(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材上に樹脂層を設けてなる離型シートであって、樹脂層が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部と、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部を含有し、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα−オレフィン成分との質量比(エチレン成分/α−オレフィン成分)が、60/40〜99/1であり、かつ、架橋剤がオキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物からなることを特徴とする離型シート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の離型シートは、基材と、その上に設けられた樹脂層とから構成される。そして樹脂層は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とポリビニルアルコールとを含有する。
【0011】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレン−α−オレフィン共重合体が酸変性されたものであり、エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレン成分と一種以上のα−オレフィン成分とを含有する。
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらの中でも、経済性の観点や入手のしやすさの観点から、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0012】
エチレン−α−オレフィン共重合体における、エチレン成分とα−オレフィン成分との質量比(エチレン成分/α−オレフィン成分)は、60/40〜99/1であることが好ましく、70/30〜97/3であることがより好ましく、80/20〜95/5であることがさらに好ましい。エチレン成分とα−オレフィン成分との質量比がこの範囲外であると、得られる離型シートは離型性が低下し、また高速剥離性が低下することがある。
【0013】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、メタロセン系触媒を使用して製造されることが好ましい。この方法により製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体は、分子量分布が狭く、低分子量成分の量が少なく、共重合が均一となる。
【0014】
本発明において、エチレン−α−オレフィン共重合体は、得られる樹脂層と基材との密着性を向上させ、また架橋剤と反応させて耐熱性を向上させる観点、また後述する水性分散体を得るという観点から、酸変性されていることが必要である。エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性は、たとえば、エチレン−α−オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸成分を導入することによっておこなうことができる。
本発明において、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、オレフィン成分全量、すなわちエチレン成分とα−オレフィン成分の合計量に対して、不飽和カルボン酸成分を0.01〜10質量%含有していることが好ましく 、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましく、0.2〜2質量%であることが特に好ましい。酸変性成分の含有量が0.01質量%未満の場合、基材との密着性が不十分になったり、架橋剤との反応が不十分となり、耐熱性に劣ることがある。一方、酸変性成分の含有量が10質量%を超える場合、離型性が低下する傾向がある。また、通常エチレン成分を含有するポリオレフィン樹脂を酸変性させる場合、協奏的に架橋反応も進行するために、酸変性量が高いものを製造することは、操業性の観点から、実質的に困難となることがある。
【0015】
エチレン−α−オレフィン共重合体に導入される不飽和カルボン酸成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物が挙げられる。中でもエチレン−α−オレフィン共重合体への導入のし易さの点から、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、エチレン−α−オレフィン共重合体中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0016】
不飽和カルボン酸単位をエチレン−α−オレフィン共重合体へ導入する方法は、特に限定されない。例えば、ラジカル発生剤存在下、エチレン−α−オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを、エチレン−α−オレフィン共重合体の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、エチレン−α−オレフィン共重合体と不飽和カルボン酸とを有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、エチレン−α−オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
【0017】
本発明において、樹脂層製造原料の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、特に限定されないが、230℃、2160g荷重において、0.01〜500g/10分であることが好ましく、0.1〜100g/10分であることがより好ましく、0.3〜10g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが0.01g/10分未満の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、溶剤に溶解することが困難であり、一方、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレートが500g/10分以上であると、得られる樹脂層は、基材との密着性が低下することがあり、また被着体に、低分子量成分の移行が起こりやすくなる。
【0018】
酸変性するためのエチレン−α−オレフィン共重合体として、市販のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることができる。市販のエチレン−α−オレフィン共重合体として、住友化学社製エスプレンシリーズ、三井化学社製タフマーシリーズなどが挙げられる。このような市販のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いて、上記の方法で酸変性を行って、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができる。
また酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体として、市販のものを用いてもよい。市販の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体として、三井化学社製タフマーシリーズのMP−0620、MH−7020、MA−8510などが挙げられる。
【0019】
本発明の離型シートの樹脂層は、架橋剤を含有する。架橋剤としては、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が用いられ、反応性の観点から、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも一つの架橋剤であることが必要である。
架橋剤として、オキサゾリン化合物やカルボジイミド化合物以外の架橋剤を用いると、架橋反応が不十分となるため、得られる樹脂層は耐熱性が低下し、熱処理後の離型性が低下する傾向にある。
【0020】
オキサゾリン化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法は、特に限定されず、公知の種々の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」、固形タイプの「RPS−1005」などが挙げられる。
【0021】
カルボジイミド化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではない。ポリカルボジイミドは、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであってもよい。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオールなどが共重合されていてもよい。
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」、有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」、無溶剤タイプの「V−05」などが挙げられる。
【0022】
オキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物からなる架橋剤の含有量は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが必要であり、1〜30質量部であることが好ましく、2〜20質量部であることがより好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、添加効果が乏しく、経時的に離型性が低下したり、十分な耐熱性が得られない場合があり、含有量が50質量部を超えると、離型性が低下する場合がある。なお、架橋剤は、複数の種類を同時に用いることもでき、同時に用いた場合、架橋剤の合計量が上記の架橋剤の含有量の範囲を満たしていればよい。
【0023】
本発明の樹脂層には、ポリビニルアルコールを含有し、その含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、1〜100質量部であることが必要であり、3〜50質量部が好ましく、5〜20質量部であることがより好ましい。ポリビニルアルコール含有量が1質量部未満では添加効果が乏しく、100質量部を超えた場合、被着体に対して離型性が悪化する傾向がある。
【0024】
ポリビニルアルコールは特に限定されないが、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化したものが挙げられる。なお、ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。後述のように、水系塗工液として使用する場合のために、水溶性を有していることが好ましい。
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0025】
ポリビニルアルコールの平均重合度は特に限定されるものではないが、300〜2,000のものが好ましい。
市販のポリビニルアルコールとしては、日本酢ビ・ポバール社「J−ポバール」の「JC−05」、「VC−10」、「ASC−05X」、「UMR−10HH」、クラレ社「クラレポバール」の「PVA−103」、「PVA−105」や「エクセバール」の「AQ4104」、「HR3010」、電気化学工業社「デンカ ポバール」の「PC−1000」、「PC−2000」などが挙げられる。
【0026】
本発明の離型シートを構成する樹脂層は、上記のように、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とポリビニルアルコールを含有するものであるが、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を含有してもよい。また、後述する樹脂層を形成するための水系塗工液の安定性を損なわない範囲で、上記以外の有機もしくは無機の化合物を水系塗工液に添加して、樹脂層に含有させることもできる。
【0027】
本発明の離型シートにおいて樹脂層の厚みは、0.01〜5.0μmであることが好ましく、0.03〜3.0μmであることがより好ましく、0.05〜1.0μmであることがさらに好ましい。樹脂層の厚みが0.01μm未満であると、十分な離型性が得られない場合があり、一方、厚みが5.0μmを超えると、コストアップとなるため好ましくない。
【0028】
本発明において、基材上に樹脂層を設ける方法は特に限定されない。例えば、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、架橋剤と、ポリビニルアルコールと水性媒体とを含む水系塗工液を作製し、この水系塗工液を基材上に塗布して媒体を乾燥させる方法が、樹脂層の厚みを均一にしやすく、大量生産が可能という点で好ましい。あるいは、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とポリビニルアルコールを混合したものを基材上に溶融押出して、樹脂層を形成してもよい。また、基材を構成する樹脂材料と樹脂層形成材料とを共押出することにより、離型シートを得てもよい。
【0029】
水系塗工液を基材上に塗布して樹脂層を形成する方法においては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により、水系塗工液を基材表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理または乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な樹脂層を基材に密着させて形成することができる。
【0030】
基材上に樹脂層を形成した後、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤との反応を促進させるために、一定の温度にコントロールされた環境下でエージング処理をおこなってもよい。エージング温度は、基材へのダメージを軽減させる観点から、比較的低いことが好ましいが、反応を十分かつ速やかに進行させるという観点からは、高温で処理することが好ましい。エージング処理は20〜100℃でおこなうことが好ましく、30〜70℃でおこなうことがより好ましく、40〜60℃でおこなうことがさらに好ましい。
【0031】
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、架橋剤と、ポリビニルアルコールと水性媒体とを含む水系塗工液を作製する方法としては、たとえば、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水性分散化し、架橋剤とポリビニルアルコールの水溶液をそれぞれ混合する方法が挙げられる。酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水性媒体に分散させ、水性分散体を得る方法は特に限定されないが以下の方法が挙げられる。酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性量が1質量%を超える場合は、密閉可能な容器に酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、水溶性有機溶媒、水などの原料を投入し、槽内の温度を40〜150℃程度の温度に保ちつつ攪拌を行うことによって、水性分散体を得る方法が挙げられる。例えば、国際公開02/055598号パンフレットに記載された方法が挙げられ、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水性媒体中で塩基性化合物を用いて中和することにより、水性分散体が得られる。
【0032】
一方、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性量が1質量%以下の場合は、まず、酸変性ポリオレフィン樹脂濃度が1質量%以下となるように酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水溶性有機溶媒と混合して、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体溶液を得る。そして、この溶液を、この溶液の1.5倍以上の質量の水性媒体に添加することにより、水性分散体を得る。このとき、さらに、水性分散体に含まれる水溶性有機溶媒の少なくとも一部を揮発させてもよい。このような製法で得られた水性分散体は、不揮発性水性分散化助剤および塩基性化合物を実質的に含有しないものである。
【0033】
本発明における水溶性有機溶媒は、20℃の水に対する溶解性が50g/L以上の有機溶媒のことであり、水に対する溶解性は100g/L以上が好ましく、200g/L以上がより好ましく、500g/L以上がさらに好ましく、任意の量で水に溶解するものが最も好ましい。20℃における水に対する溶解性が50g/L未満では、後述する水性媒体への添加工程において、溶解した酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体が析出する場合がある。
また、本発明において水溶性有機溶媒の沸点は100℃以下であることが好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましく、70℃以下が特に好ましい。沸点が100℃を超えると、後述する脱溶剤処理の際に揮発させることが困難となる。
さらに、水溶性有機溶媒は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の溶解性が高いことが好ましく、具体的には酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体濃度が1質量%以上で溶解できるものがより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が最も好ましい。水溶性有機溶媒における酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の溶解濃度が1質量%未満であると、後述する水性媒体に添加する工程において、溶解した酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体が析出する場合がある。また生産性も悪くなる場合がある。
【0034】
前記水溶性有機溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリルなどが挙げられ、中でも本発明では、テトラヒドロフランが好ましい。
【0035】
本発明における水性媒体とは、水または、水を主成分とする液体のことであり、水性分散体をコーティングした際の基材への塗れ性などを高めるために有機溶媒を含有していてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2−ジメチルグリセリン、1,3−ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、塗れ性改善の観点から好ましく、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールがより好ましい。本発明では、これらの有機溶媒を複数混合して使用してもよい。有機溶媒の含有量は特に限定されないが、塗れ性改善の観点から、水性媒体全体に対し50質量%以下であることが好ましい。
【0036】
上記方法によって、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を水溶性有機溶媒と水性媒体の混合液中に均一分散させることが可能である。しかしながら、酸変性量が1質量%以下の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体から得られる水性分散体中の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体濃度は、非常に希薄であり、さらには大量の有機溶媒を含有しているため、実用での使用には多少問題がある。そこで、水性分散体中の水溶性有機溶媒の少なくとも一部を脱溶剤処理することが好ましい。
【0037】
脱溶剤処理は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体水性分散体中の、水溶性有機溶媒や水性媒体の少なくとも一部を揮発させ、混合液中の有機溶媒量を低減させる処理のことである。脱溶剤処理の方法は特に限定されず、公知の方法を採用することが出来る。具体的には、混合液を加熱および/または減圧し、系外に留去する方法が好ましく採用される。加熱の温度は特に限定されないが、揮発の効率や作業性の観点から、40〜200℃の範囲が好ましく、50〜150℃がより好ましく、60〜120℃がさらに好ましい。減圧度は、特に限定されないが、混合液が突沸したり激しく沸騰しない程度が好ましく、そのような現象が起こらない範囲で適宜調整すればよい。このような脱溶剤処理によって、水溶性有機溶媒は全てを混合液より除去してもよく、塗れ性改善の観点から一部を水性分散体中に残存させてもよく、固形分の含有量を好ましい範囲に適宜調整することが可能である。
【0038】
水系塗工液における固形分の含有率は、樹脂層の形成条件や厚み、性能等により適宜選択することができ、特に限定されるものではないが、水系塗工液の粘度を適度に保ち、かつ良好な樹脂層を形成させるためには、1〜60質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。
【0039】
離型シートを構成する基材としては、樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料等で形成されたものが挙げられる。基材の厚みは、特に限定されるものではないが、通常は1〜1000μmであればよく、1〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、25〜100μmが特に好ましい。
【0040】
基材に用いることができる樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂;ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;ナイロン6、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアクリルニトリル樹脂;ポリイミド樹脂;これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD6ナイロン/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。
樹脂材料は延伸処理されていてもよい。中でも、基材は、機械的特性および熱的特性に優れるポリエステル樹脂フィルムが好ましく、安価で入手が容易という点からポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0041】
熱可塑性樹脂フィルムに水系塗工液を塗布する場合、二軸延伸されたフィルムに塗布後乾燥、熱処理してもよく、また、配向が完了する以前の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸の終了したフィルムに水系塗工液を塗布し、乾燥後加熱して延伸するか、あるいは加熱して乾燥と同時に延伸して、配向を完了させてもよい。後者の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸終了後のフィルムに水系塗工液を塗布後、乾燥、延伸配向する方法は、熱可塑性樹脂フィルムの製膜と同時に樹脂層を積層することができるため、コストの点から好ましい。
上記熱可塑性樹脂フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層や易接着層、帯電防止層、紫外線吸収層などの他の層が積層されていてもよい。その他の材料と積層する場合の密着性を良くするために、熱可塑性樹脂フィルムの表面に、前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等が施されてもよい。
【0042】
基材として用いることができる紙としては、和紙、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙、グラシン紙、セミグラシン紙等が挙げられる。紙には、目止め層などが設けてあってもよい。
基材として用いることができる合成紙は、その構造は特に限定されず、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層の表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。各層は、無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙も使用することができる。
基材として用いることができる布としては、上述した合成樹脂からなる繊維や、木綿、絹、麻などの天然繊維からなる不織布、織布、編布などが挙げられる。
基材として用いることができる金属材料としては、アルミ箔や銅箔などの金属箔や、アルミ板や銅板などの金属板などが挙げられる。
基材として用いることができるガラス材料としては、ガラス板やガラス繊維からなる布などが挙げられる。
本発明の離型シートは、様々な材料に対して良好な離型性を有することから、様々な材料に対して使用することができる。
【0043】
粘着材料としては、基材に粘着剤が積層されたものが挙げられ、実務上は、粘着シート、接着シート、粘着テープ、接着テープなどの形態で使用される。粘着剤の成分や基材は特に限定されない。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。粘着剤には、ロジン系、クマロン−インデン系、テルペン系、石油系、スチレン系、フェノール系、キシレン系などの粘着付与剤が含まれていてもよい。基材としては、上述の紙、布、樹脂材料などが挙げられる。
粘着材料に対して使用される場合、その取り扱い上、離型性に優れるものが求められており、たとえば、アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cm以下であるものが求められている。本発明の離型シートをアクリル系粘着材料に対して使用した場合、アクリル系粘着材料を貼り付けて、放置した後の樹脂層とアクリル系粘着材料との間の剥離強度を、0.5N/cm以下とすることができ、より好ましくは、0.4N/cm以下、さらに好ましくは0.3N/cm以下、最も好ましくは、0.2N/cm以下とすることができる。アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cmを超える場合、離型シートを粘着材料から剥離する際に、抵抗を感じたり、粘着材料の表面が荒れることにより、粘着性が低下する場合があるため、アクリル系粘着材料用の離型シートとして使用することが困難となることがある。
【0044】
本発明の離型シートは、液晶ディスプレー用部品やプリント配線板として好適に用いることができ、液晶ディスプレー用部品としては、偏光板、位相差偏光板、位相差板などが挙げられる。また、プリント配線板としては、片面プリント配線板、両面プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、多層プリント配線板などが挙げられる。
さらに、本発明の離型シートは下記のようなシート状構造体に対しても好適に用いることができる。シート状構造体の例としては、ウレタンやフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などのゴムシート、パーフロロスルホン酸樹脂などの高分子電解質などからなるイオン交換膜;誘電体セラミックスやガラスなどからなるセラミックグリーンシートなどが挙げられる。これらは、溶媒でペースト状あるいはスラリー状とした原料を、離型用シート上へキャストすることで形成される。ゴムシートの場合、樹脂や添加剤等を含む成分を溶融させてシート状に成形して、シートを形成してもよい。
シート状構造体を形成した場合も、離型性、耐熱性に優れたものの方が使用上好ましい。被着体と本発明の離型シートとの間の剥離強度が、0.5N/cm以下であることが好ましく、0.4N/cm以下であることがより好ましく、0.3N/cm以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体
(1)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の不飽和カルボン酸成分含有量
オレフィン成分全量に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、下記に示す方法(A)または(B)を用いて求めた。
(A):酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量(グラフト率)を次式から求めた。
含有量(質量%)=(グラフトした不飽和カルボン酸の質量)/(原料ポリオレフィン樹脂の質量)×100
(B):赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計 System−2000、分解能4cm
−1)を行い、不飽和カルボン酸成分の含有量を求めた。
【0046】
(2)不飽和カルボン酸成分以外の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の構成
オルトジクロロベンゼン(d
4)中、120℃にて、
1H−NMR、
13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、求めた。
13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。
【0047】
(3)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート
JIS K7210(230℃、2160g荷重)に準拠する方法で測定した。
【0048】
2.水性分散体
(4)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0049】
(5)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体粒子の数平均粒子径及び重量平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用いて、数平均粒子径(mn)及び重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
【0050】
3.離型シート
(6)アクリル系粘着剤に対する剥離強度(常温) 得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
【0051】
(7)アクリル系粘着剤に対する剥離強度(70℃)
試料を放置する条件を、25℃の雰囲気から70℃の雰囲気に変更した以外は上記(6)に記載の方法で剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、上記(6)に記載の方法で測定した。
【0052】
(8)残留接着率(アクリル粘着剤)
上記剥離強度試験により離型シート表面から剥離した巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)をステンレス板(SUS304 厚さ1mm)に貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、ポリエステル粘着テープと離型シートの剥離強度を、25℃の恒温室で引張試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)にて測定した。剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分で行った。この測定により得られた剥離強度をF1とする。ステンレス板(SUS304 厚さ1mm)に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)を貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、ポリエステル粘着テープと離型シートの剥離強度を、25℃の恒温室で引張試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)にて測定(剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分)し、得られた剥離強度をF2とし、下記式を用いて残留接着率を得た。
残留接着率(%)=(F1/F2)×100
粘着テープの粘着剤表面が離型シートにより汚染された場合、粘着テープの再粘着性が低下し、粘着テープとしての性能を損なう。すなわち、残留接着率は高い方が好ましい。
【0053】
(9)ゴムシートに対する離型性評価
(A)ウレタンゴムシートに対する剥離強度
ミラブルウレタンゴム(デュポン社製アジプレンCM)100質量部に対して、ケッチェンブラック(ライオン社製 EC300J)8質量部、有機過酸化物(日本油脂社製 パークミルD)2質量部、ステアリン酸(花王社製 ルナックS30)0.5質量部を添加し、バンバリーミキサーで十分に混練して、ウレタンゴム成分を調製した。
このウレタンゴム成分を離型シートの上に押し出して、シート状に形成し、プレス成形(180℃、10分間)をした後、二次架橋(120℃、15時間)を行った。
上記、ウレタンゴムシートを積層したシートを、巾50mm、長さ150mmに切り出し、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、ウレタンゴムシートと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180°、剥離速度は300mm/分とした。
(B)シリコーンゴムシートに対する剥離強度
ポリオルガノシロキサンポリマー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 TSE2527U)100質量部に対して、有機過酸化物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 TC−8)0.4質量部、酸化鉄(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 ME−41F)4質量部、カーボンブラック(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 ME−41B)20質量部を、バンバリーミキサーで十分に混練して、シリコーンゴム成分を調製した。
このシリコーンゴム成分を離型シートの上に押し出して、シート状に形成し、プレス成形(170℃、10分間)した後、二次架橋(180℃、4時間)を行った。
上記、シリコーンゴムシートを積層したシートを、巾50mm、長さ150mmに切り出し、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、シリコーンゴムシートと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180°、剥離速度は300mm/分とした。
【0054】
(10)耐ブロッキング性
得られた離型シートを50mm×50mmの大きさに2枚切り出し、樹脂層と樹脂層反対面とが接触するように重ね合せ、60℃で10kPaの荷重をかけた状態で、24時間放置したあと、荷重を取り除いて室温まで冷却した後、樹脂層と樹脂層反対面との密着状態を調べることで耐ブロッキング性を評価した。
○:2枚のシートに密着が見られない、または、2枚のシートが簡単に剥がれ、樹脂層に白化などの変化が見られない。
×:樹脂層が凝集破壊を起こす、または、2枚のシートを剥がした後の樹脂層が全体的に白くなっている。
【0055】
樹脂層を構成する樹脂として、次のものを使用した。
P−1:
エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)100gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で、130℃に加熱したキシレン400gに溶解させた。次いで、この溶液に、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)10gおよびジクミルパーオキサイドのトルエン溶液(10質量%)5gをそれぞれ30分間かけて加え、その後、系内を130℃に保って、4時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥して酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−1を得た。P−1の特性については表1に示した。
【0056】
P−2:
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をエチレン−ブテン共重合体(エチレン/1−ブテン=70/30質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−2を得た。P−2の特性については表1に示した。
【0057】
P−3:
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をエチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=90/10質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−3を得た。P−3の特性については表1に示した。
【0058】
P−4:
P−1の製造において、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)の量を20gに変更した以外は同様の操作を行って酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−4を得た。P−4の特性については表1に示した。
【0059】
P−5:
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をプロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/1−ブテン=70/30質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体P−5を得た。P−5の特性については表1に示した。
【0060】
P−6:
アルケマ社製、ボンダイン「LX−4110」(無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂)を使用した。P−6の特性については表1に示した。
【0061】
P−7:
クラレ社製、クラプレン「LIR−403」(酸変性ポリイソプレン、数平均分子量34000、酸価9〜11mgKOH/g)を使用した。P−7の特性については表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
製造例1
樹脂層を構成する樹脂としてP−1を、水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(沸点66℃、以下、「THF」と示す。)を使用し、25gのP−1と4,975gのTHFを混合、加熱、撹拌することで、P−1の含有量が0.5質量%のP−1溶液を作製した。
次いで、水性媒体として10,000gのイオン交換水を、撹拌機とヒーターを備えた容器に仕込み、撹拌機で撹拌しながら、5,000gの前記P−1溶液を5分間かけて徐々に添加し、イオン交換水とP−1溶液からなる水性分散体を作製した。この時水性分散体は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体が均一に分散していた(均一に白濁していた)。
得られた水性分散体を、ヒーターで60℃に加熱し、撹拌したまま、容器内を徐々に減圧した。加熱、減圧によって発生した、THFおよび水の蒸気は、容器外で凝縮し、容器外に留去させた。容器内の水性分散体の質量が200g以下となったところで、水性分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過した。この時濾過後のフィルター上には、未分散物はなかった。濾過後の水性分散体に、イオン交換水を加え、固形分濃度が10質量%となる様に調整した。このようにして、水性分散体E−1を得た。水性分散体E−1の特性は表2に示した。
【0064】
製造例2〜5
製造例1において、P−1に変えて、P−2〜P−5をそれぞれ用いた以外は同様の操作を行って、水性分散体E−2〜E−5を得た。水性分散体E−2〜E−5の特性は表2に示した。
【0065】
製造例6
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂P−6(アルケマ社製、ボンダイン「LX−4110」)、90.0gのイソプロピルアルコール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとした。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体E−6を得た。水性分散体E−6の特性は表2に示した。
【0066】
製造例7
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレンP−7(クラレ社製、クラプレン「LIR−403」)、60.0gのイソプロパノール、15gのトリエチルアミンおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌しながら、加熱し、系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体E−7を得た。水性分散体E−7の特性は表2に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例1
水性分散体E−1と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS−500」、固形分濃度:39質量%)、およびポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 VC−10 重合度1000、以下「PVA」と称する場合がある)の8質量%水溶液とを、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、オキサゾリン化合物の固形分を10質量部、ポリビニルアルコールが5質量部となるようにそれぞれ添加した水系塗工液を得た。この水系塗工液を、二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製 エンブレット S−50 厚み50μm)基材のコロナ処理面にマイヤーバーを用いてコートし、140℃で15秒間乾燥させて、厚さ0.3μmの樹脂層をフィルム状に形成させた。その後、50℃で二日間エージングを行なうことで、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0069】
実施例2〜4
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、E−2(実施例2)、E−3(実施例3)、E−4(実施例4)をそれぞれ用いた以外は同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0070】
実施例5、6
実施例1において、ポリビニルアルコールの含有量が、それぞれ30質量部(実施例5)、1質量部(実施例6)となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0071】
実施例7
実施例1において、オキサゾリン化合物の固形分含有量が20質量部となるようにした以外は同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0072】
実施例8
実施例1において、オキサゾリン化合物に代えて、ポリカルボジイミド化合物の水性溶液(日清紡社製 「V−10」、固形分濃度40質量%、以下「CI」と称する場合がある)を用いて、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、ポリカルボジイミド化合物固形分が50質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0073】
実施例9
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル社製、固有粘度0.6)をTダイ備え付けの押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、表面温度25℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み500μmの未延伸フィルムとした。続いて、90℃で縦方向に3.4倍延伸させた後、グラビアコート機を用いて、水性分散体E−1と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS−500」、固形分濃度:39質量%)、およびポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 VC−10 重合度1000、以下「PVA」と称する場合がある)の8質量%水溶液とを、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、オキサゾリン化合物固形分が10質量部、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体に対してポリビニルアルコールが5質量部となるようにそれぞれ添加した水系塗工液を、乾燥、延伸後の塗布量が0.2g/m
2になるように塗布し、次に温度90℃で2秒間予熱した後、240℃で横方向に3.0倍の倍率で延伸し、離型シートを得た。得られたポリエステルフィルムと樹脂層を合わせた厚みは、50μmであった。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0074】
実施例10
実施例9において、ポリビニルアルコールの含有量が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、100質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0075】
実施例11
実施例10において、オキサゾリン系化合物の含有量を1質量部にした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0076】
実施例12
実施例9において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−4を用いて、オキサゾリン系化合物の含有量を50質量部とした以外は同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0077】
比較例1
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−5を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0078】
比較例2
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−6を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0079】
比較例3
実施例1において、ポリビニルアルコールを添加しなかった以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0080】
比較例4
実施例1において、オキサゾリン系化合物を用いなかった以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0081】
比較例5
実施例1において、ポリビニルアルコールの含有量を120質量部とした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0082】
比較例6
実施例1において、オキサゾリン系化合物の含有量を60質量部とした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0083】
比較例7
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−7を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
【0084】
比較例8
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−1をトルエンに溶解させて、2質量%の溶液を作製した。酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS−500」、固形分濃度:39質量%、イソプロピルアルコールで希釈)とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、10質量部となるように混合し、さらにポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 VC−10 重合度1000、以下「PVA」と称する場合がある)の8質量%水溶液を、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対してポリビニルアルコールが5質量部となるようにそれぞれ添加し、撹拌した。しかしながら、すぐに液状物は、分離し、均一な塗工液を得ることは出来なかった。
【0085】
【表3】
【0086】
実施例1〜12に示すように、樹脂層に酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部と、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部を含有し、架橋剤がオキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物からなる離型シートは、粘着材料、ゴムシートに対して良好な離型性を有するものであった。中でも、ポリビニルアルコールの量が多い場合、粘着剤との剥離強度は大きくなる傾向が見られた。架橋剤の添加量が少ない場合、粘着剤との剥離強度が熱処理前後で比較的差が出やすい傾向が見られた。
一方、比較例1および2に示すように、本発明外の酸変性ポリオレフィン樹脂を用いた場合、粘着材料との離型性が不十分であった。比較例3〜6のように、本発明で規定する架橋剤の量を外れる場合、粘着剤との離型性が十分でない、または、ゴムシートとの離型性が不十分なものであった。
比較例7のように、イソプレン系の樹脂を用いた場合、粘着テープに対して良好な離型性を示すものの、ゴムシートに対しては、離型性が劣るものであった、また、ブロッキング性に劣るものであった。
比較例8は均一な水系塗工液が得られず、塗工することが出来なかった。