(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水耕栽培棚において、液肥を貯留させた液肥槽上に配設されている定植板を持ち上げ、当該定植板の下面側に、当該定植板に植わっている植物から滴る液肥を受ける液肥受パンを挿し込んで、当該定植板を当該液肥受パンごと当該水耕栽培棚から取り出すための定植板の取出機構であって、
上記定植板の取出方向に直交する向きであって、上記定植板の幅方向と平行な向きに長さを有し、上記定植板の下方において、上記水耕栽培棚のフレームに回動可能に固定されたヒンジ軸と、
一端に上記ヒンジ軸が取り付けられた舌片状あるいは棒状の部材であって、当該ヒンジ軸の回動に連動して、他端を上記定植板の取出方向の端部近傍の下面に当接させながら、上記液肥受パンを挿込可能に上記定植板の端部を持ち上げる回動片と、を有する、
ことを特徴とする定植板の取出機構。
【背景技術】
【0002】
食用、鑑賞用などの各種の植物の栽培においては、クリーンルーム等の屋内に複数の棚や段を設置し、当該棚や段により、植物を高密度で生産するシステムが利用されている。このようなシステムでは、特に固形培地を必要としない水耕栽培法が広く活用されており、植物の病害、汚染の防除や成長制御が容易であり、周年生産が可能というメリットがある。
【0003】
特許文献1、2に示されるように、水耕栽培を行う水耕栽培棚は通常、液肥を貯留させた栽培槽と定植板を備えており、栽培槽上に定植板を配設し、当該定植板に設けられている植穴に生育する植物の苗を植え付ける。そして、植物が生育したところで、水耕栽培棚から定植板ごと植物を取り出し、定植板上の植物を摘み取る。
【0004】
【特許文献1】特開2012−223120号公報
【特許文献2】特開平10−271925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、植物の収穫の際には、水耕栽培棚から定植板ごと生育した植物を取り出すが、植物が生育した段階では重くなっており、取り出すのが容易でない。また、とりわけ商業用の植物については、水耕栽培棚から定植板ごと植物を取り出す際に、植物を傷めることがないようしなければならない。さらに、定植板に植わっている植物の根は液肥に浸っているため、定植板を取り出す際、植物の根を伝って液肥が滴り、水耕栽培棚1が設置されている施設の床面や、水耕栽培棚から取り出した定植板を載置する収穫ラックや他の定植板上の植物を汚してしまうことがある。
【0006】
そこで本発明は、水耕栽培棚から容易に定植板を取り出することができると共に、定植板上の植物を傷めたり、定植板上の植物から液肥が滴って周りを汚したりすることのない定植板の取出機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る定植板の取出機構は、水耕栽培棚において、液肥を貯留させた液肥槽上に配設されている定植板を持ち上げ、当該定植板の下面側に、当該定植板に植わっている植物から滴る液肥を受ける液肥受パンを挿し込んで、当該定植板を当該液肥受パンごと当該水耕栽培棚から取り出すための定植板の取出機構であって、上記定植板の取出方向に直交する向きであって、上記定植板の幅方向と平行な向きに長さを有し、上記定植板の下方において、上記水耕栽培棚のフレームに回動可能に固定されたヒンジ軸と、一端に上記ヒンジ軸が取り付けられた舌片状あるいは棒状の部材であって、当該ヒンジ軸の回動に連動して、他端を上記定植板の取出方向の端部近傍の下面に当接させながら、上記液肥受パンを挿込可能に上記定植板の端部を持ち上げる回動片と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記ヒンジ軸には把手が取り付けられているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る定植板の取出機構によれば、水耕栽培棚から容易に定植板を取り出すことができる。また、取り出しの際に定植板上の植物を傷めることもないし、定植板上の植物から液肥が滴って周りを汚すのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る定植板の取出機構を備えた水耕栽培棚を示した外観斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る定植板の取出機構により、水耕栽培棚から定植板が取り出される際の状態を示した部分拡大図である。
【
図3】本実施形態に係る定植板の取出機構を示した外観斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る定植板の取出機構を示した外観斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る定植板の取出機構において、水耕栽培棚から定植板を取り出す際に用いられる液肥受パンを示した外観斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る定植板の取出機構において、取出機構の動作を説明する側面図である。
【
図7】本実施形態に係る定植板の取出機構において、取出機構の動作を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る定植板の取出機構について、図を参照して説明する。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る定植板の取出機構3は、水耕栽培棚1から、生育した植物が植わっている定植板2を取り出し、収穫ラック4に置くための機構である。
【0012】
水耕栽培棚1は、植物を栽培するための棚である。
この水耕栽培棚1には、上下方向に複数段、植物を生育させるための定植板2を載置するスペースが設けられている。各段の内部には、
図2に示されるように、液肥を貯留させる液肥槽11が取り付けられている。また、水耕栽培棚1の一端側は、生育した植物が植わっている定植板2を取り出すための取出口となり、当該取出口近傍には定植板2の取出機構3が設けられている。
【0013】
液肥槽11は、上方に開口すると共に両端が閉じた略半筒形状からなり、定植板2の取出方向に長さを有する。この液肥槽11は、水耕栽培棚1の幅方向に複数、並設され、植物を生育させる定植板2が上面に配設される。
なお、水耕栽培棚1の段ごとに設置されている複数の液肥槽11は夫々、隣接する液肥槽11と僅かな間隙と設けて並設されている。これにより、定植板2が取出機構3によって水耕栽培棚1から取り出される際、隣接する液肥槽11間の間隙から、液肥槽11の下方に設置されている取出機構3の回動片32(
図4を参照して後述)は上方へ突出し、液肥槽11上に配設されている定植板2を下面側から持ち上げることができる。
【0014】
定植板2は、植物の苗等を植える植穴2aが複数設けられた平板状の部材である。この定植板2は、水耕栽培棚1の段ごとに複数、取出方向に沿って並設される。
また、定植板2は液肥槽11の上面に配設され、植穴2aに植え付けられた植物は、下方に根を伸ばして液肥槽11に貯留させられている液肥から養分を吸収する。
【0015】
取出機構3は、液肥槽11上に配設されている定植板2を下面側から持ち上げて、水耕栽培棚1から定植板2を取り出すための機構である。
この取出機構3は、
図3に示されるように、ヒンジ軸31、回動片32、把手33、ブラケット34、及び固定金具35からなる。
【0016】
ヒンジ軸31は、定植板2の取出方向に直交する向きであって、定植板2の幅方向と平行な向きに長さを有する。このヒンジ軸31は
図2に示されるように、定植板2の下方において、ブラケット34を介し、水耕栽培棚1のフレーム12に回動可能に固定されている。
【0017】
回動片32は、一端にヒンジ軸31が取り付けられた舌片状の部材である。この回動片32は、本実施形態では、ヒンジ軸31の両端部近傍と中央付近に設けられており、
図3及び
図4に示されるように、ヒンジ軸31の回動に連動して、ヒンジ軸31周りに回動する。
【0018】
この回動片31がヒンジ軸31の回動に連動して回動すると、液肥槽11の両端の外側、及び隣接する液肥槽11同士の間の間隙から上方へ突出し、端部を定植板2の下面に当接させながら、定植板2を持ち上げる。
【0019】
なお、本実施形態では、回動片32の一端部にヒンジ軸31を貫通させる軸孔が設けられており、当該軸孔にヒンジ軸31が貫通すると共に、回動片32がヒンジ軸31に固定されているが、これに限らず、ヒンジ軸31に連動してヒンジ軸31周りに回動片32が回動すれば、他の構造によって固定されていてもよい。
【0020】
また、本実施形態においては、回動片32は舌片状からなるが、これに限らず、棒状等にしてもよく、一定の長さを有し、一端がヒンジ軸31に固定されると共に、他端がヒンジ軸31の回動に応じてヒンジ軸31の軸周りに回動するものであればよい。
また、本実施形態を示す図においては、回動片32は三つ取り付けられているが、本発明の実施において、回動片32の数は特に限定されない。
【0021】
把手33は、ヒンジ軸31の端部に取り付けられており、一端にヒンジ軸31の端部が固着される略棒状の把手片331と、把手片331の端部に取り付けられた握持部332からなる。
この把手33の握持部332を握持してヒンジ軸31を回すことで、ヒンジ軸31に連動する回動片32を回動させることができる。
【0022】
ブラケット34は
図2に示されるように、水耕栽培棚1のフレーム12に取り付けられる部材であって、一端部には、ヒンジ軸31が回動可能に取り付けられる。本実施形態においては、ブラケット34は、ヒンジ軸31の一端側と他端側に設けられており、ヒンジ軸31はこの一対のブラケット34を介して、水耕栽培棚1に回動可能に取り付けられている。
【0023】
固定金具35は、ヒンジ軸31と略同じ長さを有する略板状の部材であって、一端が一のブラケット34に取り付けられると共に、他端が他のブラケット34に取り付けられている。この固定金具35が一対のブラケット34を連結することにより、取付機構4のぐらつきを防ぐことができる。
【0024】
なお、本実施形態の説明においては一部、図示を省略しているが、この水耕栽培棚1は適宜、植物の栽培に必要な光の照射機構、液肥の供給機構や排水機構等を有する。また、本発明の実施において、水耕栽培棚1で栽培する植物は食用、鑑賞用など、特に限定されない。
【0025】
収穫ラック4は、定植板2上で植物が十分に生育した際に、水耕栽培棚1から取り出した定植板2を載置するためのラックである。
この収穫ラック4には、水耕栽培棚1の段組みに応じて上下に複数段、定植板2を載置するための段が設けられており、各段には、定植板2を載置するためのトレイ41が取り付けられている。
【0026】
トレイ41は、平面視矩形状からなると共に底面の周縁部が立ち上がった容器形状からなる。このトレイ41のサイズは、定植板2あるいは後述する液肥受パン5と同じかこれらよりも僅かに大きく、底面上に液肥受パン5ごと定植板2を載置することができる。そして、トレイ41の上面に定植板2が載置された際、定植板2上の植物の根を伝って滴り落ちてくる液肥を受ける。
【0027】
このような構成からなる水耕栽培棚1から定植板2を取り出し、収穫ラック4に移動させる際には、
図5に示される液肥受パン5が用いられる。
液肥受パン5は、上面側に定植板2が載置される部材であって、定植板2に植わっている植物の根を伝って滴る液肥を受けるものである。この液肥受パン5は、並設された複数の個別受パン51と、当該複数の個別受パン51を固定するブラケット52からなる。
【0028】
個別受パン51は、両端及び上面が開口した略半筒形状からなる部材である。この個別受パン51は、液肥槽11と略同じ幅と深さを有し、複数並設された液肥槽11に対応して、複数並設されている。これにより、取出機構3によって定植板2を持ち上げ、定植板2の下面に液肥受パン5を挿し込んだ際、各個別受パン51が各液肥槽11に重畳するように重なる。そして、定植板2の植物から滴った液肥は、個別受パン51を流れ落ちるとそのまま液肥槽11に排出される。
【0029】
続いて、水耕栽培棚1から定植板2が取り出される工程について説明する。
まず、
図6に示されるように、回動片32が定植板2の下方にあって、定植板2に当接していない状態から、把手33によってヒンジ軸31を回動させる。これによってまず、ヒンジ軸31に連動する回動片32が液肥槽11の上方へ突出し、定植板2の取出方向の端部近傍の下面に当接する。それからさらに回動させることで、
図7に示されるように、回動片32が定植板2の下面に当接しながら、定植板2を上方に持ち上げる。
【0030】
定植板2が上方に持ち上げられると、定植板2の下面側に液肥受パン5を挿入可能な間隙が設けられ、この状態で液肥受パン5を挿し込み、液肥受パン5上に定植板2を載置させる。
この状態において、定植板2の植物の根を伝って滴る液肥は、液肥受パン5によって受けられると共に、液肥受パン5を介して液肥槽11に排出される。
【0031】
そして、
図1及び
図2に示されるように、水耕栽培棚1の取出口に収穫ラック4を寄せ付け、液肥受パン5上に載置された定植板2を、液肥受パン5ごと収穫ラック4のトレイ41上に引き出すと、定植板2の取り出しが完了する。
トレイ41上においては、植物の根から滴る液肥はトレイ41によって受けられ、収穫ラック4に収穫された下段の植物等を汚すことはない。
【0032】
本実施形態に係る定植板の取出機構3によれば、水耕栽培棚1から容易に定植板2を取り出すことができる。また、取り出しの際に定植板2上の植物を傷めることもないし、定植板2上の植物から液肥が滴って周りを汚すのを防ぐことができる。