(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ふるい目の前記スリーブ側の開口に、半径1mm以上5mm以下のR面取りが形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の土質試料調製装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、土質試料には粘性が高いものもあり、土質試料の種類によっては、ふるい目に土質試料を押し付けて通過させる必要があり、土質試料の調製作業にかなりの時間がかかっている。また、この調製作業は、手作業で行われることから、土質試料中に含まれるガラス片や貝殻等により手を負傷するおそれがある等の安全面、さらに土質試料中に含まれる細菌類に感染するおそれがある等の衛生面での問題がある。また、繰返しの使用により、ふるい目の目開きが生じるため、配合試験の正確性を担保するためには、数か月に1回の頻度でふるいを交換する必要がある。
【0005】
ところで、土質試料を調製するための装置ではないが、特許文献2に記載されるように、粘土等の粘稠材料を押し出して成形するための押出成形装置が知られている。このような粘稠材料の押出成形装置を土質試料の調製に適用しようとしても、土質試料中には異物が含まれており、直ちに粘稠材料の押出成形装置を土質試料の調製装置として適用することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、土質試料の調製作業を短時間で行うことを可能とし、安全面と衛生面とを維持できるとともに、耐久性に優れた土質試料調製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の土質試料調製装置は、円筒状のスリーブと、前記スリーブの底部側開口に取り付けられた鋼製のベース底板と、該スリーブの内部に挿入可能に、かつ、該スリーブの軸方向に押圧可能に設けられたピストン体とを備え、前記ベース底板には、直径10mmの円形、又は10mm×10mmの正方形のふるい目が複数設けられており、前記ベース底板の下方には、前記スリーブの内部に投入された土質試料が前記ふるい目から押し出されることによって調製された土質試料を回収する受け部が設けられている。
【0008】
スリーブの内部に土質試料を投入して、ベース底板とピストン体との間に挟んで、ベース底板のふるい目を通過させることにより、直径10mmの円形、又は10mm×10mmの正方形のふるい目を通過可能な粒子径が調製された土質試料を製造することができる。また、ふるい目が設けられたベース底板を剛性の高い鋼材により形成しているので、土質試料をふるい目に手作業で押し付けていた場合と比べて、高い押圧力を負荷してふるい目から土質試料を押し出すことができ、土質試料の調製作業を短時間で行うことができる。さらに、鋼製のベース底板としたことで、ふるい目の目開きを防止できる一方で、ベース底板のみを交換することもでき、土質試料の配合試験の正確性を担保できる。なお、スリーブとベース底板とが個別に形成されているので、清掃を容易に行うことができる。
そして、このように構成された土質試料調製装置によって、土質試料の調製作業を自動化することができるので、作業者が土質試料に直接触れる機会が低減され、安全面と衛生面ととの双方を維持できる。
【0009】
本発明の土質試料調製装置において、前記ピストン体を前記スリーブの軸方向に振動させる加振手段が設けられているとよい。
砂質土や黒ぼく等の比較的粘性の低い土質試料から土質試料を調製する場合、そのまま押圧すると、ベース底板とピストン体との間でブロック状に押し固められて、ふるい目の詰まりを生じさせやすい。そこで、ピストン体により土質試料を押圧しつつ、微振動を加えることで、円滑に土質試料をふるい目から通過させて土質試料を調製することができる。
【0010】
本発明の土質試料調製装置において、前記ピストン体の押圧荷重を10kN以上100kN以下とした場合に、前記スリーブの開口面積Aに対する前記ベース底板に形成された前記ふるい目の開口面積を総合した総面積Bの開口比率(B/A)が0.20以上0.70以下とされているとよい。
開口比率(B/A)が0.20以下では、ピストン体の押圧荷重が不足して、土質試料をふるい目から押し出して調製することが難しくなる。一方、開口比率(B/A)が0.70を超える場合は、ベース底板に形成したふるい目どうしの間隔が密となり、ベース底板自体の強度が低下することから、ベース底板やふるい目の変形を生じさせやすく、正確な調製を行うことが難しくなる。
【0011】
本発明の土質試料調製装置において、前記ふるい目の前記スリーブ側の開口に、半径1mm以上5mm以下のR面取りが形成されているとよい。
ふるい目のスリーブ側の開口に上記範囲のR面取りを形成しておくことで、土質試料をスリーブ内部からふるい目内部へと円滑に流すことができ、調製時間の短縮を図ることができるとともに、清掃時間を短縮できる。
【0012】
本発明の土質試料調製装置は、前記ピストン体の外周部と係合可能に設けられた円筒状のガイド部材と、前記ガイド部材を、前記スリーブの上部に連結された連結位置と該スリーブの上部から離間した退避位置との間で昇降移動可能に支持する昇降手段と、前記ガイド部材を前記連結位置に配置した状態において、前記ピストン体を前記スリーブの内部に挿入可能とするロック手段とを備えるとよい。
【0013】
ピストン体の外周部と係合可能なガイド部材を設けて、このガイド部材により、ピストン体とスリーブとの間を連絡することとしたので、ピストン体のスリーブ内部への移動がガイド部材によって案内され、スリーブの内部に円滑にピストン体を挿入して、土質試料を押圧することができる。また、ガイド部材をスリーブとの連結位置に配置した状態では、ガイド部材によりスリーブが押し付けられた状態に維持されるので、スリーブ及びベース底板の浮き上がりが防止される。そして、ガイド部材をスリーブとの連結位置に配置した状態において、ピストン体による押圧を可能とするロック手段を設けることで、ガイド部材、スリーブ及びベース底板を所定位置に保持した状態に限り、ピストン体をガイド部材からスリーブ内部へと円滑に挿入することができ、安全に調製作業を行うことができる。
【0014】
本発明の土質試料調製装置において、前記ピストン体の下面は、前記ベース底板の上面との間に20mm以上の間隔を維持するように設けられるとよい。
ピストン体の下面とベース底板の上面との間に20mm以上の間隔を確実に確保することで、ピストン体とベース底板との接触を回避するとともに、ピストン体とベース底板との間に異物が挟まることによるベース底板やピストン等の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の土質試料調製装置によれば、土質試料の調製作業を短時間で行うことができ、安全面と衛生面とを維持できる。また、本発明の土質試料調製装置は、耐久性に優れるので、繰り返し長期間にわたって調製作業を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る土質試料調製装置の実施形態について説明する。
本実施形態の土質試料調製装置100は、
図1から
図3に示すように、円筒状のスリーブ1と、スリーブ1の底部側開口に取り付けられたベース底板2と、これらスリーブ1及びベース底板2が支持される架台3と、スリーブ1の内部に挿入可能に、かつ、そのスリーブ1の軸方向に押圧可能に設けられたピストン体4と、ピストン体4の外周部と係合可能に設けられた円筒状のガイド部材5と、調製された土質試料を回収する受け部6とを備える。なお、土質試料調製装置100は、ピストン体4の移動やガイド部材5の昇降移動の操作を行うための複数のスイッチ等が設けられた操作部7を備えている。
【0018】
スリーブ1は、
図2及び
図3に示すように、垂直方向に沿う円筒状に形成されており、ベース底板2を介して架台3上に載置される。
ベース底板2は、鋼製の円板状に設けられ、
図2及び
図3に示すように、その円板の内周側にスリーブ1の下端外周部と係合する凹部21が形成され、外周側に架台3上に載置されるフランジ部22が設けられている。そして、凹部21の底板部21aには、
図2から
図4に示すように、厚み方向に貫通する直径10mmの円形、又は10mm×10mmの正方形のふるい目23が複数設けられている。なお、ベース底板2と架台3とは、
図4に示すように、ベース底板2の外周面を突当部31に突き当てることにより、所定の位置に位置決めされるようになっている。また、図示は省略するが、これらスリーブ1及びベース底板2は、ねじ等の固定手段により架台3に固定される。
【0019】
また、ベース底板2のふるい目23は、ピストン体4の押圧荷重を10kN以上100kN以下とした場合に、スリーブ1の開口面積Aに対するベース底板2に形成された個々のふるい目23の開口面積を総合した総面積Bの開口比率(B/A)が0.20以上0.70以下とされるように形成することが望ましい。
開口比率(B/A)が0.20以下では、ピストン体4の押圧荷重が不足して、土質試料をふるい目23から押し出して調製することが難しくなる。一方、開口比率(B/A)が0.70を超える場合は、ベース底板2に形成したふるい目23どうしの間隔が密となり、ベース底板2自体の強度が低下することから、ふるい目23の変形を生じさせやすく、正確な調製を行うことが難しくなる。
【0020】
なお、本実施形態のベース底板2は、具体的には、剛性の高い鋼板又はステンレス板により形成され、その表面に耐摩耗性を有するCr‐Moのめっき処理が施されている。また、本実施形態のベース底板2のふるい目23の深さ、すなわち凹部21の底板部21aの板厚tは、9〜15mmに形成されている。
【0021】
なお、図示は省略するが、架台3には、ベース底板2のフランジ部22を架台3上に載置した状態において、ベース底板2の内周部分を下方に露出させるための開口孔が設けられている。したがって、ベース底板2のフランジ部22を架台3上に載置した際には、ベース底板2に設けられた複数のふるい目23は架台3により塞がれることはなく、露出した状態が維持されるようになっている。
【0022】
ピストン体4は、油圧シリンダ等により構成されており、スリーブ1の軸方向に昇降移動可能に設けられ、
図3に示すように、スリーブ1の内部に投入した土質試料9aを、ピストン体4の下部に設けられた加圧部41を介してスリーブ1の軸方向(垂直方向)に押圧することができるようになっている。
また、図示は省略するが、土質試料調製装置100には、ピストン体4をスリーブ1の軸方向に振動させる加振手段が設けられており、ピストン体4により土質試料9aを押圧しつつ、周波数が50〜1000Hzで振幅が0.1〜1.0mmの微振動を加えられるようになっている。
【0023】
ガイド部材5は、
図2及び
図3に示すように、ピストン体4の加圧部41の外周部と係合可能に設けられ、その加圧部41の外周部と係合する円筒状の円筒部51と、円筒部51の表面に径方向に立設する一組の接続板部52とを有する形状とされる。そして、ガイド部材5は、接続板部52を介して油圧シリンダ等の昇降手段8に取り付けられ、この昇降手段8より、
図3に示すスリーブ1の上部に連結された連結位置と、
図2に示すスリーブ1の上部から離間した退避位置との間で昇降移動可能に支持されている。なお、ガイド部材5は、ガイド軸81に沿って移動が案内されることにより、スリーブ1の軸方向に沿って直進移動されるようになっている。
【0024】
また、ガイド部材5の円筒部51の全長は、連結位置と退避位置との間の距離よりも長く形成されており、ガイド部材5を連結位置と退避位置とのいずれの位置に配置した状態においても、ピストン体4の加圧部41を円筒部51の内部に挿入した状態が維持されるようになっている。そして、ガイド部材5をスリーブ1との連結位置に配置した状態では、
図3に示すように、ガイド部材5によりピストン体4とスリーブ1との間が連絡された状態となり、ピストン体4のスリーブ1内部への移動がガイド部材5によって案内されるようになっている。
【0025】
なお、土質試料調製装置100を構成する各部品を清掃又は交換等する際には、ガイド部材5の内部からピストン体4の加圧部41を抜き出して、ガイド部材5とピストン体4の加圧部41とを分解できるようになっている。そして、ガイド部材5の内周面は、
図2及び
図3に示すように、上部側の直径が下部側の直径よりも大きく設けられており、さらに上部側と下部側との連結部分53には、上部側から下部側にかけて徐々に縮径する勾配が設けられている。なお、ガイド部材5の下部側の内周面は、スリーブ1の内周面と同径に設けられる。
このように、ガイド部材5の内周面の上部側の直径が大きく形成されているので、ガイド部材5とピストン体4との組み立ての際に、容易にガイド部材5の内部にピストン体4の加圧部41を組み込むことができる。また、ガイド部材5の内周面の上部側と下部側との連結部分53に、上部側から下部側にかけて徐々に縮径する勾配が設けられているので、ピストン体4の加圧部41をガイド部材5の上部側から下部側にかけて円滑に案内することができる。
【0026】
また、土質試料調製装置100には、ガイド部材5を
図3に示す連結位置に配置した状態において、ピストン体4を下降移動させて、加圧部41をスリーブ1の内部に挿入可能とするロック手段が設けられている。すなわち、ピストン体4は、ガイド部材5を連結位置に配置した状態において、スリーブ1の内部の土質試料9aを押圧可能に設けられている。ロック手段は、ピストン体4の移動を制御する電気的な手段であっても、機械的に拘束手段であってもよい。具体的には、土質試料調製装置100には、昇降手段8の位置を検知する位置センサ(図示略)が設けられており、昇降手段8を下降位置に配置した状態、すなわちガイド部材5をスリーブ1との連結位置に配置した状態を位置センサにより検知した場合に限り、ピストン体4が下降移動可能に制御されている。このため、ガイド部材5が連結位置に配置されていることを検知できない場合には、ピストン体4を下降移動させることはできない。このように、ガイド部材5、スリーブ1及びベース底板2を所定位置に保持した状態に限り、ピストン体5を下降移動させることを可能としているので、ピストン体4をガイド部材5からスリーブ1の内部へと円滑に挿入することができ、安全に調製作業を行うことができる。
【0027】
さらに、ピストン体4の下面は、ベース底板2の上面との間に20mm以上の間隔を維持するように設けられ、ピストン体4とベース底板2との接触を回避するとともに、ピストン体4とベース底板2との間に異物が挟まることによるベース底板2やピストン体4等の破損を防止することとしている。
【0028】
また、受け部6は、ベース底板2の下方に配置され、この受け部6上に、ベース底板2のふるい目23から押し出されることによって調製された土質試料8bを溜めてことができる。受け部6上に載置された土質試料8bは、まとめて回収することができるようになっている。なお、本実施形態の土質試料調製装置100においては、受け部6は、ねじ式のジャッキ61により昇降移動可能に設けられており、受け部6とベース底板2との間の間隔を調製することができる。
【0029】
次に、上記の土質試料調製装置100を用いて、土質試料9aから土質試料を調製する手順について説明する。
まず、
図2に示すように、ガイド部材5をスリーブ1の上部から離間した退避位置に配置し、スリーブ1とガイド部材5との間の隙間から、スリーブ1の内部に土質試料9aを投入する。次に、ガイド部材5を昇降手段8により退避位置からスリーブ1との連結位置まで下降移動させ、スリーブ1の上部とガイド部材5の下部とを係合させて連結する。この状態では、ピストン体4の加圧部41は、ガイド部材5の上部側において、ガイド部材5の内周面と係合した状態とされる。
【0030】
次に、
図3に示すように、ピストン体4の加圧部41をガイド部材5の内部からスリーブ1の内部へと下降移動させて、加圧部41とベース底板2との間に土質試料9aを挟んで押圧する。加圧部41により押圧された土質試料9aは、ベース底板2に押し付けられることにより、ふるい目23から押し出され、このふるい目23を通過した土質試料9bが受け部6上に溜められる。一方、ふるい目23を通過できない粒子径の大きな異物等は、スリーブ1の内部に残され、自動的に土質試料9bと分別される。
【0031】
このように、土質試料調製装置100においては、スリーブ1の内部に土質試料9aを投入して、ベース底板2とピストン体4(加圧部41)との間に挟み込んで、ベース底板2のふるい目23を通過させることにより、直径10mmのふるい目23を通過可能な粒子径が調製された土質試料9bを製造することができる。また、ふるい目23が設けられたベース底板2を剛性の高い鋼材により形成しているので、土質試料9aをふるい目23に手作業で押し付けていた場合と比べて、高い押圧力を負荷してふるい目23から土質試料9aを押し出すことができ、土質試料9bの調製作業を短時間で行うことができる。さらに、鋼製のベース底板2としたことで、ふるい目23の目開きを防止でき、土質試料9bの配合試験の正確性を担保できる。また、スリーブ1とベース底板2とが個別に形成されているので、ベース底板2の交換が容易であるとともに、これらスリーブ1とベース底板2の清掃を容易に行うことができる。
そして、このように構成された土質試料調製装置100を用いることで、土質試料9bの調製作業を自動化することができるので、作業者が土質試料9aに直接触れる機会が低減され、安全面と衛生面との双方を維持できる。
【0032】
また、砂質土や黒ぼく等の比較的粘性の低い土質試料9aから土質試料9bを調製する場合には、そのまま押圧すると、ベース底板2とピストン体4との間で土質試料9aがブロック状に押し固められて、ふるい目23の詰まりを生じさせやすい。ところが、本実施形態の土質試料調製装置100では、ヒストン体4を加振手段によりスリーブ1の軸方向に振動させることができるので、ピストン体4により土質試料9aを押圧しつつ、微振動を加えることができ、土質試料9aが押し固められることを防止して、土質試料9aを円滑にふるい目23から通過させることができる。
【0033】
また、土質試料調製装置100では、ピストン体4(加圧部41)の外周部と係合可能なガイド部材5を設けて、このガイド部材5により、ピストン体4とスリーブ1との間を連絡することとしたので、ピストン体4のスリーブ1内部への移動がガイド部材5によって案内され、スリーブ1の内部に円滑にピストン体4を挿入して、土質試料9aを押圧することができる。また、ガイド部材5をスリーブ1との連結位置に配置した状態では、ガイド部材5によりスリーブ1が押し付けられた状態に維持されるので、スリーブ1及びベース底板2の浮き上がりが防止される。このように、ガイド部材5をスリーブ1との連結位置に配置した状態に限り、ピストン体4による押圧を可能とすることで、ガイド部材5、スリーブ1及びベース底板2を所定位置に保持した状態に限り、ピストン体4をガイド部材5からスリーブ1の内部へと円滑に挿入することができ、安全に調製作業を行うことができる。
【0034】
なお、
図2及び
図3に示す例では、ベース底板2のふるい目23がストレート孔で形成されていたが、
図5に示すベース底板20のように、ふるい目23のスリーブ1側の開口に、半径1mm以上5mm以下のR面取り24を形成することとしてもよい。
ふるい目23のスリーブ1側の開口に半径1mm以上5mm以下の範囲のR面取り24を形成しておくことで、土質試料9aをスリーブ1内部からふるい目23内部へと円滑に流すことができ、調製時間の短縮を図ることができる。なお、
図5のベース底板20において、ベース底板2と共通要素には、同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
また、上記実施形態の土質試料調製装置100では、ピストン体4の下面は、ベース底板2の上面との間に20mm以上の間隔を維持するように設けられ、ピストン体4とベース底板2との接触を回避するとともに、ピストン体4とベース底板2との間に異物等が挟まることによるベース底板2やピストン体4等の破損を防止することとしていたが、ピストン体4に圧力センサを設けて、押圧力の変化をフィードバックすることにより、ピストン体4とベース底板2との接触や、異物等が挟まることを原因とするベース底板2やピストン体4等の破損を防止することとしてもよい。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の効果を確認するために、複数種類の土質試料から土質試料を調製した。
(押圧力による違い)
まず、1回のセメント系固形材の配合試験に必要とされる4kgの土質試料の調製作業を、
図1から
図4に示す本実施形態の土質試料調製装置100を用いる場合(本法)と、従来の手作業によるふるい法(従来法)とのそれぞれで実施し、各方法による土質試料の調製作業に要する所要時間の比較を行った。なお、本法において、ピストン体による加圧力は80kNに設定した。また、本法及び従来法において、ベース底板には、直径10mmの円形のふるい目を有し、スリーブの開口面積Aに対するベース底板に形成されたふるい目の開口面積を総合した総面積Bの開口比率(B/A)が0.50とされるものを用いた。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1からわかるように、本実施形態の土質試料調製装置を用いることで、手作業の場合と比較して、粘性土及びロームでは約1/5に所要時間を短縮でき、シルト及び砂質粘性土では約1/4に所要時間を短縮できた。
【0039】
(ふるい目の開口比率による違い)
図1から
図4に示す本実施形態の土質試料調製装置100において、ふるい目の開口比率(B/A)をそれぞれ変化させたベース底板を用いて、4kgの土質試料の調製作業を実施し、各ベース底板による土質試料の調製作業に要する所要時間の比較を行った。なお、ピストン体による加圧力は80kNに設定し、土質試料には粘性土を用いた。表2に結果を示す。
【0040】
【表2】
【0041】
開口比率(B/A)を0.15とするベース底板では、圧密により圧力が上昇し、土質試料を調製することはできなかった。開口比率(B/A)を0.20以上0.70以下とするベース底板では、良好に調製作業を実施できた。一方、開口比率(B/A)を0.80とするベース底板では、調製に要する所要時間を短縮できたが、10回の繰り返し使用の後に、ベース底板及びふるい目に変形が生じ、継続使用ができなくなった。
【0042】
(ふるい目のR面取りの有無による違い)
図1から
図4に示す本実施形態の土質試料調製装置100において、ふるい目の上部開口(スリーブ側の開口)と、下部開口(受け部側の開口)とに、表3に任意の大きさのR面取りを形成したベース底板を用いて、4kgの土質試料の調製作業を実施し、各ベース底板による土質試料の調製作業に要する所要時間の比較を行った。なお、ピストン体による加圧力は90kNに設定し、土質試料には粘性土を用いた。また、ベース底板の底板部の板厚tは11mm、ふるい目の開口比率(B/A)は0.50とした。表3に結果を示す。
【0043】
【表3】
【0044】
表3からわかるように、ふるい目の上部開口、すなわちスリーブ側の開口に半径1mm以上5mm以下のR面取りを付けた場合に、土質試料の食い込みが改善され、調製に要する所要時間を短縮できた。なお、ふるい目の上部開口と下部開口の双方に半径3mmのR面取りを設けた場合には、ふるい目内部への土質試料の付着が大幅に低減され、清掃が容易となった。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。