特許第6554039号(P6554039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554039
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】パワーアシストスーツ
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20190722BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B25J11/00 Z
   A61H3/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-11601(P2016-11601)
(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-131971(P2017-131971A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕久
(72)【発明者】
【氏名】村田 直史
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−47662(JP,A)
【文献】 特開2015−66662(JP,A)
【文献】 特開2015−144787(JP,A)
【文献】 特開2015−77354(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0266323(US,A1)
【文献】 特開昭62−195513(JP,A)
【文献】 特開平1−289688(JP,A)
【文献】 特開2012−137421(JP,A)
【文献】 村田 直史,平井 裕久,大西 献,田村 佳宏,小堀 周平,風岡 尚樹,重作業向けパワーアシストスーツの開発−ロボットのパワーと人の器用さの両立−,三菱重工技報,日本,2016年,Vol.53 No.4(2016),第87-93頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰装着部及び前記腰装着部と相対移動可能に連結される大腿装着部を含む腰パーツを有する下肢部パーツと、
前記下肢部パーツの前記腰装着部と連結される上肢部パーツと、
前記腰パーツに設けられ、前記腰装着部と前記大腿装着部とを相対移動させるための動力を発生する駆動モータと、
前記上肢部パーツに作用する荷重を検出する荷重検出器と、
前記荷重検出器の検出値と、前記駆動モータと前記荷重検出器との距離とに基づいて、前記上肢部パーツに作用するモーメントをキャンセルするように前記駆動モータを制御する制御装置と、
を備えるパワーアシストスーツ。
【請求項2】
前記荷重検出器は、上下方向の荷重である上下荷重と、前後方向の荷重である前後荷重とを検出し、
前記距離は、上下方向の前記駆動モータの回転軸と前記荷重検出器との距離である上下距離と、前後方向の前記駆動モータの回転軸と前記荷重検出器との距離である前後距離とを含み、
前記制御装置は、前記上下荷重と前記前後距離との積と、前記前後荷重と前記上下距離との積とを算出して、前記駆動モータの出力値を決定する、
請求項1に記載のパワーアシストスーツ。
【請求項3】
前記下肢部パーツは、右脚の足裏に作用する荷重を検出する第1足センサ部と、左脚の足裏に作用する荷重を検出する第2足センサ部とを有し、
前記大腿装着部は、右脚の大腿に装着される第1大腿装着部と、左脚の大腿に装着される第2大腿装着部とを含み、
前記駆動モータは、前記腰装着部と前記第1大腿装着部とを相対移動させるための動力を発生する第1駆動モータと、前記腰装着部と前記第2大腿装着部とを相対移動させるための動力を発生する第2駆動モータとを含み、
前記制御装置は、前記第1足センサ部の検出値と前記第2足センサ部の検出値とに基づいて、前記第1駆動モータ及び前記第2駆動モータを制御する、
請求項1又は請求項2に記載のパワーアシストスーツ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1足センサ部の検出値及び前記第2足センサ部の検出値に基づいて、右脚の足裏に作用する荷重と左脚の足裏に作用する荷重との比率を算出して、前記第1駆動モータの出力値及び前記第2駆動モータの出力値を決定する、
請求項3に記載のパワーアシストスーツ。
【請求項5】
前記上肢部パーツは前記下肢部パーツに着脱可能であり、
前記荷重検出器は、前記腰装着部に設けられる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーアシストスーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーアシストスーツに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているようなパワーアシストスーツが提案されている。パワーアシストスーツは、使用者に装着され、その使用者の筋力を補助する。パワーアシストスーツにより、例えば重い荷物を持ち上げるときの使用者の肉体的負担が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−047662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーアシストスーツを装着した使用者が重い荷物を持ち上げる場合、パワーアシストスーツの上肢部パーツが荷物の重みで傾いてしまう可能性がある。上肢部パーツが傾いてしまう場合、使用者は、自身の姿勢を維持するために、腹筋又は背筋等の自身の筋力を使う必要がある。その結果、使用者の肉体的負担が十分に軽減されない可能性がある。
【0005】
本発明は、作業性を損なわずに使用者の肉体的負担を軽減できるパワーアシストスーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、腰装着部及び前記腰装着部と相対移動可能に連結される大腿装着部を含む腰パーツを有する下肢部パーツと、前記下肢部パーツの前記腰装着部と連結される上肢部パーツと、前記腰パーツに設けられ、前記腰装着部と前記大腿装着部とを相対移動させるための動力を発生する駆動モータと、前記上肢部パーツに作用する荷重を検出する荷重検出器と、前記荷重検出器の検出値と、前記駆動モータと前記荷重検出器との距離とに基づいて、前記上肢部パーツに作用するモーメントをキャンセルするように前記駆動モータを制御する制御装置と、を備えるパワーアシストスーツを提供する。
【0007】
本発明によれば、パワーアシストスーツを装着した使用者が荷物を持ち上げると、上肢部パーツに作用する荷重は荷重検出器に検出される。制御装置は、荷重検出器の検出値と、駆動モータと荷重検出器との距離とに基づいて、上肢部パーツに作用するモーメントを算出し、そのモーメントをキャンセルするように駆動モータを制御する。駆動モータと荷重検出器との距離は既知データであり、制御装置は、荷重検出器の検出値と既知データである距離とに基づいてモーメントをキャンセルするための駆動モータの出力値を自動的に算出する。駆動モータは、モーメントをキャンセルするように、使用者の腰に装着されている腰装着部と使用者の大腿に装着されている大腿装着部とを相対移動させるための動力を発生する。これにより、荷物の持ち上げ動作において上肢部パーツが傾いてしまうことが抑制される。したがって、作業性を損なわずに使用者の肉体的負担が軽減される。
【0008】
本発明において、前記荷重検出器は、上下方向の荷重である上下荷重と、前後方向の荷重である前後荷重とを検出し、前記距離は、上下方向の前記駆動モータの回転軸と前記荷重検出器との距離である上下距離と、前後方向の前記駆動モータの回転軸と前記荷重検出器との距離である前後距離とを含み、前記制御装置は、前記上下荷重と前記前後距離との積と、前記前後荷重と前記上下距離との積とを算出して、前記駆動モータの出力値を決定することが好ましい。
【0009】
上下荷重と前後距離との積により、上下荷重に基づいて上肢部パーツに作用するモーメントをキャンセルするための駆動モータの出力値が決定される。前後荷重と上下距離との積により、前後荷重に基づいて上肢部パーツに作用するモーメントをキャンセルするための駆動モータの出力値が決定される。したがって、制御装置は、上下荷重に基づいて上肢部パーツに作用するモーメント、及び前後荷重に基づいて上肢部パーツに作用するモーメントの両方をキャンセルするための駆動モータの出力値を決定することができる。これにより、上肢部パーツが前後方向に傾いてしまうことが十分に抑制される。
【0010】
本発明において、前記下肢部パーツは、右脚の足裏に作用する荷重を検出する第1足センサ部と、左脚の足裏に作用する荷重を検出する第2足センサ部とを有し、前記大腿装着部は、右脚の大腿に装着される第1大腿装着部と、左脚の大腿に装着される第2大腿装着部とを含み、前記駆動モータは、前記腰装着部と前記第1大腿装着部とを相対移動させるための動力を発生する第1駆動モータと、前記腰装着部と前記第2大腿装着部とを相対移動させるための動力を発生する第2駆動モータとを含み、前記制御装置は、前記第1足センサ部の検出値と前記第2足センサ部の検出値とに基づいて、前記第1駆動モータ及び前記第2駆動モータを制御することが好ましい。
【0011】
制御装置は、第1足センサ部の検出値と第2足センサ部の検出値とに基づいて、床面を踏みしめている状態の使用者の両脚に作用する荷重を検出することができる。制御装置は、第1足センサ部及び第2足センサ部を使って検出された使用者の両脚に作用する荷重に基づいて、使用者の両側に設けられている第1駆動モータ及び第2駆動モータを制御する。したがって、使用者は、左右方向の姿勢を維持しつつ、荷物を持ち上げることができる。
【0012】
本発明において、前記制御装置は、前記第1足センサ部の検出値及び前記第2足センサ部の検出値に基づいて、右脚の足裏に作用する荷重と左脚の足裏に作用する荷重との比率を算出して、前記第1駆動モータの出力値及び前記第2駆動モータの出力値を決定することが好ましい。
【0013】
制御装置は、第1足センサ部の検出値と第2足センサ部の検出値とに基づいて、右脚の足裏に作用する荷重と左脚の足裏に作用する荷重との比率を算出することにより、床面を踏みしめている状態の使用者の姿勢の左右方向のバランスを検出することができる。制御装置は、第1足センサ部及び第2足センサ部を使って検出された使用者の左右方向のバランスに基づいて、使用者の両側に設けられている第1駆動モータの出力値及び第2駆動モータの出力値を制御する。したがって、使用者は、左右方向のバランスを崩さずに、荷物を持ち上げることができる。
【0014】
本発明において、前記上肢部パーツは前記下肢部パーツに着脱可能であり、前記荷重検出器は、前記腰装着部に設けられることが好ましい。
【0015】
荷重検出器が下肢部パーツの腰装着部に設けられることにより、上肢部パーツが交換されても、その上肢部パーツに作用する荷重が検出される。また、上肢部パーツは下肢部パーツに着脱可能なので、作業の種類に応じて最適な機能を有する上肢部パーツを選択して下肢部パーツに連結することができる。そのため、多種多様な作業に対応可能であり、拡張性及び保守性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業性を損なわずに使用者の肉体的負担を軽減できるパワーアシストスーツが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係るパワーアシストスーツの一例を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るパワーアシストスーツが使用者に装着された状態を示す正面図である。
図3図3は、本実施形態に係るパワーアシストスーツが使用者に装着された状態を示す側面図である。
図4図4は、本実施形態に係るパワーアシストスーツの下肢部パーツを示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係るパワーアシストスーツの上肢部パーツを示す斜視図である。
図6図6は、本実施形態に係る上肢部パーツを示す正面図である。
図7図7は、本実施形態に係る上肢部パーツを示す平面図である。
図8図8は、本実施形態に係る下肢部パーツと上肢部パーツとの連結部を模式的に示す拡大図である。
図9図9は、本実施形態に係るパワーアシストスーツの制御ブロック図である。
図10図10は、本実施形態に係るパワーアシストスーツの制御方法の一例を説明するための模式図である。
図11図11は、本実施形態に係るパワーアシストスーツの制御方法の一例を説明するための模式図である。
図12図12は、本実施形態に係るパワーアシストスーツの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0019】
図1は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10の一例を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10が使用者に装着された状態を示す正面図である。図3は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10が使用者に装着された状態を示す側面図である。図4は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10の下肢部パーツ11を示す斜視図である。図5は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10の上肢部パーツ12を示す斜視図である。図6は、本実施形態に係る上肢部パーツ12を示す正面図である。図7は、本実施形態に係る上肢部パーツ12を示す平面図である。図8は、本実施形態に係る下肢部パーツ11と上肢部パーツ12との連結部を模式的に示す拡大図である。
【0020】
図1図2、及び図3に示すように、パワーアシストスーツ10は、使用者の下肢に装着される下肢部パーツ11と、下肢部パーツ11と連結され、使用者の上肢に装着される上肢部パーツ12と、下肢部パーツ11を制御する下肢制御装置16と、電力を供給するバッテリ17と、上肢部パーツ12を制御する上肢制御装置18とを備える。
【0021】
下肢部パーツ11は、使用者の腰に装着される腰パーツ13と、使用者の肩に装着される肩パーツ14と、使用者の脚に装着される脚パーツ15A,15Bとを有する。脚パーツ15Aは、使用者の左脚に装着される。脚パーツ15Bは、使用者の右脚に装着される。
【0022】
脚パーツ15A,15Bは、腰パーツ13の下部と相対移動可能に連結される。腰パーツ13は、肩パーツ14の下部と連結される。上肢部パーツ12は、下肢部パーツ11の腰パーツ13と連結される。
【0023】
図8に示すように、腰パーツ13は、第1連結部24を有する。上肢部パーツ12は、第2連結部51を有する。第1連結部24と第2連結部51とが連結されることによって、下肢部パーツ11の腰パーツ13と上肢部パーツ12とが連結される。
【0024】
図1図2図3、及び図4に示すように、腰パーツ13は、使用者の腰に装着される腰装着部21と、使用者の大腿に装着される大腿装着部41A,41Bと、腰装着部21と大腿装着部41A,41Bとを相対移動可能に連結する大腿駆動機構22A,22Bと、大腿駆動機構22A,22Bを制御する大腿制御部23A,23Bとを有する。下肢制御装置16は、腰装着部21に支持される。バッテリ17は、腰装着部21に支持される。
【0025】
腰装着部21は、使用者の腰の周囲に配置される。腰装着部21が使用者の腰に装着された状態で、下肢制御装置16及びバッテリ17は、使用者の背中側に配置される。第1連結部24は、腰装着部21の背面側に配置される。
【0026】
大腿装着部41Aは、使用者の左脚の大腿に装着される。大腿装着部41Bは、使用者の右脚の大腿に装着される。大腿駆動機構22Aは、使用者の左脚の側部に配置される。大腿駆動機構22Bは、使用者の右脚の側部に配置される。
【0027】
大腿装着部41A,41Bは、腰装着部21よりも下方に配置される。大腿装着部41A,41Bは、大腿駆動機構22A,22Bを介して、腰装着部21と相対移動可能に連結される。大腿駆動機構22A,22Bの一部は腰装着部21に設けられ、大腿駆動機構22A,22Bの一部は大腿装着部41A,41Bに設けられる。本実施形態において、腰装着部21と大腿装着部41A,41Bとは、回転軸AXを中心に相対回転する。
【0028】
大腿駆動機構22Aは、使用者の左脚の大腿を駆動する。大腿駆動機構22Bは、使用者の右脚の大腿を駆動する。大腿駆動機構22Aは、腰装着部21と大腿装着部41Aとを相対移動させるための動力を発生する駆動モータ81Aを有する。大腿駆動機構22Bは、腰装着部21と大腿装着部41Bとを相対移動させるための動力を発生する駆動モータ81Bを有する。駆動モータ81Aが作動することにより、腰装着部21と大腿装着部41Aとが回転軸AXを中心に相対回転し、大腿装着部41Aが装着された使用者の左脚の大腿が駆動される。これにより、左脚の大腿の筋力が補助される。駆動モータ81Bが作動することにより、腰装着部21と大腿装着部41Bとが回転軸AXを中心に相対回転し、大腿装着部41Bが装着された使用者の右脚の大腿が駆動される。これにより、右脚の大腿の筋力が補助される。
【0029】
大腿制御部23Aは、大腿駆動機構22Aに接続され、大腿駆動機構22Aを制御する。大腿制御部23Bは、大腿駆動機構22Bに接続され、大腿駆動機構22Bを制御する。大腿制御部23A,23Bは、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを含み、大腿駆動機構22A,22Bを制御する制御信号を出力する。
【0030】
大腿駆動機構22A,22Bの駆動モータ81A,81B及び大腿制御部23A,23Bは、バッテリ17から供給される電力によって作動する。
【0031】
肩パーツ14は、使用者の背中に装着される背装着部31と、使用者の左肩に装着される左肩装着部32Aと、使用者の右肩に装着される右肩装着部32Bとを有する。左肩装着部32A及び右肩装着部32Bは、背装着部31に支持される。背装着部31は、腰パーツ13の腰装着部21と連結される。
【0032】
脚パーツ15Aは、使用者の左脚の少なくとも一部に装着される。脚パーツ15Aは、大腿装着部41Aと相対移動可能に連結される下腿装着部42Aと、下腿装着部42Aと相対移動可能に連結される足装着部43Aと、下腿駆動機構44Aと、脚制御部45Aと、足センサ部46Aとを有する。
【0033】
大腿装着部41Aは、使用者の左脚の大腿に装着される。下腿装着部42Aは、使用者の左脚の下腿に装着される。足装着部43Aは、使用者の左足部(足首から下の部分)に装着される靴部である。大腿装着部41Aの一端部は、腰パーツ13の腰装着部21と回転可能に連結される。下腿装着部42Aの一端部は、大腿装着部41Aの他端部と回転可能に連結される。下腿装着部42Aの他端部は、回動軸47Aを介して足装着部43Aと回転可能に連結される。
【0034】
大腿装着部41Aは、一端部側に図示しないクラッチを有し、そのクラッチを介して大腿駆動機構22Aと接続される。下腿装着部42Aは、一端部側にクラッチを有し、そのクラッチを介して下腿駆動機構44Aと接続される。
【0035】
下腿駆動機構44Aは、使用者の左脚の側部に配置され、大腿装着部41Aと下腿装着部42Aとを相対回転可能に連結する。下腿装着部42Aは、下腿駆動機構44Aを介して大腿装着部41Aと回転可能に連結される。下腿駆動機構44Aは、大腿装着部41Aと下腿装着部42Aとを相対回転させるための動力を発生する駆動モータ85Aを有する。下腿駆動機構44Aは、大腿装着部41Aに対して下腿装着部44Aを回転させることによって、左脚の下腿の筋力を補助する。
【0036】
脚制御部45Aは、下腿駆動機構44Aに支持される。脚制御部45Aは、下腿駆動機構44Aの上部に配置される。なお、脚制御部45Aは、下腿駆動機構44Aの下部に配置されてもよい。脚制御部45Aは、CPUのようなマイクロプロセッサを含み、下腿駆動機構44Aを制御する制御信号を出力する。
【0037】
足センサ部46Aは、左脚の足裏に作用する床面からの荷重を検出する。
【0038】
下腿駆動機構44Aの駆動モータ85A、脚制御部45A、及び足センサ部46Aは、バッテリ17から供給される電力によって作動する。
【0039】
脚パーツ15Bは、使用者の右脚の少なくとも一部に装着される。脚パーツ15Bは、大腿装着部41Bと相対移動可能に連結される下腿装着部42Bと、下腿装着部42Bと相対移動可能に連結される足装着部43Bと、下腿駆動機構44Bと、脚制御部45Bと、足センサ部46Bとを有する。
【0040】
大腿装着部41Bは、使用者の右脚の大腿に装着される。下腿装着部42Bは、使用者の右脚の下腿に装着される。足装着部43Bは、使用者の右足部(足首から下の部分)に装着される靴部である。大腿装着部41Bの一端部は、腰パーツ13の腰装着部21と回転可能に連結される。下腿装着部42Bの一端部は、大腿装着部41Bの他端部と回転可能に連結される。下腿装着部42Bの他端部は、回動軸47Bを介して足装着部43Bと回転可能に連結される。
【0041】
大腿装着部41Bは、一端部側に図示しないクラッチを有し、そのクラッチを介して大腿駆動機構22Bと接続される。下腿装着部42Bは、一端部側にクラッチを有し、そのクラッチを介して下腿駆動機構44Bと接続される。
【0042】
下腿駆動機構44Bは、使用者の右脚の側部に配置され、大腿装着部41Bと下腿装着部42Bとを相対回転可能に連結する。下腿装着部42Bは、下腿駆動機構44Bを介して大腿装着部41Bと回転可能に連結される。下腿駆動機構44Bは、大腿装着部41Bと下腿装着部42Bとを相対回転させるための動力を発生する駆動モータ85Bを有する。下腿駆動機構44Bは、大腿装着部41Bに対して下腿装着部44Bを回転させることによって、右脚の下腿の筋力を補助する。
【0043】
脚制御部45Bは、下腿駆動機構44Bに支持される。脚制御部45Bは、下腿駆動機構44Bの上部に配置される。なお、脚制御部45Bは、下腿駆動機構44Bの下部に配置されてもよい。脚制御部45Bは、CPUのようなマイクロプロセッサを含み、下腿駆動機構44Bを制御する制御信号を出力する。
【0044】
足センサ部46Bは、右脚の足裏に作用する床面からの荷重を検出する。
【0045】
下腿駆動機構44Bの駆動モータ85B、脚制御部45B、及び足センサ部46Bは、バッテリ17から供給される電力によって作動する。
【0046】
図1図2図3図5図6、及び図7に示すように、上肢部パーツ12は、下肢部パーツ11の腰パーツ13の腰装着部21と連結される。上肢部パーツ12は、腰装着部21と連結される支持部55と、支持部55に支持されるレール部52と、レール部52にガイドされて移動可能なアーム部53A,53Bと、上肢部駆動制御部54とを有する。上肢制御装置18は、上肢部パーツ12に支持される。上肢部パーツ12は、下肢部パーツ11に着脱可能である。なお、上肢部パーツ12は、下肢部パーツ11の背中部分と連結されてもよい。
【0047】
レール部52は、支持部55と一体で形成された支持板62と、支持板62に固定され上下方向に延在するガイドレール63とを有する。アーム部53Aは、使用者の左腕に対応し、アーム部53Bは、使用者の右腕に対応する。アーム部53A及びアーム部53Bは、基部64に支持される。基部64に支持されたアーム部53A,53Bは、水平なフォーク部を形成する。基部64はガイドレール63に移動可能に支持される。上肢部駆動制御部54は、基部64を上下方向に移動させるための動力を発生するアクチュエータと、そのアクチュエータに制御信号を出力する制御部とを含む。上肢部駆動制御部54は、基部64を上下方向に移動させることによって、アーム部53A,53Bをレール部52に沿って移動させる。
【0048】
支持部55は、腰装着部21に設けられた第1連結部24と連結される第2連結部51を有する。図8等に示すように、腰装着部21が使用者の腰に装着された状態で、第1連結部24は、使用者の後方を向く。第2連結部51は、第1連結部24と対向するように前方を向いた状態で第1連結部24と連結される。第1連結部24と第2連結部51とが対向した状態で、腰装着部21と支持部55とが複数のボルト61によって固定される。第1連結部24と第2連結部51とが連結され、腰装着部21と支持部55とが複数のボルト61によって固定されることにより、下肢部パーツ11の腰パーツ13と上肢部パーツ12の支持板62とが固定される。ボルト61による固定が解除されることにより、上肢部パーツ12は、腰パーツ13から外される。
【0049】
以下の説明において、回転軸AXと平行な方向を、左右方向、と称し、レール部52の延在方向であり左右方向と直交する方向を、上下方向、と称し、左右方向及び上下方向と直交する方向を、前後方向、と称する。
【0050】
腰装着部21に、上肢部パーツ12に作用する荷重を検出する荷重検出器73が設けられる。荷重検出器73は、上肢部パーツ12の第2連結部51と連結される腰パーツ13の第1連結部24に固定される。下肢部パーツ11の第1連結部24と上肢部パーツ12の第2連結部51とが連結された状態で、荷重検出器73は、第1連結部24と第2連結部51との間に配置される。
【0051】
荷重検出器73は、ロードセルである。ロードセルは、ひずみゲージを含み、腰装着部21に作用する引張力又は圧縮力を検出して電気信号に変換する。荷重検出器73は、電気信号を検出信号として下肢制御装置16に出力する。
【0052】
荷重検出器73は、上肢部パーツ12に作用する上下方向の荷重である上下荷重と、上肢部パーツ12に作用する前後方向の荷重である前後荷重とを検出する。上下荷重の検出値及び前後荷重の検出値を含む荷重検出器73の検出信号は、下肢制御装置16に送信される。
【0053】
次に、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10の制御系について説明する。図9は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10の制御ブロック図である。図9に示すように、下肢部パーツ11には、下肢制御装置16、バッテリ17、大腿制御部23A,23B、脚制御部45A,45B、及び足センサ部46A,46Bが搭載されている。上肢部パーツ12には、上肢制御装置18及び上肢部駆動制御部54が搭載されている。
【0054】
下肢制御装置16は、CPUのようなマイクロプロセッサを含む制御部71と、通信インターフェース74と、外部通信インターフェース75と、電源部76とを有する。下肢制御装置16には、ジャイロセンサ72及び荷重検出器73が接続される。
【0055】
ジャイロセンサ72は、パワーアシストスーツ10の向きを検出し、その検出信号を制御部71に出力する。
【0056】
荷重検出器73は、上肢部パーツ12に作用する荷重を検出し、その検出信号を制御部71に出力する。
【0057】
通信インターフェース74は、大腿制御部23A,23Bの通信インターフェース83、脚制御部45A,45Bの通信インターフェース、及び足センサ部46A,46Bの通信インターフェース88と通信可能である。外部通信インターフェース75は、外部制御装置77と通信可能である。電源部76は、バッテリ17に接続され、制御部71等に電力を供給する。
【0058】
制御部71は、電源部76から電力を供給され、ジャイロセンサ72から検出信号を供給され、荷重検出器73から検出信号を供給される。また、制御部71は、大腿制御部23A,23Bに制御信号を出力し、脚制御部45A,45Bに制御信号を出力する。また、制御部71は、外部制御装置77と通信して、各種機器のメンテナンスを行う。
【0059】
大腿制御部23Aは、CPUのようなマイクロプロセッサを含む制御部82と、通信インターフェース83と、電源部84とを有し、大腿駆動機構22Aの駆動モータ81Aを制御する。制御部82は、下肢制御装置16の制御部71から出力された制御信号を、通信インターフェース83を介して受信し、駆動モータ81Aを制御する。電源部84は、バッテリ17に接続され、制御部82などに電力を供給する。
【0060】
足センサ部46Aは、足装着部43Aに作用する荷重を検出する荷重センサ、足装着部43Aの角度を検出する角度センサ、及び足装着部43Aに作用する加速度を検出する加速度センサ等を含む各種のセンサ86と、CPUのようなマイクロプロセッサを含む制御部87と、通信インターフェース88と、電源部89とを有する。制御部87は、センサ86の検出信号を通信インターフェース88から下肢制御装置16の制御部71に出力する。電源部89は、バッテリ17に接続され、制御部87などに電力を供給する。
【0061】
上肢制御装置18は、CPUのようなマイクロプロセッサを含む制御部101と、通信インターフェース102と、電源部103とを有する。通信インターフェース102は、上肢部駆動制御部54と通信可能である。電源部103は、バッテリ17に接続され、制御部101などに電力を供給する。上肢部駆動制御部54は、アーム部53A,53Bの駆動モータ91と、CPUのようなマイクロプロセッサを含む制御部92と、電源部93と、操作スイッチ94を有する。制御部92は、上肢制御装置18の制御部101又は操作スイッチ94からの制御信号を受信し、駆動モータ91を制御する。電源部93は、バッテリ17に接続され、制御部92などに電力を供給する。
【0062】
下肢部パーツ11と上肢部パーツ12とは、機械的及び電気的に着脱可能に連結される。下肢部パーツ11は、電源ケーブルを介してバッテリ17と接続され、制御信号ケーブルを介して下肢制御装置16の制御部71と接続される第1コネクタ80を有する。上肢部パーツ12は、電源ケーブルを介して駆動モータ91及び電源部93と接続され、制御信号ケーブルを介して上肢制御装置18の制御部101と接続される第2コネクタ90を有する。第1コネクタ80と第2コネクタ90とは着脱可能に連結され、第1コネクタ80と第2コネクタ90とが連結されることによって、下肢部パーツ11と上肢部パーツ12とが電気的に連結される。
【0063】
なお、大腿制御部23Bは、大腿制御部23Aと実質的に同等の構成であり、脚制御部45Bは、脚制御部45Aと実質的に同等の構成であり、足センサ部46Bは、足センサ部46Aと同等の構成である。大腿制御部23B、脚制御部45B、及び足センサ部46Bについての説明は省略する。
【0064】
次に、パワーアシストスーツ10の使用方法の一例について説明する。使用者に対する腰パーツ13、肩パーツ14、及び脚パーツ15A,15Bの装着は、ラチェット式のロック装置を有する安全ベルトにより行い、安全ベルトにより腰回りと肩から腰への縦方向で固定する。パワーアシストスーツ10の装着時には、ハンガーにかけておき、まず足先に装着し、次にハンガーにかけてあるパワースーツに体を預けるようにして装着する。パワーアシストスーツ10の脱衣時には、基本的にその逆の手順だが、非常時は、解除ボタンを押してロック装置を解除する。
【0065】
制御部71を含む下肢制御装置16は、ジャイロセンサ72、荷重検出器73、及び足センサ部46A,46Bの検出信号に基づいて、大腿制御部23A,23B及び脚制御部45A,45Bに制御信号を出力する。制御部71は、検出した荷重に基づいて大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bによるアシスト力を設定して、大腿駆動機構22A,22Bの駆動モータ81A,81B、及び下腿駆動機構44A,44Bの駆動モータ85A,85Bを制御する。
【0066】
例えば、パワーアシストスーツ10を装着した使用者が各種の作業を実施すると、足装着部43A,43Bに荷重が作用する。荷重センサ及び角度センサ等を含むセンサ86を有する足センサ部46A,46Bは、足装着部43A,43Bに作用する荷重及び角度を検出し、その検出信号を下肢制御装置16に出力する。下肢制御装置16は、足センサ部46A,46Bからの検出信号に基づいて大腿装着部41A,41B及び下腿装着部42A,42Bへのアシスト力を設定し、所定のアシスト力が発生するように、駆動モータ81A,81B及び駆動モータ85A,85Bを作動して、大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bを駆動する。
【0067】
また、パワーアシストスーツ10を装着した使用者が左右のアーム部53A,53Bを使って重い荷物の持ち上げ動作を実施する場合、上肢制御装置18の制御部101は、操作スイッチ94からの操作信号を受信し、上肢部駆動制御部54の駆動モータ91を駆動制御する。使用者が左右のアーム部53A,53Bを使って重い荷物の持ち上げ動作を実施すると、上肢部パーツ12に荷重が作用する。荷重検出器73は、上肢部パーツ12に作用する荷重を検出し、その検出信号を下肢制御装置16に出力する。下肢制御装置16は、荷重検出器73からの検出信号に基づいて大腿装着部41A,41B及び下腿装着部42A,42Bへのアシスト力を設定し、所定のアシスト力が発生するように、駆動モータ81A,81B及び駆動モータ85A,85Bを作動して、大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bを駆動する。
【0068】
なお、本実施形態においては、下肢制御装置16に、大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bによるアシスト力を調整する調整スイッチ78が設けられている。例えば、使用者が左右のアーム部53A,53Bを使って重い荷物の持ち上げ動作を実施するとき、その荷物の重量を事前に把握している場合には、調整スイッチ78を使って、荷物の重量に適したアシスト力が発生するように、大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bのアシスト力を調整可能である。
【0069】
このように、本実施形態においては、使用者の下肢に装着され筋力を補助する大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bを有する下肢部パーツ11と、下肢部パーツ11に連結されて使用者の上肢に装着される上肢部パーツ12と、上肢部パーツ12に作用する荷重を検出する荷重検出器73と、荷重検出器73の検出結果に基づいて大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bによるアシスト力を調整する下肢制御装置16とが設けられる。
【0070】
下肢部パーツ11と上肢部パーツ12とを連結したとき、上肢部パーツ12の重量が下肢部パーツ11に荷重として作用する。荷重検出器73は、上肢部パーツ12に作用する荷重を検出し、下肢制御装置16の制御部71は、荷重検出器73の検出結果に基づいて大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bによる下肢部パーツ11のアシスト力を調整する。
【0071】
また、パワーアシストスーツ10を装着した使用者が荷物を持ち上げて、上肢部パーツ12に荷重が作用すると、荷重検出器73は、上肢部パーツ12に作用する荷重を検出し、下肢制御装置16の制御部71は、荷重検出器73の検出結果に基づいて大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bによる下肢部パーツ11のアシスト力を発生する。そのため、使用者は、上肢部パーツ12の重量及び上肢部パーツ12に作用する荷重を受け止める必要が無くなる。その結果、使用者の肉体的負担は軽減される。
【0072】
ところで、パワーアシストスーツ10を装着した使用者が重い荷物を持ち上げる場合、パワーアシストスーツ10の上肢部パーツ12が荷物の重みで前後方向に傾いてしまう可能性がある。上肢部パーツ12が傾いてしまう場合、使用者は、自身の姿勢を維持するために、腹筋又は背筋等の自身の筋力を使う必要がある。その結果、使用者の肉体的負担が十分に軽減されない可能性がある。
【0073】
そこで、本実施形態においては、上肢パーツ12に作用する荷重を検出する荷重検出器73の検出値と、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とに基づいて、下肢制御装置16は、上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするように、駆動モータ81A,81Bを制御する。上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするように駆動モータ81A,81Bが作動することにより、使用者は、例えば調整スイッチ78を操作することなく、肉体的負担を軽減できる。
【0074】
次に、本実施系形態に係るパワーアシストスーツ10の制御方法の一例について説明する。図10及び図11は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10の制御方法の一例を説明するための模式図である。本実施形態において、下肢制御装置16は、上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするように、大腿駆動機構22A,22Bの駆動モータ81A,81Bを制御する。例えば、図10の矢印R1で示すように、上肢部パーツ12(使用者)が後方に反り返るように、その上肢部パーツ12にモーメントが作用した場合、下肢制御装置16は、図10の矢印R2で示すように、その上肢部パーツ12に作用するモーメントを相殺する方向に、駆動モータ81A,81Bを駆動する。
【0075】
また、矢印R1で示す方向とは逆方向に、上肢部パーツ12にモーメントが作用した場合、下肢制御装置16は、矢印R2で示す方向とは逆方向に駆動モータ81A,81Bを駆動して、その上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルする。
【0076】
上述のように、荷重検出器73は、腰装着部21に作用する引張力又は圧縮力を検出可能である。したがって、下肢制御装置16は、荷重検出器73の検出信号に基づいて、上肢部パーツ12に作用するモーメントの向き(矢印R1の向き)を判定することができる。
【0077】
本実施形態において、下肢制御装置16は、荷重検出器73の検出値と、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とに基づいて、上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするように、駆動モータ81A,81Bを制御する。
【0078】
上述のように、荷重検出器73の検出信号は、下肢制御装置16に送信される。駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離は、パワーアシストスーツ10の設計データなどから分かる既知データである。下肢制御装置16は、荷重検出器73の検出値と、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とに基づいて、上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの駆動方向及び駆動力を算出することができる。
【0079】
図10に示すように、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とは、駆動モータ81A,81Bの回転軸AXと荷重検出器73との上下方向の距離である上下距離Hと、前記駆動モータ81A,81Bの回転軸AXと荷重検出器73との前後方向の距離である前後距離Vとを含む。
【0080】
荷重検出器73は、上肢部パーツ12に作用する上下方向の荷重である上下荷重Fhと、上肢部パーツ12に作用する前後方向の荷重である前後荷重Fvとを検出し、下肢制御装置16に送信する。
【0081】
下肢制御装置16は、上下荷重Fhと前後距離Vとの積と、前後荷重Fvと上下距離Hとの積とを算出して、駆動モータ81A,81Bの出力値を決定する。下肢制御装置16は、上下荷重Fhと前後距離Vとの積により、上下荷重Fhに基づいて上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値を決定することができる。また、下肢制御装置16は、前後荷重Fvと上下距離Hとの積により、前後荷重Fvに基づいて上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値を決定することができる。
【0082】
下肢制御装置16は、駆動モータ81Aが発生する動力と駆動モータ81Bが発生する動力とが同一の動力となるように駆動モータ81A,81Bを制御してもよいし、駆動モータ81Aが発生する動力と駆動モータ81Bが発生する動力とが異なる動力となるように駆動モータ81A,81Bを制御してもよい。下肢制御装置16は、上肢部パーツ12に作用するモーメントがキャンセルされるように、駆動モータ81Aが発生する動力と駆動モータ81Bが発生する動力との和(合力)を算出し、その算出された合力が2つの駆動モータ81A,81Bの動力で得られるように、駆動モータ81Aと駆動モータ81Bとに動力(出力値)を分配する。
【0083】
本実施形態において、下肢制御装置16は、足センサ部46Aの検出値と足センサ部46Bの検出値とに基づいて、駆動モータ81A及び駆動モータ81Bを制御する。
【0084】
図11に示すように、下肢制御装置16は、足センサ部46Aの検出値に基づいて、床面を踏みしめている状態の使用者の左脚の足裏に作用する荷重Mlを検出することができる。また、下肢制御装置16は、足センサ部46Bの検出値に基づいて、床面を踏みしめている状態の使用者の右脚の足裏に作用する荷重Mrを検出することができる。下肢制御装置16は、足センサ部46A及び足センサ部46Bを使って検出された使用者の左脚に作用する荷重Ml及び右脚に作用する荷重Mrに基づいて、使用者の左側に設けられている駆動モータ81Aの出力値及び右側に設けられている駆動モータ81Bの出力値を決定する。例えば、下肢制御装置16は、左脚に作用する荷重Mlが大きいほど、使用者の左側に設けられている駆動モータ81Aの出力値を大きくし、荷重Mlが小さいほど、駆動モータ81Aの出力値を小さくする。同様に、下肢制御装置16は、右脚に作用する荷重Mrが大きいほど、使用者の右側に設けられている駆動モータ81Bの出力値を大きくし、荷重Mrが小さいほど、駆動モータ81Bの出力値を小さくする。
【0085】
本実施形態において、下肢制御装置16は、足センサ部46Aの検出値及び足センサ部46Bの検出値に基づいて、左脚の足裏に作用する荷重Mlと右脚の足裏に作用する荷重Mrとの比率を算出して、駆動モータ81Aの出力値及び駆動モータ81Bの出力値を決定する。下肢制御装置16は、左脚又は右脚の足裏に作用する荷重Ml,Mrのうち、荷重の比率が高い方の脚に装着されている駆動モータ81A,81Bの出力値を、荷重の比率が低い方の脚に装着されている駆動モータ81A,81Bの出力値よりも大きくする。例えば、下肢制御装置16は、足センサ部46A,46Bの検出値に基づいて、左脚の足裏に作用する荷重Mlの比率が右脚の足裏に作用する荷重Mrの比率よりも高いと判定した場合、荷重の比率が高い方の左脚に装着されている駆動モータ81Aの出力値を、荷重の比率が低い方の右脚に装着されている駆動モータ81Bの出力値よりも大きくする。
【0086】
例えば、使用者の左脚に体重が掛り、荷重Mlと荷重Mrとの比率が60[%]対40[%]である場合、下腿制御装置16は、荷重検出器73の検出値と、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とに基づいて、上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値(2つの駆動モータ81A,81Bの合力に対応する出力値)を算出した後、駆動モータ81Aの出力値と駆動モータ81Bの出力値との比率が60[%]対40[%]となるように、駆動モータ81A,81Bの出力値を補正する。
【0087】
図12は、本実施形態に係るパワーアシストスーツ10の制御方法の一例を示すフローチャートである。パワーアシストスーツ10を装着した使用者が左右のアーム部53A,53Bを使って荷物を持ち上げると、上肢部パーツ12に作用する荷重が荷重検出器73で検出される(ステップS10)。
【0088】
下肢制御装置16は、荷重検出器73の検出値と、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とに基づいて、上肢部パーツ12に作用するモーメントを算出する(ステップS20)。
【0089】
上述のように、荷重検出器73は、上下荷重Fhと前後荷重Fvとを検出する。駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離は、上下距離Hと前後距離Vとを含む。下肢制御装置16は、上下荷重Fhと前後距離Vとの積から、上下荷重Fhに基づいて上肢部パーツ12に作用するモーメントを算出し、前後荷重Fvと上下距離Hとの積から、荷重Fvに基づいて上肢部パーツ12に作用するモーメントを算出する。
【0090】
下肢制御装置16は、ステップS20で算出したモーメントに基づいて、そのモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値を算出する(ステップS30)。下肢制御装置16は、モーメントをキャンセルするために駆動モータ81Aが発生すべき動力と駆動モータ81Bが発生すべき動力との和(合力)を算出し、その合力を足裏に作用する荷重Ml、Mrに応じて左右の脚に分配するように駆動モータ81A,81Bの出力値を算出する。
【0091】
次に、下肢制御装置16は、足センサ部46A,46Bの検出値に基づいて、ステップS30で算出された左右の駆動モータ81A,81Bの出力値を補正する(ステップS40)。下肢制御装置16は、足センサ部46Aの検出値及び足センサ部46Bの検出値に基づいて、左脚の足裏に作用する荷重Mlと右脚の足裏に作用する荷重Mrとの比率を算出する。例えば、使用者の左脚に体重が掛り、荷重Mlと荷重Mrとの比率が60[%]対40[%]である場合、下腿制御装置16は、荷重検出器73の検出値と、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とに基づいて、ステップS30で算出された上肢部パーツ12に作用するモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値(2つの駆動モータ81A,81Bの合力に対応する出力値)を、駆動モータ81Aの出力値と駆動モータ81Bの出力値との比率が60[%]対40[%]となるように、駆動モータ81A,81Bの出力値を補正する。
【0092】
下肢制御装置16は、ステップS40で算出された、補正後の出力値で駆動モータ81A,81Bを制御する(ステップS50)。
【0093】
以上説明したように、本実施形態によれば、パワーアシストスーツ10を装着した使用者が荷物を持ち上げると、上肢部パーツ12に作用する荷重は荷重検出器73に検出される。下肢制御装置16は、荷重検出器73の検出値と、駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離とに基づいて、上肢部パーツ12に作用するモーメントを算出し、そのモーメントをキャンセルするように駆動モータ81A,81Bを制御する。駆動モータ81A,81Bと荷重検出器73との距離はパワーアシストスーツ10の設計データなどから分かる既知データであり、下肢制御装置16は、荷重検出器73の検出値と既知データである距離とに基づいてモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値を自動的に算出する。駆動モータ81A,81Bは、モーメントをキャンセルするように、使用者の腰に装着されている腰装着部21と使用者の大腿に装着されている大腿装着部41A,41Bとを相対移動させるための動力を発生する。これにより、荷物の持ち上げ動作において上肢部パーツ12が前後方向に傾いてしまうことが抑制される。また、モーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値が自動的に算出されるので、上述したような調整スイッチ78によるアシスト力の調整作業を省略することができる。したがって、作業性を損なわずに使用者の肉体的負担が軽減される。
【0094】
また、本実施形態においては、下肢制御装置16は、上下荷重Fhと前後距離Vとの積と、前後荷重Fvと上下距離Hとの積とを算出して、駆動モータ81A,81Bの出力値を決定する。上下荷重Fhと前後距離Vとの積により、上下荷重Fhに基づいて上肢部パーツ12に作用する前後方向のモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値が決定される。前後荷重Fvと上下距離Hとの積により、前後荷重Fvに基づいて上肢部パーツ12に作用する前後方向のモーメントをキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値が決定される。したがって、下肢制御装置16は、上下荷重Fhに基づいて上肢部パーツ12に作用するモーメント、及び前後荷重Fvに基づいて上肢部パーツ12に作用するモーメントの両方をキャンセルするための駆動モータ81A,81Bの出力値を決定することができる。これにより、上肢部パーツ12が前後方向に傾いてしまうことが十分に抑制される。
【0095】
また、本実施形態においては、下肢制御装置16は、左脚の足裏に作用する荷重を検出する足センサ部46Aの検出値と、右脚の足裏に作用する荷重を検出する足センサ部46Bの検出値とに基づいて、左脚に装着される駆動モータ81A及び右脚に装着される駆動モータ81Bを制御する。下肢制御装置16は、足センサ部46Aの検出値と足センサ部46Bの検出値とに基づいて、床面を踏みしめている状態の使用者の両脚に作用する荷重を検出することができる。下肢制御装置16は、足センサ部46A及び足センサ部46Bを使って検出された使用者の両脚に作用する荷重に基づいて、使用者の両側に設けられている駆動モータ81A及び駆動モータ81Bを制御する。したがって、使用者は、左右方向の姿勢を維持しつつ、荷物を持ち上げることができる。
【0096】
また、本実施形態においては、下肢制御装置16は、右脚の足裏に作用する荷重と左脚の足裏に作用する荷重との比率を算出して、駆動モータ81Aの出力値及び駆動モータ81Bの出力値を決定する。下肢制御装置16は、足センサ部46Aの検出値と足センサ部46Bの検出値とに基づいて、左脚の足裏に作用する荷重と右脚の足裏に作用する荷重との比率を算出することにより、床面を踏みしめている状態の使用者の姿勢の左右方向のバランスを検出することができる。下肢制御装置16は、足センサ部46A及び足センサ部46Bを使って検出された使用者の左右方向のバランスに基づいて、使用者の両側に設けられている駆動モータ81Aの出力値及び駆動モータ81Bの出力値を制御する。したがって、使用者は、左右方向のバランスを崩さずに、荷物を持ち上げることができる。
【0097】
また、本実施形態においては、上肢部パーツ12は下肢部パーツ11に着脱可能であり、荷重検出器73は、下肢部パーツ11の腰装着部21に設けられる。荷重検出器73が下肢部パーツ11の腰装着部21に設けられることにより、上肢部パーツ12が交換されても、その上肢部パーツ12に作用する荷重が検出される。また、上肢部パーツ12は下肢部パーツ11に着脱可能なので、作業の種類に応じて最適な機能を有する上肢部パーツ12を選択して下肢部パーツ11に連結することができる。そのため、多種多様な作業に対応可能であり、拡張性及び保守性を向上することができる。
【0098】
また、本実施形態においては、大腿制御部23A,23B及び脚制御部45A,45Bは、左右それぞれの独立した制御部82を有し、下肢制御装置16は、左右それぞれの制御部82に制御信号を出力可能である。また、上肢部駆動制御部54は、左右それぞれの独立した制御部92を有し、上肢制御装置18は、左右それぞれの制御部92に制御信号を出力可能である。下肢部パーツ11及び上肢部パーツ12が左右それぞれの独立した制御部82,92を有しているので、下肢部パーツ11に対して上肢部パーツ12を交換しても、制御系の構築が可能となり、下肢部パーツ11側に配置された下肢制御装置16により各制御部82を介して大腿駆動機構22A,22B及び下腿駆動機構44A,44Bを適正に制御することができ、上肢部パーツ12側に配置された上肢制御装置18により各制御部92を介してアーム部53A,53Bを適正に制御することができる。
【0099】
すなわち、本実施形態においては、下肢部パーツ11及び上肢部パーツ12の電源供給系、制御信号系、及びシリアル通信系などが左右それぞれで独立しており、機器又は回線が多重化された構成である。そのため、上肢部パーツ12を別のものに交換しても、第1コネクタ80と第2コネクタ90とを連結するだけで、下肢部パーツ11と上肢部パーツ12とを電気的に連結することができ、システム全体の信頼性を向上することができる。
【0100】
なお、本実施形態においては、調整スイッチ78によるアシスト力の事前調整を省略可能であるが、調整スイッチ78によりアシスト力が調整されてもよい。
【0101】
なお、本実施形態においては、上肢部パーツ12は、昇降可能な左右のアーム部53A,53Bを有することとしたが、この構成に限定されない。例えば、マニピュレータやロボットハンドなど、作業の種類に応じて適宜設定し、下肢部パーツ11に装着することができる。
【0102】
なお、本実施形態において、バッテリ17は、下肢部パーツ11にのみ配置されるが、上肢部パーツ12にのみ配置されてもよいし、下肢部パーツ11及び上肢部パーツ12の両方に配置されてもよい。
【0103】
なお、本実施形態においては、荷重検出器73は、下肢部パーツ11の第1連結部24に設けられることとしたが、上肢部パーツ12の第2連結部51に設けられてもよい。
【0104】
なお、本実施形態においては、パワーアシストスーツ10は、腰パーツ13と肩パーツ14と脚パーツ15A,15Bとを有することとしたが、脚パーツ15A,15Bだけで構成されてもよいし、更に、腕パーツ等が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10 パワーアシストスーツ
11 下肢部パーツ
12 上肢部パーツ
13 腰パーツ
14 肩パーツ
15A,15B 脚パーツ
16 下肢制御装置
17 バッテリ
18 上肢制御装置
21 腰装着部
22A,22B 大腿駆動機構
23A,23B 大腿制御部
24 第1連結部
31 背装着部
32A 左肩装着部
32B 右肩装着部
41A,41B 大腿装着部
42A,42B 下腿装着部
43A,43B 足装着部
44A,44B 下腿駆動機構
45A,45B 脚制御部
46A,46B 足センサ部
51 第2連結部
52 レール部
53A,53B アーム部
54 上肢部駆動制御部
55 支持部
61 ボルト
62 支持板
63 ガイドレール
64 基部
71 制御部
72 ジャイロセンサ
73 荷重検出器
74 通信インターフェース
75 外部通信インターフェース
76 電源部
77 外部制御装置
78 調整スイッチ
80 第1コネクタ
81A,81B 駆動モータ
82 制御部
83 通信インターフェース
84 電源部
85A,85B 駆動モータ
86 センサ
87 制御部
88 通信インターフェース
89 電源部
90 第2コネクタ
91 駆動モータ
92 制御部
93 電源部
94 操作スイッチ
101 制御部
102 通信インターフェース
103 電源部
図1
図2
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