(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る事故防止情報出力装置を用いた交差点事故防止システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
なお、実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る交差点事故防止システムの概念を説明するための図、
図2は、同交差点事故防止システムの構成を示す構成図である。
図3は、同交差点事故防止システムを構成する事故防止情報出力装置のブロック図、
図4は、事故防止情報出力装置の移動体を検知するセンサの配置を示す図である。
図5は、同交差点事故防止システムを構成する事故防止情報出力装置の変形例のブロック図、
図6は、同交差点事故防止システムを構成する事故防止情報受信装置のブロック図である。
【0034】
交差点事故防止システム1は、交差点401に進入する1以上の移動体5に対して当該交差点401の事故防止に関する情報である事故防止情報を出力することにより、交差点401内における衝突事故を防止することを目的としたシステムである。
【0035】
図1では、交差点401の一例として2本の道路4が十字型に平面交差する交差点を示しているが、交差点401の形態は問わない。例えば、環状のロータリーに複数本の道路が放射状に接続されたロータリー交差点であってもよい。また、交差点401に接続される道路5の数も問わない。通常、交差点401は、2本の道路4が互いに相手の道路4を横切るように交差する形態であるが、一方の道路4の先端が他方の道路4に接続する形態の三差路であってもよい。
【0036】
また、道路4が鋭角に曲がっている場合、その屈曲点は、2本の道路4の先端が接続された見通しの悪い交差点と考えることもできるので、このような鋭角に屈曲した道路4の屈曲点にも本発明に係る交差点事故防止システム1を適用することができる。
【0037】
道路4を走行する移動体5は、通常、自動車であるが、道路4に敷設されたレール上を走行する電車や動力を有していない自転車などの移動体を含めてもよい。自動車には車輪の数、形などで様々な種類のものがあるが、自動車の種類は問わない。自動車は、二輪車(バイク)や三輪車でもよく、6輪以上の車輪を有するものでもよい。また、自動車の用途も問わない。自動車は、普通乗用車、貨物自動車、特殊作業車、業務用自動車などの種々の用途の自動車であってもよい。
【0038】
事故防止情報は、交差点401における移動体5同士の事故を防止するために、交差点401に進入する1以上の移動体5の運転者に対して有益な情報を広く含む。事故防止情報は、例えば、所定の閾値以上又は当該閾値より大の高速で交差点401に進入する移動体5が存在することを示す情報を含む。事故防止情報の形式や構造は問わない。例えば、フラグの情報でもよく、予め設定されたメッセージの情報でもよい。
【0039】
また、事故防止情報は、例えば、所定の閾値以上又は当該閾値より大の高速で交差点401に進入する移動体5の速度、移動体5の移動方向(走行方向)、移動体5が交差点401に進入する予測時刻、移動体5の大きさなどの当該移動体5に関する情報(以下、「移動体情報」という。)を含む。この移動体情報には、移動体5の加速度α(=dv/dt)を含めてもよい。
【0040】
事故防止情報は、結果的に交差点401に進入する移動体5の運転者に伝達され、事故防止情報に基づいて運転者が事前に事故防止操作を行い得るものであれば、情報内容やデータ構造は問わない。以下の説明では、交差点401に進入する1以上の移動体5に対して当該交差点401における事故を防止するために出力される各種の情報を「事故防止情報」と表記して説明する。
【0041】
交差点事故防止システム1は、1以上の事故防止情報出力装置2と、1以上の移動体5に搭載される1以上の事故防止情報受信装置3とで構成される。事故防止情報出力装置2は、道路4を交差点401に向かって走行する移動体5に対して、交差点401の手前の所定の位置Pで当該移動体5を検知して、当該移動体5の検知情報を取得する。さらに、事故防止情報出力装置2は、その検知情報に基づいて当該移動体5の移動体情報を取得し、移動体5が所定の走行条件を満たす場合に事故防止情報を無線で出力する。事故防止情報受信装置3は、事故防止情報出力装置2から出力される事故防止情報を受信し、その事故防止情報に基づき当該事故防止情報受信装置3が搭載された移動体5の運転者に交差点401に進入する他の移動体5の存在を知らせる。
【0042】
事故防止情報出力装置2は、交差点401に接続される複数の道路4に対して、各道路4の交差点401の手前の所定の位置P(以下、「移動体検知位置P」という。)に1個ずつ設けられている。道路4が2車線以上の道路幅を有している場合、事故防止情報出力装置2は、その道路4の交差点401に向かって走行する車線側(日本国では左側車線の側)に設けられている。
【0043】
道路4が2車線以上の道路幅を有していない場合は、事故防止情報出力装置2は、その道路4を交差点401に近づく方向と交差点401から離れる方向の両方向に走行する移動体5に対して、当該移動体5の検知情報を検出するように各道路4の移動体検知位置Pに配設されている。
【0044】
交差点401に接続される道路4がN本(N>2)の場合、交差点事故防止システム1は、N個の事故防止情報出力装置2を備える。一方、事故防止情報受信装置3は、移動体5に搭載されるので、交差点401の周囲の所定の範囲AR(例えば、交差点401を中心とした半径Rの範囲AR)内に存在するM台の移動体5に事故防止情報受信装置3が搭載されているとすると、交差点事故防止システム1は、M個の事故防止情報受信装置3を備えることになる。
【0045】
図2に示す交差点事故防止システム1の構成は、
図1に示す交差点401が十字路で、交差点401を中心とした半径Rの範囲AR内に5台の移動体5が存在するので、4個の移事故防止情報出力装置2と5個の事故防止情報受信装置3とで構成されている。
【0046】
図1,
図2では、交差点事故防止システム1を構成する4個の事故防止情報出力装置2を区別するために、交差点401の下側の道路4に配置された事故防止情報出力装置に「2A」、交差点401の右側の道路4に配置された事故防止情報出力装置に「2B」、交差点401の上側の道路4に配置された事故防止情報出力装置に「2C」、交差点401の左側の道路4に配置された事故防止情報出力装置に「2D」の符号を付している。また、交差点事故防止システム1を構成する5個の事故防止情報受信装置3を区別するために、交差点401の下側の道路4上の移動体5に搭載された事故防止情報受信装置に「3A」、交差点401の右側の道路4上の移動体5に搭載された事故防止情報受信装置に「3B」、交差点401の上側の道路4上の2台の移動体5に搭載された2個の事故防止情報受信装置に「3C」,「3D」、交差点401の左側の道路4上の2台の移動体5に搭載された2個の事故防止情報受信装置に「3E」,「3F」の符号を付している。
【0047】
事故防止情報出力装置2は、
図3に示すように、移動体検知部201、移動体情報取得部202、走行条件判定部203、情報出力部204を備える。
【0048】
移動体検知部201は、道路4の移動体検知位置Pで当該移動検知位置Pを通過する移動体5を検知し、その検知情報を用いて移動体5の検知情報を取得する。移動体検知位置Pは、例えば、道路4の交差点401の進入口から所定の距離L[m]だけ手前の位置に設定されている(
図1参照)。
図1では、距離Lを交差点401の進入口からの距離としているが、交差点401の中央からの距離としてもよい。
【0049】
所定の距離Lは、例えば、道路4を交差点401に近付く方向(交差点401への進入方向)に走行する移動体5の平均的な速度v[km/h]や道路4又は車線の幅を考慮して設定されている。所定の距離Lは、移動体5が移動体検知位置Pを通過した時点から交差点401に進入するまでの時間T(すなわち、移動体5が移動体検知位置Pから距離Lだけ走行するのに要する時間)(以下、「交差点進入時間T」という。)が、例えば10秒〜15秒となる距離に設定されている。例えば、移動体5の平均的な速度vを50[km/h]とすると、所定の距離Lは、例えば、140〜200[m]である。なお、距離Lは、この例よりも短くてもよく、長くてもよい。
【0050】
移動体検知部201は、道路4の移動体検知位置Pを通過する移動体5を検知する2つの移動体検知手段2011,2012を有する。移動体検知手段2011,2012は、通常、非接触で移動体5を検知するセンサで構成されるが、例えば、感圧センサなどの接触式のセンサで構成されてもよい。
【0051】
移動体5を検知するセンサは、接触又は非接触で移動体5を検知できるものであれば、種類は問わない。非接触センサの場合、移動体検知手段2011,2012には、例えば、光電センサ、誘導型近接センサ、静電容量型近接センサ、超音波センサなどのセンサを用いることができるが、好ましくは誘導型近接センサを用いるとよい。
【0052】
2つの移動体検知手段2011,2012は、
図4に示すように、道路4の長手方向に所定の間隔D[m]を設けて配設されている。移動体検知位置Pを基準に交差点401に進入する方向を+方向、交差点401から退出する方向を−方向とすると、例えば、移動体検知手段2011(以下、「第1センサ2011」という。)は、移動体検知位置Pに対して−D/2の位置に配設され、移動体検知手段2012(以下、「第2センサ2012」という。)は、移動体検知位置Pに対して+D/2の位置に配設されている。移動体検知位置Pに対する第1センサ2011と第2センサ2012の配設位置の関係は逆であってもよい。
【0053】
移動体5が道路5の移動体検知位置Pを通過すると、第1センサ2011は、移動体5を検知し、当該移動体5を検知したことを示す第1移動体検知信号S
D1を出力する。また、第2センサ2012は移動体5を検知し、当該移動体5を検知したことを示す第2移動体検知信号S
D2を出力する。
【0054】
第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2は、例えば、移動体5を検知している期間τだけハイレベル又はローレベルとなる矩形波の信号である。また、第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2は、両信号の出力タイミング(例えば、ハイレベルに立ち上がるタイミング)が時間差Δtだけずれた信号である。第1,第2移動体検知信号S
D1,S
D2は、移動体情報取得部202に入力される。
【0055】
期間τは、移動体5の大きさ(長さ)や速度によって変化し、時間差Δtは、間隔Dと移動体5の速度vによって変化する。従って、移動体検知部201から移動体情報取得部202には第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2によって移動体5の検知に関する検知情報が入力される。
【0056】
移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2を用いて移動体検知位置Pを通過した移動体5の移動体情報を取得する。例えば、移動体情報取得部202は、移動体5の速度v、移動体5の移動方向、移動体5が移動体検知位置Pを通過してから交差点401に進入するまでの交差点進入時間T[秒]、移動体5の大きさなどの移動体情報を取得する。
【0057】
移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2の検出タイミングの時間差Δtと、第1センサ2011と第2センサ2012の間隔D[m]とを用いて、移動体5の速度v[km/h]を取得する。時間差Δt[秒]と間隔D[m]と速度v[km/h]の間には、Δt=(D/v)×3.6の関係がある。移動体情報取得部202は、(D/Δt)×3.6を演算することによって速度vを取得してもよく、時間差Δtを速度vに変換する変換表を予め作成しておき、その変換表を用いて時間差Δtから速度vを取得してもよい。
【0058】
あるいは、例えば、時間差Δtを予め設定された閾値Δt
1,Δt
2,…Δt
nと比較して、例えば、35、40、45、…80,85…[km/h]などの5[km/h]ピッチで丸め込んだ速度として速度vを取得するようにしてもよい。
【0059】
なお、移動体検知部201の第1センサ2011と第2センサ2012に加えて3つ目の移動体検知手段(第3センサ)を設け、移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1及び第2移動体検知信号S
D2と第3センサから出力される第3移動体検知信号S
D3を用いて移動体5の加速度α[km/h
2]を取得してもよい。
【0060】
例えば、第3センサを移動体検知位置P(D=0の位置)に配設した場合、第1移動体検知信号S
D1と第3移動体検知信号S
D3の出力タイミングに時間差Δt
1が生じ、第3移動体検知信号S
D3と第2移動体検知信号S
D2の出力タイミングに時間差Δt
2が生じるとする。また、時間差Δt
1と距離D/2から得られる移動体5の速度をv
Aとし、時間差Δt
2と距離D/2から得られる移動体5の速度をv
Bとすると、加速度αと速度v
A,v
Bとの間には、α=(v
B−v
A)/Δt×3.6の関係がある。
【0061】
移動体情報取得部202は、例えば、α=(v
B−v
A)/Δt×3.6を演算することにより、移動体5の加速度αを取得してもよい。加速度αを取得することにより、その加速度αと交差点進入時間Tとによって移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cを取得することができる。例えば、移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cと移動体検知部201が移動体5を検知したときの速度vと加速度αの間には、v
C=v+α×Tの関係があるから、移動体情報取得部202は、(v+α×T)を演算することにより、移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cを取得することができる。
【0062】
移動体情報取得部202は、算出した移動体5の速度vと移動体検知位置Pから交差点401までの距離Lを用いて、当該移動体5の交差点進入時間T[秒]を取得する。交差点進入時間Tと距離L[m]と速度v[km/h]の間には、T=(L/v)×3.6の関係がある。交差点進入時間Tは、(L/v)×3.6を演算することによって取得してもよく、速度vを交差点進入時間Tを変換する変換表を予め作成しておき、その変換表を用いて速度vから交差点進入時間Tを取得してもよい。
【0063】
移動体情報取得部202は、時間差Δtの符号から移動体5の移動方向を算出する。移動体情報取得部202は、例えば、Δt>0であれば、移動体5の移動方向を交差点401に近づく方向(交差点401に進入する方向)とし、Δt<0であれば、移動体5の移動方向を交差点401から離れる方向(交差点401から退出する方向)とする。
【0064】
道路5に、
図4に示すように、交差点401に近づく方向の車線(以下、「第1車線」という。)と交差点401から離れる方向の車線(以下、「第2車線」という。)が設けられている場合は、移動体検知部201が第1車線に設けられ、通常、第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2の検出タイミングの時間差ΔtはΔt>0となるので、移動体情報取得部202は移動体5の移動方向として交差点401に近づく方向の情報を取得する。
【0065】
移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1又は第2移動体検知信号S
D2を用いて、例えば、移動体5の大きさ(長さ)に関する情報を取得する。例えば、第1センサ2011は、物体が近接すると、近接検知範囲内に物体が存在している期間だけ第1移動体検知信号S
D1を出力する。同一の速度で移動体5が第1センサ2011の近接検知範囲を通過した場合、第1移動体検知信号S
D1の移動体検知期間τは、移動体5の長さが長い程長くなる。
【0066】
従って、移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1(又は第2移動体検知信号S
D2)の移動体検知期間τの長さから、例えば、移動体5の長さとして「大」、「中」、「小」のいずれかに分類した情報を取得する。なお、移動体5の長さの分類数は3種類に限定されるものではない。また、移動体検知期間τを移動体5の大きさ(長さ)に関する情報に利用してもよい。
【0067】
走行条件判定部203は、移動体情報取得部202が取得した移動体情報を用いて、移動体検知位置Pを通過した移動体5が予め設定された走行条件を満たすか否かを判定する。走行条件は、例えば、移動体5が所定の閾値v
TH[km/h]以上又は閾値v
THよりも大の速度vで交差点401に進入する方向に走行しているという条件である。
【0068】
移動体情報取得部202が移動体5の加速度αや移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cも取得する場合は、移動体5が所定の閾値v
TH[km/h]以上又は閾値v
THよりも大の速度v
Cで交差点401に進入するという条件を走行条件としてもよい。
【0069】
図1の例では、移動体検知部201が検知する移動体5は、通常、第1車線を交差点401に向かって走行しているので、当該移動体5の移動方向は交差点401に進入する方向である。走行条件判定部203は、例えば、移動体情報取得部202が取得した移動体5の速度vを閾値v
THと比較することにより、移動体検知位置Pを通過した移動体5が走行条件を満たすか否かを判定する。
【0070】
例えば、走行条件判定部203は、v
TH≦vであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たすと判定し、v<v
THであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たさないと判定する。あるいはまた、走行条件判定部203は、v
TH<vであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たすと判定し、v≦v
THであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たさないと判定する。
【0071】
移動体5が所定の閾値v
TH[km/h]以上又は閾値v
THよりも大の速度v
Cで交差点401に進入するという条件を走行条件とした場合は、走行条件判定部203は、v
TH≦v
Cであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たすと判定し、v
C<v
THであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たさないと判定する。あるいはまた、走行条件判定部203は、v
TH<v
Cであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たすと判定し、v
C≦v
THであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たさないと判定する。
【0072】
交差点401に接続されて道路4の幅が1車線しかなく、交差点401に進入する方向の移動体5と交差点401から離れる方向の移動体5の両方が移動体検知位置Pを通過する場合は、走行条件判定部203は、移動体情報取得部202が取得した移動体5の移動方向に基づき、当該移動体5が交差点401に進入する方向に走行しているか否かを判定し、移動体5が交差点401に進入する方向に走行している場合に、移動体5の速度vが閾値v
TH以上又は閾値v
THよりも大の速度であるか否かを判定する。
【0073】
そして、走行条件判定部203は、例えば、v
TH≦vであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たすと判定し、v<v
THであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たさないと判定する。あるいはまた、走行条件判定部203は、v
TH<vであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たすと判定し、v≦v
THであれば、移動体検知位置Pを通過した移動体5は走行条件を満たさないと判定する。
【0074】
走行条件判定部203は、走行条件の判定処理のパラメータとして移動体5の速度vを用いてもよいが、速度v以外のパラメータを用いてもよい。例えば、時間差Δtや移動体検知期間τなどの時間パラメータを用いてもよい。
【0075】
時間差Δtを用いる場合は、走行条件判定部203は、時間差Δtを予め設定された閾値Δt
THと比較し、例えば、Δt≦Δt
THであれば、走行条件を満たすと判定し、Δt
TH<Δtであれば、走行条件を満たないと判定する。あるいはまた、走行条件判定部203は、Δt<Δt
THであれば、走行条件を満たすと判定し、Δt
TH≦Δtであれば、走行条件を満たないと判定する。閾値Δt
TH[秒]は、(D/v
TH)×3.6で与えられる時間である。
【0076】
移動体検知期間τを用いる場合は、走行条件判定部203は、移動体検知期間τを予め設定された閾値τ
THと比較し、例えば、τ≦τ
THであれば、走行条件を満たすと判定し、τ
TH<τであれば、走行条件を満たないと判定する。あるいはまた、走行条件判定部203は、τ<τ
THであれば、走行条件を満たすと判定し、τ
TH≦τであれば、走行条件を満たないと判定する。
【0077】
閾値τ
THは、移動体5の大きさに応じて設定される。例えば、小型車、中型車、大型車の移動体5の代表的な長さをそれぞれL
VS、L
VM、L
VLとすると、小型車に対応する閾値τ
STH[秒]は、(L
VS/v
TH)×3.6で与えられる。また、中型車に対応する閾値τ
MTH[秒]は、(L
VM/v
TH)×3.6で与えられ、大型車に対応する閾値τ
LTH[秒]は、(L
VL/v
TH)×3.6で与えられる。閾値τ
STH,τ
MTH,τ
LTHには、τ
STH<τ
MTH<τ
LTHの関係がある。
【0078】
また、移動体5が所定の閾値v
TH[km/h]以上又は閾値v
THよりも大の速度v
Cで交差点401に進入するという条件を走行条件とする場合は、判定パラメータとして速度v
Cに代えて加速度αを用いてもよい。加速度αを用いる場合、v
C=v+α×T=v+α×(L/v)×3.6の関係があるから、例えば、v
TH≦v
Cを走行条件の判定式とすると、v
TH≦v+α×(K/v)(但し、K=L×3.6)が成立する。そして、この判定式を変形すると、(v
TH−v)×(v/K)≦αという加速度αを用いる場合の走行条件の判定式が求められる。
【0079】
上記の判定式の左辺の(v
TH−v)×(v/K)を、加速度αを用いた走行条件を判定するための閾値α
THとすると、閾値α
THは速度vの関数であるから、移動体5の速度vに応じて複数の閾値α
THを設定する必要がある。走行条件判定部203は、例えば、速度vと閾値v
THを用いて(v
TH−v)×(v/K)を演算することにより、閾値α
THを算出し、その閾値α
THと加速度αを比較して、例えば、α
TH≦αであれば、走行条件を満たすと判定し、α<α
THであれば、走行条件を満たさないと判定する。あるいはまた、走行条件判定部203は、α
TH<αであれば、走行条件を満たすと判定し、α≦α
THであれば、走行条件を満たないと判定する。
【0080】
なお、速度v毎の閾値α
THを予め求めておき、走行条件判定部203は、移動体情報取得部202が取得した速度vに対応する閾値α
THと移動体情報取得部202が取得した加速度αとを比較して走行条件を判定するようにしてもよい。
【0081】
移動体情報取得部202と走行条件判定部203は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。移動体情報取得部202と走行条件判定部203の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0082】
情報出力部204は、走行条件判定部203が移動体検知部201の検知した移動体5が所定の走行条件を満たすと判定した場合、上述した事故防止情報を出力する。例えば、事故防止情報がフラグの場合、情報出力部204は、例えば、「1」又は「0」のフラグの情報を出力する。例えば、「1」は、閾値v
tH以上又は閾値v
tHよりも大きい速度vで交差点401に進入する移動体5が存在することを割り当てたビット情報であり、「0」は、閾値v
tH以上又は閾値v
tHよりも大きい速度vで交差点401に進入する移動体5が存在しないことを割り当てたビット情報である。
【0083】
また、事故防止情報がメッセージの情報の場合、例えば、「交差点401への移動体5の進入有り」と「交差点401への移動体5の進入無し」のメッセージ文が予め作成されているとすると、情報出力部204は、移動体検知部201が移動体5を検知する毎に、「交差点401への移動体5の進入有り」又は「交差点401への移動体5の進入無し」のメッセージ文からなる事故防止情報を出力する。
【0084】
情報出力部204は、例えば、事故防止情報を近距離無線通信により交差点401の周囲の所定の範囲AR[m]に出力する。所定の範囲ARを、例えば、
図1に示すように、交差点401を中心とした半径Rの範囲とすると、半径Rは100〜数100[m]の範囲である。
【0085】
情報出力部204は、事故防止情報でキャリア信号を変調する変調手段と、その変調手段で変調されたキャリア信号を空間に放射する放射手段とを備える。事故防止情報を交差点401の周囲の所定の範囲ARに送信できる方式であれば、近距離無線通信の方式は問わない。
【0086】
情報出力部204は、事故防止情報出力装置2毎に設けてもよく、
図5に示すように、事故防止情報出力装置2の移動体検知部201、移動体情報取得部202及び走行条件判定部203と情報出力部204とを分離し、4個の事故防止情報出力装置2に共通の情報出力部204を交差点401の適所に1個設ける構成でもよい。この場合は、4個の事故防止情報出力装置2の移動体情報取得部202で取得された各移動体情報は共通の情報出力部204に転送され、その情報出力部204から交差点401の周囲の所定の範囲ARに送信される。
【0087】
情報出力部204は、無線の通信手段で実現されるが、放送を送信する手段で実現されても良い。
【0088】
事故防止情報受信装置3は、
図6に示すように、情報受信部301、危険度情報取得部302及び事故防止情報出力部303を備える。
【0089】
情報受信部301は、情報出力部204から送出される無線信号を受信し、その無線信号を復調して事故防止情報を取得する。情報受信部301は、無線の通信手段で実現されるが、放送を受信する手段で実現されても良い。
【0090】
危険度情報取得部302は、情報受信部301が取得した事故防止情報に移動体5の移動体情報が含まれている場合、その移動体情報を用いて、交差点401における他の移動体5との衝突事故の危険度に関する情報である危険度情報を取得する。
【0091】
事故防止情報受信装置3が搭載された移動体5と他の移動体5を区別するため、前者を「第1の移動体5」と称し、後者を「第2の移動体5」と称して説明すると、危険度情報は、例えば、第1の移動体5が交差点401を通過するときに第2の移動体5と衝突事故を起こす危険度を評価した情報である。
【0092】
危険度の評価値は、例えば、交差点401で第1の移動体5と第2の移動体5が交差するときの距離dを求め、その距離dを予め設定された複数の閾値d
TH1,d
TH2,d
TH3(d
TH1<d
TH2<d
TH3)と比較して決定することができる。距離dは、例えば、第2の移動体5が交差点401の中心を通過するときの第1の移動体の位置を求め、当該中心と第1の移動体の位置との距離を求めることによって得ることができる。
【0093】
第1の移動体5と第2の移動体5が交差するときの距離dが短い程、衝突の危険度が高くなるから、その距離dの大きさによって危険度を複数のレベル又はランクで評価することができる。例えば、予め3個の閾値d
TH1,d
TH2,d
TH3(d
TH1<d
TH2<d
TH3)を設定しておき、距離dを閾値d
TH1,d
TH2,d
TH3と比較することにより、「高」、「中」、「低」の3段階で評価した危険度情報を得ることができる。4個以上の閾値d
TH1,d
TH2,d
TH3,…d
THn(d
TH1<d
TH2<d
TH3<…<d
THn)を設ければ、さらに細かいランク又はレベルで評価した危険度情報を得ることができる。
【0094】
上記の「高」、「中」、「低」などによる危険度情報は、交差点401で衝突事故が発生する危険度を評価した情報であるが、危険度情報は、衝突事故に関する情報であれば、その形式や内容は問わない。例えば、衝突事故が発生した場合の規模を評価した情報を含めてもよい。衝突事故が発生した場合の規模は、例えば、第1の移動体5と第2の移動体5の大きさの組み合わせや第1の移動体5の速度v
1と第2の移動体5の速度v
2の組み合わせなどによって評価することができる。
【0095】
また、危険度情報は、上記の例に限定されるものではなく、例えば、第1の移動体5と第2の移動体5が交差するときの距離dを危険度情報に用いてもよい。
【0096】
事故防止情報出力部303は、情報受信部301が受信した事故防止情報と危険度情報取得部302が取得した危険度情報を出力する。事故防止情報出力部303における情報の出力は、第1の移動体5の運転者に対して第2の移動体5が交差点401に接近しているか否かの情報、接近している場合は第2の移動体5の走行状態や第2の移動体5との事故の危険度などの情報を報知するための出力である。
【0097】
事故防止情報出力部303は、ディスプレイとスピーカーを有し、情報を画像と音声で第1の移動体5の運転者に向けて出力する。例えば、事故防止情報出力部303は、情報受信部301が取得した事故防止情報や危険度情報取得部302が取得した危険度情報を文字、図形などを用いてディスプレイに表示する。
【0098】
事故防止情報出力部303は、例えば、ディスプレイに交差点401の地図又は交差点401の形状を示す二次元画像を表示し、その地図又は二次元画像上に情報受信部301が取得した1以上の事故防止情報に基づいて所定の情報を出力するとよい。また、事故防止情報出力部303は、危険度情報取得部302が取得した危険度情報を用いて、交差点401の地図又は二次元画像上に第2の移動体5が当該交差点401に進入するときの第1の移動体5との相対的な位置関係と両移動体5の衝突事故の危険度を出力するとよい。
【0099】
さらに、事故防止情報出力部303は、衝突事故の危険度が高い場合、第1の移動体5の運転者に対して警告や衝突回避の操作などを表示したり、警告音や音声メッセージを出力したりするようにしてもよい。
【0100】
次に、交差点事故防止システム1を構成する事故防止情報出力装置2と事故防止情報受信装置3の動作について説明する。まず、事故防止情報出力装置2の事故防止情報の送信制御の動作について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0101】
以下の説明では、交差点401の周囲に存在する移動体5を区別しない場合は、単に「移動体5」と表記し、その速度を「速度v」と表記する。事故防止情報出力装置2が検知する移動体5と、事故防止情報出力装置2から送信される事故防止情報を受信して出力する事故防止情報受信装置3が搭載された移動体5とを区別する場合は、前者の移動体5を「第2の移動体5」と表記し、後者の移動体5を「第1の移動体5」と表記する。また、第1の移動体5の速度を「v
1」と表記し、第2の移動体5の速度を「v
2」と表記する。
【0102】
また、第1の移動体5も事故防止情報出力装置2で検出されるが、事故防止情報出力装置2の動作説明では、検知対象の移動体5を「第2の移動体5」と表記する。また、第2の移動体5にも事故防止情報受信装置3が搭載されるが、事故防止情報受信装置3の動作説明では、第2の移動体5の移動体情報を受信する事故防止情報受信装置3が搭載された移動体5を「第1の移動体5」と表記する。
【0103】
(ステップS701)移動体検知部201は、第2の移動体5の通過を検知している(S701のループ処理)。移動体検知部201の構成要素である第1センサ2011は、第2の移動体5が検知範囲を通過すると、第2の移動体5が通過している期間τだけ第2の移動体5を検知した第1移動体検知信号S
D1を出力する。移動体検知部201の構成要素である第2センサ2012も第2の移動体5が検知範囲を通過すると、第2の移動体5が通過している期間τだけ第2の移動体5を検知した第2移動体検知信号S
D2を出力する。
【0104】
移動体検知部201の第1センサ2011と第2センサ2012から第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2が出力されると(S701:Y)、ステップS702に進む。
【0105】
(ステップS702)移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2を用いて、通過した第2の移動体5の速度v
2、移動方向、大きさ及び第2の移動体5の交差点進入時間Tなどの移動体情報を算出する。
【0106】
移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2の出力タイミングの時間差Δt[秒]と、第1センサ2011と第2センサ2012の間隔D[m]を用いて速度v
2[km/h]を取得する。移動体情報取得部202は、例えば、(D/Δt)×3.6を演算することにより、第2の移動体5の速度v
2を取得する。
【0107】
移動体情報取得部202は、時間差Δtの符号に基づいて第2の移動体5の移動方向を取得する。移動体情報取得部202は、Δt>0であれば、第2の移動体5の移動方向を交差点401に近づく方向とし、Δt<0であれば、第2の移動体5の移動方向を交差点401から離れる方向とする。
【0108】
移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1又は第2移動体検知信号S
D2の移動体検知期間τを用いて第2の移動体5の大きさ(長さ)を取得する。移動体情報取得部202は、例えば、移動体検知期間τを、算出した速度v
2に対応して予め設定された閾値τ
TH1,τ
TH2(τ
TH2<τ
TH1)と比較して「大」(大型車)、「中」(中型車)、「小」(小型車)などの第2の移動体5の大きさ(長さ)の情報を取得する。
【0109】
移動体情報取得部202は、算出した第2の移動体5の速度v
2と移動体検知位置Pから交差点401までの距離Lを用いて当該第2の移動体5の交差点進入時間Tを取得する。移動体情報取得部202は、例えば、(L/v)×3.6を演算して交差点進入時間T[秒]を取得する。
【0110】
(ステップS703)走行条件判定部203は、移動体情報取得部202が取得した移動体情報を用いて移動体検知部201が検知した第2の移動体5が所定の走行条件(予め設定された閾値v
TH以上又は閾値v
THより大の速度v
2で交差点401に近付く方向に走行しているという走行条件)を満たすか否かを判定する。走行条件判定部203は、例えば、第2の移動体5の速度v
2を閾値v
THと比較し、v
TH≦v
2であるか否かを判定する。
【0111】
走行条件判定部203は、v
TH≦v
2であれば(S703:Y)、第2の移動体5は所定の走行条件を満たすと判定し、ステップS704に進み、v
2<v
THであれば(S703:N)、第2の移動体5は所定の走行条件を満たさないと判定し、ステップS701に戻る。
【0112】
なお、ステップS703で、走行条件判定部203は、v
TH<v
2であるか否かを判定してもよい。この場合は、走行条件判定部203は、v
TH<v
2であれば(S703:Y)、第2の移動体5は所定の走行条件を満たすと判定し、ステップS704に進み、v
2≦v
THであれば(S703:N)、第2の移動体5は所定の走行条件を満たさないと判定し、ステップS701に戻る。
【0113】
また、道路4の幅が1車線しかない場合は、走行条件判定部203は、第2の移動体5の移動方向が交差点401に進入する方向であるか否かを判定し、交差点401に進入する方向であると判定された場合に、第2の移動体5の速度v
2を閾値v
THと比較し、v
TH≦v
2又はv
TH<v
2であるか否かを判定する。
【0114】
(ステップS704)情報出力部204は、事故防止情報を近距離無線通信により交差点401を中心とした所定の範囲ARに送信する。
【0115】
次に、事故防止情報受信装置3の事故防止情報の受信制御の動作について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0116】
(ステップS801)情報受信部301は、事故防止情報出力装置2が送信する事故防止情報を受信可能な状態になっている(ステップS801のループ処理)。事故防止情報受信装置3が搭載された第1の移動体5が交差点401を中心とした所定の範囲AR内を移動しているときに、事故防止情報出力装置2が事故防止情報を送信すると、情報受信部301は、その事故防止情報を受信し(S801:Y)、ステップS802に進む。
【0117】
(ステップS802)危険度情報取得部302は、情報受信部301が受信した事故防止情報に第2の移動体5の移動体情報が含まれているか否かを判別する。危険度情報取得
部302は、第2の移動体5の移動体情報が含まれていれば(S802:Y)、ステップS803に進み、第2の移動体5の移動体情報が含まれていなければ(S802:N)、ステップS804に進む。
【0118】
(ステップS803)危険度情報取得部302は、情報受信部301が受信した第2の移動体5の移動体情報を用いて、交差点401における第1の移動体5と第2の移動体5との衝突事故の危険度に関する情報を取得する。危険度情報取得部302は、例えば、第1の移動体5の速度v
1と第2の移動体5の交差点進入時間Tを用いて、第2の移動体5が交差点401を通過する時刻(例えば、第2の移動体5が交差点401の中心を通過する時刻)における第1の移動体5の位置を算出する。
【0119】
さらに、危険度情報取得部302は、第2の移動体5が交差点401を通過するときの第1の移動体5と第2の移動体5の距離d(例えば、交差点401の中心から第1の移動体5の位置までの距離)を算出し、その算出結果に基づいて、例えば、「低」、「中」、「高」で評価した危険度情報を取得する。
【0120】
(ステップS804)事故防止情報出力部303は、情報受信部301が取得した事故防止情報、又は事故防止情報と危険度情報取得部302が取得した危険度情報を出力する。危険度情報取得部302は、例えば、情報受信部301が取得した事故防止情報、又は事故防止情報及び危険度情報をディスプレイに文字や図形によって表示し、スピーカーから音声によって出力する。
【0121】
ステップS804では、第2の移動体5の危険度情報が「中」又は「高」の場合、運転者に対して衝突を回避するための運転操作を促すために、事故防止情報出力部303は、第1の移動体5の運転者に対して予め設定された警告音や警告メッセージを報知するようにしてもよい。
【0122】
事故防止情報出力部303が警告音や警告メッセージが報知した場合、第1の移動体5の運転者は、通常、減速するなどの運転操作を行って第2の移動体5との衝突事故の危険度を低下させるが、第1の移動体5に衝突事故防止機構が設けられている場合は、例えば、
図9に示すフローチャートによって衝突事故防止機構を作動させるようにしてもよい。衝突事故防止機構は、例えば、自動的にブレーキペダルを作動させて移動体5の速度を減速したり、移動体5を停止させたりする機構などである。
【0123】
図9に示すフローチャートは、
図8に示したフローチャートのステップS804以降に、衝突事故の危険度が高いか否かの判定処理(S805)と、第1の移動体5の運転者が衝突事故を回避するための所定の運転操作を行ったか否かの判定処理(S806)と、その判定処理で第1の移動体5の運転者が所定の運転操作をしていない場合(S806:N)、衝突事故防止機構を作動させる事故防止処理(S807)を設けたものである。
【0124】
図9に示すフローチャートでは、ステップS804で危険度情報取得部302が第2の移動体5の危険度情報を取得すると、事故防止情報出力部303は、その危険度が高いか否かを判定する(S805)。事故防止情報出力部303は、その危険度が低い場合は(S805:N)、ステップS801に戻り、その危険度が高い場合は(S805:Y)、さらに運転者が警告音や警告メッセージによる報知に応じて事故防止のための所定の運転操作をしたか否かを判定する(S806)。
【0125】
事故防止情報出力部303は、運転者が事故防止のための所定の運転操作をした場合は(S806:Y)、ステップS801に戻る。事故防止情報出力部303は、所定の運転操作をしていない場合は(S806:N)、衝突事故防止機構に作動の指令信号を出力して自動的に第1の移動体5の速度v
1を所定の低速に減速若しくは第1の移動体5を停止させる動作をさせ(S807)、ステップS801に戻る。
【0126】
(具体例1)
次に、交差点401での移動体5同士の衝突を防止するための交差点事故防止システム1の具体例1について説明する。
【0127】
具体例1は、交差点事故防止システム1を構成する事故防止情報出力装置2が移動体5(第2の移動体5)の速度v
2と移動方向の情報を検出し、これらの検出情報が所定の走行条件を満たす場合に事故防止情報を近距離無線通信によって交差点401の周囲の所定の範囲ARを走行する移動体5(第1の移動体5)に搭載された事故防止情報受信装置3に送信するシステムである。
【0128】
図10は、事故防止情報出力装置2の構成の具体例を示す図である。
図11は、事故防止情報出力装置2に用いられる誘導型近接センサの構成の一例を示す図である。
図12は、事故防止情報出力装置2の移動体検知部201から出力される移動体検知信号の一例を示す図である。
【0129】
事故防止情報出力装置2は、道路4の移動体検知位置Pを通過する第2の移動体5を検知する第1センサ2011と第2センサ2012として、
図8に示す誘導型近接センサ6が用いられている。誘導型近接センサ6は、導電性の物体(導体)を検知する検知コイル601と、その検知コイル601を用いて導体が近接したことを検知する検知ユニット602を備える。検知ユニット602には、検知コイル601に高周波電流を流す発振回路6021と、その発振回路6021の発振状態の変化に基づいて導体を検知する検知回路6022と、その検知回路6022が導体を検知するのに応じて検知信号を生成し、出力する出力回路6023が収納されている。
【0130】
誘導型近接センサ6の検知コイル601は道路4の左側車線に埋設され、検知ユニット602は事故防止情報出力装置2の装置本体20に収納されている。事故防止情報出力装置2の装置本体20は、道路沿いの歩道の適所に設置され、検知コイル601と発振回路6021との間は同軸ケーブル(図示省略)によって接続されている。
【0131】
第1センサ2011と第2センサ2012に用いられる誘導型近接センサ6は、同一の構成であるので、以下、第1センサ2011について、誘導型近接センサ6の具体的な構成と動作を説明する。
【0132】
検知コイル601は、開口面積の大きい矩形、多角形、円形などの断面形状を有している。検知コイル601の幅方向の長さX(
図11参照)は車線の幅の3/4以上の長さを有し、検知コイル601の道路4の長手方向に沿う方向の長さY(
図11参照)は、適宜の長さを有している。第1センサ2011の検知コイル601は、道路4の移動体検知位置Pに対して+D[m]の位置であって、道路4の左側車線の略中央に開口面を水平にして埋設されている。
【0133】
発振回路60
21から検知コイル601に高周波電流を流すと、
図11に示すように、当該検知コイル601の開口面を鎖交するように高周波磁界Hが発生する。この高周波磁界Hは、道路4の路面を横切るように地中と地上との間を周回する。検知コイル601の上部(検知範囲)を第2の移動体5が通過すると、第2の移動体5の導体部分に渦電流が流れ、この渦電流により検知コイル601のインピーダンスが変化して発振回路6021の発振状態が変化する。例えば、発振回路6021の発振が低下したり、停止したりする。
【0134】
検知回路6022は、発振回路6021の発振状態の変化から第2の移動体5が検知範囲に近接したことを示す信号を出力し、出力回路6023がその信号の増幅や波形整形等の処理をして矩形波の第1移動体検知信号S
D1を生成し、移動体情報取得部202に出力する。
【0135】
第2センサ2012も同様の動作を行い、第2センサ2012の検知コイル601の検知範囲を第2の移動体5が通過すると、出力回路6023から第2の移動体5を検知した第2移動体検知信号S
D2を出力する。
【0136】
従って、第2の移動体5が移動体検知位置Pを通過すると、移動体検知部201の第1センサ2011と第2センサ2011Bは、
図12に示すように、矩形波の第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2を出力する。第1移動体検知信号S
D1のハイレベル期間が第1センサ2011で第2の移動体5を検知している期間であり、第2移動体検知信号S
D2のハイレベル期間が第2センサ2012で第2の移動体5を検知している期間である。第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2は、第2の移動体5を検知している期間がローレベルとなる信号であってもよい。
【0137】
第1移動体検知信号S
D1の出力タイミング(立上がりタイミングa)と第2移動体検知信号S
D2の出力タイミング(立上がりタイミングb)との間に時間差Δt[秒]が生じているのは、第1センサ2011の検知コイル601と第2センサ2012の検知コイル601の配設位置のずれ(間隔D[m])に基づく第2の移動体5の検知タイミングのずれである。
【0138】
事故防止情報出力装置2の装置本体20には、第1センサ2011の検知ユニット602と、第2センサ2012の検知ユニット602が収納されるとともに、移動体情報取得部202が収納されている。また、装置本体20には、走行条件判定部203と情報出力部204が収納されている。移動体情報取得部202には、第1センサ2011と第2センサ2012の間隔D[m]のデータが記憶されている。
【0139】
第1センサ2011の出力回路6023から出力される第1移動体検知信号S
D1と第2センサ2012の出力回路6023から出力される第2移動体検知信号S
D2は、移動体情報取得部202に入力される。
図10に示す具体例では、第1センサ2011及び第2センサ2012の検知コイル601は、道路4の第1車線(移動体5が交差点401に近付く方向に走行する車線。左側車線)に配設されているので、第2の移動体5が逆走していない限り、第2の移動体5が移動体検知位置Pを通過する毎に移動体情報取得部202には第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2がこの順番で入力される。
【0140】
移動体情報取得部202は、第1移動体検知信号S
D1の立ち上がり(
図12のタイミングa参照)を検出すると、計時を開始し、第2移動体検知信号S
D2の立ち上がり(
図12のタイミングb参照)を検出すると、その時の計時時間Δt(第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2との時間差Δt)を取得する。
【0141】
時間差Δtは、0<Δtであるので、移動体情報取得部202は、検知した第2の移動体5の走行方向を交差点401に進入する方向と判定する。移動体情報取得部202は、この判定結果も一旦メモ
リ2021に記憶する。
【0142】
なお、移動体情報取得部202は、第2移動体検知信号S
D2の立ち上がりを第1移動体検知信号S
D1の立ち上がりよりも先に検出したときには、負の符号のフラグをセットし、第2移動体検知信号S
D2の立ち上がりから第1移動体検知信号S
D1の立ち上がりまでの計時時間Δtを「−Δt」に設定する。これにより、−Δt<0となるので、移動体情報取得部202は、検知した第2の移動体5の走行方向を交差点401から離れる方向と判定する。
【0143】
第2の移動体5が第1センサ2011の検知コイル601と第2センサ2012の検知コイル601の間を速度v
2[km/h]で移動する場合、時間差Δt[秒]、速度v
2、距離D「m」の間にはΔt=(D/v
2)×3.6の関係がある。移動体情報取得部202は、例えば、取得した時間差Δt[秒]と第1センサ2011と第2センサ2012の間隔D[m]とを用いて、(D/Δt)×3.6を演算することにより、第2の移動体5の速度v
2[km/h]を取得する。例えば、間隔Dが4[m]、時間差Δtが0.3[秒]の場合、移動体情報取得部202は、(4/0.3)×3.6を演算して48[km/h]の速度v
2を取得する。移動体情報取得部202は、取得した第2の移動体5の速度v
2を一旦メモリ2021に記憶する。
【0144】
なお、時間差Δtを速度vに変換する変換表を予め作成してメモリ2021に格納しておき、移動体情報取得部202は、その変換表を用いて時間差Δtから速度v
2を取得してもよい。
【0145】
また、移動体情報取得部202は、例えば、35、40、45、…80,85…[km/h]などの5[km/h]ピッチの速度で第2の移動体5の速度v
2を取得するようにしてもよい。この場合は、例えば、27.5、32.5、37.5、42.5、…77.5、82.5、87.5、…[km/h]の各速度に対応する閾値Δt
1,Δt
2,Δt
3,…Δt
nを予め設定してメモリ2021に格納しておく。移動体情報取得部202は、取得した時間差Δtをこれらの閾値Δt
r(r=1,2,…n)と比較してΔt
r≦Δt<Δt
r+1であれば、Δt
r+1に対応する速度v
r+1とΔt
rに対応する速度v
rの範囲の中心の速度v
r0を第2の移動体5の速度v
2とする。
【0146】
例えば、D=4[m]とすると、37.5[km/h]に対応する閾値Δt
rは0.384[秒]、42.5[km/h]に対応する閾値Δt
r+1は0.339[秒]であり、37.5[km/h]から42.5[km/h]の範囲の中心の速度は、40.0[km/h]である。
【0147】
移動体情報取得部202は、時間差Δtと閾値0.339及び閾値0.384と比較して0.339≦Δt<0.384であれば、速度40[km/h]を移動体5の速度v
2とする。
【0148】
走行条件判定部203は、移動体情報取得部202が取得した第2の移動体5の速度v
2と移動方向の情報を用いて、移動体検知位置Pを通過した移動体5が所定の走行条件を満たすか否かを判定する。走行条件は、例えば、移動体5が所定の閾値v
TH以上又は閾値v
THより大の速度v
2で交差点401に進入する方向に走行している(移動体検知位置Pを通過した)という条件である。
【0149】
閾値v
THは、道路4毎に設定されている法定速度や、道路4を走行する移動体5の平均的な速度vや、交差点401で衝突事故が発生したときの移動体5の速度などに基づいて、適宜の値が設定される。全ての道路4で同一の閾値v
THを設定してもよく、道路4毎に異なる閾値v
THを設定してもよい。
【0150】
道路4が第1車線と第2車線を有し、事故防止情報出力装置2が第1車線に設けられている場合、移動体検知部201が検知する第2の移動体5は、通常、第1車線を交差点401に向かって走行しているので、移動体情報取得部202が取得する第2の移動体5の移動方向は交差点401に進入する方向である。
【0151】
この場合は、走行条件判定部203は、移動体情報取得部202が取得した第2の移動体5の速度v
2を閾値v
THと比較することにより、当該第2の移動体5が走行条件を満たすか否かを判定する。走行条件判定部203は、例えば、v
TH≦v
2であれば、第2の移動体5は走行条件を満たすと判定し、v
2<v
THであれば、第2の移動体5は走行条件を満たさないと判定する。
【0152】
走行条件判定部203は、v
TH<v
2であれば、第2の移動体5は走行条件を満たすと判定し、v
2≦v
THであれば、第2の移動体5は走行条件を満たさないと判定するようにしてもよい。
【0153】
走行条件判定部203は、第2の移動体5が走行条件を満たす場合、情報出力部204に事故防止情報の送信を指示する指令信号を出力し、第2の移動体5が走行条件を満たさない場合、情報出力部204に事故防止情報の送信を指示する指令信号を出力しない。
【0154】
なお、走行条件判定部203は、速度v
2以外のパラメータを用いて第2の移動体5が走行条件を満たすか否かの判定をしてもよい。例えば、時間差Δtの時間パラメータを用いてもよい。この場合は、走行条件判定部203は、時間差Δtを予め設定された閾値Δt
THと比較し、例えば、Δt≦Δt
THであれば、走行条件を満たすと判定し、Δt
TH<Δtであれば、走行条件を満たないと判定する。
【0155】
閾値Δt
THは、(D/v
TH)×3.6[秒]で与えられる時間である。例えば、D=4[m]、v
TH=50[km/h]の場合、閾値Δt
THは、0.288[秒]となる。走行条件判定部203は、時間差Δtと閾値Δt
TH=0.288を比較し、例えば、Δt≦0.288であれば、第2の移動体5は50[km/h]以上の速度v
2で交差点401に近づく方向に移動体検知位置Pを通過した(すなわち、走行条件を満たす)と判定し、0.288<Δtであれば、第2の移動体5は50[km/h]未満の速度v
2で移動体検知位置Pを通過している(すなわち、走行条件を満たさない)と判定する。
【0156】
なお、走行条件判定部203は、Δt<Δt
THであれば、第2の移動体5は走行条件を満たすと判定し、Δt
TH≦Δtであれば、第2の移動体5は走行条件を満たさないと判定するようにしてもよい。
【0157】
情報出力部204は、基本構成としてキャリア発生回路2041、変調信号生成回路2042、変調回路2043、増幅回路2044及び送信アンテナ2045を備える。キャリア発生回路2041は、所定の高周波f
cを有するキャリア信号S
cを発生する。高周波f
cは、例えば、数百MHz帯から数GHz帯の高周波である。
【0158】
変調信号生成回路2042は、走行条件判定部203から事故防止情報の送信指示の指令信号が入力されると、所定の事故防止情報に、例えば、事故防止情報出力装置2を識別する装置識別情報(例えば、ID番号)や検知した第2の移動体5を識別する移動体識別情報(例えば、ID番号)、検出日時などの所要の情報を付加して変調信号を生成する。
【0159】
事故防止情報出力装置2の装置識別情報は予め設定されており、情報出力部204に事故防止情報出力装置2の識別番号が記憶されている。第2の移動体5の移動体識別情報は、移動体検知部201が第2の移動体5を検出する毎に所定のルールに従って移動体識別情報を設定してもよい。例えば、1日における第2の移動体5の検出順の番号を移動体情報識とする場合、ある日の0時からカウントしてN番目に検出された第2の移動体5の移動体識別情報を、「N」に設定してもよい。
【0160】
変調回路2043は、キャリア発生回路2041が発生したキャリア信号S
cを所定の変調方式(例えば、ASK(amplitude-shift keying)変調方式)によって変調信号生成回路2042が生成した変調信号で変調する。
【0161】
増幅回路2044は、変調信号で変調されたキャリア信号S
cを増幅する。送信アンテナ2045は、増幅回路2023から出力されるキャリア信号S
cを空中に放射する。
【0162】
情報出力部204は、走行条件判定部203で第2の移動体5が所定の走行条件を満たすと判定されると、上述した事故防止情報を交差点401の周囲の所定の範囲ARに送信する処理を行う。
【0163】
図13は、交差点事故防止システム1の事故防止情報受信装置3の構成の具体例を示す図である。具体例1では、事故防止情報受信装置3は事故防止情報出力装置2から送信された事故防止情報を受信して出力するだけであるので、危険度情報取得部302は有していない。
【0164】
情報受信部301は、受信アンテナ3011、高周波増幅回路3012、周波数変換回路3013及び復調回路3014を備える。受信アンテナ3011は、事故防止情報出力装置2から空中に放射された高周波f
cの電波を受信する。高周波増幅回路3012は、受信アンテナ3011から入力される高周波f
cを含む高周波信号を増幅する。周波数変換回路3013は、増幅回路3012から出力される高周波信号から高周波f
cを有するキャリア信号S
cを抽出し、そのキャリア信号S
cを所定の中間周波数f
IFに変換する。
【0165】
復調回路3014は、周波数変換回路3013から出力される中間周波数f
IFのキャリア信号S
cから変調信号を復調し、当該変調信号に含まれる事故防止情報を出力する。復調回路3014で復調された事故防止情報は、例えば
、事故防止情報出力部303に設けられたメモリ(図示省略)に記憶される。
【0166】
事故防止情報出力部303は、事故防止情報を出力するために予め用意された文字、図形、静止画などの情報を格納する出力情報格納部3031と、移動体情報を視覚的及び聴覚的に出力する出力処理手段3032を備える。
【0167】
出力情報格納部3031には、交差点401の部分の地図又は交差点401の形状や構造を示す二次元画像の情報や運転者に報知するための警告や衝突回避のためのメッセージなどの情報が記憶されている。出力処理手段3032は、ディスプレイ3032Bと、スピーカー3032Cと、メモリ3021に一時的に記憶された事故防止情報を所定の形式でディスプレイ3032Bに表示したり、スピーカー3032Cから音声出力したりする処理を行う出力処理回路3032Aとを備える。
【0168】
出力処理回路3032Aは、例えば、出力情報格納部3031から第1の移動体5が進入しようとする交差点401に対応する地図又はその交差点401の形状等を示す二次元画像を読み出してディスプレイ3032Bに表示する。また、出力処理回路3032Aは、デイプレイ3031Bに表示された地図又は二次元画像の事故防止情報が送信された事故防止情報出力装置2に対応する位置に、第2の移動体5の画像若しくはマークをプロットするとともに、交差点401に進入する第2の移動体5が存在することを示すメッセージを表示する。
【0169】
図14は、ディスプレイ3032Bに出力される事故防止情報の出力態様の一例を示す図である。
【0170】
図14の例では、第1の移動体5が進入しようとしている十字形の交差点401の平面
図G1が表示されている。交差点401の平面
図G1は、第1の移動体5の走行車線を上下方向とし、第1の移動体5の走行方向が下から上の方向となるように表示している。また、交差点401の平面図に第1の移動体5と3台の第2の移動体5がプロットされている。「○」印のマークM0は、第1の移動体5を示し、「△」印のマークM1,M2,M3は、第2の移動体5を示している。
【0171】
第1の移動体5は、画面の下から上に向かって交差点401に進入するので、交差点401の下側に延びる道路4上に「○」印のマークM0が描かれている。1個の「△」印のマークM1は、交差点401の左側に延びる道路4上に存在することを示し、2個の「△」印のマークM2,M3は、交差点401の右側に延びる道路4上に存在することを示している。
【0172】
マークM1〜M3の表示位置は、第1の移動体5と第2の移動体5の道路4上の正確な位置を示したものではない。マークM1〜M3の表示位置は、閾値v
TH以上の高速で交差点401の左側から当該交差点401に進入する第2の移動体5が1台あり、閾値v
TH以上の高速で交差点401の右側から当該交差点401に進入する第2の移動体5が2台あることを視覚的かつ直感的に認識できるように示したものである。
【0173】
3台の第2の移動体5について、事故防止情報をメッセージ文に変換した文字情報J1,J2が交差点401の平面
図G1の右側に表示されている。文字情報J1は、交差点401の左側から高速で進入する第2の移動体5の存在に関する情報であり、文字情報J2は、交差点401の右側から高速で進入する第2の移動体5の存在に関する情報である。
【0174】
文字情報J1には、例えば、「左側から交差点401に進入する車が1台あります。衝突事故に注意して下さい。」のメッセージが表示される。また、文字情報J2には、例えば、「右側から交差点401に進入する車が2台あります。衝突事故に注意して下さい。」のメッセージが表示される。
【0175】
出力処理回路3032Aは、ディスプレイ3032Bに交差点401に高速で進入する3台の第2の移動体5に関する情報を表示するとともに、ディスプレイ3032Bに表示した文字情報J1,J2のメッセージ文を音声合成により読み上げた音声信号を生成し、スピーカー3032Cから出力する。この音声出力では、第1の移動体5が交差点401に進入するまでメッセージ文を繰り返し出力してもよく、所定の回数だけ繰り返し出力してもよい。
【0176】
図14の例では、交差点401の画像と当該交差点401に進入する4台の移動体5のマークM0〜M3を表示しているが、文字情報J1,J2だけを表示するようにしてもよい。
【0177】
(具体例2)
次に、交差点401での移動体5同士の衝突を防止するための交差点事故防止システム1の具体例2について説明する。
【0178】
具体例1の交差点事故防止システム1は、事故防止情報出力装置2から交差点401に進入する第2の移動体5が存在することを示す所定の事故防止情報を事故防止情報受信装置3に送信するシステムであった。具体例2の交差点事故防止システム1は、事故防止情報出力装置2から事故防止情報として第2の移動体5の移動体情報を事故防止情報受信装置3に送信し、事故防止情報受信装置3で危険度情報を取得してその危険度情報と第2の移動体5の移動体情報を出力するシステムである。
【0179】
具体例2の事故防止情報出力装置2は、具体例1の事故防止情報出力装置2に対して、移動体情報取得部202の処理内容が異なるだけで、具体的なブロック構成は
図10に示した事故防止情報出力装置2のブロック構成と同一である。
【0180】
すなわち、具体例2の移動体情報取得部202は、第2の移動体5に関する情報として、速度v
2と移動方向に加えて第2の移動体5の大きさと交差点進入時間Tを取得する点が具体例1の移動体情報取得部202と異なる。
【0181】
以下の説明では、具体例1で説明した移動体検知部201、走行条件判定部203、情報出力部204の動作の説明は省略し、移動体情報取得部202の具体例1とは異なる処理について説明する。
【0182】
移動体情報取得部202には、第1センサ2011と第2センサ2012の間隔D[m]、移動体検知位置Pから交差点401までの距離L[m]、第2の移動体5の大きさ(長さ)を判別するための閾値τ
TH1,τ
TH2(τ
TH2<τ
TH1)[秒]などの移動体情報を算出するためのデータが予め設定され、記憶されている。
【0183】
移動体情報取得部202は、第2の移動体5の大きさ(長さ)を、例えば、小型車、中型車、大型車の3種類に判別する。移動体情報取得部202は、例えば、5[m]以下の第2の移動体5を小型車、5[m]以上7[m]未満の第2の移動体5を中型車、7[m]以上の第2の移動体5を大型車と判定する。具体例2では、第2の移動体5の大きさを3種類に分類しているが、分類数は4以上でもよい。
【0184】
同じ大きさの第2の移動体5でも速度v
2が速くなるほど、第1移動体検知信号S
D1又は第2移動体検知信号S
D2の移動体検知期間τは短くなるから、第2の移動体5の大きさを判別するための閾値τ
TH1,τ
TH2は、速度に対応して設定されている。例えば、速度v
0[km/h]における第2の移動体5の長さの閾値5[m]に対応する移動体検知期間τの閾値τ
TH1をτ
01とし、第2の移動体5の長さの閾値7[m]に対応する移動体検知期間τの閾値τ
TH2をτ
02とする。この場合、速度v
a(>v
0)における移動体検知期間τの閾値τ
TH1は、τ
TH1=τ
01×(v
0/v
a)となり、閾値τ
TH2は、τ
TH2=τ
02×(v
0/v
a)となる。
【0185】
移動体情報取得部202には、例えば、30[km/h]から120[km/h]まで5[km/h]ステップで第2の移動体5の速度v
2を分類し、各速度v
2に対応して2個の閾値τ
TH1,τ
TH2が設定されている。例えば、v
0=30[km/h]とし、速度v
0に対応して(τ
TH1,τ
TH2)=(τ
01,τ
02)が設定されているとすると、v=35[km/h]に対応して(0.86×τ
01,0.86×τ
02)、v=40[km/h]に対応して(0.75×τ
01,0.75×τ
02)、v=45[km/h]に対応して(0.67×τ
01,0.67×τ
02)、…v=115[km/h]に対応して(0.26×τ
01,0.26×τ
02)、v=120[km/h]に対応して(0.25×τ
01,0.25×τ
02)が設定されている。
【0186】
第1センサ2011の出力回路6023から出力される第1移動体検知信号S
D1と第2センサ2012の出力回路6023から出力される第2移動体検知信号S
D2は、移動体情報取得部202に入力される。
図10に示す具体例では、第1センサ2011及び第2センサ2012の検知コイル601は、道路4の第1車線(移動体5が交差点401に近付く方向に走行する車線。左側車線)に配設されているので、第2の移動体5が逆走していない限り、第2の移動体5が移動体検知位置Pを通過する毎に移動体情報取得部202には第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2がこの順番で入力される。
【0187】
移動体情報取得部202は、第1センサ2011の出力回路6023から出力される第1移動体検知信号S
D1の立ち上がり(
図12のタイミングa参照)を検出すると、計時を開始し、第2センサ2012の出力回路6023から出力される第2移動体検知信号S
D2の立ち上がり(
図12のタイミングb参照)を検出すると、その時の計時時間Δt(第1移動体検知信号S
D1と第2移動体検知信号S
D2との時間差Δt)を取得する。
【0188】
移動体情報取得部202は、さらに計時を継続し、第1移動体検知信号S
D1の立ち下がり(
図12のタイミングc参照)を検出すると、計時を終了して計時時間τ(第1移動体検知信号S
D1のハイレベル期間)を取得する。計時時間τは、第1移動体検知信号S
D1の移動体検知期間τに相当する。移動体情報取得部202は、取得した時間差Δtと移動体検知期間τを一旦メモ
リ2021に記憶する。
【0189】
移動体情報取得部202は、具体例1で説明した方法と同様の方法で、取得した時間差Δtを用いて第2の移動体5の移動方向の情報を取得する。また、具体例1で説明した方法と同様の方法で、取得した時間差Δtと、第1センサ2011と第2センサ2012の間隔D[m]とを用いて第2の移動体5の速度v
2を取得する。移動体情報取得部202は、取得した時間差Δtと速度v
2を一旦メモ
リ2021に記憶する。
【0190】
さらに、移動体情報取得部202は、算出した第2の移動体5の速度v
2と移動体検知位置Pから交差点401までの距離Lを用いて、例えば、(L/v)×3.6[秒]を演算することにより、第2の移動体5の交差点進入時間T[秒]を取得する。例えば、距離Lが150[m]で、第2の移動体5の速度v
2が50[km/h]の場合、移動体情報取得部202は、(150/50)×3.6[秒]を演算して10.8[秒]の交差点進入時間Tを取得する。移動体情報取得部202は、取得した第2の移動体5の交差点進入時間Tを一旦メモ
リ2021に記憶する。
【0191】
なお、第2の移動体5の速度v
2を、30[km/h]、35[km/h]、40[km/h]、…などの5[km/h]ピッチで丸め込んだ速度で取得する場合は、各速度に対する交差点進入時間T[秒]を予め求めて速度v
2と交差点進入時間Tの変換表を作成しておき、移動体情報取得部202は、その変換表と算出した第2の移動体5の速度v
2を用いて交差点進入時間Tを取得するようにしてもよい。
【0192】
さらに、移動体情報取得部202は、取得した移動体検知期間τと、取得した速度v
2に対応して予め設定された閾値τ
TH1,τ
TH2(τ
TH2<τ
TH1)とを用いて、第2の移動体5の大きさ(長さ)を取得する。なお、取得した速度v
2が予め設定されている閾値τ
TH1,τ
TH2を分類する速度に一致しない場合、移動体情報取得部202は、最も近い速度の閾値τ
TH1,τ
TH2が用いて第2の移動体5の大きさ(長さ)を取得する。
【0193】
例えば、取得した速度v
2が52[km/h]だった場合、移動体情報取得部202は、移動体検知期間τと50[km/h]に対応する2個の閾値(0.6×τ
01,0.6×τ
02)を比較する。移動体情報取得部202は、τ<0.6×τ
01であれば、第2の移動体5の大きさを「小」(小型車)と判定し、0.6×τ
01≦τ<0.6×τ
02であれば、第2の移動体5の大きさを「中」(中型車)と判定し、0.6×τ
02≦τであれば、第2の移動体5の大きさを「大」(大型車)と判定する。移動体情報取得部202は、第2の移動体5の大きさの判定結果を一旦メモ
リ2021に記憶する。
【0194】
第1の移動体5の運転者は、第2の移動体5の大きさの情報を知ることにより、例えば、第1の移動体5が交差点401で第2の移動体5と衝突した場合の事故の大きさや危険度を予測することができる。
【0195】
情報出力部204の変調信号生成回路2042は、走行条件判定部203から事故防止情報の送信指示の指令信号が入力されると、変調信号を生成する。変調信号生成回路2042は、所定の事故防止情報と移動体情報取得部202が取得した第2の移動体5の移動体情報に、上述した事故防止情報出力装置2の装置識別情報、第2の移動体5の移動体識別情報、検出日時などの所要の情報を付加して変調信号を生成する。
【0196】
変調回路2043は、キャリア発生回路2041が発生したキャリア信号S
cを所定の変調方式によって変調信号生成回路2042が生成した変調信号で変調する。増幅回路2044は、変調信号で変調されたキャリア信号S
cを増幅する。送信アンテナ2045は、増幅回路2023から出力されるキャリア信号S
cを空中に放射する。
【0197】
情報出力部204は、走行条件判定部203で第2の移動体5が所定の走行条件を満たすと判定されると、上述した第2の移動体5の移動体情報を交差点401の周囲の所定の範囲ARに送信する処理を行う。
【0198】
図15は、具体例2の交差点事故防止システム1の事故防止情報受信装置3の構成の具体例を示す図である。
【0199】
具体例2では、事故防止情報受信装置3が事故防止情報出力装置2から送信された第2の移動体5の移動体情報を用いて危険度情報を算出し、事故防止情報に加えて第2の移動体5の移動体情報と危険度情報を出力するので、
図13に示すブロック図に対して、危険度情報取得部302を有している点が異なる。
【0200】
以下の説明では、具体例1で説明した情報受信部301
と事故防止情報出力部303の動作の説明は省略し、危険度情報取得部302の動作
と事故防止情報出力部303の具体例1とは異なる動作について説明する。
【0201】
復調回路3014は、周波数変換回路3013から出力される中間周波数f
IFのキャリア信号S
cから変調信号を復調し、当該変調信号に含まれる事故防止情報、移動体情報(第2の移動体5に関する情報)、移動体識別情報、事故防止情報出力装置2の識別情報などの情報を出力する。復調回路3014から出力される情報は、危険度情報取得部302内のメモリ3021に記憶される。
【0202】
危険度情報取得部302は、情報受信部301が受信した第2の移動体5の速度v
2の情報と事故防止情報受信装置3が搭載された第1の移動体5の速度v
1の情報を用いて、第1の移動体5が第2の移動体5と衝突事故を起こす危険度に関する情報を取得する。
【0203】
危険度情報取得部302には、第1の移動体5の現在の速度v
1の情報が入力される。また、第2の移動体5が交差点401に進入したときの第1の移動体5と第2の移動体5との衝突事故の危険度を判定する3個の閾値d
TH1,d
TH2,d
TH3(d
TH1<d
TH2<d
TH3)が予め設定され、それらの閾値d
TH1〜d
TH3が危険度情報取得部302内のメモリ3021に記憶されている。
【0204】
危険度情報取得部302は、情報受信部301が第2の移動体5に関する情報等を受信する毎に、その受信時刻(絶対時刻)を取得し、その受信時刻における第1の移動体5の速度v
1を用いて受信時刻から交差点進入時間Tが経過したときの第1の移動体5の位置を算出する。
【0205】
危険度情報取得部302は、算出した第1の移動体5の位置と第2の移動体5が交差点401に進入するときの位置(交差点401の中央又は進入口)の情報から両移動体5の距離dを算出する。さらに、危険度情報取得部302は、算出した距離dと3個の閾値d
TH1〜d
TH3を比較し、第1の移動体5と第2の移動体5との衝突事故の危険度を判定する。危険度情報取得部302は、d≦d
TH1であれば、衝突事故の危険度を「高」と判定し、d
TH1<d≦d
TH2であれば、衝突事故の危険度を「中」と判定し、d
TH3<dであれば、衝突事故の危険度を「低」と判定する。危険度情報取得部302は、判定結果をメモリ3021に一旦記憶する。
【0206】
図16は、メモリ3021に一時記憶される移動体情報等の一例を示す図である。
【0207】
同図において、「日時」は、移動体情報を受信した日時の情報である。「出力装置ID」は、移動体情報等を送信した事故防止情報出力装置2の識別情報である。「移動体ID」は、事故防止情報出力装置2が検知した第2の移動体5の識別情報である。「移動体情報」は、事故防止情報出力装置2から送信された第2の移動体5に関する情報である。「移動体情報」には、上述した移動体検知期間τ、時間差Δt、速度v、第2の移動体5の大きさ及び交差点進入時間Tの情報と危険度情報取得部302が取得した危険度情報が含まれている。
【0208】
なお、
図16において、移動体ID=A0123に対応する危険度情報が「−」となっているのは、移動体ID=A0123が第1の移動体5に相当しているからである。第1の移動体5が所定の走行条件を満たしていなければ、事故防止情報出力装置2から第1の移動体5の移動体情報は出力されないので、
図16の表には表示されない。
【0209】
事故防止情報出力部303は、移動体情報を出力するために予め用意された文字、図形、静止画などの情報を格納する出力情報格納部3031と、移動体情報を視覚的及び聴覚的に出力する出力処理手段3032を備える。
【0210】
出力情報格納部3031には、交差点401の部分の地図又は交差点401の形状や構造を示す二次元画像の情報や運転者に報知するための警告や衝突回避のためのメッセージなどの情報が記憶されている。出力処理手段3032は、ディスプレイ3032Bと、スピーカー3032Cと、第2の移動体5の移動体情報や第1の移動体5との衝突事故の危険度の情報などを所定の形式でディスプレイ3032Bに表示したり、スピーカー3032Cから音声出力したりする処理を行う出力処理回路3032Aと、を備える。
【0211】
出力処理回路3032Aは、例えば、出力情報格納部3031から第1の移動体5が進入しようとする交差点401に対応する地図又はその交差点401の形状等を示す二次元画像を読み出してディスプレイ3032Bに表示する。また、出力処理回路3032Aは、デイプレイ3031Bに表示された地図又は二次元画像の事故防止情報出力装置2の配設位置に対応する位置に、第2の移動体5の画像若しくはマークをプロットするとともに、各第2の移動体5の移動体情報(速度v
2、大きさ、交差点進入時間T、危険度などの情報)を表示する。
【0212】
図17は、ディスプレイ3032Bに表示される第2の移動体5の移動体情報の一例を示す図である。
【0213】
図17に示す表示態様は、
図14に示す表示態様と基本的に同じであるが、第2の移動体5のマークの表示態様とメッセージ文の表示態様が異なる。
【0214】
図16における移動体ID=D0401の第2の移動体5は、
図17のマークM1に対応し、移動体ID=B0321の第2の移動体5と移動体ID=B0323の第2の移動体5は、それぞれ
図17のマークM2,M3に対応している。マークM1に対応する第2の移動体5の危険度は「高」であるので、
図17では、マークM1の三角印が所定の色(例えば、赤色)で塗り潰した「▲」印としている。一方、マークM2,M3に対応する第2の移動体5の危険度は「低」であるので、
図17では、マークM2,M3の三角印が色抜きの「△」印としている。
【0215】
図17では、三角印の表示態様を異ならせているので、衝突事故の危険度が「高」の第2の移動体5を視覚的かつ直覚的に認識することができる。
【0216】
また、マークM1に対応する第2の移動体5(左側から交差点401に進入する第2の移動体5)の移動体情報は、(速度v
d、大きさ「中」、交差点進入時間T=T
4、危険度「高」)であるので、文字情報J1には、例えば、「左側から中型車が速度v
d[km/h]でT
4[秒]後に交差点に進入します。衝突事故に注意して下さい。」のメッセージが表示される。なお、運転者に対して文字情報J1に注意を向けるために、文字情報J1の枠を太くしたり、点滅させたりして文字情報J2,J3よりも目立つようにしてもよい。
【0217】
一方、マークM2に対応する第2の移動体5(右側から交差点401に進入する前側の第2の移動体5)の移動体情報は、(速度v
b、大きさ「中」、交差点進入時間T=T
2、危険度「低」)であるので、文字情報J2には、例えば、「右側から中型車が側と速度v
b[km/h]でT
2[秒]後に交差点に進入します。」のメッセージが表示される。また、マークM3に対応する第2の移動体5(右側から交差点401に進入する後側の第2の移動体5)の移動体情報は、(速度v
c、大きさ「大」、交差点進入時間T=T
3、危険度「低」)であるので、文字情報J3には、例えば、「右側から大型車が速度v
c[km/h]でT
3[秒]後に交差点に進入します。」のメッセージが表示される。
【0218】
マークM2,M3に対応する第2の移動体5の危険度は「低」であるので、文字情報J2,J3には、注意を喚起する「衝突事故に注意して下さい。」のメッセージは表示されていない。
【0219】
出力処理回路3032Aは、ディスプレイ3032Bに交差点401に進入する3台の第2の移動体5に関する移動体情報を表示するとともに、ディスプレイ3032Bに表示した文字情報J1,J2,J3のメッセージ文を音声合成により読み上げた音声信号を生成し、スピーカー3032Cから出力する。この音声出力では、第1の移動体5が交差点401に進入するまでメッセージ文を繰り返し出力してもよく、所定の回数だけ繰り返し出力してもよい。あるいは、衝突事故の危険度の高い文字情報J1だけを音声出力するようにしてもよい。
【0220】
また、衝突事故の危険度が高い場合、文字情報J1では、運転者に注意を喚起するメッセージを表示若しくは音声で報知しているが、例えば、「減速して下さい。」などの事故防止のための操作を表示若しくは音声で報知するようにしてもよい。
【0221】
図17の例では、ディスプレイ3032Bに交差点401の平面図を表示し、その交差点401に進入しようとしている第1の移動体5と3台の移動体5のマークを、各移動体5が走行している道路4が分かるように、道路4上にプロットしていた。
図17の例で、第1の移動体5と3台の移動体5の移動位置を道路4上にプロットして各移動体5が交差点401に進入する状況を表示するようにしてもよい。
【0222】
この場合は、情報受信部301が第2の移動体5の移動体情報を受信すると、危険度情報取得部302はその受信時刻(絶対時刻)T
Rを取得し、受信時刻T
Rから交差点進入時間Tが経過するまでの間で所定の時間ΔT[秒]が経過する毎の第2の移動体5の移動位置を算出する。受信時刻T
Rにおける第2の移動体5の位置は、走行している道路4の移動体検知位置Pであるから、時間ΔT[秒]が経過したときの第2の移動体5の位置は、走行している道路4上の移動体検知位置Pから(ΔT×v
2/3600)[m]だけ交差点401側に移動した位置となる。
【0223】
従って、受信時刻T
Rから任意の時間(m×ΔT)(m=1,2,…)[秒]が経過したときの第2の移動体5の位置は、走行している道路4上の移動体検知位置Pから(m×ΔT×v
2/3600)[m]だけ交差点401側に移動した位置で表される。
【0224】
また、第1の移動体5の移動位置については、危険度情報取得部302は、GPS機能によって受信時刻(絶対時刻)T
Rにおける第1の移動体5の位置情報を取得する。第1の移動体5の走行している道路4における受信時刻T
Rでの位置をP
Rとすると、危険度情報取得部302は、受信時刻T
Rから交差点進入時間Tが経過するまでの間で所定の時間ΔT[秒]が経過する毎の第1の移動体5の移動位置を算出する。
【0225】
時間ΔT[秒]が経過したときの第1の移動体5の位置は、走行している道路4上の受信時刻T
Rにおける位置P
Rから(ΔT×v
1/3600)[m]だけ交差点401側に移動した位置となる。従って、受信時刻T
Rから任意の時間(m×ΔT)[秒]が経過したときの第1の移動体5の位置は、走行している道路4上の受信時刻T
Rにおける位置P
Rから(m×ΔT×v
1/3600)[m]だけ交差点401側に移動した位置で表される。
【0226】
出力処理回路3032Aは、第2の移動体5に対して算出したm個の移動位置の情報を用いて、ディスプレイ3032Bに表示された交差点401の平面図に、当該第2の移動体5に対応する「△」又は「▲」のマークの表示位置を、m=0,1,2,…の位置に変化させる。これにより、ディスプレイ3032Bに表示された交差点401の平面図には、
図18に示すように、第2の移動体5に対応する「▲」印のマーク1及び「△」印のマークM2,M3が第2の移動体5の走行する道路4上を交差点401に向かって移動する状況が表示される。
【0227】
同様に、出力処理回路3032Aは、第1の移動体5に対して算出したm個の移動位置の情報を用いて、ディスプレイ3032Bに表示された交差点401の平面図に、当該第1の移動体5に対応する「○」印のマークM0の表示位置を、m=0,1,2,…の位置に変化させる。これにより、ディスプレイ3032Bに表示された交差点401の平面図には、
図18に示すように、第1の移動体5に対応する「○」印のマークM0が第1の移動体5の走行する道路4上を交差点401に向かって移動する状況が表示される。
【0228】
図18に示す表示例では、第1の移動体5が交差点401に進入するときの第2の移動体5の相対的な位置関係が視覚的に確認できるので、交差点401に進入する第2の移動体5について衝突事故の危険度を視覚的に確認することができる。
【0229】
図17,
図18の例でも、交差点401の画像と当該交差点401に進入する4台の移動体5のマークM0〜M3を表示せず、文字情報J1〜J3だけを表示するようにしてもよい。
【0230】
具体例2では、第2の移動体5の速度v
2だけを取得しているが、第1センサ2011と第2センサ2012に加えて第3センサを設け、第1センサ2011の第1移動体検知信号S
D1及び第2センサ2012の第2移動体検知信号S
D2と第3センサから出力される第3移動体検知信号S
D3を用いて第2の移動体5の加速度α(=dv
2/dt)[km/h
2]を取得するようにしてもよい。
【0231】
第2の移動体5の加速度αを取得すると、例えば、その加速度αと、速度v
2及び交差点進入時間Tとによって第2の移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cを取得することができる。移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cは、v
C=v
2+α×Tで表されるから、移動体情報取得部202は、v+α×Tを演算することにより、第2の移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cを取得することができる。
【0232】
第2の移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cが予測できるので、走行条件判定部203は、第2の移動体5が移動体検知位置Pを通過するときの速度v
2が閾値v
TH[km/h]以上又は閾値v
THよりも大の速度であるか否かの判定に代えて、第2の移動体5が交差点401に進入するときの速度v
Cが閾値v
TH[km/h]以上又は閾値v
THよりも大の速度であるか否かの判定を行うようにするとよい。
【0233】
この判定では、交差点401で第1の移動体5が第2の移動体5と交差するときの当該第2の移動体5の速度v
2を予測できるので、第2の移動体5との衝突事故の危険度を好適に取得することができる。
【0234】
上記の具体例1,2では、事故防止情報出力装置2に対して専用の事故防止情報受信装置3について説明したが、事故防止情報受信装置3の機能をカーナビゲージョン装置に搭載し、交差点401におけるナビゲーション情報とともに、受信した事故防止情報や算出した危険度情報を運転者に報知するようにしてもよい。
【0235】
以上より、具体例1,2によれば、第1の移動体5の運転者は、進入しようとしている交差点401に、3台の第2の移動体5が左右の道路4から進入してくることを事前に知ることができる。現在の速度v
1で交差点401に進入したときに衝突事故の危険度の高い第2の移動体5が存在する場合(
図17の例では、マークM1に対応する第2の移動体5が存在する場合)、第1の移動体5の運転者は、その警告メッセージを表示及び警告音によって認識することができる。これにより、第1の移動体5の運転者は、速度v
1の減速をしたり、第1の移動体5を停止したりするなどの衝突防止措置を事前に行うことができる。
【0236】
上記の効果は、第1の移動体5の運転者に対するものであるが、第2の移動体5の運転者にも第1の移動体5の運転者と同様に、他の移動体5の移動体情報が報知されるので、他の移動体5の運転者についても事前に速度v
2の減速や停止をするなどの衝突防止措置を行うことができる。これにより、交差点401に進入する複数の移動体5が出会い頭に衝突するなどの事故を防止することができる。
【0237】
上記の具体例1,2では、第1の移動体5が交差点401を中心とした半径Rの範囲AR内に入ると、第1の移動体5に搭載された事故防止情報受信装置3が第2の移動体5の移動体情報を受信するようになる。また、第1の移動体5が走行している道路4の移動体検知位置Pを通過すると、第1の移動体5の移動体情報がその移動体検知位置Pに設けられた事故防止情報出力装置2で検出され、交差点401を中心とした半径Rの範囲AR内に出力される。
【0238】
1以上の移動体5には第1の移動体5も含まれるから、第1の移動体5は、第2の移動体5の移動体情報だけでなく自己の移動体情報についても受信する。第1の移動体5が事故防止情報出力装置2で検出されてから交差点401に向かって走行している期間に、交差点401に接続されている複数の道路4の各移動体検知位置Pで1以上の第2の移動体5が検出されると、第2の移動体5が検出される毎にその第2の移動体5の移動体情報が第1の移動体5の事故防止情報受信装置3で受信される。
【0239】
第1の移動体5が事故防止情報出力装置2で検出された後に第2の移動体5が事故防止情報出力装置2で検出される場合、通常、第1の移動体5は、第2の移動体5よりも交差点401に近い位置を走行している。第1の移動体5の速度v
1と第2の移動体5の速度v
2の速度差Δv(=|v
1−v
2|)が小さい場合、第1の移動体5と第2の移動体5が同時刻に交差点401に進入することは少ない。このような場合は、第2の移動体5が所定の走行条件を満たす場合でも事故防止情報出力装置2は事故防止情報を送信しないようにしてもよい。
【0240】
あるいは、事故防止情報受信装置3側で、第1の移動体5よりも後に事故防止情報出力装置2で検出される第2の移動体5のうち、その速度v
2の第1の移動体5の速度v
1との速度差Δvが小さいものを抽出し、その第2の移動体5に対応する事故防止情報を事故防止情報出力部303から出力させないようにしてもよい。
【0241】
(実施の形態2)
図19は、実施の形態2に係る交差点事故防止システムの概念を説明するための図である。
【0242】
実施の形態1に係る交差点事故防止システム1は、事故防止情報出力装置2から交差点401に進入する第2の移動体5が存在することを示す所定の事故防止情報を交差点401に進入する第1の移動体5に搭載された事故防止情報受信装置3に送信するシステムであった。実施の形態2に係る交差点事故防止システム1Aは、交差点に発光器を設け、事故防止情報出力装置2から事故防止情報を当該発光器に送信して当該発光器の発光により第1の移動体5に高速で交差点401に進入する第2の移動体5が存在することを知らせるシステムである。
【0243】
実施の形態2に係る交差点事故防止システム1Aでは、
図19に示すように、交差点401の4つの角に発光器7が設けられている。例えば、交差点401から下側に延びる道路4には、第1車線側の角に発光器7が、当該道路4を走行する移動体5に向けて発光するように設けられている。交差点401から上側に延びる道路4と左右に延びる道路4についても、各道路4の第1車線側の角に交差点401に向かって走行する移動体5に対して発光するように発光器7が設けられている。
【0244】
実施の形態2に係る交差点事故防止システム1Aを構成する事故防止情報出力装置2の構成は、実施の形態1に係る交差点事故防止システム1を構成する事故防止情報出力装置2と基本的に同じであるので、その説明を省略する。
【0245】
また、実施の形態2に係る交差点事故防止システム1Aを構成する発行器7は、実施の形態1に係る交差点事故防止システム1を構成する事故防止情報受信装置3の事故防止情報を出力する出力手段を周知の発光手段に置き換えたものに相当するので、発光器7の構成の具体的な説明も省略する。
【0246】
4つの発光器7は、4つの事故防止情報出力装置2から近距離無線通信により送信される事故防止情報を受信する受信機を有している。各発光器7は、事故防止情報出力装置2から事故防止情報を受信すると、所定の発光動作を行って各発光器7に向かって走行する移動体5に対し交差点401に進入する他の移動体5が存在することを知らせる。
【0247】
発光器7の発光パターンは、種々の発光パターンを採用することができる。例えば、発光器7は、所定の周期で点滅する点滅光で他の移動体5の存在を知らせてもよく、他の移動体5が交差点401に進入する方向によって点滅光の周期を変化させてもよい。例えば、他の移動体5が左側から交差点401に進入する場合は、他の移動体5が右側から交差点401に進入する場合よりも点滅周波数を高くする、若しくは逆に点滅周波数を低くするようにしてもよい。
【0248】
あるいは、点滅光の周期は同一にして発光器7の発光色を移動体5が交差点401に進入する方向によって異ならせるようにしてもよい。例えば、他の移動体5が左側から交差点401に進入する場合は、白色で点滅させ、他の移動体5が右側から交差点401に進入する場合は、オレンジ色で点滅させるようにしてもよい。
【0249】
実施の形態2に係る交差点事故防止システム1Aでも、閾値v
TH以上又は閾値v
THより大の速度v
2で交差点401に進入する第2の移動体5が存在することを第1の移動体5の運転者に知らせることができるので、実施の形態1に係る交差点事故防止システム1と同様の効果を奏することができる。
【0250】
上記の実施の形態1,2では、移動体5として4輪以上の自動車を例に説明したが、事故防止情報出力装置2で三輪車や二輪車の移動体情報を検出し、その移動体情報を交差点401の周辺に存在する1以上の移動体5に送出するようにしてもよい。
【0251】
上記の実施の形態1,2に係る事故防止情報出力装置2と事故防止情報受信装置3における処理は、ソフトウェアで実現しても良い。そして、このソフトウェアをソフトウェアダウンロード等により配布しても良い。また、このソフトウェアをCD−ROMなどの記録媒体に記録して流布しても良い。
【0252】
上記の実施の形態1,2における事故防止情報出力装置2を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。
【0253】
すなわち、そのログラムは、コンピュータを、道路の交差点の手前の移動体検知位置に配設された移動体検知手段の検知情報を用いて、移動体検知位置を通過する移動体を検知する移動体検知部と、移動体検知部が検知した移動体の検知情報に基づいて、当該移動体に関する情報を取得する移動体情報取得部と、移動体情報取得部が取得した移動体に関する情報に基づいて、移動体が所定の走行条件を満たすか否かを判定する走行条件判定部と、移動体が走行条件を満たすと走行条件判定部が判定した場合、事故防止に関する情報を出力する情報出力部と、して機能させるプログラムである。
【0254】
また、上記の実施の形態1,2における事故防止情報受信装置3を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。
【0255】
すなわち、そのプログラムは、コンピュータを、移動体が交差点を含む所定の範囲を走行しているときに、当該交差点に接続された1以上の道路の移動体検知位置に配設された1以上の事故防止情報
出力装置から送信される1以上の事故防止に関する情報を受信する事故防止情報受信部と、事故防止情報受信部が受信した1以上の事故防止に関する情報を出力する事故防止情報出力部と、して機能させるプログラムである。
【0256】
図20は、上記プログラムを実行して、実施の形態1による事故防止情報受信装置3を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。
【0257】
図20において、コンピュータシステム900は、CD−ROMドライブ915を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0258】
図21は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。
図21において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ915に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス916とを備える。なお、コンピュータ901は、LANやWAN等への接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0259】
コンピュータシステム900に、実施の形態1,2による事故防止情報出力装置2と事故防止情報受信装置3の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM905に記憶されて、CD−ROMドライブ915に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM905、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。また、CD−ROM905に代えて他の記録媒体(例えば、DVD等)を介して、プログラムがコンピュータシステム900に読み込まれてもよい。
【0260】
プログラムは、コンピュータ901に、実施の形態1,2による事故防止情報出力装置2と事故防止情報受信装置3の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能やモジュールを呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。