【実施例1】
【0015】
図1に、ネットワークで発生するノイズの一例を示す。図において、符号100はノイズのない定常電文波形を示す。ノイズレベルには3つの種類がある。1つ目は、符号101で示す、通信電文に影響を与えないレベルであり、通信停止は発生しない。よって、使用者はノイズに気づくことが出来ない。しかし、設置環境は明らかに悪く、いつ通信停止が発生してもおかしくない。
2つ目は、符号102で示す、通信電文に影響を与えるノイズレベルであり、通信が停止してしまう。通信停止により使用者は異常に気づくことが出来る。符号104は、電文が書き換わる閾値を示し、閾値を超えるノイズである。
3つ目は、符号103で示す、瞬間的な大きなピークが来るノイズである。設備の動作開始や停止時にのみ発生するノイズであり、一瞬で消えてしまうため、使用者もシステム提供者もノイズの有無を確認することが出来ない。
本発明では、ノイズをこれら3つの種類に分解し、ノイズを検出する。
【0016】
図2は、通信電文に影響を与えないノイズを検出するための監視装置の構成を示している。監視装置は、RS−485ネットワークにて上位ソフトウェアに接続されている。RS−485ネットワークからの伝送信号は通信回路部201でデータ信号に変換され中央演算部203へ送られる。また、中央演算部203からのデータは、通信回路部201を介して、RS−485ネットワークから上位ソフトウェア(図示せず)へ送られる。RS−485の通信回路部201の通信線に並列に差動増幅器等の増幅回路200を設ける。増幅回路の出力はA/D変換部202でデジタル信号に変換され、中央演算部(CPU)203へ入力される。通信電文を伝送する通信回路部201と並列に増幅回路200を設けたことで、通信電文信号とは別にノイズ信号を中央演算部203へ伝送することが出来る。図において、FGは接地線を示す。
【0017】
図3に、通信電文のサンプリングを示す。サンプリングは、
図2のA/D変換部202で行われる。通信電文の速度は製品上9,600bps、19,200bps、38,400bpsであり、この速度よりも早い周期でサンプリングを行う。サンプリングは、各伝送速度において1周期300を32分割301とし、監視機器の通信電文が11ビットであるため、11回分302を連続して取得する。
【0018】
図4に、伝送信号とノイズの関係を示す。1次数の波形(基本波)は、伝送波形400である。この伝送波形にノイズが重畳する。ノイズは高調波であり、1次波形に対して2次、3次・・・という周波数帯401で重畳する。フーリエ展開を行うことで各次数の実効値を求めることが出来る。
【0019】
図5に示すように、初めに32分割したサンプリングを行う。サンプリングした値を以下の式にてフーリエ展開を行う。
図5の歪み波形をy(t)500とすると三角関数で補間することができ、sin波とcos波で表される。
【0020】
【数1】
【0021】
更に、一周期を32分割しその時の各サンプリング値をy
xとすると、(式1)の各フーリエ係数は以下の通り表される。
【0022】
【数2】
【0023】
【数3】
【0024】
上述の式から基本波だけを取り出すと以下の通りとなる。
【0025】
【数4】
【0026】
【数5】
【0027】
【数6】
【0028】
(式5)よりa
1、(式6)よりb
1を求めることにより、下式によって32個の基本波信号のサンプリングデータvを算出する。
【0029】
【数7】
【0030】
【数8】
【0031】
【数9】
【0032】
以上の式から求めた各次数の値を以下の式にて計算し、実効値を求める。
【0033】
【数10】
【0034】
ここで基本波(1次数)の通信電文は装置固有であり、
図6に示すデータが必ず存在する。この電文について上記フーリエ展開を行うと、値はVrms=5Vとなる。つまり電文の範囲かどうかは、1次数電圧=5Vで判断が可能となる。1次数電圧=5Vの箇所のみのノイズを検出する。1次数電圧=5V以外の箇所は、通信電文とは関係が無いため、この箇所はノイズ検出を行わない。こうすることで、分析処理を軽減することが出来る。
【0035】
電文信号において、2次数以降の実効値が全てノイズによる実効値である。電文信号は、0.4Vの閾値でデータが書き換わる。各次数のノイズ波形は、正弦波に近似できるので、ピーク値が0.4V以下つまり実効値が0.282V以下であれば、正常動作として認識することが出来る。この値を用いて定常的なノイズ検出を行う。他次数の閾値は余裕度を持たせるため、0.2Vを閾値とする。この閾値とすることで、電文との比較処理が不要となるため、検出処理を少なくすることが出来る。
【0036】
閾値を超えたノイズが印加された場合、監視機器のLED等の表示装置を点灯させる。このLEDはノイズが定常的に印加されていることを通知するLEDであり、通信が正常であっても、ノイズが重畳していることを使用者へ通知することが出来る。また、設置者は設置段階でノイズの重畳を認識することが出来る。
【0037】
図7に、フーリエ展開によるノイズ検出のフロー図を示す。
先ず、伝送信号のサンプリング(通信1ビット分を32分割)を行う(S701)。次に、サンプリングした値をフーリエ展開し、基本波(1次)成分および高調波(高次)成分を求める(S702)。そして、基本波成分および高調波成分の実効値を計算する(S703)。
S704で、基本波(1次)成分の実効値が5Vであるかどうかを判定し、実効値が5Vでない場合は、「通信波形なし」と判断する(S710)。
実効値が5Vの場合は、次のS705で、2次成分の実効値が0.2V以上かを判定し、0.2V以上であれば「ノイズ有り」と判定し、LEDを点灯させる。0.2Vより小さければ、次のS706で、3次成分の実効値が0.2V以上かを判定し、0.2V以上であれば「ノイズ有り」と判定する。0.2Vより小さければ、同様に、15次成分までノイズの有無を判定する(S707)。
S705〜S707の何れの場合も、ノイズ有りと判定されなかった場合は、「ノイズ無し」と判定する(S709)。
【0038】
図8に、電文へ影響を与えないノイズ検出手段のブロック構成図を示す。
通信電文に影響を与えないノイズ検出手段800は、サンプリング部801、フーリエ展開部802、実効値計算部803、伝送信号検出部804、ノイズ検出部805を備えている。
サンプリング部801は、
図3に示される伝送信号のサンプリングを行う。フーリエ展開部802は、サンプリングした値をフーリエ展開し、
図4に示される基本波(1次)成分および高調波(高次)成分を求める。実効値計算部803は、基本波(1次)成分および高調波(高次)成分のそれぞれの実効値を計算する。伝送信号検出部804は、基本波(1次)成分の実効値が5Vであるかどうかを判定し、実効値が5Vの場合は、伝送信号有りと判定して、伝送信号を検出する。ノイズ検出部805は、伝送信号検出部804が伝送信号を検出した場合、各高調波(高次)成分の実効値が閾値以上かを判定し、実効値が閾値以上の場合に、ノイズ有りと判定する。
電文へ影響を与えないノイズ検出手段800は、中央演算部(CPU)203が所定のプログラムをメモリ上にロードし、実行することにより、ソフトウェアで構成できる。また、それぞれをハードウェアで構成することもできる。
【0039】
本実施例によれば、通信電文に影響を与えないノイズを検出する構成を備えているので、通信への影響がない小さいレベルのノイズがあるかどうかを判断でき、監視システム導入時の通信停止などの原因を調べることができる。また、フーリエ展開を用い、高調波成分が閾値以上かを判断することにより、ノイズを検出するので、高速なノイズを短時間に精度良く検出することができる