難燃剤を添加してもよく、難燃剤による燃焼抑制効果により防火性能を向上させることができる。
【0033】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部及び前記無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0034】
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
【0035】
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0036】
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
【0037】
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0038】
前記樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより、樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
バンド部2として、熱膨張性耐火材は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリ―エム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
【0040】
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍を下回ると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また50倍を超えると、膨張層の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が5〜40倍の範囲であり、さらに好ましくは8〜35倍の範囲である。
【0041】
熱膨張性充填材10の材料は、熱膨張性の充填パテやシート等の、任意の熱膨張性の材料から形成されてよい。熱膨張性充填材10の材料は、バンド部2の材料と同じであっても異なっていてもよい。一つの実施形態では、熱膨張性充填材10はバンド部2に関して上述した樹脂成分に熱膨張性層状無機物と無機充填材とを含む熱膨張性耐火材である。
【0042】
環状本体4の材料は任意の耐火材から形成されてよく、一つの実施形態では、環状本体4は、アルミガラスクロス、ガラス不織布、および耐火性シートから選択された耐火性材料を含む。
【0043】
図2は、
図1のカバー部材1が配置された区画貫通部構造を示す。建築物の防火区画体としての床12には断面略矩形の貫通孔14が設けられ、その中を1つまたは複数のケーブル・配管類16(図では12本を示す)が貫通している。
【0044】
ケーブル・配管類16としては、例えば、電力用ケーブル、通信用ケーブル等の各種ケーブル類、水道管、冷媒管、熱媒管、ガス管、吸排気管等の各種配管類、前記各種ケーブル類や、前記各種配管類を保持するケーブルラック、ケーブルケース等の各種支持体等が挙げられる。ケーブル・配管類16は一種もしくは二種以上を使用することができる。ケーブル・配管類16は、樹脂製のもの、金属製のもの等を使用することができ、その素材に特に限定はない。
【0045】
なお、貫通孔14にケーブル・配管類16とカバー部材1を配置するときは、通常、まず、貫通孔14にケーブル・配管類16を配置し、ケーブル・配管類16の端部にカバー部材1を通し、ケーブル・配管類16に沿って、貫通孔14の付近までカバー部材1を移動させる。
【0046】
カバー部材1は、カバー部材1のバンド部2がケーブル・配管類16の周囲に巻き付けられる。この際、カバー部材1がケーブル・配管類16に引っ掛かるよう、
図1に示した2つの端部3を互いに結び付ける。カバー部材1の環状本体4は径方向に拡張可能であり、貫通孔2の上に配置するときは、環状本体4の第2端部7の位置で直径が貫通孔2の直径よりも大きくなるよう環状本体4が拡張される。カバー部材1の環状本体4の第2端部7は、金属製の留め具18により床12に対して周方向の複数個所で固定されている。つまり、環状本体4の第2端部7は、床12における貫通孔14を区画形成する部分を覆うように配置されている。このため、火災時には、バンド部2および熱膨張性充填材10がカバー部材1の内部を閉塞し、バンド部2、熱膨張性充填材10、及び環状本体4が貫通孔14の上を覆って閉塞するよう作用し、貫通孔14からカバー部材1の外部への火炎の貫通を防止または抑制することができる。
【0047】
上記の第1実施形態のカバー部材および区画貫通部構造は以下の効果を有する。
【0048】
・カバー部材1が、バンド部2と、バンド部2に第1端部5で取り付けられた環状本体4と、環状本体4の第2端部7に取り付けられた複数の熱膨張性充填材10とを備え、バンド部2および熱膨張性充填材10が火災時の熱により膨張するため、火災時の熱によりカバー部材1の内部が閉塞され、貫通孔14からカバー部材1の外部への火炎の貫通を簡単に短時間で防止または抑制することができ、カバー部材1の耐火性も十分に発揮される。
・カバー部材1の2つの端部3を結び付けることでカバー部材1をケーブル・配管類16に巻き付けることができ、カバー部材1を簡単にケーブル・配管類16に装着することができる。
【0049】
ここまで、本発明を第1実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
・熱膨張性充填材10は、第1実施形態ではバンド部2に予め装着されたものを示したが、バンド部2とは別体として提供され、施工時にバンド部2に取り付けられてもよい。このように、バンド部2および環状本体4と、熱膨張性充填材10とが別体となったキットの態様のカバー部材も本発明の範囲に包含される。
・
図3に示すように、区画貫通部構造の耐火性を高めるために、貫通孔に、追加の耐火構造を備えてもよい。すなわち、
図3では、
図4により詳細に示すように、床12に上端24aで引っ掛かり、長手方向に延びる部分24bが貫通孔14を区画形成する壁に沿って延び、下端部24cで上端部24aとは逆方向に延びて板状部材20を支持する複数の支持部材24が区画形成する壁に沿って環状に離間して設けられており、ケーブル・配管類16を挿通させた板状部材20は支持部材24に支持された状態で貫通孔14内に嵌合されている。支持部材24は例えば金属製の金具である。このように、支持部材24の上端が床12に引っ掛かっているため、板状部材20が貫通孔14内で床12の下に落下するのが防止されると共に、板状部材20は貫通孔14に嵌合しているため、貫通孔14を介した床下から床上への、またはその逆方向への火炎の延焼や熱の伝達が防止される。
【0050】
図5は、板状部材20の詳細を示す略斜視図である。板状部材20を構成する材料は特に限定されないが、例えばロックウール、グラスウール、けい酸カルシウム、およびカバー部材2および熱膨張性充填材10について説明したのと同一のまたは異なる、樹脂成分に熱膨張性黒鉛と無機充填材とを含む熱膨張性耐火材等が挙げられる。板状部材20のケーブル・配管類16に対応する切り欠き21には封止材22が施されており、ケーブル・配管類16を挟むように一組の板状部材20を互いに係合させる。
・
図6に示すように、板状部材20が配置される位置は、
図3のような貫通孔14内に限定されず、板状部材20の全体の寸法を貫通孔14よりも大きくし、貫通孔14の開口端15に近接し、床12の上に配置してもよい。この場合、床12に対する板状部材20の位置がずれないように、板状部材20を数か所、金具19等で打ちつけて床12に対して固定することが好ましい。なお、板状部材20が貫通孔14に近接するとは、板状部材20が貫通孔14に直接接しているか、または直接接していなくとも貫通孔14を閉塞できる程度に貫通孔14の付近に位置していることを指す。
・カバー部材1のバンド部2を補強するために、
図3に示すように、バンド部2の径方向外側、内部、または径方向内側に、金属、被覆した金属、樹脂組成物等の環状の留め具25をさらに施してもよい。
・カバー部材1の環状本体4の第2端部7は、留め具18で床12に対して固定する代わりに、
図7に示すように、複数の磁石26で固定してもよい。
図3に示すような金属製の金具である支持部材24が貫通孔14に配置されている場合、磁石26が支持部材24にくっつくため、床12に孔を空けなくても、環状本体4の第2端部7の位置で環状本体4の上に磁石26を載せておけば、環状本体4の第2端部7が間接的にではあるが床12に対して固定され、環状本体4を床12に対して固定できる。
・バンド部2の端部3の構成は、
図1に示した実施形態の他に、
図8に示すように、一つの端部3のみを長くし、他方の端部3または他のバンド部2の位置にホック、ピン、ねじ等の固定手段27を止め付けてもよいし、
図9に示すように、金属線28をバンド部2の長手方向に沿って配置し、金属線28を両端で引っ張ってバンド部2の長さを短くしてもよいし、または接着材などの接着手段(非図示)で一つの端部3を他方の端部3または他のバンド部2の位置に止め付ける構成でもよい。これら手段も、バンド部2の長さまたは直径を短くするための絞り手段として作用する。
・
図10に示すように、環状本体4の切れ込み8は省略されてもよい。
・
図11に示すように、カバー部材1の本体30が、環状でなくてもよい。この例では、カバー部材1が、バンド部2と、バンド部2に第1端部31で取り付けられ、両側面32を合わせて環状にされる本体30と、バンド部2または本体30の第1端部31に取り付けられた熱膨張性充填材10とを備えている。本体30の両側面32は、両側面32に取り付けられた、例えばバンド部2または環状本体4と同じかまたは異なる耐火材からなる1または複数の側方帯状部材34(図では6本)を結び付けることで環状にされる。好ましくは、バンド部2は、複数の折り返しひだ35を有し、両側面32を合わせて環状にしたときに第1端部31から第1端部31とは反対側の第2端部33に向かって径方向に拡張可能である。
・バンド部2はインシュロック状の金属結束(メタルタイ)などで、バンド部2の延びる方向に沿ってバンド部2の上を環状に結束されてもよい。
・防火区画体は、床12に限られず、壁、天井、間仕切り壁、および板材等であってもよい。また、防火区画体の構造としては、コンクリート構造、軽量気泡コンクリート(ALC)構造、中空押出セメント板(ECP)構造、中空コンクリート構造、木材、合成樹脂、金属等の支持部材、およびこれらの1つまたは複数を組み合わせた構造等が挙げられる。
・第1実施形態では、貫通孔2の形状が断面略円形であったため、カバー部材10も断面略円形に広がるように示したが、カバー部材10の断面形状は貫通孔2の形状に合わせて環状に適宜変更可能である。