(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建造物に設置される、泡ヘッドや閉鎖型噴霧ヘッド等(以下、「放出口」という)から消火剤水溶液を放射する消火設備において、消火剤(消火剤原液、以下単に消火剤ともいう)を水と希釈混合する装置を消火剤混合装置といい、プレッシャ・プロポーショナ(差圧混合装置)、ポンプ・プロポーショナ(ポンプ混合装置)、プレッシャ・サイド・プロポーショナ(圧入混合装置)、ライン・プロポーショナ(管路混合装置)などの多くの混合方式がある。このうち、プレッシャ・プロポーショナ(差圧混合装置)が最も多く使用されている。
【0003】
図6に上記プレッシャ・プロポーショナ(差圧混合装置)としての消火剤混合装置の概略構成を示す。
図6に示すように、プレッシャ・プロポーショナ(差圧混合装置)としての消火剤混合装置100は、消火ポンプから放出口までを接続する消火配管主管103の途中に設けられた混合器101と、消火剤の供給源である消火剤貯蔵加圧タンク102と、混合器101と消火剤貯蔵加圧タンク102との間を接続する加圧水側配管104及び消火剤側配管105と、消火剤貯蔵加圧タンク102から混合器101へ消火剤側配管105を介して供給される消火剤の供給流量を調整する消火剤流量調整器10Aとを備えている。
【0004】
上記プレッシャ・プロポーショナ(差圧混合装置)方式の消火剤混合装置100の動作原理を、
図7に基づいて説明する。
混合器101の内部に入口部101bよりも内径が小さい断面積狭小部(いわゆる縮径部)101aを設け、放出口の作動や試験弁の開放によって混合器101内に水流が発生すると、狭小部101aの水の速度(流速)は、混合器101の入口部101bの流速より速くなる。その結果、ベルヌーイの定理より混合器101の入口部101bの圧力に対し、狭小部101aの圧力は低くなり、入口部101bと狭小部101aの間には圧力差(以下、「差圧」という)が発生する。
【0005】
一方、消火剤貯蔵加圧タンク102は、その内部が隔膜によって加圧水領域と消火剤領域とに隔てられており、混合器101の入口部101bは加圧水側配管104を経て消火剤貯蔵加圧タンク102の加圧水領域に接続され、混合器101の狭小部101aは消火剤側配管105を経て消火剤貯蔵加圧タンク102の消火剤領域に接続されている。従って、入口部101b側の圧力が狭小部101aよりも高くなると、加圧水が消火剤貯蔵加圧タンク102の加圧水領域内に押し込まれ、隔膜を介して消火剤が消火剤貯蔵加圧タンク102から押し出される。押し出された消火剤は、消火剤側配管105を経て混合器101に送り込まれ、消火配管主管103を流れる水に混合される。
このように混合器101の狭小部101aで低下する圧力の大きさはそこを通過する流速に比例するため、混合器101に発生する差圧も流速に比例し、圧力によらず単位時間当たりの流量に応じた消火剤の送入が可能となる。
【0006】
消火剤混合装置100では、ポンプから送られる水の流量が変化しても一定の希釈混合濃度で消火剤を混合する必要がある。この目的のため、消火剤側配管105の混合器101近くに消火剤の供給流量を調整する消火剤流量調整器10Aを設けている。消火剤流量調整器10Aは、ケース部20Aにおける消火剤の流入方向上流側に消火剤側配管105が接続される流入口23Aが設けられ、ケース部20Aにおける消火剤の流入方向下流側に消火剤が流出する流出口25Aが設けられており、流入口23Aからケース部20Aに流入した消火剤の流量を調整して流出口25Aから送り出す。
このようにして消火剤貯蔵加圧タンク102内の消火剤の量を制御して混合器101内に圧送して、水と消火剤とを混合し、所定混合濃度の消火剤水溶液を生成する。
【0007】
ここで混合器101の入口部の圧力をP1、狭小部の圧力をP2、出口部の圧力をP3とすると、混合器101が発生する差圧はP1−P2となり、圧力損失はP1−P3となる。
上記差圧は流量に比例するため、流量が少なく差圧の発生が小さすぎると加圧水側配管104や消火剤側配管105内で消火剤と管内壁面に生ずる摩擦による圧力損失や消火剤貯蔵加圧タンク102内の隔膜の抵抗等(以下、「圧力損失」という。)により、十分に圧送できず、流量に比例した混合ができなくなる。このため、水と消火剤とを適正に混合するための差圧を得るに必要な流量が当該混合器の最小流量となる。
【0008】
また、理論的には、混合器101の狭小部101aで低下させた圧力は、低下させる前の圧力まで回復するが、実際には、混合器101の壁面の摩擦による圧力損失、乱流等により入口圧力まで回復させることはできない。このため、入口部の圧力と出口部の圧力の差が当該混合器101の圧力損失となる。
ここで、流量が多いほど狭小部101aの圧力はより低くなり、回復させる圧力の幅が大きくなる。それに比例して混合器101に生じる圧力損失も加速度的に増加する。
これに対して、圧力損失の最大許容値を大きくすれば最大流量を多くすることはできるが、生じた圧力損失分を加算した能力の消火ポンプの設置や配管サイズを大きくすることなどが必要となり、コストアップの原因となるため、広流量範囲の混合器の実用化は困難であった。
【0009】
そこで、従来、消火剤流量調整器では、消火剤の流入口と流出口との間に開口部(オリフィス)が形成されたオリフィス板を設けて、このオリフィス板によって流量の制御を行うものが知られている。
しかし、かかるオリフィス板は平板状の板部に、この板部の面方向に対して垂直に貫通した開口部(オリフィス)を設けた構造となっている。このため、その流入部における圧力損失は大きく、差圧が小さい場合、差圧に比例した消火剤量を混合器に投入できず、最小流量が制限されていた。
【0010】
かかる問題に対処するために、混合器を流れる流量に応じて消火剤量を調整する可変型の消火剤流量調整器も考案されている(例えば、特許文献1参照)。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、特許文献1に記載の可変型の消火剤流量調整器10Aは、消火剤が流入する流入口23Aと流入した消火剤が通過する開口部24A及び消火剤が流出する流出口25Aを有するケース部20Aと、このケース部20A内に収容されたピストン部30A及びこれを消火剤流入方向の上流側に付勢するコイルバネ40Aを備えている。
この可変型の消火剤流量調整器10Aでは、混合器を流れる流量が少なく差圧が小さい場合には、コイルバネ40Aによってピストン部30Aが上流側に付勢されているため、ピストン部30Aに形成されている複数のオリフィス70(すなわち、
図8(a)ではオリフィス71,72)を通って消火薬剤が投入される。これにより所定の混合濃度を得ることができる。また、混合器を流れる流量が増加して差圧が大きくなった場合には、コイルバネ40Aの付勢力に抗してピストン部30Aが消火剤流入方向の下流側に押し付けられ、ピストン部30Aに形成されているオリフィス70の一部(
図8(b)ではオリフィス72)がケース部20Aの内壁によって塞がれる。これにより消火剤流量が制限され、混合濃度の増大が抑制される。
これによって、広流量範囲において所定の混合濃度を得ることができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の可変型の消火剤流量調整器10Aは、ピストン部30Aが作動する前と作動した後の2段階でしか消火剤の流量の調整を行うことができない。このため、消火剤流量の変化が大きく、微少な混合濃度の調整を行うことができなかった。
【0013】
本発明は、消火剤の供給流量を細かく調整することができ、消火剤混合装置において広い使用流量範囲で安定した消火剤の比例混合を行い、所定の混合濃度を得ることを可能とする消火剤流量調整器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
消火を行う放出口へ送水される流水に対して消火剤原液を供給して混合させる消火剤混合装置の前記消火剤原液の混合濃度を調節する消火剤流量調整器において、
前記消火剤原液の流路よりも前記消火剤原液の流入方向の下流側に配置され、前記消火剤原液の流路よりも狭小に形成された縮径部と、
前記消火剤原液の供給流量に応じて前記縮径部の縮径率を可変調節する可変手段とを備え、
前記可変手段は、
前記消火剤原液が流入するケース部と、前記ケース部内に前記消火剤原液の流入により前進移動可能に支持された主ピストン部と、前記主ピストン部の前進移動により前進移動可能に支持された補助ピストン部と、を有し、
前記主ピストン部及び前記補助ピストン部の移動により前記縮径部の縮径率が3段階以上に変化するように構成されていることを特徴とする。
なお、「縮径部」とは、流動方向に対して直交する断面積が、その上流側の流路よりも小さくなるように形成されている部分を示すものである。
【0015】
上記構成によれば、消火を行う放出口への送水に伴い、例えば、消火剤貯蔵タンクから消火剤原液の供給が開始されると、消火剤原液は縮径部を通過して流水に混合される。
そして、消火を行う放出口への送水流量が小さい場合には、消火剤原液の供給流量も小さくなるため、主ピストン部が前進移動しないことで縮径部の縮径率を比較的大きくする調節を行う。これにより消火剤原液は、縮径部のほぼ全体を通過することができ、消火剤原液の供給流量に応じて消火剤水溶液の濃度が目的とする濃度になるように消火剤原液の流量が調整される。
また、消火を行う放出口への送水流量が中程度の場合には、消火剤原液の供給流量も中程度となるので、主ピストン部が消火剤原液の流入方向の下流側に前進移動することで縮径部の縮径率を小さくする調節を行う。これにより消火剤原液は、縮径部のほぼ全体を通過することができ、消火剤原液の供給流量に応じて消火剤水溶液の濃度が目的とする濃度になるように消火剤原液の流量が調整される。
さらに、消火を行う放出口への送水流量が大きい場合には、消火剤原液の供給流量も大きくなるので、主ピストン部が消火剤原液の流入方向の下流側にさらに大きく前進移動することで縮径部の縮径率をさらに小さくする調節を行う。これにより消火剤原液が通過可能な縮径部がされに狭められることとなり、消火剤原液の供給流量に応じて消火剤水溶液の濃度が目的とする濃度になるように消火剤原液の流量を調整する。
つまり、この消火剤流量調整器であれば、消火剤原液の供給流量が大きくなるにしたがって主ピストン部がケース部内で前進移動することによって、縮径部の縮径率の調節を3段階以上で行うことができ、適切に消火剤の供給流量を調整することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の消火剤流量調整器において、
前記縮径部は、
前記ケース部における前記消火剤原液の流入方向の下流側に設けられた第1の開口部と、
前記主ピストン部における前記消火剤原液の流入方向の下流側端部であって、常に前記第1の開口部と連通する位置に設けれた第2の開口部と、
前記主ピストン部における前記消火剤原液の流入方向の下流側端部であって、前記主ピストン部の前進移動によって前記消火剤原液の流入が不可である閉塞状態となる位置に配置された第3の開口部と、
前記主ピストン部における前記消火剤原液の流入方向の下流側端部であって、前記補助ピストン部の前進移動によって前記消火剤原液の流入が不可である閉塞状態となる位置に配置された第4の開口部と、
で構成されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、主ピストン部における消火剤原液の流入方向の下流側端部に、主ピストン部が移動することにより、消火剤原液の流入が不可である閉塞状態となる位置に第3の開口部が設けられ、補助ピストン部が移動することにより、消火剤原液の流入が不可である閉塞状態となる位置に第4の開口部が設けられている。
このため、消火剤原液の供給流量が大きくなるにしたがって主ピストン部がケース部内で前進移動し、さらに供給流量が大きくなることで補助ピストン部もケース部内で前進移動するという段階的な動きに応じて、閉塞される開口部の数が変化し、これによって、縮径部の縮径率の調節を段階的に行うことができ、適切に消火剤の供給流量を調整することができる。
【0018】
請求項
4に記載の発明は、請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の消火剤流量調整器において、
前記主ピストン部を前記消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第1の弾性体をさらに備えていることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、主ピストン部が第1の弾性体によって付勢されることにより、自重に頼ることなく消火剤原液の供給流量に応じた主ピストン部の前進移動を実現することができる。このため、消火剤流量調整器の設置向きが限定されず、取り付けの自由度が向上する。
【0020】
請求項
5に記載の発明は、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の消火剤流量調整器において、
前記補助ピストン部を前記消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第2の弾性体をさらに備えていることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、補助ピストン部が第2の弾性体によって付勢されることにより、自重に頼ることなく消火剤原液の供給流量に応じた補助ピストン部の前進移動を実現することができる。このため、消火剤流量調整器の設置向きが限定されず、取り付けの自由度が向上する。
【0022】
請求項
6に記載の発明は、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の消火剤流量調整器において、
前記ケース部の内側であって前記主ピストン部と嵌合する部分に、バイパス流路が形成されていることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、バイパス流路が圧の逃げ場となることにより主ピストン部の進退移動時における抵抗が減少し、ケース部内において主ピストン部を円滑に移動させることが可能となる。
【0024】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載の消火剤流量調整器において、
前記ケース部内であって前記第3の開口部及び/又は前記第4の開口部と対向する位置に突起部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、主ピストン部が前進移動した際に、第3の開口部や第4の開口部内に徐々に突起部が入り込んでいくことにより、消火剤の供給流量をよりリニアに変化させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、消火剤の供給流量を細かく調整することができ、消火剤混合装置において広い使用流量範囲で安定した消火剤の比例混合を行い、所定の混合濃度を得ることを可能とする消火剤流量調整器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明に係る消火剤流量調整器の実施形態について詳細に説明する。
【0029】
(全体構成)
本実施形態の消火剤流量調整器10(
図1等参照)は、前記背景技術において説明した消火剤流量調整器10A(
図6参照)と同様に、建造物に設置されて、放出口から消火剤水溶液を放射する消火設備の消火剤混合装置に設けられている。消火剤混合装置は、背景技術において述べたように、消火剤原液を水と希釈混合するものである。
なお、この消火剤混合装置は、消火剤流量調整器10以外については、前述した消火剤混合装置100(
図6参照)と同じ構成を備えるものであるため、その説明を省略する。
【0030】
(消火剤流量調整器:全体)
本発明の一実施形態である消火剤流量調整器について
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、消火剤流量調整器の中心線に沿った断面図であり、
図2(a)は消火剤の流量が小さな状態を示し、
図2(b)は消火剤の流量が中程度の状態を示し、
図2(c)は消火剤の流量が大きな状態を示している。
本実施形態における消火剤流量調整器10は、消火剤原液が流入するケース部20と、ケース部20内で消火剤原液の流入により消火剤原液の流入方向の上流側から下流側に向かって前進移動可能に支持された主ピストン部30と、主ピストン部30の前進移動により前進可能に支持された補助ピストン部50と、を有しており、主ピストン部30及び補助ピストン部50の移動により後述する縮径部の縮径率が3段階以上に変化するように構成されているものである。
また、本実施形態では、消火剤流量調整器10は、主ピストン部30を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第1の弾性体としての第1のコイルバネ40と、補助ピストン部50を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第2の弾性体としての第2のコイルバネ60と、をさらに有している。
以下、各部について詳細に説明する。
【0031】
(消火剤流量調整器:ケース部)
ケース部20は、
図1に示すように、第1のケース21と第2のケース22とを備えている。
第1のケース21における第2のケース22との接合側と反対の側には、消火剤原液の流入口23が形成されている。この流入口23には、一端側が消火剤貯蔵加圧タンク(
図6の消火剤貯蔵加圧タンク102)と接続されている消火剤側配管(
図6の消火剤側配管105)の消火剤原液の供給方向の下流側端部が接続される。
消火剤側配管を流れてきた消火剤(消火剤原液)は、この流入口23からケース部20の内部に流入可能となる。
第2のケース22における第1のケース21との接合側と反対の側には、ケース部20の内径よりも狭小に形成されて縮径部として機能する第1の開口部24と、第1の開口部24を通過した消火剤がケース部20の外部に流出する流出口25とが設けられている。
【0032】
流出口25は、ケース部20における下流側(消火剤貯蔵加圧タンク(
図6における消火剤貯蔵加圧タンク102)から送り出される消火剤の流れ方向(
図1における白抜き矢印で示す方向)の下流側)に設けられてケース部20の外部に向かって突出する円筒状の部である。
また、第1の開口部24は、流出口25に連設されて第2のケース22の内部に向かって突出する円筒状の部である。第1の開口部24は、流出口25と一体になっていてもよいし、別部材として形成された円筒状の部材を流出口25の上流側に固定する構成としてもよい。
第1の開口部24における消火剤の流れ方向の上流側端部には外側に向かって張り出す外向きフランジ部24aが設けられている。
この外向きフランジ部24aにおける消火剤の流れ方向の上流側端面24bは、主ピストン部30及び補助ピストン部50が消火剤原液の流入方向の下流側に前進移動した際に主ピストン部30の閉塞端面31aが突き当てられ、後述する第3の開口部34を閉塞する突き当て面として機能する。
【0033】
ケース部20の流出口25は、消火剤混合装置(
図6参照)の混合器(
図7における混合器101)の狭小部(
図7における狭小部101a)に接続される。
これにより消火剤原液は、ケース部20における上流側(消火剤貯蔵加圧タンク(
図6における消火剤貯蔵加圧タンク102)から送り出される消火剤の流れ方向(
図1における白抜き矢印で示す方向)の上流側)に位置する流入口23からケース部20内に流入し、ケース部20における下流側に位置する第1の開口部24を通過して流出口25から流出するようになっている。
なお、第1の開口部24は、ケース部20の内径よりも小径に形成され、第1の開口部24を通過する消火剤原液の流量が、所定の流量となるように調整されている。
【0034】
(消火剤流量調整器:主ピストン部)
主ピストン部30は、ケース部20の内側に格納されている。主ピストン部30は、一端側(
図1における右端部)が閉塞された円筒状の筒状部31と、この筒状部31の他端側(
図1における左端部)に形成されたフランジ部32とを備えている。
主ピストン部30の内径は、ケース部20内に消火剤原液が流入する流入口23の内径とほぼ等しく形成されている。
筒状部31は、その外径が第2のケース22の内径とほぼ等しく設定されている。また、フランジ部32は、その外径が第1のケース21の内径とほぼ等しく設定されている。
フランジ部32の外周面が第1のケース21の内周面に沿うとともに、筒状部31の外周面が第2のケース22の内周面に沿って移動することにより、主ピストン部30は、主ピストン部30の中心軸方向に沿った進退移動がガイドされ、円滑に移動可能となっている。
なお、この消火剤流量調整器10にあっては、消火剤の流入方向における下流側を「前」側(2次側)とし、上流側を「後」側(1次側)というものとする。
【0035】
本実施形態では、主ピストン部30の前側(消火剤の流入方向における下流側)に配置される閉塞端面31aには、後側に一段下がった段部31bが、その外周に沿って設けられている。
主ピストン部30における閉塞端面31aの中心部には、第2の開口部33が設けられている。第2の開口部33は、主ピストン部30の閉塞端面31aを垂直に貫通して形成されたオリフィスである。
【0036】
また、第2の開口部33の周囲には、ほぼ第2の開口部33を円中心とした円周上に、第2の開口部33よりも径の小さい第3の開口部34が設けられている。第3の開口部34は、第2の開口部33と同様に、主ピストン部30の閉塞端面31aを垂直に貫通して形成されたオリフィスである。
なお、
図1等では、第2の開口部33を挟むように2つの第3の開口部34が形成されている場合を例示しているが、第3の開口部34の数は特に限定されず、例えば第2の開口部33を取り囲むように3つ以上の第3の開口部34が設けられていてもよい。また、第3の開口部34の径等についても特に限定されず、例えば第1の開口部33と同程度の径等であってもよい。
【0037】
さらに、第3の開口部34の周囲には、ほぼ第2の開口部33を円中心とした円周上に、第4の開口部35が設けられている。第4の開口部35は、第2の開口部33及び第3の開口部34と同様に、主ピストン部30の閉塞端面31aを垂直に貫通して形成されたオリフィスである。
なお、
図1等では、第2の開口部33及び第3の開口部34を挟むように2つの第4の開口部35が形成されている場合を例示しているが、第4の開口部35の数は特に限定されず、例えば第2の開口部33及び第3の開口部34を取り囲むように3つ以上の第4の開口部35が設けられていてもよい。また、第4の開口部35の径等についても特に限定されず、例えば第3の開口部34と同程度の径等であってもよいし、これより小さい径であってもよい。
【0038】
本実施形態において、主ピストン部30は、ケース部20内において、流入口23から流入する消火剤原液が、フランジ部32側の端部からその内部に流入する。前述のように、主ピストン部30の内径は、ケース部20内に消火剤原液が流入する流入口23の内径とほぼ等しく形成されているため、ケース部20の流入口23から主ピストン部30の閉塞端面31aまでは内径がほぼ一様な消火剤原液の流路となっている。
第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35は、第2のケース22に設けられている第1の開口部24とともに、この消火剤原液の流路よりも狭小に形成された縮径部を構成する。
主ピストン部30の閉塞端面31aの開口面積(すなわち、第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35の合計開口面積)は、主ピストン部30の内部の断面積よりも小さくなっている。このため、当該主ピストン部30の閉塞端面31aの各開口部(すなわち、第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35)を通過する消火剤原液の流量が、所定の流量となるように調整される構造となっている。
【0039】
(消火剤流量調整器:第1のコイルバネ)
第1のコイルバネ40は、主ピストン部30を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第1の弾性体である。第1のコイルバネ40は、ケース部20内において、主ピストン部30を挿入させた状態で主ピストン部30の前側(すなわち消火剤原液の流入方向の下流側)の端面に当接し、当該主ピストン部30を流入口23側に押圧している。本実施形態では、閉塞端面31aの外周に沿って設けられている段部31bに第1のコイルバネ40が嵌るようになっている。
このように、第1のコイルバネ40によって主ピストン部30を消火剤原液の流入方向の上流側に付勢することにより、流入口23から消火剤原液が流入した際、その圧力が第1のコイルバネ40の押圧力を越えるまでは主ピストン部30は移動せず、消火剤原液の流入圧力が第1のコイルバネ40の押圧力を越える状態となったときに、第1のコイルバネ40の付勢力に抗して主ピストン部30の前進移動が行われる。
そして、主ピストン部30が後述する補助ピストン部50における突き当て面である上流側端面52に突き当てられることで縮径部の縮径率の切り替えが行われる。すなわち、主ピストン部30の閉塞端面31aに設けられた第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35のうち、補助ピストン部50の上流側端面52に当接する位置に設けられている開口部(本実施形態では第4の開口部35)が上流側端面52によって閉塞されることにより、消火剤原液が全ての開口部(すなわち、第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35)を流通可能な状態から、一部の開口部(すなわち、第2の開口部33、第3の開口部34)のみを流通可能な状態に切り替わる。
この点、主ピストン部30の閉塞端面31aが補助ピストン部50の上流側端面52に当接するための消火剤原液の流量を決定する一つの要素として、上記第1のコイルバネ40のバネ定数が挙げられる。したがって、第1のコイルバネ40のバネ定数は、縮径率の切り替えを行うべき消火剤原液流量に基づいて適正な値が選択される。
【0040】
主ピストン部30は、第1のケース21内において、互いの中心線が同一軸上となるように配設され、且つ、主ピストン部30はその中心線方向に沿って進退移動可能となっている。そして、主ピストン部30が補助ピストン部50の上流側端面52に突き当たる位置まで前進移動した際には、閉塞端面31aの周縁部に近い部分を補助ピストン部50の上流側端面52に密接させることが可能となっている。
一方、主ピストン部30を前方から見た場合、前述のように、閉塞端面31aの面方向におけるほぼ中央部に第2の開口部33が形成されており、第3の開口部34は、第2の開口部33よりも閉塞端面31aの面方向における中央部から多少離れた位置に配置され、第4の開口部35は、第3の開口部34よりもさらに閉塞端面31aの面方向における中央部から離れた位置、すなわち閉塞端面31aの周縁部に近い部分に配置されている。
このため、主ピストン部30の閉塞端面31aが補助ピストン部50の上流側端面52に密接した状態において、同心上に配置されたケース部20の第1の開口部24と第2の開口部33及び第2の開口部33の周囲に配置された第3の開口部34とは、互いに重合した状態となり、連通状態が維持される。一方、第4の開口部35は、第1の開口部24に対して全く重合を生じない距離だけ外側に配置されている。かかる配置により、第4の開口部35は、補助ピストン部50の上流側端面52により閉塞された状態となる。
【0041】
つまり、主ピストン部30は、補助ピストン部50の上流側端面52に当接する位置まで前進移動していないときには、当該主ピストン部30内に流入した消火剤原液を全ての開口部(すなわち、第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35)から通過させることができ、閉塞端面31aが補助ピストン部50の上流側端面52に当接する位置まで前進移動したときには、当該主ピストン部30内に流入した消火剤原液を第2の開口部33、第3の開口部34のみから通過させることができる。
【0042】
(消火剤流量調整器:補助ピストン部)
補助ピストン部50は、ケース部20の内側であって第1の開口部24の外周に沿って配置された円盤状の部である。補助ピストン部50の内周面には、第1の開口部24の外向きフランジ部24aにおける消火剤原液の流入方向下流側の面に対して接離可能な内向きフランジ部51が設けられている。また、補助ピストン部50の前側(すなわち消火剤原液の流入方向の下流側)の端面には、補助ピストン部50の周方向に沿って溝部53が形成されている。
補助ピストン部50は、第1の開口部24の外周に沿って、補助ピストン部50の中心軸方向に沿った進退移動が可能となっている。
補助ピストン部50における消火剤の流れ方向の上流側端面52は、主ピストン部30が消火剤原液の流入方向の下流側に前進移動した際に主ピストン部30の閉塞端面31aが突き当てられ、前述のように閉塞端面31aに形成されている第4の開口部35を閉塞する突き当て面として機能する。
【0043】
(消火剤流量調整器:第2のコイルバネ)
第2のコイルバネ60は、補助ピストン部50を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第2の弾性体である。第2のコイルバネ60は、ケース部20内において、補助ピストン部50の前側(すなわち消火剤原液の流入方向の下流側)の端面に当接し、当該補助ピストン部50を流入口23側に押圧している。本実施形態では、補助ピストン部50の周方向に沿って形成されている溝部53に第2のコイルバネ60が嵌るようになっている。
このように、第2のコイルバネ60によって補助ピストン部50を消火剤原液の流入方向の上流側に付勢することにより、流入口23から消火剤原液が流入した際、その圧力が第1のコイルバネ40の押圧力を越えて主ピストン部30を前進移動させ、さらにこの主ピストン部30による圧力が第2のコイルバネ60の押圧力を越えるまでは補助ピストン部50は移動せず、消火剤原液の流入圧力及びこれによる主ピストン部30の押圧力が第2のコイルバネ60の押圧力を越える状態となったときに、第2のコイルバネ60の付勢力に抗して補助ピストン部50の前進移動が行われる。
補助ピストン部50が前進移動することにより、補助ピストン部50の上流側端面52と、第1の開口部24の上流側端面24bとがほぼ面一となり、この状態において主ピストン部30の閉塞端面31aが第1の開口部24の上流側端面24bに当接する。
主ピストン部30が補助ピストン部50を前進移動させる状態においては、前述のように、既に主ピストン部30の閉塞端面31aに設けられている第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35のうち、第4の開口部35が補助ピストン部50の上流側端面52によって閉塞された状態となっている。
この状態からさらに主ピストン部30が第1の開口部24における突き当て面である上流側端面24bに突き当てられる状態となることで、さらに縮径部の縮径率の切り替えが行われる。すなわち、主ピストン部30の閉塞端面31aに設けられた第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35のうち、第1の開口部24の上流側端面24bに当接する位置に設けられている開口部(本実施形態では第3の開口部34)が上流側端面24bによって閉塞されることにより、消火剤原液が第2の開口部33及び第3の開口部34を流通可能な状態から、第2の開口部33のみを流通可能な状態に切り替わる。
この点、主ピストン部30の閉塞端面31aが第1の開口部24の上流側端面24bに当接するための消火剤原液の流量を決定する一つの要素として、上記第2のコイルバネ60のバネ定数が挙げられる。したがって、第2のコイルバネ60のバネ定数は、縮径率の切り替えを行うべき消火剤原液流量に基づいて適正な値が選択される。
【0044】
図1等に示すように、第1の開口部24の上流側端面24bは、補助ピストン部50の上流側端面52よりも内側、すなわち、主ピストン部30における閉塞端面31aの中央部近くに配置されている。そして、主ピストン部30の閉塞端面31aが第1の開口部24の上流側端面24bに突き当たる位置まで前進移動した際には、閉塞端面31aの中央部に近い部分を第1の開口部24の上流側端面24bに密接させることが可能となっている。
前述のように、主ピストン部30を前方から見た場合、閉塞端面31aの面方向におけるほぼ中央部に第2の開口部33が形成されており、第3の開口部34は、第2の開口部33よりも閉塞端面31aの面方向における中央部から多少離れた位置に配置され、第4の開口部35は、第3の開口部34よりもさらに閉塞端面31aの面方向における中央部から離れた位置に配置されている。
このため、主ピストン部30の閉塞端面31aが第1の開口部24の上流側端面24bに密接した状態において、同心上に配置されたケース部20の第1の開口部24と第2の開口部33とは、互いに重合した状態となり、連通状態が維持されるが、第2の開口部33よりも少し中央部から外れて配置されている第3の開口部34は、第1の開口部24との重合を生じず、第3の開口部34は、第1の開口部24の上流側端面24bにより閉塞された状態となる。
【0045】
つまり、主ピストン部30は、補助ピストン部50の上流側端面52に当接する位置まで前進移動したのみのときには、当該主ピストン部30内に流入した消火剤原液を第2の開口部33及び第3の開口部34から通過させることができ、さらに閉塞端面31aが第1の開口部24の上流側端面24bに当接する位置まで主ピストン部30が前進移動したときには、当該主ピストン部30内に流入した消火剤原液を第2の開口部33のみから通過させることができる。
【0046】
(消火剤流量調整器の動作説明)
上記構成からなる消火剤流量調整器10の動作を消火剤混合装置(
図6における消火剤混合装置100)の動作を踏まえて説明する。
消火剤混合装置(
図6における消火剤混合装置100)が作動し、放出口の開放によって混合器(
図6における混合器101)内の水流の発生に伴い、入口部(
図6における入口部101b)と狭小部(
図6における狭小部101a)との間には差圧が発生する。
これにより、消火剤貯蔵加圧タンク(
図6における消火剤貯蔵加圧タンク102)は、加圧水側配管(
図6における加圧水側配管104)を経て加圧水領域の内部圧力が高まり、内部の隔膜を介して消火剤原液が消火剤貯蔵加圧タンク(
図6における消火剤貯蔵加圧タンク102)から押し出される。そして、消火剤原液は、消火剤側配管(
図6における消火剤側配管105)を経て消火剤流量調整器10の流入口23から内部に流入する。
【0047】
混合器(
図6における混合器101)内の水流の流量が小さいときには、消火剤原液の流量も小さくなり、その場合、消火剤流量調整器10のケース部20内では、
図2(a)に示すように、主ピストン部30は第1のコイルバネ40の押圧力により最後退位置を維持する。そして、消火剤原液は主ピストン部30の閉塞端面31aに設けられた第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35の全てを通過することができ、さらに第1の開口部24を通過してから混合器(
図6における混合器101)の狭小部(
図6における狭小部101a)に送り込まれ、消火配管主管(
図6における消火配管主管103)内の流水に混合される。
このとき、閉塞端面31aに設けられた第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35の全開口面積は、上記消火剤原液が主ピストン部30や補助ピストン部50を前進移動させることができない低流量である場合でも、目標とする混合濃度に達する流量が確保可能な範囲の圧力損失しか生じない大きさに設定されており、これにより、放水口に供給される消火剤溶液は目標とする濃度が維持される。
【0048】
そして、混合器(
図6における混合器101)内の水流の流量が大きくなると、消火剤原液の流量も大きくなり、消火剤流量調整器10のケース部20内では第1のコイルバネ40の付勢力に抗して主ピストン部30が前進移動を開始する。そして、消火剤原液が所定流量に達すると、
図2(b)に示すように、主ピストン部30は補助ピストン部50の上流側端面52に当接する位置まで前進移動した状態となる。
これにより、第4の開口部35は補助ピストン部50の上流側端面52によって閉塞され、消火剤原液は第2の開口部33及び第3の開口部34のみを通過し、さらに第1の開口部24を通過してから混合器(
図6における混合器101)の狭小部(
図6における狭小部101a)に送り込まれ、消火配管主管(
図6における消火配管主管103)内の流水に混合される。
このとき、第2の開口部33及び第3の開口部34の開口面積は、上記消火剤原液が主ピストン部30を補助ピストン部50の上流側端面52に当接する位置まで移動可能な流量を超えるほど大きくなった場合でも、目標とする混合濃度を大きく越えて消火剤原液の浪費を発生することを抑制可能な圧力損失が生じる値に設定されており、これにより、放水口に供給される消火剤溶液は目標とする濃度を大きく越えず且つ消火剤原液の浪費も回避される。
【0049】
混合器(
図6における混合器101)内の水流の流量がさらに大きくなると、消火剤原液の流量もさらに大きくなり、消火剤流量調整器10のケース部20内では主ピストン部30に強く押圧されることにより、第2のコイルバネ60の付勢力に抗して補助ピストン部50が前進移動を開始する。そして、消火剤原液が所定流量に達すると、
図2(c)に示すように、補助ピストン部50はその上流側端面52と第1の開口部24の上流側端面24bとがほぼ面一となる位置まで前進移動した状態となる。
これにより、主ピストン部30は第1の開口部24の上流側端面24bに当接し、第3の開口部34は第1の開口部24の上流側端面24bによって閉塞され、消火剤原液は第2の開口部33のみを通過し、さらに第1の開口部24を通過してから混合器(
図6における混合器101)の狭小部(
図6における狭小部101a)に送り込まれ、消火配管主管(
図6における消火配管主管103)内の流水に混合される。
このとき、第2の開口部33の開口面積は、上記消火剤原液が主ピストン部30を第1の開口部24の上流側端面24bに当接する位置まで移動可能な流量を超えるほど大きくなった場合でも、目標とする混合濃度を大きく越えて消火剤原液の浪費を発生することを抑制可能な圧力損失が生じる値に設定されており、これにより、放水口に供給される消火剤溶液は目標とする濃度を大きく越えず且つ消火剤原液の浪費も回避される。
【0050】
このように、本実施形態では、ケース部20、主ピストン部30、第1のコイルバネ40、補助ピストン部50及び第2のコイルバネ60の協働により、ケース部20側に設けられた第1の開口部24と主ピストン部30の閉塞端面31aに設けられた第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35との重合状態と非重合状態とが消火剤原液の流量に応じて3段階に切り替えられる。
つまり、ケース部20、主ピストン部30、第1のコイルバネ40、補助ピストン部50及び第2のコイルバネ60の構成は、消火剤原液の流量に応じて第1の開口部24と第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35からなる縮径部の縮径率の可変調節を行う可変手段として機能するようになっている。
ここで、「縮径率」とは、例えば、主ピストン部30における第2の開口部33、第3の開口部34及び第4の開口部35のうち流通可能な開口部の総開口面積(総断面積)に対する主ピストン部30の内側前端面面積の比率のことをいう。
【0051】
(消火剤流量調整器による消火配管主管の流量と消火剤の混合濃度との関係)
本実施形態の消火剤流量調整器10を用いた場合における、消火配管主管(
図6における消火配管主管103)の送水流量(横軸;
図3において「主管流量」)と消火剤水溶液の濃度(縦軸;
図3において「混合濃度」)との関係を、
図3を参照して説明する。
なお、
図3では、主管流量0〜500[L/min]の帯域における混合濃度を示している。
また、
図3において、P1は主管流量が最小流量である段階、P2は主ピストン部30が前進移動を開始する流量である段階、P3及びP4はある程度の大きさの差圧が得られる流量である段階、P5は主管流量が最大流量となった段階をそれぞれ示しており、P1からP2の間は、主ピストン部30が第1のコイルバネ40の付勢力により第1のケース21の内側面に押し付けられている状態となっている。
【0052】
図3に示すように、P1の主管流量が最小流量である段階から徐々に主管流量が増え始めると、主ピストン部30が第1のコイルバネ40の付勢力に抗して前進移動を開始するとともに、主ピストン部30の第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35から流れる消火剤流量は最も多い状態(P2の段階)から徐々に制限されていく。P2の段階においても、混合濃度は、目標とする混合濃度3〜4%を超えることはない。
そして、さらに主管流量が増加して主ピストン部30が補助ピストン部50の上流側端面52に押し付けられた状態となると、主ピストン部30の第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35から流れる消火剤流量がさらに制限され(すなわち、前述のように消火剤が第2の開口部33及び第3の開口部34のみを通過可能となり)、混合濃度が徐々に下がりはじめる(P3の段階)。
さらに、主ピストン部30が第2のケース22の第1の開口部24の上流側端面24bに押し付けられた状態となると、主ピストン部30の第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35から流れる消火剤流量がさらに制限され(すなわち、前述のように消火剤が第2の開口部33のみを通過可能となり)、さらに混合濃度が下がって、目標の混合濃度に近づいていく(P4の段階)。
その後は、主管流量が400[L/min]程度まで増加しても(P5の段階)、消火剤水溶液における混合濃度は4.0%を超えることなく、目標とする混合濃度近傍で安定した値を維持している。
【0053】
(本実施形態の効果)
以上のように、消火剤流量調整器10は、消火剤原液が低流量のときには主ピストン部30の閉塞端面31aに設けられた第2の開口部33、第3の開口部34、第4の開口部35の全てを通過させることにより低圧力損失状態での消火剤供給が行われ、消火剤原液が中程度の量に増加したときには第2の開口部33及び第3の開口部34のみを通過させることにより圧力損失を少し高めた状態での消火剤供給が行われ、さらに消火剤原液が高流量のときには第2の開口部33のみを通過可能とすることで、高圧力損失状態での消火剤供給が行われる。
このため、送水流量が少ないときの消火剤の供給量不足を回避しつつも、送水流量が増加したときの消火剤の過剰供給をも回避することができる。これにより、送水量或いは消火剤供給量について幅広い範囲で安定した混合濃度を維持することが可能となる。
【0054】
特に本実施形態では、縮径部を、ケース部20における消火剤原液の流入方向の下流側に設けられた第1の開口部24と、主ピストン部30における消火剤原液の流入方向の下流側端部であって、常に第1の開口部24と連通する位置に設けられた第2の開口部33と、主ピストン部30や補助ピストン部50の移動に応じて、消火剤原液の流入が可能である開口状態と消火剤原液の流入が不可である閉塞状態とのいずれかをとり得る位置に設けられた第3の開口部34及び第4の開口部35とで構成し、ケース部20、主ピストン部30、第1のコイルバネ40、補助ピストン部50及び第2のコイルバネ60の協働により、消火剤が通過可能な開口部を3段階に切り替えることができる。
このため、消火剤の供給流量の急激な変動を避けて、より適切な消火剤流量の調整を行うことができる。
【0055】
また、主ピストン部30は、第1の弾性体としての第1のコイルバネ40によって消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢されている。
このため、自重に頼ることなく消火剤原液の供給流量に応じた主ピストン部の前進移動を実現することができ、消火剤流量調整器10の設置向きが限定されず、取り付けの自由度が向上する。
【0056】
さらに、補助ピストン部50も、第2の弾性体としての第2のコイルバネ60によって消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢されている。
このため、補助ピストン部50についても、自重に頼ることなく消火剤原液の供給流量に応じた前進移動を実現することができ、消火剤流量調整器10の設置向きが限定されず、取り付けの自由度が向上する。
【0057】
(変形例)
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ケース部20の内側であって主ピストン部30と嵌合する部分に、バイパス流路29を形成してもよい。
例えば、主ピストン部30の外周面と接するケース部20(
図4(a)及び
図4(b)では、第2のケース22)の内周面に、主ピストン部30の進退移動方向に延在する溝状のバイパス流路29を設ける。
主ピストン部30が進退移動することにより、主ピストン部30とケース部20との間の空間の体積が変化する。この場合、主ピストン部30とケース部20との嵌合精度が高すぎると主ピストン部30の動きが妨げられるおそれがある。
この点、ケース部20の内側であって主ピストン部30と嵌合する部分に、
図4(a)及び
図4(b)に示すようなバイパス流路29を設けることにより、主ピストン部30とケース部20との間に圧力の逃げ場を確保することができ、ケース部20内において主ピストン部30をより円滑に移動させることができる。
なお、バイパス流路29の大きさ、深さ等は特に限定されない。
また、
図4(a)ではケース部20の内側に1か所だけバイパス流路29を設けた場合を図示しているが、バイパス流路29の数や配置は適宜設定することができる。
【0058】
また、ケース部20内であって第3の開口部34や第4の開口部35と対向する位置に突起部を設けてもよい。
例えば、
図5に示すように、第3の開口部34と対向し、主ピストン部30の閉塞端面31aが第2のケース22の第1の開口部24の上流側端面24bに当接した際に第3の開口部34を閉塞する位置に突起部24cを配置する。
また、例えば、第4の開口部35と対向し、主ピストン部30の閉塞端面31aが補助ピストン部50の上流側端面52に当接した際に第4の開口部35を閉塞する位置に突起部54を配置する。
これにより、主ピストン部30が前進移動した際には、第3の開口部34や第4の開口部35内に突起部24cや突起部54が入り込むことによって第3の開口部34や第4の開口部35徐々に閉塞されていく。このため、消火剤の供給流量を無段階的に変化させることが可能となる。
特に、突起部24cや突起部54の形状を、
図5に示すような先端に行くほど径が小さくなる錘状に形成した場合には、消火剤の供給流量をよりリニアに変化させることが可能となる。
また、主ピストン部30の移動に伴って第3の開口部34や第4の開口部35内に突起部24cや突起部54が入り込んでいくため、主ピストン部30をスムーズにガイドすることができるとともに、主ピストン部30の閉塞端面31aが第2のケース22の第1の開口部24の上流側端面24bや補助ピストン部50の上流側端面52に当接した際に、第3の開口部34や第4の開口部35をより確実に閉塞することができる。
なお、消火剤の供給流量をよりリニアに変化させるためには、突起部24cや突起部54を錘状に形成することが好ましいが、突起部24cや突起部54の形状はこれに限定されない。
また、突起部は、
図5に示すように、第1の開口部24の上流側端面24bと補助ピストン部50の上流側端面52との両方に設けてもよいし、いずれか一方のみに設けてもよい。
【0059】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0060】
例えば、上記実施形態では、主ピストン部30を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第1の弾性体としての第1のコイルバネ40及び補助ピストン部50を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第2の弾性体としての第2のコイルバネ60を設ける場合を例示したが、消火剤流量調整器10の設置向きによっては、これらの第1のコイルバネ40及び第2のコイルバネ60を設けなくてもよい。
すなわち、消火剤流量調整器10を、消火剤原液の流入方向の上流側が必ず下になるように設置すれば、消火剤原液の流入量が少ないときには、主ピストン部30及び補助ピストン部50はコイルバネ等の弾性体によって付勢しなくても自重により消火剤原液の流入方向の上流側に配置される。このため、消火剤流量調整器10をこのような向きで配置する場合には、第1のコイルバネ40又は第2のコイルバネ60を省略しても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、主ピストン部30を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第1の弾性体や補助ピストン部50を消火剤原液の流入方向の上流側に向かって付勢する第2の弾性体は、主ピストン部30や補助ピストン部50を付勢可能なものであればよく、コイルバネに限定されない。
【0062】
また、本実施形態では、補助ピストン部50を1つ設ける場合を例示したが、第2の開口部33との距離の異なる複数の第4の開口部を設けて、各第4の開口部に対応する位置に第4の開口部を閉塞する上流側端面を有する補助ピストン部を複数設けてもよい。
この場合には、さらに多段階(すなわち4段階以上)で消火剤の供給流量を調整することが可能となる。