(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連通孔は、前記第1シュラウド側に位置する前記羽根翼の前記基端部の一端から、前記第2シュラウド側に位置する前記羽根翼の前記基端部の他端までの間に設けられている、請求項1又は請求項2に記載の流体機械。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体機械であるターボ型の片吸込遠心渦巻ポンプ10を示す。この渦巻ポンプ10は、ボリュート通路16が形成されたケーシング11を備える。ケーシング11内には、回転軸25が回転可能に配置されるとともに、回転軸25に連結して羽根車30が配置されている。本実施形態ではクローズ型の羽根車30を用い、このクローズ型羽根車30によるキャビテーションの発生を抑制し、必要NPSHを改善する。
【0019】
(片吸込遠心渦巻ポンプの詳細)
渦巻ポンプ10のケーシング11は、ケーシング本体12と、このケーシング本体12に固定されたケーシングカバー13とを備える。ケーシング本体12には、
図1において左側に吸込口14が設けられている。吸込口14は断面円形状の空間であり、回転軸25が延びる方向Yに沿って軸線が延びている。この吸込口14の端部には、羽根車30を配置する配置空間部15が設けられている。そして、この配置空間部15の外周部には、ケーシング11内に吸い込んだ液体を下流側に吐出する液体流路であるボリュート通路16が設けられている。ボリュート通路16は、回転軸25の軸線に対して直交(径)方向Xに延びる平面に沿って渦巻き状に延びている。また、ボリュート通路16は、配置空間部15を介して吸込口14と連通している。ケーシング本体12には、
図1において上側に位置するように、ボリュート通路16の出口である吐出口17が設けられている。なお、吸込口14及び吐出口17にはそれぞれ図示しない管路が接続されている。
【0020】
ケーシング11には、水平方向に延びるように回転軸25が回転自在に配置されている。回転軸25は、一端がケーシングカバー13のシャフト穴18から配置空間部15内に突出している。シャフト穴18の周囲には、液密性を保持するためのシール19が取り付けられている。ケーシングカバー13の外側にはベアリングケース20が固定されている。回転軸25は、ベアリングケース20に固定されたベアリング21により回転自在に軸支されている。ベアリングケース20から外部に突出した回転軸25の外端には、図示しない駆動手段であるモータが連結されている。
【0021】
図1及び
図2に示すように、ケーシング11には、回転軸25が延びる方向Yから見て円形状の羽根車30が、配置空間部15内に位置するように配置されている。羽根車30は回転軸25に対して相対的に回転しないように固定され、回転軸25の回転により正転方向(
図2において時計回りであるR方向)に回転することで、液体を吸込口14から吸い込んで吐出口17から吐出する。
【0022】
(羽根車の詳細)
羽根車30は、複数の羽根翼32と、羽根翼32の前側に配置された前シュラウド(第1シュラウド)37と、羽根翼32の後側に配置された後シュラウド(第2シュラウド)50とを備える。
【0023】
羽根翼32は、回転軸25側の基端部33と、基端部33と反対側の先端部34とを備える。この羽根翼32は、基端部33から径方向X外側へ放射状に延び、羽根車30の回転方向Rと逆向きで周方向に湾曲している。この羽根翼32の形状、姿勢、寸法、個数、及び配置等は、気泡を吸い込んだ場合に、それに起因するエアロックが発生しないように設定されている。
【0024】
前シュラウド37は、回転軸25が延びる方向Yにおける羽根翼32の前端(一端)32a側に配置されている。この前シュラウド37には、回転軸25と同心円形状をなすように開口部38が設けられている。前シュラウド37は、中央が吸込口14に向けて円錐筒状に隆起し、外周部が回転軸25が延びる方向Yに対して直交方向に延びる平板状である。この前シュラウド37の中央頂部には、吸込口14に向けて円筒状に突出する口金部39が設けられている。開口部38は、口金部39の内周壁によって画定されている。
【0025】
後シュラウド50は概ね円板状であり、回転軸25が延びる方向Yにおける羽根翼32の後端(他端)32b側に配置されている。この後シュラウド50は、前シュラウド37に対して所定の間隔をあけて位置している。
図1に示すように、後シュラウド50の中心には、回転軸25を連結するための連結部51が設けられている。また、後シュラウド50には、連結部51と同心円筒状をなすように、ケーシングカバー13に向けて突出する円筒部52が設けられている。
【0026】
羽根車30には、隣接する羽根翼32,32と、前シュラウド37と、後シュラウド50とで画定された筒状の液体流路55が複数形成される。羽根車30は、羽根翼32の基端部33側である開口部38側が流入口であり、この開口部38から液体が吸い込まれる。また、開口部38と連通した液体流路55の羽根翼32の先端部34部分が流出口であり、回転軸25の回転による遠心力によって液体が各液体流路55を通して径方向外側へ吐出される。
【0027】
このようにした羽根車30は、羽根翼32の両端に前後のシュラウド37,50を配置したクローズド型である。そのため、配置空間部15の壁15aと羽根翼32との隙間の設定が容易(不要)であるうえ、ケーシング11に組み付けた後の調整が不要であるため、組立性及び保守性を向上できる。しかも、摩耗による効率の低下も少ないため、性能を維持できる。また、前シュラウド37及び後シュラウド50により、回転軸25が延びる方向Yに沿った羽根車30の前後の圧力が平衡するため、オープン型羽根車のように大きな軸スラストが作用することを防止できる。
【0028】
図1に示すように、後シュラウド50とケーシングカバー13との間には、ケーシングカバー13と吐出口17側を仕切る第1ウェアリング57が配置されている。
図1及び
図3に示すように、ケーシング本体12と前シュラウド37の口金部39との間には、配置空間部15の吸込口14側と羽根車30とを仕切る第2ウェアリング58が配置されている。これらウェアリング57,58は、例えばステンレス、鋳鉄、青銅等の摺動性が良好な材料によって形成されている。
【0029】
配置空間部15に羽根車30を配置することで、配置空間部15の壁15aと前シュラウド37との間には、設定した間隔の第1空隙部60が形成される。同様に、第2ウェアリング58と羽根車30との間には、設定した間隔の第2空隙部61が形成される。これらの空隙部60,61には、羽根車30の回転により羽根翼32の基端部33側と先端部34側に圧力差が生じることで、液体が流動する。
【0030】
(口金部の詳細)
図1及び
図3に示すように、前シュラウド37の口金部39(開口部38側)には、羽根車30内の液体流路55に連通する連通孔40が設けられている。この連通孔40は、羽根翼32の数に対応する液体流路55毎に、口金部39を径方向に貫通して設けられている。連通孔40を通して第2空隙部61に位置する液体を羽根翼32の基端部33側に流入させることで、羽根車30の基端部33側と先端部34側の圧力差を低減できるようにしている。なお、連通孔40は、径方向だけ貫通させる構成に限らず、羽根車30の回転方向に向かうように所定角度で傾斜させて設けてもよい。
【0031】
口金部39は、前シュラウドに一体成形した口金部本体41と、前シュラウド37と別体の羽根車リング45とを備える。口金部本体41には、径方向X外側に、羽根車リング45を相対的に移動不可能に固定する固定段部42が設けられている。羽根車リング45は、摺動性が良好なウェアリング57,58と同様の材料によって形成されている。そして、第2空隙部61側に位置する羽根車リング45には、連通孔40を構成する第1連通部46が設けられ、開口部38側に位置する口金部本体41には、連通孔40を構成する第2連通部43が設けられている。なお、これら連通部43,46は、機械加工又は鋳造(鋳抜孔)により形成されている。
【0032】
図3及び
図4に示すように、第1連通部46は、第2空隙部61側から開口部38側に向けて直径が次第に小さくなった円錐孔部(キリモミ)47と、円錐孔部47の開口部38側端部に連通した円形孔部48とからなる。第2連通部43は、円形孔部48より断面積が大きい楕円形状の孔からなる。この第2連通部43は、短軸方向の寸法が円形孔部48の直径と同一以上に形成されている。また、第2連通部43は、長軸の延び方向が羽根翼32の延び方向に沿う傾斜角度で形成されている。これら第1連通部46及び第2連通部43からなる連通孔40は、羽根車の回転方向Rにおける羽根翼32の後側に沿って位置するように設けられている。即ち、連通孔40は、隣接する羽根翼32,32のうち、一方側の羽根翼32に近接して設けられている。
【0033】
また、連通孔40は、前シュラウド37側に位置する羽根翼32の基端部33の第1端(一端)33aから、後シュラウド50側に位置する羽根翼32の基端部33の他端まで第2端(他端)33bの間に位置するように設けられている。
図2及び
図3に示すように、羽根翼32の基端部33は、前シュラウド37側に位置する第1端33aから後シュラウド50側に位置する第2端33bに向けて、羽根車30の径方向Xに傾斜している。そのうち、羽根翼32の基端部33の第1端33aは、前シュラウド37の口金部本体41の内端41aに位置し、第2端33bより吸込口14側に位置している。連通孔40は、この回転軸25が延びる方向Yにおいて、基端部33の第1端33aと第2端33bの間に設けられている。
【0034】
また、本実施形態の羽根車リング45には、各連通孔40の外端である円錐孔部47を連通させるように、円環状の連通溝49が設けられている。連通溝49は、円形孔部48の直径以上で円錐孔部47の最大直径以下の溝幅で形成されている。本実施形態では、円形孔部48の直径と同一の溝幅で設けられている。
【0035】
次に、羽根車30によって液体を排水する際の入口(開口部38)から出口までの圧力分布について説明する。
【0036】
図3に示すように、羽根車30内では、液体が開口部38から羽根翼32の基端部33に至るまでの間に圧力が次第に低下する。
図3に破線で示すように、連通孔40を設けていない比較例(従来例)のクローズド型羽根車では、液体が基端部33の第1端33aに至ると、圧力の下降勾配が急になる。この急勾配の圧力低下は、基端部33の第2端33bに至ると止まり、この第2端33bで最低圧力になる。液体が基端部33の第2端33bを越えて液体流路55内に至ると、圧力は次第に高くなる。そして、羽根車30の出口部分で最大圧力になる。この最低圧力と最大圧力の差が大きくなることで、負圧側である羽根翼32の基端部33側でキャビテーションが発生する。
【0037】
本実施形態の羽根車30は、前シュラウド37の開口部38側に、羽根車30内の液体流路55に連通する連通孔40が設けられている。そのため、羽根車30と配置空間部15の壁15aとの間の第1空隙部60にある液体は、
図3に矢印で示すように、第2空隙部61に向けて流動する。そして、第2空隙部61にある液体は、一部が連通孔40を通って羽根翼32の基端部33側に流れ、残りが羽根車30の開口部38側に流れる。この際、液体は、基端部33側の圧力が開口部38側の圧力より低いため、基端部33側へ多く流れる。羽根車30は、連通孔40を通した基端部33への注水により、
図3に実線で示すように、羽根翼32の基端部33(入口)側の圧力が高くなる。よって、羽根翼32の基端部33の第1端33aから第2端33bの間で生じる圧力下降を大幅に抑制することができる。
【0038】
更に詳しく説明すると、本実施形態の連通孔40は、第2空隙部61側に位置する第1連通部46と、液体流路55側に位置して第1連通部46の断面積A1より断面積A2が大きい第2連通部43とからなる。このように段差を設定した連通孔40では、出口である第2連通部43の流体速度V2は、以下の数式(1)で算出できる。
【0040】
また、羽根車30でキャビテーションが発生する部分は羽根翼32の基端部33であり、第2連通部43から流出する液体によって羽根翼32の基端部33に加えられる圧力P3は、以下の数式(2)で算出できる。
【0042】
そのため、羽根翼32の基端部33の圧力Pcは、連通孔40からの注入圧力P3により増圧されるため、キャビテーションの発生(圧力差)が緩和される。また、第1空隙部60の圧力P1、第2空隙部61の圧力P2、連通孔40出口の圧力P3、及び羽根車30の開口部38の圧力P4の関係を
図5に示す。
図5に破線で示すように、連通孔40を設けていない比較例のクローズド型羽根車では、口金部39の出口(第1空隙部60)側から入口(開口部38)側に向けて、圧力が次第に低くなる。これに対して
図5に実線で示すように、実施例の羽根車30では、連通孔40を通して第2空隙部61の圧力P2が羽根翼32の基端部33側に分圧されるため、開口部38側の圧力P4が低下する。
【0043】
また、第1空隙部60の漏れ流量Q1から連通孔40を通して流量Q2が抽出されるため、羽根車30の開口部38への漏れキャビテーション流量Q3は小さくなる。なお、流量Q1〜Q3の関係は以下の数式(3)のようになる。
【0045】
このように、本実施形態の羽根車30は、羽根翼32の両端にシュラウド37,50を配置したクローズド型であるが、口金部39に連通孔40を設けているため、羽根翼32の基端部33側が負圧になると、配置空間部15の液体が基端部33へ注水される。しかも、連通孔40は、液体流路55毎に設けられており、かつ、圧力が最も低下する基端部33の第1端33aから第2端33bの間に設けられている。よって、羽根翼32の基端部33側と先端部34側の圧力差を大幅に低減できるため、クローズド型の羽根車30の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。また、前シュラウド37は羽根車30において露出した部分であるため、連通孔40を設けるための加工を容易に行うことができる。
【0046】
また、この羽根車30を用いた渦巻ポンプ10は、運転時の羽根車30の振れ回りによる振動を抑制できる。詳しくは、羽根車30が回転すると、羽根車30とケーシング11との間である第2空隙部61内の液体が羽根車30(口金部39)に追従して周方向に流動する。
図6Aに示すように、液体の流動速度Ueqが速くなると不安定化流体力Ftが大きくなり、羽根車30に振れ回りによる振動が生じる。
【0047】
図6Bに示すように、第2空隙部61での周方向速度Uは、圧力P2と関連がある。
図6Bに破線で示すように、連通孔40を設けていない比較例のクローズド型羽根車では、口金部39の第1空隙部60側から開口部38側に向けて、周方向流速Uが次第に遅くなる。これに対して
図6Bに実線で示すように、実施例の羽根車30では、連通孔40を通して第2空隙部61の液体が羽根車30内に流れるため、開口部38側の周方向流速Uを急激に減速できる。これにより不安定化流体力Ftを小さくすることができる。
【0048】
図6Cに示すように、第2空隙部61での周方向速度Uは、第2空隙部61での軸方向速度Vと関連がある。
図6Cに破線で示すように、連通孔40を設けていない比較例のクローズド型羽根車では、第1空隙部60側から開口部38側に向けて第2空隙部61を流動する軸方向速度V1’は一定である。これに対して
図6Cに実線で示すように、実施例の羽根車30では、液体が連通孔40を通して羽根車30内に流入するため、第1空隙部60側の軸方向速度V1を開口部38側の軸方向速度V3まで低減できる。これにより、第2ウェアリング58の出口速度を減速し、漏れキャビテーションを緩和させることができる。
【0049】
このように、本実施形態の羽根車30は、口金部39に設けた連通孔40により、羽根翼32の基端部33側で発生するキャビテーションを抑制できるだけでなく、口金部39の周囲である第2空隙部61での液体の流動を阻害し、不安定化流体力Ftを低減できる。そのため、羽根車30の振れ回りによる振動を抑制できる。
【0050】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の渦巻ポンプ10の羽根車30を示す。この第2実施形態では、連通孔40を構成する第1連通部46を、第1の円形孔部47’と、第1の円形孔部47’より直径が小さい第2の円形孔部48とで構成した点で、第1実施形態と相違する。このようにした第2実施形態では、第1実施形態と比較して第2空隙部61を通して開口部38側に流れる液体(漏れ)量が増えるが、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0051】
(第3実施形態)
図8は第3実施形態の渦巻ポンプ10の羽根車30を示す。この第3実施形態では、連通孔40を構成する第1連通部46を円形孔部だけで構成し、この第1連通部46と対向する第2ウェアリング58に、円環状をなすように外向きに窪む対向環状溝59を設けた点で、第1実施形態と相違する。このようにした第3実施形態では、第2空隙部61を通して開口部38側に流れる液体の漏れ量が第2実施形態より更に増えるが、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0052】
(第4実施形態)
図9は第4実施形態の渦巻ポンプ10の羽根車30を示す。この第4実施形態では、連通孔40を構成する第1連通部46を第3実施形態と同様に円形孔部だけで構成し、第2ウェアリング58に形成する対向環状溝59を第1空隙部60にかけて延びる(連通する)ようにした点で、第3実施形態と相違する。このようにした第4実施形態では、第2空隙部61を通して開口部38側に流れる液体の漏れ量が第3実施形態より更に増えるが、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0053】
(第5実施形態)
図10は第5実施形態の渦巻ポンプ10の羽根車30を示す。この第5実施形態では、口金部39を構成する羽根車リング45の外径を小さくし、口金部本体41から径方向外側に突出しないようにした点で、第1実施形態と相違する。このようにした第5実施形態では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0054】
(第6実施形態)
図11は第6実施形態の渦巻ポンプ10の羽根車30を示す。この第6実施形態では、羽根車リングを用いることなく、口金部39を前シュラウド37(口金部本体)だけで構成した点で、第5実施形態と相違する。なお、この口金部39には、円錐孔部からなる第1連通部46と、楕円孔状の第2連通部43とからなる連通孔40が設けられている。このようにした第6実施形態では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、連通孔40は、断面形状が異なる第1連通部46と第2連通部43とを備える構成であるが、羽根車30の露出した前シュラウド37に形成する構成であるため、確実に加工することができる。なお、第1実施形態から第5実施形態と同様の連通孔40でも、羽根車リングを用いない口金部39としてもよい。
【0055】
(第7実施形態)
図12は第7実施形態の流体機械である両吸込遠心渦巻ポンプ70を示す。この渦巻ポンプ70には、ケーシング71の内部に吸込室80が形成され、この吸込室80の幅方向中央に吐出室81が形成されている。また、ケーシング71には、回転軸82が幅方向に貫通され、この回転軸82に羽根車90が連結されている。羽根車90は、羽根翼95の両端に左右のシュラウド100,110を備え、各シュラウド100,110に液体を吸い込む開口部101,111がそれぞれ形成されている。各開口部101,111には口金部102,112が形成され、これら口金部102,112にそれぞれ連通孔103,113が形成されている。
【0056】
(両吸込遠心渦巻ポンプの詳細)
渦巻ポンプ70のケーシング71は、ケーシング本体72とケーシングカバー76とを備えている。ケーシング本体72は、前後の一端側から突出する吸込管と、前後の他端側から突出する吐出管とを備える。吸込管の先端には吸込口73が形成され、吐出管の先端には吐出口74が形成されている。
【0057】
ケーシング本体72の幅方向中央には、所定間隔をあけて左右一対の下側仕切壁75,75が設けられている。同様に、ケーシングカバー76の幅方向中央には、下側仕切壁75,75の上方に位置するように左右一対の上側仕切壁77,77が設けられている。ケーシング本体72にケーシングカバー76を組み付けることで、下側仕切壁75,75と上側仕切壁77,77とは、中央に円形状の取付孔78が形成された環状になる。仕切壁75,77の左右両外側の領域は、吸込口73と連通した渦巻形状の吸込室80である。仕切壁75,77の内側の領域は、取付孔78を介して吸込室80と連通するとともに吐出口74に連通した渦巻形状の吐出室81である。
【0058】
ケーシング71には、吐出室81内に位置するように、取付孔78に羽根車90が配置され、この羽根車90を貫通するように回転軸82が配置されている。ケーシング71の左右両端には、回転軸82を回転可能に軸支するメカニカルシール83が配置されている。回転軸82が回転することで羽根車90が正回転し、吸込口73から液体を吸い込んで、吸込室80に流入させる。また、羽根車90は、吸込室80の液体を両側から吸い込み、液体流路である吐出室81に液体を送出し、吐出口74から吐出する。
【0059】
(羽根車の詳細)
第7実施形態の羽根車90は、回転軸82に連結するための連結部92と、連結部92から放射状に突出する複数の羽根翼95と、羽根翼95の一端側に配置された左側シュラウド(第1シュラウド)100と、羽根翼95の他端側に配置された右側シュラウド(第2シュラウド)110とを備える。
【0060】
連結部92は、両側から吸い込んだ液体を出口に導くために、概ね二等辺三角形状に突出する隆起部93を備える。羽根翼95は、連結部92に一体形成されており、隆起部93の外周部から突出している。羽根翼95は、中央の隆起部93により、左右に一対の基端部96A,96Bを備える。羽根翼95の先端部97は、これら基端部96A,96Bから径方向外側に突出している。
【0061】
左側シュラウド100は、回転軸82が延びる方向における羽根翼95の左端に配置されている。この左側シュラウド100には、回転軸82に対して同心円形状をなすように第1開口部101が設けられている。右側シュラウド110は、回転軸82が延びる方向における羽根翼95の右端に配置されている。この右側シュラウド110には、回転軸82に対して同心円形状をなすように第2開口部111が設けられている。
【0062】
この両吸込型の羽根車90には、隣接する羽根翼95,95と、左側シュラウド100と、右側シュラウド110とで画定された筒状の液体流路120が複数形成される。羽根車90は、羽根翼95の基端部96A,96B側に位置する開口部101,111が流入口であり、これら開口部101,111から液体が吸い込まれる。また、液体流路120の羽根翼95の先端部97側が流出口であり、回転軸82の回転による遠心力によって液体が各液体流路120を通して径方向外側へ吐出される。
【0063】
左側シュラウド100には第1口金部102が設けられ、この第1口金部102の内端によって第1開口部101が画定されている。この第1口金部102には、羽根車90の径方向に貫通するように第1連通孔103が設けられている。第1口金部102は、左側シュラウド100に一体成形した第1口金部本体104と、第1口金部本体104に配置した第1羽根車リング106とを備える。また、第1連通孔103は、第5実施形態と同様に、第1羽根車リング106に設けた第1連通部107と、第1口金部本体104に設けた第2連通部105とからなる。
【0064】
右側シュラウド110には第2口金部112が設けられ、この第2口金部112の内端によって第2開口部111が画定されている。この第2口金部112には、羽根車90の径方向に貫通するように第2連通孔113が設けられている。第2口金部112は、右側シュラウド110に一体成形した第2口金部本体114と、第2口金部本体114に配置した第2羽根車リング116とを備える。また、第2連通孔113は、第5実施形態と同様に、第2羽根車リング116に設けた第1連通部117と、第2口金部本体114に設けた第2連通部115とからなる。
【0065】
下側仕切壁75及び上側仕切壁77によって形成された取付孔78には、吸込室80と吐出室81を仕切るウェアリング125A,125Bが配置されている。ウェアリング125A,125Bは第1実施形態と同様の材料からなる。取付孔78に羽根車90を配置することで、吐出室81の壁と左右のシュラウド100,110との間には、設定した間隔の第1空隙部127が形成される。ウェアリング125A,125Bと羽根車90の口金部102,112との間には、設定した間隔の第2空隙部128が形成される。これらの空隙部127,128には、羽根車90の回転により羽根翼95の基端部96A,96B側と先端部97側に圧力差が生じることで、液体が流動する。
【0066】
このようにした第7実施形態の羽根車90及び渦巻ポンプ70は、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。即ち、羽根車90は、羽根翼95の両端に一対のシュラウド100,110を備えるクローズド型であるが、開口部101,111側に連通孔103,113を設けているため、基端部96A,96B側が負圧になると、吐出室81内の液体が羽根翼95の基端部96A,96Bへ注水される。よって、羽根翼95の基端部96A,96B側と先端部97側の圧力差を大幅に低減できるため、クローズド型の羽根車90の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。しかも、口金部102,112の周囲で液体が流動することを抑制できるため、不安定化流体力を確実に低減し、羽根車の振れ回りによる振動を防止できる。
【0067】
(第8実施形態)
図13は第8実施形態の渦巻ポンプ70を示す。この第8実施形態では、羽根車90の幅方向の中央に液体流路120を左右に仕切る仕切板部130を設けた点で、第7実施形態と相違する。詳しくは、仕切板部130は、連結部92の隆起部93の頂部から羽根翼95の先端部97にかけて突出するように設けられている。このようにした第8実施形態では、第7実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0068】
(第9実施形態)
図14は第9実施形態の渦巻ポンプ70を示す。この第9実施形態では、羽根車90に形成する連通孔103,113の位置を変更した点で、第8実施形態と相違する。詳しくは、この羽根車90の羽根翼95は、基端部96A,96Bが口金部102,112の先端から間隔をあけて位置し、回転軸82に沿った外端が口金部102,112の内端側に位置する。左右のシュラウド100,110には、羽根翼95の基端部96A,96Bの両端間に位置するように口金部102,112から所定間隔をあけた位置に、連通孔103,113が羽根車90の径方向に貫通するように設けられている。
【0069】
このようにした第9実施形態では、基端部96A,96B側が負圧になると、吐出室81内の液体が連通孔103,113を介して羽根翼95の基端部96A,96Bへ注水される。よって、羽根翼95の基端部96A,96B側と先端部97側の圧力差を低減できるため、クローズド型の羽根車90の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。なお、第1実施形態から第8実施形態の羽根車においても、連通孔を口金部以外の箇所に設けてもよい。
【0070】
なお、本発明の流体機械は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、連通孔40,103,113は、羽根車30,90の液体流路55,120毎に設けたが、1つ置きの液体流路55,120に設けてもよい。また、連通孔40,103,113は、隣接した羽根翼の一方側(羽根車30,90の回転方向後側)に近接して設けたが、中央に設けてもよいうえ、回転方向前側に位置するように設けてもよい。また、連通孔40,103,113は、羽根翼32,95の基端部33,96A,96Bの両端間に位置するように設けたが、回転軸25,82の軸方向の外端から内側であれば、その形成位置は希望に応じて変更が可能である。
【0072】
また、
図15に示すように、羽根翼32,95には、連通孔40,103,113から液体が注水される部分にネジ穴132を設け、各液体流路55,120の基端部33,96A,96B側の圧力を調整(平衡)できるようにしてもよい。この場合、このネジ穴132に充填部材を配置することでネジ穴132の開口面積を調整してもよい。
【0073】
そして、前記各実施形態では、排水に用いられる渦巻ポンプ10,70を例に挙げて本発明の流体機械を説明したが、この流体機械は、発電に用いられる発電機、及び排水と発電の両方に用いられるポンプ水車であってもよい。なお、各実施形態のいずれかの羽根車30,90を水車のランナとして用いる場合、羽根車30,90の先端部34,97側が流入口になり、羽根車30,90の基端部33,96A,96B側が流出口になる。即ち、ポンプと水車とでは、液体の出入口が逆になる。そして、羽根車30,90をランナとして用いた場合でも、前記実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。