【実施例】
【0051】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
液体組成物のドナー数及び引火点
【0052】
実施例1
リン酸トリブチル(沸点289℃)4.5gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)25.5gを混合した。混合液は均一相となった。なお、本明細書で記載する沸点は減圧蒸留下における沸点実測値を沸点換算図表(Science of Petroleum,Vol.II 1281(1938))を用いて常圧換算した値を示すものである。
【0053】
実施例2
リン酸トリブチル(沸点289℃)9.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)21.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0054】
実施例3
リン酸トリブチル(沸点289℃)15.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0055】
実施例4
リン酸トリブチル(沸点289℃)21.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)9.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0056】
実施例5
リン酸トリブチル(沸点289℃)4.5gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)25.5gを混合した。混合液は均一相となった。
【0057】
実施例6
リン酸トリエチル(沸点210℃)15.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0058】
実施例7
リン酸トリブチル(沸点289℃)15.0gとリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル(沸点185℃、F/H比=0.67)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0059】
実施例8
リン酸トリエチル(沸点210℃)15.0gとリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル(沸点185℃、F/H比=0.67)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0060】
実施例9
リン酸トリス(2−エチルヘキシル)(沸点400℃)15.0gとリン酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(沸点345℃、F/H比=1.33)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0061】
実施例10
リン酸ジエチルジイソプロピルアミド(沸点230℃)15.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0062】
実施例11
リン酸エチルビスジメチルアミド(沸点214℃)15.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0063】
実施例12
ヘキサメチルリン酸トリアミド(沸点235℃)15.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H=1.50)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0064】
比較例1
リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)単独液体。
【0065】
比較例2
リン酸トリブチル(沸点289℃)1.5gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)28.5gを混合した。混合液は均一相となった。
【0066】
比較例3
リン酸トリブチル(沸点289℃)28.5gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)1.5gを混合した。混合液は均一相となった。
【0067】
比較例4
リン酸トリブチル(沸点289℃)単独液体
【0068】
比較例5
リン酸トリエチル(沸点210℃)1.5gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)28.5gを混合した。混合液は均一相となった。
【0069】
比較例6
リン酸トリエチル(沸点289℃)28.5gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)1.5gを混合した。混合液は均一相となった。
【0070】
比較例7
リン酸トリメチル(沸点197℃)15.0gとリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(沸点204℃、F/H比=1.50)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0071】
比較例8
リン酸トリエチル(沸点210℃)15.0gとリン酸ビス(2−フルオロエチル)エチル(沸点205℃、F/H比=0.15)15.0gを混合した。混合液は均一相となった。
【0072】
比較例9
リン酸トリエチル(沸点210℃)4.5gとトリス(パーフルオロプロピル)アミン25.5gを混合した。混合液は二層液となった。
【0073】
比較例10
リン酸トリエチル(沸点210℃)15.0gとトリス(パーフルオロプロピル)アミン15.0gを混合した。混合液は二層液となった。
【0074】
比較例11
リン酸トリエチル(沸点210℃)25.5gとトリス(パーフルオロプロピル)アミン4.5gを混合した。混合液は二層液となった。
【0075】
比較例12
リン酸ジエチルジイソプロピルアミド(沸点230℃)15.0gとトリス(パーフルオロプロピル)アミン15.0gを混合した。混合液は二層液となった。
【0076】
比較例13
リン酸トリエチル(沸点210℃)15.0gとパーフルオロヘキサン15.0gを混合した。混合液は二層液となった。
【0077】
実施例1〜12及び比較例1〜8の各液体組成物について、J.Organomet.Chem.,108,153 (1076)の方法に従い、ドナー数を測定した。即ち、サンプル瓶にジフェニルシランジオール 0.15gを採取し、液体組成物3mlを加え溶解させた。次に溶液を10mmφのテフロン製チューブに移し、
29Si NMRを測定した(Varian製 VNMRS−400型、積算回数256回、外部基準TMS)。観測されたシグナルの化学シフト値から、DMSO(−34.0ppm、ドナー数=29.8)及びアセトン(−31.9ppm、ドナー数=17.0)の測定結果から得られた検量線を用いてドナー数を算出した。
【0078】
実施例1〜12及び比較例1〜8の各液体組成物について、セタ式引火点試験器(ERDCO Engineering Corporation製 RT−1型)を用いて引火点を測定した。即ち、RT−1試験器を所定温度まで昇温し、温度が一定になったところで、電解液4mlを注入した。2分経過後、開閉器より内部を見ながら試験炎をのぞかせ、引火の有無を観察した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1において、実施例1〜12に示されるように、F/H比が0.2以上で且つリン酸エステル、リン酸エステルアミドまたはリン酸トリアミドよりも沸点の低い含フッ素リン酸エステルを、重量分率で10〜90%混合させた場合、ドナー数はリン酸エステル、リン酸エステルアミドまたはリン酸トリアミド単独の場合に近い高い値を示すにもかかわらず、混合液体が非引火性の高度な難燃性を示すことが判る。一方、比較例3〜4、6のように含フッ素リン酸エステル存在量が重量分率で10%未満の場合、比較例8のようにF/H比が0.2未満の含フッ素リン酸エステルを10%以上混合した場合、あるいは比較例7のようにリン酸エステルよりも沸点の高い含フッ素リン酸エステルを10%以上混合した場合は、いずれも引火点が観測され難燃性が不十分である。また、比較例1〜2、5のように含フッ素リン酸エステル存在量が重量比で90%を超える場合は、ドナー性が非常に低いためにジフェニルシランジオールが溶解せず、ドナー数の測定を行うことができなかった。また、比較例9〜13のように、引火点を有さない既知の液体としてトリス(パーフルオロプロピル)アミンまたはパーフルオロヘキサンを混合させた場合は、液は二層液となり、均一の液体組成物を得ることができなかった。
【0081】
実施例13〜22、比較例14〜19
液体組成物による金属抽出例
実施例1〜7、実施例10〜12、比較例1〜6の液体組成物を用い、下記操作によりPt(白金)の抽出を行った。それぞれ、実施例14〜22、比較例14〜19として表2に結果を示す。
【0082】
分液ロートに塩化白金酸を溶解させた4N塩酸(Pt濃度0.57wt%)10gを入れ、各液体組成物10mlを加え、1分間振り混ぜた。5分間静置後、二層分離し、水層の重量を測り、Pt濃度をICP法で測定した。下式によりPtの抽出率を算出した。
【0083】
抽出率(%)=[0.057(g)−抽出後の水層の重量(g)×Pt濃度(wt%)]/0.057×100
【0084】
【表2】
【0085】
表2から、本実施形態の液体組成物を用いた実施例14〜22は、引火点を有さず高度な難燃性を有している上、Ptの抽出率においても含フッ素リン酸エステルを90%を超えて含有する場合(比較例14〜15、18)に比べ格段に優れていることが判る。また、実施例14〜22は、含フッ素リン酸エステルを10%未満含有し引火点を有する液体を溶媒として使用した場合(比較例16〜17、19)に比べてもPt抽出率に優れていることが判る。なお、比較例19では液が均一となり抽出が不能であった。
【0086】
実施例23〜26、比較例20〜22
液体組成物を溶媒とするリチウムイオン二次電池用の非水電解液例
実施例6、実施例8、比較例5及び比較例6の液体組成物を溶媒として用い、LiPF
6を電解質塩としてそれぞれ1mol/L溶解させた。また、実施例6及び実施例8の液体組成物を溶媒として用い、LiN(CF
3SO
2)
2を電解質塩としてそれぞれ1mol/L溶解させた。
【0087】
また、リン酸トリエチル10.0gとメチルパーフルオロヘキシルエーテル10.0gを混合し、LiPF
6を1mol/Lの濃度となるように添加し混合した。
【0088】
次に、上記各非水電解液について、セタ式引火点試験器(ERDCO Engineering Corporation製 RT−1型)を用いて引火点を測定し、電気伝導度計(京都電子製 CM−117型)を用いて25℃での電気伝導度を測定した。それぞれ、実施例23〜26、比較例20〜22として表3に結果を示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示されるように、本実施形態の非引火性液体組成物を溶媒として使用した実施例23〜26の非水電解液はいずれも非引火性の高度な難燃性を有する非水電解液である上、電解質塩を1mol/Lの濃度で溶解でき、高い電気伝導度を示した。一方、含フッ素リン酸エステルの重量分率が10%未満である比較例20の電解液は引火点が観測され、難燃性が不十分であった。また、含フッ素リン酸エステルの重量分率が90%を超える液体組成物を溶媒とした比較例21は、著しく低い電気伝導度を示した。また、引火点を有さない既知の液体であるメチルパーフルオロヘキシルエーテルを用いた比較例22は、混合液が二層液となったため引火点及び電気伝導度の測定ができず電解液として適さない状態であった。
【0091】
実施例27〜30、比較例23〜24
液体組成物を溶媒とする非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池例
リチウムイオン二次電池の作成
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)を用い、これに導電助剤としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)をLiCoO
2:カーボンブラック:PVDF=85:7:8となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものをアルミ製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて正極を得た。負極活物質としてはハードカーボンを用い、バインダーとしてPVDFをグラファイト:PVDF=9:1となるように配合し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化したものを銅製集電体上に一定の膜厚で塗布し、乾燥させて負極を得た。セパレータは無機フィラー含浸ポリオレフィン多孔質膜を用いた。
【0092】
以上の構成要素を用いて、
図1に示した構造のコイン型セルを用いたリチウム二次電池を作成した。リチウム二次電池はセパレータ6を挟んで正極1、負極4を対向配置し、負極ステンレス製キャップ3にステンレス製板バネ5を設置し、負極4、セパレータ6および正極1からなる積層体をコイン型セル内に収納した。この積層体に実施例23〜26及び比較例20〜21の非水電解液を注入した後、ガスケット7を配置後、正極ステンレス製キャップ2をかぶせ、コイン型セルケースをかしめることで作成した。
【0093】
充放電試験
上記電池作成例の方法で作成したリチウムイオン二次電池を25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。この操作を3回行った後に25℃の恒温条件下、0.2Cの充電電流で4.2Vの定電流−定電圧充電を行い、0.2Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とし、この操作を25回繰り返した際の放電容量を測定し、25サイクル後の放電容量/初期放電容量比を容量維持率として比較を行った。結果を表4にそれぞれ実施例27〜30、比較例23〜24として示す。
【0094】
実施例31〜32
正極活物質としてLiNi
1/4Mn
3/4O
2を用い、非水電解液として実施例23〜24の非水電解液を使用した以外は実施例27〜30と同様の方法で非水系二次電池を作成した。また、上限電圧を4.5Vとした以外は実施例27〜30と同様の方法で充放電試験を行った。結果を表4に実施例31〜32として示す。
【0095】
実施例33〜34
負極活物質としてチタン酸リチウム(LiTiO
2)を用い、非水電解液として実施例23及び実施例24の非水電解液を用いた以外は実施例27〜30と同様の方法で非水系二次電池を作成した。また、実施例27〜30と同様の方法で充放電試験を行った。結果を表4に実施例33〜34として示す。
【0096】
【表4】
【0097】
表4から本実施形態の非引火性液体組成物を非水電解液溶媒として含有するリチウムイオン二次電池である実施例27〜34は、含フッ素リン酸エステルの重量分率が10%未満である液体組成物を溶媒として用いた比較例23及び含フッ素リン酸エステルの重量分率が90%を超える液体組成物を溶媒として使用した非水電解液を含む比較例24に対し、容量維持率が高く優れた電池性能が発揮されることが判る。また、本実施形態の非引火性液体組成物を非水電解液溶媒として用いた実施例31及び実施例32は上限電圧4.5Vの充放電においても良好な容量維持率を示すことが判る。更に、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いた実施例33及び実施例34は、非常に良好な容量維持率を示した。
【0098】
実施例35〜36
液体組成物及び環状カーボネートを溶媒とするリチウムイオン二次電池用の非水電解液例
リン酸トリエチル、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)及びエチレンカーボネートを重量比で35:35:30の比率で混合し、この混合液体にLiPF
6を電解質塩としてそれぞれ1mol/L溶解させた(実施例35)。同様に、リン酸トリエチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル及びエチレンカーボネートを重量比で35:35:30の比率で混合し、この混合液体にLiPF
6を電解質塩としてそれぞれ1mol/L溶解させた(実施例36)。
【0099】
次に、上記各非水電解液について、セタ式引火点試験器(ERDCO Engineering Corporation製 RT−1型)を用いて引火点を測定し、電気伝導度計(京都電子製 CM−117型)を用いて25℃での電気伝導度を測定した。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
表5に示されるように、実施例35、36の非引火性液体組成物及び環状カーボネートを溶媒とする非水電解液は、非引火性の高度な難燃性を有する。また、本実施形態の非引火性液体組成物に加えて環状カーボネートを溶媒として含有することで、より高い電気伝導度を示すことが判る。
【0102】
実施例37〜40
液体組成物及び環状カーボネートを溶媒とする非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池例
実施例23、24、35及び36の非水電解液を用い、実施例27〜30と同様の方法で非水系二次電池を作成した。次に、これら非水系二次電池を25℃の恒温条件下、0.1Cの充電電流で上限電圧を4.2Vとして充電し、続いて0.1Cの放電電流で3.0Vとなるまで放電した。この操作を3回行った後に25℃の恒温条件下、0.2Cの充電電流で4.2Vの定電流−定電圧充電を行い、0.2Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った。次に、25℃の恒温条件下、0.5Cの充電電流で4.2Vの定電流−定電圧充電を行い、0.5Cの放電電流で終止電圧3.0Vまで定電流放電を行った。0.2Cでの放電容量に対する0.5Cでの放電容量を容量比(%)として求めた。結果を表6に示す。
【0103】
【表6】
【0104】
表6に示されるように、本実施形態の非引火性液体組成物及び環状カーボネートを溶媒とする非水電解液を用いた非水系二次電池(実施例38、40)は、環状カーボネートを含まない実施例37及び39以上に良好に充放電を行うことができ、環状カーボネートの併用により、高率での充放電特性が向上することが判る。
実施例41〜43、比較例25
液体組成物を溶媒とするオイルの溶解例
実施例3、実施例9〜10及び比較例2の液体組成物それぞれ1.0gをサンプル瓶に採取し、ポンプオイルMR−100(MORESCO製)0.1gを加えて振り混ぜた。静置後液体の状態を目視にて確認した。結果をそれぞれ実施例41〜43、比較例25として表7に示す。
【0105】
【表7】
【0106】
本実施形態の非引火性液体組成物を用いた実施例41〜43は、いずれも有機化合物との相溶性が優れているため、ポンプオイルを溶解し、非引火性の高度な難燃性を有する洗浄剤として利用できることが示された。これに対し、含フッ素リン酸エステルを90%を超えて含有する比較例25は、有機化合物との相溶性が十分でないため、ポンプオイルを溶解しなかった。