(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、ポリアセタール、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1つである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0012】
(シート)
図1に示すように、本実施形態のシート10においては、熱可塑性樹脂層(以下、単に「樹脂層」)1がフッ素樹脂多孔質層(以下、単に「多孔質層」)2の第1主面21に融着されている。
図2に示すように、多孔質層2の第1主面21と反対側の第2主面22は、露出していて、転写されるべき層3を形成するために使用される。本実施形態で説明している層3は、燃料電池の電極触媒層として機能するように設計されている。層3は、電解質膜の主面へと転写されてMEAを構成する。
図3に示すように、MEA20において、電解質膜5上に転写された層3は電極触媒層6となる。
【0013】
本実施形態のシート10においては、樹脂層1と多孔質層2とが融着により一体化されている。接着剤を使用しない融着は、均一な厚みのシートの形成と製造コストの削減とに適している。粘度の低いペースト、又は固形分濃度の低いペーストであっても、フッ素樹脂無孔層と比較して、多孔質層2の第2主面22はペーストをはじきにくい。従って、シート10上に薄い層を形成することが容易となる。転写する層の薄層化は、デバイスの小型化に望まれている。例えば、薄い電極触媒層は、小型の燃料電池に適している。
【0014】
多孔質層2と樹脂層1との融着は、特に限定されるものではないが、例えば熱ラミネート、熱プレスにより行うことができる。熱ラミネートは、熱ロール温度を例えば130〜200℃に加熱し、これを例えば10〜40N/mで押し付けることにより、多孔質層2と樹脂層1とが融着される。そのときのライン速度は、熱ロール径、加熱温度等により異なるが、例えば5.0〜20.0m/minが好ましい。シート10の膜厚は、20μm〜300μmの範囲にあることが好ましく、50μm〜200μmの範囲にあることがより好ましい。
【0015】
樹脂層1を構成する熱可塑性樹脂としては、融点が200℃以下の樹脂が適している。熱可塑性樹脂は、ポリアセタール(POM)、ポリエチレン(PE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、及びポリプロピレン(PP)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。加熱時の変質のしにくさ、耐熱性、耐薬品性の観点から最も好ましい熱可塑性樹脂はPOMである。融点が200℃以下の熱可塑性樹脂を用いると、多孔質層2と樹脂層1とを良好に融着できる。多孔質層2と樹脂層1とが良好に融着され剥離しにくいシート10を用いることにより、第2主面22上に良好に層3を形成し、この層3を電解質膜5上に確実に転写することが可能となる。
【0016】
樹脂層1の厚みは、10〜200μmの範囲にあることが好ましく、15〜200μmの範囲にあることがより好ましく、30〜150μmの範囲にあることがさらに好ましい。樹脂層1の厚さが、薄くなりすぎるとハンドリング性が悪くなることがあり、厚くなりすぎるとロール形状とした場合にロールの重さが重くなりすぎることがある。
【0017】
樹脂層1の露出面11の表面粗さRzは、5.0μm以下にあることが好ましく、0.5〜2.0μmの範囲にあることがより好ましい。露出面11は、多孔質層2と融着された主面と反対側の主面である。シート10は、保管、運搬等のためにロール状に巻き取られることがある。この場合、露出面11は、多孔質層2の第2主面22に接触する。露出面11の表面粗さが小さいシート10を用いると、露出面11の表面の凹凸形状が、第2主面22に転写されることを抑制できる。
【0018】
樹脂層1は、織布、不織布、ネット、延伸多孔膜、微粒子融着多孔膜等であってもよいが、無孔膜であることが好ましい。無孔膜は、表面粗さRzの値を小さくすることと、層3を多孔質層2と共に安定して保持することに適している。
【0019】
多孔質層2に含まれるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を例示できる。好ましいフッ素樹脂は、PTFEである。多孔質層2は、それ自体がMEAを構成する層ではないため、フッ素樹脂以外の成分を含む必要がなく、フッ素樹脂以外の成分を実質的に含まないことが好ましい。本明細書において、「実質的に含まない」とはその含有率が0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満であることをいう。
【0020】
多孔質層2の厚さは、3〜300μmの範囲にあることが好ましく、3〜200μmの範囲にあることがより好ましく、5〜150μmの範囲にあることがさらに好ましく、5〜90μmの範囲にあることが特に好ましく、10〜80μmの範囲にあることが特に好ましい。このような厚さとすることによって、凝集破壊による部分的な欠落がシートに生じにくく、ハンドリング性が良好になる。
【0021】
フッ素樹脂無孔膜の主面は、固形分濃度の低いペーストをはじく傾向がある。これに対し、樹脂層1に裏面を支持されたフッ素樹脂多孔質膜の主面は、ペーストを均一な厚みで保持することに適している。多孔質層2の平均孔径は、0.01〜20μmの範囲にあることが好ましく、0.1〜15μmの範囲にあることがより好ましく、0.2〜10μmの範囲にあることがさらに好ましく、0.2〜0.5μmの範囲にあることが特に好ましい。適切な平均孔径を有する多孔質層2を用いることによって、ペーストのはじきを確実に抑制できる。多孔質層2の平均孔径が大きすぎる場合には、電極触媒層を転写した後に、電極触媒層用のペーストに含まれるカーボンや触媒成分が多孔質層2の孔内に残存することがある。
【0022】
シート10の第2主面22の水との接触角は、100度以上が好ましく、120度以上、特に130度以上であってもよい。水との接触角が高い主面は、層の離形性に優れている。なお、接触角は、JIS R3257に基づく測定値を採用する。
【0023】
(電極触媒層付きシート)
図2に示すように、本実施形態の電極触媒層付きシート15は、本発明のシート10と、シート10の第2主面22上に形成された、電極触媒層として転写されるべき層3とを有する。電極触媒層付きシート15は、樹脂層1、多孔質層2、及び層3がこの順に積層されて構成されている。
【0024】
(MEA)
シート10又は電極触媒層付きシート15を利用して製造できる製品の一例としては、PEFC用のMEAが挙げられる。
【0025】
図3に示すように、例えば、MEA20は、典型的には高分子電解質膜である電解質膜5と、電解質膜5を挟持する一対の電極触媒層6とにより構成される。電極触媒層6は、例えば、直径1μm以下の細孔を有する多孔質薄膜であって、主として、触媒物質担持粒子と高分子電解質とを含有する。高分子電解質には、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質等の公知の高分子電解質を用いることができる。
【0026】
シート10を用いたMEAの製造方法は、例えば、電極触媒層積層工程と、電解質膜積層工程と、加熱圧着工程と、剥離工程と、を具備する。電極触媒層積層工程は、シート10上に、電極触媒層として転写すべき層3を形成する工程である。電解質膜積層工程は、層3と電解質膜5とが接触するようにシート10と電解質膜5とを積層する工程である。加熱圧着工程は、層3と電解質膜5とを加熱圧着する工程である。剥離工程は、シート10を剥離させて、電解質膜5上に層3を電極触媒層6として残す工程である。
【0027】
電極触媒層積層工程の一例を示す。まず多孔質層2が露出しているシート10の第2主面22に、触媒物質担持粒子と高分子電解質とを溶媒中に分散させた触媒溶液(電極触媒層ペースト)を塗布する。次いで、30〜180℃程度の温度で加熱乾燥して、シート10と層3の積層体(電極触媒層付きシート15)を得る。触媒溶液の塗布方法としては、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法等の公知の方法を用いることができる。
【0028】
加熱圧着工程は、熱プレスや一対の熱ロールを通過させることにより実施できる。このときの加熱圧着の温度は、電解質膜5の種類等によるが、80〜150℃程度が好適である。電解質膜5の両面を電極触媒層付きシート15で挟持して一対の熱ロールを通すことにより電解質膜5の両面に層3を同時に圧着してもよい。
【0029】
剥離工程は、例えば、シート10を巻き取るロールを用いて連続的に剥離することにより実施できる。シート10は、繰返し利用することができる。
【0030】
加熱圧着工程及び剥離工程を一連の工程として実施する装置の一例を
図4に示す。繰出しロール52から繰り出された電極触媒層付きシート
15の層3を電解質膜5と接触させて一対の加熱ロール54間を通過させることで密着させる。シート10のみを剥離し、回収ロール53で巻き取ることで、電解質膜5の片面に電極触媒層6が接合された積層体7を連続的に製造することができる。
【0031】
触媒物質担持粒子に用いられる触媒物質としては、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム等の白金族元素、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属若しくはこれらの合金、又はこれらの金属の酸化物若しくは複酸化物等が使用できる。また、これらの触媒の粒径は、大きすぎると触媒の活性が低下し、小さすぎると触媒の安定性が低下するため、0.5〜20nmが好ましく、1〜5nmがより好ましい。特に触媒が、白金、金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及び、イリジウムから選ばれた1種又は2種以上の金属の粒子であると、電極反応性に優れ、電極反応が効率よく安定して行われる。このような触媒を含む電極触媒層を備えた固体高分子型燃料電池は高い発電特性を示す。
【0032】
触媒物質を担持する粒子としては、カーボン粒子が適している。カーボン粒子としては、微粒子状で導電性を有し、触媒におかされないものであれば特に限定されるものではないが、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン等を使用できる。カーボン粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、大きすぎると電極触媒層のガス拡散性が低下したり、触媒の利用率が低下したりするので、10〜1000nm程度が好ましく、より好ましくは10〜100nmである。
【0033】
高分子電解質としては、プロトン伝導性を有するものであればよく、フッ素系高分子電解質材料や炭化水素系高分子電解質材料を使用できる。フッ素系高分子電解質としては、例えばデュポン社製Nafion(登録商標)等を用いることができる。炭化水素系高分子電解質としては、例えばスルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質材料を用いることができる。特に電解質膜との密着性を考慮すると、高分子電解質は、電解質膜を構成する電解質と同じ電解質を用いることが好ましい。
【0034】
触媒溶液に用いられる溶媒としては、触媒物質担持粒子や高分子電解質を侵食することがなく、高分子電解質を流動性の高い状態で溶解又は微細ゲルとして分散できるものあれば特に限定されない。触媒溶液に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノ―ル、2−プロパノ―ル、1−ブタノ−ル、2−ブタノ−ル、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノ−ル等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等の溶剤が挙げられる。触媒溶液に用いられる溶媒には、特に揮発性の有機溶媒が含まれていることが望ましく、極性溶剤の使用が適している。また、触媒溶液に用いられる溶媒として、これらの溶剤のうち二種以上を混合させたものを使用してもよい。
【0035】
触媒物質担持粒子を良好に分散させるために、触媒溶液には分散剤が含まれていてもよい。この分散剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等を挙げることができる。中でもアルキルベンゼンスルホン酸、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸型の界面活性剤が好ましく用いられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
多孔質層として、PTFE多孔質膜であるNTF1133(日東電工株式会社製、膜厚80μm、平均孔径2.5μm)を、樹脂層として、無孔のPOMフィルムであるPM−1500(倉敷紡績株式会社製、膜厚100μm)を準備した。これらの層を200℃の高温プレス機にて4.5kNで30秒間プレスし、PTFE多孔質層とPOM層とが融着された複合品を得た。
【0038】
(実施例2)
PTFE多孔質膜としてNTF1122(日東電工株式会社製、膜厚80μm、平均孔径0.2μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、PTFE多孔質層とPOM層の複合品を得た。
【0039】
(実施例3)
PTFE多孔質膜としてNTF1026D(日東電工株式会社製、膜厚20μm、平均孔径0.4μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、PTFE多孔質層とPOM層の複合品を得た。
【0040】
(実施例4)
樹脂層として、無孔のUHMWPEフィルムであるNo.440(日東電工株式会社製、膜厚100μm)を用い、高温プレス機の温度を150℃とした以外は、実施例1と同様にして、PTFE多孔質層とUHMWPE層の複合品を得た。
【0041】
(実施例5)
樹脂層として、無孔のPPフィルムであるトレファンBO(東レ株式会社製、膜厚100μm)を用い、高温プレス機の温度を180℃とした以外は、実施例1と同様にして、PTFE多孔質層とPP層の複合品を得た。
【0042】
(実施例6)
PTFE微粉末(ポリフロンF−104、ダイキン工業株式会社製)100重量部に対し、液状潤滑剤(n−ドデカン、株式会社ジャパンエナジー社製)20重量部を均一に混合し、シリンダーに圧縮した後にラム押し出し機で押出し、長手方向に延びるシート状成形体を得た。このシート状成形体を、液状潤滑剤が含まれた状態で金属製圧延ロール間に通し、厚さ0.2mmとなるように圧延した。その後、シート状成形体を150℃に加熱することにより、液状潤滑剤を除去し、シート状成形体を乾燥させた。その後、シート状成形体を、370℃において長手方向に20倍の倍率で延伸し、370℃においてさらに5倍の倍率で延伸した。次いで、得られた長手方向に延伸されたシート状成形体を150℃において幅方向に4倍の倍率で延伸し、膜厚5μm、平均孔径10μmのPTFE多孔質膜を得た。
【0043】
得られたPTFE多孔質膜を多孔質層として用い、樹脂層として無孔のPOMフィルムであるPM−1500(倉敷紡績株式会社製、膜厚100μm)を用い、実施例1と同様にして、PTFE多孔質層とPOM層の複合品を得た。
【0044】
(実施例7)
樹脂層として、無孔のPETフィルムであるルミラー(東レ株式会社製、膜厚50μm)を用い、高温プレス機の温度を280℃とした以外は実施例1と同様にして、PTFEとPETとの複合品を得た。
【0045】
(実施例8)
樹脂層として、PP製のネット(膜厚10μm)を用い、高温プレス機の温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして、PTFE多孔質層とPP製ネットとの複合品を得た。
【0046】
(実施例9)
樹脂層として、PE系不織布であるエルベス(膜厚80μm)を用い、高温プレス機の温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして、PTFE多孔質層とPE系不織布との複合品を得た。
【0047】
(比較例1)
フッ素樹脂層として、無孔のPTFEシートであるNo.900UL(日東電工株式会社製、膜厚100μm)を、樹脂層として、無孔のPOMフィルムであるPM−1500(倉敷紡績株式会社製、膜厚100μm)を準備した。これらの層を200℃の高温プレス機にて4.5kNで30秒間プレスし、PTFE無孔層とPOM層との複合品を得た。
【0048】
(比較例2)
樹脂層として、無孔のUHMWPEフィルムであるNo.440(日東電工株式会社製、膜厚100μm)を用い、高温プレス機の温度を150℃とした以外は、比較例1と同様にして、PTFE無孔層とUHMWPE層との複合品を得た。
【0049】
(比較例3)
樹脂層として、無孔のPPフィルムであるトレファンBO(東レ株式会社製、膜厚100μm)を用い、高温プレス機の温度を180℃とした以外は、比較例1と同様にして、PTFE無孔層とPP層との複合品を得た。
【0050】
(比較例4)
フッ素樹脂層として、PTFE多孔質膜であるNTF1133(日東電工株式会社製、膜厚80μm、平均孔径2.5μm)を単膜で用いた。この比較例では、熱可塑性樹脂を用いなかった。
【0051】
(比較例5)
フッ素樹脂層として、無孔のPTFEシートであるNo.900UL(日東電工株式会社製、膜厚100μm)を単膜で用いた。この比較例では、熱可塑性樹脂を用いなかった。
【0052】
実施例、比較例で得られたシートの物性は、それぞれ以下のように測定した。
【0053】
(膜厚)
膜厚は、株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージG−6C(1/1000mm、測定子直径5mm)を用いて測定した。
【0054】
(接触角)
フッ素樹脂層(多孔質層又は無孔層)の主面(第2主面)と水との接触角(度)は、JIS R3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準拠して、接触角測定装置(Contact Angle System OCA 30(DataPhysics Instruments GmbH製))を用いて測定した。
【0055】
(融着性)
融着性は、層の融着状態に応じて以下の基準に基づいて判別した。融着性は、シート端部からPTFE層が剥離するか否かを評価した。PTFE層が容易に剥離しない状態を「◎」、一応は融着しているが容易に剥離する状態を「△」、融着しているとは言えない状態を「×」と評価した。
【0056】
(電極触媒層を形成するためのペーストの調製)
特開2008−269847を参考に、下記の方法で電極触媒層を形成するためのペーストを調製した。
【0057】
ナフィオンソリューションDE1020(商品名、デュポン社製)とカーボンブラックとを、ナフィオンソリューションに含まれるナフィオンの重量をカーボンブラックの重量で除した値が0.8となるように秤量し、混合した。さらに、アルコール比率が25質量%となるように純水を混合して混合液を得た。なお、ナフィオンソリューションDE1020にはアルコールが含まれていた。上記混合液をミキサー(商品名:あわとり練太郎、株式会社シンキー製)で5分間、遠心攪拌後、ホモジナイザー(商品名:HG−200、HSIANGTAI社製)によって攪拌し、電極触媒層を形成するためのペーストを得た。
【0058】
(電極触媒層の塗工性の評価)
得られた電極触媒層を形成するためのペーストを、アプリケーターを用いて、実施例及び比較例で得られたシートのフッ素樹脂層(多孔質層又は無孔層)の主面(第2主面)に塗布し、その後120℃の乾燥機を用いて5分間乾燥させ、電極触媒層付きシートを得た。塗工性は、ペーストがはじかれなかった場合を「○」、ペーストをはじきはしないものの、シートの形状がアプリケーター端部により伸びたり、変形した場合又はシート上に形成された層(転写されるべき層)が容易に剥がれた場合を「△」、ペーストがはじかれた場合を「×」と評価した。
【0059】
(電極触媒層の転写評価)
上記で得られた電極触媒層付きシートと、電解質膜であるNafion115(DuPont社製、膜厚125μm)とを積層し、120℃の熱プレス機を用いて5kNで60秒間加熱した。その後、シートを剥離させ、転写性を評価した。転写性は、転写評価を3回行い、3回とも触媒電極層がシート上に残ることなく電解質膜へと転写された状態を「◎」、電解質膜への転写時に3回の内1回、触媒電極層が部分的にシート上に転写残りしたものを「○」、電解質膜への転写時に触媒電極層が3回とも部分的にシート上に転写残りしたものを「△」、電解質膜へ触媒電極層がまったく転写されなかったものを「×」と評価した。
【0060】
(表面粗さRzの測定)
各実施例及び各比較例で得られたシートの熱可塑性樹脂層の主面(第1面)の算術平均粗さRzを、表面粗さ測定機サーフテストSV−2100(ミツトヨ社製)を用いて、JIS B 0601−1994準拠して測定した。測定条件は測定速度2mm/秒、測定長さ40mm、測定区間数5で測定を行い、MD方向(長さ方向)とTD方向(幅方向)での表面粗さRzを求めた。
【0061】
【表1】