(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示す例では、電力変換装置1は、電力変換器10と、電力変換器20と、ゲート駆動回路51及び52と、PWM信号制御回路60とを備える。電力変換装置1は、2台の電力変換器10及び20を並列に接続させて負荷に直流電力を給電する。
【0016】
直流入力電源100は、電力変換器10と電力変換器20の入力端子間に接続される。
【0017】
電力変換器10は、絶縁型の直流電力変換器であり、逆変換器11と、入力平滑コンデンサ13と、リアクトル15と、絶縁トランス16と、リアクトル17と、順変換器12と、出力平滑コンデンサ14とを備える。
【0018】
電力変換器10の入力端子間には、入力平滑コンデンサ13と逆変換器11が並列に接続される。
【0019】
電力変換器10の出力端子間には、順変換器12と出力平滑コンデンサ14が並列に接続される。また、電力変換器10は電力変換器20の出力端子と並列に接続される。
【0020】
逆変換器11は、スイッチング素子Q
11a及びQ
11bが直列に接続されたものと、スイッチング素子Q
11c及びQ
11dが直列に接続されたものとが並列に接続されて構成され、直流電圧を交流電圧に変換する。
【0021】
入力平滑コンデンサ13は、入力電圧を一定に維持する。
【0022】
リアクトル15は、スイッチング素子Q
11a及びQ
11bが直列に接続された接続点a11と、接続点b11との間に接続される。
【0023】
絶縁トランス16は、1次側に巻線(1次巻線)n11を備え、2次側に巻線(2次巻線)n12を備える。1次巻線n11は、接続点b11と、スイッチング素子Q
11c及びQ
11dが直列に接続された接続点c11との間に接続され、2次巻線n12は、接続点b12と、スイッチング素子Q
12a及びQ
12bが直列に接続された接続点c12との間に接続される。逆変換器11は、リアクトル15を介して絶縁トランス16の1次巻線n11に接続される。順変換器12は、リアクトル17を介して絶縁トランス16の2次巻線n12に接続される。
【0024】
リアクトル17は、接続点b12と、スイッチング素子Q
12c及びQ
12dが直列に接続された接続点a12との間に接続される。また、リアクトル17はリアクトル27と同極(同極性)で電磁結合される。
【0025】
順変換器12は、スイッチング素子Q
12a及びQ
12bが直列に接続されたものと、スイッチング素子Q
12c及びQ
12dが直列に接続されたものとが並列に接続されて構成され、交流電圧を直流電圧に変換する。
【0026】
出力平滑コンデンサ14は、出力電圧を一定に維持する。
【0027】
電力変換器20は、入力平滑コンデンサ23と、逆変換器21と、リアクトル25と、絶縁トランス26と、リアクトル27と、順変換器22と、出力平滑コンデンサ24とを備える。電力変換器20の構成と接続については、電力変換器10と同様であるため、説明を省略する。なお、電力変換器10と区別するために構成要素の符号を変更している。
【0028】
PWM信号制御回路60は、PWM信号を生成し、共通のPWM信号をゲート駆動回路51及び52に分配する。
【0029】
ゲート駆動回路51は、PWM信号制御回路60から入力されるPWM信号を用いて、電力変換器10のスイッチング素子Q
11a,Q
11b,Q
11c,Q
11d,Q
12a,Q
12b,Q
12c及びQ
12dを駆動し、オンオフ制御を行う。ゲート駆動回路52は、PWM信号制御回路60から入力されるPWM信号を用いて、電力変換器20のスイッチング素子Q
21a,Q
21b,Q
21c,Q
21d,Q
22a,Q
22b,Q
22c及びQ
22dを駆動し、オンオフ制御を行う。なお、ゲート駆動回路51及び52は同様の構成である。
【0030】
以上の通り構成された電力変換装置1の動作について説明する。
【0031】
図2は、電力変換装置1の各動作モードにおける概略波形を示す図である。スイッチング素子Q
11a,Q
11b,Q
11c,Q
11d,Q
12a,Q
12b,Q
12c,Q
12d,Q
21a,Q
21b,Q
21c,Q
21d,Q
22a,Q
22b,Q
22c及びQ
22dは、
図2に示すように、デッドタイム期間を有しながらスイッチング素子のオンとオフの動作が行われる。
【0032】
スイッチング素子のオンとオフの動作は、PWM信号制御回路60により生成されるデューティ50%で固定されたPWM信号に基づいてスイッチング制御される。
【0033】
電力変換器10の各モードの動作について、
図3を参照して説明する。
【0034】
<
図3(b) モードa−2(電力伝送期間)>
1次側のスイッチング素子Q
11a及びQ
11dがオンしている状態で、2次側のスイッチング素子Q
12a及びQ
12dがオンすると、電流I
L2が急激に上昇する。このため、リアクトル17、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q
12aに逆並列接続されたダイオードD
5、スイッチング素子Q
12dに逆並列接続されたダイオードD
8の経路で流れていた電流I
L2の向きが切り替わり、スイッチング素子Q
12a、絶縁トランス16の2次巻線n12、リアクトル17、スイッチング素子Q
12dの経路で電流I
L2が流れる。これにより、
図2のモードa−2に示すように電流が負から正へ上昇し電力が伝送される。
【0035】
<
図3(c) モードb−1(2次側のデッドタイム期間)>
つぎに、2次側のスイッチング素子Q
12a及びQ
12dがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル17に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q
12c及びQ
12bに逆並列接続されたダイオードD
6及びD
7を経路にして電流I
L2が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。
【0036】
<
図3(d) モードb−2(電力伝送停止期間)>
2次側のデッドタイム期間が終了すると、2次側のスイッチング素子Q
12c及びQ
12bがオンし、絶縁トランス16の2次巻線n12、リアクトル17、スイッチング素子Q
12cに逆並列接続されたダイオードD
7、スイッチング素子Q
12bに逆並列接続されたダイオードD
6の経路で電流が流れる。この時、1次側はスイッチング素子Q
11a、リアクトル15、絶縁トランス16の1次巻線n11、スイッチング素子Q
11dの経路で電流が流れているため、
図2のモードb−2に示すように、絶縁トランス16の1次巻線n11と2次巻線n12には同じ方向に電圧が発生し、1次側と2次側の電力伝送が停止する。
【0037】
<
図3(e) モードc−1(1次側デッドタイム期間)>
つぎに、1次側のスイッチング素子Q
11a及びQ
11dがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル15に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q
11c及びQ
11bに逆並列接続されたダイオードD
2及びD
3を経路にして電流I
L1が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。
【0038】
<
図3(f) モードc−2(電力伝送期間)>
1次側のデッドタイム期間が終了すると、1次側のスイッチング素子Q
11c及びQ
11bがオンする。2次側のスイッチング素子Q
12b及びQ
12Cがオンしている状態で、1次側のスイッチング素子Q
11c及びQ
11bがオンすると、電流I
L2が急激に減少するため、リアクトル17、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q
12cに逆並列接続されたダイオードD
7、スイッチング素子Q
12bに逆並列接続されたダイオードD
6の経路で流れていた電流I
L2の向きが切り替わり、スイッチング素子Q
12c、リアクトル17、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q
12bの経路で電流I
L2が流れるため、
図2のモードc−2に示すように電流が正から負へ下降し電力が伝送される
【0039】
<
図3(g) モードd−1(2次側デッドタイム期間)>
つぎに、2次側のスイッチング素子Q
12c及びQ
12bがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル17に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q
12a及びQ
12dに逆並列接続されたダイオードD
5及びD
8を経路にして電流I
L2が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。
【0040】
<
図3(h) モードd−2(電力伝送停止期間)>
2次側のデッドタイム期間が終了すると、2次側のスイッチング素子Q
12a及びQ
12dがオンし、絶縁トランス16の2次巻線n12、スイッチング素子Q
12aに逆並列接続されたダイオードD
5、スイッチング素子Q
12dに逆並列接続されたダイオードD
8、リアクトル17の経路で電流がI
L2流れる。この時、1次側はスイッチング素子Q
11c、絶縁トランス16の1次巻線n11、リアクトル15、スイッチング素子Q
11bの経路で電流I
L1が流れているため、
図2のモードd−2に示すように、絶縁トランス16の1次巻線n11と2次巻線n12には同じ方向に電圧が発生し、1次側と2次側の電力伝送が停止する。
【0041】
<
図3(a) モードa−1(1次側デッドタイム期間)>
つぎに、1次側のスイッチング素子Q
11c及びQ
11bがオフすると、デッドタイム期間中にリアクトル15に蓄えられたエネルギーによって、スイッチング素子Q
11a及びQ
11dに逆並列接続されたダイオードD
1及びD
4を経路にして電流I
L1が流れる。このデッドタイム期間中は電力の伝送は行われない。デッドタイム期間が終了すると、モードa−2に切り替わる。
【0042】
このスイッチング動作が繰り返され、電力が伝送される。このスイッチング動作の制御は、位相シフト制御となっており、
図2に示すように1次側と2次側の電圧の位相差δを調整することにより、絶縁トランス16の1次側から2次側への送電電力量を調整する。すなわち、逆変換器11の出力電圧V
L1と順変換器12の入力電圧V
L2の位相を制御することで電力伝送が行われる。
【0043】
電力変換器20の動作は、ゲート駆動回路51及び52が同様の構成となっており、スイッチング素子のオンとオフの動作は、PWM信号から分配される同一の信号で行われることから、電力変換器10の動作と同様となるため、説明を省略する。
【0044】
電力変換装置1の出力は、電力変換器10と電力変換器20の合成出力となる。
【0045】
上述したように、電力変換器10と電力変換器20は同様の回路構成、同様のPWM信号でスイッチング動作が行われるが、一般に、電力変換器10と電力変換器20のスイッチング素子のスイッチング特性は異なる。
【0046】
このため、スイッチング特性のバラつきによるスイッチング素子のターンオン時間、ターンオフ時間、ゲートの蓄積時間などの差で、電力変換器10と電力変換器20のスイッチング素子のオンとオフのタイミングがずれてしまい、電力変換器10と電力変換器20の出力電圧に差が生じ、横流が流れる。
【0047】
しかし、本発明では、複数の電力変換器のリアクトル17及び27は、同極で電磁結合されているため、横流を抑制することができる。
【0048】
例えば、
図4に示すように、リアクトル17に流れる電流I
L12がリアクトル27に流れる電流I
L22より大きかった場合、リアクトル17とリアクトル27のインダクタンス値をLとすると、リアクトル17で発生する電圧V
L12とリアクトル27で発生する電圧V
L22は、式(1)と式(2)で与えられる。
【0050】
式(1)よりリアクトル17で発生する電圧V
L12はV
L12>0となり、電圧降下として働く。一方、式(2)よりリアクトル27で発生する電圧V
L22はV
L22<0となり、電圧上昇として働く。このため、各電力変換器10及び20の2次側に流れる電流がバランスされることとなり、横流を抑制することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置について説明する。第1の実施形態に係る電力変換装置1は2台の電力変換器10及び20を並列接続しているが、第2の実施形態に係る電力変換装置は3台以上の電力変換器を並列接続する。
【0052】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置の構成例を示すブロック図である。
図5に示す電力変換装置2は、3台の電力変換器10,20及び30を並列接続する。電力変換器10はリアクトル17及び18を備え、電力変換器20はリアクトル27及び28を備え、電力変換器30はリアクトル37及び38を備える。そして、横流を抑制するために、リアクトル17及び27と、リアクトル28及び37と、リアクトル18及び38とがそれぞれ同極で電磁結合する。その他の構成、及び各電力変換器10,20及び30の動作は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
同様にして、電力変換器を4台以上並列に接続させることも可能である。すなわち、並列接続される電力変換器の台数がn台の場合には、各電力変換器の絶縁トランスの2次巻線は、直列に接続された(n−1)個のリアクトルを介して順変換器に接続される。そして、(n−1)個のリアクトルは、異なる電力変換装置間で互いに同極で電磁結合される。これにより、電力変換器の台数に関わらず、横流を抑制することができるようになる。
【0054】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。