特許第6553985号(P6553985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6553985
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20190722BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20190722BHJP
【FI】
   H02M3/28 W
   H02M7/48 E
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-163986(P2015-163986)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-42013(P2017-42013A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】上田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】山本 知信
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/121665(WO,A1)
【文献】 特開平01−270769(JP,A)
【文献】 特開2001−078449(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/136428(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台の電力変換器を並列に接続した電力変換装置であって、
各電力変換器は、直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と、前記逆変換器により変換された交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と、絶縁トランスと、ゲート駆動回路とを備え、
前記絶縁トランスの1次巻線は、リアクトルを介して前記逆変換器に接続され、
前記絶縁トランスの2次巻線は、リアクトルを介して前記順変換器に接続され、
前記絶縁トランスの2次巻線に接続されたリアクトルは、同極で電磁結合され、
前記逆変換器は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有する第1レグと、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を有する第2レグとを備え、
前記順変換器は、第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子を有する第3レグと、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子を有する第4レグとを備え、
前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第5スイッチング素子、及び前記第6スイッチング素子をそれぞれ異なるタイミングでオンし、
前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を同時にオンした後、第1デッドタイム期間経過後に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子を同時にオンするとともに、前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子を同時にオンした後、第2デッドタイム期間経過後に前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子を同時にオンすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
n台の電力変換器を並列に接続した電力変換装置であって、
各電力変換器は、直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と、前記逆変換器により変換された交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と、絶縁トランスと、ゲート駆動回路とを備え、
前記絶縁トランスの1次巻線は、リアクトルを介して前記逆変換器に接続され、
前記絶縁トランスの2次巻線は、直列に接続された(n−1)個のリアクトルを介して前記順変換器に接続され、
前記絶縁トランスの2次巻線に接続された(n−1)個のリアクトルは、異なる電力変換装置間で互いに同極で電磁結合され、
前記逆変換器は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有する第1レグと、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を有する第2レグとを備え、
前記順変換器は、第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子を有する第3レグと、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子を有する第4レグとを備え、
前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第5スイッチング素子、及び前記第6スイッチング素子をそれぞれ異なるタイミングでオンし、
前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を同時にオンした後、第1デッドタイム期間経過後に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子を同時にオンするとともに、前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子を同時にオンした後、第2デッドタイム期間経過後に前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子を同時にオンすることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器を複数台並列に接続させて負荷に直流電力を給電する多並列の電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、電気自動車のバッテリ給電、系統連系用の電力変換器など、供給電力の小さい分野から大きい分野まで用途に応じて適用されている。
【0003】
電力変換器において大電力を負荷へ供給する場合は、従来から単一の電力変換器の出力を並列に接続する方法が採られている。しかしながら、電力変換器を並列接続した場合において、各電力変換器の出力電圧差や入出力のインピーダンスの違いによって出力に横流が発生し、電流アンバランスによる出力低下や出力リプルの増大などの問題が生じる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、横流抑制用のリアクトルを備えた直流チョッパ装置を並列接続し、入力インピーダンスを等しくすることで横流を抑制する多並列直流チョッパ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−14109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、特許文献1に開示されている多並列チョッパ装置の構成を示す回路図である。図6に示すように複数台のチョッパ装置2A,2B,・・・,2Nの出力側に直列に横流抑制用リアクトル3A,3B,・・・,3Nを備え、接続点A及びBから各チョッパ装置への入力配線インピーダンスが等しくなるように構成し、負側の出力を接続点Bに一本で戻すことで、チョッパ装置の負側に還流電流が流れるループを断ち切り、複雑な制御を行うこと無く、容易な回路構成で横流抑制を行っている。
【0007】
しかし、各直流チョッパ装置に横流抑制用リアクトルを備える必要があるため、装置全体が大型化し、コストが増加するという問題があった。また、入力インピーダンスを等しくする必要があるため、装置の仕様によっては、入力インピーダンスを等しくする配線方法を実現することが困難であった。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、簡易かつ小型な構成で横流を抑制することが可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力変換装置は、2台の電力変換器を並列に接続した電力変換装置であって、各電力変換器は、直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と、前記逆変換器により変換された交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と、絶縁トランスと、ゲート駆動回路とを備え、前記絶縁トランスの1次巻線は、リアクトルを介して前記逆変換器に接続され、前記絶縁トランスの2次巻線は、リアクトルを介して前記順変換器に接続され、前記絶縁トランスの2次巻線に接続されたリアクトルは、同極で電磁結合され、前記逆変換器は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有する第1レグと、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を有する第2レグとを備え、前記順変換器は、第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子を有する第3レグと、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子を有する第4レグとを備え、前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第5スイッチング素子、及び前記第6スイッチング素子をそれぞれ異なるタイミングでオンし、前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を同時にオンした後、第1デッドタイム期間経過後に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子を同時にオンするとともに、前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子を同時にオンした後、第2デッドタイム期間経過後に前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子を同時にオンすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電力変換装置は、n台の電力変換器を並列に接続した電力変換装置であって、各電力変換器は、直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と、前記逆変換器により変換された交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と、絶縁トランスと、ゲート駆動回路とを備え、前記絶縁トランスの1次巻線は、リアクトルを介して前記逆変換器に接続され、前記絶縁トランスの2次巻線は、直列に接続された(n−1)個のリアクトルを介して前記順変換器に接続され、前記絶縁トランスの2次巻線に接続された(n−1)個のリアクトルは、異なる電力変換装置間で互いに同極で電磁結合され、前記逆変換器は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子を有する第1レグと、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子を有する第2レグとを備え、前記順変換器は、第5スイッチング素子及び第6スイッチング素子を有する第3レグと、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子を有する第4レグとを備え、前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第5スイッチング素子、及び前記第6スイッチング素子をそれぞれ異なるタイミングでオンし、前記ゲート駆動回路は、前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を同時にオンした後、第1デッドタイム期間経過後に前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子を同時にオンするとともに、前記第5スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子を同時にオンした後、第2デッドタイム期間経過後に前記第6スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子を同時にオンすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数台の電力変換器を並列に接続するシステムにおいて、簡易かつ小型な構成で横流を抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す回路図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の各動作モードにおける概略波形を示す図である。
図3-1】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置における電力変換器の各動作モードを説明する図である。
図3-2】本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置における電力変換器の各動作モードを説明する図である。
図4】本発明の第1の実施形態に適用される電磁結合リアクトルの効果の一例を説明する図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す回路図である。
図6】従来の多並列チョッパ装置の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す例では、電力変換装置1は、電力変換器10と、電力変換器20と、ゲート駆動回路51及び52と、PWM信号制御回路60とを備える。電力変換装置1は、2台の電力変換器10及び20を並列に接続させて負荷に直流電力を給電する。
【0016】
直流入力電源100は、電力変換器10と電力変換器20の入力端子間に接続される。
【0017】
電力変換器10は、絶縁型の直流電力変換器であり、逆変換器11と、入力平滑コンデンサ13と、リアクトル15と、絶縁トランス16と、リアクトル17と、順変換器12と、出力平滑コンデンサ14とを備える。
【0018】
電力変換器10の入力端子間には、入力平滑コンデンサ13と逆変換器11が並列に接続される。
【0019】
電力変換器10の出力端子間には、順変換器12と出力平滑コンデンサ14が並列に接続される。また、電力変換器10は電力変換器20の出力端子と並列に接続される。
【0020】
逆変換器11は、スイッチング素子Q11a及びQ11bが直列に接続されたものと、スイッチング素子Q11c及びQ11dが直列に接続されたものとが並列に接続されて構成され、直流電圧を交流電圧に変換する。
【0021】
入力平滑コンデンサ13は、入力電圧を一定に維持する。
【0022】
リアクトル15は、スイッチング素子Q11a及びQ11bが直列に接続された接続点a11と、接続点b11との間に接続される。
【0023】
絶縁トランス16は、1次側に巻線(1次巻線)n11を備え、2次側に巻線(2次巻線)n12を備える。1次巻線n11は、接続点b11と、スイッチング素子Q11c及びQ11dが直列に接続された接続点c11との間に接続され、2次巻線n12は、接続点b12と、スイッチング素子Q12a及びQ12bが直列に接続された接続点c12との間に接続される。逆変換器11は、リアクトル15を介して絶縁トランス16の1次巻線n11に接続される。順変換器12は、リアクトル17を介して絶縁トランス16の2次巻線n12に接続される。
【0024】
リアクトル17は、接続点b12と、スイッチング素子Q12c及びQ12dが直列に接続された接続点a12との間に接続される。また、リアクトル17はリアクトル27と同極(同極性)で電磁結合される。
【0025】
順変換器12は、スイッチング素子Q12a及びQ12bが直列に接続されたものと、スイッチング素子Q12c及びQ12dが直列に接続されたものとが並列に接続されて構成され、交流電圧を直流電圧に変換する。
【0026】
出力平滑コンデンサ14は、出力電圧を一定に維持する。
【0027】
電力変換器20は、入力平滑コンデンサ23と、逆変換器21と、リアクトル25と、絶縁トランス26と、リアクトル27と、順変換器22と、出力平滑コンデンサ24とを備える。電力変換器20の構成と接続については、電力変換器10と同様であるため、説明を省略する。なお、電力変換器10と区別するために構成要素の符号を変更している。
【0028】
PWM信号制御回路60は、PWM信号を生成し、共通のPWM信号をゲート駆動回路51及び52に分配する。
【0029】
ゲート駆動回路51は、PWM信号制御回路60から入力されるPWM信号を用いて、電力変換器10のスイッチング素子Q11a,Q11b,Q11c,Q11d,Q12a,Q12b,Q12c及びQ12dを駆動し、オンオフ制御を行う。ゲート駆動回路52は、PWM信号制御回路60から入力されるPWM信号を用いて、電力変換器20のスイッチング素子Q21a,Q21b,Q21c,Q21d,Q22a,Q22b,Q22c及びQ22dを駆動し、オンオフ制御を行う。なお、ゲート駆動回路51及び52は同様の構成である。
【0030】
以上の通り構成された電力変換装置1の動作について説明する。
【0031】
図2は、電力変換装置1の各動作モードにおける概略波形を示す図である。スイッチング素子Q11a,Q11b,Q11c,Q11d,Q12a,Q12b,Q12c,Q12d,Q21a,Q21b,Q21c,Q21d,Q22a,Q22b,Q22c及びQ22dは、図2に示すように、デッドタイム期間を有しながらスイッチング素子のオンとオフの動作が行われる。
【0032】
スイッチング素子のオンとオフの動作は、PWM信号制御回路60により生成されるデューティ50%で固定されたPWM信号に基づいてスイッチング制御される。
【0033】
電力変換器10の各モードの動作について、図3を参照して説明する。
【0034】
図3(b) モードa−2(電力伝送期間)>
1次側のスイッチング素子Q11a及びQ11dがオンしている状態で、2次側のスイッチング素子Q12a及びQ12dがオンすると、電流IL2が急激に上昇する。このため、リアクトル17、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q12aに逆並列接続されたダイオードD、スイッチング素子Q12dに逆並列接続されたダイオードDの経路で流れていた電流IL2の向きが切り替わり、スイッチング素子Q12a、絶縁トランス16の2次巻線n12、リアクトル17、スイッチング素子Q12dの経路で電流IL2が流れる。これにより、図2のモードa−2に示すように電流が負から正へ上昇し電力が伝送される。
【0035】
図3(c) モードb−1(2次側のデッドタイム期間)>
つぎに、2次側のスイッチング素子Q12a及びQ12dがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル17に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q12c及びQ12bに逆並列接続されたダイオードD及びDを経路にして電流IL2が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。
【0036】
図3(d) モードb−2(電力伝送停止期間)>
2次側のデッドタイム期間が終了すると、2次側のスイッチング素子Q12c及びQ12bがオンし、絶縁トランス16の2次巻線n12、リアクトル17、スイッチング素子Q12cに逆並列接続されたダイオードD、スイッチング素子Q12bに逆並列接続されたダイオードDの経路で電流が流れる。この時、1次側はスイッチング素子Q11a、リアクトル15、絶縁トランス16の1次巻線n11、スイッチング素子Q11dの経路で電流が流れているため、図2のモードb−2に示すように、絶縁トランス16の1次巻線n11と2次巻線n12には同じ方向に電圧が発生し、1次側と2次側の電力伝送が停止する。
【0037】
図3(e) モードc−1(1次側デッドタイム期間)>
つぎに、1次側のスイッチング素子Q11a及びQ11dがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル15に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q11c及びQ11bに逆並列接続されたダイオードD及びDを経路にして電流IL1が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。
【0038】
図3(f) モードc−2(電力伝送期間)>
1次側のデッドタイム期間が終了すると、1次側のスイッチング素子Q11c及びQ11bがオンする。2次側のスイッチング素子Q12b及びQ12Cがオンしている状態で、1次側のスイッチング素子Q11c及びQ11bがオンすると、電流IL2が急激に減少するため、リアクトル17、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q12cに逆並列接続されたダイオードD、スイッチング素子Q12bに逆並列接続されたダイオードDの経路で流れていた電流IL2の向きが切り替わり、スイッチング素子Q12c、リアクトル17、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q12bの経路で電流IL2が流れるため、図2のモードc−2に示すように電流が正から負へ下降し電力が伝送される
【0039】
図3(g) モードd−1(2次側デッドタイム期間)>
つぎに、2次側のスイッチング素子Q12c及びQ12bがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル17に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q12a及びQ12dに逆並列接続されたダイオードD及びDを経路にして電流IL2が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。
【0040】
図3(h) モードd−2(電力伝送停止期間)>
2次側のデッドタイム期間が終了すると、2次側のスイッチング素子Q12a及びQ12dがオンし、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q12aに逆並列接続されたダイオードD、スイッチング素子Q12dに逆並列接続されたダイオードD、リアクトル17の経路で電流がIL2流れる。この時、1次側はスイッチング素子Q11c、絶縁トランス16の1次巻線n11、リアクトル15、スイッチング素子Q11bの経路で電流IL1が流れているため、図2のモードd−2に示すように、絶縁トランス16の1次巻線n11と2次巻線n12には同じ方向に電圧が発生し、1次側と2次側の電力伝送が停止する。
【0041】
図3(a) モードa−1(1次側デッドタイム期間)>
つぎに、1次側のスイッチング素子Q11c及びQ11bがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル15に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q11a及びQ11dに逆並列接続されたダイオードD及びDを経路にして電流IL1が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。デッドタイム期間が終了すると、モードa−2に切り替わる。
【0042】
このスイッチング動作が繰り返され、電力が伝送される。このスイッチング動作の制御は、位相シフト制御となっており、図2に示すように1次側と2次側の電圧の位相差δを調整することにより、絶縁トランス16の1次側から2次側への送電電力量を調整する。すなわち、逆変換器11の出力電圧VL1と順変換器12の入力電圧VL2の位相を制御することで電力伝送が行われる。
【0043】
電力変換器20の動作は、ゲート駆動回路51及び52が同様の構成となっており、スイッチング素子のオンとオフの動作は、PWM信号から分配される同一の信号で行われることから、電力変換器10の動作と同様となるため、説明を省略する。
【0044】
電力変換装置1の出力は、電力変換器10と電力変換器20の合成出力となる。
【0045】
上述したように、電力変換器10と電力変換器20は同様の回路構成、同様のPWM信号でスイッチング動作が行われるが、一般に、電力変換器10と電力変換器20のスイッチング素子のスイッチング特性は異なる。
【0046】
このため、スイッチング特性のバラつきによるスイッチング素子のターンオン時間、ターンオフ時間、ゲートの蓄積時間などの差で、電力変換器10と電力変換器20のスイッチング素子のオンとオフのタイミングがずれてしまい、電力変換器10と電力変換器20の出力電圧に差が生じ、横流が流れる。
【0047】
しかし、本発明では、複数の電力変換器のリアクトル17及び27は、同極で電磁結合されているため、横流を抑制することができる。
【0048】
例えば、図4に示すように、リアクトル17に流れる電流IL12がリアクトル27に流れる電流IL22より大きかった場合、リアクトル17とリアクトル27のインダクタンス値をLとすると、リアクトル17で発生する電圧VL12とリアクトル27で発生する電圧VL22は、式(1)と式(2)で与えられる。
【0049】
【数1】
【0050】
式(1)よりリアクトル17で発生する電圧VL12はVL12>0となり、電圧降下として働く。一方、式(2)よりリアクトル27で発生する電圧VL22はVL22<0となり、電圧上昇として働く。このため、各電力変換器10及び20の2次側に流れる電流がバランスされることとなり、横流を抑制することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第1の実施形態に係る電力変換装置1は2台の電力変換器10及び20を並列接続しているが、第2の実施形態に係る電力変換装置は3台以上の電力変換器を並列接続する。
【0052】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示すブロック図である。図5に示す電力変換装置2は、3台の電力変換器10,20及び30を並列接続する。電力変換器10はリアクトル17及び18を備え、電力変換器20はリアクトル27及び28を備え、電力変換器30はリアクトル37及び38を備える。そして、横流を抑制するために、リアクトル17及び27と、リアクトル28及び37と、リアクトル18及び38とがそれぞれ同極で電磁結合する。その他の構成、及び各電力変換器10,20及び30の動作は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
同様にして、電力変換器を4台以上並列に接続させることも可能である。すなわち、並列接続される電力変換器の台数がn台の場合には、各電力変換器の絶縁トランスの2次巻線は、直列に接続された(n−1)個のリアクトルを介して順変換器に接続される。そして、(n−1)個のリアクトルは、異なる電力変換装置間で互いに同極で電磁結合される。これにより、電力変換器の台数に関わらず、横流を抑制することができるようになる。
【0054】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,2 電力変換装置
10,20,30 電力変換器
11,21 逆変換器
12,22 順変換器
13,23 入力平滑コンデンサ
14,24 出力平滑コンデンサ
15,25 リアクトル
16,26 絶縁トランス
17,27 電磁結合されたリアクトル
51,52 ゲート駆動回路
60 PWM信号制御回路
100 直流入力電源
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6