特許第6553922号(P6553922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553922
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/06 20060101AFI20190722BHJP
   F25D 17/08 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F25D23/06 W
   F25D17/08 304
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-78724(P2015-78724)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-200295(P2016-200295A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄野 公平
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−101573(JP,A)
【文献】 特開2012−242072(JP,A)
【文献】 特開2003−222466(JP,A)
【文献】 特開2014−119081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の食品を、蒸発器で生成される冷気で冷蔵または冷凍保存する冷蔵庫であって、
外箱と内箱との間に発泡断熱材が充填される断熱箱体と、
前記断熱箱体の冷凍温度帯室と野菜室とを上下に区画し、内部に断熱空間が形成される断熱仕切り壁と、
前記断熱仕切り壁内部に配置される真空断熱材とを備え、
前方視で、前記真空断熱材の横幅は、前記蒸発器の横幅より大きく、
前方視または上方視で、前記真空断熱材の投影面上に前記野菜室を冷却した後の冷気が吸入される冷気戻り口があり、
前記真空断熱材が配置されない箇所にヒータを備え、
前記ヒータの結線と前記冷蔵庫のコードとを収納する収納場所は、前記真空断熱材の後方に配置される
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記真空断熱材は、湿式真空断熱材である
ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地球温暖化を防止する取り組みとして、二酸化炭素(CO2)の排出抑制を図るために様々な分野で省エネルギ化が推進されている。近年の電気製品、特に冷蔵庫においても、消費電力量を低減する観点から断熱性能の向上が主眼となっている。
【0003】
一般的な冷蔵庫では、薄い鋼板の外箱と樹脂製の内箱との間や各貯蔵室を区切る仕切り壁に、例えば硬質ウレタンフォームなどの発泡断熱材を充填して断熱箱体を形成している。また、一方で、冷蔵庫の外形寸法を大きくすることなく、内容積を拡大して欲しいというニーズが常に存在する。
【0004】
近年、冷蔵庫の省エネルギ化や庫内の有効容積の拡大を目的に、貯蔵室を形成する箱体の断熱部材として、薄い厚みでありながら高い断熱性能をもつ真空断熱材を利用するケースが増えている。例えば、特許文献1に記載の冷蔵庫では、異なる温度帯設定である貯蔵室間の熱伝導を抑制して過冷却や凍結を防止するため、断熱箱体の各貯蔵室を区切る仕切り壁には、内部に発泡断熱材とともに真空断熱材を配置している。
【0005】
特許文献2には、冷蔵庫において、冷凍室とその下方の野菜室とを区切る仕切り壁129(図9(a)、図10参照)が記載されている。
図9(a)は、特許文献2の冷凍室と野菜室とを区切る仕切り壁の上側仕切り壁形成体を外した発泡断熱材の充填前の状態の上面図であり、図9(b)は、必要なアルミ箔を切り取る勝手を示す平面図である。
【0006】
図10は、図9(a)のIV−IV断面図である。なお、図10では、上側仕切り壁形成体129k2を取り付けた発泡ウレタン樹脂110pの充填前の状態を示している。図11は、特許文献2の冷凍室と野菜室とを区切る断熱仕切壁の下側仕切り壁形成体を前上方から見た斜視図である。
仕切り壁129は、下側仕切り壁形成体129k1と上側仕切り壁形成体129k2とで、外郭が形成されている。
【0007】
仕切り壁129の下側仕切り壁形成体129k1には、野菜室を冷却した後の冷気を吸う野菜室戻り口129aが開口されている。そして、下側仕切り壁形成体129k1の下部には、吸入口129aから冷却器収納室に接続する冷却器接続口129cに連通する野菜室戻りダクト129bが、向かって左側に形成されている。冷却器収納室(図示せず)には、冷却器(図示せず)が設けられている。
【0008】
仕切り壁129の右後方には、冷却器収納室の冷気が野菜室に吐出される吐出孔129e(図9(a)参照)が上下方向に貫通して形成されている。
仕切り壁129の右側には、真空断熱材132が配置されている。
図10に示す仕切り壁129の厚み方向の中央部129oおよび真空断熱材132の上方には、発泡ウレタン樹脂110pが注入されて充填される。
【0009】
ところで、下段冷凍室(図示せず)は冷凍温度帯で冷却され、その下方の野菜室(図示せず)は、野菜の冷蔵温度帯の温度で冷却されている。そのため、図9(a)に示す仕切り壁129の真空断熱材132が配置されていない野菜室側の壁面には、露付きが発生するおそれがある。そこで、図9(a)に示すように、真空断熱材132が配置されていない野菜室側の壁面に、ニクロム線がコイル状に形成されるヒータTが設けられ、露付きを防止している。
【0010】
ヒータTの上方には、アルミ箔alが、ヒータTを上方から覆い、ヒータTの熱を広い領域に伝熱するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-127600号公報
【特許文献2】特開2014-43987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、図9(a)に示すように、特許文献2に記載の仕切り壁129は、野菜室戻り口129aが手前左側に設けられており、仕切り壁129の内部左側に、図9(a)のIV−IV断面の図10に示すように、野菜室戻り口129aに続く野菜室戻りダクト129bが手前から後部にかけて配置されている。そのため、真空断熱材132は、図9(a)に示すように、仕切り壁129の内部右側に設置されている。
【0013】
このように、仕切り壁129では、真空断熱材132の大きさが、上面視で仕切り壁129のほぼ右半分に限られている。そのため、ヒータTの熱を伝熱するためのアルミ箔alも大きなものが必要となっている。アルミ箔alは、図9(b)に示すアルミ箔alを含む矩形状のアルミ箔al0(図9(b)の二点鎖線参照)から必要な部分以外の箇所al9を廃棄して使用するので、ヒータTを這わす領域ができるだけ矩形に近く、小さい領域であることが望ましい。
【0014】
しかし、図9(a)に示すように、仕切り壁219におけるヒータTは、上面視で、仕切り壁29の前後方向および左右方向に広がっている。そのため、図9(b)に示すように、仕切り壁29に使用されるアルミ箔al0は、ヒータTの領域を覆う矩形状の大きさものが必要であり、かつ、矩形状でヒータTが配置される近傍領域以外の箇所al9は廃棄される。
【0015】
そのため、ヒータTのコストおよびヒータTの熱を伝熱するアルミ箔alのコストが高騰している。
また、ヒータTが配置される領域が大きいことから、ヒータTの長さが長い。そのため、ヒータTで所定の温度に温めるには、ヒータTの長さに応じる電力が必要となる。そのため、ヒータTの消費電力が大きいものとなっている。
【0016】
また、真空断熱材132の大きさが限られているため、厚さが厚くなる発泡ウレタン樹脂が注入されて断熱される領域が広くなっている。発泡ウレタン樹脂は、真空断熱材132に比べて断熱性が劣るため、厚さを厚くする必要があり、仕切り壁129の厚さを厚くする必要がある領域が大きくなる。その分、冷蔵庫の貯蔵室の内容積が削られることとなる。
【0017】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、消費電力が削減でき、庫内の容積を大きくできる断熱仕切り壁を有する冷蔵庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するため、本発明の冷蔵庫は、内部の食品を、蒸発器で生成される冷気で冷蔵または冷凍保存する冷蔵庫であって、外箱と内箱との間に発泡断熱材が充填される断熱箱体と、前記断熱箱体の冷凍温度帯室と野菜室とを上下に区画し、内部に断熱空間が形成される断熱仕切り壁と、前記断熱仕切り壁内部に配置される真空断熱材とを備え、前方視で、前記真空断熱材の横幅は、前記蒸発器の横幅より大きく、前方視または上方視で、前記真空断熱材の投影面上に前記野菜室を冷却した後の冷気が吸入される冷気戻り口があり、前記真空断熱材が配置されない箇所にヒータを備え、前記ヒータの結線と前記冷蔵庫のコードとを収納する収納場所は、前記真空断熱材の後方に配置される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、消費電力が削減でき、庫内の容積を大きくできる断熱仕切り壁を有する冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る実施形態の冷蔵庫の正面図。
図2】冷蔵庫の庫内の構成を表す図1におけるI−I縦断面図。
図3】冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図。
図4図2のII部拡大図。
図5】冷凍室と野菜室とを区切る断熱仕切壁の上側仕切り壁形成体を外した発泡断熱材の充填前の状態の上面図。
図6図5のIII−III断面図。
図7】冷凍室と野菜室とを区切る断熱仕切壁の下側仕切り壁形成体を前上方から見た斜視図。
図8】ヒータの設置状況を示す断面模式図。
図9】(a)は特許文献2の冷凍室と野菜室とを区切る仕切り壁の上側仕切り壁形成体を外した発泡断熱材の充填前の状態の上面図、(b)は、必要なアルミ箔を切り取る勝手を示す平面図。
図10図9のIV−IV断面図。
図11】特許文献2の冷凍室と野菜室とを区切る断熱仕切壁の下側仕切り壁形成体を前上方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、食品や飲料水等を冷蔵或いは冷凍して貯蔵する冷蔵庫に係り、特に冷凍温度帯室と冷蔵温度帯室とを区分するのに用いる仕切り壁の構成に関する。
図1は、本発明に係る実施形態の冷蔵庫の正面図であり、図2は、冷蔵庫の庫内の構成を表す図1におけるI−I縦断面図である。
【0022】
実施形態の冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6とを備えて構成される。なお、以下では、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5を総称して冷凍室60と称する場合がある。
冷蔵室2は、前方側に左右に分割され観音開きで手前側に開く冷蔵室扉2a,2bを備えている。また、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを備えている。
【0023】
なお、以下では、冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを単に扉2a,2b,3a,4a,5a,6aと称する。
図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材10pが充填される断熱箱体10により隔てられている。発泡断熱材10pは、例えば発泡ポリウレタン等が用いられる。
【0024】
断熱箱体10は、外箱10s、内箱10u、真空断熱材25等で構成されている。外箱10sは薄い鉄板、例えば、肉厚0.5mm〜0.4mmの鉄板で作られており、内箱10uは合成樹脂、例えばABS樹脂を真空成形して作られている。
断熱箱体10は、発泡断熱材10pより熱伝導率が低い真空断熱材25を、複数断熱性能向上のために実装している。
【0025】
真空断熱材25は積層したグラスウールなどを、外包材(薄肉のアルミフィルムや金属蒸着層を有する積層フィルム)で包み、その後で外包材内を真空引きして形成されている。
冷蔵庫1の庫内は、冷蔵温度帯の冷蔵室2と、冷凍温度帯の上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照)とが、断熱仕切壁28により隔てられている。また、冷凍温度帯の下段冷凍室5と、野菜の冷蔵温度帯の野菜室6とが、断熱仕切壁29により隔てられている。
【0026】
上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの室の前方に備えられる扉4a,5a,6aと一体に、収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられている。収納容器4b,5b,6bは、扉4a,5a,6aの図示しない取手部に手を掛けて、扉4a,5a,6aとともに手前側に引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3も同様に、扉3aと一体に貯氷容器3b(図2参照)が設けられ、貯氷容器3bは、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出せるようになっている。
【0027】
冷気は、冷却器収納室8の上部で冷蔵室2側と野菜室6側に風路が分岐して、一方は冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2c(図2図3参照)から冷蔵室2へ送られる。他方は、野菜室送風ダクト16b(図2参照)を経て野菜室6背面右側上部に設けられた野菜室吹き出し口6c(図3参照)から野菜室6に流入して野菜室6を冷却する。
【0028】
<冷蔵庫1の冷却構造>
図3は、冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図であり、冷気ダクトや吹き出し口の配置などを示す図である。図4図2のII部拡大図である。
図2に示すように、蒸発器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられている。冷却器収納室8の下方には、図2図4に示すように、除霜ヒータ22が備えられている。除霜ヒータ22の上方には、除霜水が除霜ヒータ22に滴下することを防止するために、上部カバー53が設けられている(図4参照)。
【0029】
蒸発器7の上方に設けられた庫内送風機9により蒸発器7と熱交換して冷却された空気(以下、蒸発器7で冷却されてできた低温の空気を冷気と称す)が冷蔵室送風ダクト11を介して、冷蔵室2へ送られる。
また、冷気は、図4に示す上段冷凍室送風ダクト12(図4参照),下段冷凍室5の送風ダクトである冷気ダクト13(図3参照)及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3へ送られる。
【0030】
また、冷気は、野菜室送風ダクト16b(図3参照)を介して、野菜室6へ送られる。冷蔵室2、冷凍室60、野菜室6の各室への送風は、図2に示すように、それぞれ冷蔵室ダンパ20、冷凍室ダンパ50、および野菜室ダンパ40の開閉により制御されている。
冷蔵庫1では、野菜室ダンパ40(図2参照)が下段冷凍室5と野菜室6の断熱仕切壁29より下方であって、野菜室6の後部(背部)に配置されている。そのため、野菜室6の熱で冷凍温度の影響を抑えて野菜室ダンパ40の凍結防止効果が得られる。また、野菜室6の近くに、冷気を開閉制御する野菜室ダンパ40が設けられているので、野菜室6の冷気制御がきめ細かに行え、保湿効果が高くなる。
【0031】
また、野菜室送風ダクト16b(図3参照)は冷凍温度帯の領域に配置されており、その終端に野菜室ダンパ40が配置される。そのため、野菜室送風ダクト16bは冷凍室60の冷熱により低温に維持された状態となるので、温度変化による結露や氷結の発生を抑制することができる。ちなみに、図3の破線、図2に示すように、冷蔵室2,製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の各送風ダクト(11、12、13、16a、16b)は、冷蔵庫1の各室(2、3、4、5)の背面側に設けられている。
【0032】
図3に示すように、冷蔵庫1右手奥に配置される風路は、手前側風路が野菜室送風ダクト16bであり、奥側風路が冷蔵室戻りダクト16aである。
具体的には、冷蔵室ダンパ20が開状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト11(図2参照)を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2へ送られる。一方、野菜室ダンパ40が開状態のとき、野菜室送風ダクト16bを経て野菜室6背面右側上部に設けられた野菜室吹き出し口6c(図3参照)から野菜室6に流入して野菜室6を冷却する。
【0033】
野菜室6の冷却を終えた後の冷気は、図2に示すように、断熱仕切壁29の下部後方に設けられた、野菜室吸入口29aから、野菜室戻りダクト29bを介して、蒸発器7の左側に設けられた野菜室戻り吐出口18aから冷却器収納室8に流入する。
【0034】
<断熱仕切壁29>
図5は、冷凍室と野菜室とを区切る断熱仕切壁の上側仕切り壁形成体を外した発泡断熱材の充填前の状態の上面図であり、図6は、図5のIII−III断面図である。なお、図6では、上側仕切り壁形成体29k2を取り付けた発泡断熱材10pの充填前の状態を示している。
図7は、冷凍室と野菜室とを区切る断熱仕切壁の下側仕切り壁形成体を前上方から見た斜視図である。
【0035】
断熱仕切り壁29は、上側仕切り壁形成体29k2、下側仕切り壁形成体29k1、断熱体28、断熱空間29dに充填される発泡断熱材10p、および下側仕切り壁形成体29k1に固定される真空断熱材32とを含み構成されている。なお、図6は、発泡断熱材10pの充填前を示しているので発泡断熱材10pは図示していない。
図6に示すように、断熱仕切り壁29には、中央部に真空断熱材32が配置されるスペースおよび発泡断熱材10pが充填されるスペースの断熱空間29dが形成されている。
【0036】
断熱仕切り壁29の外郭を形成する上側仕切り壁形成体29k2および下側仕切り壁形成体29k1はPP(polypropylen)等の合成樹脂で成形されている。
断熱体28は、寸法精度が求められる蒸発器樋部29cの周囲に、ポリスチレン(スチロフォーム)等で形成される。蒸発器樋部29c周りは寸法精度が求められることから、寸法精度がでにくい発泡断熱材10pではなく、断熱体28が使用される。
【0037】
図7に示すように、下側仕切り壁形成体29k1の奥方には、冷却器収納室8(図2参照)に連続する蒸発器樋部29cが、中央部が下方に凹んだ凹形状を有して形成されている。蒸発器樋部29cの中央には、結露水を排出する排水孔29c1(図5参照)が鉛直方向に貫通して設けられている。
【0038】
下側仕切り壁形成体29k1の左奥方には、冷蔵庫1の電源コードや、後記のヒータTの結線が収納される結線収納部29sが直方体様の凹んだ形状を有して形成されている。
下側仕切り壁形成体29k1の結線収納部29sの右側下部には、後記の野菜室6を冷却した冷気が冷却器収納室8に戻るための野菜室戻りダクト29b(図6参照)が形成されている。
【0039】
下側仕切り壁形成体29k1の右奥方には、冷却器収納室8の冷気が、野菜室6内を冷却するために野菜室6に吐出される吐出孔29e(図7参照)が、上下方向に貫通して形成されている。吐出孔29eの下方には、野菜室吹き出し口6c(図3参照)が設けられる。
【0040】
図6に示すように、断熱仕切り壁29の左下部後方には、野菜室6を冷却した後の冷気が冷却器収納室8に戻るための野菜室吸入口29aが開口されている。そして、仕切り壁29下部には、野菜室吸入口29aから冷却器収納室8(図2参照)に連続する蒸発器樋部29cに連通する野菜室戻りダクト29bが、後方にかけて形成されている。
【0041】
蒸発器樋部29cは、複雑な形状を有しているので発泡断熱材10pを充填することが難しい。したがって、断熱体28のようなスチロフォームを使用した別部品からなる断熱材を使用している。また、断熱箱体10の開口部(断熱箱体10の前側)から見て、蒸発器樋部29c付近はアンダーカットとなる部分であり、発泡断熱材10pを充填する際に使用する発泡装置で十分に押さえることのが難しい。
【0042】
蒸発器樋部29cの上方の冷却器収納室8には、蒸発器7(図2参照)が設けられている。冷却器収納室8には、上面視で、蒸発器7が図5の二点鎖線で示す位置に設けられる。
ところで、断熱仕切り壁29における野菜室6に冷気が吐出される吐出孔29eと、野菜室6を冷却後の冷気が吸い出される野菜室吸入口29aとが近い距離にあるが、図2に示すように、野菜室6内には、収納容器6bが配置されているため、収納容器6b等により冷気が分散され、野菜室6の冷却に影響することはない。
【0043】
図5図6に示すように、仕切り壁29の下部には、上方視で、真空断熱材32が、左右方向の端部に亘るとともに奥行き方向の前側から中央部を跨いで後方にかけて、大きな面積を有して設置される。真空断熱材32は、冷蔵庫1の省エネ性を高めるため、冷蔵庫1の下段冷凍室5と野菜室6を仕切る断熱仕切り壁29に配置されるものである。真空断熱材32は、従来のものより大型にすることで、省エネ効果を高めることができる。
【0044】
図5に示すように、真空断熱材32は、扁平な矩形状の形状を有している。
前方から見て、真空断熱材32の幅が蒸発器7(図5参照)の横幅より大きい。また、前方から見て、真空断熱材32の奥方に、野菜室吸入口29a(図6参照)と吐出孔29e図5参照)とが配置される位置関係にある。
【0045】
なお、野菜室吸入口29aは、真空断熱材32の下方に配置してもよい。この場合、野菜室戻りダクト29bは、真空断熱材32の下方に設けられる。
結果として、野菜室吸入口29aは、前方視または上方視で真空断熱材32の投影上に位置する。
吐出孔29eは、前方視で真空断熱材32の投影面上にある。
【0046】
上述の構成により、真空断熱材32は、断熱仕切り壁29の左右端縁に近接して配置することができる。換言すれば、真空断熱材32は、断熱仕切り壁29の左右の各端縁まで配置することができる。
図6に示すように、断熱仕切り壁29の野菜室戻りダクト29bおよび蒸発器樋部29cの近傍は、前記したように、寸法精度が求められるため、断熱体28が収容されている。
【0047】
<ヒータT>
真空断熱材32は、発泡断熱材10pに比べて、熱伝導率がほぼ1桁低い。例えば、発泡断熱材10pの熱伝導率0.033w/m・k程度に対して、真空断熱材32の熱伝導率は例えば、0.005w/m・k程度である。
【0048】
断熱仕切り壁29が仕切る野菜室6と下段冷凍室5とは、野菜室6が野菜の冷蔵温度帯で冷却され、下段冷凍室5が冷凍温度帯で冷却されている。そのため、野菜室6と下段冷凍室5との温度差は大である。
【0049】
ここで、温度が低い方が温度が高い場合よりも、空気中に含まれる水分量(絶対湿度)が少ない。そのため、断熱仕切り壁29における発泡断熱材10pでのみ断熱されている箇所は、真空断熱材32が設置される箇所に比べて断熱性が低いため、そのままでは、下段冷凍室5より高温の野菜室6に面する側に露付きが発生する。
【0050】
そこで、冷蔵庫1では、露付きが発生する箇所にヒータTを配置して、温度を上げることで、露付きの発生を抑制している。つまり、図5に示す上面視で、ヒータT(図5に太線の符号7で示す)が真空断熱材32の後方の左右に長い長方形状の領域に這わせられている。ヒータTはニクロム線がコイル状に収容されるシーズヒータで形成されている。
【0051】
図8は、ヒータの設置状況を示す断面模式図である。
ヒータTは、粘着テープtで下側仕切り壁形成体29k1に固定される。ヒータTの上にはアルミ箔alが接触して覆っている。アルミ箔alは、ヒータTの熱を広い領域に伝導するためのものであり、左右方向に長いほぼ長方形状の領域に設置されている。
【0052】
本冷蔵庫1では、断熱仕切り壁29において真空断熱材32を大きく配置できることから、ヒータTの設置領域を狭くできる。そのため、ヒータTの長さが短く済み、アルミ箔alを小さい面積で済ますことができる。
【0053】
ヒータTの長さは、従来の冷蔵庫に比べて2割減とできる。そのため、ヒータTに係る製造コストを2割削減できる。また、アルミ箔alの形状を、図5に示すように、比較的小さな長方形に近い形状にできる。そのため、アルミ箔alのうちで裁断して廃棄する箇所が少ない。また、アルミ箔alを、比較的小さな長方形状とできるので、アルミ箔全体が小さな形状で済む。つまり、アルミ箔alが小さな形状で済み、かつ廃棄する部分が小さいので、アルミ箔alの生産コストを削減できる。
【0054】
<断熱仕切り壁29の製作>
断熱仕切り壁29の製作に際しては、ヒータTを下側仕切り壁形成体29k1の後部に粘着テープtで貼って、ヒータTを覆ってアルミ箔alを粘着テープ等で設ける。また、下側仕切り壁形成体29k1の前側に真空断熱材32をテープ等によって貼着する。そして、上側仕切り壁形成体29k2と下側仕切り壁形成体29k1を組み合わせて一体化して断熱箱体10(図2参照)に組み付けた後に、断熱仕切り壁29における蒸発器樋部29cおよび断熱体28、ヒータT、真空断熱材32を除く全域にわたって、ウレタン樹脂を注入して発泡させ、発泡断熱材10pが充填されて形成される。
【0055】
上記構成によれば、下記の効果を奏する。
1.従来、図9図10に示すように、野菜室6の冷気循環風路(野菜室戻りダクト29b)が下段冷凍室5と野菜室6との間の断熱仕切り壁29内の野菜室6側の前後方向にあり、真空断熱材32を設ける際、その風路をよける必要がある。
【0056】
そこで、本冷蔵庫1では、野菜室吸入口29aを手前側から奥側に変更することで野菜室戻りダクト29bの位置を真空断熱材32の後方側に配置する構成とした。こうして、真空断熱材32を配置するために、断熱仕切り壁29の中央から前部側にほぼ全幅(図5の紙面左右方向)に亘る平坦な空間を形成した。この平坦な空間に、真空断熱材32を配置することで、真空断熱材32を大きい形状にすることができる。換言すれば、野菜室6の冷気戻り口の野菜室吸入口29aは、真空断熱材32の後方にある。
結果として、前方視で、真空断熱材32の横幅を蒸発器7の横幅より大きくすることができた。
【0057】
ここで、野菜室吸入口29aを真空断熱材32の下方に設けてもよい。この場合、野菜室戻りダクト29bは、真空断熱材32の下方、または真空断熱材32を跨いで上方に設けられる。
まとめると、前方視または上方視で、真空断熱材32の投影面上に野菜室6を冷却した後の冷気が戻る冷気戻り口の野菜室吸入口29aがある。
【0058】
また、野菜室6を冷却する冷気が野菜室6内に吐出される吐出孔29eは、前方視で真空断熱材32の投影面上にある。そして、ヒータTの結線と冷蔵庫1のコードとを収納する収納場所の結線収納部29sは、図7に示すように、真空断熱材32の後方にある位置関係となる。
【0059】
2.上述したように、真空断熱材32を大きくできることで、下段冷凍室5から野菜室6への熱伝導(熱漏洩)を抑制でき、下段冷凍室5の温度が上がりにくくなり、冷却を行う回数を減らせるため、省エネ化を図れる。
【0060】
3.真空断熱材32は、発泡断熱材10pより断熱性能が高いため、同じ断熱性能を得るのに厚みが少なくて済み、庫内の容積を広くできる。そのため、冷蔵庫1の貯蔵量を増加させることができる。
【0061】
4.下段冷凍室5から野菜室6へ熱伝導した際、野菜室6の下段冷凍室5側の断熱仕切り壁29が冷却されるため、野菜室6内の水分が露点に達し滴化しまう現象(露付き)が生じるおそれがある。しかし、大きな真空断熱材32を設けられるので、断熱性能が向上され露付きが抑制される。
【0062】
5.従来、露点に達しないようヒータTを設けて断熱仕切り壁29を暖めているが、ヒータTを設ける領域を狭くできる。
真空断熱材32を大きくできることで、2.〜5.の各効果が高まる。
【0063】
6.真空断熱材32の投影面でない箇所に、露付防止のヒータTを這わせていたのが、真空断熱材32の投影面が拡大されたためヒータTを這わせる面積を縮小化できる。
【0064】
7.真空断熱材32を断熱仕切り壁29の両側端縁に近接して配置できる。換言すれば、断熱仕切壁29の側端縁と真空断熱材32の側端縁との寸法が狭い。そのため、断熱仕切り壁29の側端部に凝着が生じるする露付きを抑制できる。
【0065】
8.ヒータT、アルミ箔al等の部品の小型化が図れる。そのため、製造コストが削減され原価低減が行える。
【0066】
9.ヒータT、アルミ箔al等の部品の小型化により、部品の保管場所の省スペース化が図れる。
【0067】
10.以上から、消費電力が削減でき、庫内の容積を大きくできる断熱仕切り壁29を有する冷蔵庫1を実現できる。
【0068】
<<その他の実施形態>>
1.前記真空断熱材32は乾式または湿式の真空断熱材のどちらでもよい。湿式の真空断熱材を用いると、寸法精度がでるため、他の部材との当接を避けることができ、より大きな真空断熱材32を用いることができる。湿式の真空断熱材とは、湿式抄紙法によって不織布を製造する際に複数の各無機繊維を、不織布の表面とほぼ平行な方向に配列させてに熱伝導が発生するのを抑制した真空断熱材である。
【0069】
2.以上、本発明の様々な実施形態を述べたが、その説明は典型的であることを意図したものである。そして、本発明の範囲内でより多くの形態と実施が可能であることは、勿論である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲内で様々な修正と変更が行える。
【符号の説明】
【0070】
1 冷蔵庫
5 下段冷凍室(冷凍温度帯室)
6 野菜室
7 蒸発器
10 断熱箱体
10s 外箱
10u 内箱
10p 発泡断熱材
29 断熱仕切り壁
29a 野菜室吸入口(冷気戻り口)
29d 断熱空間
29e 吐出孔
29s 結線収納部(収納場所)
32 真空断熱材
T ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
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図11