(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554034
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】カルシウム剤
(51)【国際特許分類】
A61K 33/10 20060101AFI20190722BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20190722BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20190722BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20190722BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20190722BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20190722BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20190722BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20190722BHJP
A61K 33/06 20060101ALN20190722BHJP
A61K 33/08 20060101ALN20190722BHJP
A61K 47/18 20060101ALN20190722BHJP
A61K 47/02 20060101ALN20190722BHJP
A61K 47/26 20060101ALN20190722BHJP
A61K 47/28 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
A61K33/10
A61K31/593
A61K9/20
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/32
A61P19/10
A23L33/16
!A61K33/06
!A61K33/08
!A61K47/18
!A61K47/02
!A61K47/26
!A61K47/28
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-530976(P2015-530976)
(86)(22)【出願日】2014年8月8日
(86)【国際出願番号】JP2014071005
(87)【国際公開番号】WO2015020191
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-166857(P2013-166857)
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-189790(P2013-189790)
(32)【優先日】2013年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】392008541
【氏名又は名称】日東薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】藤村 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】和田 実
【審査官】
深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−211672(JP,A)
【文献】
特表平09−512788(JP,A)
【文献】
特開平05−246855(JP,A)
【文献】
特開平11−089541(JP,A)
【文献】
特表2008−500290(JP,A)
【文献】
特表2008−500975(JP,A)
【文献】
特表2008−531678(JP,A)
【文献】
特表2008−517981(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/137716(WO,A1)
【文献】
特開平11−004666(JP,A)
【文献】
特表2002−529496(JP,A)
【文献】
特表2001−511453(JP,A)
【文献】
特表2004−534058(JP,A)
【文献】
日比野剛ら,口腔内速崩壊錠の製剤設計(第4報),平成23年度三重県工業研究所研究報告,2012年11月,No.36,p.49-56,表1、3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/10
A23L 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを包含し、さらに崩壊剤を含むことを特徴とするカルシウム剤であって、カルシウム剤全量に対して、炭酸カルシウムを64.4〜67.6質量%及び炭酸マグネシウムを3〜10質量%含む、チュアブル錠の形態である、カルシウム剤。
【請求項2】
炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを包含し、さらに有機酸を含むことを特徴とするカルシウム剤であって、カルシウム剤全量に対して、炭酸カルシウムを64.4〜67.6質量%及び炭酸マグネシウムを3〜10質量%含む、チュアブル錠の形態である、カルシウム剤。
【請求項3】
炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを包含し、さらに崩壊剤及び有機酸を含むことを特徴とするカルシウム剤であって、カルシウム剤全量に対して、炭酸カルシウムを64.4〜67.6質量%及び炭酸マグネシウムを3〜10質量%含む、チュアブル錠の形態である、カルシウム剤。
【請求項4】
崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はクロスポビドンである請求項1又は3に記載のカルシウム剤。
【請求項5】
有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2〜4のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項6】
有機酸が、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2〜5のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項7】
炭酸マグネシウムを、カルシウム剤全量に対して、5〜5.25質量%含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項8】
カルシウム剤に含まれる炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの割合が、6100:473.6である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項9】
崩壊剤を、カルシウム剤全量に対して0.2〜20質量%含む請求項1及び3〜8のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項10】
有機酸を、カルシウム剤全量に対して0.03〜20質量%含む請求項2〜9のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項11】
カルシウム剤全量に対して、崩壊剤を0.5〜10質量%、有機酸を0.03〜5質量%含む請求項1及び3〜10のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項12】
食品として使用される、請求項1〜11のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項13】
医薬品として使用される請求項1〜11のいずれか1項に記載のカルシウム剤。
【請求項14】
医薬品が、天然型ビタミンD3との配合剤である請求項13に記載のカルシウム剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム剤であって、中でもカルシウム塩及びマグネシウム塩と崩壊剤及び/又は有機酸等を含み、風味や口中内での崩壊性等が優れたチュアブル錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは、生体に必須のミネラルであり、カルシウムを補うためにカルシウムを含む医薬品、健康食品、栄養補助食品等、種々のものが市販されている(特許文献1、2)。
従来の市販品では、例えば、妊娠・授乳期の女性のカルシウム補給、骨粗鬆症やカルシウム不足によるイライラの解消のためのカルシウム補強、発育期の子供のカルシウム補強等のための服用が多くなされてきた。
【0003】
一方、さらなる高齢化社会を迎える中で、骨粗鬆症等の予防のために、高齢者のカルシウムの摂取が従来以上に必要となってきている。高齢者がカルシウムを服用し易いよう、医薬品、食品業界では錠剤やカプセル等での服用方法を広く採用してきた。しかし、高齢になるにつれて嚥下が困難となる、服用錠数も多くなりがちである等の問題が発生し得るため、カプセル等よりもチュアブル錠といったかみ砕き錠にすることで、高齢者でも服用しやすいよう工夫がなされてきた。ただし、チュアブル錠であっても、カルシウム剤は有効成分である炭酸カルシウム等による粉っぽい服用感や、かみ砕く力が弱い人は服用しにくいといった面があるため、継続服用時の風味と口中内での崩壊性に問題が存在している。また、保管管理の面では錠剤の形状が好ましく、錠剤として必要な硬度を保ちつつ、前記問題を解決することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−059486号公報
【特許文献2】特開2010−187595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、風味と口中内での崩壊性等に優れ、服用しやすいカルシウム剤(チュアブル錠)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究をおこなった結果、カルシウム塩とマグネシウム塩を含有し、さらに、特定の種類の崩壊剤を配合したカルシウム剤、有機酸を配合したカルシウム剤、又は崩壊剤と有機酸とを配合したカルシウム剤において、風味及び崩壊性等が飛躍的に向上していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記のとおりである:
[1]カルシウム塩及びマグネシウム塩を含有し、さらに崩壊剤を含むことを特徴とするカルシウム剤。
[2]カルシウム塩及びマグネシウム塩を含有し、さらに有機酸を含むことを特徴とするカルシウム剤。
[3]カルシウム塩及びマグネシウム塩を含有し、さらに崩壊剤及び有機酸を含むことを特徴とするカルシウム剤。
[4]崩壊剤が、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、カンテン末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、デキストリン、トラガント末、乳糖水和物、ヒドロキシプロピルスターチ、D-マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び崩壊用精製寒天からなる群から選択される少なくとも1種である[1]又は[3]に記載のカルシウム剤。
[5]崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はクロスポビドンである、[1]又は[3]に記載のカルシウム剤。
[6]有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸及びアスコルビン酸からなる群から選択される少なくとも1種である[2]又は[3]に記載のカルシウム剤。
[7]有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1種である[2]又は[3]に記載のカルシウム剤。
[8]カルシウム塩が、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム2水塩、リン酸2水素カルシウム1水塩、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、L−アスパラギン酸カルシウム、ドロマイト、ボレイ末及び精製牛骨粉からなる群から選択される少なくとも1種である[1]〜[7]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[9]カルシウム塩が、炭酸カルシウムである、[1]〜[8]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[10]マグネシウム塩が、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及び有機酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である[1]〜[9]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[11]マグネシウム塩が、炭酸マグネシウムである[1]〜[10]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[12]カルシウム塩を、カルシウム剤全量に対して、10〜90質量%含む[1]〜[11]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[13]マグネシウム塩を、カルシウム剤全量に対して、1〜20質量%含む、[1]〜[12]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[14]崩壊剤を、カルシウム剤全量に対して0.1〜30質量%含む[1]、[3]〜[5]、[8]〜[11]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[15]有機酸を、カルシウム剤全量に対して0.01〜50質量%含む[2]、[3]、[6]〜[11]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[16]カルシウム剤全量に対して、崩壊剤を0.5〜10質量%、有機酸を0.03〜5質量%含む[1]、[3]〜[11]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[17]カルシウム剤が、チュアブル錠である、[1]〜[16]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[18]医薬品又は食品として使用される、[1]〜[17]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[19]医薬品として使用される[1]〜[17]のいずれかに記載のカルシウム剤。
[20]医薬品が、天然型ビタミンD3との配合剤である[19]に記載のカルシウム剤。
[21]崩壊時間が15分以内であるカルシウム塩及びマグネシウム塩を含むチュアブル錠。
[22]硬度が2〜20kpである[21]に記載のチュアブル錠。
[23]以下の(A)および(B)を含むチュアブル錠:
(A)カルシウム塩及びマグネシウム塩を含む顆粒;
(B)崩壊剤および有機酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む打錠助剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、風味と口中内での崩壊性等がより優れたカルシウム剤を提供することで、高齢者であってもカルシウム剤の服用がしやすくなり、継続的な服用におけるコンプライアンス向上を得ることができる。また、服用しやすくなることで、小児であっても継続的なカルシウム剤の服用が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の詳細を説明する。本発明は、カルシウム塩及びマグネシウム塩と崩壊剤、カルシウム塩及びマグネシウム塩と有機酸、又はカルシウム塩及びマグネシウム塩並びに崩壊剤及び有機酸を含むカルシウム剤を提供する。
【0010】
本発明のカルシウム剤とは、カルシウムとマグネシウムとを含有するものであり、骨粗鬆症、発育期、妊娠・授乳期等におけるカルシウムの補給、カルシウム/天然型ビタミンD3/マグネシウム配合剤であるRANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え))の投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防、等の用途を有する。
【0011】
本発明で使用するカルシウム塩は、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム2水塩、リン酸2水素カルシウム1水塩、グリセロリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、L−アスパラギン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、水溶性カルシウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。また、別の態様としては、カルシウム−EDTA、ドロマイト、ボレイ末、精製牛骨粉のようなカルシウム塩を含むカルシウム複合体等も挙げられる。
なかでも、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム2水塩等が好ましい。
より好ましくは、炭酸カルシウムである。炭酸カルシウムとしては、カルサイト、アラゴナイト、バテライト等の各種多形や非晶質(アモルファス)も使用することができる。より好ましくは、沈降炭酸カルシウムである。
【0012】
本発明のカルシウム剤中のカルシウム塩の含有量は、カルシウム剤全量に対して10〜90質量%、好ましくは20〜85質量%、特に好ましくは30〜80質量%である。
【0013】
本発明で使用するマグネシウム塩は、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、有機酸マグネシウム(乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
好ましくは、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、より好ましくは炭酸マグネシウムが挙げられる。
マグネシウムは主に骨の表面近くにマグネシウムイオンとして保存され、代謝が不足した場合にはカルシウムイオンと置き換わり、マグネシウムが体内に補充される等、マグネシウムはカルシウムの代謝に関与する。
【0014】
本発明のカルシウム剤中のマグネシウム塩の含有量は、カルシウム剤全量に対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0015】
本発明で使用される崩壊剤には、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、含水二酸化ケイ素、カンテン末、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロース、デキストリン、トラガント末、乳糖水和物、D−マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、崩壊用精製寒天等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、日本薬局方に収載されている低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム等である。より好ましくは、L-HPC、クロスポビドンが挙げられる。これらは、市販品を適宜使用することができる。
【0016】
本発明のカルシウム剤中の崩壊剤の含有量は、カルシウム剤全量に対して、0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜20質量%、特に好ましくは0.3〜10質量%である。
【0017】
本発明で使用する有機酸は、炭素数6以下のモノカルボン酸、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、DL-リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、アスコルビン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。またこれらの1種以上の混合物でもよい。好ましくは、リンゴ酸、DL-リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸等であり、より好ましくは、リンゴ酸、DL-リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、クエン酸であり、特に好ましくは、DL-リンゴ酸、クエン酸である。
【0018】
本発明のカルシウム剤中の有機酸の含有量は、カルシウム剤全量に対して、0.01〜50質量%、好ましくは0.02〜30質量%、特に好ましくは0.03〜20質量%である。
【0019】
本発明のカルシウム剤の投与量、投与回数は、対象の年齢、体重、健康状態、性別、治療を行っている場合には病状の程度若しくは服用している薬物の組み合わせ、又はその他の要因に応じて決定することができる。例えば、1日あたり、10〜150mg/kg(体重)程度、好ましくは約20〜100mg/kg(体重)程度、より好ましくは30〜60mg/kg(体重)を1〜4回、より好ましくは、1〜2回に分けて服用することができる。
より具体的には、1日あたり、カルシウムとして1〜20mg/kg(体重)、好ましくは5〜15mg/kg(体重)、およびマグネシウムとして0.05〜1mg/kg(体重)、好ましくは0.25〜0.75mg/kg(体重)を服用することができる。
【0020】
本発明のカルシウム剤は、後述の他の成分、例えば、ミネラル、ビタミン等の栄養素、薬剤や添加物を含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
ミネラルとしては、亜鉛、セレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
ビタミン類としては、ビタミンB(B1、B2、B3、B5、B6等)、ビタミンC、ビタミンD(D2、D3、D4、D5等)、ビタミンK等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ビタミンDであり、より好ましくはビタミンD3(コレカルシフェロール)である。ビタミン類は、市販品を使用することができ、例えば、ビタミンD3は市販品(理研ドライD3-B5N-GP等)を使用することができる。また、天然、合成を問わない。好ましくは、天然ビタミン類である。
【0023】
添加物としては、賦形剤、結合剤、着色剤、矯味剤、滑沢剤等が挙げられるが、これらに限定されない。また、食品に一般的に使用される保存料、発色剤、香料、安定化剤、酸味料等を添加することもできる。例えば、エチルバニリン、バニリン、グリセリン脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。また、これら添加剤は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0024】
賦形剤としては、マルチトール、マルトール、エリスリトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、精製白糖、白糖、果糖、ブドウ糖、粉末還元麦芽糖水アメ、乳糖等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、マクロゴール、アラビアゴム、アラビアゴム末、ゼラチン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
着色剤としては、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などから選ばれる1または2以上の成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
矯味剤としては、甘味剤、清涼化剤、香料等として用いられるものであればよい。例えば、ヨーグルトフレーバー、バニラフレーバー、アスパルテーム、アマチャ末、サッカリン、カラメル、ケイヒ末、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、ハッカ油、オレンジ油、レモン油、パイン油、1−メントール、フルーツフレーバー、チョコレートフレーバーなどが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくは、ヨーグルトフレーバーが挙げられる。
【0028】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくはステアリン酸マグネシウム、タルクである。
【0029】
本発明のカルシウム剤は、薬物と併用して服用することもできる。薬物は、対象の健康状態、性別、病状の程度等に応じて、適宜決定することができる。薬物としては、例えば、ビタミン剤、RANKL阻害剤(デノスマブ等)、クエン酸剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明のカルシウム剤の剤形としては、錠剤、チュアブル錠等の形状が挙げられるが、チュアブル錠が好ましい。
【0031】
本発明のカルシウム剤は、口中での崩壊性に優れており、例えば、0.5〜30分、好ましくは、数分(例えば1〜2分)で崩壊することができ、一態様として、本発明のカルシウム剤のチュアブル錠では、15分以内、好ましくは、10分以内、より好ましくは2分以内で崩壊することができる。
上記崩壊時間は、第16改正日本薬局方の崩壊試験法の即放性製剤の操作方法に従い測定することができる。
【0032】
本発明のカルシウム剤をチュアブル錠にした場合の硬度は、保管管理上2〜20kp、好ましくは3〜15kp、より好ましくは、4〜10kpである。硬度は、通常用いられる錠剤の硬度測定装置、例えばSchleuniger社製錠剤硬度計によって測定される。このような所望の硬度は、打錠時の圧縮圧力や成分の調製により得ることができる。このような硬度の範囲よりも低いと製造、包装、流通過程等で破損が起こりやすくなる傾向があり、高いと噛み砕きにくくなる傾向がある。
【0033】
本発明における錠剤は、一般的な造粒法を用いて得ることができる。すなわち、上述のカルシウム塩、賦形剤、必要に応じて他の添加剤を十分混合した後、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、又は前記低級アルコールを含んでいてもよい水を用いて造粒し、乾燥、必要に応じて分粒した後、打錠機により打錠して錠剤化する。あるいは、直打法により混合粉末を打錠し、錠剤化することもできる。一例として後述の実施例に記載するが、当該方法に限定されない。
【0034】
造粒に使用される装置としては、例えば、バーチカルグラニュレーター、ハイシェアミキサー、ハイスピードミキサー、プラネタリーミキサー等が挙げられるが当該装置に限定されない。
【0035】
本発明の別の態様として、以下の(A)および(B)を含むチュアブル錠が挙げられる:
(A)カルシウム塩及びマグネシウム塩を含む顆粒;
(B)崩壊剤または有機酸またはそれらの混合物を含む打錠助剤。
上記(A)カルシウム塩及びマグネシウム塩の具体例は上述と同じであり、チュアブル錠中の含量も上記定義と同じである。
本明細書中、「打錠助剤」とは、チュアブル錠の製造において、打錠工程の前に、(A)の顆粒と混合される成分のことを意味する。(B)の打錠助剤は、上述した特定の崩壊剤および有機酸をそれぞれ1または2種以上含んでいてもよい。
打錠助剤(B)は、製剤分野において慣用の添加剤を含む。該添加剤としては、例えば、前述のさらなる添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、特に述べない限り、製剤分野において慣用の量が用いられる。また、打錠助剤(B)は、これらの添加剤の2種以上を、適宜の割合で含んでもよい。
【0036】
本発明のチュアブル錠中の打錠助剤(B)に含まれる崩壊剤の含有量は、チュアブル錠全量に対して、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.3〜10質量%である。
【0037】
本発明のチュアブル錠中の打錠助剤(B)に含まれる有機酸の含有量は、チュアブル錠全量に対して、通常0.01〜50質量%、好ましくは0.02〜30質量%、より好ましくは0.03〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%、最も好ましくは0.3〜5質量%である。
【0038】
本発明のチュアブル錠の重量は特に限定されないが、1錠あたり200〜2000mg、好ましくは300〜1500mgである。
【0039】
本発明におけるチュアブル錠の好適な具体例としては、以下が挙げられる。
以下の(a)および(b)を含むチュアブル錠:
(a)カルシウム塩(好ましくは炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム2水塩)及びマグネシウム塩(好ましくは炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム);賦形剤(好ましくは、白糖、ゼラチン、ソルビトール、マンニトール)、および結合剤(好ましくは、ポリビニルピロリドン);ならびに、必要に応じて安定化剤(好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル)、乳化剤(好ましくは、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ラウリン酸ソルビタン)からなる、顆粒;
(b)崩壊剤(好ましくは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、またはその混合物)、有機酸(好ましくは、リンゴ酸、DL-リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸またはその混合物)および滑沢剤(好ましくは、ステアリン酸マグネシウム)からなる、打錠助剤。
【0040】
好適な具体例として、チュアブル錠剤(A)は、以下の製造工程にしたがって製造することができる。
【0041】
(1)顆粒(A)は、例えば、カルシウム塩とマグネシウム塩を、添加剤と共に混合し、この混合物を造粒することによって製造することができる。より具体的には、結合剤の溶媒分散液を添加して造粒する。次いで生成物を乾燥し、得られた造粒物を解砕して整粒末を得る。
(2)該整粒末に、打錠助剤(B)を加え、混合して打錠用顆粒とする。
(3)この顆粒を打錠機で打錠して裸錠を得る。
【0042】
本発明のカルシウム剤は、医薬品(医療用医薬品又は一般用医薬品)、食品等に適用することができる。
【0043】
医薬品としては、上述のように骨粗鬆症、発育期、妊娠・授乳期等におけるカルシウムの補給等の用途、さらに、カルシウム/天然型ビタミンD3/マグネシウム配合剤(RANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え)等が挙げられるが、これらに限定されない)投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防)等の用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
食品としては、例えば、健康食品、栄養補助食品(サプリメント)、特定保健用食品等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
参考例
沈降炭酸カルシウム6,100g、炭酸マグネシウム473.6g、白糖末1,885.2gをハイスピードミキサー(アーステクニカ製 FS-GS-25)を用いて混合後、フローコーター(フロイント産業製 FlO-5A)を用いてポリビニルピロリドン184gを精製水1,042gに溶かした液を添加しながら造粒・乾燥し、パワーミル(昭和化学機械製 P-3S)及び円型振動篩(徳寿工作所製 TM-40-2S)を用いて整粒し、整粒末とした。整粒末864.28g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,127mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.37kpであった。
【実施例1】
【0047】
崩壊剤を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース18.4g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,150mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.81kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例2】
【0048】
崩壊剤を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース46g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,185mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.15kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例3】
【0049】
崩壊剤を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと崩壊剤としてクロスポビドン46g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,185mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.16kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例4】
【0050】
有機酸を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと有機酸としてDL-リンゴ酸18.4g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,150mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均8.36kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例5】
【0051】
有機酸を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと有機酸としてDL-リンゴ酸46g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,185mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.5kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例6】
【0052】
有機酸を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと有機酸として酒石酸18.4g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,150mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.81kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例7】
【0053】
有機酸を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと有機酸としてコハク酸18.4g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,150mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.09kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例8】
【0054】
有機酸を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと有機酸としてフマル酸18.4g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,150mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均7.15kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例9】
【0055】
崩壊剤と有機酸を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと崩壊剤としてクロスポビドン18.4g、有機酸としてリンゴ酸18.4g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,173mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均8.83kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【実施例10】
【0056】
崩壊剤と有機酸を加えた場合
参考例で調製した整粒末864.28gと崩壊剤としてクロスポビドン18.4g、有機酸としてクエン酸18.4g、ビタミンD3(理研)32g、ステアリン酸マグネシウム4.4g、ヨーグルト香料1.15gを加えて混合し、ロータリー式打錠機(畑鐵工所製 HT-AP15SS-II型)で圧縮し、1錠1,173mgの錠剤を製した。錠剤硬度は平均8.4kpであり、錠剤(チュアブル錠)として十分な硬度が得られた。
【0057】
実験例1
参考例および実施例1〜10で製した錠剤について、第16改正日本薬局方 一般試験法 崩壊試験法の即放性製剤の操作方法に従い崩壊試験を行った。試験液は水を用いた。補助盤は使用しない。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
参考例と比べて、崩壊剤を加えた実施例1〜3において崩壊時間が大幅に短縮された。また有機酸を加えた実施例4〜8においても参考例よりも崩壊時間が大幅に短縮された。特に、崩壊剤と有機酸を加えた実施例については崩壊時間が2分程度であり、非常に短い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、カルシウム塩及びマグネシウム塩を有効成分とするカルシウム剤において、カルシウム塩の粉っぽさや、かむ力が弱い高齢者等に対する服用の改善等の課題に対して、崩壊剤、有機酸等を加えることで服用感のみならず、崩壊性も向上し、より口溶けのよいカルシウム剤になることを明らかにした。本発明により、カルシウム剤を服用する対象のコンプライアンスを向上させることが可能となる。本発明のカルシウム剤は、医薬品、食品等様々な分野への適用が可能であり、本発明は産業上極めて有用である。
【0061】
本出願は、日本で出願された特願2013-166857および特願2013-189790を基礎としており、それらの内容は本明細書に全て包含されるものである。