特許第6553977号(P6553977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6553977強化用組紐構造体及びこれを用いた複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553977
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】強化用組紐構造体及びこれを用いた複合材料
(51)【国際特許分類】
   D04C 1/12 20060101AFI20190722BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20190722BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20190722BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20190722BHJP
   D04C 1/02 20060101ALI20190722BHJP
   E04C 5/07 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   D04C1/12
   C04B28/02
   C04B14/38 A
   C04B16/06 A
   C04B16/06 B
   D04C1/02
   E04C5/07
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-157601(P2015-157601)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-36519(P2017-36519A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390018153
【氏名又は名称】日本毛織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504094660
【氏名又は名称】株式会社ゴーセン
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】上杉 昭二
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 純
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏也
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−004158(JP,A)
【文献】 特開2012−136814(JP,A)
【文献】 特開昭63−012786(JP,A)
【文献】 特開2002−371139(JP,A)
【文献】 特開2004−209838(JP,A)
【文献】 特開2004−017411(JP,A)
【文献】 特開平11−342233(JP,A)
【文献】 特開昭49−071652(JP,A)
【文献】 特開平02−216270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04C 1/00−1/12
C04B 14/38
C04B 16/06
C04B 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張強度1GPa以上、破断伸度1〜8%の強化用繊維1種以上を含有する組紐構造体であって、
前記組紐構造体は、芯糸の表面を組糸が被覆しており、
前記組糸は糸軸方向を0度としたとき、組角度の異なる少なくとも2層の組糸で構成されていることを特徴とする強化用組紐構造体。
【請求項2】
前記強化用繊維は、炭素繊維、高強力ポリエチレン繊維、パラアラミド繊維、PBO繊維、高強力PVA繊維、ポリアリレート繊維及び無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の強化用組紐構造体。
【請求項3】
前記強化用繊維は炭素繊維を含有する請求項1又は2に記載の強化用組紐構造体。
【請求項4】
前記組紐構造体は芯糸に炭素繊維を含有し、前記芯糸の炭素繊維の総繊度が組紐構造体全体の高強度繊維の総繊度の15〜33%である請求項1〜3のいずれかに記載の強化用組紐構造体。
【請求項5】
前記芯糸は、無撚り引き揃え糸、撚り数50T/m(Tは撚り数)以下の甘撚り糸、及び組角10度以下の組糸から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜4のいずれかに記載の強化用組紐構造体。
【請求項6】
前記芯糸の破断荷重は、組糸部分各層の組糸の破断荷重以下である請求項1〜5のいずれかに記載の強化用組紐構造体
【請求項7】
前記各層の組角部分を構成する組糸の破断荷重は、組角度が大きい糸と等しいか又は組角度が大きい糸の方が大である請求項1〜6のいずれかに記載の強化用組紐構造体。
【請求項8】
前記強化用組紐構造体は、弾性率が50〜500GPa、破断伸度が2.5〜15%である請求項1〜7のいずれかに記載の強化用組紐構造体。
【請求項9】
前記強化用組紐構造体の一部に、破断伸度10〜40%かつ引張強度1GPa未満の普通強度の繊維を含む請求項1〜8のいずれかに記載の強化用組紐構造体。
【請求項10】
前記普通強度繊維は、芯糸と内側組糸の間に巻き付けるか又は編組されている請求項9に記載の強化用組紐構造体。
【請求項11】
前記強化用組紐構造体は、樹脂成分が含浸及び/又は被覆されている請求項1〜10のいずれかに記載の強化用組紐構造体。
【請求項12】
前記樹脂成分は熱可塑性樹脂である請求項11に記載の強化用組紐構造体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の強化用組紐構造体と補強用マトリックス材料を含む複合材料。
【請求項14】
前記強化用組紐構造体が炭素繊維を含み、前記補強用マトリックスがコンクリートである請求項13に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強化用組紐構造体とくにコンクリート補強などに適した強化用組紐構造体及びこれを用いた複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは圧縮には強いが引張には弱いことは良く知られている。そのため鉄筋で補強することが行われている。補強材としての鉄筋は、コンクリートの中性化などで腐食すること、比重が高く単位面積あたりの重量負荷が大きいため鉄筋自体の重量を保持する必要があること、輸送や作業性で制約が大きいなどの課題があり、鉄筋代替補強材の検討がされている。代替材料としては鉄筋より引張強度が高く、比重が小さい炭素繊維やパラ系アラミドなどの高強度繊維補強材が検討されている。例えば特許文献1においては、引張強度の大きな繊維として芳香族ポリアミド繊維を組紐状とすることが開示されている。また特許文献2では炭素繊維を引きそろえた束からなる芯材の外側を芳香族ポリアミドで組紐にして結合剤で結着することが開示されている。特許文献3においては炭素繊維を組紐状にして用いることで破断伸度が向上することが開示されている(特許文献3;[0013]および図5)。特許文献4には組紐又は撚糸の内部にコブを作り、コンクリートとの付着性能を向上することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−119853号公報
【特許文献2】特開昭63−4158号公報
【特許文献3】特開2007−113346号公報
【特許文献4】特開2013−155089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は例えば8本の丸打ち組紐による補強材であるが、これだけでは鉄筋に近い応力―ひずみ曲線の補強材は得られないという問題がある。特許文献2においては両者の複合すなわち、芯材に炭素繊維を用い、その外側をアラミド繊維で製紐することが開示されている。この場合初期の剛性は高くできるが、歪みが炭素繊維の破断伸度以上になると炭素繊維が破断するため、応力の大幅な低下がみられ、もとの応力レベルには回復しない。すなわち炭素繊維の破断伸度以上の領域では応力はキープできないという問題が残る。特許文献3では炭素繊維を組紐状として使用することで破断伸度が高くなることが開示されているが、これは補強した構造物がより大きな変形に耐えることを意味し、補強構造体の変形が繊維自身の変形のほか組構造の変形が加わった効果と考えられるが、伸度向上効果は十分ではなく、鉄筋レベルの破断伸度には達していない。特許文献4は組紐又は撚糸の内部にコブを作るため、同様に鉄筋に近い応力―ひずみ曲線の補強材とすることは困難である。
以上のとおり、従来技術では鉄筋に近い応力―ひずみ曲線の補強材とすることは困難であり、この改善が求められていた。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、高強度で低伸度の炭素繊維などの高強度繊維を強化用構造体として伸度を高くすることにより、鉄筋に近い応力―ひずみ曲線の補強材とし、鉄筋代替のコンクリート補強に好適であり、さらに鉄筋代替のコンクリート補強以外の他の補強用途にも適用可能である強化用組紐構造体及びこれを用いた複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の強化用組紐構造体は、引張強度1GPa以上、破断伸度1〜8%の強化用繊維1種以上を含有する組紐構造体であって、前記組紐構造体は、芯糸の表面を組糸が被覆しており、前記組糸は糸軸方向を0度としたとき、組角度の異なる少なくとも2層の組糸で構成されていることを特徴とする。
本発明の複合材料は、前記の強化用組紐構造体と補強用マトリックス材料を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高強度で低破断伸度の炭素繊維などの高強力繊維を使用して、強化用構造体として破断伸度を大きくすることにより、鉄筋に近い応力―ひずみ曲線の補強材とし、鉄筋代替のコンクリート補強に好適であり、さらに鉄筋代替のコンクリート補強以外の他の補強用途にも適用可能である強化用組紐構造体及びこれを用いた複合材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は炭素繊維、アラミド繊維、鉄筋の応力ひずみ曲線の例である。
図2図2は本発明の一実施形態の強化用繊維構造体を模式的に示す説明図である。
図3図3は本発明の一実施形態の応力ひずみ曲線である。
図4図4は本発明の実施例1及び実施例2の強化用組紐構造体の応力ひずみ曲線である。
図5図5は比較例1〜3の構造体の応力ひずみ曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らの検討によれば、鉄筋の力学的な特徴としては、(1)剛性が高いこと、特に低伸度領域での応力が高いこと および(2)降伏点から破断にいたるまでの応力はほぼ一定で、破断伸度は比較的大きいことがあげられる。図1に鉄筋および高強力繊維の例として炭素繊維と芳香族ポリアミド(パラ系アラミド繊維)の応力―ひずみ曲線の例を示した(出典:繊維学会誌 vol.51,No.7(1995)P299)。図1にみられるように、一般的にアラミドのような有機高分子系高強度繊維は鉄筋にくらべ引張強度は大きいが、低伸度域で剛性が低い傾向がみられる。一方炭素繊維は、引張強力は高く、剛性も鉄筋と同等以上であるが、破断伸度が低いという問題がある。すなわちそれぞれの材料では一長一短があり、鉄筋に近い応力―ひずみ曲線の補強材とするには様々な工夫が必要である。図1において、PC鋼線とは、プレストレストコンクリートに緊張力を与える緊張材のことであり、高強度鋼線またはピアノ線ともいう。本発明は前記PC鋼線に近似した応力ひずみ曲線の強化用組紐構造体を得ることができる。
【0010】
本発明の強化用組紐構造体は、引張強度1GPa以上、破断伸度1〜8%の強化用繊維1種以上を含有し、芯糸の表面を組糸が被覆しており、前記組糸は糸軸方向を0度としたとき、組角度の異なる少なくとも2層の組糸で構成されている。すなわち、本発明の組紐構造体に用いる強化用の繊維は、高強度で低伸度であり、より好ましくは高弾性率(高剛性)のものが選ばれる。前記強化用繊維の引張強度は好ましくは1GPa以上である。さらに好ましくは2GPa以上である。破断伸度は1〜8%である。好ましい弾性率は100〜800GPaである。
【0011】
前記を満足する繊維として具体的には、例えば炭素繊維、高強力ポリエチレン繊維、パラアラミド繊維、PBO繊維、高強力PVA繊維、ポリアリレート繊維などの有機高強度繊維のほか、無機繊維(シリカ、アルミナ、炭化珪素、バサルト繊維などの無機繊維)などが挙げられる。これらの中で弾性率が鉄筋並み以上で、強化用構造体とした場合にも鉄筋なみの弾性率が得られる炭素繊維が最も好ましく用いられる。前記繊維は必要に応じて2種以上を混用して構造体とすることができる。混用する繊維は必ずしも前記要件をすべて満たす必要はなく主成分の繊維が前記要件をみたせば使用できる。ここで主成分とは、強化用繊維の50質量%以上をいう。
【0012】
次に本発明において、強化用繊維構造体として、鉄筋に近似した引張挙動とするために、すなわち図1に示した鉄筋の応力―ひずみ曲線に近づけるため、(a)立ち上がりの弾性率を高くし、かつ(b)降伏点の応力をほぼ一定にキープした状態で伸びることについて検討した。
【0013】
まず、組紐構造体として、中心部に芯糸を有し、芯糸の外側に2層以上の組角度の異なる多層構造とする。芯糸としては、好ましくは下記のいずれかである。
(1)無撚りの引き揃え糸、
(2)50T/m(Tは撚り数)以下の甘撚り糸、
(3)構造体中最も組角の小さい組紐(好ましくは組角度10度未満)
このような構造とすることで、組紐構造体の立ち上がりの弾性率を高くすることができる。芯糸の素材としては、弾性率が高い炭素繊維が好ましく用いられる。また、芯糸の比率としては、芯糸の総繊度が組紐構造体の高強度繊維の総繊度の15〜33%が好ましい。15%未満では低伸度領域での応力が不十分であり、33%を超えると後述するように芯糸が破断したときの応力が低くなり好ましくない。
【0014】
さらに、本発明の組紐は、好ましくはさらに次のような設計とすることで、組紐構造体の破断伸度を高くできるとともに応力−ひずみ曲線における応力の変化を小さくすることができる。このために好ましい要件としては、
(a)組紐構造体の各層組角部分を構成する組糸の破断荷重は、組角度が大きい糸の方が大であるか等しい。
(b)芯糸の破断荷重は、組角度の小さい組糸の破断荷重より小さいか等しい。
が挙げられる。
【0015】
本発明の組紐構造体において、組角度の異なる層の数はN層とする。各層を内側から順に、B1、B2・・・BNと表わし、芯部分をB0とする。各層の組角度をθ0、θ1、θ2・・・θ3とする。各層を形成する組糸の合計強力をS0、S1、S2・・・SNとすると、本発明の好ましい組糸構造は、次の表1のように表わせる。
【0016】
【表1】
【0017】
表1において、Nは2以上の整数である。Nの上限についてはとくに限定はないか、おもに製造コスト的な観点から4程度である。図2に、引き揃え糸からなる芯糸(2)とその外側に組角度の異なる組構造3層(3,4,5)からなる本発明の組紐構造体(1)の例を模式図で示した。本発明において、多層組構造の好ましい組角度としては、図2のように外側の組角度がより大きい(θ0<θ1<θ2<・・・<θN)構造がより好ましい。この例においては、組角度θが0度の引き揃え芯糸(2)とその外側の組角度θ1の内層組部B1(3)とその外側の組角度θ2の中間層組部B2(4)、さらに外側の組角度θ3である外層組部B3(5)の計3層の組み部で構成される。すなわち、芯部と計3層の組み部からなる中実多層組構造であり、組角度はθ0<θ1<θ2<θ3である。
【0018】
前記の(a),(b)の条件は好ましくは同時に満足することが好ましい。ここで同じ組角部分を構成する糸の破断荷重力とは、各組糸の強度を合計した値であり、同じ糸の場合、(組糸一本の強度)×(組糸の使用本数)で表される。したがって、破断荷重を高くするには、同じ素材を使用する場合、各組糸の繊度を大きくするか使用本数(組の打ち数)を増やすことで可能である。
【0019】
一般に組紐を引張る場合、最初に組構造部分(組目)が伸ばされ変形するので見かけの伸度は原糸の伸度より高くなるが、この構造伸び領域では応力が小さいので、立ち上がりの見かけの弾性率(剛性)は低くなる。組構造に芯糸を入れた場合、立ち上がり部の剛性(弾性率)は高くなるが、糸自体の伸度が小さいと組角0の糸が破断したときに応力が大きく低下して所望の応力ひずみ曲線とならない。本発明においては複数の組角部分を持った多層構造とし、かつ組角の小さい方から順に糸が破断するような設計とすることで、目標に近い応力ひずみ曲線となることを見出した。
【0020】
また、組角度の小さい層の糸が切断したとき、応力の大幅低下を避けるには、次の組角度層の強力が小さい層の強力と同じかより高いことが望ましい。破断荷重が十分でない場合は、組紐全体が切断するか応力が大幅低下して、組角の小さい部分が破断した時の応力レベルには回復しない。また、組角度の順番(位置)についても特に制限されないが、芯に近い方が組角度が小さく、外側の組紐の組角度が大きい構造がより好ましい。本発明において好ましい組角度(θ)は10〜60度である。また、必要に応じ各層の製紐時にタテ糸(中央糸、柱糸)を挿入することもできる。
【0021】
図3は本発明の一実施形態の応力ひずみ曲線である。以下図3の応力ひずみ曲線について説明する。
(1)図3の1段目の応力ひずみ曲線6は、図2の芯糸(2)により主に発現する。
(2)図3の2段目の応力ひずみ曲線7は、図2の内層組部B1(3)により主に発現する。
(3)図3の3段目の応力ひずみ曲線8は、図2の中間層組部B2(4)により主に発現する。
(4)図3の4段目の応力ひずみ曲線9は、図2の外層組部B3(5)により主に発現する。
【0022】
本発明の強化用組紐構造体は、弾性率が50〜500GPa、破断伸度が2.5〜15%であるが好ましい。好ましくは炭素繊維を含有し、破断伸度が3〜10%、引張弾性率が100GPa〜500GPaである。引張強度は好ましくは0.5GPa以上である。この範囲を満足することで鉄筋に近い応力―ひずみ曲線となり、鉄筋代替用に好適に適用できる。
【0023】
本発明においては、前記組紐構造体の一部に強化用繊維以外の普通強度繊維(伸度10%〜40%、強度1GPa未満)を必要に応じ含有することができる。例えば、組紐の中心部の芯糸部分と内層組部分との層間に破断伸度10%以上の比較的伸度の高い糸を必要に応じ巻き付け被覆や製紐被覆することもできる。この糸は必ずしも高強度である必要はなく、素材に限定されず、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン糸などが使用できる。この糸により、引張時の組目が締まる際の緩衝材的な効果やマトリックス樹脂との親和性の改善が期待できる。
【0024】
本発明においては、組紐構造体を構成する強化用繊維の少なくとも一部に樹脂成分、好ましくは熱可塑性樹脂が含浸及び/又は被覆されていることが、毛羽発生防止、工程通過性などから好ましく、結果的に構造体の強度利用率を高くすることができる。また、後工程の複合材との親和性を考慮した樹脂を選定できる。熱可塑性樹脂としてはとくに限定はなく、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタンなど使用用途に適した樹脂を選定できる。樹脂の付与方法についても限定されず、溶融コーティング法、樹脂の溶剤溶液または樹脂の分散液を用いた樹脂加工法いずれでも可能である。
【0025】
本発明は前記の強化用組紐構造体が使用された複合材料を含む。複合材のマトリックス材料としてはとくに限定なく、コンクリート、セメント、各種樹脂材料が挙げられる。とくに好ましくは、強化用繊維が炭素繊維であり、補強用マトリックスがコンクリートである複合材料である。
【実施例】
【0026】
以下実施例を用いて本発明を例示するが、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0027】
下記の実施例、比較例の評価方法は以下のように行った。
<強伸度、引張り弾性率>
組紐構造体の引張強度、破断伸度はJISL1013に準じて測定した。引張試験時の試料保持は、島津製作所製5KNスプリットドラム式ロープつかみ具を用いた。強度は最大強度、伸度は破断伸度で示した。この保持具は構造上引張初期に、低応力で伸びがやや大きくなるが次のように補正した。引張り弾性率は応力―歪み曲線で、初期部分で最も傾きの大きい部分の傾きで表し、この傾きの直線が応力0の軸と交わる点を伸度0%とした。
<組紐構造体の外径>
ノギスを用いて測定した。
<質量>
組紐を50cm長さに切断し、質量を測定して1m長さの質量に換算した。
<組角度>
組紐を実態顕微鏡下で観察、中央の組目部分を観察(撮影)し、組糸の交差角(2×θNに相当)を測定し、その半分の角度を組角(θ)とした。
【0028】
下記の実施例、比較例で使用した炭素繊維は次のとおりである。
<炭素繊維>
・東レ社製、商品名“トレカ” T300−12K(炭素繊維)、繊度;800Tex、引張強度;3530MPa、引張弾性率;230GPa、比重;1.76
・東レ社製、商品名“トレカ” T300−3K(炭素繊維)、繊度;198Tex、引張強度;3530MPa、引張弾性率;230GPa、比重;1.76
なお、炭素繊維原糸は1K=66Texであり、単繊維強度は3520MPaであった。
【0029】
(実施例1)
炭素繊維12K糸2本を引き揃え芯糸として、炭素繊維3K甘撚り糸(30T/m)を組糸として16打ち製紐した(第1層)。この際ポリエステル普通糸(繊度;1100dtex)を芯糸に巻きつけながら製紐した。さらに炭素繊維3K甘撚り糸を16本用いて同様にポリエステル普通糸(繊度;1100dtex)を巻き付けながら製紐した(第2層)。得られた製紐糸の炭素繊維は芯糸、中間層(第1層)、外層(第2層)の3層からなり、それぞれの破断荷重は、芯糸(タテ糸挿入部を含む)が24K分、第1層組糸24K分、第2層組糸48K分で、各部の破断荷重は、
芯糸=第1層組糸<第2層組糸
となっている。
表2に構成、製紐糸の物性を示した。
【0030】
(実施例2)
実施例1の同様の構成で、第1層と第2層の組目(組角)を変えて組紐構造体を作製した。すなわち、炭素繊維12K糸2本を引き揃え芯糸として、炭素繊維3K甘撚り糸(30T/m)を組糸として16打ち製紐した(第1層)。この際ポリエステル普通糸(繊度;1100dtex)を芯に巻き付けながら製紐した。さらに炭素繊維3K甘撚り糸を16本用いて同様にポリエステル普通糸(繊度;1100dtex)を巻き付けながら製紐した(第2層)。この際製紐機のギアを変えることで、実施例1より、組角が大きくなるようにした。得られた製紐糸の炭素繊維は芯糸、中間層(第1層)、外層(第2層)の3層からなり、それぞれの破断荷重は、芯糸(タテ糸挿入部を含む)が24K分、第1層組糸24K分、第2層組糸48K分で、各部の破断荷重は、
芯糸=第1層組糸<第2層組糸
となっている。
表2に構成、製紐糸の物性を示した。
【0031】
(比較例1,2,3)
比較例1として、実施例1の芯糸のみ、比較例2として芯糸のない組部のみの製紐糸、比較例3として芯糸の外側に1層のみ被覆したサンプルを作製して実施例と比較した。
各実施例、比較例について条件と結果を表2にまとめて示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から明らかなとおり、本発明の各実施例は比較例に比べ、破断伸度が高くなっており、弾性率も芯糸のない比較例2が、弾性率が低下しているのに比べ、実施例1,2とも原糸に近い弾性率であり、目標とする、高破断伸度と高弾性率(高剛性)が得られた。
【0034】
図4に本発明の実施例1〜2の強化用組紐構造体の応力ひずみ曲線を示し、図5に比較例1〜3の構造体の応力ひずみ曲線を示す。図4〜5から明らかなとおり、本発明の実施例1〜2の強化用組紐構造体は比較例1〜3に比べて伸度を大幅に大きくすることができ、鉄筋に近い応力―ひずみ曲線の補強材とすることができた。
【符号の説明】
【0035】
1 組紐構造体
2 芯糸
3 内層組部
4 中間層組部
5 外層組部
図1
図2
図3
図4
図5