特許第6554021号(P6554021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554021非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法および化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554021
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法および化粧料
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20190722BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20190722BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20190722BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCFD
   A61K8/85ZBP
   A61Q1/12
   !C08L101/16
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-223799(P2015-223799)
(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公開番号】特開2017-88803(P2017-88803A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】391015373
【氏名又は名称】大東化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】木下 正明
(72)【発明者】
【氏名】長谷 昇
(72)【発明者】
【氏名】田中 巧
【審査官】 福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−262334(JP,A)
【文献】 特開2002−363291(JP,A)
【文献】 特開2009−249580(JP,A)
【文献】 特開平06−053805(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/064696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28
C08J 99/00
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性の生分解性ポリマーと水溶性材料とを含む樹脂組成物を、直径が0.05〜2.0mmの範囲で、長さが20mm以上である毛管状の細孔を有するノズルから溶融吐出する工程と、吐出された前記樹脂組成物から水溶性材料を除去する工程とを経ることにより、平均粒子径が0.1〜100μmで、平均アスペクト比が1.5以上である非球状生分解性ポリマー粉体を製造することを特徴とする非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法およびその製造方法によって製造された非球状生分解性ポリマー粉体を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料に毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感だけでなく塗布時の感触やすべり性を向上させる目的で、架橋シリコーン粉体(例えば特許文献1参照。)、ナイロン粉体(例えば特許文献2参照。)、アクリル粉体(例えば特許文献3参照。)、ポリ乳酸粉体(例えば特許文献4参照。)などの球状ポリマー粉体を配合することがよく知られている。
【0003】
中でも、ポリ乳酸粉体などの生分解性ポリマー粉体は、化粧品として使用された後に自然界に放出されても容易に分解するため、環境への負荷が小さく注目されている。
【0004】
ポリマー粒子の開発が進むにつれ、近年では、光学特性やすべり性などの特性を変化させるために、球状からアスペクト比を変化させた楕円、板状、針状といった非球状ポリマー粒子の開発が盛んに行われるようになってきた。(例えば特許文献5〜7参照。)
【0005】
しかし、これらは主に石油原料から製造されたものであり、より安全なものを使いたいという消費者のニーズにはこたえられていない。また、これらのポリマー粒子は、自然界では容易に分解せず、化粧品として使用された後に自然界に放出されると、長期間ゴミとして堆積物として存在し、環境への負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−165509号公報
【特許文献2】特開平7−300410号公報
【特許文献3】特表平10−502389号公報
【特許文献4】特許第3998519号公報
【特許文献5】特開2009−235355号公報
【特許文献6】特開2011−208001号公報
【特許文献7】特開平5−317688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、環境への負荷が小さく、毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感、塗布時の感触やすべり性に加え、付着性を向上させた非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法を提供するとともに、この製造方法によって製造された非球状生分解性ポリマー粉体を含有することにより、付着性に優れた化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、非水溶性の生分解性ポリマー微粒子が水溶性材料からなるマトリックス中に分散している樹脂組成物を一定形状の孔を有するノズルより溶融吐出し、それを水洗することにより、1.5以上のアスペクト比を有する非球状ポリマー粒子が効率よく製造できることを見出し、その非球状生分解性ポリマー粉体を肌へ塗布した際に、毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感、塗布時の感触やすべり性に加え、付着性が向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
要するに、前記目的を達成するために、第1発明による非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法は、非水溶性の生分解性ポリマーと水溶性材料とを含む樹脂組成物を、直径が0.05〜2.0mmの範囲で、長さが20mm以上である毛管状の細孔を有するノズルから溶融吐出する工程を経ることにより、平均粒子径が0.1〜100μmで、平均アスペクト比が1.5以上である非球状生分解性ポリマー粉体を製造することを特徴とするものである。
【0010】
次に、第2発明による化粧料は、第1発明に係る非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法によって製造された非球状生分解性ポリマー粉体を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、非球状生分解性ポリマー粉体は、細孔の直径が0.05〜2.0mmの範囲であり、かつ細孔の長さが20mm以上である毛管状の細孔を有するノズルより溶融吐出する製造工程を経ることで、形状の揃った非球状の粒子を効率よく形成することが可能となり、平均粒子径が0.1〜100μmで、平均アスペクト比が1.5以上である非球状生分解性ポリマー粉体を製造することができ、環境への負荷が小さく、肌へ塗布した際に、毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感、塗布時の感触やすべり性に加え、付着性に優れた非球状生分解性ポリマー粉体を得ることができる。
【0012】
第2発明によれば、第1発明に係る非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法によって製造された非球状生分解性ポリマー粉体を含有することにより、毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感、塗布時の感触やすべり性に加え、付着性に優れた化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】製造実施例1で得られた楕円状生分解性ポリマー粉体のレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定した粒度分布を示すグラフである。
図2】製造実施例1で得られた楕円状生分解性ポリマー粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】製造実施例2で得られた針状生分解性ポリマー粉体のレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定した粒度分布を示すグラフである。
図4】製造実施例2で得られた針状生分解性ポリマー粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
図5】製造比較例で得られた球状生分解性ポリマー粉体のレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定した粒度分布を示すグラフである。
図6】製造比較例で得られた球状生分解性ポリマー粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
図7】生分解性ポリマー粉体を黒色人口皮革に塗布した状態を示す図で、(a)は製造実施例1で得られた楕円状生分解性ポリマー粉体の塗布状態図、(b)は製造実施例2で得られた針状生分解性ポリマー粉体の塗布状態図、(c)は製造比較例で得られた球状生分解性ポリマー粉体の塗布状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明による非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法および化粧料の具体的な実施の形態について説明する。
【0015】
本発明による非球状生分解性ポリマー粉体を作製するには、次の手順が採られる。
1)非水溶性の生分解性ポリマーを水溶性材料に溶融分散させる。
2)上記1)の樹脂組成物を一定形状の細孔を有するノズルより溶融吐出させる。
3)上記2)の樹脂組成物を水洗し、水溶性材料を除去する。
【0016】
非水溶性の生分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル系樹脂が挙げられ、生分解性のポリエステル系樹脂であれば限定されるものではなく、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。耐熱性と環境負荷の観点から環境循環型材料であるポリ乳酸が好ましく用いられる。
【0017】
本発明の非球状分解性ポリマー粉体において、平均粒子径が10μm以下のものを得たい場合、更にポリグリセリン脂肪酸エステルなどの分散剤を添加することが好ましい。本発明に用いることができるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばモノラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリルからなる群から選択され、これらを単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
また、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、非水溶性の生分解性ポリマーに対し0.5〜5.0mass%の範囲が好ましく、1.0〜3.0mass%の範囲がより好ましい。添加量0.5mass%以下では粒子を小さくする効果は得られず、添加量5.0mass%以上では5.0mass%添加した時以上の効果は得られない。
【0019】
水溶性材料としてはポリエチレングリコール等のポリアルキレンオキシド、ポリアクリル酸等のポリアルケンカルボン酸が挙げられ、これらは単独重合体もしくは共重合体、さらにはこれらの塩を使用することができ、これらを単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法において、溶融分散するための装置は特に限定されるものではなく、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等が用いられる。
【0021】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法において、溶融吐出するための装置は、一定形状の細孔を有するノズルを設置することができれば特に限定されるものではなく、射出成型機、溶融プレス機、紡糸機、押出機等が用いられる。中でも溶融分散から溶融吐出までの製造を同時に行える押出機の使用は製造コストの面で望ましい。
【0022】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法において、溶融吐出する際の一定形状の細孔を有するノズルとは、直径が0.05〜2.0mmの範囲であり、かつ細孔の長さが20mm以上である毛管状の細孔を有するノズルが望ましい。細孔の直径が0.05mm以下だと生産能力が極めて劣り、細孔の長さが20mmに満たないと所望のアスペクト比を有する粒子を効率よく安定して得ることができない。また、孔数は1本以上であれば特に制限はないが、孔数が多いほど生産能力が向上するため、可能な限り多く設けることが製造コストの面で望ましい。
【0023】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法において水溶性材料を除去する方法としては、水洗後に遠心分離およびろ過により分離することができ、分離した非球状生分解性ポリマー粉体は必要に応じて乾燥してから使用する。
【0024】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法によって得られる非球状生分解性ポリマー粉体は、平均粒子径が0.1〜100μmで、平均アスペクト比が1.5以上であることを特徴とするものである。平均粒子径が0.1μmより小さい場合には、生産効率が悪くなるためコストがかかるという懸念がある。一方、平均粒子径が100μmより大きい場合には、肌への付着性が悪くなるという懸念がある。
また、平均アスペクト比が1.5より小さい場合には、球状または略球状であり非球状とは言えない。平均アスペクト比が1.5以上であれば付着性に優れた粉体を得られるが、平均アスペクト比が25より大きい場合には粒子同士の絡み合いによる凝集物を形成する恐れがあるため、平均アスペクト比は1.5〜25がより好ましい。
【0025】
本発明において、非球状生分解性ポリマー粉体の粒子径の測定方法としては、電子顕微鏡により観察した写真から画像的に抽出、判定する方法と、レーザー回折・散乱式粒度分布計などの粒度分布測定装置を用いて測定する方法などが挙げられるが、レーザー回折・散乱式粒度分布計による測定方法を用いるのが好ましい。
【0026】
本発明において、非球状生分解性ポリマー粉体のアスペクト比の測定方法としては、電子顕微鏡により観察した写真から画像的に抽出、判定する方法を用いるのが好ましい。
【0027】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体には、それ自体従来公知の各種の表面処理を施すことができる。この表面処理の例としては、以下の処理が挙げられ、これらの処理を複数組み合わせて用いることも可能であるが、環境負荷の観点から天然素材を用いるのが好ましい。
a)フッ素化合物処理・・・パーフルオロアルキルリン酸エステル処理やパーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理など
b)シリコーン処理・・・メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理など
c)ペンダント処理・・・気相法シリコーン処理後にアルキル鎖などを付加する処理
d)シランカップリング剤処理
e)チタンカップリング剤処理
f)アルミニウムカップリング剤処理
g)油剤処理
h)N−アシル化リジン処理
i)ポリアクリル酸処理
j)金属石鹸処理・・・ステアリン酸塩処理やミリスチン酸塩処理など
k)アクリル樹脂処理
l)金属酸化物処理
【0028】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法によって製造された非球状生分解性ポリマー粉体は、化粧料に配合することにより、毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感、塗布時の感触やすべり性に加え、付着性に優れた化粧料を得ることができる。この場合、配合量としては、0.1〜99質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜60質量%である。化粧料の剤型としては、二層状、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ジェル状、スプレー、ムース状、油性、固形状等の従来公知の剤型を使用することができる。勿論、本発明の化粧料を得るのに、他の公知の着色顔料、体質顔料、樹脂粉体、光輝性粉体、又はそれらの粉体の表面処理粉体と、界面活性剤、油剤を組み合わせることができるのは言うまでもない。
【実施例】
【0029】
次に、本発明による非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法および化粧料の具体的な実施例について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0030】
(製造実施例1:平均粒子径6.0μm、平均アスペクト比1.6の楕円状生分解性ポリマー粉体の製造例)
非水溶性の生分解性ポリマーとしてポリ乳酸(ユニチカ製 テラマックTP−4000CN)33質量部に、ポリアクリル酸(東亞合成製 ジュリマーAC−10P)67質量部を加え、よく混合した後、0.5kg/hの速度にて同方向回転2軸押出機(東洋精機製作所製 プラストミル二軸セグメント押出機2D25W)の供給口に供給した。同押出機のシリンダー温度を180℃として溶融分散を行い、直径1mmかつ長さ40mmの24本の細孔を有するノズルから樹脂組成物を押出して冷却固化した。その後、得られた樹脂組成物に対して10倍の質量の水を用いて当該ポリアクリル酸を水洗除去し、ポリ乳酸の楕円状生分解性ポリマー粉体の縣濁液を得た。この縣濁液をろ過したうえで乾燥して、目的の楕円状生分解性ポリマー粉体を得た。(図1〜2参照。)
【0031】
(製造実施例2:平均粒子径6.1μm、平均アスペクト比20.8の針状生分解性ポリマー粉体の製造例)
非水溶性の生分解性ポリマーとしてポリ乳酸(ユニチカ製 テラマックTP−4000CN)33質量部に、ポリアクリル酸(東亞合成製 ジュリマーAC−10P)67質量部を加え、よく混合した後、1.0kg/hの速度にて同方向回転2軸押出機(東洋精機製作所製 プラストミル二軸セグメント押出機2D25W)の供給口に供給した。同押出機のシリンダー温度を180℃として溶融分散を行い、直径1mmかつ長さ40mmの24本の細孔を有するノズルから樹脂組成物を押出して冷却固化した。その後、得られた樹脂組成物に対して10倍の質量の水を用いて当該ポリアクリル酸を水洗除去し、ポリ乳酸の針状生分解性ポリマー粉体の縣濁液を得た。この縣濁液をろ過したうえで乾燥して、目的の針状生分解性ポリマー粉体を得た。(図3〜4参照。)
【0032】
(製造比較例:平均粒子径6.2μm、平均アスペクト比1.1の真球状生分解性ポリマー粉体の製造例)
非水溶性の生分解性ポリマーとしてポリ乳酸(ユニチカ製 テラマックTP−4000CN)33質量部に、ポリアクリル酸(東亞合成製 ジュリマーAC−10P)67質量部を加え、よく混合した後、1.0kg/hの速度にて同方向回転2軸押出機(東洋精機製作所製 プラストミル二軸セグメント押出機2D25W)の供給口に供給した。同押出機のシリンダー温度を180℃として溶融分散を行い、直径5mmかつ長さ20mmの1本の孔を有するノズルから樹脂組成物を押出して冷却固化した。その後、得られた樹脂組成物に対して10倍の質量の水を用いて当該ポリアクリル酸を水洗除去し、ポリ乳酸の真球状生分解性ポリマー粉体の縣濁液を得た。この縣濁液をろ過したうえで乾燥して、目的の球状生分解性ポリマー粉体を得た。(図5〜6参照。)
【0033】
(実施例1:パウダーファンデーション)
下記の表1に示す処方に従ってパウダーファンデーションを得た。
【0034】
【表1】

<製造方法>
成分Aを粗混合した後、均一に溶解した成分Bを加えて良く攪拌した後に、容器に充填して製品を得た。
【0035】
(実施例2:パウダーファンデーション)
製造実施例1で作製した楕円状生分解性ポリマー粉体を、製造実施例2で作製した針状生分解性ポリマー粉体に代えた以外は、上記実施例1と同様にしてパウダーファンデーションを得た。
【0036】
(比較例1:パウダーファンデーション)
製造実施例1で作製した楕円状生分解性ポリマー粉体を、製造比較例で作製した球状生分解性ポリマー粉体に代えた以外は、上記実施例1と同様にしてパウダーファンデーションを得た。
(比較例2:パウダーファンデーション)
製造実施例1で作製した楕円状生分解性ポリマー粉体を、セリサイトFSEに代えた以外は、上記実施例1と同様にしてパウダーファンデーションを得た。
【0037】
(平均粒子径)
製造実施例1および製造実施例2並びに製造比較例の生分解性ポリマー粉体については、図1図3および図5に示されるように、レーザー回折・散乱式粒度分布計(日機装製 マイクロトラックMT3300EXII)を用いて体積平均粒子径を測定した。
【0038】
(平均アスペクト比)
製造実施例1および製造実施例2並びに製造比較例の生分解性ポリマー粉体については、図2図4および図6に示されるように、走査型電子顕微鏡を用いて形状観察を行った。形状観察の際に撮影した写真からランダムに100個の粒子を選び長径と短径を測定し、長径を短径で除した値であるアスペクト比を算出し、その平均値を平均アスペクト比とした。
【0039】
以下、非球状生分解性ポリマー粉体及び化粧料の評価を示す。
(1)付着性
黒色の人口皮革にパフを用いて、それぞれの粉体を7cm×10cmの範囲に10回重ねて塗布した。
【0040】
図7の結果から、製造実施例2で作成した針状の生分解性ポリマー粉体はやや引っかかりが確認されるものの製造実施例1および製造実施例2で作成した非球状の生分解性ポリマー粉体は塗布後脱落せず均一に付着していることが判った。しかし、製造比較例で作製した球状生分解性ポリマー粉体(図7(c)参照)は塗布による筋が確認される様に、重ね塗りの際にすでに塗布されていた粉体が脱落する現象が確認された。
【0041】
(2)パウダーファンデーションの評価
女性パネラー10名に、パウダーファンデーションを使用してもらい、のびの良さ、毛穴の見えにくさ、カバー力、透明感および肌へのつきの良さをアンケート形式で回答してもらった。評価が悪い場合を0点、評価が良い場合を5点とし、パネラーの平均点数で評価結果とした。したがって点数が高いほど評価が優れていることを示している。その結果が表2に示されている。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果から、製造実施例1および製造実施例2で作製した非球状生分解性ポリマー粉体をパウダーファンデーションに配合した実施例1および実施例2は、製造比較例で作製した球状生分解性ポリマー粉体を配合した比較例と比較して、のびの良さを維持したまま、毛穴の見えにくさ、カバー力、透明感および肌へのつきの良さに優れることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の非球状生分解性ポリマー粉体の製造方法によって得られた非球状生分解性ポリマー粉体は、毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感、塗布時の感触やすべり性に加え、肌への付着性およびカバー力に優れた化粧料を得ることができるので、産業上の利用効果が大である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7