特許第6554004号(P6554004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554004曲げ加工装置、曲げ加工方法、及び、曲げ加工用コマ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554004
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】曲げ加工装置、曲げ加工方法、及び、曲げ加工用コマ
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/024 20060101AFI20190722BHJP
   B21D 37/02 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B21D7/024 Z
   B21D37/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-188234(P2015-188234)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-60973(P2017-60973A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雅喜
(72)【発明者】
【氏名】大渕 一
(72)【発明者】
【氏名】森谷 篤
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−168826(JP,A)
【文献】 特公昭47−001100(JP,B1)
【文献】 特開平06−099223(JP,A)
【文献】 特開平11−264687(JP,A)
【文献】 実開昭59−94722(JP,U)
【文献】 実開平5−216(JP,U)
【文献】 特開平10−128456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/00 − 7/16
B21D 37/02
B21D 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のコマと、第二のコマとを組み合わせて、支柱を形成し、前記支柱に対して、ローラにより加工素材を押し付けることより曲げ加工を行う曲げ加工装置であって、
前記第一のコマの外径は、前記第二のコマの外径より小さく、
前記第一のコマと、前記第二のコマは、同一の大きさの直径の中空部を有し、
前記第一のコマの中空部と、前記第二のコマの中空部の中心は、偏心し、
前記第一のコマは、パイプ形状の下の一部を切り欠いた形状であり、前記第二のコマは、パイプ形状の上の一部を切り欠いた形状であり、前記第一のコマの切り欠いた側面と、前記第二のコマの切り欠いた側面とを接するようにし、前記第一のコマの下面と、前記第二のコマの切り欠いた上面を接するようにし、前記第一のコマの切り欠いた上面と、前記第二のコマの切り欠いた下面を接するようにし、
前記第一のコマと前記第二のコマの中空部を貫く部材によって、前記第一のコマと前記第二のコマを固定して、
前記加工素材を第一のローラにより前記第一のコマの側面に押し付けて、前記第一のローラを外周方向に移動させることにより曲げ加工し、
前記加工素材を第二のローラにより前記第二のコマの側面に押し付けて、前記第一のローラの移動する方向とは反対の外周方向に前記第二のローラを移動させることにより曲げ加工を行うことを特徴とする曲げ加工装置。
【請求項2】
前記第一のコマと、前記第二のコマの外周方向に前記加工素材を押し付けるためのV字型又はU字型の溝を有することを特徴とする請求項1記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
第一のコマと、第二のコマとを組み合わせて、支柱を形成し、前記支柱に対して、ローラにより加工素材を押し付けることより曲げ加工を行う曲げ加工装置であって、
前記第一のコマの外径は、前記第二のコマの外径より小さく、
前記第一のコマと、前記第二のコマは、中空部を有し、前記第二のコマの中空部の直径は、前記第一のコマの直径よりもやや大きく、
前記第一のコマの中空部と、前記第二のコマの中空部の中心は、偏心し、
前記第一のコマは、パイプ形状の下の一部を切り欠いた形状であり、前記第二のコマは、パイプ形状の上の一部を切り欠いた形状であり、前記第一のコマの切り欠いた側面と、前記第二のコマの切り欠いた側面とを接するようにし、前記第一のコマの下面と、前記第二のコマの切り欠いた上面を接するようにし、前記第一のコマの切り欠いた上面と、前記第二のコマの切り欠いた下面を接するようにし、
前記第一のコマと前記第二のコマの中空部を貫く部材によって、前記第一のコマと前記第二のコマを固定して、
前記加工素材を第一のローラにより前記第一のコマの側面に押し付けて、前記第一のローラを外周方向に移動させることにより曲げ加工し、
前記加工素材を第二のローラにより前記第二のコマの側面に押し付けて、前記第一のローラの移動する方向とは反対の外周方向に前記第二のローラを移動させることにより曲げ加工を行うことを特徴とする曲げ加工装置。
【請求項4】
第一のコマと、第二のコマとを組み合わせて、支柱を形成し、前記支柱に対して、ローラにより加工素材を押し付けることより曲げ加工を行う曲げ加工装置の曲げ加工方法であって、
前記曲げ加工装置の前記支柱における前記第一のコマと、前記第二のコマにおいては、
前記第一のコマの外径は、前記第二のコマの外径より小さく、
前記第一のコマと、前記第二のコマは、同一の大きさの直径の中空部を有し、
前記第一のコマの中空部と、前記第二のコマの中空部の中心は、偏心し、
前記第一のコマは、パイプ形状の下の一部を切り欠いた形状であり、前記第二のコマは、パイプ形状の上の一部を切り欠いた形状であり、前記第一のコマの切り欠いた側面と、前記第二のコマの切り欠いた側面とを接するようにし、前記第一のコマの下面と、前記第二のコマの切り欠いた上面を接するようにし、前記第一のコマの切り欠いた上面と、前記第二のコマの切り欠いた下面を接するようにし、
前記第一のコマと前記第二のコマの中空部を貫く部材によって、前記第一のコマと前記第二のコマを固定しており、
前記曲げ加工装置は、ハンドチャックにより前記加工素材をチャックし、前記加工素材を移動させて、前記第一のコマと前記第二のコマの側面の境界部分の接置点に、前記加工素材を接するようにし、前記加工素材を前記第一のコマと前記第二のコマの外周方向を向くように位置づけるステップと、
前記曲げ加工装置は、前記第一のローラを前記接置点に位置づけて、前記第一のローラにより前記加工素材を前記接置点に押し付けるステップと、
前記曲げ加工装置は、前記第一のローラを前記接置点から前記第一のコマの外周方向に前記加工素材を前記第一のコマを押し付けながら移動させるステップと、
前記曲げ加工装置は、前記第二のローラを前記接置点に位置づけて、前記第二のローラにより前記加工素材を前記接置点に押し付けるステップと、
前記曲げ加工装置は、前記ハンドチャックにより前記加工素材をチャックを開放し、前記ハンドチャックを退避させるステップと、
前記曲げ加工装置は、前記第二のローラを前記接置点から前記第二のコマの外周方向に、前記第一のコマの移動した外周方向とは反対の外周方向に前記加工素材を前記第二のコマにより押し付けながら移動させるステップと、
前記曲げ加工装置は、前記ハンドチャックを移動させ、前記ハンドチャックにより前記加工素材をチャックするステップと、
前記曲げ加工装置は、前記第一のローラと前記第二のローラを前記支柱から退避させるステップと、
前記曲げ加工装置は、前記ハンドチャックを移動させ、前記加工素材を前記支柱から引き離すステップとを有することを特徴とする曲げ加工方法。
【請求項5】
第一のコマと、第二のコマとを組み合わせて、支柱を形成し、前記支柱に対して、ローラにより加工素材を押し付けることより曲げ加工を行う曲げ加工装置に用いられる曲げ加工用コマであって、
前記第一のコマの外径は、前記第二のコマの外径より小さく、
前記第一のコマと、前記第二のコマは、同一の大きさの直径の中空部を有し、
前記第一のコマの中空部と、前記第二のコマの中空部の中心は、偏心し、
前記第一のコマは、パイプ形状の下の一部を切り欠いた形状であり、前記第二のコマは、パイプ形状の上の一部を切り欠いた形状であり、前記第一のコマの切り欠いた側面と、前記第二のコマの切り欠いた側面とを接するようにし、前記第一のコマの下面と、前記第二のコマの切り欠いた上面を接するようにし、前記第一のコマの切り欠いた上面と、前記第二のコマの切り欠いた下面を接するようにし、
前記第一のコマと前記第二のコマの中空部を貫く部材によって、前記第一のコマと前記第二のコマを固定したことを特徴とする曲げ加工用コマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工装置、曲げ加工方法、及び、曲げ加工用コマに係り、曲率の変化する針などの加工部材を、能率的に安定して加工するのに好適な曲げ加工方法、及び、曲げ加工用コマに関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材の曲げ加工においては、単なる円形状や楕円形状のカーブのような形ではなく、その個所によって曲率が連続的に変化するように湾曲させる技術が要請される。例えば、釣り針、縫合用針などが、代表的な応用例であり、用途によって様々な使用の湾曲形状の縫合針が提供されることになる
このような曲率が連続的に変化する加工物に対して、曲げ加工を行う技術については、例えば、特許文献1に開示がある。特許文献1の曲げ加工方法においては、縫合針の曲率半径に応じた曲げロールとこの曲げロールに圧接するベルトの間に素材を挿入して曲げ加工を施すものであり、最初は、曲率半径の大きい曲げロールにし、順次曲率半径の小さい曲げロールにより加工するものである(図2図3)。
【0003】
また、管の曲げ装置としては、特許文献2に開示がある。特許文献2では、管を曲率の違う形状に加工するために、成形ロール11の位置を変えて対応することが記載されている(段落番号0046、図12)。
【0004】
さらに、鋼管に対して、金属の部分的な加熱と冷却を繰り返し、可動ローラにより、曲げ加工を行う技術が特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−270021号公報
【特許文献2】特開2003−266127号公報
【特許文献3】特開2015−98060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の特許文献1のように、ベルトにより、加工対象を曲げロールに巻きつける加工方法においては、曲率の変更に際して曲げロールの変更が必要となり、ベルトが消耗品となり、交換や維持コストの面で問題となる。また、この技術では、一回の曲げ加工工程において、一つの曲率による曲げにしか対応できない。
【0007】
また、特許文献2、特許文献3のように、3点以上のローラにより、加工する方法では、送り出しの関係上、加工対象が最低限ローラの位置関係よりも長くなくては加工できないため、加工対象のサイズによって、装置も大きくしなければならないという問題点があった。さらに、特許文献2では、ローラの位置関係の制御が難しく、特許文献3では、加熱・冷却機構が必要になるため、装置が複雑になる。
【0008】
この外にも、金属の曲げ加工では、プレス加工により、所定の型を使用し、これに加工素材を押し込む方法がある。この方法では、プレス機械によるプレス工程しか必要とならないため、工程は簡易化されるが、一つの曲率に対して、一つの型を用意しなければならず、複雑な形状の加工では、多くの型を用意しなければならないという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、曲率の変化する金属部材の曲げ加工において、簡易な機構により、少ない工程で、連続的に安定した加工を可能とする曲げ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の曲げ加工装置の構成は、内コマと、外コマとを組み合わせて、支柱を形成し、支柱に対して、ローラにより加工素材を押し付けることより曲げ加工を行う曲げ加工装置である。そして、内コマの外径は、外コマの外径より小さく、内コマと、外コマは、同一の大きさの直径の中空部を有し、内コマの中空部と、外コマの中空部の中心は、偏心し、内コマは、パイプ形状の下の一部を切り欠いた形状であり、外コマは、パイプ形状の上の一部を切り欠いた形状であり、内コマの切り欠いた側面と、外コマの切り欠いた側面とを接するようにし、内コマの下面と、外コマの切り欠いた上面を接するようにし、内コマの切り欠いた上面と、外コマの切り欠いた下面を接するようにしている。内コマと外コマの中空部を貫く部材によって、内コマと外コマは固定されている。このような支柱の形状を利用して、加工素材を第一のローラにより内コマの側面に押し付けて、第一のローラを外周方向に移動させることにより曲げ加工し、加工素材を第二のローラにより外コマの側面に押し付けて、第一のローラの移動する方向とは反対の外周方向に第二のローラを移動させることにより曲げ加工を行うようにしたものである。
【0011】
また、好ましくは、内コマと、外コマの外周方向に加工素材を押し付けるためのV字型又はU字型の溝を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、曲率の変化する金属部材の曲げ加工において、簡易な機構により、工程の段取変え無しで、連続的に安定した加工を可能とする曲げ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】外コマ、内コマ、及び、その組合せ部材を示した斜視図である。
図2】外コマ、内コマを組み合わせて、曲げ支柱を形成したときの側面図である。
図3】外コマ、内コマの上面図である。
図4】外コマ、内コマの内径に関する調整パターンを示す図である。
図5】外コマ、内コマの組合せにより、加工素材を曲げ加工しているときの様子を示す斜視図である。
図6】各々の曲げ加工工程ごとに、曲げ支柱、加工素材の様子を示した断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置の斜視図である。
図8】装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の断面図である。
図9A】装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の斜視図である(その一)。
図9B】装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の斜視図である(その二)。
図9C】装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の斜視図である(その三)。
図9D】装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の斜視図である(その四)。
図9E】装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の斜視図である(その五)。
図9F】装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の斜視図である(その六)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る一実施形態を、図1ないし図9Fを用いて説明する。
【0015】
先ず、図1ないし図5を用いて本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置の曲げ要部について説明する。図1は、外コマ、内コマ、及び、その組合せ状態を示した斜視図である。図2は、外コマ、内コマを組み合わせて、曲げ支柱を形成したときの側面図である図3は、外コマ、内コマの上面図である。図4は、外コマ、内コマの内径に関する調整パターンを示す図である。図5は、外コマ、内コマの組合せにより、加工素材を曲げ加工しているときの様子を示す斜視図である。
【0016】
本実施形態の曲げ加工装置の加工方法は、加工素材を曲げローラにより、曲げ支柱に対して押し付けることにより行うものである。
【0017】
曲げ支柱は、図1に示されるように、外径の違う二種類のコマ(外コマ、内コマ)を組み合わせて形成される。
【0018】
外コマ20の外径φは、内コマ10の外径φよりも大きくなっている。両者は、ともに、それぞれ中空部21、11を有しており、その内径φは、同一である。例えば、外径φは、9.4mm、外径φは、11.5mm、内径φは、5mmである。外コマ20と、内コマ10の材質としてはステンレス鋼などの合金が用いられる。
【0019】
内コマ10は、頭部13と、脚部14を有しており、パイプ形状の下部の一部切り欠いた形状をしている。
【0020】
外コマ20は、上部22と、台部24を有しており、パイプ形状の上部の一部切り欠いた形状をしている。
【0021】
そして、図1(b)に示されるように、内コマ10の頭部13の下部の上接触部12と、外コマ20の上部22の上の上接触部25と、内コマ10の脚部14の下部の下接触部15と、外コマ20の台部24の上の下接触部23とがそれぞれ接するように組み合わされて、図1(c)に示される形態となる。
【0022】
そして、図2(a)に示されるように、それぞれの中空部21、11に対して、下からベース支柱40が差し込まれ、上から止めボルト30が差し込まれて、止めボルト30をベース支柱40にねじ止めすることにより、内コマ10と外コマ20が固定されて、図2(b)に示されるように、曲げ支柱1が形成される。
【0023】
本実施形態の曲げ加工の要部となる曲げ支柱1は、このようにして、図3に示されるように、外コマ20を、内コマ10を基準として偏心させることにより、加工素材の接置点cpを作り上げるものである。接置点cpは、外コマ20と内コマ10の外周の境界にあたる部分でふる。このように、本実施形態の曲げ加工の要部となる曲げ支柱1は、外径の異なるコマを組み合わせて、曲げ支柱を形成するので、さまざまな曲げの曲率半径に対応して容易に部品化して提供することができる。
【0024】
また、コマの内径のパターンによってもバリエーションを作ることもできる。上の説明では、外コマ20と、内コマ10の内径を同一のものとした。図4に示されるように、内コマ10の内径寸法(例えば、5mm)を基準とし、外コマ20の内径を若干大きくする(例えば、5.5mm)ことにより、微調整が可能である。このときには、加工素材の接置点は、cpからcp’に移動する。
【0025】
実際に、加工素材0を、外コマ20、内コマ10により曲げ加工するときには、図5に示されるようになる。加工素材0は、加工素材の接置点cpで、内コマ10と外コマ20に接し、曲げ部分Aは、曲げ方向Aに、曲げ部分Bは、曲げ方向Bに曲げられる。このようにして、曲げ部分Aの曲率は、曲げ部分Bの曲率よりも大きくなる(曲率半径は小さくなる)。また、図では示さなかったが、外コマ20、内コマ10に、加工素材をガイドするためのU型溝、又は、V型溝を設けるようにしてもよい。
【0026】
次に、図6を用いて本実施形態の曲げ加工装置の曲げ加工工程について説明する。
図6は、各々の曲げ加工工程ごとに、曲げ支柱、加工素材の様子を示した断面図である。
【0027】
先ず、ハンドチャックで、曲げ支柱に接するように、加工素材を位置決めする(STEP1)。ハンドチャックは、加工素材を把持して運搬するロボット機構である。
【0028】
次に、ローラAを、加工素材を曲げ支柱の内コマに圧着するようにして、加工素材の接置点cpに位置決めする(STEP2)。
【0029】
次に、ローラAを、図5の曲げ方向Aの方向に移動させ、ローラAにより、加工素材を内コマに押し付けるようにして曲げ加工する(STEP3)。ここで、加工素材の曲率の大きい部分の曲げ長さが調整される。
【0030】
次に、ローラAと独立して動作するローラBを、加工素材を曲げ支柱の内コマに圧着するようにして、加工素材の接置点cpに位置決めする(STEP4)。
【0031】
次に、ハンドチャックは、チャックしている加工素材を開放して、退避する(STEP5)。
【0032】
次に、ローラBを、図5の曲げ方向Bの方向に移動させ、ローラBにより、加工素材を外コマに押し付けるようにして曲げ加工する(STEP6)。ここで、加工素材の曲率の小さい部分の曲げ長さが調整される。
【0033】
次に、ハンドチャックは、加工素材をチャックして固定し、両ローラを退避させる(STEP7)。
【0034】
次に、加工素材を離して、取り出す(STEP8)。曲率によっては上方向にスライドさせて取り出す場合もある。
【0035】
次に、図7を用いて本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置の全体構成について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置の斜視図である。ここで、図7(a)は、前方斜め右から見た斜視図であり、図7(a)は、前方斜め左から見た斜視図である。
【0036】
本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置は、図7に示されるように、曲げ支柱1を中心に、それに加工素材0を運搬する機構と、その加工素材を曲げ支柱1の外コマ20、内コマ10に押し付けて、曲げ加工をするためのローラA50A、ローラB50B(図8も参照のこと)を駆動し、位置移動をするための機構により構成されている。
【0037】
本発明の一実施形態に係る曲げ加工装置は、ベース100の上に、ブロックU106と、上下シリンダ112が載せられている。ブロックU106の側面には、ブロックV107が取り付けられており、上部の一部が切り欠けられており、そこに、ブロックR108が取り付けられている。そして、ブロックR108の先端には、図2により説明した曲げ支柱1が固定されている。
【0038】
そして、ブロックV107の下側には、回転モータA101Aが取り付けられており、回転ベースA102Aを所望の方向に回転させるようになっている。回転ベースA102Aの上には、開閉シリンダA移動部103Aと開閉シリンダA駆動部104Aが載せられており、開閉シリンダA駆動部104Aは、エア機構により開閉シリンダA移動部103Aを一方向に移動させられるようになっている。開閉シリンダA移動部103Aのロッド部分の先端には、ローラA50Aが取り付けられ、開閉シリンダA移動部103Aを移動させることにより、曲げ支柱1との相対距離が調整される。
【0039】
一方、上下シリンダ112は、エア機構によりピストンを駆動させて取り付けられたブロックS114を上下に移動させる。ブロックS114の上下シリンダ112に取り付けられ反対側には、上側に回転モータB101Bと、下側に回転ベースB102Bが取り付けられており、回転モータB101Bは、回転ベースB102Bを所望の方向に回転させるようになっている。
【0040】
また、回転ベースB102Bの回転モータB101Bに取り付けられた反対側の先端に、下向きに開閉シリンダB移動部103Bと開閉シリンダB駆動部104Bが取り付けられており、開閉シリンダB駆動部104Bは、エア機構により開閉シリンダB移動部103Bを一方向に移動させられるようになっている。開閉シリンダB移動部103Bのロッド部分の先端には、ローラB50Bが取り付けられ、開閉シリンダA移動部103Bを移動させることにより、曲げ支柱1との相対距離が調整される。
【0041】
ハンドチャック120は、加工素材0をチャックし、曲げ支柱1の近傍まで運搬させる。図示していないがハンドチャック120のチャックする部分の反対側には、ロボットアームが取り付けられていて、移動やチャック爪の開閉などを制御可能である。
【0042】
次に、図8及び図9Aないし図9Fを用いて曲げ加工装置の加工処理の装置全体の動きについて説明する。
図8は、装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の断面図である。
図9Aないし図9Fは、装置全体の動きを説明するための曲げ加工装置の斜視図である。
【0043】
図8は、上の図7の斜視図で示された曲げ加工装置の曲げ支柱1の近傍での断面図であり、最初に、上下シリンダ112がd1方向に移動し(アップ)、開閉シリンダA移動部103A、開閉シリンダB移動部103Bは、それぞれd2方向(図9Aのd4方向)、d3方向(図9Aのd5方向)に移動する(先端が、曲げ支柱から遠ざかる方向)。
【0044】
回転ベースA102Aは、ブロックV107の長手方向と、回転ベースB102Bは、ブロックS114の長手方向と、それぞれ平行である。
【0045】
そして、ハンドチャック120は、加工素材0をチャックし、曲げ支柱1の近傍まで運搬させる(スタンバイ状態、図6のSTEP1)。
【0046】
次に、図9Bに示されるように、開閉シリンダA移動部103Aを、d6方向に移動させ(先端が、曲げ支柱に近づく方向)、ローラA50Aにより、加工素材0を接置点cpで押さえつける(図6のSTEP2)。
【0047】
次に、図9Cに示されるように、回転モータA101Aを駆動させ、回転ベースA102Aをd7方向に回転させる(図6のSTEP3)。
【0048】
次に、図9Dに示されるように、上下シリンダ112がd8方向に移動する(ダウン)。
【0049】
次に、図9Eに示されるように、開閉シリンダB移動部103Bを、d9方向に移動させ(先端が、曲げ支柱に近づく方向)、ローラB50Bにより、加工素材0を接置点cpで押さえつける(図6のSTEP4)。
【0050】
そして、ハンドチャック120を開放して、退避させ(図9Fには図示せず、図6のSTEP5)、回転モータB101Bを駆動させ、回転ベースB102Bをd7方向に回転させる(図6のSTEP6)。
【0051】
次に、図9Fに示されるように、ハンドチャック120を移動させて、加工素材0を再びチャックさせ、ローラA50A、ローラB50Bを、それぞれd2方向、d3方向に行くように、開閉シリンダA移動部103A、開閉シリンダB移動部103Bを移動させる(ローラA、ローラBの退避、図6のSTEP7)。
【0052】
最後に、図示しなかったが、ハンドチャック120により、加工素材0を曲げ支柱1より離す(図6のSTEP8)。
【0053】
その後、加工素材0は次の工程に送られる。次の工程は、加工素材0の種類により異なるが、例えば、洗浄工程、検査工程などである。
【0054】
以上のように、本発明は、加工素材を曲げるために必要な支柱の形状と、曲げるためのローラに着目したものである。すなわち、異なる曲率半径を有するコマを組み合わせて、曲げ支柱を形成している。各々のコマは、加工素材の接点を作るために中心点を偏心させて、組み合わせている。二つのコマを組み合わせる機構のため、異なる半径ごとに分割し部品化できるので、組み合わせにより、様々な曲げの湾曲パターンに対応することができる。
【0055】
本発明の曲げ加工装置では、異なる曲率半径を有するコマを組み合わせた曲げ支柱に、二つのローラで加工素材を押し付けて曲げ加工をするために、加工素材を動かすことなく、連続した加工手順で行うことができる。かつ、加工方法も簡易であるため、曲げ加工時の不良品の発生率を抑えることができる。
【0056】
また、曲げ支柱を形成するコマを、異なる半径ごとに部品化することにより、様々な組み合わせの曲率半径の曲げの湾曲形状に対応することができる。
【0057】
そして、ローラを独立可動させているため、可動域に自由度が増し、様々な太さ、大きさ、曲げ長さに対応できる。また、曲げ加工にローラを用いているため、ベルト(消耗品)を使用せず、コスト削減になる。さらに、加工素材に対応できるガイド用の溝を、コマに形成すれば、より安定した加工が可能となる。
【0058】
本発明の曲げ加工装置の加工の対象となる分野は、医療用の縫合針のみならず、家庭用品や一般の工業用品など様々な分野のものを対象とすることができ、そのサイズの変更も比較的簡単であるため適用分野を広く見込むことができる。
【符号の説明】
【0059】
0…加工素材、1…曲げ支柱、10…内コマ、11…中空部、12…上接触部、13…頭部、14…脚部、15…下接触部、20…外コマ、21…中空部、22…上部、23…下接触部、24…台部、25…上接触部、30…止めボルト、40…ベース支柱、50A…ローラA、50B…ローラB。
【0060】
100…ベース、101A…回転モータA、101B…回転モータB、102A…回転ベースA、102B…回転ベースB、103A…開閉シリンダA移動部、103B…開閉シリンダB移動部、104A…開閉シリンダA駆動部、104B…開閉シリンダB駆動部、106…ブロックU、107…ブロックV、108…ブロックR112…上下シリンダ、114…ブロックS、120…ハンドチャック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F