特許第6553932号(P6553932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553932
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】廃液固化剤、その製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20190722BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20190722BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190722BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B01J20/26 D
   B01J20/30
   B01J20/28 Z
   C09K3/00 103L
   C09K3/00 103M
   C09K3/00 103K
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-89272(P2015-89272)
(22)【出願日】2015年4月24日
(65)【公開番号】特開2016-203106(P2016-203106A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】藤井 由佳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄介
(72)【発明者】
【氏名】南 絵里菜
(72)【発明者】
【氏名】池内 博之
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−538110(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02377897(EP,A1)
【文献】 国際公開第2010/073658(WO,A1)
【文献】 特開2013−231199(JP,A)
【文献】 特開2009−167371(JP,A)
【文献】 特開昭63−105064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/28,20/30−20/34
C09K 3/00,3/20−3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液に固化剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法に用いられる粒子状の前記固化剤であって、
重量平均粒子径が200μm以上350μm以下である吸水性樹脂と、吸水性樹脂に対して0.05重量%以上5重量%以下のメタノール指数が100以上である疎水性物質と親水性物質を含み、
上記吸水性樹脂の吸水倍率が、40g/g以上である廃液固化剤。
【請求項2】
疎水性物質が脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩である請求項1に記載の廃液固化剤。
【請求項3】
疎水性物質の1分子内の炭素数が12以上である請求項1又は2に記載の廃液固化剤。
【請求項4】
親水性物質が無機微粒子である請求項1〜の何れか1項に記載の廃固化剤。
【請求項5】
前記親水性物質を0.3重量%以上3.0重量%以下含む請求項1〜の何れか1項に記載の廃液固化剤。
【請求項6】
廃液に処理剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法に用いられる粒子状の前記固化剤の製造方法であって、該製造方法は、アクリル酸とその塩を主成分とする単量体を重合することによって得られる、架橋構造を有し、かつその表面が架橋処理された吸水性樹脂粒子に対し、0.05〜5.0重量%メタノール指数が100以上である疎水性物質と0.3重量%以上3.0重量%以下の親水性物質とを混合する工程を含み、前記吸水性樹脂粒子は重量平均粒子径が200μm以上350μm以下に調整されており、
上記吸水性樹脂の吸水倍率が、40g/g以上であることを特徴とする、廃液固化剤の製造方法。
【請求項7】
疎水性物質が脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩である請求項に記載の廃液固化剤の製造方法。
【請求項8】
親水性物質が無機微粒子である請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
無機微粒子が平均粒子径が200μm以下の二酸化ケイ素及びケイ酸(塩)である請求項6〜8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記吸水性樹脂の微粉末を造粒する工程を含む、請求項6〜9の何れか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状廃液固化剤と、その製造方法及びその用途に関するものである。更に詳しくは、廃液、特に血液や体液等を含有した医療廃液を均一に固化し、かつ固化時間を著しく短くする粒子状廃液固化剤と、その製造方法及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業分野から排出される廃液は増加の一途をたどっている。廃液としては工場廃液、飲料物廃液、体液廃液等があるが、特に病院での手術や出産の際に排出される羊液や血液等を含有した液状の医療廃液は、医療従事者や廃棄業者に対する感染症を防止するために、廃液容器に回収した後、焼却処理あるいは薬剤処理後に浄化槽内で処理されている。しかし、いずれの場合も、液状のままで処理すると、万一の事故等による廃液容器の破損や、廃液の飛散による二次感染の恐れがあるために、廃液、特に医療廃液を固化(ゲル化ともいう)した後に処理することが望まれている。即ち、廃液に処理剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法が望まれている。
【0003】
ここでいう医療廃液とは、血液や体液、及びこれらの0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)混合液、患部を洗浄したリンゲル液廃液、消毒用エタノール廃液、その他の消毒液廃液、人工透析廃液、患者から摘出した血液等の体液を含む臓器、病理検査廃液等が挙げられる。これらの医療廃液を固化するための廃液処理剤においては、血液や体液等に含まれている電解質による吸水性樹脂の吸水性能低下を防ぐための幾つかの手法(特許文献1、2等)が提案されている。特許文献1は、イオン型吸水性樹脂とノニオン型吸水性樹脂をブレンドしたものである。特許文献2は、吸水性樹脂に、廃液中に含まれる電解質のイオン強度を低下させる物質、例えばキレート剤、イオン交換性樹脂、イオン感応物質等を配合したものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法では、ノニオン型吸水性樹脂は電解質の影響は受け難いものの、元々の吸水速度が遅いため、廃液を固化するためには、多量の固化時間が必要とするか、吸水性樹脂を多く使用する必要がある。更に、二種類の吸水性樹脂をブレンドする工程も必要となり、ブレンドの不均一の問題や、製造価格アップに繋がる。更に、特許文献1、2等で電解質による吸水性樹脂の吸水性能低下を防いだとしても、廃液の固化方法(容器の形状や固化剤の投入方法)によっては更に大きな問題を有していた。具体的には、廃液の固化方法として、種々の容器形状(縦長、横長等)や固化剤の投入方法(廃液への一括投入/分割投入、溶液への前投入/後投入)等が提案されているが、処理スペースの観点から廃液を縦長の容器に収容する場合が挙げられる。
【0005】
即ち、縦長の廃液容器に溜まった廃液、特に医療廃液を固化するために、吸水性樹脂を一括で廃液に投入した場合、両者の比重差から殆どの吸水性樹脂は浮遊することなく容器底部に沈み、その後に上部廃液に向かって固化が進行する。このため、固化終了後の吸水性樹脂の分布は、容器底部では高濃度で分布し、吸水性樹脂の一部はママコの様な状態となってしまい、全ての吸水性樹脂が使われていない状態となってしまうことがある。そのため容器上部では廃液を吸液するのに必要な吸水性樹脂濃度が低くなり、廃液容器上部では十分な固化状態に至り難いという、固化の不均一の問題があった。その結果、廃液の固化方法として、縦長の廃液容器に入った廃液に固化剤を一括で投入する場合、廃液全体を固化するためには、特許文献1、2等での電解質による吸水性樹脂の吸水性能低下を防いだり、あるいは吸水性樹脂の吸水倍率を高くするだけでは無理があり、一般的な吸水性樹脂を固化剤として用いる場合、固化時間が長くなるか、多量の廃液固化剤が必要であった。
【0006】
そのため、特許文献3においては吸水性樹脂を含む廃液固化剤に疎水性物質を混合することによって、廃液固化剤の一部が浮遊し、かつ残りが沈降するものとする事によって固化時間が短縮される事が提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法によっても未だ固化剤が浮遊状態をうまく保つ事ができない等のためか、廃液の固化時間としては依然長く不十分なものであるか、依然として固化に比較的多くの固化剤を必要とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−119853号公報
【特許文献2】特開平11−169451号公報
【特許文献3】特表2007−538110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、廃液、特に血液や体液等を含有した医療廃液を、安価に、均一に、極めて短時間に、または比較的少ない使用量で固化させることができる廃液固化剤を提供することにある。特に縦長の廃液容器にて、廃液、特に血液や体液等を含有した医療廃液を均一に、極めて短時間に固化させることができる廃液固化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来のような電解質による吸水性樹脂の吸水性能低下を防止したり、更には固化剤の廃液への浮遊と沈降の割合を調整してもなお固化時間に改良の余地があると考え、より最適な固化挙動を示す廃液固化剤を鋭意検討した。
【0011】
その結果、本発明者は、廃液を均一に、短時間に固化するためには、吸水性樹脂を含む廃液固化剤が、一部が沈降し、一部が浮遊するものとし、浮遊した廃液固化剤の少なくとも一部が沈降しながら膨潤し、かつ浮遊した廃液固化剤の少なくとも一部が沈降する事無く浮遊したまま膨潤する事により、容器の上下からの固化のバランスを最適な状態とすることで固化時間が著しく短縮されたり、または使用量低減につながることを見出し、そして、このためには、廃液固化剤が、粒度が特定範囲に調整された吸水性樹脂に特定の性状を示す疎水性物質と親水性物質を含むものであることが必要であることを見出し、上記課題を解決した。
【0012】
即ち、本発明の廃液固化剤は、廃液に固化剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法に用いられる粒子状の前記固化剤であって、
重量平均粒子径が200μm以上350μm以下である吸水性樹脂と、吸水性樹脂に対して0.05重量%以上5重量%以下のメタノール指数が100以上である疎水性物質と親水性物質を含む廃液固化剤である。
【0013】
または、本発明の廃液固化剤の製造方法は、廃液に処理剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法に用いられる粒子状の前記固化剤の製造方法であって、該製造方法は、アクリル酸とその塩を主成分とする単量体を重合することによって得られる、架橋構造を有し、かつその表面が架橋処理された吸水性樹脂粒子に対し、0.05〜5.0重量%のメタノール指数が100以上である疎水性物質と0.3重量%以上3.0重量%以下の親水性物質を混合する工程を含み、前記吸水性樹脂粒子は重量平均粒子径が200μm以上350μm以下に調整されていることを特徴とする、廃液固化剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、廃液を固化するにあたり、上下いずれからもゲルの成長が生じることから固化時間を著しく短縮することができる。本発明の廃液固化剤は、特定の吸水性樹脂粒子、特定の疎水性を有する物質と親水性物質から得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
(I)吸水性樹脂
まず、本発明における吸水性樹脂について説明する。本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、以下の物性を満たすものをいう。即ち、水膨潤性としてERT441.2−02で規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上で、かつ、水不溶性としてERT470.2−02で規定されるExt(水可溶分)が50重量%以下を満たす高分子ゲル化剤を指す。
【0017】
上記吸水性樹脂は、その用途・目的に応じて、設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量が架橋重合体である形態に限定されず、上記物性(CRC、Ext)を満たす範囲内で、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
【0018】
更に、本発明における吸水性樹脂は、出荷前の最終製品(吸水剤や吸水材と呼称する事もある)に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、粉砕後の粉砕重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もあり、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。
【0019】
本発明では、吸水性樹脂として、吸収特性の観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂の1種又は混合物が必須に用いられるが、吸水速度の観点から、好ましくは、酸基、特にカルボキシル基含有の水溶性エチレン性不飽和単量体から得られる吸水性樹脂であるのがよく、より好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする単量体を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体がよい。また、酸基含有の水溶性エチレン性不飽和単量体から得られる吸水性樹脂を用いる場合、耐塩性の向上等のため、ポリエチレンオキサイド架橋体等のノニオン性吸水性樹脂や、ポリエチレンイミン架橋体等のカチオン性の吸水性樹脂を併用しても良い。
【0020】
(1)水溶性エチレン性不飽和単量体
水溶性エチレン性不飽和単量体(以下単に単量体と略す)としては、アクリル酸及び/又はその塩を主成分として使用することが好ましいが、その他の単量体を併用してもよいし、その他の単量体を主成分として吸水性樹脂を得ても良い。アクリル酸以外で前記単量体としては、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等の酸基含有不飽和単量体、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、水溶性でないもの(疎水性不飽和単量体)も共重合成分とすることもできる。
【0021】
本発明でアクリル酸(塩)を用いる場合には、該アクリル酸(塩)以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸及びその塩との合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%の割合であることが好ましい。この範囲であれば、固化時間に加えて、抗菌や消臭等といった別の機能を付与すると共に、より一層安価に廃液固化剤を得ることができる。なお、単量体に酸基含有の不飽和単量体を使用する場合、固化時間の観点から、少なくとも一部が中和されていることが好ましく、その塩としてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。得られる吸水性樹脂の性能、工業的入手の容易さ、安全性等の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。酸基の中和率(全体の酸基のうちで中和された酸基のモル%)は、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは30〜90モル%、更に好ましくは40〜80モル%である。上記塩を形成するためには単量体の状態で中和してもよく、未中和単量体と中和された単量体を混合してもよく、また、単量体の重合途中又は重合後に重合体として中和しても良く、それらを併用しても良い。
【0022】
(2)架橋性単量体(内部架橋剤)
吸水性樹脂は架橋構造を必須とする。吸水性樹脂としては、架橋性単量体を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、一分子中に、2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する架橋性単量体(吸水性樹脂の内部架橋剤とも言う)を共重合又は反応させたものが更に好ましい。内部架橋剤は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよいし、また、重合前、重合中、重合後の反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。少なくとも1種又は2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水性樹脂や廃液固化剤の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0023】
本発明で使用される内部架橋剤として、米国特許第6241928号に記載された化合物が本発明にも適用される。これらの中から反応性を考慮して1種又は2種以上の化合物が選択される。
【0024】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.0001〜10モル%、より好ましくは0.001〜1モル%である。該使用量を上記範囲内とすることで所望する吸水性樹脂が得られる。なお、該使用量が少なすぎる場合、ゲル強度が低下し水可溶分が増加する傾向にあり、該使用量が多すぎる場合、吸水倍率が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0025】
本発明では、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加しておき、重合と同時に架橋反応する方法が好ましく適用される。一方、該手法以外に、重合中や重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法や、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を用いた放射線架橋する方法等を採用することもできる。また、これらの方法を併用することもできる。
【0026】
(3)重合開始剤
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、又はこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号に開示された重合開始剤のうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が使用される。
【0027】
該重合開始剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001〜1モル%、より好ましくは0.001〜0.5モル%である。また、該還元剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.0001〜0.02モル%である。
なお、上記重合開始剤に代えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤を併用してもよい。
【0028】
(4)重合方法
本発明に適用される重合方法としては、特に限定されないが、吸水特性や重合制御の容易性等の観点から、好ましくは噴霧液滴重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、逆相懸濁重合、更に好ましくは水溶液重合が挙げられる。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、連続ベルト重合、連続ニーダー重合の何れでも適用される。
【0029】
具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号、同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
【0030】
また、上記連続水溶液重合の好ましい形態として、「高温開始重合」や「高濃度重合」が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する形態をいい、「高濃度重合」とは、単量体濃度を好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う形態をいう。これらの重合形態を併用することもできる。
【0031】
また、本発明においては、空気雰囲気下で重合を行うこともできるが、得られる吸水性樹脂の色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合を行うことが好ましい。この場合、例えば、酸素濃度を1容積%以下に制御することが好ましい。なお、単量体水溶液中の溶存酸素についても、不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素;1mg/l未満)しておくことが好ましい。また、本発明では、単量体水溶液に気泡(特に上記不活性ガス等)を分散させて重合を行う発泡重合とすることもできる。
【0032】
(5)乾燥工程
前述の重合後に得られる吸水性樹脂は、通常は含水ゲル状架橋重合体であり、必要に応じて乾燥し、乾燥の前及び/又は後で通常粉砕される。
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められ、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85〜99重量%、更に好ましくは90〜98重量%、特に好ましくは92〜97重量%である。
【0033】
上記粒子状含水ゲルの乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。
【0034】
上記熱風乾燥における乾燥温度(熱風の温度)としては、吸水性樹脂の色調や乾燥効率の観点から、好ましくは120〜250℃、より好ましくは150〜200℃である。なお、熱風の風速や乾燥時間等、上記乾燥温度以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総重量及び目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。
上述した乾燥温度や乾燥時間を上記範囲とすることで、得られる吸水性樹脂のCRC(吸水倍率)やExt(水可溶分)、色調を所望する範囲とすることができる。
【0035】
(6)粉砕、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。
【0036】
本発明の粉砕工程で使用される機器としては、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、必要により併用される。
【0037】
また、本発明の分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程、分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)、その他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)で適宜実施できる。
【0038】
(7)表面架橋処理(単に表面架橋とも言う)
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、加熱処理工程及び冷却工程(任意)から構成される。
【0039】
該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
【0040】
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機又は無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。例えば、米国特許7183456号に開示される1種又は2種以上の表面架橋剤が挙げられる。より具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物、環状尿素化合物等が挙げられる。
【0041】
該表面架橋剤の使用量(複数使用の場合は合計使用量)は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部である。また、該表面架橋剤は水溶液として添加することが好ましく、この場合、水の使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。更に必要に応じて、親水性有機溶媒を使用する場合、その使用量は、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0042】
また、吸水性樹脂が逆相懸濁重合で得られる場合には、重合終了後に共沸脱水途中及び/又は共沸脱水終了時において、例えば、吸水性樹脂の含水率が好ましくは5〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜30重量%で上記表面架橋剤を疎水性有機溶媒中に分散させることにより、表面が架橋処理された吸水性樹脂を得ることができる。
【0043】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は好ましくは加熱処理される。上記加熱処理を行う際の条件としては、吸水性樹脂の温度又は熱媒温度は通常60〜280℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜240℃であり、加熱時間は好ましくは1分〜2時間である。
【0044】
(8)造粒工程
本発明の廃液固化剤に用いられる吸水性樹脂(前述のようにして、表面に架橋処理をして得られた吸水性樹脂) は、迅速かつ均一な廃液固化や少量での廃液固化という効果を達成する上で、後述の特定粒度(後述の廃液固化剤の粒度に記載)に調整されることが好ましい。
【0045】
さらに、吸水性樹脂や廃液固化剤の粒子径は、目的やその必要に応じて、不溶性微粒子や親水性溶媒、好ましくは水を添加混合してさらに造粒することにより調整してもよい。造粒されることで固化時間が短縮され、さらに後述の浮遊も調整されうる。前述した表面架橋とともに造粒を行う場合、造粒は、表面架橋と同時に行っても良いし、別途行っても良い。造粒の際の結合剤としては、水や多価アルコールが好ましく使用される。
【0046】
不定形造粒物の製造方法としては、例えば、(1)特開平11−106514号公報に記載の方法、つまり、吸水性樹脂微粉末(150μm以下)に予め加熱した水性液を短時間で高速混合した後に、乾燥を施し、粉砕することにより、不定形造粒物を得る方法、(2)上記(1)で得られた不定形造粒物の表面近傍の架橋を行う方法、等が挙げられる。さらに、(3)表面近傍の架橋を行った吸水性樹脂と室温の水性液とを混合した後で、必要に応じて乾燥粉砕し粒度調整する方法等も挙げられる。
【0047】
さらに、逆相懸濁重合を行う場合、重合時ないし重合後に分散した含水重合ゲルを凝集
させて造粒してもよい。逆相の凝集による造粒には無機微粒子(例えば、親水性シリカ微粒子)の添加(米国特許4732968号)や、2段重合(欧州特許807646号)が用いられる。
【0048】
造粒の有無は、その前後での粒度の増大や微粒子量の低減、さらに、生成物(吸水性樹脂や廃液固化剤) の顕微鏡写真などで容易に確認できる。
【0049】
(II)疎水性物質
次に、本発明における疎水性物質について説明する。本発明で用いられる廃液固化剤で使用される疎水性物質は、水不溶性又は水難溶性物質であって安定的に非吸水性(非水膨潤性)である非揮発性の疎水性物質である。非吸水性(非水膨潤性)とは、後述する吸水倍率(CRC)が1g/g以下、好ましくは0.5g/g以下であることを意味する。
【0050】
(メタノール指数)
本発明においては、疎水性の指標としてメタノール指数も用いる。メタノール指数とは25℃の純水50mlに疎水性物質1gを添加した場合に、この疎水性物質が固体である場合、これを湿潤するために必要な25℃メタノール容量(ml)、又は、この疎水性物質が液体である場合、これを分散及び/又は乳化するために必要な25℃メタノール容量(ml)をいう。
【0051】
疎水性物質とは、疎水性基を分子中に含む物質であり、疎水性基としては鎖状炭化水素、芳香族炭化水素が主に用いられ、炭化水素鎖が長くなるにつれて疎水性が増加する。この他に、ハロゲン化アルキル基(RX−)、オルガノシリコン基(例:RSi(CH3)2−)、フッ化炭素基(例:CnF2n+1)等もこれに属する。
【0052】
疎水性物質が、粉末である場合、疎水性物質の粒径は特に限定されるものではないが、通常、吸水性樹脂の重量平均粒子径よりも小さく、粉末の90〜100重量%は200μm以下であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは10μm以下のものが使用される。なお、該疎水性物質の添加方法や添加量については、「(III)廃液固化剤の製造方法」の項で後述する。なお、粒径の下限は通常0.001μm程度である。これらの疎水性物質は吸水性樹脂に残存ないし固定化される必要があり、よって、室温(25℃)常圧で固体ないし非揮発性の物質が用いられる。ここで非揮発性とは常圧での沸点が必須に150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは300℃以上の物質であり、好ましくは固体が用いられ、その融点は、25℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは100℃以上である。揮発性物質を用いる場合、吸水性樹脂への固定化が困難になり、更に臭気の問題が発生する場合もある。
【0053】
上記疎水性物質としては、例えば、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、金属石鹸、シリコン系化合物、界面活性剤、熱可塑性樹脂等を挙げることが出来る。
【0054】
(炭化水素)
炭化水素としては、メタノール指数が100以上が好ましく150以上がより好ましく150以上が更に好ましく用いられるが、例えば低分子量ポリエチレン(例えば、分子量1,500〜2,000程度)等を用いることができる。なお、住友精化株式会社製微粉末ポリエチレン(フローセンF−1.5)のメタノール指数は、200以上である。
【0055】
(脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル)
脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルはカルボキシル基あるいはカルボキシ基由来のエステル構造、アミド構造を有するため特にアクリル酸(塩)を原料とする吸水性樹脂に混合した場合に吸水性樹脂との親和性が高く、吸水性樹脂表面からの脱落等が生じにくいことから疎水化処理剤として好ましく用いられる。これらの中でもメタノール指数が100以上が好ましく150以上がより好ましく150以上が更に好ましく用いられるが、炭素数が12(C12)以上の脂肪酸、及び炭素数が12(C12)以上の脂肪酸からなる脂肪酸アミド、脂肪酸エステルであることが好ましい。脂肪酸としては、具体的には、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等を挙げることが出来る。なお、ステアリン酸(和光純薬工業株式会社製)のメタノール指数は、100である。但し、該メタノール指数の測定に際しては、ステアリン酸として乳鉢で磨り潰した後、JIS200μmふるいで通過した粉末を使用した。脂肪酸アミドとしては、具体的には、例えば、ステアリルアミド、パルチミルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミド等を挙げることが出来る。なお、エルカ酸アミド(東京化成工業株式会社製)のメタノール指数は、150である。但し、該メタノール指数の測定に際しては、エルカ酸アミドとして乳鉢で磨り潰した後、JIS200μmふるいで通過した粉末を使用した。
【0056】
脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、ステアリルステアレート、ステアリン酸メチル、硬化ひまし油、エチレングリコールモノステアレートが挙げられる。なお、ステアリルステアレート(商品名ユニスターM−9676日本油脂株式会社製)のメタノール指数は、150である。但し、該メタノール指数の測定に際しては、ステアリルステアレートとして乳鉢で磨り潰した後、JIS200μmふるいを通過した粉末を使用した。
【0057】
(金属石鹸)
金属石鹸は、有機酸である脂肪酸、石油酸、高分子酸等のアルカリ金属塩以外の金属塩からなる。金属石鹸を構成する有機酸としては、カプロン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の長鎖又は分枝の脂肪酸、安息香酸、ミリスチシン酸、ナフテン酸、ナフトエ酸、ナフトキシ酢酸等の石油酸、ポリ(メタ)アクリル酸やポリスルホン酸等の高分子酸が例示できるが、分子内にカルボキシル基を有する有機酸であることがアクリル酸(塩)を原料とする吸水性樹脂に混合した場合に吸水性樹脂との親和性が高く、吸水性樹脂表面からの脱落等が生じにくいことから疎水化処理剤として好ましく、より好ましくはカプロン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、牛脂肪酸や、ヒマシ硬化脂肪酸等の脂肪酸である。更に好ましくは、分子内に不飽和結合を有しない脂肪酸で、例えばカプロン酸、オクチル酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。最も好ましくは、炭素数が分子内に12個以上の分子内に不飽和結合を有しない長鎖脂肪酸で例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸である。
【0058】
分子内に不飽和結合を有する脂肪酸を用いた場合でも、本発明の課題を達成することは可能であるが、これらを用いた廃液固化剤は貯蔵時において熱や酸化を受けた場合、着色や臭気等を発生させるおそれがある。上記有機酸としては、分子内に炭素数が7個以上含むものを用いることが好ましい。分子内に炭素数が7個未満の有機酸を使用した場合、該疎水性物質の水への溶解度が高くなり、血液や体液を含有した医療廃液に溶出するおそれがあるので好ましくない。また、分子内に炭素数が7個未満の例えばシュウ酸やクエン酸のような有機酸を用いた場合、これらの金属塩の硬度が高いため、例えば、機械的衝撃力を受けた場合等には吸液特性の低下を招くおそれがある。
【0059】
上記金属石鹸を構成する金属塩は、アルカリ土類金属塩や、遷移金属塩等のアルカリ金属塩以外の金属塩であれば特に限定するものではなく、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、カドミウム塩、アルミニウム塩、スズ塩、鉛塩を挙げることが出来る。中でも、その入手の容易さからバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が好ましく、カルシウム塩、亜鉛塩が最も好ましい。また金属石鹸を構成する上記有機酸と上記金属塩との組み合わせについては、特に限定されるわけではなく、またそれらを単独及び/又は二種以上を併用しても良い。
【0060】
なお、有機酸に例えばポリアクリル酸のような高分子酸を用いる場合は、該高分子酸が有するカルボキシル基の95モル%以上が該多価金属と塩を形成していることが好ましく、より好ましくは98モル%以上、更に好ましくは99モル%以上である。また、使用する高分子酸の分子量は通常、重量平均分子量で35000以上、好ましくは50000以上のものが用いられる。なお、トリステアリン酸アルミニウム(関東化学株式会社製鹿1級)のメタノール指数は、150、ステアリン酸亜鉛(関東化学株式会社製鹿1級)のメタノール指数は200以上である。
【0061】
(シリコン系化合物)
シリコン系化合物は、例えば親水性二酸化珪素のシラノール基(Si−OH)にシリコン化合物(ヘキサメチレンシラザン、モノメチルトリクロロシラザン、ジメチルジクロロシラン、シリコンオイル等)を付加させた疎水性二酸化珪素化合物等が挙げられるが特に限定されるものではない。
【0062】
(界面活性剤)
界面活性剤は、親水性原子団と親油性原子団を同時に持つ物質である。親水性原子団としては、−COO−、−OSO3−等のイオン性のものと、ポリオキシエチレン鎖等の非イオン性のものがある。親油性原子団としては、アルキル基、アルキルアリル基等の直鎖状又は環状化合物がある。また、疎水性かつ疎油性の原子団として、パーフルオロアルキル基等のフッ素含有化合物がある。界面活性剤を構造的に見ると、イオンに解離するイオン性界面活性剤と、イオンに解離しない非イオン性界面活性剤があり、イオン性界面活性剤は、水溶液の状態で解離するときの電荷の種類によって、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤に分類できるが特に限定されるものではない。なお、フッ素系界面活性剤としては、ノニオン性のものとして商品名DS−403パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物;ダイキン工業株式会社製、カチオン性のものとして商品名フタージェント300;株式会社ネオス製があげられる。
【0063】
(III)親水性物質
本発明においては疎水性物質と共に親水性物質も使用する事がより好ましい形態である。本発明において(II)疎水性物質に記載した疎水性物質は、水あるいは水系廃液よりも密度が大きく本来沈降する吸水性樹脂(真密度が約1.6g/cm前後)を疎水化する事によって廃液に浮遊させる効果を有するが、その疎水化によって廃液を吸収してゲル化(固化)する速度を減じてしまうという好ましくない効果も有する。親水性物質と疎水性物質をいずれも表面近傍に付着させる事によって、本発明の効果を増す事ができる。この付着工程は親水性物質と疎水性物質をそれぞれ別の工程で付着させても、同じ工程で付着させても良い。それぞれに最適な付着条件があるため、別の工程でそれぞれ付着させることが好ましい。
【0064】
親水性物質は具体的には、例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等の無機化合物、その他の有機化合物等が挙げられる。このうち、二酸化珪素がより好ましく、例えば、日本アエロジル社製のアエロジル200の様な微粒子状のシリカが更に好ましい。その含有量は、本発明の固化剤に求められる廃液中での挙動を示す様に調整する必要があるが、吸水性樹脂及び/又は廃液固化剤100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量以上、更に好ましくは0.5重量部以上であり、上限値として好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。
【0065】
吸水性樹脂及び/又は廃液固化剤と親水性物質、好ましくは無機粉末の混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば粉体同士を混合するドライブレンド法、湿式混合法等を採用できるが、ドライブレンド法がより好ましい。
【0066】
(IV)廃液固化剤の製造方法
本発明の廃液固化剤の製造方法は、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合することによって得られる架橋構造を有する吸水性樹脂粒子と疎水性物質を混合する工程を含む製造方法であり、更に親水性物質を混合する工程を有する事が好ましく、あるいは親水性物質と疎水性物質を同時に混合する工程を含む。
【0067】
本発明の廃液固化剤の製造方法において、疎水性物質を混合する工程、あるいは親水性物質を混合する工程、あるいは疎水性物質と親水性物質とを混合する工程は、疎水性物質、あるいは親水性物質、あるいは疎水性物質と親水性物質とのいずれもを該吸水性樹脂を実質固定化することができるものであれば、その製法は特に限定されるものではないが、例えば、以下1〜7の何れかの方法が挙げられる。
【0068】
1.吸水性樹脂の重合時に内部架橋剤を含む単量体溶液に疎水性物質あるいは親水性物質あるいは疎水性物質と親水性物質のいずれもを分散させて重合して、必要に応じて乾燥粉砕して得た該吸水性樹脂の表面近傍に表面架橋処理をして粒子状廃液固化剤を製造する方法。
【0069】
2.吸水性樹脂の重合時に内部架橋剤を含む単量体溶液を重合して必要に応じて乾燥粉砕して吸水性樹脂を得た後に、疎水性物質あるいは親水性物質あるいは疎水性物質と親水性物質のいずれもを添加混合し、さらにその表面近傍に表面架橋処理をして粒子状廃液固化剤を製造する方法。
【0070】
3.吸水性樹脂の重合時に内部架橋剤を含む単量体溶液を重合して必要に応じて乾燥粉砕して吸水性樹脂を得た後に、その表面近傍を表面架橋処理する際に表面架橋剤に疎水性物質あるいは親水性物質あるいは疎水性物質と親水性物質のいずれもを分散させて廃液固化剤を製造する方法。
【0071】
4.吸水性樹脂の重合時に内部架橋剤を含む単量体溶液を重合して必要に応じて乾燥粉砕して得た吸水性樹脂の表面近傍に表面架橋処理をして吸水性樹脂を得た後、疎水性物質あるいは親水性物質あるいは疎水性物質と親水性物質のいずれもを添加混合して廃液固化剤を製造する方法。
【0072】
5.吸水性樹脂の重合時に内部架橋剤を含む単量体溶液を重合して必要に応じて乾燥粉砕した後に、該吸水性樹脂の表面近傍に表面架橋処理をして吸水性樹脂を得た後の冷却工程にて疎水性物質あるいは親水性物質あるいは疎水性物質と親水性物質のいずれもを添加混合して廃液固化剤を製造する方法。
【0073】
上記1〜5の製法において、上記1における吸水性樹脂の重合時に、単量体に疎水性物質あるいは親水性物質あるいは疎水性物質と親水性物質のいずれもを添加しても良いが、該吸水性樹脂の表面に該疎水性物質が均一に付着した状態を実現するために、上記2〜5の方法が好ましい。
【0074】
本発明に用いられる疎水性物質及び親水性物質とは、前述した通りであり、実質固定化、好ましくは、吸水性樹脂表面に付着することにより、固化剤を廃液に投入した場合、固化剤の一部が廃液に沈降し、一部が上面に浮遊し、浮遊した固化剤の少なくとも一部が沈降しながら膨潤し、かつ浮遊した廃液固化剤の少なくとも一部が浮遊したまま膨潤するものである。
【0075】
つまり、吸水性樹脂の真密度はその単量体にもよるが、アクリル酸ナトリウムからの重合体の場合、約1.6g/cm前後であり、その真密度から2.5重量%の塩化ナトリウム水溶液(密度・約1.0g/cm)に浮遊することはないが、疎水性物質を用いる事によって、真密度1.6g/cm3の吸水性樹脂又は吸水性樹脂を主成分とする固化剤が、2.5重量%の塩化ナトリウム水溶液(密度・約1.0g/cm)に少なくとも一部が浮遊するようになる。
【0076】
単に廃液に浮遊させるだけであれば疎水性を強くすると達成できるが、疎水性が強すぎる場合、廃液は廃液に接液した部分の固化剤にしか吸収されず、接液部分の固化剤のみが多く膨潤する。この事から接液部分の固化剤のみが見掛け密度が急激に増大し親水性も急激に高くなる事から接液部分の一部の固化剤が浮遊状態が維持できずに浮遊固化剤層から剥がれ落ちて沈降する。この繰り返しにより、疎水性が強すぎる場合には固化剤の膨潤と浮遊の両立が生じず、廃液のゲル化は沈降した固化剤による底部からの固化(ゲル化)によってなされる事となり、固化時間が長くなるか、固化が生じない。
【0077】
固化剤層を浮遊させたまま膨潤させるためには浮遊した固化剤層において接液部分のみならず、固化剤層内部まで廃液がある程度浸透して固化剤層全体が緩やかに膨潤する事により、浮遊した固化剤層の見掛け密度の急激な増大と疎水性の急激な低下(親水性の急激な上昇)を防ぐ事によって、接液部分の固化剤の剥落を防止し固化剤層が浮遊したまま膨潤(ゲル化)する事が好ましい。
【0078】
一般的に同じ物質であれば、粒子径が大きいほど沈降しやすく、粒子径が大きい固化剤を浮遊させるには疎水性を強くする必要がある。しかし、疎水性を強くしすぎると上記の理由により接液部のみに膨潤(ゲル化)が生じて接液部分のみ沈降するために浮遊状態が維持できない。即ち、粒子径が大きすぎる場合、固化剤が浮遊する事と浮遊したまま膨潤する事のバランスを取る事は困難である。一方、粒子径を小さくすれば、沈降のしやすさが減じられるため、浮遊させる為の疎水性の程度を小さくすることができ、浮遊した固化剤層に廃液が浸透する程度の比較的弱い疎水性の付与で固化剤の浮遊を生じさせる事ができる。また、これらの挙動は、吸水性樹脂の吸水倍率によっても変化し、さらに比較的吸水倍率の高い領域では親水性物質を特定量用いることで、均一に、極めて短時間に、または比較的少ない使用量で固化させることができる事を見出した。
【0079】
これらの知見から、本発明の特徴である、固化剤の一部が沈降し、一部が浮遊し、浮遊した固化剤の少なくとも一部が沈降しながら膨潤し、かつ浮遊した廃液固化剤の少なくとも一部が浮遊したまま膨潤する固化剤に含まれる吸水性樹脂において、沈降と浮遊のバランスを取る事ができる好適な物性範囲が存在する。
【0080】
具体的には吸水性樹脂の重量平均粒子径(D50)の下限値が好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上であり、上限値としては好ましくは350μm以下、より好ましくは300μm以下の吸水性樹脂が固化剤に含まれることが好ましい形態である。そして固化剤に含まれる前記吸水性樹脂の吸水倍率が好ましくは30g/g以上、より好ましくは34g/g以上、更に好ましくは40g/g以上、特に好ましくは45g/g以上であることが好ましい形態である。吸水倍率が低すぎると必要とされる固化剤の量が多くなり、また固化時間が長くなる。また、固化剤に含まれる前記吸水性樹脂には吸水性樹脂に対して親水性物質が0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、更に好ましくは0.5重量部以上含まれ、上限値としては好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、更に好ましくは1重量部以下含まれることが好ましい形態である。
【0081】
また、粒度分布については吸水性樹脂全体に対する150μm以上350μm以下の範囲にある吸水性樹脂の割合が好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上であり、更に好ましくは30重量%以上であり、最も好ましくは35重量%以上である。
【0082】
また、疎水性物質に加えて親水性物質を併用する事は、疎水性を維持しながら廃液を浮遊した固化剤層に浸透させ膨潤を生じさせるために好ましい形態である。これは、固化剤に含まれる吸水性樹脂表面に疎水部分と親水部分を両方備えることにより、疎水部分が固化剤の浮遊に寄与し、親水部分が廃水の通り道となって膨潤速度の向上と、浮遊した固化剤層が全体的に膨潤(ゲル化)する事によって浮遊した固化剤層の接液部のみの見掛け密度の急激な上昇を防ぎ固化剤層が浮遊状態を保ったまま膨潤する本発明の形態がより好ましく達成されると考えられる。
【0083】
(混合方法)
本発明で用いる該疎水性物質が粉体である場合、疎水性物質を粉体そのままで吸水性樹脂に例えばドライブレンド法のように直接混合させる方法や、あるいは上記表面架橋剤と水及び必要に応じて親水性有機溶媒が混合された表面架橋剤溶液に該疎水性物質をスラリー状に分散させて吸水性樹脂に混合する手法や、水や親水性有機溶媒中に該疎水性物質をスラリー状に分散させて吸水性樹脂に混合する手法が用いられる。
【0084】
該疎水性物質をスラリー状で分散させて吸水性樹脂に混合する場合、必要により用いる水、又は水と親水性有機溶媒からなる水性液等の添加量は、吸水性樹脂の種類や粒度によってその最適量は異なるが、通常、水の場合、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは1〜5重量部の範囲である。また使用される親水性有機溶媒の量は、同様に通常、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。また、そのスラリー中の該疎水性物質濃度は使用する該疎水性物質や分散溶媒の種類、スラリーの粘性により適宜選択され、特に限定されるものではないが、通常0.001〜30重量%、好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。
【0085】
該疎水性物質と混合する際の吸水性樹脂の粉体温度は通常室温以上で混合されるが、粒子状廃液固化剤の安定した吸液特性や吸湿時の流動性を得るためには、好ましくは40〜180℃、より好ましくは50〜100℃で混合される。
【0086】
本発明の廃液固化剤の製造方法において、該疎水性物質の添加量は、廃液中の血液濃度等によっても異なるが、疎水性物質の含有量は、吸水性樹脂に対して、好ましくは0.05重量%(500ppm)以上、より好ましくは0.06重量%(600ppm)以上であり、上限値としては好ましくは5.0重量%(50000ppm)以下、より好ましくは3重量%(30000ppm)以下、さらに好ましくは1重量%(10000ppm)以下である。疎水性物質添加量が0.05重量%(500ppm)未満であれば、廃液固化剤を廃液へ投入した際の浮きが不十分であり、この結果、廃液固化剤の沈降が速くなるために底部からの固化が主として生じることから廃液全体を固化するまでの時間が長くなるか、あるいは固化が生じない状態となる。一方で、疎水性物質の添加量が50000ppmを超える場合、廃液固化剤を廃液へ投入した際に浮遊している固化剤が浮いたまま膨潤しないか、固化剤が廃液との接液部からのみ膨潤し、底部からの固化がほとんど生じないため、上部からの固化、即ち浮遊した固化剤が浮いたまま膨潤して上からゲル層が底部まで成長する事が十分に進行しないことから廃液全体が固化するまでの時間が長くなるか、あるいは固化が生じない状態となる。
【0087】
本発明において吸水性樹脂と疎水性物質を含んだ液体、粉末及び/又はスラリー溶液とを混合する場合に使用する装置としては、通常の装置でよく、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機等を挙げることができ、混合の際の速度は高速、低速を問わない。なお、こられの混合機は前記の吸水性樹脂の表面架橋での表面架橋剤の混合にも使用できる。
【0088】
(その他物質)
本上記の本発明に係る廃液固化剤の製造方法においては、本発明の効果を阻害しない範囲で更に、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、タンパク架橋剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミン等の親水性高分子、ポリエステル樹脂やユリア樹脂等の熱硬化性樹脂等を添加する等、種々の機能を付与する工程を含んでいてもよい。これらの疎水性又は親水性物質の使用量は吸水性樹脂100重量部に対して通常0〜30重量部、好ましくは0〜10重量の範囲、より好ましくは0〜1重量部の範囲である。
【0089】
上記の各構成によれば、血液や体液等を含有した医療廃液の固化時間を著しく短縮させることができる。特に、縦長の廃液容器にて、血液や体液等を含有した医療廃液の固化時間を著しく短縮させることができる。
【0090】
(IV)廃液固化剤
上記製法を一例として得られる本発明の廃液固化剤は、廃液に処理剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法に用いられる粒子状の前記処理剤であって、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合することによって得られる架橋構造を有する吸水性樹脂を必須とし、2.5重量%塩化ナトリウム水溶液に一括で投入した際、一部が沈降し、一部が浮遊し、浮遊した固化剤の少なくとも一部が沈降しながら膨潤し、かつ浮遊した固化剤の少なくとも一部が浮遊したまま膨潤することを特徴とする廃液固化剤である。
【0091】
また、本発明の廃液固化剤の好ましい態様は、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合することによって得られる架橋構造を有する吸水性樹脂を必須とする粒子状廃液固化剤であって、吸水性樹脂に加えて、疎水性物質、親水性物質を更に含む、廃液固化剤である。
【0092】
これらの廃液固化剤は、前記疎水性物質の吸水性樹脂に対する含有量が好ましくは0.05重量%(500ppm)以上、より好ましくは0.06重量%(600ppm)以上、上限値としては好ましくは5重量%(50000ppm)以下、より好ましくは3重量%(30000ppm)以下、さらに好ましくは1重量%(10000ppm)以下であり、また、好ましくは前記疎水性物質が吸水性樹脂表面に存在する。
【0093】
(1)吸水性樹脂の含有量
吸水性樹脂の含有量は廃液固化剤中の通常50〜100重量%、好ましくは70〜99重量%、更に好ましくは80〜98重量%とされ、吸水性樹脂以外の微量成分として好ましくは前記の疎水性物質や親水性物質や水が用いられる。
【0094】
(2)固化時間
本発明の廃液固化剤は、本発明で用いられる該疎水性物質と、親水性物質と、本発明で用いられる該吸水性樹脂を含み、25℃の2.5重量%塩化ナトリウム水溶液3500mlを入れた、軸方向を鉛直として置かれた有効容量3500mlの容器に充填した廃液固化剤120gを一括で投入した時点から、2.5%塩化ナトリウム水溶液全量が2.5%塩化ナトリウム水溶液を吸収した廃液固化剤に置き換わるまでの時間が35分以下であり、好ましくは30分以下、より好ましくは25分以下、更に好ましくは15分以下であり、特に好ましくは10分以下であり、最も好ましくは8分以下である。
【0095】
固化時間が35分を超える場合、固化時間が長すぎて実使用で不便をきたす場合があり、更には固化に至らない場合があり、また、1分未満の場合は固化が不均一となる場合がある。なお、固化時間の測定方法については、実施例で後述する。
【0096】
(3)吸水倍率(CRC)
本発明の廃液固化剤の吸水倍率(CRC)は生理食塩水に対して通常30g/g以上、好ましくは34g/g以上、より好ましくは40g/g以上、更により好ましくは45g/g以上とされる。上限は特に問わないが、通常100g/g程度で十分である。吸水倍率が低い場合、多量の固化剤が必要である上、固化時間も長くなる。吸水倍率は前記の吸水性樹脂の内部架橋及び表面架橋を適宜調整すればよい。吸水倍率(CRC)の測定方法については、実施例で後述する。
【0097】
(4)粒子径
本発明の粒子状廃液固化剤は粒子形状であるが、廃液固化剤は好ましくは850μm未満で106μm以上の粒子が全体の90〜100重量%であり、より好ましくは、95〜100重量%、更には好ましくは98〜100重量%とされる。また、廃液固化剤の重量平均粒子径の下限は好ましくは150μm、より好ましくは200μm、上限は好ましくは350μm、より好ましくは300μmである。平均粒子径が350μmを超えると固化剤が浮遊状態を保ったまま膨潤する状態に制御する事が困難になり、150μmを下回ると粉立ち等から廃液固化の作業環境が悪くなる。粒子径の制御は造粒、粉砕や分級、逆相での重合制御で適宜調整すればよい。また、上記粒子径は吸水性樹脂の段階で調整すればよく、よって、好ましい吸水性樹脂の粒子径でもある。なお、吸水性樹脂や廃液固化剤は造粒されることで、より固化時間が短縮され、浮遊も調整される。
【0098】
106μm未満の粒子が10重量%を超える場合、吸液時に血液や尿等の拡散性が阻害され、また、使用時に空気との接触面積が増加するので廃液固化剤が可溶化しやすくなり、また、廃液に廃液固化剤を投入した際、廃液の液面でいわゆるママコを形成することがあるため好ましくない。850μmを超える粒子が10重量%を超える場合は、廃液固化剤の吸液速度が遅くなるので好ましくない。
【0099】
(5)形状
その形状としては、例えば、米国特許5244735号公報の図1及び2に記載の逆相懸濁重合で得られる球形状及び/又は楕円体状若しくはウインナーソーセージ状の一次粒子形状や、NONWOVENSWORLDOctober−November2000(MarketingTechnologyService,Inc.発行)の75頁の図1に記載の凝集した数珠(agglomeratedbeads)のような球形状粒子及び/又は楕円体状粒子が凝集した一次粒子造粒物の形状、米国特許5981070号公報の図2、3及び4や上記NONWOVENSWORLDOctober−November2000の75頁の図1の結晶体(Crystals)のような、単量体水溶液を重合した含水ゲル状重合体の破砕物に由来する形状である不定形状やその造粒物の形状が挙げられる。
【0100】
本発明の廃液固化剤の形状は、球状の一次粒子、楕円球状(楕円体状)の一次粒子、球形状粒子若しくは楕円体状粒子の造粒物、単量体の粒子を重合して得られる含水ゲル状重合体の破砕物に由来する不定形状、若しくはその造粒物の形状の何れでも良いが、固化時間の短縮や浮遊の調整のために、好ましくは表面架橋と同時又は別途に造粒される。
【0101】
(6)加圧下吸収倍率(AAP)
本発明の廃液固化剤は、固化効率の観点から一定値以上の加圧下吸収倍率を有することも好ましい。荷重が2.06kPa及び/又は4.83kPaの圧力下(荷重下)での加圧下吸収倍率は3g/g以上、好ましくは5g/g以上、より好ましくは10g/g以上、更に好ましくは20g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。加圧下吸収倍率は例えば前記の表面架橋を調整することにより適宜調整すればよい。
【0102】
また、本発明の廃液固化剤は、衝撃力を与えた場合においても加圧下吸収倍率はほとんど低下しないことも好ましい。それにより実使用時にも性能低下が少ないことを特徴とする。
【0103】
(7)吸湿時の流動性
吸湿時の流動性(以下、単に吸湿流動性と略す)とは、例えば25℃相対湿度90%RHといった高湿度の環境放置下でのブロッキング又はケーキング性や粉体としての流動性であり、本発明の廃液固化剤は、廃液固化剤の含水率が通常約10〜30重量%の範囲において、ブロッキング又はケーキングがなく、吸湿流動性の優れた特徴を示す。
また、本発明の廃液固化剤は衝撃力を与えた後でも、その吸湿時の流動性は低下することなく、良好かつ安定した粉体の流動性を示す。
【0104】
(8)粉体特性
本発明の廃液固化剤は吸湿時のみならず、含水率が10%未満においても、付着性が少なく、内部摩擦係数又は内部摩擦角が小さいために、安息角が小さくなり粉体の流動性が優れる特徴を示す。前記粉体特性における内部摩擦係数や内部摩擦角は粉体層の剪断試験から求めることができる。粉体の剪断試験を行う装置としては剪断箱式、リング剪断式、あるいは平行平板式等があり、例えばJenikeShearCell等がある。本発明の廃液固化剤は前記粉体特性を有するため、該廃液固化剤の製造プロセス等で使用するホッパや粉体貯蔵槽等の簡素化に有用となる。
【0105】
(9)かさ密度及び真密度
本発明の廃液固化剤のかさ密度は通常0.30〜2.5g/cm、好ましくは0.50〜0.80g/cm、更に好ましくは0.60〜0.80g/cmであり、真密度は(欧州特許736060号で規定)通常1.1〜2.0g/cm、更には1.2〜1.8g/cmの範囲である。本発明の廃液固化剤は真密度が1.1g/cmを超えていても、水(密度1.0)に浮遊するという特徴を有する。かさ密度や真密度は単量体組成(かさ密度及び真密度、特に真密度)や粒子径の調整で適宜制御される。かさ密度及び真密度が前記範囲から外れると、固化や浮遊の制御が困難になったり、輸送の問題を発する場合がある。
【0106】
(V)廃液固化方法
本発明の廃液固化方法は、廃液に処理剤を投入することによって前記廃液をゲル状に固化させる廃液の処理方法であって、前記処理剤として前述した本発明の廃液固化剤を用いるものである。本発明の廃液固化剤は、飲料廃液、工場廃液、放射線廃液、糞尿廃液等各種の廃液の固化に使用でき、廃液中に有機物や固体分散物等が含まれていてもよく、その迅速かつ均一な固化から、従来の問題を多く抱えた医療廃液の固化に好ましく使用される。廃液とは、廃棄するための水性液又は濾漏した水性液を指す。本発明の固化方法としては、種々の容器形状(縦長、横長等)や固化剤の投入方法(廃液への一括投入/分割投入、廃液への前投入/後投入)等が広く適用できるが、本発明の廃液固化剤は、その迅速かつ均一な固化から、好ましくは縦長容器中の廃液の固化に好ましく使用される。なお、投入には粉体のまま投入してもよいし、水溶性、水壊性ないし透水性の容器ないし袋に廃液固化剤を入れた状態で、投入してもよい。
【0107】
廃液に投入された粒子状廃液固化剤は、一部が沈み、一部が浮遊し、かつ浮遊したまま膨潤することにより、廃液の上下から固化が進行するので、特に、鉛直方向に長い容器を使用した場合、廃液全体が固化するまでの時間を著しく短くすることが可能となる。
【0108】
(VI)廃液固化用包装体
本発明の廃液固化用包装体は、前記本発明の廃液固化剤を包装してなるものであることを特徴とする。本発明の包装体の形状や材質は、特に限定されるものではない。包装体の大きさとしては、10〜3500gの廃液固化剤を密封することができ、その一部を開放して、そこから廃液固化剤を取り出せるものが好ましく、例えば、ポリ広口ビン、水溶性又は透水性の包装体等が挙げられる。ポリ広口ビンとしては、ソフトパッキン付ポリ広口ビン(市販品では、例えば、テラオカ研究機器製カタログ800記載のもの;材質ポリエチレン)等が挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、これらの実施例及び比較例に記載する物性は下記(1)から(2)の方法により測定したものである。また、特に記載ない場合、「部」は重量部(質量部)を意味する。
【0110】
(1)粒度
本発明の吸水性樹脂又は廃液固化剤の粒度(粒度分布、重量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に準拠して測定した。
【0111】
(2)CRC(無加圧下吸水倍率、または単に吸水倍率と呼ぶ)
本発明の吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率、または単に吸水倍率と呼ぶ)は、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
【0112】
(3)固化時間(固化試験)
25℃の2.5重量%塩化ナトリウム水溶液3500mlを入れた、軸方向を鉛直として置かれた有効容量3500mlの容器(上部内径128mm、底部内径102mm、高さ370mm)の上部から、ソフトパッキン付ポリ広口ビン(材質ポリエチレン、テラオカ研究機器カタログ800記載、内容量200cc)に充填した廃液固化剤120gを投入する。廃液固化剤を投入した時点から、2.5重量%塩化ナトリウム水溶液全量が2.5重量%塩化ナトリウム水溶液を吸収した廃液固化剤に置き換わるまでの時間を固化時間とする。ただし、35分以内にゲル化が生じなかった場合はゲル化せずと評価した。
また、固化剤の使用量を減量した場合は、その使用量と固化時間を記録する。
【0113】
[製造例1]
中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム水溶液5500g(単量体濃度38重量%)に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.5gを溶解し、単量体水溶液〔a001〕とした後、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。
次に、内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記単量体水溶液〔a001〕を投入し、液温を30℃に保ちながら反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素が1ppm以下となるように窒素置換した。
続いて、上記単量体水溶液〔a001〕を撹拌させながら、重合開始剤として10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液29.8g及び0.2重量%のL−アスコルビン酸水溶液6.0gをそれぞれ別々に添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。
そして、生成した含水ゲル状架橋重合体〔b001〕をゲル粉砕しながら30〜80℃で重合し、重合開始から17分後に重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して60分後に、含水ゲル状架橋重合体〔b001〕を取り出した。なお、得られた含水ゲル状架橋重合体〔b001〕は、その径が約1〜5mmに細分化されていた。
【0114】
上記細分化された含水ゲル状架橋重合体(1)を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げて載せ、180℃で45分間熱風乾燥して乾燥物〔b011〕を得た。
続いて、乾燥物〔b011〕をロールミルを用いて粉砕し、更に目開きが450μmと106μmのJIS標準篩を用いて分級した。なお、目開き450μmの篩上に残存した粒子は、再度ロールミルで粉砕し、また目開き106μmの篩を通過した粒子(微粉)は、90℃の温水を加えて混合し、その後、上述した乾燥条件及び粉砕条件で処理した。該微粉は粉砕に供された全量に対して13重量%を占めていた。これら一連の操作によって、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末〔A010〕を得た。なお、該吸水性樹脂粉末〔A010〕のCRC(吸水倍率)は41.8[g/g]であった。
【0115】
次いで、上記吸水性樹脂粉末〔A010〕100重量部に対して表面架橋剤水溶液〔c001〕3.33重量部を混合した。なお、該表面架橋剤水溶液〔c001〕は、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、1,4−ブタンジオール0.2重量部、プロピレングリコール0.5重量部及び水2.5重量部からなる。この混合物を195℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより、表面が架橋された吸水性樹脂粒子〔A110〕を得た。なお、該吸水性樹脂粉末〔A110〕のCRC(吸水倍率)は34.0[g/g]であった。
【0116】
吸水性樹脂粒子〔A110〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.5重量部加えて均一に混合することで、吸水性樹脂〔A111〕を得た。
【0117】
[製造例2]
製造例1記載の方法と同様にして得られた乾燥物〔b012〕をロールミルで粉砕し、更に目開きが710μmと106μmのJIS標準篩を用いて分級した。なお、目開き710μmの篩上に残存した粒子は、再度ロールミルで粉砕し、また目開き106μmの篩を通過した粒子(微粉)は、90℃の温水を加えて混合し、その後、上述した乾燥条件及び粉砕条件で処理した。該微粉は粉砕に供された全量に対して10重量%を占めていた。これら一連の操作によって、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末〔A020〕を得た。なお、該吸水性樹脂粉末〔A020〕のCRC(遠心分離機保持容量)は42.5[g/g]であった。
【0118】
次いで、上記吸水性樹脂粉末〔A020〕100重量部に対して表面架橋剤水溶液〔c002〕2.93重量部を混合した。なお、該表面架橋剤水溶液〔c002〕はエチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、1,4−ブタンジオール0.2重量部、プロピレングリコール0.5重量部と、水2.1重量部とからなる。上記の混合物を195℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂粒子〔A220〕を得た。なお、該吸水性樹脂粉末〔A220〕のCRC(吸水倍率)は34.8[g/g]であった。
【0119】
吸水性樹脂粉末〔A220〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで吸水性樹脂〔A221〕を得た。
【0120】
[実施例1]
吸水性樹脂〔A111〕100重量部にステアリン酸亜鉛0.08重量部加えて25℃・相対湿度50%RH下でスリーワンモーター(ヘイドン社製、タイプ600G)を用いて100rpmで25分間攪拌することにより吸水性樹脂〔A112〕を得た。吸水性樹脂〔A112〕を実施例1の固化剤1として固化試験を行い、結果を下記の表1に示す。
【0121】
[実施例2]
実施例1のステアリン酸亜鉛0.08重量部を0.10重量部に替える他は同様の操作を行い吸水性樹脂〔A113〕を得た。吸水性樹脂〔A113〕を実施例2の固化剤2として、下記の表1に示す。
【0122】
[実施例3]
実施例1のステアリン酸亜鉛0.08重量部を0.12重量部に替える他は同様の操作を行い吸水性樹脂〔A114〕を得た。吸水性樹脂〔A114〕を実施例3の固化剤3として、下記の表1に示す。
【0123】
[比較例1]
実施例1のステアリン酸亜鉛0.08重量部を0.04重量部に替える他は同様の操作を行い吸水性樹脂〔A115〕を得た。吸水性樹脂〔A115〕を比較例1の固化剤4として、下記の表1に示す。
【0124】
[比較例2]
吸水性樹脂〔A221〕100重量部にステアリン酸亜鉛0.04重量部加えて25℃・相対湿度50%RH下でスリーワンモーター(ヘイドン社製、タイプ600G)を用いて100rpmで25分間攪拌することにより吸水性樹脂〔A222〕を得た。吸水性樹脂〔A222〕を比較例2の固化剤5として、下記の表1に示す。
【0125】
[比較例3]
実施例1のステアリン酸亜鉛0.08重量部を6.0重量部に替える他は同様の操作を行い吸水性樹脂〔A116〕を得た。吸水性樹脂〔A116〕を比較例3の固化剤6として、下記の表1に示す。
【0126】
[実施例4]
製造例1において、吸水性樹脂粒子〔A110〕に加えるヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部に替えて、吸水性樹脂〔A117〕を得た。さらに、吸水性樹脂〔A117〕100重量部にステアリン酸亜鉛0.6重量部加えて25℃・相対湿度50%RH下でスリーワンモーター(ヘイドン社製、タイプ600G)を用いて100rpmで25分間攪拌することにより吸水性樹脂〔A118〕を得た。吸水性樹脂〔A118〕を実施例4の固化剤7として、下記の表1に示す。
【0127】
[実施例5]
実施例4において、固化試験に使用する固化剤7の量を108g(120gから10%減量)とした以外は同様に評価し、結果を下記表1に示す。
【0128】
[比較例4]
比較例2のステアリン酸亜鉛0.04重量部を0.16重量部に替える他は同様の操作を行い吸水性樹脂〔A223〕を得た。吸水性樹脂〔A223〕を比較例4の固化剤8とし、さらに、固化試験に使用する固化剤8の量を108g(120gから10%減量)にして評価し、結果を下記表1に示す。
【0129】
[製造例3]
中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム水溶液5500g(単量体濃度38重量%)に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)2.4gを溶解し、単量体水溶液〔a003〕とした後、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。
次に、内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記単量体水溶液〔a003〕を投入し、液温を30℃に保ちながら反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素が1ppm以下となるように窒素置換した。
続いて、上記単量体水溶液〔a003〕を撹拌させながら、重合開始剤として10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液29.8g及び0.2重量%のL−アスコルビン酸水溶液6.0gをそれぞれ別々に添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。
そして、生成した含水ゲル状架橋重合体〔b003〕をゲル粉砕しながら30〜80℃で重合し、重合開始から19分後に重合ピーク温度88℃を示し、重合を開始して60分後に、含水ゲル状架橋重合体〔b003〕を取り出した。なお、得られた含水ゲル状架橋重合体〔b003〕は、その径が約1〜5mmに細分化されていた。
【0130】
上記細分化された含水ゲル状架橋重合体〔b003〕を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げて載せ、180℃で45分間熱風乾燥して乾燥物〔b033〕を得た。
【0131】
続いて、乾燥物〔b033〕をロールミルを用いて粉砕し、更に目開きが600μmと106μmのJIS標準篩を用いて分級した。なお、目開き600μmの篩上に残存した粒子は、再度ロールミルで粉砕し、また目開き106μmの篩を通過した粒子(微粉)は、90℃の温水を加えて混合し、その後、上述した乾燥条件及び粉砕条件で処理した。該微粉は粉砕に供された全量に対して14重量%を占めていた。これら一連の操作によって、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末〔A030〕を得た。なお、該吸水性樹脂粉末〔A030〕のCRC(吸水倍率)は56.3[g/g]であった。
【0132】
次いで、上記吸水性樹脂粉末〔A030〕100重量部に対して表面架橋剤水溶液〔c003〕3.33重量部を混合した。なお、該表面架橋剤水溶液〔c003〕は、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、1,4−ブタンジオール0.2重量部、プロピレングリコール0.5重量部及び水2.1重量部からなる。この混合物を175℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより、表面が架橋された吸水性樹脂粒子〔A330〕を得た。なお、該吸水性樹脂粉末〔A330〕のCRC(吸水倍率)は45.1[g/g]であった。
【0133】
吸水性樹脂粒子〔A330〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.5重量部加えて均一に混合することで、吸水性樹脂〔A331〕を得た。
【0134】
[実施例6]
吸水性樹脂〔A331〕100重量部にステアリン酸亜鉛1.0重量部加えて25℃・相対湿度50%RH下でスリーワンモーター(ヘイドン社製、タイプ600G)を用いて100rpmで25分間攪拌することにより吸水性樹脂〔A332〕を得た。吸水性樹脂〔A332〕を実施例6の固化剤9として、下記の表1に示す。
【0135】
[実施例7]
実施例6において、固化試験に使用する固化剤9の量を102g(120gから15%減量)とした以外は同様に評価し、結果を下記表1に示す。
【0136】
[実施例8]
実施例6において、固化試験に使用する固化剤9の量を96g(120gから20%減量)とした以外は同様に評価し、結果を下記表1に示す。
【0137】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明に係る廃液固化剤は、以上のように、特定の吸水性樹脂粒子とある特定の疎水性を有する物質と親水性物質から得られる。本発明の廃液固化剤を用いて、血液や体液等を含有する廃液を固化した場合、廃液固化剤の一部が沈降し、一部が浮遊し、浮遊した固化剤の少なくとも一部が沈降しながら膨潤し、かつ少なくとも一部浮遊したまま膨潤することにより、廃液の上下から固化が進行するので、特に、鉛直方向に長い容器を使用した場合、廃液全体を固化するまでの時間を著しく短くするか固化剤の少ない使用量で固化することが可能となる。