特許第6553968号(P6553968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553968
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20190722BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F04C18/02 311B
   F04C29/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-142705(P2015-142705)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-25731(P2017-25731A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】515098886
【氏名又は名称】サンデン・オートモーティブコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】高部 哲也
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−64488(JP,U)
【文献】 実開平3−127093(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロール部材と、
前記固定スクロール部材に接しつつ公転し、前記固定スクロールとの間に前記公転に伴って容積変化する密閉空間を形成する可動スクロール部材と、
前記固定スクロール部材及び前記可動スクロール部材を収納し、内周部の端面で前記可動スクロール部材のスラスト力を受け、外周部に、第1の端部と、前記第1の端部よりも内周側の位置に前記第1の端部より低く形成され、前記固定スクロール部材の端板に当接する第2の端部と、を有する第1のハウジングと、
外周部に、前記第1の端部に接合される第1の外周部と、前記固定スクロール部材の端板に接合され、前記第2の端部と共に前記固定スクロール部材の端板を挟持する第2の外周部と、を有する第2のハウジングと、を含んで構成されるスクロール型圧縮機であって、
前記第1の端部と前記第1の外周部との間に介装される第1のガスケット部と、第1のガスケット部よりも内周側に設けられて、前記固定スクロール部材の端板と前記第2の外周部との間に介装される第2のガスケット部と、を一体に有する環状に形成されたガスケットを更に含んで構成されることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記ガスケットのない状態で前記第2の外周部と前記固定スクロール部材の端板とを当接させた場合に、前記第1の端部と前記第1の外周部との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記隙間は、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとが締結手段によって締結されることにより、前記ガスケットが介装された状態でシールされることを特徴とする請求項2に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記第1のガスケット部には、フルビードが形成され、前記第2のガスケット部には、ハーフビードが形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定スクロール部材と可動スクロール部材とを備え、これらにより形成される密閉空間の容積を変化させることで流体を圧縮するスクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール型圧縮機としては、特許文献1に示されるようなスクロール型圧縮機がよく知られている。
これは、固定スクロール部材と、固定スクロール部材に接しつつ公転し、固定スクロール部材との間に前記公転に従って容積変化する密閉空間を形成する可動スクロール部材と、を備えている。
【0003】
また、この圧縮機のハウジングは、内周部の端面でスラストプレートを介して可動スクロール部材のスラスト力を受ける第1のハウジング(センターハウジング)と、第2のハウジング(リアハウジング)とを有し、外周部において、前記センターハウジングの端部と前記リアハウジングの端部とによって前記固定スクロール部材の側板(端板)を挟持する構造となっている。
【0004】
前記圧縮機においては、前記密閉空間、特に前記センターハウジングと前記固定スクロール部材との間、及び前記固定スクロール部材と前記リアハウジングとの間の軸方向の隙間からの流体の漏れを回避するため、前記センターハウジングと前記固定スクロール部材の端板との間、及び前記固定スクロール部材の端板と前記リアハウジングとの間には、円筒型のガスケットがそれぞれ介装されている。
【0005】
ここで、例えば、特許文献2に示されるように、圧縮機の小型化のため、センターハウジングは、その外周部に、リアハウジングの外周部と接合する第1の端部と、前記第1の端部よりも内周側にスラストプレート側に窪んで形成された第2の端部とを有し、この第2の端部とリアハウジングの外周部とによって固定スクロール部材の端板を挟持する構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−129791号公報
【特許文献2】特開昭57−179302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2に示すような圧縮機においては、前記流体の漏れを回避するため、第1の端部に形成された溝に配置するOリングに代えて、よりシール性の優れた環状のガスケットを、センターハウジングとリアハウジングとの接合部に介在させることが考えられる。そして、ハウジング同士をボルトによって締結することによりシール性を向上させるものと考えられる。
【0008】
ガスケットは、シール性に優れるものの、接合部に介在させるため、圧縮機の組み立てに影響を与える。特にスクロール型圧縮機は、前記密閉空間のシールのため、μm単位のクリアランス管理が必要である。しかしながら、ガスケットはその厚さからの公差を少なくとも50μm程度有するため、前記密閉空間のシールが成立しない。
【0009】
また、固定スクロール部材は、センターハウジングの第2の端部とリアハウジングとによって直接挟持する構造となっているため、ハウジング内での固定スクロール部材の保持の安定性が損なわれる。
【0010】
本発明は、このような実状に鑑み、ガスケットによって透過漏れを低減する一方、ガスケットの厚さの寸法値からの公差を吸収(相殺)して、シール性を向上させると共に固定スクロール部材を安定して保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスクロール型圧縮機は、
固定スクロール部材と、
前記固定スクロール部材に接しつつ公転し、前記固定スクロールとの間に前記公転に伴って容積変化する密閉空間を形成する可動スクロール部材と、
前記固定スクロール部材及び前記可動スクロール部材を収納し、内周部の端面で前記可動スクロール部材のスラスト力を受け、外周部に、第1の端部と、前記第1の端部よりも内周側の位置に前記第1の端部より低く形成され、前記固定スクロール部材の端板に当接する第2の端部と、を有する第1のハウジングと、
外周部に、前記第1の端部に接合される第1の外周部と、前記固定スクロール部材の端板に接合され、前記第2の端部と共に前記固定スクロール部材の端板を挟持する第2の外周部と、を有する第2のハウジングと、を含んで構成される。
【0012】
ここにおいて、前記スクロール型圧縮機は、前記第1の端部と前記第1の外周部との間に介装される第1のガスケット部と、第1のガスケット部よりも内周側に設けられて、前記固定スクロール部材の端板と前記第2の外周部との間に介装される第2のガスケット部と、を一体に有する環状に形成されたガスケットを更に含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記第1のガスケット部及び第2のガスケット部を有するガスケットが前記第1の端部と前記第1の外周部との間、及び前記固定スクロール部材の端板と前記第2の外周部との間に介装されている。
したがって、第1のガスケット部のみを有するガスケットを前記第1の端部と前記第1の外周部との間に介装させた場合と比較して、ガスケットの厚さの寸法値からの公差が相殺されるので、シール性を向上させることができると共に固定スクロール部材を安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るスクロール型圧縮機の断面図
図2図1の要部拡大断面図
図3図1のA−A断面図
図4図3のB−B断面図
図5】ハウジング同士の接合部に介装される前のガスケットの形状を示す概略図
図6】同上ガスケットを用いた場合と第1のガスケット部のみを有するガスケットを用いた場合とでガスケットの潰し量に与える影響を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るスクロール型圧縮機の断面図、図2は、図1の要部拡大断面図である。
本実施形態によるスクロール型圧縮機1は、例えば車両用空調装置の冷媒回路に設けられ、当該車両用空調装置の冷媒を吸入し、圧縮して吐出する、いわゆるインバータ一体型の圧縮機であり、圧縮機構10と、圧縮機構10を駆動するための駆動機構20と、駆動機構20を駆動するためのインバータ30と、それら圧縮機構10、駆動機構20、及びインバータ30を内部に収納する円筒状のハウジング40と、を含んで構成される。
【0016】
圧縮機構10は、中心軸(図1に示すO)方向に対向配置される固定スクロール部材2と可動スクロール部材3とを備えている。固定スクロール部材2は、端板2a上に渦巻きラップ2bが一体に形成されてなる。可動スクロール部材3は、同様に、端板3a上に渦巻きラップ3bが一体に形成されてなる。
【0017】
両スクロール部材2、3は、両渦巻きラップ2b、3bを噛み合わせ、渦巻きラップ2bの突出側の端縁が端板3aに接触し、渦巻きラップ3bの突出側の端縁が端板2aに接触するように配設される。尚、両渦巻きラップ2b、3bの突出側の端縁にはチップシールが埋設されている。
【0018】
また、両スクロール部材2、3は、両渦巻きラップ2b、3bの周方向の角度が互いにずれた状態で、両渦巻きラップ2b、3bの側壁が互いに部分的に接触するように配設される。これにより、両渦巻きラップ2b、3b間に中心軸方向から見て三日月状の密閉空間である流体ポケット4が形成される。
【0019】
可動スクロール部材3は、後述する駆動機構20により、中心軸回りの円軌道上を公転運動され、自転は阻止される。これにより、両渦巻きラップ2b、3b間に形成される流体ポケット4が渦巻きラップ2b、3bの外端部から中心部へ向かって移動されることにより、流体ポケット4の容積が縮小方向に変化する。従って、渦巻きラップ2b、3bの外端部側から流体ポケット4内に取込まれた流体(例えば冷媒ガス)が圧縮される。
【0020】
駆動機構20は、電動モータ21と、自転阻止機構とを有し、電動モータ21には、例えば、三相交流モータが適用される。例えば車両のバッテリ(図示省略)からの直流電流は、インバータ30により交流電流に変換されて電動モータ21へ給電されている。
【0021】
電動モータ21は、駆動軸22を有し、この駆動軸22は、後述するフロントハウジング7の中心部で回転自在に支承されている。駆動軸22の先端側は、可動スクロール部材3に連結されている。したがって、この駆動軸22の回転により可動スクロール部材3は旋回する。一方、自転阻止機構は、ここでは詳細に説明しないが、可動スクロール部材3の自転を規制しており、これにより可動スクロール部材3の自転が阻止される。
【0022】
スクロール型圧縮機1のハウジング40は、図1に示すように、圧縮機構10を収納するセンターハウジング(第1のハウジング)5と、その後側に配置されるリアハウジング(第2のハウジング)6と、センターハウジング5の前側に配置され、駆動機構20及びインバータ30を収納するフロントハウジング(第3のハウジング)7と、インバータカバー8と、を含んで構成される。そして、これら各ハウジング5、6、7及びインバータカバー8は、それぞれ鋳造により形成され、複数のボルト9などの締結手段によって一体的に締結されて前記ハウジング40が構成されている。
【0023】
センターハウジング5は、本実施形態では、固定スクロール部材2及び可動スクロール部材3を収納する構造となっている。センターハウジング5は、リアハウジング6側が固定スクロール部材2の端板2aにより閉止されている。
【0024】
センターハウジング5はまた、可動スクロール部材3をスラスト方向に支持するため、内周部に、可動スクロール部材3の端板3aをスラストプレート11を介して受けるスラスト受け部12を有する。スラスト受け部12は、センターハウジング5のリアハウジング6側の端部5a、5bより軸方向に凹んだ位置にある。
【0025】
センターハウジング5はまた、リアハウジング6と対向する側の外周部に、リアハウジング6の外周部と接合される第1の端部5aと、第1の端部5aよりも内周側の位置に第1の端部5aより低く形成され(すなわち、中心軸方向でスラストプレート11側に窪んで形成されている)、固定スクロール部材2の端板2aに当接する第2の端部5bとを有する。
すなわち、センターハウジング5の外周部には、第1の端部5aから第2の端部5bに向かって窪んだ段差部が形成されている。
【0026】
リアハウジング6は、その外周部に、センターハウジング5の第1の端部5aと接合される第1の外周部6aと、第1の外周部6aより内周側に、固定スクロール部材2の端板2aと接合される第2の外周部6bとを有する。
すなわち、センターハウジング5とリアハウジング6とは、第1の端部5aと第1の外周部6aとが接合された状態でボルト9によって締結され、固定スクロール部材2の端板2aは、センターハウジング5の第2の端部5bとリアハウジング6の第2の外周部6bとによって挟持される。
【0027】
尚、本実施形態において、第1及び第2の外周部6a、6bは、便宜上2つの部位に分けて説明するが、同一面をなしている。但し、リアハウジング6の第2の外周部6bを第1の外周部6aよりもリアハウジング6の後側に窪ませてもよい。
【0028】
リアハウジング6はまた、端板2aとの間の中央部に上記流体の吐出室13が形成されている。また、吐出室13の周囲には、吐出室13と連通する周囲室14が形成されている。端板2aの中心部には吐出室13への吐出孔15が開設され、吐出孔15には一方向弁16が付設されている。リアハウジング6の外壁には、吐出室13及び周囲室14を経た上記流体を外部へ吐出するための吐出ポート17が設けられている。
【0029】
フロントハウジング7は、本実施形態では、内部に駆動機構20を収納し、その前側に組み付けられたインバータ30を収納する構造となっており、インバータカバー8によって前側が閉止される。また、フロントハウジング7の内部には、上記流体の吸入室(図示省略)が形成されている。インバータ30が組み付けられた側のフロントハウジング7の外壁には、外部から吸入室への上記流体の吸入ポート(図示省略)が設けられており、上記流体によりインバータ30の電気部品が放熱される。
【0030】
センターハウジング5及びフロントハウジング7の内部には、中心軸と平行な方向に延在して、フロントハウジング7側の吸入室からセンターハウジング5側の両渦巻きラップ2b、3bの外端部付近へ、上記流体を案内する流体通路空間18が形成されている。
【0031】
上記流体は、フロントハウジング7に設けられた吸入ポートからフロントハウジング7内の吸入室に導入され、フロントハウジング7及びセンターハウジング5の流体通路空間18を経由して、渦巻きラップ2b、3bの外端部側から前述の流体ポケット4内に取込まれ、圧縮に供される。圧縮された流体は、固定スクロール部材2の端板2aの中央部に穿設された吐出孔15から、リアハウジング6内の吐出室13に吐出され、そこから周囲室14及び吐出ポート17を介して外部に導出される。
【0032】
このように構成されたスクロール型圧縮機1において、図2に示すように、センターハウジング5の第1の端部5aとリアハウジング6の第1の外周部6aとの間、及びリアハウジング6の第2の外周部6bと固定スクロール部材2の端板2aとの間には、同一の板材から作られた一体型のガスケット50が介装される。すなわち、ガスケット50は、上記流体の漏れを防ぐと共に、ハウジング40の外部と内部との間の領域(大気圧−低圧間)、及び上記流体が吸入室から吐出室13に至るまでの間の比較的差圧の大きい領域(吐出−吸入間)のシール性を向上させるものである。
【0033】
ガスケット50について、図3図5を参照して更に詳しく説明する。
図3図1のA−A断面図、図4は、図3のB−B断面図、図5は、ハウジング同士の接合部に介装される前のガスケットの形状を示す概略図である。
【0034】
ガスケット50は、図3に示されるように、環状に形成され、その外周部に設けられる第1のガスケット部51と、第1のガスケット部51よりも内周側に設けられる第2のガスケット部52と、を一体に有する。すなわち、ガスケット50は、一般にゴム層コートされた金属板を板材として、これを打ち抜き、適宜ビード加工して、形成するが、第1及び第2のガスケット部51、52は、同一の板材から作られている。
【0035】
第1のガスケット部51は、センターハウジング5の第1の端部5aとリアハウジング6の第1の外周部6aとの間に介装されるものであり、ボルト9の締結部にて外側に張り出し、ここにボルト挿通孔53が形成されている。
第2のガスケット部52は、リアハウジング6の第2の外周部6bと固定スクロール部材2の端板2aとの間との間に介装されるもので、ボルト9の締結部にて中心軸に向かって内側に延びている。
すなわち、ガスケット50は、図4に示すように、第1のガスケット部51と第2のガスケット部52とが全周でつながっていて、センターハウジング5の第1の端部5aから固定スクロール部材2の端板2aまで跨がって配置される。
【0036】
また、ガスケット50に形成されるビードについて説明する。図5に示すように、第1のガスケット部51には、折り返し状に2つ屈曲部を有するフルビードFBが形成されており、第2のガスケット部52には、1つの屈曲部を有するハーフビードHBが形成されている。一般に、フルビードFBの方がハーフビードHBよりもバネ定数が大きい。すなわち、第1及び第2のガスケット部51、52には、バネ定数の異なるビードを形成し、第1のガスケット部51のバネ定数は第2のガスケット部52のバネ定数よりも大きくする。
【0037】
このようにすることで、センターハウジング5とリアハウジング6との締結に際し、第1のガスケット部51のビードが潰れ、シール性が確保される。このときには、第2のガスケット部52のビードが確実に潰れていて、十分なシール性が確保される。尚、第2のガスケット部52のハーフビードHBの高さを、第1のガスケット部51のフルビードFBの高さより高く設定してもよい。
【0038】
ところで、一般に、ハウジング同士を締結する際に、ガスケットの寸法値からの公差が、ハウジングの内部と外部とのシール性に影響を与えることがある。以下、図6を参照して、ハウジング5、6同士の接合部のみに第1のガスケット部51のみを有するガスケットを介装させた場合と、本実施形態のガスケット50を用いた場合とで、ガスケットの厚さからの公差がシール性に与える影響について説明する。
【0039】
図6(A)〜(C)に示すように、センターハウジング5の第2の端部5bから第1の端部5aに至るまでの高さ(段差部の高さ)、固定スクロール部材2の端板2aの厚さ、ガスケット50の厚さ、及びガスケット50の第1のガスケット部51に形成されたフルビードの高さ(ガスケットの厚さを除く)の寸法値それぞれが、a、b、c、及びdであり、これら寸法値からの公差がそれぞれ±α、±β、±γ、及び±δであるとする。
【0040】
ここで、本実施形態においては、ガスケット50のない状態でリアハウジング6の第2の外周部6bと固定スクロール部材2の端板2aとを当接させた場合に、センターハウジング5の第1の端部5aとリアハウジング6の第1の外周部6aとの間に隙間が形成される。すなわち、端板2aの厚さbが段差部の高さaよりも大きいものとする。
【0041】
図6(B)に示すように、センターハウジング5とリアハウジング6との間のみに第1のガスケット部51のみを有するガスケットを介装させた場合(図6(A)に示すパターン(i))、リアハウジング6によって押し潰されるビードの潰し量Pは、{(a+c+d)−b}±(α+β+γ+δ)となる。したがって、パターン(i)では、公差α、β、γ、δの影響を受けるため、ガスケットの安定した潰し量Pを得ることができず、シール性が損なわれると共に固定スクロール部材2を安定して保持することができない。
【0042】
これに対し、図6(C)に示すように、本実施形態のガスケット50を用いた場合(図6(A)に示すパターン(ii))、ガスケット50は、前述したように、センターハウジング5の第1の端部5aから固定スクロール部材2の端板2aまで跨って配置される。ここで、ハウジング5、6同士を外周部においてボルト9で締結することにより、第2のガスケット部52に形成されたハーフビードHBがリアハウジング6の第2の外周部6bによって押し潰される(全潰し状態)。すなわち、第2のガスケット部52のハーフビードHBは、厚さcを残して全て潰されている。
【0043】
一方、センターハウジング5の第1の端部5aとリアハウジングの第1の外周部6aとの間には、ガスケット50の厚さより大きな隙間があるが、端板2aを支点としてボルト9の軸力により発生するモーメントで、第1のガスケット部51に形成されたフルビードFBがセンターハウジング5の第1の端部5aに押付けられるため、ガスケット50を潰して十分なシール圧が確保される。すなわち、第1の端部5aと第1の外周部6aとの間に形成される隙間は、ボルト9での締結により、ガスケット50(第1のガスケット部51)が介装された状態でシール(密閉)される。
【0044】
したがって、本実施形態(パターン(ii))では、ガスケット50の厚さcからの公差γが相殺されることにより、第1のガスケット部51に形成されたフルビードFBの潰し量Pは、{(a+d)−b}±(α+β+δ)となるので、ガスケットの厚さcの公差γを考慮することなくハウジング5、6同士の接合部でのシール性が向上すると共に固定スクロール部材2を安定して保持することができる。
【0045】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、センターハウジング5の第1の端部5aとリアハウジング6の第1の外周部6aとの接合部、及びリアハウジング6の第2の外周部6bと固定スクロール部材2の端板2aとの接合部のシールをガスケット50により行う。ここで、本実施形態では、ガスケット50の外周部に設けられた第1のガスケット部51にフルビードFBが形成され、第1のガスケット部51よりも内周側に設けられた第2のガスケット部52にハーフビードHBが形成されている。このように、ガスケット50は、センターハウジング5の第1の端部5aから固定スクロール部材2の端板2aまで跨がって配置されているので、第1の端部5aと第1の外周部6aとの接合部のみに第1のガスケット部のみが形成されたガスケットを介装させた場合と比較して、ガスケットの厚さからの公差が相殺され、流体の透過漏れを抑制しつつ大気圧−低圧間及び吐出−吸入間のシール性を向上させることができると共に、固定スクロール部材2を安定して保持することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、固定スクロール部材2の端板2aの厚さbが段差部の高さaより大きく設定されている。これにより、ハウジング5、6同士の締結の際に、第2の外周部6bと固定スクロール部材2の端板2aとの間において、リアハウジング6の上方からのボルト9の締結力により第2のガスケット部52(ハーフビードHB)を潰して十分なシール圧が確保される一方、第1の端部5aと第1の外周部6aとの間に形成される隙間において、端板2aを支点としてボルト9の軸力により発生するモーメントで、第1のガスケット部51(フルビードFB)がセンターハウジング5の第1の端部5aに押付けられるため、第1のガスケット部51を潰して十分なシール圧を確保することができる。
【0047】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 スクロール型圧縮機
2 固定スクロール部材
2a 端板
2b 渦巻きラップ
3 可動スクロール部材
3a 端板
3b 渦巻きラップ
4 流体ポケット(密閉空間)
5 センターハウジング(第1のハウジング)
5a 第1の端部
5b 第2の端部
6 リアハウジング(第2のハウジング)
6a 第1の外周部
6b 第2の外周部
7 フロントハウジング(第3のハウジング)
8 インバータカバー
9 ボルト
10 圧縮機構
11 スラストプレート
12 スラスト受け部
13 吐出室
14 周囲室
15 吐出孔
16 一方向弁
17 吐出ポート
18 流体通路空間
20 駆動機構
21 電動モータ
22 駆動軸
30 インバータ
40 ハウジング
50 ガスケット
51 第1のガスケット部
52 第2のガスケット部
53 ボルト挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6