特許第6554069号(P6554069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6554069バランスウエイト及びバランスウエイト並列体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6554069
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】バランスウエイト及びバランスウエイト並列体
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/32 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   F16F15/32 U
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-114401(P2016-114401)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-219133(P2017-219133A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年6月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔販売日〕 平成28年3月19日 〔販売した場所〕 株式会社リンリンジャパン(神奈川県横浜市都築区茅ヶ崎3丁目1−42) 〔刊行物等〕 〔販売日〕 平成28年3月19日 〔販売した場所〕 有限会社スガワラ機工(秋田市牛島西1−19−15) 〔刊行物等〕 〔販売日〕 平成28年3月19日 〔販売した場所〕 株式会社タイヤセンター盛岡南(岩手県盛岡市永井16地割11−1) 〔刊行物等〕 〔販売日〕 平成28年3月19日 〔販売した場所〕 オート機工栃木販売株式会社(栃木県栃木市城内町2−7−12) 〔刊行物等〕 〔販売日〕 平成28年3月19日 〔販売した場所〕 小林商会(富山県富山市千成町9−6) 〔刊行物等〕 〔販売日〕 平成28年3月19日 〔販売した場所〕 スーパータイヤセンター(埼玉県狭山市水野1203−1) 〔刊行物等〕 〔販売日〕 平成28年3月19日 〔販売した場所〕 エヌケイワイ(東京都武蔵村山市学園4−27−10)
(73)【特許権者】
【識別番号】305054784
【氏名又は名称】三矢 幸広
(73)【特許権者】
【識別番号】515201855
【氏名又は名称】李 浩鎮
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(74)【代理人】
【識別番号】100185971
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 玲子
(72)【発明者】
【氏名】三矢 幸広
(72)【発明者】
【氏名】李 浩鎮
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−174712(JP,A)
【文献】 特開2014−188525(JP,A)
【文献】 特開2004−327281(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3187452(JP,U)
【文献】 国際公開第01/095889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の直方体から構成されるとともに、
対向する長辺若しくは短辺の表面側に位置して端縁に向かうほど裏面側に傾斜する表面側傾斜面と、
前記表面側傾斜面を設けた前記長辺若しくは短辺の前記裏面側に位置して端縁に向かうほど前記表面側に傾斜する裏面側傾斜面と、
を備え
前記端縁を含み前記表面と直行する線分と前記表面側傾斜面とでなす角度を、前記端縁を含み前記裏面と直行する線分と前記裏面側傾斜面とでなす角度よりも鋭角とした、
バランスウエイト。
【請求項2】
前記表面側傾斜面の前記端縁と前記裏面側傾斜面の前記端縁とを同じとするとともに、前記端縁の位置を厚さ方向で前記表面側よりも前記裏面側に位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載のバランスウエイト。
【請求項3】
前記端縁の厚さ方向の位置が、表面側傾斜面高さ:裏面側傾斜面高さとしたときに5:3である、
ことを特徴とする請求項2に記載のバランスウエイト。
【請求項4】
前記表面側傾斜面と前記裏面側傾斜面とが対向する長辺に形成され、
前記表面側には、材質を示す記号及び重量を示す数字を含み、前記短辺側からそれぞれから見たときに識別可能となるように180°回転対称の識別部を設けた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1の請求項に記載のバランスウエイト。
【請求項5】
鉄から構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の複数のバランスウェイト。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1の請求項に記載の複数のバランスウエイトと、
弾性を有する両面粘着シートと、
前記両面粘着シートの一面に貼設した剥離シートと、
を備え、
前記複数のバランスウエイトは、前記御両面粘着シートの他面に並べて貼設するとともに、前記表面が同一平面上に位置しているときに、隣り合う前記端縁同士が互いに接触している、
バランスウエイト並列体。
【請求項7】
前記剥離シートは弾性を有し、
前記両面粘着シートの弾性に伴う単位長さあたりの伸び率よりも前記剥離シートの弾性に伴う単位長さ当たりの伸び率の方が低い、
ことを特徴とする請求項6に記載のバランスウエイト並列体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスウエイト及びバランスウエイト並列体に関し、特に、自動車の車輪の回転時における重量バランスをとるために、ホイールリム部に装着するバランスウエイト及びバランスウエイト並列体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪は、車軸を中心に回転をする。この際、車輪の重量バランスが適性な均衡状態となっていないと、速度上昇に伴って車輪の回転速度が高まるにつれて振動が発生する。そこで、車輪の重量バランスを検査する検査装置を用いて車輪の軽い部分を発見し、その該当部分に必要な重量のバランスウエイトを装着することにより車輪の重量バランスを調整している。
【0003】
また、このようなバランスウエイトは、両面粘着シートの一面に剥離シートを貼設し、両面粘着シートの他面に複数のバランスウエイトを並列に貼設するとともに、必要な個数分のバランスウエイトを用いて両面粘着シートの一面から剥離シートを剥してホイールリム部に貼り付けるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
したがって、バランスウエイトは、予め一面に剥離シートを貼着した両面粘着シートの他面に多数のバランスウエイトを並列に貼り付けた状態で、ロール状に巻き取って収納箱に収納しており、必要に応じて収納箱から引き出すようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−190094号公報
【特許文献2】特開2015−113964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなバランスウエイトにあっては、収納箱に収納しているときの巻き取りでは、剥離シートをバランスウエイトよりも径方向内側に位置させた状態としているため、隣接するバランスウエイトは互いに離間する関係にある。一方、バランスウエイトをホイールリム部に貼り付ける際には、両面粘着シートをホイールリム部の径方向外側に位置させた状態で貼り付けることから、隣接するバランスウエイトは互いに接近する関係にある。
【0007】
さらに、バランスウエイトを収納箱から引き出す際には、巻き取り状態の残余のバランスウエイトが隣接するもの同士で複雑な位置関係となる可能性がある。このため、バランスウエイトそのものの重量による荷重及び引き出し作業時の引っ張り荷重といった様々な荷重により、隣接するバランスウエイトが両面粘着シートに貼り付けた際の状態とはならない場合がある。このような状態で、さらなる重量荷重や引っ張り荷重が加わると、バランスウエイトが両面粘着シートから剥がれれてしまうという問題が生じる。
【0008】
なお、これらの巻き取り時と車輪装着時とで逆方向の円弧状に並列する関係にあることから、隣り合うバランスウエイトの間にスペースを設けてしまうと、一つの収納箱に収納するバランスウエイトの数が減ってしまうという問題も生じる。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するために、両面粘着シートに並列させた状態で巻き取り時と車輪装着時とで逆方向の円弧状とした場合であっても、容易にその変化に追従することができるバランスウエイト及びバランスウエイト並列体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るバランスウエイトは、上記目的を達成のため、金属製の直方体から構成されるとともに、対向する長辺若しくは短辺の表面側に位置して端縁に向かうほど裏面側に傾斜する表面側傾斜面と、表面側傾斜面を設けた長辺若しくは短辺の裏面側に位置して端縁に向かうほど表面側に傾斜する裏面側傾斜面と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、両面粘着シートに並列させた状態で巻き取り時と車輪装着時とで逆方向の円弧状とした場合であっても、容易にその変化に追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】バランスウエイト並列体を示し、(A)はバランスウエイト並列体を貼設した車輪の正面図、(B)は要部の拡大説明図である。
図2】バランスウエイト並列体に適用されるバランスウエイトを示し、(A)はバランスウエイトの平面図、(B)はバランスウエイトの側面図、(C)はバランスウエイトの正面図、である。
図3】バランスウエイト並列体を示し、(A)はバランスウエイト並列体の平面図、(B)はバランスウエイト並列体の正面図、である。
図4】バランスウエイト並列体を示し、(A)はバランスウエイト並列体を収納箱に収納した状態の説明図、(B)はバランスウエイト並列体に荷重が加わった状態の一例を示す説明図、である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態に係るバランスウエイト及びバランスウエイト並列体について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明のバランスウエイト及びバランスウエイト並列体における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組み合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0014】
図1において、Tは自動車の車輪を構成するタイヤ、Rは図示しない車軸に固定されてタイヤTを保持するホイールリム部、1はホイールリム部Rの内壁面に貼設したバランスウエイト並列体、である。
【0015】
図2に示すように、バランスウエイト並列体1は、弾性を有する両面粘着シート2と、両面粘着シート2の一面に貼設した剥離シート3と、両面粘着シート2の他面に並べて貼設した複数のバランスウエイト10と、を有する。バランスウエイト並列体1は、バランスウエイト10の個数に応じて重量を調節した状態で、ホイールリム部Rの適宜位置に貼設するものである。したがって、図1に示したバランスウエイト並列体1は、剥離シート3を剥した使用状態のものを示している。
【0016】
両面粘着シート2は、他面に複数のバランスウエイト10を並列に貼設するとともに、一面をホイールリム部Rの内周面に貼り付ける部材である。これにより、バランスウエイト並列体1をホイールリム部Rの内周面の所定の位置に貼り付けることができる。両面粘着シート2は、バランスウエイト10が並んで配設された方向がホイールリム部Rの周方向に沿った状態でホイールリム部Rに貼り付けるのが好ましい。
【0017】
両面粘着シート2は、発泡樹脂等の柔軟性(弾性)を有する材質よりなる基材の両面に粘着性(接着性)を付与したものである。基材をもつことで両面粘着シート2自身が柔軟性を有するものとなり、バランスウエイト10の形状とホイールリム部Rの形状が完全に一致していなくても、両面粘着シート2が形状の変化を吸収し、バランスウエイト10とホイールリム部Rとの密着性を維持することができる。具体的に、両面粘着シート2は、クッション性のある材質、例えば、ポリウレタンフォームやポリエチレンフォームを基材として、耐久性のあるアクリル系粘着剤を塗布したものを用いることができる。
【0018】
剥離シート3は、帯状に長尺なものを用いており、両面粘着シート2の一面に剥離可能に貼設して一面側の粘着性を保護する。剥離シート3は、バランスウエイト並列体1をホイールリム部Rに貼設するときに剥離する。剥離シート3は、バランスウエイト10の長辺の長さよりも幅広である。剥離シート3は、柔軟性(弾性)を有する材質よりなる。具体的に、剥離シート3は、ポリ塩化ビニル樹脂よりなる。
【0019】
この際、剥離シート3は、両面粘着シート2の弾性に伴う単位長さあたりの伸び率よりも剥離シート3の弾性に伴う単位長さ当たりの伸び率の方を低くするのが望ましい。すなわち、図4(A)に示すように、長尺なバランスウエイト並列体1は、ロール状に巻き取って収納箱4に収納し、必要時応じた長さ(個数)だけ引き出すようになっている。したがって、バランスウエイト並列体1を収納箱4から引き出す際には、両面粘着シート2とバランスウエイト4との貼り付け状態は初期状態を維持するのが望ましい。これに対して、両面粘着シート2の単位長さあたりの伸び率よりも剥離シート3の単位長さ当たりの伸び率の方が高いと、引っ張り荷重によって両面粘着シート2が伸びすぎてしまい、両面粘着シート2とバランスウエイト4との貼り付け状態が損なわれ易くなる。
【0020】
図3に示すように、バランスウエイト10は、表面11に識別用の刻印を施した金属製の直方体から構成しており、対向する長辺の表面側に位置して端縁12に向かうほど裏面13に傾斜する表面側傾斜面14と、表面側傾斜面14を設けた長辺の裏面側に位置して端縁12に向かうほど表面11に傾斜する裏面側傾斜面15と、対向する短辺の表面側に位置して端縁(端面)16に向かうほど裏面13に傾斜する先端側傾斜面17と、を一体に備える。表面側傾斜面14と裏面側傾斜面15とは、複数のバランスウエイト10の隣接する他のバランスウエイト10とで互いに対向する長辺に形成している。したがって、表面側傾斜面14と裏面側傾斜面15とは、複数のバランスウエイト10の隣接する他のバランスウエイト10とで互いに短辺が対向する場合には、この短辺に形成する。
【0021】
表面11には、識別表示を付与しておくことが好ましい。この識別表示としては、例えば、バランスウエイト10の材質を示す記号(例えば、Fe)及び重量(例えば、5)を示す数字を表示させておけば、所望の重量のバランスウェイト10を簡単に識別、選択し、ホイールリム部Rの所定の位置に組み付けることができる。この識別表示をバランスウエイト10の表面11に付与する方法については、限定されるものでなく、打刻や印刷をあげることができる。この際、材質を示す記号及び重量を示す数字は、バランスウエイト10の短辺それぞれから見たときに識別可能となるように180°回転対称に設けるのが好ましい。これにより、バランスウエイト10を両面粘着シート2に貼設する際や、バランスウエイト並列体1をホイールリム部Rに貼設する際に、表裏前後の方向を見間違えてしまうことを抑制することができる。
【0022】
端縁12は、表面側傾斜面14と裏面側傾斜面15とで共用している角部であるとともに、その厚さ方向の位置を表面側よりも裏面側に変位している。具体的には、図3(C)に示すように、端縁12の厚さ方向の位置は、表面側傾斜面14の高さをH1、裏面側傾斜面15の高さをH2としたとき、その比率は5:3(H1>H2)である。この際、端縁12を含み表面11と直行する線分と表面側傾斜面14とでなす角度θ1は15°付近としている。また、端縁12を含み裏面13と直行する線分と裏面側傾斜面15とでなす角度θ2は45°付近である。したがって、端縁12を含み表面11と直行する線分と表面側傾斜面14とでなす角度θ1は、端縁12を含み裏面と直行する線分と裏面側傾斜面15とでなす角度θ2よりも鋭角(θ1<θ2)である。
【0023】
なお、端縁12の厚さ方向の位置を、表面側傾斜面14の表面側傾斜面高さH1:裏面側傾斜面15の裏面側傾斜面高さH2としたときに5:3としたのは、後述するように、隣接するバランスウエイト10が、例えば裏面13を基準として同一平面上にないとき、例えば、両面粘着シート2にバランスウエイト10を並列させた状態で巻き取り時(或は、引き出し時)と車輪装着時とで逆方向の円弧状とした場合であっても、容易にその変化に追従するためのである。例えば、隣接する一方のバランスウエイト10の対向する表面側傾斜面14と、隣接する他方のバランスウエイト10の対向する裏面側傾斜面15とが接触した重なりを許容し易くするものである。この表面側傾斜面高さH1と裏面側傾斜面高さH2との比率は、例えば、5:5とすると、傾斜角度θ1と角度θ2とが同じ角度となるため、ホイールリム部Rに貼設する際と同様に、同じ表面側傾斜面14が接触する状態となるなど、バランスウエイト10が重なり合い難くなってしまう。また、比率を3:5としてしまうと、隣接するバランスウエイト10の重なり順が上記とは逆になり易くなってしまい、両面粘着シート2が裏面13から剥がれ易くなってしまう。
【0024】
短辺側の対向する短辺の端縁16は表面11及び裏面13に対して直交する(傾斜しない)壁面となっている。先端側傾斜面17は、端縁16を含み裏面13と直行する線分と先端側傾斜面17とでなす角度θ2は45°付近である。
【0025】
なお、一つのバランスウエイト10の重量を鉄製5gとした場合、バランスウエイト10の具体的な寸法としては、長さL=19.3mm、幅W=11.6mm、厚さH=3.2mm、表面側傾斜面角度θ1=15°、表面側傾斜面高さH1=2.0mm、裏面側傾斜面高さH2=1.2mm、先端側傾斜面角度θ2=45°、先端側傾斜面高さH3=1.0mm、である。
【0026】
このような基本構成において、本実施の形態に係るバランスウエイト並列体1は、バランスウエイト10を並列して両面粘着シート2に貼設したときに、隣接状態で対向する長辺に表面側傾斜面14と裏面側傾斜面15とを設けることにより、両面粘着シート2に並列させた状態で巻き取り時と車輪装着時とで逆方向の円弧状とした場合であっても、容易にその変化に追従させることにある。
【0027】
具体的には、バランスウエイト並列体1は、複数のバランスウエイト10のそれぞれが、隣接するもの同士で間隔を開けることなく端縁12が互いに接触した状態で両面粘着シート2の他面に貼設している。したがって、上述した1個5gのバランスウエイト並列体1は、例えば、図4に示す1つの収納箱4に1000個分を収納する場合、上述した両面粘着シート2及び剥離シート3の長さは約11.6mである。
【0028】
そして、このような長尺に連続するバランスウエイト並列体1は、収納箱4に巻き取り状態で収納し、その最外径側の端部を収納箱4から引き出すことによって、所望の個数分のバランスウエイト10で両面粘着シート2と剥離シート3とを切断する。
【0029】
この際、収納箱4の内部では、例えば、バランスウエイト並列体1の最外径側の端部を収納箱4から引き出したり、押し戻したりすることにより、例えば、図4(B)に示すように、巻き取り状態の残余のバランスウエイト10が隣接するもの同士で複雑な位置関係となる可能性がある。なお、バランスウエイト並列体1の最外径側の端部を収納箱4から引き出す際には、外周側では引っ張り作用が働くが、内周側では締め付け力が発生するため、実質的に押し戻しと同等の作用が部分的に発生する可能性がある。
【0030】
このように、バランスウエイト10の重量に起因する垂れ下がりにより発生する荷重及び引き出し作業や押し戻し作業に起因する荷重といった様々な荷重により、隣接するバランスウエイト10が互いに接近する状況となる場合がある。このような隣接するバランスウエイト10が接近した状況となっても、隣接する一方のバランスウエイト10の対向する表面側傾斜面14と、隣接する他方のバランスウエイト10の対向する裏面側傾斜面15とが、全体の高さHの半分以下である低い高さH2に寄った状態で接触するように重なり合わせることができる。しかも、隣接するバランスウエイト10が半分以下の高さ寄りで重なり合うことにより、両面粘着シート2の伸び率を上回り難くすることができ、両面粘着シート2がバランスウエイト10から不測に剥がれてしまうことなく、追従性を確保することができる。
【0031】
一方、バランスウエイト並列体1は、ホイールリム部Rに組み付ける際には、図1(B)に示すように、ホイールリム部Rの内周面の湾曲形状に沿った湾曲形状となる。この場合、隣接する二つのバランスウエイト10には、表面側傾斜面14を形成したことにより、隣接するバランスウエイト10の間に隙間がなくても、隣接するバランスウエイト10の相対的な変移を容易に許容することができる。つまり、バランスウエイト10のそれぞれがホイールリム部Rの内周面の湾曲形状に沿って密着させることが可能となる。この結果、バランスウエイト並列体1は、ホイールリム部Rに良くなじみ、高い接着性を発揮することができる。
【0032】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や角度並びに比率等は、成型時等の公差や誤差、並びに塑性変形を許容することができる。したがって、大きさや位置が「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合に、これらの各記載は厳密な意味ではない。すなわち、「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上や製造上等における公差や誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。なお、ここでの公差や誤差とは、本発明の構成・作用・効果を逸脱しない範囲における単位のことを意味するものである。したがって、バランスウエイトの各角部を面取り(R状)とした場合においてまで、これらの寸法等が厳密に適用されるものでもない。
【0033】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施の形態による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0034】
例えば、上記実施の形態では、バランスウエイトを鉄製5gの場合で示したが、他の金属又は合金を用いてもよい。この際、その重量においても、例えば、厚さや角度を変えることなく略倍の大きさの10gとしてもよいし、5gと10gとを交互に並列して両面粘着シートに貼設してもよい。さらに、5gに加えて2gと8gとの組み合わせとしてもよい。この際、2gと8gとは、識別用の刻印を施す際に180°の回転対称性を具備することができる。
【0035】
また、バランスウエイト10は、短辺側の先端側傾斜面17がなくてもよいし、長辺側と同様の表面側傾斜面14及び裏面側傾斜面15の両方を短辺側に設けてもよい。
【0036】
以上説明したように、本発明に係るバランスウエイト及びバランスウエイト並列体は、両面粘着シートに並列させた状態で巻き取り時と車輪装着時とで逆方向の円弧状とした場合であっても、容易にその変化に追従することができるという効果を有し、自動車の車輪の回転時における重量バランスをとるために、ホイールリム部に装着するバランスウエイト及びバランスウエイト並列体全般に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 バランスウエイト並列体
2 両面粘着シート
3 剥離シート
10 バランスウエイト
11 表面
12 端縁
13 裏面
14 表面側傾斜面
15 裏面側傾斜面
16 端縁
17 先端側傾斜面
図1
図2
図3
図4